July 22, 2009

非常に難敵な翻訳をしていて、更新が滞った(苦笑)。
「城島問題」に関するシアトル・タイムズのラリー・ストーン氏によるワカマツ監督インタビューである。


最初にいくつかことわっておかなければならない。

まず、訳文だが(普段もそうしているわけだが)できるだけ直訳を心がけた。たとえばHe got three hits.を「3安打の『活躍』をした」とは訳さず、「3安打した」とだけ平易に訳すような方針を選んだ。文中、人が誰かを指すときの呼び名も、いつもなら「城島」とかにまとめてしまうのだが、今回は原文に登場するワカマツ氏、ストーン氏、それぞれの呼称に従ってある。
なんだそんなこと、と思うかもしれないが、そんな些細なことも積み重ねれば、読んだ印象はだいぶ違ってくる。読み比べてみて、味の違いを感じてもらえると幸いである。
この文章では原文を書いたラリー・ストーン氏が「あえて全文を掲載する」と言っているように、話題がダブったり、間をおいて反復されたりしている部分が何箇所もあって、多少読みづらい。逆にいえば、ライターが後で原文に手をいれて整理したり、修正したりしている形跡が少ない。
デリケートな話題なだけに「あえて原文に近いものを」というストーン氏の意図は間違ってないし、賛成する。
繰り返して言うが、そういうライターの意図があるにもかかわらず、訳をつけるにあたって、He got three hits.を「3安打の『活躍』をした」と訳す例のように、原文の表面に無い主観を訳文に過剰に加えるのはまったく賛成できかねる。最小限にとどめるべきだと思う。

また、例えば、以下の文章で監督ワカマツが語っている「うちのチームの方針は投手力と守備、特に『投手力』だ」などという部分は、実際には、毎日ゲームを見て、特に選手起用を見ていれば、とっくに誰でも理解できているはずの話である。
つまり、以下のインタビューの中身のかなりの部分は、既にチームとして方針が決まって実行されつつある話が散見されるのである。
これは、それくらい、監督ワカマツとZGMが7月に入って実行した何段階目かのチーム改革は、手順として、何の予告もなく静かに、かつ大胆に実行された、という意味になる。メディアに語る前、コネ捕手城島が気づく前に、たくさんのチーム方針の転換は実行されたのである。
そのため、まだシアトル・タイムズさえ文字にできていなかった。そういう話が、以下のインタビューではようやく言葉にされた。それだけだ。
既に実行しつつあることを、わざわざ喋るからには意図がある。それは新しいニュースの伝達や新方針の披露ではなく、「念押し」や「雑音の封じ込め」というような意味あいだろう。当然だ。

この文章ではright nowという言葉がやたらと出てくる。インタビューに多少タジタジになっているワカマツの姿がユーモラスである。せいいっぱい楽しんで読んでもらいたい。
Mariners Blog | Sunday lineups, and pre-game notes: The Rob Johnson-Kenji Johjima dynamic | Seattle Times Newspaper


With Rob Johnson starting for the third straight game, the question naturally arose about the division of playing time between Johnson and Kenji Johjima. Johjima, you might remember, started the first game of the series, with Garrett Olson pitching. He got three hits and threw out two runners, but hasn't played since. Wakamatsu made it clear he likes the way Johnson works with Felix Hernandez, Jarrod Washburn and today's starter, Erik Bedard.
Since this is such a hot topic right now, I thought I'd just run Wakamatsu's comments in their entirety:"

ロブ・ジョンソン3試合連続先発マスクをみて、必然的にジョンソンと城島健司のプレイタイムの割り振りはどうなる?という疑問がわき上がってきた。覚えているかもしれないが、城島はカード初戦のギャレット・オルソン先発のゲームでは先発した。3安打し、盗塁を2つ阻止したが、それ以降はプレーしてはいない。ワカマツは、ジョンソンのフェリックス・ヘルナンデス、ジャロッド・ウオッシュバーン、そして今日の先発エリック・ベダードの登板時の仕事ぶりに好感を持つと明言した。
現在進行形のホットな話題だし、ワカマツの全コメントを掲載してみようと思う。
ブログ注
この箇所について重要なこと、確認しておかなければならないことは、ライターのラリー・ストーンは別に「城島はあれだけ大活躍したのに、どうしてその後ゲームに出ないのだろう?」と、いわば「城島の肩を持った色彩で」インタビューに臨んでいるわけではない、ということ。MLB公式のライターでもあるラリー・ストーンはそんな偏ったことをするわけはないし、そんなことをするメリットは何もない。
次のブロックで監督ワカマツが「打撃は関係ない」と返答したことの「問い」にあたる部分が「3安打」なのであって、そこには「もっと城島を出せばいいのに」という思い入れ的な感情は存在しない。
だからこそ、訳文において「過剰な色彩」を加えることは不要だ。それに3安打がそれほど偉いなら、ロブ・ジョンソンが3本の二塁打を打ってチーム・レコードを作ったゲームだってあるし、直近のクリーブランド戦でも3出塁したゲームがある。比較にならない。1ゲームの出来でいちいち騒ぐことではない。


"I had a discussion with Joh, and we try to prioritize what's most important for this club. Getting hits is not the number-one thing. Winning ball games is, and having a belief system with the starting pitcher, and pitchers in general. Rob right now seems to have a strong relationship with the guys that he's catching. Joh's done a lot of things well. He's throwing the ball extremely well. He's raised his average.
「私は城島と話し合いの場を持った。我々はこのチームにとっての最重要事項を優先するよう努力している。ヒットを打つことは最優先事項ではない。試合に勝つこと、そして先発投手、さらには投手たち全体と、『信頼システム』を築くことが最優先だ。ロブは、目下のところ、彼がバッテリーを組んだ投手達と強い関係性を築いているようだ。城島も数多くのことをうまくやってくれている。スローイングは非常に素晴らしい。打率も上昇させている。」
ブログ注
「城島のセルフ・ジャッジ癖」がここでもピリオドを打たれた。
ここで監督ワカマツが「話し合いの場を持った」といっているのは、いつぞやの城島が談判に来たことを指している。この話し合いの後、城島は「もっと打って、もっと盗塁を刺せば、出場機会も増えるでしょう」などと、自分が監督でもないのにまったく的はずれなことを日本メディアに得意げに喋っている。
2009年7月12日、SPIのコラムニスト、アート・ティールは「城島を正捕手に戻すべきではない」「敏腕なワカマツはこれからも自分の方針を貫くべき」と主張するコラムを書いた。
それに対してワカマツは「シアトルにおける捕手の評価は、打撃が最優先事項ではない」と、直撃で返答しているわけだ。言い方を変えれば、「いくら城島がヒットを打とうが、それを理由に正捕手に戻すことはしないよ」と明言したということになる。
それはそうだ。例えば「もっとヒットを打ち、出場機会増加につながるようにアピールしたい」と発言するならともかく、アメリカのような社会では監督でもない立場で「もっとヒットを打てば、出場機会が増えるだろう」などと憶断する発言は、これもある種の「セルフ・ジャッジ」であり、メジャーのシステムで許されもしないし、歓迎もされない。
それは、審判が判定するべきストライク・ボールを、あたかもキャッチャーが自分で判定するような態度を見せるのと、全く、なんら変わらない。


"We're predicated right now around pitching and defense, No. 1 pitching. If there's a belief system Rob's doing a better job with that, we'll go with that. I'm not negating what Kenji can do. I guess as he starts to build a stronger relationship, getting back into it -- the injuries have been a strong factor with that, him missing time and Rob being able to build that relationship while he was down. I told Kenji, too, as he builds that relationship back -- he did it in spring training, he did it at the start of the year -- it can swing the other way. No one's chastizing anybody."
「我々はいま『投手力』と『守備』にチームの基礎を置いている。最も重要なのは『投手力』だ。もしロブが投手との『信頼システム』によってより良い仕事をしているなら、我々はそちらを選ぶ。
私はケンジの能力を否定しているわけではない。投手陣とより強い関係を築き始めるにつれて、彼も信頼を回復できるんじゃないかと思う。ーーそうなった強い要因は怪我だ。城島が試合から遠ざかり、その一方で、故障中にロブが関係を築くことができた。ーーケンジにも信頼システムを取り戻すよう命じてある。ーースプリング・トレーニングのときも、シーズン当初にも、できていたことだ。ーー別の方向に流れが変わる可能性はある。誰かが罰を与えているわけでも、誰かに罰を与えているわけでもない」
ブログ注
この部分の要点はつまり、「これからシアトルは『バベジGM時代の野球』を断固として葬り去りますよ」ということだ。見た目は最近のチームづくりの方針について、監督ワカマツが『投手力』と『守備』と明言しているわけだが、毎日のゲームでの選手起用を見ていれば、現地メディアも日本のファンもわかりそうなものだ。もちろん城島はバベジ時代のチョイスに基づく、セクソン同然の失敗した選択であり、やがて葬り去られる。当然のことだ。
トレード期限が迫っていることによって、トレード話をしたがるのは日本でもアメリカでも同じだが、例年通りのルーティーン、年寄りくさい噂話に明け暮れていては、目の前で起きていることすら見えない。ウオッシュバーンやベダードが煙たい城島オタさんの慌てぶりは、なんともみっともない。
ワカマツが言うように『最も重要なのは投手力』なのだから、意味のない主力投手の放出はまったくありえない。(本人が出たいというのなら話は別だ)くだらないトレードの妄想を抱くくらいなら、今のチーム方針の先を読む努力くらいはしないとダメだろう。そうでないと、自分がテストされているという大事なことすら気がつかないで漫然とプレーしていて正捕手の座から転げ落ちた城島のようになる。


I asked if building that "belief system" -- one of Wakamatsu's favorite phrases, if you haven't gathered that already -- was more difficult for Johjima because of the language issues.
私は、既に耳にしたことがあるかどうかわからないが、ワカマツのお気に入りのフレーズのひとつである『信頼システム』について、言葉の問題がある城島には難題なんじゃないかと質問してみた。
ブログ注
belief systemという言葉を、手垢にまみれた「信頼関係」という言葉で訳すかどうかで迷い、結局、『信頼システム』なんていう、日本語としてはギクシャクした言葉を「わざと」選んだ。
「たまに投手と晩メシを食う」だの「ベンチで稀に軽口をたたくことがある」だの「マージャンを誘った」だの、そういう野球と関係ない、とってつけたようなくだらないことで、「私は信頼関係回復に努めています」だの、言ってもらいたくないという理由からだ。
ワカマツがイメージする『信頼システム』は、ラリー・ストーンも思っているように、なんだかちょっとつかみづらい。だが、日本語で何も考えずに「信頼関係」と書いてしまったときに生じる、よくありがちな先入観が入り込むのは避けなければならない。
元になったのは、やはり、ロブ・ジョンソンの「ドルフィン」についてのインタビューだ。
あれは、時間がたつにつれて、ますます秀逸なインタビューだったと思うようになった。ウオッシュバーンとロブ・ジョンソンの間にある野球についての協力関係やコミュニケーションが、野球の現場での生々しさ、ダイナミックさの実例として、たいへんわかりやすい。ウオッシュバーンが自分の配球をなんとかリフレッシュして、メジャーで生き残りたいという必死さ、ロブ・ジョンソンの提供するアイデア、ワカマツの言う「信頼システム」の例というと、いつも、この「ドルフィン」開発にまつわるこのストーリーがイメージされてくる。

2009年7月6日、ロブ・ジョンソンが準完全試合を達成したウオッシュバーンの新しい魔球「ドルフィン」と、その開発にいたるコラボレーションについて大いに語った。

"I'd say language-wise, yeah. But I've also seen it with Joh. I've seen him build that relationiship and engage. He's had success with these guys in the past. He's caught guys, whether it's Batista, whether it's Felix, whether it's Bedard, these guys have had success with him. It's just as a manager and a guy overseeing this club, you try to pair up the timing of it. Right now, Rob seems to be catching those guys well."
「言語の話ね…、どうだろう。でも、私はジョーのこんなところも見てきている。投手陣との関係を築き、歯車もかみ合っていた。過去にはうまくやってこれていた。それがバティスタであれ、フェリックスであれ、ベダードであれね、彼らのボールを城島が受け、うまくいっていた。
ただ単に、監督、このチームの統括責任者としては、バッテリーを組ませるタイミングに努力している、ということだよ。今のところ、ロブのほうがうまくいっていると思う。」
ブログ注
I'd sayという表現は、相手の話をやんわりとはぐらかす時に使う。同意も否定もしたくないから、暗に「それはどうだろうね」くらいに思わせたいわけだ。
この後の記述全体がそうだが、アメリカという人種の多様な国、人権にうるさい国で、言語の問題を監督が真正面から語ることなど、できるわけがない。城島を正捕手から降ろした事実を、そういう部分でつつかれないためには、城島にはこれこれのいい部分もあると、無理にでも指摘してみせることも、人に読まれるインタビューでは言葉にしておかなければ、アメリカでは監督は務まらない。
それと、ワカマツがバティスタの名前をここで挙げている部分が問題だ。もちろんバティスタが先発投手だった時代を指すわけだが、当然ながら、監督ワカマツはその時代にはシアトルのスタッフではなく、詳細を知るわけがない。
だから「城島のこんなところも見てきた」という部分は、いわゆる「リップサービス」でしかない。インタビューしているラリー・ストーンも、もちろんそれくらいわかって聞いている。だからこそ、監督ワカマツの話の中からリップサービスを除いた部分を後で勘案して、最後に「ロブ・ジョンソンが実質正捕手の状況はこれからも続く」と推測しているのである。


(2)に続く。continue






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