July 28, 2009

いま、チームの誰もが不安を抱えている。
不安になる、とは、不安を持たないことではない。自分の抱えた不安の大きさに気づいてしまうこと、そして、不安に支配されてしまうことだ。

生きていく、ということは、もともと不安との永遠の戦いだ。不安がなくなる、などということは、おそらくない。

だからこそ、マウンドに上がらなくては。

僕は明日、父の子として生まれ、ひとりの女の伴侶となり、子の親となり、そして、それら全部をひっくるめて抱えこんだひとりの男としてマウンドに上がる、釣り好きの男を応援しようと思っている。
 
ルアー


Mariners Blog | Washburn: "I wouldn't be disappointed to stay a Seattle Mariner" | Seattle Times Newspaper

この記事によれば、ウオッシュバーンの田舎に住む父が息子に電話してきたようだ。父は息子に、Did you get traded to the Brewers? ブリューワーズにトレードされたのかい? と、尋ねた。

息子はこう答えた。
"Dad, don't you think I would have called you if something had happened,' and followed up with, 'Don't you remember what happened last year? All the times I supposedly got traded and nothing happened.' You get a lot of calls and text messages from people wondering what's going on and what do I hear. I tell them all the same tthing...you hear as much as I do and I will let you know if something happens."
「父さん・・。もし何かあったら僕から父さんに電話しただろうって、思わなかったのかい。去年あったことを覚えてる?ずっと僕はトレードされるのかなと思ってたけど、何も起きなかった。父さんはたくさん電話をくれたし、たくさんの人から何が起こってるのか、そして、僕が何か聞いていないか、メールで聞かれたりした。僕が言うことはいつも同じさ・・。父さんが聞いていることと同じことしか、僕は知らないんだ。もし何かあったら、僕が父さんに知らせるから。」


父との会話を披露したあと、男はこんな話をした。
"It was different last year because we were definitely out of contention. This year, I don't think the season is over with here. We had a tough weekend but it's not over. I wouldn't be disappointed to stay a Seattle Mariner. I would be happy to be a part of this group of guys, forget about last weekend and return to playing to good baseball like we did before those three games."
「チームが首位争いから完全に脱落してしまっていた去年とは違うんだ。今年、僕はチームにいて、シーズンが終わってしまったとは思ってない。僕らにはつらい週末だったけどね。僕はチームに残ることになったとしても、それでガッカリするようなことはないんだ。僕はほかのやつらと一緒にこのチームの一員として幸せにやってける。先週のことは忘れよう。そして、この3ゲームの前に僕らがしていたような、いいベースボールに戻るんだ。」


このインタビューで彼は、シーズン中の野球選手としてはとても珍しく、家族のことをかなり喋っている。(本当は元記事にはこの部分が先に記述されているが、順番など、どうでもいい)
"I don't think the kids really understand what's going on, but my wife does. She is taking it pretty good. She made me cook fish today. She said I might not be around to cook it later, and fish is my specialty. But other than that, she has been around a long time, too, so she knows the ups and downs and all the rumors and that stuff.
「子供たちは、何が起こっているのか、本当にはわかってないと思う。でも、妻はわかってくれてる。彼女はほんとうによくやってくれている。彼女は僕に今日、魚料理を作らせた。彼女が言うには、『魚を後で料理することになって、あなたがいないと困るから』なんて言うんだ。魚料理は僕の専門だからね。でも魚を料理しなくちゃってことだけじゃなく、彼女は長いこと一緒にいるからということもあって、気持ちの浮き沈みや、トレードの噂とかなんとか、全てをわかって接してくれてるんだ。」




魚を料理しながら、魚釣りの好きな男は彼の奥さんにトレードについて何か気持ちを打ち明けたかもしれないし、何も言わず料理したのかもしれない。それはわからない。
でも、たぶん、男は、彼のことだからおいしい魚料理を作ったことだろうし、彼と奥さんは「おいしいね、これ」とか、いつもどおりの言葉を発したのではないか、と思う。夫婦って、そういうものだ。



今日、自分の肩にかかった責任の重さが、わかっていながら負けた自分の若さを、ヘルナンデスは誰よりも早く大人になりたい子供のように悔しがって眠れないかもしれない。
今日打ったいくつかのヒットの数より、パスボールしてしまったことの重さを噛み締めながら、ロブ・ジョンソンはボールの軌道を何度も思い出しては、ミットを動かすように左手を動かしているかもしれない。

今日、グティエレスは、壁が気になって捕球できなかったトリプルのことを、「もしかしたら、自分は壁を怖くなっているんじゃないか」と不安に思っているかもしれない。
今日ゲームからはずれていたラッセル・ブラニアンは、「もしかしたら、これでまた、このまま、ゲームにときどきしか出られない『昔の自分』に逆戻りしてしまうのではないか」と、不安にかられているかもしれない。

最近チームに加入した選手たちは、そのブラニアンを見て、「自分たちがゲームに出られるのがあと何試合あるのだろう」と、不安に思っているかもしれない。
投手たちは、一番頼りになるはずのヘルナンデスが打ちこまれてしまったのを見て、「自分もああなるかもしれない」と、不安に思ったかもしれない。


でも、そんな中で、
できるだけ何事もないような、知らん顔をわざとして明日のマウンドに立とうとしているウオッシュバーンを、
僕は応援しないわけにはいかない。

なぜなら、最近のウオッシュバーンの発言を読んでいると、彼が自分のプライバシーにまで踏み込んでいろいろと発言をしているのは「頑張ろう」「まだ終わってない」と、周囲を励まそうとしていることが、よくわかるからだ。

スウィニー。グリフィー。チームにベテランは何人もいる。

だが、ウオッシュバーンの言葉を借りれば、as for right now、いまのいま、ベテランとしてチームを背に支えようとしているのは、父の息子であり、いまは子供の父でもある、ベテラン投手、ウオッシュバーンだと真剣に思っている。

周囲とは、自分の仕事場である、チームの同僚。
経験の浅い若い選手たち。投手陣。
父。妻。そして子供。
自分。
すべて。

頑張れ。そして勝て。
ウオッシュバーン。
父として、子として、夫として。あらゆるものに勝て。

イルカ






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