July 24, 2009

バークのけなげな努力と、バルガスのプライドのかかった「キロス問題」などもそうだったのだが、だいぶ過去に遡って話を追いかけてきてもらわないと、話についてこれない。
ここでは城島やオルソンのピッチングの姿勢の「窮屈さ」の顛末をひとまずまとめておくので、たいへん恐縮な話だが、興味があれば順番に読んでいって頭に入れて理解してもらえるとありがたい。
アーズマの指摘する「5月初旬に連敗したヘルナンデスの『窮屈さ』」、ワカマツの叱責する「オルソンの窮屈さ」について、理解がさらに深まるのではないかと思うし、なにより、メジャーの投手たちが城島をキャッチャーにマウンドに上がって窮屈な思いをしたくないという精神的な部分を理解できる資料にもなるのではないかと思う。


第1の資料
アーズマの「サンデー・フェリックス」発言

これは城島の1回目のDLのおかげで4月末には地区首位に立ったシアトルが、5月に城島が先発に戻って逆V字の下降線を辿った頃の話。あやうく月間20敗しかかり、今でこそロブ・ジョンソンとのバッテリーでサイ・ヤング賞に向かってひた走る好調のフェリックス・ヘルナンデスでさえ、当時は城島とバッテリーを組まされ3連敗した(5月4日、9日、19日)。
その城島とのバッテリーに見切りをつける寸前のヘルナンデスが、ロブ・ジョンソンとバッテリーを組んだのは5月24日。すると、8回自責点1と、QSを達成しつつ、のびのびと投げて、あっさり勝利を手にした。
その同じゲームで最終回を締め、セーブを稼いだクローザーのデイビッド・アーズマが「5月中旬までの悪いときのヘルナンデス(つまり城島と組んだヘルナンデス)と、とても良くなったヘルナンデスの『違い』」についてインタビューに答えたのを、シアトル・タイムズのスティーブ・ケリーがまとめたのである。
原文の要点は「悪いときのヘルナンデスは『コーナーをつこう』『コーナーに球を集めよう』とばかりしていて、彼本来の良さをなくしていた」という感じの話だ。全文は元記事に訳をのせ、リンクも張ってある。全文をここで挙げるわけにもいかないので、詳細は原文をあたられたい。

"I think in his last couple of outings he was trying to pitch around guys a little bit more. Trying to throw stuff on the corners.(後略)
「僕が思うに、最近数試合の登板で彼はね、もっとストライクゾーンギリギリに投げよう、投げようとしていた。球種をコーナーに集めようとも試みていた。」
Steve Kelley | Mariners need more of Sunday's Felix Hernandez | Seattle Times Newspaper

2009年5月24日、デイビッド・アーズマが「ヘルナンデスがロブ・ジョンソンと組むゲームと、城島と組むゲームの大きな違い」を初めて証言した。



第2の資料
オルソンの神経質さについて指摘した当ブログの記事

2009年6月11日、オルソンの神経質なピッチングを通じて、城島の「コーナーをつきたがる配球の欠陥」を考える。

細部は上の元記事を読んでもらいたい。この記事で指摘した要点は「オルソンという投手は『ものすごくコーナーをつきたがる投手』なのだ」ということ。
そして、よく知られているように、オルソンの神経質さに輪をかけたような城島のリードは、特にランナーを出した直後はそうだが、コーナーにボールを集めたがるわけで、この似たもの同士のバッテリーが組まれる無意味さも、指摘したかったことのひとつだ。出来損ないのバッテリーのダメさ加減を考える上で、「神経質さ」は重要なポイントのひとつなのだ。

オルソンは6月11日のゲームで打率2割しかない8番打者にフォアボールを与えて自滅したわけだが、この打席の配球はまるで稀代のホームランバッターにするような、コーナーいっぱいのみを狙う配球だった。つまり、打率2割の8番打者への配球にしては狙いが窮屈すぎ、こういう窮屈さなが、かえって四球を増やしてしまうことを、この第2の資料では指摘した。
アーズマが「資料1」で指摘している「窮屈なピッチング」の典型的パターンと全く同じであり、まさに城島が先発マスクをかぶるゲームの大きな欠陥のひとつでもある。

資料2の元記事でも指摘したことを、あえてあらためて同じ指摘をしておくと、「コーナーをついているから間違ってない」というのは、プロでは必ずしも正しくない。ピッチャーの仕事は「アウトをとること」であり、「コーナーをつくかどうか」は方法論であって、それ自身は目的ではない。「ド真ん中をいきなり突いて三振」だって、別になんの問題もない。「コーナーをつかないとアウトがとれない」と、あまりにも窮屈に思い込んでいて、かえって四球を連発したり、相手打者に狙い球を絞られたりするのでは、先発バッテリーとしては長いイニングをこなせない。


第3の資料
7月16日のオルソンのピッチングについてのワカマツの指摘


ワカマツ、という人は、見た目、たいへん柔和に見える。だが、バルガスの「キロス問題」でもそうだったのだが、投手の失敗については「これこれがよくなかった」と容赦ない明快な指摘と叱責をする。そして、過去に自分が指摘したポイントについては、けして忘れないで、何度でも指摘する。だが、きつい叱責をするものの、チャンスをすぐに奪うような浅はかな真似はしない。かといって、何度か同じ失敗を繰り返して改善がみられないとわかると、容赦なくポジションをはずされる。

オールスター直後の7月16日のゲームでのオルソンのピッチングの失敗について、監督ワカマツは2つの指摘をしている。

1つ目の指摘は、まず「テンポの無さ」。
7月16日の試合終了直後にアップしたこのブログの記事で「テンポの無さ」について触れておいたが、数時間して出てきた監督ワカマツのインタビューでも全く同じ感想が述べられていて、「やはりな。そりゃそうだ」と思ったのを覚えている。この「テンポの無さを指摘するワカマツ」については、公式サイト、Mariners Insiderで、ほぼ同じ内容のインタビュー記事がある。
2009年7月16日、城島は試合序盤、投手オルソン、ジャクバスカスがモーションに入ってもミットを構えず、ゲームのリズムを壊した。(サイ・ヤング投手クリフ・リーがなぜショパックを指名捕手にしたか 解説つき)
Mariners Insider | The News Tribune | Tacoma, WA

2つ目の指摘は、「コーナーをつこうとしすぎることの無意味さ」だ。
この点が資料1と資料2で言う、「ピッチングの窮屈さ」に通じるわけだ。これついてのワカマツ発言は、どういうものか公式サイトの記事は、紙幅の制約のためか、触れておらず、Mariners Insiderだけが掲載している。奇しくもアーズマの「サンデー・フェリックス発言」と同じような内容を、ワカマツがオルソンのピッチングについて非常に強く指摘しているのが面白い。

もちろん「投球テンポ」、「コーナーをつくピッチング」、そのいずれも投手だけの所業ではなく、投手と捕手との共同作業であるのは言うまでもない。監督ワカマツのオルソンに対する2つの苛立ちは、暗に(というか、結果的に正捕手をはずされたことからも、明らかに)捕手城島にも向けられていた、と当ブログでは考える。

"I think we've talked all year long the importance of the starting pitcher establishing a tempo," Wakamatsu said. "I think it was two-fold. No.1, I didn't think Olson came out and had much of a feel. I thought he pitched a little defensively and his tempo was poor."
「先発投手が試合のテンポを確立することの大事さは、このシーズン中、ずっと話してきたことだ。」とワカマツ。「二つあると思う。まず第一には、オルソンは序盤からして、思い切りのいい雰囲気があるようには見えなかった。ピッチングが守りに入ってしまっていて、テンポが酷かった。」
ブログ注:come out and do 思い切って〜する

Wakamatsu said Olson was being defensive and trying to be too perfect.
"That's where we talk about sometimes guys want to be too perfect," Wakamatsu said. "We talked about it after the first inning. I said you don't have to be too perfect out there. It's not for lack of care or anything else. It's probably caring too much. I think he put a lot of emphasis on him being outstanding today, instead of going out and doing like he does out of the bullpen. At least he's done such a tremendous job. I saw a little different body language and maybe trying to carry a club out there the first two innings."

オルソンは守りに入って、パーフェクトに投げようとしすぎていたとワカマツは言う。
「時としてあまりにパーフェクトにピッチングしようとしすぎる、そんな会話をしたんだ。」とワカマツ。「話をしたのは、初回が終ったあと。あまりにもパーフェクトに投げようとしなくていいよ、とね。注意が足りないとか、そういうんじゃなく、たぶん色々なことを気にしすぎなんだ。ブルペン投手当時のようにマウンドに上がって投げるかわりに、自分が傑出した結果を残すことに重きを置きすぎたと思う。少なくともこれまでは素晴らしい仕事をしてきてくれた。最初の2イニングなんか、仕草からしてちょっと少し違って見えた。一人でチームを支えるつもりになっていたのかもしれない。」

(中略)

"It seems to be like I was trying to make good pitches out there instead of letting it just go through the zone like I have been doing most of the season," Olson said.
「シーズンの大半そうしてきたように、ゾーンにガンガン行って切り抜けていけばいいだけなのに、そうするかわりに、いい球を投げよう投げようと思ってしまっていたかもしれない」とオルソンは言った。


第4の資料
7月21日のオルソンについてのワカマツの指摘と
オルソンのマイナー落ち


7月21日の登板の失敗で、オルソンの先発投手としての仕事を失うことになった。
下記の記事で、ワカマツは「前にも言ったことだが」と話しているが、この「前にも話したことだが」「シーズン中何度も話したことだが」というフレーズを彼ワカマツが使うときには、バルガスの場合がそうだったように、ある意味で、往々にして「堪忍袋」は完全にブチ切れているのである。
彼は常に「話し合って改善が必要だとなったら、改善すべき義務が生じる」「何度かチャンスを与えられて改善できないプレーヤーには、チャンスを剥奪されてもしかたない」、そんな行動原則がある。
Mariners Blog | Looks like the Mariners need a fifth AND fourth starter | Seattle Times Newspaper

"It's what we talked about before, similar to his last start, a lot of it is not so much the stuff, but not being aggressive and attacking the hitters, and trying to be too perfect. I thought the walks, falling behind and having to give in, cost him.
「前にも話したことだし、この前の登板とそっくりだ。球数が多すぎる。積極性がなく、打者を攻めきれてない。パーフェクトに投げようとしすぎている。四球はね、遅れをとり、相手に屈服せざるをえなくなる。彼にとっては高くつくんだよ。」

まさにチャンスを貰っていながら気がつかないことは、高くつく。
思えばキロスにも名を上げてメジャーに残れるチャンスがあった。ベタンコートにもシアトルに残れるチャンスがあった。城島にも、オルソンにも、あった。
だが、キロスはDFA。ベタンコートはトレード。城島は正捕手ではなくなり、オルソンはマイナーに送られる。チャンスを与えられているが、永遠には与えられないということを忘れたプレーヤーたちの顛末である。






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