May 27, 2009

デイビッド・アーズマの語る「サンデー・フェリックス」
----城島とバッテリーを組まされる「窮屈さの弊害」について、2009シーズンの投手陣自身が初めて明確な形で指摘する声を上げた----

まさに我が意を得たりとは、このことだ。アーズマはよくわかってゲームを見ているね。シアトルタイムズの記事からだ。2009年のシアトルを語る上で必読、マストの記事。
記事タイトルは「マリナーズはサンデー・フェリックスをもっと必要としている」ときた。もちろん、この意味深なタイトルも、このブログの愛読者なら意味はわかるだろう。もちろんタテマエでは「ヘルナンデスは日曜日のように、もっと大人の投球をしなさい」くらいの意味だが、明らかに婉曲には
4月にあれほど活躍したのに5月には日曜などのデーゲームにしか出場の機会がないロブ・ジョンソンがひさびさのデーゲームでキャッチャーとしてリードした日曜日のフェリックスは素晴らしかった。
日曜のロブのような、のびのびしたバッテリー感覚が、このチームにはもっと必要だ。そうしないと、このチームはダメだ

という意味もわかるような、ある意味いやらしい仕掛けになっている。

では、「ロブ・ジョンソンがリードしたサンデー・フェリックス」とは、どんなピッチングだったのか。
それを具体的に語ってくれたのが、デイビッド・アーズマだ。まるでこのブログでの主張とピッタリなので、嬉しくなる。
Steve Kelley | Mariners need more of Sunday's Felix Hernandez | Seattle Times Newspaper

(原文)
"He was going right after guys," said closer David Aardsma, who picked up his sixth save with a scoreless ninth. "I think in his last couple of outings he was trying to pitch around guys a little bit more. Trying to throw stuff on the corners. Today you saw him go out there with the attitude of 'here it comes' and just throwing great stuff right by guys."
(粗訳)
「彼は打者をうまく打ちとっていたねぇ」と、9回を無得点に抑えて6つ目ののセーブを得たクローザー、デイビッド・アーズマはいう。
「僕が思うに、最近数試合の登板で彼はね、もっとストライクゾーンギリギリに投げよう、投げようとしていた。球種をコーナーに集めようとも試みていた。(でも)今日は、ほら、みんなが見たように「ヒア・イット・カムズ (打席に入る打者ごとにあわせて投げてやるから)誰でも、さぁ来い」って姿勢だったよね。打者ごとに素晴らしい球を投げ、ただただ討ち取っていく、そういう姿勢だったね。」



アーズマの話のポイントは、城島が捕手をつとめた連敗中のヘルナンデスの「配球の窮屈さからくる自滅ぶり」と、ロブ・ジョンソンが捕手をつとめた5月24日のヘルナンデスの「のびのびした柔軟な打者への対応ぶり」を対比することだ。
アーズマの指摘する「ヘルナンデスの最近数試合の窮屈な登板内容」とは、もちろん、4連勝した4月の登板ではなく「5月に入って以降、連敗続きだったコネ捕手城島とバッテリーを組んだ4ゲーム」を直接明確に指すことは言うまでもない。
ある意味、アーズマは城島を名指ししているのである。
→2009年のヘルナンデスの全登板と組んだ捕手の一覧
2009年5月24日、ヘルナンデスは無敗のパートナー、ロブ・ジョンソンを捕手に8回自責点1でQS達成、10奪三振でひさびさのデーゲームを勝利に導いた。



このアーズマの話の中には、通常の英和辞書にはない、いわゆる野球的イディオム(言い回し)がいくつもある。中でも特にpitch aroundという熟語の意味は正確につかまえなければ内容を把握することはできない。
またHere it comes.という文の意味は、全体の文意をふまえて意訳しないと、ただ「さぁ来い」「さぁ来た」だけでは意味が伝わらない。同じ文でアーズマの話した言葉の中に、by guys「打者ごとに」という言葉がある点を重視しないと正確にはならない。「連敗中のようにどんな打者が来てもコーナー狙いのピッチングを繰り返してギリギリのコースばかり狙って自滅するのではなく、日曜日は、打者ごとにあわせたピッチングをしていたのが良かったね」というアーズマの話たい意図をふまえないと意味が伝わらなくなる。

stuff
「球種」
アーズマだけでなく、この記事の文中には監督ワカマツへのインタビュー部分含め、頻繁に出てくる野球用語。

go right
「(打者を)うまく打ち取る」
“go right”の検索結果(358 件):英辞郎 on the Web:スペースアルク
文例:I challenge batters and go right at them.
僕はバッターに挑んで、うまく打ち取っている。

pitch around
「(四球も覚悟で)きわどいコースをついて投球する」
野球用の熟語のひとつ。とある翻訳サイトには「はずして投球する」と訳されているが、それだけでは正確な意味は全く把握できない。下記に挙げた英語から英語に訳すサイトでの説明で、本来の詳細な意味がわかると思う。全文を引用する。

pitch around - Wiktionary
http://en.wiktionary.org/wiki/pitch_around
(transitive, baseball) To intentionally throw pitches which are slightly out of the strike zone, hoping that the batter will swing wildly at a pitch, but assuming that you will walk him
(打者が投球に対し)むやみやたらと大振りしてくれることを期待し、ストライクゾーンから、ほんのわずかにはずれた配球を故意に行うこと。だが、打者を歩かせてしまうリスクを負う。




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