スカウティング(PECOTA、SI.com、独自予測)

2014年7月10日、田中将投手の使う球種の大きな変化。「ストレートとスプリッター中心だった4月・5月」と、「変化球中心に変わった7月」で、実際のデータを検証してみる。
2014年7月8日、ニック・スウィッシャーが試合後 「追い込んで、変化球でしとめる」と田中将の投球パターンを語った、クリーブランドの研究ぶり。さらに、「なぜMLBでは7月までスカウティングが厳しくないのか」について。
2013年8月1日、タンパベイ投手陣の共通した持ち球である「チェンジアップ」に狙いを絞って、ジェレミー・ヘリクソンを打ち崩したアリゾナ。粘りこめばストライク勝負してくれるタンパベイ投手陣。
2013年7月5日、怖くないボルチモア打線 スカウティング教科書(3)クリス・デービスは追い込んだら、とりあえず「プレート上に落ちるタテの変化球」を投げろ
2013年7月5日、怖くないボルチモア打線 スカウティング教科書(2)アダム・ジョーンズには「追い込んでからアウトローの変化球を投げろ」 アダム・ジョーンズの欠点をカバーするボルチモア「オセロ打線」の巧妙なカモフラージュ
2013年7月5日、怖くないボルチモア打線 スカウティング教科書(1)マニー・マチャドには「アウトローを投げるな」
2013年1月3日、最もホームランの出やすいボールパークから、最もホームランの出にくいボールパークのひとつに移籍したジョシュ・ハミルトンの今後。
2012年10月6日、2012オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。
2012年9月17日 アウトコースのスライダーで空振り三振するのがわかりきっているBJアップトンに、わざわざ真ん中の球を投げて3安打させるボストンの「甘さ」
2012年6月8日、2死ランナー無し、カウント1-2から1球の判定で崩れたヨハン・サンタナにとっての「インコース勝負」。
2011年10月4日、ALDS Game 4、テキサスのALCS進出を決めたエイドリアン・ベルトレの「ストレート狙い」。
2011年10月3日、ALDS Game 3、7回になってようやくデビッド・プライスの2シーム攻略に成功するテキサスのゲーム運びの生温さ。
2011年10月2日、ALDS Game 2 ストレートで押すピッチャーと、ストレートを待つバッターと。ポストシーズン、ストレート勝負のゆくえ。
2011年6月3日、打者のスカウティングを全く頭に入れてなさそうに見えるタンパベイのJames Shields。
2010年10月28日、得点圏のピンチで、いつもインコースから入って大失敗するダレン・オリバーとマット・トレーナーのコンビ。ALCS Game 1とまったく同じ継投ミスをしでかしたロン・ワシントン。
2010年10月24日、メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート(11) なぜライアン・ハワードは9回裏フルカウントでスイングできなかったのか? フィリーズ打線に対する"Fastball Count"スカウティング。
2010年10月3日、格差社会そのもののセ・リーグの球団格差と、まやかしの打力を生み出す、遅れた日本のスカウティング・システム。
2009年8月2日、今シーズンの城島の打撃スタッツの中身は実は「キャリア最低」であることが判明、実際にはロブ・ジョンソンにとっくに追い抜かれていた。(PECOTAによる2009城島の予測つき)
2009年7月8日、9回逆転負けしたこのゲーム、8回のチャンスで、前の打者が敬遠され打席に入った城島が三振した事実の「重さ」を考える。
2009年6月29日、コネ捕手城島の「お笑いバッティングフォーム」に、近日到来する「打率2割の惨状」を予測する。
2009年4月5日、左打者有利のセーフコにもかかわらず、シアトルは開幕ロスターに超鈍足の右打者6人を並べた。
2009年4月、PECOTAは城島の2009年の価値をわずか140万ドルと算出した。
2009年4月6日付、SI.comは2009スカウティングレポートで「負け続ければトレード期限に城島はじめ不良債権全員クビにすべき」と発表した。
2008年9月14日、9回裏エンゼルスのロドリゲスは2日前のスカウティングどおりに三塁打を放った。
2008年3月31日、SI.comは2008スカウティングレポートで「城島をトレードすべき」と発表していた。(3)
2008年3月31日、SI.comは2008スカウティングレポートで「城島をトレードすべき」と発表していた。(2)
2008年3月31日、SI.comは2008スカウティングレポートで「城島をトレードすべき」と発表していた。(1)

July 11, 2014

7月のクリーブランド戦で田中将大投手が使った球種について、春先の登板ゲームの球種と比較しつつ、少しデータを追加しておきたい。以下のデータにおいて、球種の略号は以下のとおり。
FA(Fastball)
SI(Sinker)
SL(Slider)
CU(Curveball)
FC(Cutter)
FS(Splitter)
CH(Changeup)
(ちなみに球種の分類結果は、あまり厳密にとらえないでもらいたい。例えば、2シームという球種はよく使われる球種のひとつだが、これをどこに分類するかはアメリカのMLB関連サイトでも異なっていることがあるし、また、日米で分類が異なる球種などもある)

「ストレートとスプリッター中心の配球」で始まった
田中将大の2014シーズン


春先に田中投手の使った球種は、ストレートとスプリッターを中心の構成だった
そのことを示す例として以下に、ア・リーグ、ナ・リーグ各1試合ずつ、ビジター2試合のデータを挙げてみた。この2試合は、まったく同じ試合のデータかと勘違いしかねないほど、投球内容が「びっくりするほど似ている」。そのことは、データからすぐにわかってもらえると思う。

言い方を変えれば、2本塁打を浴びて、ちょっとファンをヒヤヒヤさせたゲームだろうと、完璧といえる素晴らしい内容で完封勝ちしたゲームだろうと、実は、投球内容そのものは「ほとんど同じ」であることも、あわせてわかっていただけると幸いだ。
よくいわれることだが、勝った負けたと短絡的に大騒ぎするファンはともかく、プレーヤーにしてみると、試合結果が勝ちか負けかは、単純に時の運であることがいかに多いかが、本当によくわかるデータでもあるのだ。

ここで留意しておかなくてはならないのは、ボストンにしても、メッツにしてもそうだが、対戦相手が「スプリッターを最も多くスイングしてきている」ことだ。(もうちょっと詳しく書くと、田中投手の持ち球がまだわからない開幕直後4月のボストン打線はあらゆる球種について40%以上のレートでスイングしてきているが、5月のメッツ打線になると、はやくもストレートとスプリッターにある程度照準を絞ってスイングする傾向が見えはじめている)

「田中将がスプリッターを多投する投手であること」は、当然ながら、開幕前から情報として誰の耳にも入っている。ただ、情報としていくら知ってはいても、打席に入って実際に打つのは勝手が違うわけで、最初はバットが空を切り続けるわけだ。

4月22日 ボストン戦
7回1/3 被安打7 四死球なし 自責点2 勝ち

FA 36球(24ストライク/66.7%)17スイング(47.2%)
FS 23球(16ストライク/69.6%)15スイング(65.2%
SL 22球(16ストライク/72.7%)10スイング(45.5%)
SI 14球(12ストライク/85.7%)6スイング(42.9%)
出典:BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool

5月14日 メッツ戦
9回完封勝ち 被安打4 四死球なし 自責点ゼロ

FA 37球(24ストライク/64.9%)17スイング(45.9%)
FS 28球(16ストライク/57.1%)15スイング(53.6%
SL 20球(15ストライク/75.0%)7スイング(35.0%)
SI 14球(7ストライク/50.0%)5スイング(35.7%)
出典:BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool



ストレートが影をひそめ
「スプリッターなど変化球中心」になった7月


最初に挙げた2試合のデータと比べてもらうと、「7月のクリーブランド戦で田中投手の投げる球種が大きく変わっている」ことは、一目瞭然だ。
1)ストレートが大きく減少
2)カットボール、シンカーが一気に増加

これに対し、打つ側はどうかというと、クリーブランドの打者が、田中投手が投げる割合の高いスプリッター、カットボール、シンカーの3つの球種を、特にスイングしてきていたことが、以下のデータの赤色部分からハッキリわかる。

ここでいうシンカーとは、平均速度92.4マイル (最高95.6マイル)の球のことで、いわゆる「高速シンカー」にあたり、またカットボールが平均89.9マイル (最高91.5マイル)、スプリッターが87.4マイル(最高90.3マイル)だから、要するに、クリーブランド打線は「田中投手の90マイル前後の変化球を目の色を変えてスイングしてきた」のであり、平均94マイルのスピードボールも、スピードを抑えた平均83マイルのスライダーも、田中投手自身がもはや多投しなくなっているし、また、クリーブランド打線も狙ってスイングしてはいないのである。

7月8日 クリーブランド戦
6回2/3 被安打10 四死球1 自責点5

FS 27球(17ストライク/63.0%)16スイング(59.3%
FC 20球(14ストライク/70.0%)12スイング(60.0%
SI 19球(14ストライク/73.7%)13スイング(68.4%
SL 15球(13ストライク/86.7%)4スイング(26.7%)
FA 12球(3ストライク/25.0%)3スイング(25.0%)

出典:BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool


クリーブランド打線が試合開始時点では田中投手のストレートやスライダーをほとんど振ってこないのは、「投手があまり投げない球種だから、打者がスイングする率が低い」のではない。「打者側で、投手があまり投げてこないのが最初からわかっているから、その球種を捨ててかかっている」のである。
例えば、4月・5月の2ゲームのスイング率で見ると、春先は「田中投手が投げる割合が4番目に高い球種」でも「40%前後」もの割合でスイングしてくれていた。つまり、漫然とスイングしてくれる春先ならではの現象として、各チームのバッターは田中投手の使うさまざまな球種に、それこそ「まんべんなく手を出してくれていた」のだ。

だが、7月のクリーブランド戦では違う。
「4番目に高い球種であるスライダー」について、わずか26.7%しかスイングしてくれなくなっている。つまり、「田中投手に対する狙いが、ある程度しぼられてきている」のである。

これでは、投手に「逃げ場がない」。

たとえ、たまに遊びを増やす意味で球速の遅いカーブやスライダーを投げていたとしても、打者はあまり反応してくれないし、そもそも「90マイル前後の変化球を狙う」というターゲットを変更して、ブレてはくれない。

こうして90マイル前後のスプリッターを打ちこまれた後の田中投手は、次にスライダーを置きにいき、再びホームランを浴びた。明らかにこれは打者に「逃げ先を先読みされて、追い打ちを食らっている」のである。


ストレートを痛打された痛い経験のせいなのかどうなのか、詳しいことまではわからないが、田中投手(あるいはヤンキースのバッテリーコーチ、あるいは、正捕手ブライアン・マッキャン)の側が、田中投手の球種からストレートを引っ込めた理由は何なのだろう。
何度か書いてきたように、例えば田中投手にはチェンジアップがない。いうまでもなく、チェンジアップやカーブ、あるいは、キレのある2シームといった、4シーム以外の「何か」を持たない投手が、「ストレートを引っ込める」ということは、MLBの場合、打者に狙いをさらに絞られることを意味するほかない。

「打たれたから、引っ込めました」、
それだけが理由では困るのである。

例えば、引退したばかりのマリアーノ・リベラにカットボールがあり、大学当時は速球派だったジェイソン・バルガスが肩を壊してチェンジアップを覚え、サイ・ヤング賞投手クリフ・リーがカーブを持ち球のひとつにし、ブライアン・マッカーシーがオークランドで2シームを修正されて飛躍し、デビュー当時4シームばかり投げたがっていたフェリックス・ヘルナンデスがそのストレートを打たれまくって高速シンカーを決め球のひとつに加えたように、それぞれ持ち球に変化を加えるのには、先発ピッチャーとしてMLBで長くやっていくための方策として、やはり大きな意味があるのである。

damejima at 08:27

July 09, 2014

試合をひっくり返した2ランを打ったのは、ヤンキースから鳴り物入りでクリーブランドに移ったのはいいが、打率1割台と、打撃絶不調に泣くニック・スウィッシャーだった(笑)
試合後に、「(田中将大とは)初対戦だし、ビデオで研究したら、追い込んでから変化球でしとめるのが好きみたいね」とコメントしたと、日本のメディアの記事にある。


この試合中にツイートしたことをあらためて振り返ってみる。

まず、以下の3つのツイートだが、これらはすべて「クリーブランドの逆転が実現する前のツイート」だ。明らかに、クリーブランド打線は何かを執拗に狙ってきていた

そして、その「何か」とは、主に「田中将大のスプリット」だったと思う。

ゲームが終わってだいぶ経ってから考えると、クリーブランドが「田中将大がスプリットを投げるときのクセ」を完全に見抜いていたとまで断言できかどうかは、いまのところ保留しておくにしても、少なくとも正直者のニック・スウィッシャーが手の内を明かしてくれたように、クリーブランド打線は「田中将大がスプリットを投げる典型的なカウントのパターン」は把握できていた、とみるべきだろう。
でなければ、これまであれだけMLBの打者をキリキリ舞いさせてきたスプリット(これは彼の生命線でもある変化球だ)に限ってフルスイングしてくるようなマネができるとも思えない。









「クリーブランド打線は、田中のスプリットを狙い打ちにきている」という「予感」は、その後「確信」に変わることになった。






その「仕上げ」にあたる「事件」が、マイケル・ブラントリーに「アウトコース低めのスプリット」を狙い打たれたタイムリー・ツーベースだった。

こうなると、もう間違いない。「アウトコース低めのスプリット」をレフト線にタイムリーの長打を打たれる、なんてことは、この球が先発投手としての生命線のひとつである田中将大にとっては、間違いなく「事件」だ。



あとは、スプリットに対する自信が揺らいでしまい、スライダーで逃げようしたところを、チゼンホールにシングルヒットされ、同じくスライダーをニック・スウィッシャーにスタンドに放り込まれることになる。
これでスプリットを失い、スライダーも打たれた田中は、茫然自失状態になってしまい、自分の投げるべき球、投げるべきコースを見失ったまま、ストレートをど真ん中に置きにいってしまい、マイケル・ブラントリーに追い打ちのホームランを浴びることになった。




まさに、このゲームこそ、田中将大が「MLBで長くやっていくとは、どういうことなのか」を考えるべきゲームになったと思う。







「7月になるまでスカウティングというものがあまり活用されない理由」は、ハッキリしたことまではわからないが、MLBでポストシーズンに出られそうなチームと、そうでないチームが、ハッキリ色分けされるのが、7月という季節なのだということがあるのは、おそらく間違いないと思う。

この季節、首位争いをしていて、秋のポストシーズンに高い確率で出られそうなチームは、他から選手をさらに買い集める、つまり、BUYの側に立つ。
そして、既に下位に沈み、ポストシーズン進出の望みを断たれているチームは、チーム解体に走り、選手を売る、つまり、SELLの側に立つ。
こうした「BUY or SELL」の図式がハッキリする、つまり、自分のチームがポストシーズンに向けてカネを使う意味があるかどうか、まだ決まらない前に、MLB球団が大金を払ってまでして外部の分析専門会社からスカウティング、つまり、今シーズンの分析データを買ったりしないだろう、というのが、ブログ主の「読み」である。(もちろん、今シーズンのデータを分析するのに一定の時間がかかるということもあるし、また、スカウティング会社がデータを夏に販売するという記事をどこかで読んだ記憶もある)

それは、7月になる前の打者の行き当たりばったりのバッティングぶりからして、「MLBでは7月になるまでは、それほどスカウティングがはっきりと活用されてはいない」と感じる理由のひとつでもある。

damejima at 19:35

August 02, 2013

イチローが7月29日タンパベイ戦で打った4安打に関連して、投手力によって首位争いに浮上したタンパベイでは、マイナーであるDurham Bullsで集中的に育て上げてきたピッチャーたちが「共通して、ストレートとチェンジアップを持ち球にしている」こと、そして「配球面でも、ストレートとチェンジアップ(またはカーブ)による緩急という、共通した特徴をもっている」ことを書いた。
Damejima's HARDBALL:2013年7月29日、タンパベイとヤンキースのマイナーの差。イチローが投手の宝庫タンパベイ・レイズから打った4安打。


トロピカーナで行われた7月31日のゲームで、アリゾナが、そのDurham Bulls育ちのジェレミー・ヘリクソン先発のタンパベイを、7-0という一方的スコアであっさり退治してみせたので、そのゲームの中身をちょっと確かめておきたくなった。
Arizona Diamondbacks at Tampa Bay Rays - July 31, 2013 | MLB.com Classic

以下に、このゲームで登板したタンパベイ投手のうち、Durham Bullsで育て上げられてきた生え抜き投手(または他チームでドラフトされたが、タンパベイでメジャーデビューした投手)がアリゾナに打たれたヒットの球種を箇条書きにしてみた。
投手:ジェレミー・ヘリクソン
チェンジアップ(二塁打)
カーブ
カットボール(タイムリー)
チェンジアップ(2ランHR)
チェンジアップ
4シーム
チェンジアップ

投手:アレックス・トーレス
チェンジアップ

投手:ジェイク・マギー
4シーム(タイムリー)


ヘリクソンが「チェンジアップ」を打たれた2本の長打から生まれた序盤の失点が、このゲームの流れを決定づけているのが、なかなか面白い。(ジェイク・マギーは4シームで押すタイプ)
イチローは「チェンジアップをカットしながら粘り、最終的にタンパベイ投手陣が低めの4シームに頼るのを待って、4安打した」わけだが、アリゾナ打線はちょっと方針が違っていて、タンパベイ投手の特徴である「チェンジアップ」に焦点を絞って(特にジェレミー・ヘリクソンを)打ち崩しているわけだ。

2013年7月31日 ARI vs TB ロス二塁打 投手ヘリクソン1回表
プラド 二塁打
投手ヘリクソン
球種:チェンジアップ


2013年7月31日 ARI vs TB チャベス2ラン 投手ヘリクソン3回表
チャベス 2ランHR
投手:ヘリクソン
球種:チェンジアップ


それにしても、興味深いのは、ヘリクソンがバッターに粘られても、粘られても、「徹底してストライクゾーン内で勝負しようとしていて、明らかなボール球を投げていないこと」だ。
これだけ様々な球種を、あらゆるカウントでストライクゾーンに投げられるできる能力は、タンパベイの誇る投手陣に共通する「コントロールの良さ」「基本性能の高さ」を示しているわけだが、これは同時に、彼らのある種の「融通の無さ」と、「ある種の弱点」を示してもいる。

イチローの4安打の記事でも、こんなことを書いた。
ヤンキースのブルペン投手は「やたらとボール球のスライダーを振らせたがる」わけだが、どうやらタンパベイのピッチャーは「あくまでストライクを積極的にとりにいくピッチング」が信条のようだ。


まぁ、これはあくまで想像でしかないが、ロジカルなデータ分析野球の大好きなタンパベイ監督ジョー・マドンとしては、ピッチャーの出す四球に代表されるような、「無意味なランナーを出して、自らピンチを招く行為」がとことん許せないのではないか、と思うのだ。
だからこそ、タンパベイでは、自軍のバッターには「たとえ低打率になっても構わないから、長打と四球を推奨するようなOPS的バッティング」を強要するのだろうし(その結果、貧打に陥っているわけだ)、逆に自軍の育てる投手陣に対しては「シングルヒットは構わない。だが、ホームランと四球だけは、なにがなんでも絶対に阻止しろ」というような「教育」を、マイナーで若い投手たちに徹底して教え込んでいるのではないか、と思うのだ。


だからこそ、アリゾナ戦もそうだが、対戦するバッターにしてみると、ある意味で「タンパベイ投手との対戦は楽だ」、といえる面が出てくる。
なぜって、ジョー・マドンの発明したロボットともいえるような「どこを切っても金太郎的な共通性」をもつ若いタンパベイ投手陣は、どんなカウントであっても、彼らがマイナーで鍛え上げられたコントロールの良さも手伝って、「打者に対して絶対に逃げ腰にならず、必ずストライクゾーン内で勝負してくれる」からだ。
これは、(能力のないバッターでは凡退の山を築いてしまうだろうが)才能あるバッターにしてみれば、ありがたいことだ。苦手な球種、打てそうになるコースをカットする技術さえあれば、「タンパベイの投手との対戦では、粘りこみさえすれば、ピッチャーはストライクを投げてくれるので、安心してバットを出せる」という面があるからだ。


野球という「駆け引きのスポーツ」では、投手はコントロールが良ければそれでいい、とか、ストライクゾーンで勝負していればそれで万能とか、いえるわけではない。いくらタンパベイにいい投手が揃っていても、対応策は必ずある。

damejima at 01:32

July 06, 2013

7月5日のボルチモア戦でイヴァン・ノバがみせてくれたクリス・デービスの三振パターンは、実はだいぶ前、2012年の夏過ぎくらいからわかっていた。

クリス・デービスは、追い込んでおいて、
ベースの真上に変化球をタテに落とせば
確実に三振させられる。

だが、解決できていない、やっかいな問題は
「決め球を何にするか」ではなく、別のところにある。

いくら彼の打席のビヘビアを観察しても、いまだにクリス・デービスを打者不利なカウント(できたら0-2か1-2)に追い込む確実な投球パターン、つまり、初球から3球目あたりまでをどう構成したらいいかが、さっぱり見えてこないのだ。

2013年7月5日ボルチモア戦クリス・デービス三振2013年7月5日の
三振パターン

真ん中低めのカーブ

2012年秋のクリス・デービスの三振パターン2012年秋の
三振パターン

真ん中低めのスライダー


今わかっているクリス・デービス攻略手法のポイントは
追い込むこと」に尽きる。

まず、クリス・デービスの今シーズンのスピードボールに対するHot Zoneを見てもらいたい。
ほとんどのコースが真っ赤に染まっている。まぁ、驚くくらいこのバッターはスピードボールに強いのである。

2013全投手・スピードボール・打率 Hot Zone
クリス・デービス 2013全投手・スピードボール打率
Chris Davis Hot Zones - ESPN

ところが、である。こんなデータがある。
同じクリス・デービスの「2ストライクをとられた後の、スピードボールに対する打率」である。

2013全投手・2ストライク後のスピードボール打率
クリス・デービス2013全投手2ストライクにおけるスピードボール打率

どうだろう。とても同じ打者とは思えないほど差がある。
結論を先に書いておこう。

「初球や、打者有利なカウントでのクリス・デービス」と「2ストライクとられて追い込まれた後のクリス・デービス」は、全くの別人である。クリス・デービスは、追い込まれると別人のように打てなくなる

最初は経験則でも、あとで彼の「カウント別・打撃データ」を見れば、一目瞭然に裏がとれる。クリス・デービスは追い込んだ後でなら、彼が滅法強いはずの速球を投げても案外大丈夫だったりするのだ。(もちろんどうせ投げるなら「真ん中低めに、タテに落ちる変化球」のほうが望ましい)

クリス・デービスのカウント別バッティングスタッツ
ソース:Chris Davis 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

念には念を入れて、クリス・デービスの、ビハインドとアヘッド、つまり投手有利カウントと打者有利カウントにおけるHot Zoneを調べておこう。鮮やかな結果がでる。

アヘッドカウント打率
2013全投手全球種
クリス・デービス 2013全投手アヘッドカウント全球種打率

ビハインドカウント打率
2013全投手全球種
クリス・デービス 2013全投手ビハインドカウント全球種打率


どうだろう。鮮やか過ぎるほどの差がでる。
クリス・デービスは「ビハインドカウント」では、急激に低めの球が打てなくなるというか、もっと正確にいうと、低めのボール球に手を出して、凡退してくれることが、ハッキリわかる。


ただ、問題がひとつだけある。

へたをすると三冠王に手がとどきかねないクリス・デービスを、ピッチャーはどう配球したら「投手有利なカウント」に追い込めるのか?
という点だ。
去年から今まで、ずっと観察を続けているにもかかわらず、直感でも、データ上でも、「これだ!」と手のひらを打てる的確な結論がなかなかみえてこない。(一時期「アウトコース高めの2シーム」がいいかなと思っていたが、この球を流し打ちでホームランにするのを見て、これじゃないと思った)


ただ、ヒントはつかんでいる。
ひとつのヒントは「初球」にある。

クリス・デービス2013全投手初球スピードボール打率


理由はまったくわからないが、データ上、彼が初球をヒットにしやすい球種は、どういうわけか、彼が最も得意なはずの「速球」ではなく、カーブ、チェンジアップといった、「スピードを抑えた大きく曲がるボール」であることがわかっている。


だから、今のところわかっていることを書いておくと、クリス・デービス攻略に必要な発想は、次のようなことになる。

クリス・デービスと対戦する投手がもつべき発想は、
カウントによって投げていい球種が変わるという発想。

まず初球は、いくら彼が「初球」と「速球」を鬼のように得意にしているバッターだからといっても、打たれるのを怖がって「カーブ」、「チェンジアップ」など、遅めの変化球で初球に安易にストライクを取りにいってはいけない。
むしろ、初球こそ、勇気をもって彼の最も得意なはずの速球を投げるべき。初球に限って(なぜそうなのか、理由不明だが)彼はスピードボールをあまりうまくミートできない。

運よく「打者有利なカウントに一度もならないうちに」クリス・デービスを追い込むことに成功できたら、後は簡単だ。ホームプレートの真上にタテに落ちる変化球を投げて、三振してもらうだけ。(もちろん、いくら追い込んでいるとしても、コントロールミスして真ん中に投げたりしてはいけない)
ただし、この「法則」にも条件がある。彼を打者不利カウントに追い込むプロセスで、「打者有利なカウントにしてしまったとき」には成立しない。打者有利カウントになったら、よほど警戒して次の球を投げないとやられてしまう。

残念ながら、彼から「2ストライク目を奪うための正確な方法論」は、いまだ確立されていない。


damejima at 22:01


イヴァン・ノバがボルチモア戦で好投したときにみせたマニー・マチャドへの配球がなかなか良かったことを書いたことだし、ついでに、アダム・ジョーンズが苦手なアウトローの変化球を三振して、ダグアウトに帰ってから、かぶっていたヘルメットを脱いで、それをバットで打とうとし、さらにはバットを壁にたたきつけて悔しがったシーンの「意味」も記録に残しておこう。
Baltimore Orioles at New York Yankees - July 5, 2013 | MLB.com Classic


今年からテキサスからアナハイムに移籍した左バッター、ジョシュ・ハミルトンが、追い込まれてからアウトローの変化球を投げられると、ほぼ間違いなく空振り三振してしまう悪いクセがあることは、既に2012年のポストシーズンに、ミゲル・カブレラとの比較で書いている。
だから、移籍したハミルトンがエンゼルスにとって巨大過ぎる不良債権になることは最初から予想できていたし、この「欠陥があることが最初からわかっているバッター」を、例えばシアトルが獲得しようとしていたことを聞いたときには鼻でせせら笑ったものだ。
Damejima's HARDBALL:2012年10月6日、2012オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。


アダム・ジョーンズにも、このハミルトンと同じクセがある。追い込まれると、ボールになるアウトローの変化球を追いかけて空振りしてしまうクセがあるのである。
(このクセは、BJアップトンにもある。だから彼の凋落も予想できた。Damejima's HARDBALL:2012年9月17日 アウトコースのスライダーで空振り三振するのがわかりきっているBJアップトンに、わざわざ真ん中の球を投げて3安打させるボストンの「甘さ」
インコースの連投でファウルを打たされて追い込まれ、最後はアウトコース低めの変化球(カーブ、スライダー)を完全に泳いだスイングで空振り。これが何十回も見てきたアダム・ジョーンズの典型的な三振パターンだ。

アダム・ジョーンズはクレバーなプレーヤーだから、自分の欠点をとっくにわかっている。誰よりもよくわかってはいるが、修正することができない。それが長年プレーを果てしない練習によって自分の体の奥底に滲みこませているプロならではの悩みだ。
だから、アダム・ジョーンズは悔しさのあまり、バットを壁に投げつけた。

2013年7月5日ボルチモア戦アダム・ジョーンズ三振7回表 三振




不思議なのは、度重なる凡退でバッティングの欠陥を他チームに見抜かれてしまったハミルトンが打率が2割ちょっとしかないほどバッティングが壊滅したのに、同じような欠点をもつアダム・ジョーンズが、ハミルトンのように低迷してないことだ。
彼は、低迷どころか、むしろ打率.291、ホームラン15本、二塁打22本を打っていて(7月5日現在)、ボルチモアの4番に座り続けている。

これはどうしたことだろう。
いつも不思議に思って彼の打席を見ている。

今だから正直に言えば、アダム・ジョーンズの「アウトローの欠陥」がわかっていたから、今シーズンの彼の打撃成績はハミルトン同様、低迷するものと予想したのだが、そうはならなかった。
そして、残念なことに、どのチームの投手もアダム・ジョーンズを完全には抑え込めない理由が、いまだにわからない。


ただ、とはいえ、
多少ボンヤリとした「推定」がないこともない。


それは、ボルチモアというチームがとっている「他チームにスカウティングされにくい、独自の『オセロ的』な打線構成手法」だ。

マニー・マチャドが、実は「アウトコース低めに異常にこだわることで数字を残しているバッターであること」は既に書いたが、では、そういう2番バッターにアウトローを打たれたばかりのピッチャーが、そのあとに出てきたボルチモアの3番とか4番打者に「アウトローを集中して投げる気になる」だろうか? ならないと思う。

つまり、2番に「アウトローに異常に強い打者を置いていること」が、アダム・ジョーンズに対するアウトロー攻めを回避させているのではないか、と思っているわけだ。(もちろん、それですべてを説明できるとも思えないが)

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こうした「タイプの違う打者を、まるでオセロの盤のように、交互に配置する」という「ボルチモア独特のオセロ的な打線構成手法」は、ボルチモアの監督がバック・ショーウォルターにかわってからというもの、ずっと見せられてきた。


例えば2012年ボルチモア打線のある試合のスターティング・オーダーをみてもらいたい。

左 マクラウス
右 ハーディー
右 ジョーンズ
両 ウィータース
右 レイノルズ
右 マチャド
左 デービス
右 フォード
右 アンディーノ

黒い太字で書いたのは、ストレートに非常に強いバッター
赤い太字で書いたのは、どちらかというと変化球に強いバッターだ。

「見た目」では「特殊なジグザグになっている」ようには見えない。だが実際には、(あくまで仮説だが)2012ボルチモアの上位打線は「まるでオセロの盤のように、ストレートに強いバッターと、変化球に強いバッターを、交互にならべて」作られていた。

ボルチモア打線が、相手チームの打線のスカウティングをまるでしないまま投げてくれるような、データを活用しない雑なチームと対戦すると、特に「持ち球の種類の少ないブルペン投手」をやすやすと攻略できる。そういうシーンを、2012シーズンの終盤にはよく見たものだ。
この2012シーズン終盤のボルチモア独特の打線の組み方を、仮に「ボルチモア・オセロ打線」とでも呼んでおくことにすると、その「メリット」は何だろう。


「オセロ打線」の狙いは、
いわば漁業でいう「定置網」だ。

ボルチモアの定置網にかかるのは、特徴の異なる打者ごとに配球や攻め方を変えようとせず、どんなバッターにも同じ配球をしようとする単調なチーム、単調なバッテリーだ。そういうチーム、バッテリーは、残念ながら、MLBにも非常に数多く存在する。

例えば、2012ヤンキースの正捕手だったラッセル・マーティンもそうだった。かなりのゲーム数を集中してみさせてもらったが、結論からいうと、彼は相手チームのスカウティングをほとんど頭に入れず、ピッチャーにワンパターンな配球しかさせていなかった。
彼は、例えば、ランナーが出るとアウトコース低めに球を集めることくらいしか考えない。また、ゲームの中での組み立てにしても、「最初の2巡目くらいまではアウトコースを使い、3巡目からインコースを混ぜる」とか、「2巡目までストレートを中心、3巡目からは変化球を混ぜる」程度の、誰でもやっていることしかしていなかった。
だから、例えば「アウトコースがアホみたいに得意なバッター」がズラリと揃っているホワイトソックスやトロントなどとのゲームであっても、スカウティングをまったく考慮せず、何も考えずに「アウトコース低めの変化球のサイン」ばかり出しては打たれまくって、ヤンキースは簡単に負けていた。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。


仮に「ボルチモア・オセロ打線」という仮説が正しいとして、こういう打線と、「打者ひとりひとりに対応することを全く考えないバッテリー」が対戦すると、投手はどういう目に遭うか。「配球の単調なラッセル・マーティンのヤンキースが、ボルチモア・オセロ打線と対戦するケース」をシミュレーションしてみよう。

ストレートを打たれまくる序盤

ヤンキースバッテリーはゲーム開始前に、たいていのチームの先発投手がそうであるように、ゲーム序盤のまだ球にパワーがあるうちは「ストレート」で押していくと決め、まずは、とことんストレート系で勝負する。
すると、どうなるか。
ストレートに強い1番マクラウスにストレートを打たれ、2番ハーディーはうちとるが、ランナーはセカンドに進塁。そこでストレートに鬼のように強い3番アダム・ジョーンズに、よせばいいのにストレート勝負、タイムリーを浴びる。スライダー打ちのうまい4番ウィータースは凡退させたが、インハイの好きな5番レイノルズに、インハイのストレートでのけぞらせるつもりが、逆にホームランを食らう。インコースが苦手な6番マチャドは打ち損じてくれるが、ストレートに強い7番クリス・デービスに痛打され、大量失点。

変化球に強い打者に打たれまくるゲーム中盤以降

序盤にストレートを打たれまくって困り果てたラッセル・マーティンは、打者3巡目以降に「変化球中心の組み立て」に変えることにした。
すると、どうなるか。
1番マクラウスは凡退させたが、2番ハーディーに低めのカットボールをヒットされる。3番アダム・ジョーンズは彼の苦手なアウトローのスライダーで泳がせて空振り三振させたが、4番ウィータースには「アダム・ジョーンズと同じように投げたはずのアウトローのスライダー」をタイムリーされてしまう。
スライダーを投げさせることにもビビったマーティンは、サインに困り、ゲーム序盤にインハイのストレートをホームランされている5番レイノルズに、こんどは「アウトコースのカーブ」を投げてみる。だが、球種にこだわりのないレイノルズに空振りさせるつもりのカーブをタイムリーヒットされて、ゲームは完全に劣勢に陥る。


「オセロ打線」というコンセプトは、持ち球の種類が少ないブルペンピッチャーには特に効果的だろうと思う。
というのは、「ストレート系を打てる打者」と「変化球を打てる打者」を交互に並べた「オセロ打線」との対戦では、その投手の中心球種が何であれ、持ち球の種類の少ない投手が投げる場合、オセロ打線は「どこかでは必ずその投手の中心球種を得意とするバッターが登場してきてしまう仕組み」になっているからだ。(だから「定置網」なのだ)

例えば、2012ヤンキースのブルペンピッチャーには、持ち球の種類が極端に少ないタイプが多かった。当時カットボールしか投げようとしていなかったローバートソン(今シーズンはカーブが持ち球に加わって改善した)、スライダーしか投げられないコディ・エプリー(オフに放出)、ストレートばかり投げようとするローガン(彼は今も変わらない)などだ。
だから、ヤンキースのブルペン投手がボルチモア戦で投げると、たとえ先頭打者をうちとれたとしても、2人目か3人目の打者に、ほぼ必ずといっていいほどつかまってしまう。
(ただ、たとえ当時のヤンキースが、この『ボルチモア・オセロ打線』の仕組みに気づいていたとしても、対処のしようがない。というのは、ブルペンピッチャーの数は限られているわけだから、すべてのブルペン投手をワンポイントで使うわけにいかないからだ。根本原因は「ヤンキースのブルペン投手の球種が少なすぎること」にある)
2012ヤンキースは、ストレートしか投げられないブルペン投手、あるいはスライダーしか投げられないような、柔軟性に欠けるブルペン投手ばかりゲーム終盤に投入していたのだから、2012年9月に地区優勝を逃しそうになるほどヤンキースがボルチモアに追い上げられたのも無理はなかった。


どうだろう。仮説ではあるが、得意球種(あるいは得意コース)の異なる打者を交互に並べるオセロ打線の効果や面白さが、わかってもらえたらいいが、と思う。

左右の打者を交互に並べるのが「ジグザグ打線」だが、それだけが打線の組み方ではないことを、ボルチモアGMダン・デュケットと監督バック・ショーウォルターは証明してみせたのである。
このオセロ打線は、たとえ打率のあまり高くない打者ばかり集めたチームであっても、十分に得点圏シチュエーションを作り、たくさんの得点を生みだすことが可能だということを証明してみせた。それが、2012年ボルチモア・オリオールズだった、というわけだ。


ちなみに、こうした打線を組むに至った「理由」は何だろう。

もちろんあくまで想像でしかないが、「ボルチモア・オセロ打線」が組まれた根本的なモティベーションは、「安定したバッターで、ストレートに滅法強いが、短所も多数あるアダム・ジョーンズ」と、「一見ストレートに強そうに見えるが、実は変化球を打つタイプであるマット・ウィータース」を、3番4番に並べて固定する、そのことだけのために考え出された、とブログ主は見ている。(もちろん、2012シーズン終盤になって左の好打者ニック・マーケイキスを怪我で欠いたことで、他に1番に適した野手が見つからなかったことも関係しているだろう)

もし、ボルチモアのメインピースであるジョーンズとウィータースを、3番4番として固定した形で地区優勝を飾りたいボルチモアが、同時に「ジグザグ打線」にこだわろうとすると、どうなるか、考えてみる。
右左の順序の関係上、(本来1番に適任なのは左バッターであることが多いが、ここではそれを無視していうと)「1番を打てる右打者」が必要になるが、当時のボルチモアには「1番バッターとしてのバッティングができるシュアなバッター」は存在しなかった。
ショーウォルターは、右のアンディーノライモールドを1番に置いてテストもしたが、この右バッター2人は、左のマーケイキスのバッティングには遠く及ばないことはハッキリしていたし、そもそも彼らではバッティングが雑すぎて1番には向かない。(だからシーズンオフにアンディーノを見切って放出した)

左右を気にせず考えると、2012ボルチモアの1番に最もふさわしかったのは明らかに左のマーケイキスだが、その彼が怪我で戦列を離れてしまい、ポストシーズンで1番を任されたのは、やはり左のマクラウスで、右打者を置くことはできなかった。

他チームから獲得するにしても、良質の1番バッターは、価格は安くないし、そもそも市場にほとんど出回ってない。
予算面でかなり無理して打線をジグザグ化してみたところで、ペイロールが打者偏重になることでボルチモア投手陣が薄くなってしまえば、ボルチモアの長年の課題である「投手陣立て直し」という最重要課題の達成に支障をきたしてしまう。

ボルチモアGMダン・デュケットは実際にはどうしたか。
価格の高くない「ストレートに強いパワー系打者」を獲得してきて(テキサスのクリス・デービス、Dバックスのマーク・レイノルズ、アトランタのネイト・マクラウス)、アダム・ジョーンズと一緒に並べて「打線の骨」にした。
そして、その太い骨と骨の間に、変化球に強い野手(生え抜きのウィータース、マチャド、アンディーノなどと、ミネソタから獲ってきたJJハーディー)を「オセロの盤」のように交互に挟みこんで「打線の肉」とし、「骨と肉」が交互に組み合わさった、立体的な「オセロ打線」を組み上げた。

相手投手攻略と、自軍の打線の特徴のカモフラージュのために、左右のバッターを交互に並べる「ジグザグ打線」ではなく、得意球種(あるいは得意コース)の異なるバッターを交互に並べる「オセロ打線」。
この仮説がもし本当に2012ボルチモア打線の構成意図だったとしたら、打線戦略として斬新だし、単調な配球しかしないバッテリーを抱えるチームと対戦する戦略として非常にリーズナブルだったと思うのである。



ちなみに、2012ボルチモア打線が「ストレートに強いアダム・ジョーンズと、変化球に強いマット・ウィータースを軸に、ストレートに強い打者、変化球に強い打者を交互に並べることで、「相手チームの投手のあらゆる配球パターンに対応できる打線を作った」とするなら、デトロイト打線は、「あらゆるコースに滅法強いミゲル・カブレラと、アウトコースに強いプリンス・フィルダーを軸に、「インコースに強い打者をズラリと並べていることに特徴がある。
これもまぁ、ひとつの「オセロ打線」といえなくもない。インコースだけとか、アウトコースだけとか、決まったコースだけ攻めていても、デトロイト打線は沈黙してくれないのだ。

2012ALCSのGame 1、Game 2で、ヤンキースバッテリーは、打順2巡目まではデトロイト打線のアウトコースを攻めきって完全に沈黙させていたにもかかわらず、ゲーム終盤になって、自分からインコースを突く配球に変えて自滅するという大失態を、2ゲーム続けて敗退した。
デトロイト打線がインコースに強い打者が揃ってる、そのくらいのこともわからないで、自分からインコース攻めに切り替えて打たれているラッセル・マーティンには、つける薬がなかった。
このキャッチャーは、ボルチモアの「オセロ打線」にさんざんやられまくったクセに、「自分たちがなぜこれほどまでに、ボルチモア打線につかまってしまうのか」、ちっとも探究せず、こんどはインコースに死ぬほど強いデトロイト打線、例えば、オースティン・ジャクソンデルモン・ヤングに、インコース勝負を挑んでは打たれまくったのである。(あれだけ得意不得意がはっきりしているオースティン・ジャクソンが低迷せず、いまだに3割とか打てるのは、それだけ「ぬるいチーム」「ぬるいバッテリー」が多数あるという証明でもある)


こういう「アタマを使わないチーム、アタマを使わないバッテリーを、カモにする」のが、「オセロ打線」という定置網戦術の狙いだと思う。
「オセロ打線」が組まれていることは、見た目ではわからない。それだけに、他チームに気がつかれにくく、スカウティングされにくい。スカウティングされにくいことは、今の情報戦時代の野球にとって、最大のメリットである。

この「それぞれの打者の欠点と長所をあらかじめ把握し、長所の異なるバッターを交互に並べることで、お互いの欠点をカバーしあう打線にする」というボルチモアならではの新発想は、2013年のボルチモア打線でも立派に機能していて、それが「アウトローに明白な欠点をもつアダム・ジョーンズ」の凋落を防いでいるのではないか。そんなふうに思うのである。

damejima at 17:01
ボルチモア第1戦は、イヴァン・ノヴァが、リードされている気楽さもあって、ゲーム後半に素晴らしいピッチングをみせ、ヤンキースがサヨナラ勝ちした。

このゲームの収穫は、大雑把なピッチングしかできなさそうに思われていたノヴァが、なんと「スカウティングどおりのピッチングでボルチモアの強力打線を封じ込めた」をみせたことだ。これは非常に大きい。(先制点を与えなければ100点満点だった)
今日のノヴァのクレバーさは、例えば、「アウトコースマニア」のマニー・マチャドに対して、彼の得意でないインコースでうちとるか、そうでない場合でも、まず初球にインコースを見せておいてからアウトコースを投げていることだ。「なにがなんでも最初から最後までアウトローのスライダー連投」などという馬鹿な配球は、今日のノヴァは一度もやってない。
Baltimore Orioles at New York Yankees - July 5, 2013 | MLB.com Classic


2013年7月5日ボルチモア戦マニー・マチャド凡退1回表 レフトライナー

2013年7月5日ボルチモア戦マニー・マチャド9回表凡退9回表 ショートゴロ


MLBの先発ピッチャーは、サンフランシスコ、オークランド、ボストンなど、データ活用のうまいチームならば、クローザーも含め、ピッチャーが細かなスカウティングデータ通りに打者の弱点を効果的に攻めてくることも少なくない。

だが、たいていのチームの場合は、「そのピッチャーがもっている『非常に狭い、ワンパターンな配球パターン』どおりにしか投げようとしないし、投げられもしない。そもそも、打者ごとに柔軟に配球を変えて投げられる器用さ自体を、もともと持ち合わせていない」ことがほとんどだ。
だから、ゲームを見ていると、弱いチームに限って「なんで、このバッターの最も得意なコースに投げるのかね?」と首をひねるシーンを、イヤというほど見せられる。


ヤンキースはどうか。

ヤンキースの大半のピッチャーは、残念なことに、「バッターのスカウティングと無関係に、自分の投げたい球を投げている」、そういうチームだ。(「スカウティングどおりに投げる能力」がないのではない。そういう「能力」自体はあるのに、実行してない)

だから、「このバッターに、なぜその球種、そのコースに投げてしまうのか?」とイライラする場面がけして少なくない。
この傾向は、野手に怪我人が大量に出て、投手陣の頑張りで貯金を作ってきたといわれることの多い2013シーズンであっても、別にかわりない。
これだけ貧打の状態でも勝率が5割を割らないのは、上位打線の3人、ガードナーイチローカノーが踏ん張っていること、もともとレベルの高い持ち球を持っている先発投手をそろえているから、だけであって、もしヤンキースの投手陣の配球がもっとテクニカルなものだったら(あるいはキャッチャーのサインがもっとクレバーだったら)勝てる試合はもっとあったし、勝率はこんなに低くない。


例えば、ボルチモアの伸び盛りの2番打者、マニー・マチャドは、ESPNのHot Zoneでもわかるとおり、「アウトコース、それも低めが、馬鹿みたいに強いバッター」だ。
これは、彼が打席の中でホームプレートから離れて立っていることから、バットを振らなくても最初から推定できた。例えば日本のプロ野球巨人の長野もその典型だが、インコースに苦手意識があるバッターというものは、えてしてプレートから離れて立って、強烈に踏み込んできて打ちたがるものだからだ。


マニー・マチャド
2013年全ゲーム 全投手・全球種・打率 Hot Zone

2013マニー・マチャド全球種コース別全打率
Manny Machado Hot Zones - ESPN


ヤンキースの右投手は、カウントが打者有利になったとか、強打者との対戦だとかいうと、すぐにビビッてしまい、まるで頭を使わずに、簡単に「右バッターのアウトローにスライダー」を投げてしまう。

これは右投手の悪いクセだ。

この、右投手のアウトローを狙い打ちすることでハイアベレージを挙げているのがわかりきっているマニー・マチャドに対してですら、「安易にアウトローのスライダーを投げてしまうような右投手」は、ハッキリ、「頭が悪い。馬鹿だ。」と言わせてもらう。

ちょっとはアタマを使え、と言いたくなる。

2013年直近30ゲーム
右投手・スライダー・長打 Hot Zone

2013最近30ゲーム マニー・マチャド右投手スライダー長打



ついでだから、マニー・マチャドの左投手に対するバッティング傾向も書いておこう。以下のデータを見ればわかるが、彼は、右投手のアウトローだけでなく、左投手のアウトローにも強い。一目瞭然だ。左投手でも、右投手と同様に、このアウトコース好きのバッターに、何の工夫もなくアウトローの球を投げてはいけない。

もちろん、右投手左投手それぞれに、「アウトコース好きのマニー・マチャドが、インコースを打てている球種」というのも、わずかながら存在する。「右投手のストレート」、「左投手のスライダー」が、それにあたる。これらの球種はインコースに投げても打たれる。
だが、それらは単に「例外」であって、投手があらかじめ「例外」として把握しておき、投げなければ何の問題も起きない。

マニー・マチャドのような「傾向のハッキリしている打者」に打たれるのを防ぐことは、どんな投手でもできる。それをしないのは、単に投手とチームの怠慢としかいいようがない。

2013直近30ゲーム 左投手・全球種・長打
2013直近30ゲーム マニー・マチャド左投手全球種長打

2013全ゲーム 左投手・スピードボール・打率
2013全ゲーム マニー・マチャド左投手スピードボール打率

2013全ゲーム 左投手・カーブ・打率
2013全ゲーム マニー・マチャド左投手カーブ打率

2013全ゲーム 左投手・チェンジアップ・打率
2013全ゲーム マニー・マチャド左投手チェンジアップ打率


damejima at 13:28

January 04, 2013

ストーブリーグにまるで関心のないブログ主としては、早くシーズンが始まらないものかと毎日思っているわけだが、今は何もすることがなくて退屈きわまりない。暇つぶしに、結論のわかりきっている話で申し訳ないが、ジョシュ・ハミルトンの移籍について書いてみる。


去年のハミルトンのバッティングについて、Baseball Analyticsは2012年12月13日の記事で、こんな意味のことを書いている。

ハミルトンが「アウトコース低めコーナーいっぱいを突く球」に非常に弱いことに投手たちが気づいてからというもの、2011年の彼はこの球にほとほと手を焼いたが、2012年になってハミルトンはスイングをアジャストし、ほぼストライクゾーン全体を打てるようになった。

ハミルトンのHot Zone by Baseball Analytic

At first, Hamilton struggled, seeing his ability to hit for extra bases diminish, but in 2012, he adjusted his swing and shifted his power stroke to cover the entire strike zone.
New Halo Josh Hamilton is a Prodigious Slugger - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics
注:上の図は「投手側からプレート方向を見た図」


いやー(笑) 悪いけど、まったく同意しかねる(笑)

もし本当にストライクゾーン全体が打てるようになったのなら、シーズン終盤の、あの醜態はありえない。いつも通り、アウトコース低めのスライダーで三振しまくってただろうに、見てないのかね(笑)

どうしてまたBaseball Analyticsというサイトは、やたらとHot Zoneだけでモノを言いたがるサイトなんだろう。Hot Zoneなんてものは別にオールマイティのツールでもなんでもない。

年間データにしても、それが有用な判断材料を提供してくれることもあるが、ハミルトンの2012年のバッティングの価値を評価するにあたっては、1シーズン通してみたHot Zoneデータなんてものは、まるでアテにならない。

たとえば、2007年の城島のあの中身の無いバッティングデータでもわかる。
シーズンの数字でみると、例えば打率.287とか、あたかも人並みに打っていたかのごとく、「見せかけの数字」が並んでいるわけだが、実際どうだったかといえば、勝負どころだった7月の最悪の月間打率.191、そしてシーズンRISP.248でわかるように、勝負どころでは全く働いてない。ゲームを見ていない人にはわからないだろうが、要所要所では、、ただただチームの足を引っ張っただけの帳尻バッティングスタッツに過ぎない。(だからこそ翌年以降の打撃成績の急降下を予測できたわけだが、当時はそれをいくら言っても、誰も信じなかった)


ハミルトンの2012年のバッティングの中身の無さも似ている。ハミルトンの2012年7月以降のバッティングの酷さ、そしてチーム勝率への多大な悪影響は、「シーズン通算のHot Zone」なんてもので見えてくるわけがない。
たとえハミルトンが2012年のシルバースラッガー賞を受賞しようと、そんなものは関係ない。2012シーズン終盤のハミルトンの「アウトコースの安全牌ぶり」は、同じ2012年9月のカーティス・グランダーソンのインコースと同じくらい酷いものだった。


シルバースラッガー賞ハミルトンのバッティングの中身の無さをデータから見るために、まず、「ハミルトン個人の月別の打撃数字」と「チーム勝率」との関係を、ちょっと見てもらおう。

ハミルトンの2012シーズンのバッティングは、シーズン通算でみると、打点128はたしかにリーグ2位の立派な数字だし、ホームランも40本以上打って、シルバースラッガー賞も受賞している。
だが、それらのほとんど全ては、好調だった4月、5月、8月の3か月間、特に春先の2か月で稼いだ数字だけに頼った成績であり、あとの3か月、特に「チームが最悪の状態にあった7月」と、「確実視されていた地区優勝を逃して醜態を晒した9月以降」の低迷ぶりときたら、チーム勝率への悪影響はあまりにも凄まじかった、としかいいようがない。
4月 打率.398 打点25 チーム勝率 .739
5月   .344 32 .500
6月   .223 16 .679
7月   .177 11 .391

8月   .310 28 .655
9月/10月 .245 16 .536
ボルチモアとのALWC(=American League Wild Card Game いわゆるワンゲーム・プレーオフ)
4打数ノーヒット2三振
Josh Hamilton 2012 Batting Splits - Baseball-Reference.com


たぶん「2012年のテキサスは無敵の強さだった」とか、いまだに勘違いしたままのファンがたくさんいるとは思うが、2012シーズンにテキサスの勝率が良かったのは、「テキサスがあまりに強くて、弱い相手にも、強豪相手にも、まんべんなく勝ったから」では、全くない。
むしろ、「春先に、弱いチームを確実に叩くことができていただけ」に過ぎない、というのが正しい。
もっと具体的に言うと、今シーズンのテキサスの勝率の高さは単に、2012シーズン開幕当初から既にチームが崩壊していたミネソタ(対テキサス 2勝8敗)やボストン(対テキサス 2勝6敗)、あとはヒューストンなどが、テキサスに「楽勝」を提供し続けてくれていたおかげに過ぎない。

2012年のテキサスが「同地区との対戦にはからきし弱いが、他地区の崩壊チームからは、数多くの勝ち星をむしりとる傾向」は、ジョシュ・ハミルトンの打撃成績にも、そっくりそのまま、あてはまる。
(もっというとダルビッシュの投手成績の一部、たとえばERAにも、ある程度だがハミルトンと同じ傾向が見られる)

そりゃまぁ、シアトル含め、ぶち壊れたチームとの対戦ばかりが続いた4月や5月は、テキサスも大勝できたし、ハミルトンも打てた。なんせ、弱いチームのピッチャーは、何も考えずハミルトンの大好きなインコースでもどこでも、かまわず投げてくれる。そういう頭を使ってゲームをしてない弱小チームとのゲームばかり続いたら、誰だって打てるし、勝てもする。

2012年ハミルトンの対戦チーム別打率 トップ3
BOS .406 打点14
BAL .357 打点12
MIN .350 打点13

2012年ハミルトンのボールパーク別打率 トップ3
BOS-Fenway Park .545
BAL-Camden Yards .471
MIN-Target Field .462


だが、そんな安易な対戦ばかり、続くわけがない。

2ストライクをとられてからのハミルトンの打率の低さ」を、以下のデータで確かめてみるといい。この数年で、いかに相手ピッチャーが、ハミルトンの弱点を把握するようになってきているか、そして、リーグMVPに輝いた2010年以降、いかにハミルトンが急速に勝負弱くなってきているかが、ひと目でわかるはずだ。

ジョシュ・ハミルトン カウント別打率の推移
2010年
0-2 .128
1-2 .247
2-2 .362
3-2 .302

2011年
0-2 .083
1-2 .188
2-2 .214
3-2 .263

2012年
0-2 .129
1-2 .169
2-2 .196
3-2 .130



簡単にいうと、このブログで何度も指摘してきたように、今のハミルトンは「2ストライクをとって追い込んでおけば、あとは、彼のあからさまな弱点である『アウトコース低め』めがけてスライダーでも投げておけば、簡単に三振してくれるフリースインガー」のひとりに過ぎない、ということだ。
Damejima's HARDBALL:2012年10月6日、2012オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。

アウトコース低めに逃げる変化球をハミルトンが苦手にしていることは、2011年以降、多くの強豪チーム、多くの先発投手がとっくに把握している衆知の事実だが、その一方で、チームが弱体化していて、コントロールのいい先発ピッチャーを揃えることができず、ましてスカウティングもままならないようなアタマの悪いチームは、このことに気がつかないまま、漫然とゲームをしている。


だが、テキサスと同地区のエンジェルス、アスレチックスとなると、対戦ゲームが多いだけに、安易なゲームはしてくれない。必ずスカウティングして、ハミルトンの弱点を洗い出し、徹底的に弱点を突き、抑えにかかってくる。
だから、同地区チームとの対戦内容をみると、ハミルトンの打撃成績は一変する。
以下に数字を挙げたが、同地区チームとの対戦における打率はどれも.280前後だから、そこそこ打てているように思っている人もいるかもしれないが、この数字を「球場別」に見ると、まるで話は違ってくる。「ハミルトンが対戦数の多い同地区チームとの対戦で打てているのは、あくまでアーリントンで行われるホームゲームだけであり、同地区のビジターではまったく打てない」。
これは、「スカウティングされた後のジョシュ・ハミルトンのバッティングが、いかに怖くないか」を如実に示すものだ。

同地区チームとの対戦における打率(2012年)
OAK .247
SEA .281
LAA .288

ボールパーク別打率 ワースト5(2012年)
OAK-O. Coliseum .189 ホームラン1本 打点4
SEA-Safeco Field .182 ホームランなし 打点3
LAA-Angel Stadium .143 ホームランなし 打点なし
TBR-Tropicana Field .100 ホームラン1本 打点3
TOR-Rogers Center .083 ホームランなし 打点なし
参考:
TEX-Rangers Bpk .289 ホームラン22本 69打点



何度も書いているように、「パークファクター」なんて指標は、そもそもアテにならない。例えば、ある球場ではホームランが出やすい、といっても、それが「自軍がホームランをたくさん打ったから」なのか、それとも「自軍の投手陣があまりにも酷くて、相手チームにホームランをしこたま打たれたから」なのか、そんなことすら区別できない。

ただ、そんなダメ指標でも、「おおまかな数字でいい」という条件なら、「球場ごとのホームランのでやすさ」くらいはわかる。
例えば、ロサンゼルス・エンジェルスの本拠地、エンジェル・スタジアムは、2012年のパーク・ファクターでみると、MLB全30球団で25番目にホームランがでにくいボールパークだ。
2012 MLB Park Factors - Home Runs - Major League Baseball - ESPN

LAAに移籍が決まったハミルトンは、2012年にエンジェル・スタジアムで7ゲームやっているが、ホームランを1本も打てていない。と、いうか、彼のキャリア通算161本のホームランの約半分、83本は「宇宙で一番狭い」アーリントンで打ったものだ。
そして、ハミルトンのバッティング成績において、グラウンドボール、いわゆる「ゴロ」は、ヒットになる確率がびっくりするくらい低い。ハミルトンはフライを打たないとヒットを打てない、極端なフライボールヒッターなのだ。


MLBで最もホームランの出やすいボールパークのひとつ、アーリントンだからこそホームランを量産できていたハミルトンが、彼が最も苦手とするボールパークのひとつであり、ホームランの非常に出にくいエンジェル・スタジアムに移籍して、いったい何をしようというのだろう。ほんと、意味がよくわからない。

damejima at 03:47

October 08, 2012

自分にとって大事な「ひらめき」だから、忘れないうちに急いでイメージを残しておきたい。

具体的には、以下のツイートをしたときに「見えていたビジョン」を、この10月のジョシュ・ハミルトンミゲル・カブレラのバッティング内容の差異によって裏付けつつ、より鮮明な形にして残しておきたいのだ。まぁ、「イメージの冷凍保存」みたいなものだ。
(けしてハミルトンが凡庸なバッターだとは言わないが、天才だとは思わない。ともあれ、三冠王カブレラよりは確実に平凡だから(笑)、悪いけれど比較対象にさせてもらうことにする)

平凡と非凡を分けるのは、「ホームランの数の差」ではない。
打った3割の中身ではなく、打たなかった7割に差異がある。







「苦手な球にでも手を出してしまうバッター」としての
ジョシュ・ハミルトン

サンプル/2012年10月5日 ワイルドカード BAL×TEX


ジョシュ・ハミルトンが、「アウトコース低め」、もっと正確にいうと、「アウトコース低めで横方向に大きくスライドする球」、もっともっと具体的にいうと、「特に左投手のアウトコース低めのカーブ」を、まるで打てない」ことを「発見」したのが、一体いつのことだったか、まったく覚えていない。
まぁ、馬鹿のひとつ覚えで毎日のように野球ばかり観ていると、誰に教えられるわけでもなく自然とわかってくることが山のように沢山あるわけで、これもそうした「自然にわかること」のひとつ、とは思う。

「発見」などと、あえて自賛するのはなぜかというと、不思議なことに、一般的なレベルの野球データサイトがネット上で公開している「ジョシュ・ハミルトンのホットゾーン」(=打者ごとのコース別の得意不得意を図示したグラフ) には、「ハミルトンがアウトコース低めを苦手にしている」 というデータが出てこないからである。

2012年10月5日 ワイルドカード ハミルトン第1打席2012年10月5日
ワイルドカード BAL×TEX
ハミルトン第1打席

アウトコース低め
カーブ
セカンドゴロ
ダブルプレー


2012年10月5日 ワイルドカード ハミルトン第2打席2012年10月5日
ワイルドカード BAL×TEX
ハミルトン第2打席

アウトコース低め
2シーム
3球三振


2012年10月5日 ワイルドカード ハミルトン第3打席2012年10月5日
ワイルドカード BAL×TEX
ハミルトン第3打席

真ん中
カーブ
ピッチャーゴロ

これはたぶん「アウトコース低めを狙ったカーブ」がコントロールミスで真ん中に入ったのだと思う



3つの異なるサイトにみる
ジョシュ・ハミルトンのHot Zone


注意(必読)
以下に挙げた3つのサイトのデータは、最初の2つと、3番目とでは、視点が異なる
最初の2つは、「アンパイアから投手を見る方向」でデータが書かれている。したがって、「右がファースト側、左がサード側」になる。
それに対して3番目のデータは、投手からホームプレート側を見る視点でデータが描画されている。そのため、1番目、2番目とはデータが左右異なっており、「右がサード側、左がファースト側」になる。


FOX Sports

FOXのサイトにおけるジョシュ・ハミルトンのホットゾーン
データ出典:Josh Hamilton Hot Zone | Texas Rangers | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN

このサイトによると、ハミルトンの苦手コースは「アウトコース高め」と「インコース低め」ということになる。先走って言うと、この判定結果は、ブログ主がハミルトンのゲームを見てきた経験値とは異なる。

加えて、このデータには致命的といえる欠点がある。
それは、「ボールゾーンの打率が表示されていない」ことだ。だから例えば、ハミルトンが特定のコースのボール球を、どれだけ空振り三振したり、凡退を繰り返しているか、FOXのデータからは何も判断できないのである。

バッターというものは、ストライクゾーンの球ばかり振って凡退しているわけではないのだから、ボールゾーンの打撃傾向もわからないと、そのバッターの本当の得意不得意は、わかりっこない。

参考記事:Sports Analytics and Application Development - Latest MLB Analytics News for TruMedia - ESPN: Josh Hamilton's Hot Zone


Gmaeday

Gamedayにおけるジョシュ・ハミルトンのホットゾーン
データ出典:Baltimore Orioles at Texas Rangers - October 5, 2012 | MLB.com Gameday

MLB公式サイトが運営する優れたネット上のファンサービスのひとつ、Gamedayには、日本のMLB愛好者の大半がお世話になっているわけだが、全てのバッターのホットゾーンを表示する機能が備わっている。
それによると、ハミルトンの「ストライクゾーン内」の苦手コースは、「アウトコース高め」と「インコースのハーフハイト」となっている。
ブログ主は、経験上、ハミルトンが最もホームランを打てる得意コースは「インコースの、ハーフハイトから高めにかけてのゾーンに限られる」と確信しているので、Gamedayが示すハミルトンのホットゾーンを必ずしも信用しない。
ただ、Gamedayのホットゾーンを評価したい点がある。それは、「ボールゾーンの打撃傾向が示されている」ことだ。この機能はFOXのホットゾーンには無い。
Gamedayのボールゾーンにおけるホットゾーンには、「ハミルトンが、アウトコース系のボール球で繰り返し凡退していること」が、弱い形ではあるが、示されている。
これはブログ主の経験値と合致するので、少しは信用できる。


Baseball Analystic

Baseball Analysticによるハミルトンのホットゾーンハミルトンの得意コースが「インコース」であることは明らか

データ出典Home Run Recap: Josh Hamilton - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics

5人の寄稿者で運営しているらしい、このサイトは、イチローに関する記事を検索していて偶然に記事をみつけて読み、内容のレベルの高さに感心させられたことが何度かある。
ここのホットゾーンデータは、文字通り一級品、いや、最高級品だと思う。
(ブログ注:このサイトのホットゾーンデータが、果たしてサイトオリジナルなのか、それとも、野球シンクタンクかどこかの元データを引用しているのか、今のところわからない。同じデザインのホットゾーンがESPNでも大量に引用されているのだが、出典が記載されていない。ESPNのデータである可能性もある)

なにより、ここのホットゾーンを信頼するのは、「ハミルトンは、アウトコース低めを打てない」という、ブログ主の経験値と完全に一致するからだ。

また、このサイトは、その程度の「気づき」をはるかに越えた鋭い判断力に裏打ちされた分析記事にも溢れている。
さきほど、この記事を書くために、このブログ内を検索していて気づいたのだが、このサイトは2011年3月20日付で、「ジョシュ・ハミルトンの三振のさせ方」なる記事まで既に掲載し、「ハミルトンを三振させるなら、アウトコースのスライダーかカーブ」とハッキリ明言している。
この判断スピードの速さには、ハミルトンがアウトコースにウィークポイントがあることに今年になってやっと気づいたブログ主程度では、到底追いつけない。
How to strike out Josh Hamilton - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics
さらにこのサイトがちょっと信じられないほど素晴らしいのは、2011年8月13日付で、ハミルトンが「MLBでオフ・スピードの球を打つのが上手い3本指のバッターに入る」ことも記事にしていることだ。
つまり、この分析専門ブログのライターは、「ハミルトンが、スライダーのようなオフ・スピードの球を打つことについて、MLBで3本指に入る優れたバッターである」ことをデータ上できちんと把握した上で、それでも、「アウトコース一杯のスライダー(あるいはカーブ)なら、ハミルトンから確実に三振がとれる」と断言しているわけだ。
この判断力は凄い。観察眼の鋭さに加えて、よほどの決断力がなければ、到底こんなことをパブリックな場所に書くことはできない。脱帽するほかない。
Best Offspeed Hitters - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics


何事につけても自己中心的(笑)なブログ主は、自分の判断に合致するBaseball Analysticの分析とホットゾーンを信頼することにする。


FoxやGamedayなど、大衆的な野球データサイトが公開しているハミルトンの「ホットゾーン」では、「ハミルトンがアウトコース低めの変化球を苦手にしている」というデータが出てこないのには、どんな原因が考えられるだろう? 可能性をいくつか挙げてみた。

1)データのアップデートが頻繁に行われていないために、データが古い
2)ストライクゾーンのデータのみを収集し、「ボール球を振って凡退した」というデータが積極的に収集されていない。そのため、結果的に、「ストライクゾーンにおける打率」が、高めに表示されてしまう
3)ストライクゾーンを分割するマトリクスが大きすぎる。そのため、データの精度が低い
4)データ収集期間が長すぎる(または短すぎる)ため、データにリアリティが無い
5)左投手、右投手との対戦を区別してデータ収集されていないために、左右の投手別の打撃傾向がハッキリ把握できない。例えば「右投手の投げるアウトコースのカーブは得意でも、左投手の投げるアウトコースのカーブはまるで打てない」場合、単純なホットゾーンデータからはそうした事実を読み取ることができない

データが不正確になるいくつかの可能性を考えてはみたものの、アップデートの頻度、マトリクスの大きさ、データ収集期間の長さ、どれをとっても、FOXやGamedayのホットゾーンが正確さに欠けていることの言い訳にできるとは思わない。
いくら予算不足などの現実的な理由から、十分な頻度でアップデートできないとか、マトリクスを十分に細分化できないとか、データ収集に制約が生じているとしても、それを理由に「ホットゾーンデータが間違っても、しかたがない」とは、ブログ主は全く思わない。(たぶん、もっと他の根本的かつ幼稚な原因があるに違いない)

間違ったデータの提供は、いろいろな意味でファンの楽しみを損なう行為だということを、データサイトは十分に認識しつつサービスを提供すべきだと思う。

ちなみに、「左投手と右投手でホットゾーンを区別して評価すること」については、打者の傾向分析として重要な意味があると思うし、そういう現実的で有用なデータが無料で情報としてファンに提供されるなら、ファンサービスとして理想的な形だとは思う。
だが、労力として、一般的なデータサイトにはおそらく負担がかかりすぎるだろう。また、左投手と右投手のデータを混ぜたことが、不正確なホットゾーンが提供されてしまっていることへの言い訳にできるわけではない。

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話がいつのまにか「どこのサイトのホットゾーンが最も信用できるか」に流れてしまっているが、ご容赦願いたい(笑)

なぜこんな確認作業に手間をかけるか、といえば、どこのサイトのホットゾーンデータが「本当に信用できるのか」を、あらかじめ限定しておかないと、話が前に進まないからだ。

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「苦手な球に手を出さず、四球を選べるバッター」
三冠王 ミゲル・カブレラ


サンプル/2012年10月6日 ALDS
オークランド対デトロイト Game 1
打者:ミゲル・カブレラ 第2打席
投手:ジャロッド・パーカー

パーカーは、三冠王カブレラの数少ない苦手コースのひとつである「インハイ」を、果敢かつ徹底的に攻めたが、カブレラはまったく応じず、1球もスイングしなかった。
そこで、インハイ攻めで根負けしたパーカーは、カウント3-1の5球目、「インハイ」以上にカブレラの苦手コースである「アウトロー」に、ボールになるスライダーを投げてスイングさせようとしたのだが、ここでまたもやカブレラに見切られてしまい、結局、四球で歩かせることになってしまう。
Oakland Athletics at Detroit Tigers - October 6, 2012 | MLB.com Gameday

2012年10月6日 ALDS Game1 OAKvsDET カブレラ第2打席 

「インハイ」と「アウトロー」が、カブレラの苦手コースであることの真偽は、いまのところ最も信頼できるホットゾーンデータを提供していると思われるBaseball Analysticの、以下のデータで確認してもらいたい。(上に挙げたGamedayデータとでは、左右が逆になっていることに注意)
Pitching to Cabrera - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics

ミゲル・カブレラ ホットゾーン


オークランド先発パーカーが、カブレラの苦手なインハイをきわどい球で攻めることは、まったく間違っていないし、逃げでもない。
それどころか、Baseball AnalysticPitching to Cabreraという記事で書いているように、ミゲル・カブレラへのインハイ攻めは、非常に積極的な「三冠王カブレラへの挑戦」なのだ。(オークランドのミゲル・カブレラに対するスカウティングの正確さは、2012レギュラーシーズン終盤にテキサスを冷静に分析することで、ハミルトンをはじめ、強打のテキサス打線を完全に封じ込めた彼らの分析力の高さを示してもいる)


だが、これだけ弱点を突かれても、
それでもカブレラは四球を選べてしまう。

それは、なぜか?

テキサスのジョシュ・ハミルトンが「苦手なはずのアウトローのカーブにさえ手を出して、空振り三振や併殺打に倒れてしまう」のと対称的に、ミゲル・カブレラが「苦手なインハイ」も、「苦手なアウトロー」も、まったく無駄なスイングをしない、からである。

このことが、最初に挙げた2つのツイートの意味だ。
あらためて、自分のためだけの金言として、もう一度まとめなおして書いておこう。


たとえ三冠王ミゲル・カブレラであろうと「苦手な球種や、苦手なコース」が存在するように、天才にも「苦手な球種や、苦手なコース」は存在する。

いいかえると

「苦手な球種やコースが存在すること」 は、
「平凡なバッターの証し」ではない。


平凡なバッターが「平凡」なのは
「苦手な球種やコースなのに、手を出してしまう」
からだ。

「苦手な球であるにもかかわらず、手を出して凡退してしまうのが、平凡なバッター」だとしたら、三冠王カブレラが本当の意味で優れたバッターなのは、彼が、「苦手な球を、振らずに済ますことのできるクレバーなバッター」だからである。


damejima at 01:01

September 18, 2012

16日のヤンキース対タンパベイ戦を見ていた人はわかると思うが、ポストシーズン進出のかかったこの重要なゲームで、タンパベイのBJアップトンは、ラッセル・マーティンのワンパターンのリードどおり、追いこまれてからアウトコースのクソボールのスライダーを繰り返し繰り返し空振り三振しまくってくれた。
よくもまぁ、ここまで何も考えずにバットを振り回せるものだ、と呆れたものだ。弱点さえ掴んでしまえば、同じ配球に何度でも引っかかてくれる。。正直、タンパベイらしい単調さとしかいいようがない。本当に単調。
タンパベイという貧打の単調なチームが、地区順位とまったく関係がなく人気がないのがよくわかる。監督ジョン・マドンがア・リーグ最優秀監督なんてものを受賞している理由がまったくわからない。
Grounders Grind Justin Upton's Progress to a Halt - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics


そのBJアップトンだが、さっきチラっと試合結果を見たら、今日のボストン戦では、代打ばかり出してまるで打てる気配の無いタンパベイ打線にあって、なんと、3安打しているのだから、驚く(笑)
Boston Red Sox at Tampa Bay Rays - September 17, 2012 | MLB.com Classic

これほど穴がハッキリしているワンパターンなバッターに3安打を許すボストンも、雑な野球をするもんだ、と思う。こういうつまらないゲームを、わざわざ時間を割いて見るのは、実に馬鹿馬鹿しい。


こういう雑なことが起きる原因は、大小2つ。

「小さい理由」は、アンパイア

このゲームのデータを調べてみると、球審Tim McLellandの右バッターのアウトコース判定は、特定バッターのときに「異常に狭く」なっている。ときにはゾーン内の球すら、「ボール」とコールしている。これでは特定の右バッターに対してピッチャーはアウトコースいっぱいを攻めるなどできない。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool 2012_09_17 BOS vs TB
ちなみに、Tim McLellandというアンパイアは、もともとストライクゾーンが縦長にできているタイプのアンパイアで、低めをやたらととる傾向がある。そして、Tim McLellandは、MLBで最もストライクゾーンの狭いアンパイアのひとりでもある。
Which umpire has the largest strike zone?


「大きい理由」は、ボストンの「甘さ」

アンパイアよりも、このほうが影響が大きい。アウトコースの判定の辛い試合なんてものは、掃いて捨てるほどある。特定のバッターに真ん中ばかり投げているのは、他のバッターは凡退させているわけだし、アンパイアのゾーンの狭さのせいより、むしろバッテリー側の不注意さに問題がある。

ボストンは、「BJに打ってもらわないと困る理由」でもあるのか?(笑) 他のバッターはうちとっているのに、ヤンキース戦で「穴」のハッキリしたバッター、BJアップトンには、どうぞ打ってくださいといわんばかりに、真ん中ばかり投げている。


4回裏 シングルヒット
2012年9月17日 BJアップトン 4回シングル


6回裏 シングルヒット
2012年9月17日 BJアップトン 6回シングル


9回裏 シングルヒット
2012年9月17日 BJアップトン 9回シングル


2012年 BJアップトン ホットゾーン


BJアップトンが好打者?
いやいや。ないない。ありえない。(笑) 投げるべきところに投げていれば、3安打されるようなバッターじゃない。
単にボストンが甘いだけだ。

打たれるところに投げなければいいだけのアダム・ダンマーク・レイノルズに、むざむざホームランを供給しているヤンキースといい、このところ打たれて当たり前の馬鹿げた配球を見ることが多すぎて、イライラする。おまえら、わざと打たれてんのか? と言いたくなるほどだ。

damejima at 11:23

June 09, 2012

注意してほしいのは、以下に示す話が、アンパイアの判定がいかにいい加減でブレるか、というサンプルを残す目的で書くのではないことだ。肩を壊して球速の落ちたメッツ出身のジェイソン・バルガスもそうだが、様々な理由によって球威が失われたピッチャーにとって、「バッターのインコースを突く」こと、そしてコントロールが、いかに生命線であるかを示しておきたいだけのことだ。


サブウェイシリーズは、もちろん今でこそインターリーグのヤンキース対メッツ戦をさすわけだが、歴史的にみるなら、かつてニューヨークに本拠地を置いていたチームといえば、1958年に西海岸に移転したドジャース、またはジャイアンツなわけで、細かいことを言わせてもらえば、本来のニューヨーク対決は、ドジャースかジャイアンツがかつての故郷ニューヨークに戻ってきてヤンキースとゲームをやることのほうが、よほど由緒がある、という部分がなくもない。(現実には、黒田とラッセル・マーティンの元ドジャースコンビが、ヤンキース側のバッテリーだったりした)
特に、20世紀初頭にヤンキースとの間で本拠地ポロ・グラウンズの使用をめぐるイザコザのあったジャイアンツが、ニューヨークに戻ってきてゲームをやるのは、なにか1世紀にもわたる因縁試合じみていて面白い(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年3月21日、1958年ドジャース、ジャイアンツ西海岸移転に始まる「ボールパーク・ドミノ」  (1)エベッツ・フィールド、ポロ・グラウンズの閉場
まぁ、そんな話はともかく。


シティ・フィールドでの前の登板でノーヒット・ノーランを達成し、サブウェイシリーズに臨んだメッツ先発ヨハン・サンタナは、2回にロビンソン・カノーに2ランを浴びてリードを許したものの、3回には立ち直って先頭打者カーティス・グランダーソンをインコースのストレートで見逃し三振、次のマーク・テシェイラも同じくインコースの球で内野ゴロにしとめ、3人目のアレックス・ロドリゲスを1-2と追い込んで、またもやインコース一杯に90マイルのストレートを投げて、自信があったのだろう、ダグアウトに帰りかけた。
New York Mets at New York Yankees - June 8, 2012 | MLB.com Classic

2012年6月8日サブウェイシリーズ ヨハン・サンタナ対Aロッド

だが球審Chris Guccione(クリス・グッチョーネ。同名のオーストラリア人のテニスプレーヤーとは別人)の判定は、「ボール」。

MLBの右バッターの典型的なストライクゾーンは、インコース、アウトコースともに、ルールブック上のゾーンからボール1個分くらい広いわけだが、毎度おなじみBrooks Baseballのデータでみると、たしかにこの球、ほんのわずかだが、内側に外れている。
2012年6月8日サンタナのAロッド4球目PitchFXデータ
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
だが、上の図で、赤い円をつけて示した部分を見てもらうと、緑色の▲(サンタナの投球のうち、見逃された球で「ボール」判定の球)がゾーン内、あるいはゾーンぎりぎりに点在していることでわかるように、今日の球審Chris Guccioneのストライクゾーンは、ストライクゾーン一杯の球はほとんとストライクコールしなかった。(同様に、ヤンキース先発黒田の左バッターのアウトコース一杯のストライクとも思えるギリギリ球も、ほとんど「ボール判定」されていた)


4球目のギリギリの球をボール判定され、カウントが2-2になって、サンタナはどうしたか。
4シームをもう少しインコースに寄せて、ゾーン内に決まるストライクを投げたのである。

結果、Aロッドはシングルヒット。

サンタナはその後、
カノーに2本目の2ランを打たれて崩れた。
ニック・スウィッシャー、ソロホームラン。
アンドリュー・ジョーンズ、ソロホームラン。

たった1球。されど1球。
怖いものだ。
特に、スウィッシャーに打たれたホームランは、インコースの「ルールブック上のストライクゾーン一杯」に4シームを投げて打たれたホームランだけに、悲哀がある。

だが、たとえ、インコース一杯に自信をもって投げた球を、ストライクゾーンの狭い球審にボール判定されてしまったからといって、怪我で球速が失われているヴェテラン投手としては、バッターをかわすために、勇気を振り絞ってインコースに投げこまないわけにはいかないのである。
いわば「インコースへの義務感」である。
ノーヒット・ノーランなどの大記録の後の登板は、えてして打たれまくるとか、そんなくだらない通俗的な話はどうでもいい。

きわどいところをとってくれない球審に当たったジェイソン・バルガスが打たれまくるときと、まったく同じ現象を見るようで、繰り返しホームランを打たれては、息を大きく吐いて自分を落ち着かせようとするサンタナを見るのはなかなかに辛いわけだが、これも今のサンタナの置かれた現状としてはしょうがないのである。ここでアウトコースに逃げるようでは、この先の彼のキャリアは先細ってしまう。


どんな辛いときでも、仕事に出かけていく。
それが「父ちゃん」というものだ。

次回の登板でも、そしらぬ顔をしてバッターのインコースをガンガン突きまくるヨハン・サンタナを見たい。

damejima at 11:39

October 05, 2011

なんとも恥ずかしい負け方である。

テキサスとタンパベイのALDS Game 4は、ホームラン4発でテキサスが勝利。
うち3本は、エイドリアン・ベルトレのホームランだが、打った球種はすべて「4シーム」。

このところ毎日「このポストシーズンは、先発投手はストレートで押そうとし、打者はストレートを狙いにきている」と、投手と打者の「ストレート勝負の様相」を書いているわけだが、タンパベイの監督ジョン・マドンは、結局のところ、何もわかってなかった。せっかく劇的な展開でボストンを逆転してポストシーズンに出てきたというのに、これではもったいなさすぎる。マドンは、マトモに分析もせず、行き当たりばったりな野球をやっているのだろうか。
タンパベイの主力投手ジェームズ・シールズが、ああいう「スカウティングとは無縁の、出たとこ勝負なピッチングばかりしている投手」に育ちつつあるのは、結局のところ、タンパベイ・レイズの「分析やスカウティングを重視しないチーム体質」に原因があることが、つくづくよくわかった。、
Texas Rangers at Tampa Bay Rays - October 4, 2011 | MLB.com Gameday



もちろん、今日のベルトレの3本のホームランの伏線は、昨日のGame 3、7回表に、2シームばかり投げていたのにテキサスが狙いをきちんと絞らないために打たれずにすんでいたデビッド・プライスの「初球の2シーム」を、いきなりヒットにしたことだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年10月3日、ALDS Game 3、7回になってようやくデビッド・プライスの2シーム攻略に成功するテキサスのゲーム運びの生温さ。

ベルトレがこのポストシーズンに入ってからずっと「ストレート狙い」をしてきたとは思わないし、また、テキサスが打線全体に「ストレート狙いを指示している」ようにも見えない。
ベルトレ個人が、Game 3の試合終盤になってベンチで突然「ストレート狙いをしてみよう!」とひらめいたのか、神のお告げか(笑)、なんなのか、それはまったくわからないが、とにかくGame 3の7回のベルトレのバッティングは「何かが違った」のである。
あの打席のベルトレは明らかに「初球から2シームを狙って」いて、そしてそのシングルヒットが、次のGame 4での3本のホームランにつながるのである。

Game 4でのベルトレの「ストレート狙い」がハッキリ確定できるのは、4回表の第2打席の3球目。シアトル在籍時代から「振りたがりの打者」で有名なベルトレが、ど真ん中のチェンジアップをまったくスイングしなかったのである。そして、次の球が、アウトコースの「4シーム」。狙いすまして、ライトスタンドへ。この日2本目のソロ・ホームランだ。

1本目のホームランは2球目の4シーム、3本目のホームランなどは初球の4シームをスタンドインしているのだから、明らかにベルトレは「ストレートに狙いを絞れていた」のである。(だからこそ、次の試合で打てるとは限らない、という意味でもある 笑)

2011年10月4日 テキサス対タンパベイ 4回表 ベルトレ ホームラン




damejima at 07:46

October 04, 2011

正直、3000本安打の記事の続きを書いている途中なので、そっちを優先して早くまとめたいのだが、ポストシーズンのゲームのメモも残しておかないと後々困ることになるので、しかたがない。

テキサス対タンパベイの、なにやら生温くて雑なALDS Game 3だ。
Texas Rangers at Tampa Bay Rays - October 3, 2011 | MLB.com Gameday


前の記事で、このポストシーズンは、ストレート系で押すピッチング、ストレート系を待つ打者が目立つ、と、書いた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年10月2日、ストレートで押すピッチャーと、ストレートを待つバッターと。ポストシーズン、ストレート勝負のゆくえ。

そういう意味では、テキサス対タンパベイのALDS Game 3は、ぬるいゲームでつまらない。
というのも、テキサス先発コルビー・ルイスが投球の60%弱、およそ3球に2球、4シームを投げていて、タンパベイ先発のデビッド・プライスの投げているのは、やはり60%程度2シームを投げている。
ストレート系が来る(特に初球)ことが、これほどハッキリわかりきっているゲームなのに、両チームとも狙いを絞るのに時間がかかり過ぎなのが、このゲームの6回までを非常につまらなくしている原因だ。

わかっていてもピッチャーのストレートがキレすぎていて、ヒットがまるで打てない、というのなら文句など言わない。だが、このゲームの両投手の出来はそれほどでもない。なのに、7回に至るまで点が入れられないのだから、凡戦としか言いようがない。


初球の真ん中のストレートを見逃して、難しい変化球に手を出すようなバッティングで無駄に凡退を繰り返して6回まで0-1と負けていたテキサスが、7回表に4点を入れることができた経緯はとても簡単だ。

7回先頭のエイドリアン・ベルトレが、デビッド・プライスの初球をシングルヒットにしたのだが、これが6回までテキサスが打てなかった「2シーム」だったから、タンパベイバッテリーはなにやら慌てたのである。

2011年10月3日 テキサス対タンパベイ 7回表 ベルトレ ヒット7回表 ベルトレ
シングル


どういうわけか知らないが、タンパベイバッテリーはかなり泡を食って、用心しだした。
もしかすると、バッテリーは、プライスの2シームだけでこのゲームを乗り切れると、甘く考えていたのかもしれないし、また、キャッチャーのジョン・ジェイソの経験不足が原因なのかもしれない。今日のGame 3、タンパベイの監督ジョン・マドンはベテランキャッチャーのケリー・ショパックではなく、若いジェイソを起用したからだ。
John Jaso Statistics and History - Baseball-Reference.com

ノーアウト1塁になって、次打者はマイク・ナポリ

ここでプライスは、2シームを狙われはじめたのにビックリしたからなのか、あれほど多投し続けていた2シームを投げる勇気を失った。これが打たれた原因。指が慣れていない変化球を連投したせいか、コントロールも乱れて、ワイルドピッチも犯し、ランナーはセカンドへ。
そうこうするうちにチェンジアップとスライダーをカットされて投げる球がなくなり、しかたなく、おそるおそる2シームを投げたところ、マイク・ナポリに「待ってました」とばかりに強振され、逆転2ラン。
わかりやすい話だ。

2011年10月3日 テキサス対タンパベイ 7回表 ナポリ 逆転2ラン7回表 ナポリ
逆転2ラン



結果からいえば、どういう理由でここまで時間がかかったのかわからないが、7回になってようやくテキサスは「2シームに狙いを絞った」わけで、タンパベイ側は、ベルトレに初球を打たれたことで慌てている間に4点をとられた。


見ている側からいうと、お互いの先発投手が初球から多投する球種をしっかり積極的に振っていかないのは非常につまらない。別に、このポストシーズンに執拗にストレートを狙い打ちしているヤンキースを見習えとは言わないが、もう少し、なんというか、頭を使った「狙いのハッキリしたゲーム」を「早いイニングから」やってもらいたいと思う。



damejima at 09:59

October 03, 2011

デトロイト対ヤンキースのALDS(ア・リーグ ディヴィジョン・シリーズ)Game 2は、デトロイトのクローザー、ホセ・バルベルデが、2失点と、ヨレヨレの情けないピッチングでようやく9回を投げ切って、デトロイトがタイに持ち込んだ。

9回裏2死1、2塁の場面で、Game 1で満塁ホームラン含む6打点と当たっているロビンソン・カノーを迎えたバルベルデは、ド真ん中に続けて3球もストレートを投げた。
よくまぁ、サヨナラ3ランを食らわなかったものだ(笑) あの場面、カノーがどれもこれもファウルにしてしまって打ち損じていなければ、バルベルデはサヨナラホームランを食らって負け投手になっていてもまったくおかしくない投球内容だった。
Detroit Tigers at New York Yankees - October 2, 2011 | MLB.com Classic


2チームの打線の狙いは対象的で、Game 1に続いてストレート狙いのヤンキースと、外のスライダー系狙いがデトロイト。Game 2終盤で出たヤンキースのソロホームランは、いずれもストレートだ。
クローザーは誰もが速いストレートを多投するから置いておくとして、このポストシーズンでは、ストレートで押す先発投手、ストレート待ちをする打者が目立つ
(ちなみに、フィラデルフィア対セントルイス Game 2に先発し12安打を打たれて負け投手になったクリフ・リーが、4回と6回に、ライアン・テリオに打たれた2本の二塁打、ジョン・ジェイに打たれた2本のタイムリーは、すべてカットボールとストレート。得意のカーブのコントロールが定まらない日のクリフ・リーが打たれる典型的なパターン)


デトロイト対ヤンキースGame 1は、本来は今年のサイ・ヤング賞間違いなしのジャスティン・バーランダー先発だったが、悪天候のために2009年のルール改正が史上初めて適用されて1回終了時降雨サスペンデッドになり、ダグ・フィスターが2イニング目以降を引き継いで、実質的にGame 1先発になった。
結果的に自責点6と打たれたフィスターだが、レギュラーシーズンではあれほどバランスよく変化球を投げて打者を封じ込めていたのに、どういうわけかポストシーズンの初登板ではやたらとストレートで押そうとして、ヤンキース打線のストレート狙いに嵌っている自分を最後まで修正できなかった
フィスターはポストシーズンでの登板経験が無いだけに、ちょっと舞い上がってしまったのかもしれない。いい反省材料にして、次回の登板では期待したい。

Game 1でフィスターの投げたストレート系は、4シーム20%、2シーム39%で、合計59%。率全体を見るだけでは、ストレート系の率そのものはレギュラーシーズンよりやや高い程度に見える。

しかし、細部を細かく見ていくと、かなり実態は違う。
2回裏に無死2、3塁の大ピンチを招いたラッセル・マーティンの二塁打、5回裏に打たれたロビンソン・カノーのタイムリー、大量失点の口火を切った6回裏のマーク・テシェイラの二塁打、同じ回の2死1塁で打たれたデレク・ジーターのシングル。
ゲームの要所で痛いヒットを打たれたこれらの打席では、フィスターは珍しくすべてストレート系だけしか投げていない。要所での単調な配球が裏目に出ているわけだ。(だから逆にいうと、本来の配球バランスと、二度目以降の登板で本来の落着きが取り戻せれば、ピッチングは変わるだろう。そういう意味で、心配はしてない)
特に、大量失点した6回裏の2死1塁の場面で、ジーターをもっと丁寧な配球で打ち取れてさえいれば、大ケガにならなかったかもしれないだけに、もったいなかった。
Doug Fister » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

かたやデトロイトのGame 2先発の速球派、マックス・シャーザーは、6イニングを2安打と好投。
アリゾナにいた頃は、70%どころか75%くらいストレートを投げていた投手なわけだから、このゲームのストレート率63%は、レギュラーシーズンの61.4%よりやや高い程度で、彼にしてみたらまだ低いストレート率といえる。
それでも、負ければ王手をかけられてしまう大事なゲームで、ストレートを待っている打者も多いヤンキース打線に対して、力で押して6イニングを2安打と牛耳ったのだから、なかなか度胸が据わっている。
Max Scherzer » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

フィスターのほうは、もともとコントロールのいいグラウンドボール・ピッチャーという位置づけの投手で、けしてストレートでグイグイ押すタイプというわけではない。かたやシャーザーは元々4シームで押す速球派なのだから、ストレートで押す、といっても、この2人の投手ではニュアンスが全く違う。やはり慣れないことはするものじゃない。


速球派といえば、タンパベイにGame 1で大敗を喫して先行きが危ぶまれたテキサスのGame 2に先発したデレク・ホランドが、5回1失点とまずまずの好投をみせて、テキサスが戦績をタイにもちこんだ。
Derek Holland » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball

Tampa Bay Rays at Texas Rangers - October 1, 2011 | MLB.com Gameday

デレク・ホランドは、レギュラーシーズン16勝5敗。
去年のALCS Game 4のヤンキース戦で好投したときに「ア・リーグ西地区のゲームを見るとき、ちょっと名前を覚えておいてほしい投手のひとり」と書いたように、今後に期待するピッチャーのひとりだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月19日、やっぱりデレク・ホランドは、いい。ALCS Game 4。
ただ、16勝5敗という今年の好成績がうれしくないわけでもないのだが、コルビー・ルイスもそうだが、テキサスの先発の成績は打線に助けられたにすぎない部分が多々ある。ホランドの好成績も、やたらとラン・サポートをもらった結果でもあって、手放しに喜べる結果でもない。
去年のポストシーズン、ホランドは、ALCSはともかく、ワールドシリーズでは良くなかったということもあるし、ボストンを逆転してポストシーズン出場を決めて意気上がるタンパベイとの対戦ではどうかなと思っていたら、5回1失点と、まずまずの結果。去年のワールドシリーズ登板がいい経験になっているのかもしれない。
2010 World Series - San Francisco Giants over Texas Rangers (4-1) - Baseball-Reference.com

ただ、テキサスというチームには、常にロン・ワシントンという「不安要素」がつきまとう(笑) この監督は舞い上がったら、ワールドシリーズでみせた、あの無様すぎる継投のようなことをしでかす人物だけに、切羽詰まって何をしでかすかわかったものじゃない。ビジターでは安心はできない(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月15日、まさしく監督の経験の差が出たテキサスのリーグ・チャンピオンシップ第1戦。ロン・ワシントンの「乱心」。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月28日、得点圏のピンチで、いつもインコースから入って大失敗するダレン・オリバーとマット・トレーナーのコンビ。ALCS Game 1とまったく同じ継投ミスをしでかしたロン・ワシントン。


同じ試合で、タンパベイのジェームズ・シールズが5回を7失点。
一度書いているように、シールズはどうも打者のスカウティングを全く参考にせず、自由気ままに投げる投手に見えてしかたがない投手で、ボルチモアの被ホームラン王、ジェレミー・ガスリーや、コルビー・ルイスと並んで、ア・リーグで最もホームランを打たれやすい投手のひとりでもある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月3日、打者のスカウティングを全く頭に入れてなさそうに見えるタンパベイのJames Shields。
シールズは、速球派のシャーザーやホランドと違って、チェンジアップやカーブを多投するピッチャーだが、テキサスからはキャリアで5勝2敗と、対戦成績は悪くはないはずだったが、今回はテキサスの強力打線をかわしきれなかった。
それでも、投げた球種はいつものように、ストレート、チェンジアップを3分の1ずつ、あとの3分の1はカーブとスライダー。どんな状況のゲームであってもマイペースの配球をするのが、いかにもシールズらしい。
James Shields » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball


やはり、大舞台となると投手は自分の力を試してみたくなるものだろうし、ストレートでグイグイ押してみたいとか、はやる気持ち(それは同時に舞い上がっている証拠でもあるが)も、わからないでもない。
打者のほうも、追い込まれるまでは、変化球の甘いストライクに目もくれず、ストレート1本に絞って強振してくる打者も多くみかける。
始まったばかりのポストシーズンは、ある意味、例年どおりのチカラ勝負で始まったようだ。

だが、この状態がずっと続くとは限らない。

2010年のNLCSでは、サンフランシスコがフィラデルフィアにわざと「ストレートで勝負しない作戦」をとることで、ワールドシリーズ連覇に向けてはやる気持ちを抑えられないフィリーズに見事に勝利を収めている。
こうしてみると、あのときの「ストレートで勝負しない」という戦略が、気持ちの高ぶりがちなポストシーズン専用の戦略としては、かなり大胆かつクレバーだったことが、よくわかる。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート(11) なぜライアン・ハワードは9回裏フルカウントでスイングできなかったのか? フィリーズ打線に対する"Fastball Count"スカウティング。


最後までポストシーズンを牛耳るカギは、シャーザー、ホランド、バルベルデにみられる「ストレート」か。それとも「変化球」か。


damejima at 10:28

June 04, 2011

ちょっと書いていて気が重くなるような記事を書いたばかりなので、ちょっと気ばらしに、昨日のタンパベイの先発、James Shieldsのことでも書いてみる(笑)

ボルチモアのジェレミー・ガスリーが、好投手なのに、やたらホームランを打たれるタイプの投手なことを書いたばかり(http://blog.livedoor.jp/damejima/archives/1599392.html)だが、タンパベイのJames Shieldsも、防御率2.77で、ア・リーグ防御率ランキング8位、WHIIPも1.04でランキング10位というのに、その一方ではガスリーと並んで、ア・リーグで最もホームランを打たれている投手3人のひとりでもある。(ほかの2人は、カンザスシティのルーク・ホッチェバー、テキサスのコルビー・ルイス
Major League Baseball Stats: Sortable Statistics | MLB.com: Stats

また、今年29歳の彼は、20代の現役投手の中で最もホームランを打たれている投手3人のうちのひとりでもある。(他の2人は、ナショナルズのマイナーにいる元メッツのオリバー・ペレス、LAAのアーヴィン・サンタナ。ペレスも元・奪三振王)
現役投手の被ホームラン・ランキング
Active Leaders & Records for Home Runs - Baseball-Reference.com

James Shieldsのこうした「三振か、ホームランか」という傾向はなにも今年だけのものではなくて、過去何年か見ても、彼は、被ホームラン・ランキングは「自分の庭」とばかりに(笑)毎年のように顔を出している「被ホームラン・キング」なのだ。

2007 AL 28 (3rd)
2009 AL 29 (2nd)
2010 AL 34 (1st)
2011 AL 12 (3rd) 2011年6月2日現在
James Shields Statistics and History - Baseball-Reference.com

ちなみに、こっちは「被ホームラン・ランキングのもうひとりの王様」ジェレミー・ガスリーのランキング。2009年の王様がガスリー、2010年はJames Shields、というわけ。
2009 AL 35 (1st)
2010 AL 25 (7th)
2011 AL 10 (7th)  2011年6月2日現在
Jeremy Guthrie Statistics and History - Baseball-Reference.com


James Shieldsは2010年被ホームラン・キングでもあると同時に、奪三振187、9イニングあたりの奪三振率8.277と、奪三振ランキングの上位でもある。どうしてまたこういうことになるのか?
それはたぶん、「打者の打撃傾向をほとんど考えずに、自分の投げたい球を、自分のピッチングスタイルに沿って投げている」という点にあるのだろう、と思う。

昨日のゲームでShieldsが浴びたホームランは4本だが、そのうち2本を打ったのはカーロス・ペゲーロセーフコのカーロス・コールにならって、あえてカルロスとは書かない 笑)。
ペゲーロは、シアトルのゲームをよく見ている日本のファンなら誰でも知っているが、典型的なローボールヒッターだ。
ペゲーロが特に好むのは、真ん中低めの、それもストライクからボールになるチェンジアップのような球だ。
ある種、どんな悪球でもヒットにしてしまうボルチモアの悪球王ウラジミール・ゲレーロのようなタイプだが、まだまだ名前だけ似ているだけでゲレーロよりずっと格は落ちる。ペゲーロは高めのストレートがウイークポイントで、間違いなく空振りしてしまい、ほとんど打てない。(要は、高めストレートの得意なジャック・カストと真逆のタイプ)

なのに、Shieldsは、2回裏にそのペゲーロ(ゲレーロではない。ややこしいな 笑)に、彼の一番の大好物の「真ん中低めのチェンジアップ」を、それもご丁寧に、初球と3球目、2球も投げてくれて、3ランを打たれてしまう。
そして、3ランだけでプレゼントは足りず、4回裏ペゲーロの次の打席でも、低めのカーブを初球、2球目、4球目と投げてくれて、この日2本目のホームランまでプレゼントしてくれる。
これはまさに文字通り、献上だ(笑)。ビッグなプレゼントくれるのはありがたいけど、ホームランを打たれた次の打席の初球に、また「低めの変化球」を投げてきたときには、かえってビックリした。「まだホームランを打たれ足りないのか?」と、即座に思ったら、思った通りの結果になったわけだ(笑)


Shieldsはどうも、「打者のスカウティングを、まったく気にせず投げている」ように見える。

と、いうのも、2回裏にジャック・カストにソロ・ホームランを打たれた場面でも、カストの大好きな「やや高めのストレート」を3連投、4回裏にジャスティン・スモークにソロ・ホームランを打たれたときも、彼の大好きな低めに落ちていく変化球を2球投げているからだ。
そもそもカストは、体を寝かせながら打つ独特のアッパーカットのフルスイングで高めの速い球を打ち上げるのが得意な打者で、逆に、低めの変化球は苦手だ。
またスモークも、高めの速いストレートにはいつも振り遅れるなど、得意な球だけを打てる打者で、苦手な球はほとんど打てない。

ペゲーロ含め、3人が3人とも、得意不得意が非常にハッキリしている打者なのに、Shieldsは彼らの得意な球ばかりを投げているのだ。
先日マイナーに落ちてしまったマイケル・ソーンダースも、高めには滅法強いが、インコース低めに落ちていく変化球が苦手だったが、Shieldsのピッチングは、いわば「ソーンダースに高めのストレートを連投するピッチングをしているようなもの」だ。

さらに言えば、彼は「このイニングは、低めのチェンジアップでいく」と決めたら、そのイニングの最初の3人のバッターに、低めの好きな打者がいようと、チェンジアップが好きな打者がいようと、おかまいなしに低めのチェンジアップを投げるし、それで低めのチェンジアップが打たれてしまった後はというと、「チェンジアップはダメか。よし、こんどはアウトコースいっぱいを攻めるゾ!」と方針を変え、こんどは誰彼かまわず「アウトコースばかり」攻めるような、一本調子なピッチングを実際にやっている。

うちとれているうちはいいが、ほんのちょっとでもツボにはまれば、間違いなくスタンドに放り込まれてしまう、Shieldsはそういう「こわれやすいガラスのエース」である。


だが、まぁそうは言っても、Shieldsの「三振か、ホームランか」という、「イチかバチか感のピッチング」は、たぶん毎日見ていれば、日頃投球術がどうのこうのと、11三振とるようなフェリックス・ヘルナンデスにもうるさく言っている投球術フェチ(笑)のブログ主も、おそらくファンになってしまうような、「アブない魅力」を兼ね備えているのも事実だ(笑)

タンパベイの監督ジョー・マドンは、マイク・ソーシアのベンチコーチをつとめられるような頭のいい人なのだから、「打者のことも、ちょっとは頭に入れて投げろ」とアドバイスするくらいのことは考えたはずだが、たぶんJames Shieldsの荒削りの魅力が削がれるくらいなら、欠点を直すのはあえて止めておこう、と、思ったのかもしれない。
MLBに入ったばかりの頃のベーブ・ルースだって、グリップが上下逆だった。だから、20本や30本のホームランくらい許してやるから、三振を200くらい獲ってこい!、というのが、粋、というものかもしれない。






damejima at 06:46

October 29, 2010

同じ失敗を何度も繰り返している人間を見るのが、
他のどんなことより嫌いだ。


2010ワールドシリーズワールドシリーズGame 2は、ALCS(=ア・リーグのリーグチャンピオンシップ)Game 1、CJウェイルソンが投げて楽勝のはずが、ゲームの最後にヤンキースに大逆転負けしたゲームと、まるで同じ展開。非常に気分が悪い。
Texas Rangers at San Francisco Giants - October 28, 2010 | MLB.com Gameday

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月15日、まさしく監督の経験の差が出たテキサスのリーグ・チャンピオンシップ第1戦。ロン・ワシントンの「乱心」。

ALCS Game 1の継投パターンは、今日とまったく同じ。
CJウィルソンが好投し、終盤にランナーを出してしまったところで、ロン・ワシントンは、よせばいいのにダレン・オリバーを出した。オリバーは打者に初球インコースの球ばかり、投げては打たれ、投げては打たれ、あれよあれよという間にテキサスは逆転負けしてしまった。


今日のWS Game2もまったく同じ。

先頭打者を四球で出してしまった後、どうも指のマメがつぶれて出血でもしたらしいCJウィルソンが突然降板。嫌な予感がしたのだが、案の定、監督ロン・ワシントンダレン・オリバーを出してきた。

オリバーは、ハフウリーベレンテリアと、3人の打者に、またしてもインコースばかり投げ、ウリーベにこのゲームを決定するタイムリーを打たれた。(もっといえば、Game 1のウリーベの3ランもインコース。テキサスのキャッチャーはいい加減、インコースの勝負どころを考えるべき)
この日ソロ・ホームランを打っているレンテリアにしても、昨日のゲームを実質決めた3ランを打っているウリーベにしても、サンフランシスコの下位打線のフリースインガーたちがゲーム中盤以降に狙っているのは、常に「0-0、1-0を含むFastball countsにインコースを振り回すこと、特にインコースのストレート」しかないと思うのだが、なぜまた、その待っているインコースにばかり投げたりするのか。(他のサンフランシスコの打者も、ほとんどがFastball Countsではストレート系を振ってくる)
タイムリーを打ったウリーベへの配球より、むしろ、レンテリアへの配球が酷い。よくあれで2本目のホームランを打たれなかったものだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月24日、メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート(11) なぜライアン・ハワードは9回裏フルカウントでスイングできなかったのか? フィリーズ打線に対する"Fastball Count"スカウティング。

CJウィルソンの後にいつもまずダレン・オリバーを投げさせることもよくわからないが、さらにそのダレン・オリバーが、マット・トレーナー相手に投げると、いつもこういう「インコース一辺倒な単調な攻め」をして、痛すぎる失点をし、CJの作った投手戦をぶち壊して、貴重なゲームを失っているのが、本当によくわからない。
そしてロン・ワシントンは決定的な失点をしておいてから、さらになんだかんだ失敗を積み重ねておいてから、結局ホランド。

まるでALCS Game 1の二の舞だ。


挙句の果てには、9点差の完封負け寸前の場面なのに、
スターターのハンターに投球練習までさせた。

馬鹿か。ロン・ワシントン。






damejima at 11:45

October 25, 2010

NLCS Game 6
9回裏、2死1、2塁。フルカウント。
ライアン・ハワードはなぜ、
あの、きわどいブレーキングボールを振らなかったのか?

ESPNJorge Arangure Jr.の興味深い記事によると、ハワード本人いわく、「ここでブレーキングボールが来ることはわかっていた。でも『ボール』だと思ったから振らなかった」のだそうだ。
So realistically, Howard knew that Wilson likely would throw a breaking ball. When it came, Howard was not surprised. He simply didn't think it was a strike. So he didn't swing.
MLB Playoffs: Philadelphia Phillies' run as National League champions comes to an end - ESPN


NLCSでフィラデルフィアは、得点圏にランナーを送る得点チャンスが45回もありながら、得点できたのは、わずか8回。またライアン・ハワードはNLCSの22打席で、12打席も三振した。
これらのデータは、2010年のポストシーズンでフィラデルフィアがいかに「打撃面で失敗してしまっていたか」を示していると同時に、ナ・リーグ各チームが、今年のレギュラーシーズンにおいて、いかにフィラデルフィア打線のスカウンティングに成功していたかも意味すると、ESPNのJorge Arangure Jr.は考える。

ライアン・ハワードが、ここで自分が凡退したらNLCSは終わりという、あの緊迫した場面で、「変化球が来るのがわかっていた」と自分で言うわりには、思い切りのいいバッティングができなかった。
このことの背景についてESPNの記事は「フィラデルフィア打線の『ストレート狙い封じ』のスカウティングが効を奏した」としている。

詳しいことは、後で説明するとして、もしハワードが「変化球が来るのがわかっていた」とまでいうなら、ボールを見極めて押し出しのフォアボールを選ぼうとするような「消極的バッティング」をせずに、なぜ、むしろ積極的にきわどい球をスイングして、タイムリーでヒーローになろうとしなかったのか、または、カットしなかったのか、誰しも疑問に思ったはず。
それに、すでに記事にしたように、今年のNLCSの審判団は必ずしもフィラデルフィア有利な判定をしてはくれないことはわかっていなければならなかった。
「変化球がくるとわかっていた」「ボールだと思った」は、残念ながら、単なる言い訳に聞こえてしまう。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月21日、ちょっと心配になるロイ・ハラデイの「ひじ」と、「アンパイアのコール」。今日の球審は、今年8月、これまで一度も退場になったことのないニック・マーケイキスと、監督バック・ショーウォルターを退場にしたJeff Nelson。



fastball counts


ESPNの記事は、フィラデルフィアの打者がNLCSで「精彩のないバッティングに終始した原因」を、こんな風に分析している。
All year, teams had stopped throwing the Phillies fastballs in fastball counts, a result of enhanced scouting -- and the byproduct of years of offensive success.
「スカウティングが進んだ結果、シーズン通じて、対戦相手のチームがフィリーズに fastball countsで、ストレートを投げてこなくなった。これはフィラデルフィアが打撃面において成し遂げ続けてきた成功の副産物だ。」


この記事のいう「fastball counts」というのは、もちろん3-0などの「投手がストレートを投げてきやすいカウント」を意味するわけだが、その背景にはやはり日米の配球の考え方の差異があり、それを踏まえてから読まないと、意味がわからなくなる。

メジャーの場合、カウント2-0、3-0のような「ボール先行カウント」は、イコール「投手がストライクゾーン内に確実に投げやすい球種であるストレートを投げて、カウントを改善すべき場面」を意味する。だからほぼ「ボール先行カウント」が、ほぼfastball countsであることになる。

だが日本では、かつて紹介した阪神・ブラゼルのコメントや(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』 序論:2009年9月30日、大投手ハラデイの「配球芸術」を鑑賞しながら考える日米の配球の違い)、ファンの野球観戦経験からもわかるとおり、日本では、「カウント3-0、2-0でも変化球を投げる野球文化」が発達しているために、「ボール先行カウント」がfastball countsには、ならない。


ただ、メジャーでいうfastball countsには、いくつか違う説明パターンがあることには注意しなければならない。

1)3-1、3-0の2つ。いわゆる「ボール先行カウント」のうち、3ボールになっている場合のみを指す。
例:fastball count - Wiktionary

2)2-0、2-1、3-0、3-1の4つ程度。いわゆる「ボール先行カウント」のうち、3ボールの場合だけでなく、2ボールのケースも含む。
例:Be A Better Hitter -- The Pitch Count

3)ブログによる補足項目:
アメリカでの定義としては上の2項目が正しいだろうが、さらに0-0、1-0を加え、打者側からみた「ストレートを強振していいカウント。ストレートを狙い打つのが効率のいい打撃につながるカウント」と、広く考えてみたい。具体的には、0-0、1-0、2-0、2-1、3-0、3-1。平たい日本語でいなら「ヒッティングカウント」。 資料例:Hitting by Count

fastball countsの定義として正しいのは上の2項目だろう。
しかし、この2つの定義だけだと、ESPNの記事がいう「ストレート狙いのフィリーズ打線に対するスカウティングが厳しくなって、fastball countsでストレートが来なくなっている」という話に完全にフィットしているようには思えない。
2-0や3-0などの、いわゆる「ボール先行カウント」限定でストレートを投げるのを止めるだけで、フィラデルフィア打線を湿らせることができると思えないからだ。
むしろ、「カウント0-0、1-0も含めたヒッティングカウントの多くで、ストレートが来なくなった」と考えるほうが、より記事の主旨に合う感じがする。

そこで、いちおう補足項目3も付け加えておくことにした。3では、ほぼfastball counts=ヒッティングカウントという意味でとらえている。
早くストライクをとって早く打者を追い込みたいメジャーの場合、0-0や1-0のような「早いカウント」も、ストレートが配球されやすいカウントであり、それは、打者側からすると「ストレートを狙い打ちすることで、ヒットを稼ぎやすいカウント」ということになる。


さて、fastball countsで、ストレートが来なくなる」と、打者の打席でのパフォーマンス、そしてゲームの流れは、どう変わってくるのだろう?

damejimaノート風にいうと、こんな風に解釈できる。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート

「1人の打者に投げる球数」が多くなる
●フルカウントや2-2のようなカウントが多発する
●結果、ゲーム時間がだらだらと長くなる

と考える。


何度となく書いてきたように、メジャーの典型的な配球の思考方法というと、「ストレートで入って、カウントを作り、変化球で決める。典型的な決め球をひとつだけ挙げるとすると、ホームプレートの真上に落ちる変化球」ということになる。
また、2-0、3-0といった「ボール先行カウント」では、メジャーの投手は必ずストレートでストライクをとりにくる。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(1)「外角低め」「ストレート」という迷信

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(3)「低め」とかいう迷信 あるいは 決め球にまつわる文化的差異

比較:日本の配球文化
日本野球では最も典型的な決め球は、アウトコースの低め一杯に決まるストレート(またはスライダーやフォーク)。アウトローで勝負するのが安全であり、理想的という考え方が根強くあり、メジャーとはまるで逆。また日本では、2-0、3-0というボール先行カウントでも、投手は変化球を投げる。これもメジャーとは逆。


さて、ESPNの記事に戻ると、2009年までフィラデルフィアの打撃が劇的にうまくいっていた理由は「fastball countsで、投手のストレートを打ちこなしていたこと」にあることになる。
Fangraphのデータで確かめてみると、たしかに2008年、2009年のフィリーズは、ナ・リーグで最もストレートに強いチームだった。どうやら、2010年にスカウティングされ対策されるまでのフィラデルフィアの打者が「ストレートを打ちまくって、荒稼ぎしていた」のは、どうも確かなことのようだ。
だが、2010年になって事態が変わり、ストレートへの対応力は急激に下がっている


2008年のPitch Value
National League Teams » 2008 » Batters » 7 | FanGraphs Baseball
2009年のPitch Value
National League Teams » 2009 » Batters » 7 | FanGraphs Baseball
2010年のPitch Value
National League Teams » 2010 » Batters » 7 | FanGraphs Baseball

2009年までのフィラデルフィアの打者たちは、ストレートを狙い打ちして、ヒットを荒稼ぎしてきた。だが、2010年に突如として「ストレートが来るのを期待できなくなった」ということは、フィラデルフィアの打者にとって、どういう意味があっただろう?

メジャーのfastbal countsは、ほぼ「ボール先行カウント」と重なるわけだが、さらに細かいことを言えば、「早いカウント」や「インコース」などにも、「投手がストレートを投げてきやすいカウントやコース」は点々と存在している。
例えば、早いカウントで狙い打ってヒットを稼がせてくれた「ストライクになるストレート」が来ない。インコースを変化球でえぐられる。1-0、2-0、3-0などの「ボール先行カウント」ですら、いくら待ってもストレートが来ない。そういう投手の巧妙な攻めにばかり遭遇するシーンが、フィラデルフィアの2010年レギュラーシーズンに多々あったのかもしれない。

予想されるシチュエーション
●早いカウントから変化球のオン・パレード
●投手は、勝負どころでのストレート勝負を避けてくる。また、早いカウントでも、ストレートは投げない。ストレートで早め早めに打者を追い込もうともしない(特にランナーズ・オンの場面)


変化球のボール・ストライクの見きわめを要求される中で、じっくり待球型のバッティングをすることは、四球が多いことで有名なボビー・アブレイユばりに、たくさんの変化球の中から「自分の打てる球」を探りあてられる能力が求められる。また、フルカウントや、2-2などのカウントでも、きわどい変化球に対応できる柔軟性を求められる。

そういう能力は急には身につかない。

変化球に苦戦し続けているうちに、いつのまにかフィラデルフィアの打者から「かつての勢い」が消えていくのが、なんとなく想像できる。
たしかに、もし「いかにもストレートが来そうなカウントで、突然、ばったりとストレートが来なくなった」なら、打者としては非常に苦しい。
2010年シーズンのフィラデルフィアの打者は、要所要所で遭遇する数多くの変化球への対策を見つけられないまま、ポストシーズンを迎えたのかもしれない。


9回裏2死1、2塁。ライアン・ハワードの打席に戻ってみる。

ここまで書いてくると、NLCSの最終戦、Game 6の最終回の様相が、簡単ではないことがわかってくる。
San Francisco Giants at Philadelphia Phillies - October 23, 2010 | MLB.com Wrap

2010年10月23日 NLCS Game 6 9回裏 ハワード 三振

初球ストレートの空振り
前の打者、チェイス・アトリーは四球で歩いて、1塁走者を得点圏に押し上げることに成功した。
それだけに「四球直後の初球を狙え」というセオリーどおりに言えば、ハワードにとって、初球の、四球直後にストライクを取りにきた真ん中高めのストレートこそ、まさにfastball countsだったはず。
だがハワードは、その、まんまとやってきた「真ん中高めのおいしいストレート」を空振りしてしまっている。これは大失態といっていい。

4球目、2-1からの「スライダー」の見逃し
この打席で投球された7球のプロセスで、上に書いたfastball countsの定義に最もあてはまるシチュエーションは、カウント2-1からの4球目だ。ここでストレートが来てもおかしくない。
だが、このfastball countsでサンフランシスコのクローザー、ブライアン・ウィルソンが投げたのは、アウトコースいっぱいのスライダーであり、ストレートではなかった。
ハワードは、この4球目、fastball countsの定石どおり、ストレートを待っていたのだろうか? そこまではさすがにわからないが、ともかくライアン・ハワードは4球目のスライダーを見逃し、カウント2-2と追い込まれてしまった。

7球目、フルカウントからの「スライダー」の見逃し
そして、7球目。6球目のインコースのストレートをファウルしていたハワードは、7球目の真ん中低めいっぱいのスライダーに手が出ない。三振。ゲームセット。


終わってみると、ブライアン・ウィルソンの配球全体の流れそのものは「ストレートから入って、変化球で決める」という、典型的なメジャー的配球をした。大きな視点でみた場合、ウィルソンの配球はメジャーの典型的パターンで、とくに変わった点はない。
では細かい点で、とくに変わった点はあるだろうか。探せば、やはり4球目のfastball countsに目がいく。この「ストレートを投げることが多いボール先行カウント」で、「ストレート」ではなく「スライダー」を投げた4球目だけが、風変わりといえば風変わりであることに気づく。
そしてライアン・ハワードは、2009年までのフィラデルフィアの打者がそうだったように、ストレートは基本的に振り、変化球は基本的に見逃した。人間、習慣はなかなか変えられないものなのだ。


なるほど。
そういうことか。と、思う。

この「要所でフィラデルフィア打線にストレートを投げない戦略が、いかにフィラデルフィアの打者たちの狙いを迷わせたか」という視点で、このNLCS全体を見直してみたくなった。
2010 Postseason | MLB.com: Schedule






damejima at 12:38

October 04, 2010

9月26日の記事で、
「日本のプロ野球セ・リーグではいま、ちょっとやそっとの補強では埋められないほど、チーム別スタッツに大差がついている。」と書いた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月26日、ソフトバンク優勝でハッキリした「城島獲得を渋ったかつての投手王国ソフトバンクと、高額ダメ物件・城島に手を出した阪神」との大差。

城島が3割バッターをズラリと並べながら横浜・村田に9回逆転3ランを浴びて無様に優勝を逃した頃、ほぼ同時に「横浜が身売り」「阪神マートン・シーズン安打記録更新」「有力な選手多数のメジャー移籍」などのニュースが日本の野球界を賑わせているが、それらのニュースにはすべて同じ底流が流れていると思う。
それは「拡大と固定の一途を辿るチーム間格差」だ。

ちょっとセ・リーグ某球団の3人のバッターの対戦球団別スタッツを眺めてみる。(日本時間2010年10月4日現在(たぶん(笑))。A〜Eは対戦相手で、全てセ・リーグ)
誰でもわかる際立った特徴があるから、3人のプレーヤーの名前と所属球団を特定するのは、数字に慣れている人ならまったく難しくない

打者A
  打率 打数 安打 HR 打点 三振 四球 死球
A .236  89  21  4  11  5  3  4
B .276  87  24  3   9   8  5  4
C .295  88  26  7  21  8  5  2
D .278  97  27  8  20  9  1  5
E .382  89  34  3  15  10  5  0
チームEを除いて再計算すると、リーグ内シーズン打率は.271
交流戦パ・リーグ上位2チームに対する打率は.250、.267

打者B
  打率 打数 安打 HR 打点 三振 四球 死球
A .239  92  22  6   8  27  4  1
B .228  92  21  5  19  35  3  0
C .315  89  28  5  21  19  5  2
D .327  101  33  7  19  25  4  1
E .402  87  35 14  31  19  5  0
チームEを除いて再計算すると、リーグ内シーズン打率は.278
交流戦パ・リーグ上位2チームに対する打率は.067、.273

打者C
  打率  打数 安打 HR 打点 三振 四球 死球
A .292   96  28  2  10   8   9  0
B .302  106  32  6  18  11  4  1
C .455  101  46  4  22  13  5  0
D .356  101  36  4  24  11  11  2
E .370   92  34  0   6   7   9  0
チームA、Bのみ対象に再計算すると、シーズン打率は.297
交流戦パ・リーグ上位2チームに対する打率は.412、.250
「無安打が27試合ある一方、猛打賞23試合と固め打ちが目立つ」(某国内メディア)のも当然。特定チーム相手に安打数を稼いだ

ついでに、打者Aが打ったホームランのうち、7月中旬以降にホームランを打った相手球団をアルファベットで並べてみる。C、D、Eばかりなのがわかる。

E C C A D D D D C C E B D D


もちろん、わかる人は既におわかりのように、上に挙げた3人の打者の所属球団は「阪神」であり、また打者Aは「ダメ捕手城島」である。
彼らは下位球団との対戦でのみ「4割前後もの超高打率」を残し、打者Bなどは「単一チーム相手に14本ものホームラン」を記録し、打者Cは「単一チーム相手に46本ものヒット」を記録している。
セ・リーグ下位球団が、上位球団の一部バッターに、どれほど異常な高打率 (あるいは多数のホームラン) を供給し続けているか」、説明しなくてもわかると思う。


こうした異常事態は、既に何人かのプロ野球ファンが気づいてブログ等で記事にしている。
こんな単純なデータが頭に入っているだけで、ダメ捕手城島が「お客さん」であるはずの横浜に逆転3ランを供給したことの惨めさや、その後の「お得意さま」広島戦で無駄に城島が「想定内ホームラン」を打つことの無意味さは、子供でもわかるのである。(メジャー時代にも城島は同地区の弱小チーム、オークランド戦などでばかり打っていた)

だから、メジャーから逃げ帰ったヘボ打者が下位球団だけを相手に達成するかもしれない「まやかしの3割30本」などより、いま日本のプロ野球にとって大きな問題だと思うのは、9月30日の記事でも書いた「なぜ日本のスカウティングがこれほどまでに遅いのか。十分に機能していないのか」という点のような気がする。
どうも、データを見るかぎり、下位球団に限って、苦手な打者にいいように打たれまくっているのを「放置」しているのではないか、という気がしてしょうがないからだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月30日、逆転3ランを打った村田が「なぜ、あれほど勝負のかかった場面で、高めのクソボールを強振できるのか?」についてさえ、何も書かない日本のプロ野球メディア、野球ファンの低レベルぶり。


プロ野球ファンの人たちは現状をどう感じているのだろう。

例えば「有力選手多数のメジャー流出」という話だが、もしブログ主が「リーグ下位球団に所属する数少ない主戦投手」だとしたら、チームにさっさと見切りをつけて「メジャー移籍」に走る。
理由は、「リーグの上位球団に有力プレーヤーがますます集まる現状があって、どう戦っても勝てそうにないから」というのではなくて、むしろ「自分の所属する下位チームが、きちんと対戦相手を研究せず、また研究結果をできるだけ早くゲームに生かそう、苦手な対戦相手をなんとか負かそうという姿勢にあまりにも欠けていて、無為無策に負け続ける」からだ。

野球選手には「優勝できる球団でなければやりたくない」という選手ばかりがいるわけではない。「自分の置かれた限定された境遇に負けずになんとか頑張って、好成績を残したい。チームに貢献して上位にしたい。優勝したい」と考える男気のある選手も少なくない。
しかし、それにしたって、2010シーズン終盤に快進撃したボルチモアのように、ボストンのクローザー、パペルボンすら打ち崩して自信を取り戻し「有名選手が集まっていなくたって勝てるんだ!」と気概に燃えていればともかく、現役時代の秋山が入団する前のソフトバンクのように練習はロクにしないわ、シアトルの無能なベンチコーチロジャー・ハンセンのように練習の狙いそのものがあまりにも的外れだわ、セ・リーグ下位球団のように、打たれまくっている打者がわかっているのに何度でも打たれ続け、負け続ける、なんて事態が長く続けば、誰だって嫌になる。
嫌にならないわけがない。


どうもブログ主には「日本、特に下位球団では、相手チームのスカウティングをあまりに怠っているか、たとえしていても、対策速度があまりにも遅すぎる」という問題が、結果的に「下位球団(特にセ・リーグ)の異常な弱体化」を招いているような気がしてならない。(以下にオリックスの例を挙げた。対戦チームが同じリーグだけみても5チームあるのに、どうすると4人でデータが満足に収集できるというのか)

例:上位チームと下位チーム スコアラーの人数格差
セ・リーグ優勝の中日 10人
オリックス        4人
4人じゃ勝てない オリックス データ収集から見直す(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース

原因は何だろう。下位球団に金がなくて、分析スタッフを雇ったりデータを買う予算がないのか。データ自体を軽視して、昔ながらの勘だけで古臭い野球をやっているのか。データに金をかけるくらいなら選手に金をかけたほうがいいとでも思っているのか。それとも、いい捕手を育てるための素材や育成スタッフに恵まれないのか。それとも、野球はいくら打たれても、自分も打てばなんとかなる、とでも思っているのか。
詳しいことはよくわからないが、まぁ、何億もかけて見かけ倒しのキャッチャーを買ってくるより、数千万円程度でデータを買って既存の給料の安いキャッチャーに覚えてもらうほうが、よほど大金を使わずに済ませられると思うのだが、どういうものか、「同じ打者に、何度でも、何十回でも、果てしなく打たれ続ける球団」は無くなりそうにない。

よく、いい選手には打たれてもしょうがない、と言うが、この場合どうだろう。
上の3人の打者のデータで、Eというチーム(横浜だが)の死球数を見てもらうとわかるが、チームEは3人の打者にただのひとつも死球を与えていない。もちろん打者にぶつけろなどと言っているのではない。そうではなくて、要は、「きわどいところにズバンと決めにいくような厳しい攻めをしてないのではないか」と言いたいのである。

もちろんメジャーには来たい選手はどんどん来ればいい。誰だっていつか世界最高峰の舞台でプレーしたいと願うのが当然だ。
だが、もし、こういう下位球団の抱える問題が放置されて招いたデメリットとして、「せっかく下位球団で頑張ってきた主力選手の『我慢の糸が切れた』ためのメジャー流出」や、「勝てない下位球団の赤字による身売り」が発生しているのだとしたら、そういうネガティブな方向で達成されるメジャー移籍やフランチャイズ分散はちょっといただけない事態だと思う。
メジャー移籍やフランチャイズ分散はもっとポジティブな意味で実現されるべきだし、これでは日本野球の体質改善が進みっこない。


だからこそ、飛ばない国際球(あるいはメジャーのボール)への対応を進めるどころか、かえって「飛ぶボール」を採用し、打てる打者をズラリと揃えて、スカウティングが弱体で投手力も弱い下位球団だけを打ちまくった挙句に、やがてスカウティングの遅い下位球団にすら研究されはじめると途端に打てなくなって得点力が急降下していき、最後の最後に、お得意さんのはずの球団から劇的な9回逆転3ランを食らって優勝を逃す球団の正捕手が「どれだけ恥ずかしい」か。

この恥は野球史に残るレベル、と言うのは、そういうことだ。






damejima at 19:46

August 03, 2009

以下は打率、出塁率、長打率、OPSの順
ロブ・ジョンソン(2009年8月1日)
.216 .294 .335 .629
城島      (2009年7月31日)
.257 .288 .357 .645

参考)Griffey Jr.(2009年7月31日)
.223 .330 .401 .732

ロブ・ジョンソンとコネ捕手城島の打撃成績をパッと見ると、打率こそ見た目に4分ほどの違いがあるというだけの理由で、先入観だけで「打撃だけはロブ・ジョンソンより城島のほうが上」と思いこんでいる人がまだまだ多い。

だが、城島の中身の薄いバッティングには、打率だけ見ていてはわからない「中身の酷さ」がある。長打のほとんどない城島と、長打が打てて四球も選べるグリフィーの打撃スタッツを比較してみると、わかることがたくさんあるのと同じである。

また、よく「ロブ・ジョンソンが城島の打撃スタッツを追い抜く日は近い」とよく言う人がいるが、それはまったく違う。既に追い越している。
中身で見ると、城島の2009シーズンのバッティングの中身は「キャリア最低の非力さ、出塁率の悪さ」であり、すでにパワーや出塁の中身という部分において、とっくにロブ・ジョンソンに追い抜かれている。

Kenji Johjima Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN

Rob Johnson Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN


OBP 出塁率
ロブ・ジョンソン .294
城島       .288

BB/PA 打席あたりの四球数
ただでさえ四球は城島の苦手分野だが、そのもともと四球を選べない城島のキャリアの中でさえ、2009年はキャリア最低スタッツになっている。
ロブ・ジョンソン .096
城島       .027 (キャリア最低)

P/PA 打席あたりの投球数
3.9を越えると云々言われることが多い。
城島はもともと早打ちで有名なバッターだが、2009シーズンはその「早打ちぶり」に拍車がかかって、メジャーに来て最も早打ちなシーズンになろうとしている。
ロブ・ジョンソン 3.77 (キャリア最多)
城島       3.25 (キャリア最少)
チーム      3.75

IsoP Isolated Power
=長打率−打率。「シングルヒットでも長打率が上昇する」というSLG長打率の弱点を解消したもので、打者のパワーを示す。
ロブ・ジョンソン .119
城島       .100 (キャリア最低)

SecA Secondary Average
=(塁打−安打+四球+盗塁−盗塁死)÷打数。出塁率の内容を評価した指標。
ロブ・ジョンソン .227
城島       .136 (キャリア最低)



PECOTAの2009年予測からみた城島のバッティング

正確な予測で知られるPECOTAにおいて、城島の.257という7月末現在の打率の評価は、およそ40%台後半の達成率ということになる。
だが、こと出塁率や長打率ということになると、出塁率.288 長打率.357ともに、達成率は40%を割り込んでいる。
VORPというのは「控え選手を上回る価値がどれだけあるか」という意味の指標だが、当然のことながら、2009年7月31日現在の城島のバッティングでVORPがプラスになるのは「打率だけ」であり、そのプラス数値もたった1ポイント程度に過ぎず、肩を並べているといったほうが正確で、差などない。
むしろ、達成率40%を切っている出塁率や長打率においては、城島のVORPはおそらく2ポイント程度のマイナスが出ており、ここからも、ロブ・ジョンソンのバッティングが既に城島を追い越していることがわかる。

城島がゲームに出れば出るほど、
チームの出塁率や長打率に悪影響が出る。


    打率  出塁率 長打率  VORP
50% .259  .301  .383   1.3
40% .250  .293  .366  -1.9
25% .236  .279  .338  -6.4
10% .210  .252  .287  -12.7

PECOTAによる城島の2009 Forecast(成績予測)

PECOTAによるロブ・ジョンソンの2009 Forecast

VORPとは
Value Over Replacement Player.
The number of runs contributed beyond what a replacement-level player at the same position would contribute if given the same percentage of team plate appearances. VORP scores do not consider the quality of a player's defense.

Pecota 2009 for Johjima







damejima at 07:29

July 11, 2009

この日チーム最高の4LOBを記録したコネ捕手城島の打撃だが、この日の4打席は非常に象徴的な4打席で、ちょっと後世に残るような4打席だった、そんな強い印象が残った。

この4打席の意味は非常に大きい。「城島のメジャーにおける打撃面の低評価」は、もはや決定的なものであること。直らないリード癖などの守備面同様、打撃面でのスカウティング(というか欠陥)がメジャー各チームに知れ渡っていること。また、知れ渡るだけでなく、実際にゲームで徹底実行されてきていることを、特に「前の打者敬遠→城島三振」で内外に強く印象づけた。
もしダメ捕手城島が打撃面でかろうじてクビの皮一枚つながっていたのだとしたら、「そのなけなしの皮がようやくスッパリ切断されたのは、この7月8日のゲームだった」と、後世思うのではないか、そんな印象すらある。

ひとことで済ますなら
「もう、あらゆる面が通用しない」ということだ。

2009年7月8日 8回城島 三振初球  内をえぐる4シーム
2球目 インコースの4シーム
3球目 外のカーブ
4球目 外のボールになるスライダー(三振)

このボルチモアバッテリーの「最後に逃げていく球を振らせる」リードはなかなか面白い。ボールを最内から、内、さらに外。徐々に打者の目線を離していき、打者の意識を外へ釣っている。最後には外にはずれるスライダーを振らせて三振。まさにバッテリーのもくろみ通り。城島のワンパターンリードのように最初からアウトコース低めばかりなら、こうはならない。比較するべき。

Baltimore vs. Seattle - July 8, 2009 | MLB.com: Gameday

無死2塁   ショートゴロ
2死走者なし ショート強襲安打
2死1塁   センターフライ
2死1、2塁 (前の打者敬遠→)三振



このゲームでシアトルは8回まで3-0とリードしていたが、チャンスを作りながらもなかなか追加点が奪えず、流れを引き寄せて相手チームを気分的にもスコアでも圧倒することに失敗し、最後に逆転負けを食らった。
最近ありがちなゲームのひとつではあったわけだが、ダメ打者城島はこの日、チーム最多の4LOB。2007シーズン同様のシチュエーション打撃の酷さでチャンスを潰していった。

第1打席のノーアウト2塁での「進塁できないショートゴロ」も酷いが、とりわけ滑稽だったのは、第4打席である。前の打者が敬遠される年8Mのサラリーの打者。しかも、そこで三振。二重に恥を晒した。
城島のプレーぶりに「それでも打撃くらいはなんとか」と、忍耐を重ねていたチームマネジメントが、これでキレたとしても不思議ではない。


まず敬遠という点の意味。
このときのボルチモアの投手は右のBassだから、左打者ランガーハンズとの勝負を避け、右打者城島と勝負した、と、思う人がいるかもしれない。
だが、年に軽く100ゲーム以上シアトルのゲームを見ているが、城島嫌いのブログ主でさえ、投手が右であれ左であれ、城島の前の打者が敬遠、というシーンは、今までほとんど見た記憶がない。ましてランガーハンズは、他の新加入の選手たち同様(グティエレスは除く)守備はいいが、バッティングはたいしたことはない打者だ。その打者を敬遠してまで勝負されたのである。

城島オタさんたちに聞いてみたいものだ。
「城島の前の打者が敬遠されて三振したんですが、今どういう気分?(笑)」と。
それくらい、記憶にないのである。

前の打者を敬遠して城島と勝負する意味として考えられるのは、ダメ打者城島のランナーズ・オン打率の低さ

2007年にしつこいほど触れたことだが、この打者のランナーズ・オンでの打撃は、2009シーズンもまったくダメである。2009年7月8日までのスタッツを見ておくといい。ひどいものだ。
.222という打率は、城島の指定席のような打率で、サンプル数が少ないからこうなっているのではない。2007年のリプレイを見ているかのようだ。

2009年城島 ランナーズ・オン打率(2009年7月8日現在)
ランナー1塁   29打数5安打   .200
ランナー2塁   9打数1安打   .111
ランナー1,2塁 9打数2安打   .222

上記3シチュエーションあわせた打率
47打数8安打   .170

Kenji Johjima Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN


ちなみに2007年のランナーズ・オンもあげておく。2009年になっても数字に改善はまったく見られないことを、よく確かめておくといい。
2007年の城島の打撃というと、よく「最初の2年(つまり2006年と2007年)は、打撃はよかった」などと嘘を書く人が多い。
どうせ「消化試合の続く9月に帳尻を合わせたシーズン打率」を指して言いつのって打撃の酷さを誤魔化したいのだろうが、恥をかきたくないなら、この打者を年間打率などで語らないことだ。
相手にしてもしょうがないのだが、2007年はア・リーグの併殺打数でランキングに入った年。四球数、出塁率、どこをどうとっても中身は酷いものだ。あんな数字のどこをどう見ると「最初の2年はよかった」などと言えるのか、聞きたいものだ。

参考 2007年の城島 ランナーズオン打撃
6/25まで 112打数25安打 打率.223(スタメン最下位)
7/20まで 134打数30安打 打率.224 OBP.286
8/18まで 171打数38安打 打率.222(ほぼスタメン最下位)RC27 4.12 OBP.280(スタメン最下位)


次に、第4打席の三振という結果について。

この打者の三振率をよくわかっているブログ主としては、ちょっと驚いた。このダメ打者さん、どんなに打撃がダメダメなシーズンでも、とにかく三振はしないからだ。

「三振しない」、というと、あたかも良い事をしているように勘違いする人がいるかもしれない。

言っておくと、このダメ打者さんの場合、「三振しない」は単に「意地になって、ただただ、むやみとボールをバットにひっかける」、ただそれだけの意味である。
「ヒットを打つ」という意味でもないし、「四球率が上がる」という意味にもならない。
打率や四球率を見ればわかる。2007年にア・リーグの併殺打数ランキングに登場したときも、三振率は低かった。調べてもらえばわかる。

この日の第1打席の無死2塁でもショート・ゴロを打っているが、無死2塁なら、せめて進塁できるようにライト側に打て、というのが、ごく普通の「打てない打者の責任」というものだ。
だが、年がら年中併殺打をショート、サードに打っているこの打者には、馬の耳に念仏。なんの工夫もない。

「むやみとボールをバットにひっかける」フリースインガーだからこそ、ボテボテのショートゴロ、サードゴロが多く、ランナーが進塁できないどころか、併殺打が多い。簡単な話だ。たまにライトに打球がいっても、翌日には忘れている。
このダメ打者が打率を帳尻するのによく使う「三遊間のヒット」は、この日の第2打席もそうだが「たまたまバットにボールをひっかけたのが、運よく三遊間を抜けていくだけ」のことで、別に狙いがあるわけでもなんでもなく、ただの「マグレ」なのである。


ランナーズ・オン打率の低さを他の地区のチームにすら足元を見られ、あまつさえ、三振までした城島。この日のバッティングの意味するものは重い。

そんなこんなで3−0のリードで迎えた9回だったが、シアトルはここで5点を奪われ逆転負け。もちろん、逆転負けを味わいながら9回をプレーする間も、このダメ捕手の脳裏に繰り返し流れていたのは、「敬遠」「三振」の2つの単語と、ショックな気分のブルーな景色だったことだろう。

そんなダメ選手が自分のことばかりクヨクヨ考えている間に、チームマネジメントは動きを加速している。

やっと、シアトルに当然のことが当然のように起こる毎日が来ようとしている。もうシアトルにフリースインガーは必要ない。






damejima at 04:49

June 30, 2009

裏口入学のコネ捕手城島がドジャース戦でインコースを引っ張る「あまりにみっともないバッティングフォーム」を夜中に見た。
Seattle vs. LA Dodgers - June 28, 2009 | MLB.com: Gameday

もし誰か3箇所骨折したとして、それが1ヶ月満たずに全部くっついて、しかも激しい運動?(笑)はい、くっつきました、直りました、ゲームに出られます?(笑)

下手なブラフもたいがいにしろ。


もちろんプロともなればバッティングフォームにはそれぞれ個性があるものだ。だが、体重移動すらできないコンディションのクセに、上半身をひねるだけで、あたかもバットを普通に強振できるぞと見せかけるしかない「お笑いバッティング」は個性とは言わない。

こんな嘘臭いプレーヤーがゲームに無理矢理出て 年間8Mもかすめとって、かたやバークはDFA、かたやクレメントは3Aで腐らせたまま、ときた。



あんな2008年より酷いバッティングで何も感じない野球ファンがいるとしたら、そういう野球を見る目のないお馬鹿さんは掲示板になど書き込みをしないほうがいいし、あれで「2008年からまったく向上もせず、打てないCERA5点のダメ捕手」を持ち上げる提灯記事を書ける有能なライターがいたら、ぜひ目の前でせせら笑ってやりたいものだ。

今シーズンのコネ捕手の打率は、打席数も少ないことだし、あっという間に2割ラインに落ちることだろう。こんなダメ選手、無理にゲームに使うのはどうみても間違っているが、とりあえず打席で毎日毎日恥を書き続けてもらおう。


今の時点で城島のバッティングスタッツは2008年と全く同じ。メジャーLVPに輝いた極寒の2008シーズンが偶然ではなかったことは、とっくにわかっていたことだが、数字的にもハッキリした。
まったく変わらないコネ捕手城島の
2008年と2009年の打撃スタッツ

2008シーズン終了時
打率.227 OBP.277 SLG.332 OPS.609
2009シーズン 6月28日時点
打率.229 OBP.253 SLG.354 OPS.607


2007年
なにせ、このダメ打者、ポストシーズン進出がなくなった後の9月の消化試合で必ず毎年のように帳尻をあわせてくるわけだが、出塁率など、ちょっと数字を掘り下げるだけで、この2007年ですら酷い中身だということはわかったはずだ。四球をほとんど選ばず、たいした意味のある長打もなく、併殺だらけなのだから、当たり前のことだ。
打撃低迷がハッキリしだしたのはこの2007年に始まっているのだが、当時はいくら言っても、帳尻後の打率に誤魔化されるためか、それがわからない馬鹿が多い。
とにかく2007年は城島の異常な併殺打の数々でランナーは死に続けたし、走者のいる時の最悪な打撃でランナーをとことん無駄にし続けた。ホームランのほとんども、ゲームの大勢と関係ない場面。
7月 月間打率.191
開幕から8月18日まで
得点圏打率     .219
ランナーズオン打率 .222


シーズン終了時 打率.287
OBP.322 SLG.433 OPS.755

参考 2009年6月29日の同じ打率の好打者
Ben Zobrist TAM .287 .404 .622 1.026
Jermaine Dye CHW .287 .355 .566 .921


2008年
城島の併殺打でホームでブーイングが起きる、なんていうシーンもあったのが、この年。言うまでもなく、シーズン通して大半の月の打率が2割程度しかなく、9月にまたもやズル賢く帳尻してみせたものの、帳尻してすらシーズン打率は.227。実際、8月終了時で打率はなんと.208しかなかった。
4月 月間打率.182
6月 月間打率.232
7月 月間打率.130
8月 月間打率.200
8月終了時点 打率.208


シーズン終了時 .227(←9月に帳尻してすら、これ)
OBP.277 SLG.332 OPS.609


2009年
6月28日時点での数字は、まったく2008年と同じになった。そしてこれから、もっともっと下がるだろう。2割を切るのも時間の問題とみる。あれだけバラバラなフォームでバットを振り回してメジャーのボールについていけるなら、そこらの高校生でもメジャーリーガーになれる。

6月28日時点 打率.229
OBP.253 SLG.354 OPS.607







damejima at 03:44

April 07, 2009

LF Endy Chavez 6 L
CF Franklin Gutierrez 9 R
DH Mike Sweeney 0 R
3B Adrian Beltre 8 R
RF Ken Griffery Jr. 0 L
2B Jose Lopez 6 R
1B Russell Branyan 1 L
C Kenji Johjima 2 R
SS Yuniesky Betancourt 4 R

名前の後の数字はなんだかわかるだろうか?
2008シーズンに、この9人の打者の記録した盗塁数である。

合計は、たったの36

もちろん、昨年43盗塁しているイチロー1人の年間盗塁数にも及ばない。たったこれだけの数値を見ても、2009年の春から夏にかけてシアトルが機動力の全くない、超鈍足振り回し野球をまたしても繰り返すのが透けて見えてくる。

相手チームの投手も捕手もさぞかし楽にゲームできることだろう。なぜって、ほぼ絶対に盗塁してこないとわかっている打者が打線の半分以上を占めるのだから、クイックの上手くないメジャーの投手でも十分通用する。また内野安打も心配する必要がない。これだけ右打者だらけで盗塁のできない、鈍足・低打率の打線だから。
きっと各チームとも、クイックの得意でない若手の右投手あたりでも平気でバンバンぶつけてくるに違いない。



この数年のシアトル最下位の原因のひとつは、打撃面でいうと、右打者に圧倒的不利でホームランも出にくいというパークファクターをもつセーフコにもかかわらず、セクソン・城島を代表として、バットをむやみと振り回すだけしか能がない低脳右打者を並べていたことにある。

それがどうだ。仮のロスターとはいえ、2009シーズンまたしても右の、走れもしない鈍足タイプばかり、6人も並べて開幕とか言い出した。
本当に呆れたGMである。
SI.comのスカウンティングレポートによれば、シアトルの新GMズレンシックはグリフィー.Jrについて、"Ken will really help us [at Safeco Field], where lefthanded power plays well." と左打者有利のセーフコを理由にあげて活躍への期待を語ったようだが、当ブログとしては左打者有利と本当にわかっているのなら、そもそもグリフィー以外にも左打者を並べればいいのである、馬鹿か、と言っておきたい。
ただ右打者というばかりでなく、走れもしない。そういうタイプばかり6人も開幕ロスターに並べたのだから、シアトルの試合では盗塁という野球で最もスリリングな瞬間など全く期待できるわけもないし、といってホームランが期待できるわけでもない。

SI.comはこの点についてすでに指摘していて、グリフィーについては、左打者有利のセーフコでならグリフィーが働いてくれるだろうというズレンシックの意味不明な楽観論に呆れて、こう反論している。
「打者有利といわれるセルラー・フィールドを本拠地にするホワイトソックスに移籍してからの113打席ですら、グリフィーの長打はわずか13本しかないじゃないか」
と、データを挙げつつ、39歳のグリフィーに何か期待するのは楽観的すぎると厳しく結論している。
SI's 2009 MLB Scouting Reports: Seattle Mariners - MLB - Spring Training - 2009 - SI.com

2009スカウティングレポート SI.com

以下のリストの名前の後の数字は、ホームラン数打率である。昨年.270を越える打率をマークできた打者すら、わずか3人しかいない。そのかわり9月に帳尻ヒットを打ってようやく打率.220台にのせただけの城島はじめ、打率.250以下、つまり、4打席でノーヒットの確率の高い打者が、合計4人もいる。
彼らのすることといったらヒットが打てないかわりに俺はホームランは打てるぞとばかりバットを振り回して三振することくらいだろう。

LF Endy Chavez 1 .267 L
CF Franklin Gutierrez 8 .248 R
DH Mike Sweeney 2 .286 R
3B Adrian Beltre 25 .266 R
RF Ken Griffery Jr. 18 .249 L
2B Jose Lopez 17 .297 R
1B Russell Branyan 12 .250 L
C Kenji Johjima 7 .227 R
SS Yuniesky Betancourt 7 .279 R

やれやれ。
今年のシアトルときたら。



damejima at 02:21

April 02, 2009

PECOTA(Player Empirical Comparison and Optimization Test Algorithm)」は、SI.comのスカウンティングリポートの記事で紹介したように、野球シンクタンク「ベースボール・プロスペクタス」が開発した選手の活躍などについての予測システムで、プロでも活用されている。

SI.comのスカウティング同様に、PECOTAにおける2009シーズンの城島の予測が発表になった。詳しくは該当ページを詳しく読み込んでもらうとして、一部だけを紹介しておく。なかなか今年の予測も辛らつで面白い内容になっている。

城島の価値は、もらう年俸のおよそ6分の1
140万ドルの価値の選手に800万ドル支払うシアトル

Valuationという項目は、要はその選手のバリュー、すなわち、金銭的な価値のことだが、2009年の城島の価値はわずか140万ドルと明記されている。140万ドルとは笑える。
城島のValuation
http://www.baseballprospectus.com/pecota/johjike01.php
去年の4月に突如として城島の異常な3年契約が発表になったが、いくらの契約だったか覚えているだろうか?3年2400万ドル(約24億9600万円)。1年単位でいうなら、1年800万ドルである。

ところが、だ。メジャー球団もこぞって利用しているシンクタンクのはじき出した城島の価値はわずかに140万ドル。実際にもらう金額のおおよそ6分の1程度しかない。140万ドルの価値の選手に800万ドル払うのである。

加えて、2013年のところの数値も注目だ。
out of baseball。つまり、野球をやっている価値なし、という判定で、これ以降、数値すら載っていない。


城島の価値140万ドルは、
MLB新人の給料に毛がはえた程度
チームの平均年俸の約3分の1

140万ドルの価値、といえばどんな数字か。
メジャー最低年俸は2006年の32万7,000ドルから2007年は38万ドルに変更され、以降1年ごとに1万ドルずつ増える。だから2009シーズンの最低年俸は40万ドル、ということになる。これが最低ラインだ。
次にメジャー全体の平均年俸だが、年々増加しているが、2001年に初めて200万ドルを超え、2008年の平均年俸は315万4,845ドルとなっている。140万ドルというと、98年ごろのメジャー平均年俸にあたる。10年でおよそ2倍になったわけだ。
MLB Salaries - CBSSports.com
http://www.cbssports.com/mlb/salaries/avgsalaries
140万ドルというと、この最低年俸40万ドルと、2008年平均年俸の315万ドルのちょうど中間よりずっと低い。もう新人の給料並み

ただでさえ高いチーム平均年俸435万ドルの
城島の年俸は、そのさらに2倍

シアトルの平均年俸は453万8,230ドルで、メジャー全体の9位にあたる。この高額ペイロールの球団の勝率がいったいメジャー全体の何位あたりなのか、言わなくてもわかるだろう。城島のサラリーは、ただでさえバカ高いシアトルの平均年俸の、さらに2倍という馬鹿馬鹿しさ。
MLB Salaries - CBSSports.com http://www.cbssports.com/mlb/salaries/teams

城島の価値は新人クレメントのわずか3分の1
ちなみに城島のチーム内のライバル、クレメントのValuationはいくらだろう。
クレメントのValuation
クレメントの2009年のValuationは437万5000ドル。城島の価値のおよそ3倍で、しかも、今後ともさほど変化しない。クレメントの437万5000ドルというValuationは、ほぼシアトルの実際の平均年俸にあたる。サラリーは高額年俸のプレーヤーに偏っているから、価値だけ見れば、クレメントはシアトルではすでに平均をかなり超えた価値のある選手ということができる。
http://www.baseballprospectus.com/pecota/clemeje01.php


Pecota 2009 for Johjima




damejima at 15:59
SI.comのスカウティングレポートについては、一度とりあげたことがあるので、知っている人も多いことだろう。2008年シーズンが始まる前から既に、今後の城島の打撃成績の下降傾向を予測して、トレードすべきと断定していた。
2008年3月31日、SI.comは2008スカウティングレポートで「城島をトレードすべき」と発表していた。(1)
2008年3月31日、SI.comは2008スカウティングレポートで「城島をトレードすべき」と発表していた。(2)
2008年3月31日、SI.comは2008スカウティングレポートで「城島をトレードすべき」と発表していた。(3)

このSI.comのスカウティングレポートの2009年版が届いた。さっそく「負けが続くようなら城島以下、不良債権全員をクビにせよ」と、SI.comは結論がスピーディかつシンプルだ。

SI's 2009 MLB Scouting Reports:
Seattle Mariners - MLB - Spring Training - 2009 - SI.com
http://sportsillustrated.cnn.com/2009/baseball/mlb/03/30/mariners/

2009スカウティングレポート SI.com

If the losses start piling up early and often, a raft of players could leave town at the trade deadline, with Bedard, Carlos Silva, Kenji Johjima, Jarrod Washburn, Adrian Beltre and Miguel Batista all candidates to go. (Former G.M. Bill Bavasi committed $97 million to Silva, Batista and Johjima alone.) At that point, Zduriencik will be forced to do what he didn't this winter: tear down and rebuild.
(粗訳)
負けがいち早く、しかも、うず高く積もり始めるなら、多くのプレーヤーがトレード期限には街を去ることになる。ベダード、シルバ、城島、ウォッシュバーン、ベルトレ、バティスタ、すべてのトレード候補者が去るべきだ。 (前GMのBavasiはシルバ、バティスタ、城島だけで9700万ドルもの大金を使うという大罪を犯した) その時になったら現GMのズレンシックは、彼が今年の冬にしなかったことの実行を迫られる: (チームの)取り壊しと再建、である。


この文章のキーポイントのひとつは現GMズレンシックの手腕の無さ、ひいいては何事につけても対策の遅すぎるチーム体制についての痛烈な批判である。

SI.comの予測する2009シーズンのシアトルの予想順位はもちろん「最下位」だが、その勝敗は69勝93敗という、なかなかの負けっぷりである。ちょっと間違うと再び100敗シーズンになるぞ、と警告しているわけだ。
Sports Illustrated's 2009 MLB Scouting Reports - MLB - Spring Training - 2009 - SI.com

Former G.M. Bill Bavasi committed $97 million to Silva, Batista and Johjima alone.
「前GMのBavasiはシルバ、バティスタ、城島だけで9700万ドルもの大金を使うという大罪を犯した」という部分のcommitという単語は注目だ。
もちろん、城島の3年契約にチームの大金を使わせたのは実際にはチームのGMではなく、日本のとあるお方なわけだが
commitというのは、キリスト教英語圏では「道義の根本に反する、かなり重い大罪を犯す」という意味の言葉で、城島以下3人のプレーヤーがシーズンが始まってもないうちから罪人として名指しされているのである。
これはドストエフスキーの『罪と罰』ではないけれど、「大きな罪には必ず罰を与えるべきだ」というニュアンスがあることを暗黙のうちに示す。

上に挙げた文章でSI.comは「もし負けが早期に、しかも、かなり積み重なるようなら、シルバや城島はじめ不良債権選手たち全員クビにすべき」と言っている一方で、69勝93敗という惨憺たるシーズン予測も既にしている。SI.comにとっての結論がとっくに出ているのは誰にでもわかるだろう。

SI.comがスカウティングレポートの末尾で断定したかったことの最大の点は、今年も予想されるシアトルの不振や最下位を指摘することではなく、「前のシーズンに犯した大きな罪をきちんと罰して処理してない」という怠慢さの指摘なのだ。
前シーズンに大きな過ちを犯した。なのに、この冬にやるべきだった取り壊しと再建をシアトルはやらなかった。だから今年も最下位になるだろう。」それがSI.comのスピーディーでシンプルな結論だ。

もし負けがこんできて現GMのズレンシックが遅すぎる再建にとり掛かったとしても、全米メディアも地元メディアも、もちろん高い評価などするわけがない。それでは遅すぎるのだよと、SI.comは最初から釘をさしている。

やるべきだったのは、この冬だったのだ。
誰もがこのチームに呆れている。



damejima at 14:46

September 19, 2008

9回の裏の1死3塁のサヨナラのピンチに、イチローを内野守備につかせる5人内野をリグルマンが敷いたことで、この試合を記憶しているファンも多いことだろう。
BOX SCORE

ヘルナンデスがLAAをなんとか3失点におさえて7イニングを投げたあとの8回表。代打カイロのタイムリーで同点に追いつき、なおも2死1、2塁だったが、ここで打者は城島。当然のように凡退して城島がチャンスを潰して、同点止まり。ここぞというところでは打たないヘボバッターだが、この試合の最も重要な問題は.210の低脳バッティングではない。

そして9回裏。1死からエンゼルスのロドリゲスに初球を3塁打された。ここでリグルマンがとったのが奇策の「5人内野」。イチローをセカンドの付近で守備につかせた。リグルマンがこの奇策を使うのは、今シーズン2度目である。内野手5人というのも、首を傾げる策だが、問題はここですらない。


問題は2つある。

この4連戦、2度目のサヨナラは食らうべくして食らったサヨナラだ。この外野に2人しかいない状況であっさりフィギンズに、初球をサヨナラタイムリーをされるのだが、城島の言い訳がふるっている。

「高めのシンカーをひっかけさせたかった」

馬鹿としかいいようがない。こんな、外野飛球を打たれたくない場面で高めの球を要求とは、どれだけの低い知能か。高校生の捕手程度でも、これくらいわかる。

この、外野に打たれたくない場面で高めの球から入ったことがひとつの問題点だが、話はここでも終わらない。もっと大きい話がある。
フィギンズの前の「ロドリゲスの打席の初球」。9回裏にサヨナラのピンチを招いたこの一投のほうが、フィギンズへの初球以上に大きい問題だ。

まずはこれでも読んでもらおう。日本の半端な記事しか書かない馬鹿ライターも、ファンもあまり目を通さない、対戦相手のエンゼルスの公式サイトの記事である。

ちなみに、文中でロドリゲスが言う「おとといサヨナラ勝ちした金曜のゲーム」というのも、もちろん、先発マスクは城島だ。それをしっかりアタマに置いて、下の文章を読んでもらおう。

http://losangeles.angels.mlb.com/news/gameday_recap.jsp?ymd=20080914&content_id=3474191&vkey=recap&fext=.jsp&c_id=ana
Figgins hit the first pitch he saw from Mariners reliever Roy Corcoran to deep right field, but no one was there to make the play because Ichiro Suzuki was playing behind second base to give the Mariners a five-man infield instead.
フィギンズはマリナーズのリリーバー、コーコランの初球をライトの奥にヒットしたが、そこには誰もいなかった。というもの、イチローはマリナーズの5人目の内野手としてセカンドの後ろにいたのだから。

"That was surprising," Figgins said. "I didn't think Ichiro wanted to come in the infield. He was coming in there pretty slow."
「(内野5人体制には)びっくりしたよ」とフィギンズ。「イチローは内野に来たくなかったんじゃないかな。だって、ものすごくゆっくり来たからねぇ」

The single easily scored Rodriguez, who tripled off Corcoran before Figgins came to the plate. Rodriguez also hit the first pitch he saw, as it caromed off the right-field fence just over Ichiro's glove.
このフィギンズのシングルヒットは、フィギンズの前に三塁打を打っていたロドリゲスを生還させた。ロドリゲスも初球から打って、イチローのグラブをかすめて越えライトフェンスにビリヤードの球が当たってはねかえるような当たりを打った。

But it was scouting on Rodriguez's part that helped the Angels to their ninth walk-off win of the season and their second against the Mariners this week. He looked for a first-pitch fastball away from Corcoran after the right-hander started him that way on Friday.
エンゼルスにとってサヨナラ勝ちは、今シーズン9度目、そしてマリナーズに対しては今週2度目だが、ロドリゲスのヒットについていえば、それはスカウティングの成果。彼は、金曜に右腕のコーコランが同じように、彼に対して初球を外の早い球から入ることを発見していた。

"I remembered him from two nights ago," Rodriguez said. "That's how he started me -- with two-seamers away. I figured I'd sit on it first pitch and if he throws it, I'm going to get it."
「おとといの彼を覚えていたのさ」とロドリゲスは言う。「外の2シーム系から入ってくるのが彼のやり方さ。最初の球に、その外の2シームを待つイメージでいた。もし投げてきたら、つかまえてやろうと思ってたよ。」
(訳注:文中のcaromは、いわゆる四つ球やスリークッションなど、ポケットのないビリヤードをさす。ちょっと訳しにくいが、はねかえる、という意味にとった。)

スカウティングを頭に意識しつつ、狙い通りしとめるエンゼルスのソーシア野球の質の高さ、選手の頭のよさ。
それにひきかえ、なんというマリナーズの控え捕手、城島の、頭の悪さ、単調さ。こんな捕手に試合をまかせているから、5人内野などやっても無意味な場面だった、ということがしっかりわかるインタビューである。(これだけ興味深いことをエンゼルスの選手が発言しているというのに、日本の馬鹿なMajor.jpの程度の低い記事はこの程度だから哀しいかぎりだ。この日の低脳なMajor.jpの記事がこれ


ロドリゲスへの工夫のない初球。フィギンズへの不用意な高めの初球。このたった2球で、城島は、ここまで5連勝のコーコランに初めての負けをつけ、そしてこれで首位LAAとの4連戦で、スイープ達成させた。

ここからまた、今年5月同様、果てしない連敗街道は間違いなく始まる。



damejima at 17:41

September 12, 2008

セイバーメトリクス(数理統計的野球解析学)の発達にともなって、客観的データに基づくコンピュータ・モデルで選手の活躍を予想することが当たり前となってきている。予想モデルは数々あるようだが、中でも評判が高いといわれるのが、野球シンクタンク「ベースボール・プロスペクタス」が開発した「PECOTA(Player Empirical Comparison and Optimization Test Algorithm)」である。

PECOTAは、城島とクレメントに関して、すでに次のような予測を出している。

城島の今後についての予測部分に注目してもらいたい。この予測は2008年の打率を織り込んだものではなく、あくまで2008年春の予測だ。それでも、城島の今後についてPECOTAは、「全く右下がりになるだけの、超悲観的な予測」を出していたのである。

つまり、PECOTA的にいうなら、城島はデータ予測上、「2008年春の時点ですでに、今後の上がり目がまったく期待できないプレーヤー」だったのである。

そして2008シーズン、城島はPECOTAの予測どおり、攻守ともに大きく成績を下げた。こんな選手との3年契約が「コネ以外」で結べるとしたら、ほかに何があるだろう。教えてもらいたいものだ。


城島に関するPECOTAの予測
http://www.baseballprospectus.com/pecota/johjike01.php
http://www.baseballprospectus.com/pecota/johjike01.php#forecast
PECOTA/城島

クレメントに関するPECOTAの予測
http://www.baseballprospectus.com/pecota/clemeje01.php
http://www.baseballprospectus.com/pecota/clemeje01.php#forecast
PECOTA/クレメント



damejima at 14:52
続いて2008年版のSI.comのスカウティングレポートに触れてみる。

2008年の春のレポートで、要改善点のトップに指摘されているのは、またしても2007年同様、先発投手などの投手力ではない。「打撃」である。
2008年版で指摘されたのは、直接にはDHビドロの得点力の無さ」であり、そして帰結的に指摘されているのが「パワーヒッター不足」である。そして対策として挙げられた案が、グリフィーと城島のトレード、PECOTAでの予測に基づくクレメントの正捕手昇格、である。


この2007年にビドロはたしかに打率は.314打った。だが、DHとして、打撃の中身は満足できるものではないと、SI.comは断定する。グリフィーとはまた、懐古趣味が過ぎると思うが、要は、ビドロや城島のようなタイプの、見かけ倒しのパワーではなく、ちゃんとした打者を補充して、得点力を向上すべき、と言っているのである。

恥ずかしげもなくDHには適応しなくていいと公言する城島とそのオタなどは、.314も打率があれば十分だろうといいかねないが、.314の打率があってさえ、ダメなものはダメなのだ。
城島のDH起用など、そもそも意味がないことくらい、チームもファンも、そろそろわからないとダメだろう。そもそも.210しか打率がない城島のどこに「DHとしてどうのこうの」と発言する権利があるのか。最初からそんなものはないのである。

CONSIDER THIS 2008
(2008シーズンの要改善点。訳はおおざっぱなもの)
http://sportsillustrated.cnn.com/baseball/mlb/specials/spring_training/2008/previews/mariners.html
問題はDH。ビドロは昨シーズン.314打ったが、6HR、59打点に終わった。解決法のひとつは、レッズのトレードの目玉、グリフィー・ジュニアをもってくること。レッズは外野手が余っていて、捕手が欲しい。シアトルの正捕手なら、24歳のクレメントで務まる。PECOTAは彼のOPSを、城島の.704より高い.733とはじき出している。より重要なことは、グリフィーがクラブで最も優秀なパワーヒッターになれることだ。

The big issue is designated hitter, where Vidro is expected to bat; though he hit .314 last year, Vidro contributed only six home runs and 59 RBIs in 548 at bats. One solution? Bring back the Kid. Make catcher Kenji Johjima, who is 31 and in the last year of his contract, the centerpiece of a trade for Reds rightfielder Ken Griffey Jr. Cincinnati would get a much needed catcher while loosening its outfield logjam (and clearing room for Jay Bruce). Seattle's starting catcher could then be 24-year-old Jeff Clement, for whom PECOTA projects a .733 OPS -- better than Johjima's .704. More important, Griffey would become the best power hitter on the club.


わざわざSI.comに言われなくとも、試合を数多く見ている日本のファンなら、経験的にビドロはじめ、シアトルの打者の得点力に欠陥があることはわかっている。
そのひとつが「いくらチャンスを作っても、点に結びつかない」という長年の欠陥で、この得点力の低さは、出塁率と同様、いまだに解決などされていない。というか、出塁率さえ改善できないのに、得点力もへったくれもないのだが。

例えば「ビドロは、イチローと相性が悪い」などという言い方が2007年にはよくあった。これは「イチローがヒットを打つと2番ビドロが打たない、イチローが凡退するとビドロはヒットを打つ」というちぐはぐさを指す。打順でいえば、2番に置けばランナーズ・オンで打てない、5,6番に置けば得点圏で打てないといった、走者を進め点に変える効率的な攻撃ができないという問題である。
この話はビドロだけでなく、2007城島にもぴったり当てはまる。ペナントの行方を争っていた2007年7月までの城島のランナーズオン打率、得点圏打率は.210から.220程度と破滅的な数字だったし、ホームランも試合を左右するようなものはほとんどない。(2008年は打率そのものが.210なわけで、これはもう、話にならない)

加えて、ビドロは併殺打が多すぎる。この点も、城島にぴったり重なる。アリーグ3位となった城島の併殺打の多さには呆れかえるが、城島に次ぐ併殺打の多いバッターがこのビドロであった。

またビドロにはバントという選択肢がない。そのため、1塁にイチローがいる場合、エンドランという選択肢が数多くとられたが、このことはイチローの盗塁機会を数多く無駄にし、連続盗塁記録を途切れさせる遠因にもなったと、イチローファンの不評を買った。
このバント技術の無さという点も、城島にぴったり重なる。ビドロも城島も、打てないから何か他のことをさせるということができない、融通の効かないバッターなのである。


2007年春のスカウティングで指摘されていた出塁率の低さは、城島はじめシアトルのダメ打者たちの基本的な特徴だったが、同じように、2008年春に指摘されたビドロのバッティングの中身の薄さも、ビドロだけの特徴ではない。城島の打撃も全く同じ傾向を示す。

ビドロの打撃に問題がある以上、打者としての傾向がそっくりの城島にも全く同じ問題があてはまる。2007年の城島の打率も、ビドロ同様、中身はまったく薄っぺらだから、当然のことだ。

(この記事、(3)に続く)



damejima at 14:32
SI.comは、米国で最も有名なスポーツ雑誌で、今はタイム・ワーナー傘下にあるSports illustratedのオンライン版。CNNSI.comという名称だったが、2003年に名称を変更した。

SI.comは毎年MLBのスプリング・トレーニングの後、各チームのスカウティング・レポートを発表している。
スカウティングもいろいろなレベルのものがあり、これは公表できるものだけに、実戦のためのスカウティングというより、スポーツファン向けのチーム概況というべきレベルだが、このサイトの予想の確かさには定評があるようだ。
(ただ前年データに影響されやすいという難点はある。例えばシアトルの予想順位でいうなら、最下位だった2006年の翌2007年の順位を最下位と予測(→実際には2位)。そして2位だった2007年の翌2008年の順位を2位と予測(実際には最下位)など。ただ、前年までのデータからの予測というサイトの性格上、ありがちな話で、予測誤差としてアタマに入れて読みこなせばすむ。)

2008シーズンの始まる前、このSI.comはシアトルというチームをどう見ていたのか。

レポートのCONSIDER THISという項目に、そのシーズンに改善すべき点が具体的かつ端的に要約されて挙げられているので、2007年、2008年の部分を見てみる。まず、まわりくどくデータをいじるより、結論を先に言っておこう。

シアトルというと、いつも先発投手の力不足がプライオリティが高いように思われがちだ。だが、SI.comのレポートで2年続けて指摘されていたのは、先発投手の力量の無さなどではなく、「打撃」である。
SI.comが2年続けて指摘した問題点は、専門家でなくとも、誰もが理解できる的確でシンプルなものだったが、この指摘に関するかぎり、シアトルの側はというと、この2シーズン、懸案となり続けていたチームの問題点を何も解消しないまま先送りし続けてシーズンに突入し、誤った選手起用、城島契約延長問題を含めた誤った大きな投資を繰り返し、チームはチームとして崩壊した。


まず2007年版からみていく。
要改善点として指摘されているのは「四球の少なさに起因するチーム全体の出塁率の低さ」。そして出塁率を改善すべき選手として、ベタンコート、ロペス、ベルトレ、ブルサード、城島、5人の個人名が上がっている。

この5人、実際の2007シーズン後に四球と出塁率がどう変化を遂げたか。つまりSI.comの考える最重要課題は解決されたのだろうか。まずは見てもらおう。

四球数と出塁率  2006年  →  2007年 
ベタンコート(17四球 .310)→(15四球 .308)
ロペス   (26四球 .319)→(20四球 .284)
ベルトレ  (47四球 .328)→(38四球 .319)
ブルサード (26四球 .331)→(17四球 .330)
城島    (20四球 .331)→(15四球 .322)
注:ブルサードは2006年432打席、2007年240打席

立派なものだ。なんと、バックアッパーになって打席数の激減したブルサードは容赦するとして、誰ひとりとして数値が改善されていない。SI.comに指摘された問題点は全く改善されなかったのだ。

このことから、2007シーズンが、シアトルのフリースインガーたちにとってどういうシーズンだったかがわかる。
簡単にいえば、城島をはじめ、彼らはマグレの2位というチーム順位をいいことに、というか、それを自分たちが努力しないで済ます格好の隠れ蓑にして、自分の野球技術を必死で改善する努力を怠ったままスタメンに居座った。言い方を変えれば、彼らはイチローやイバニェスの数値にオンブし、チームに安住したのである。
そしてチームの側も、2007年春のSI.comのスカウティングレポートが指摘し、ファンの誰もがとっくに気づいていた、こうしたフリースインガーたちの怠慢な出塁率を放置したまま、2008シーズンに突入する。

シアトルの出塁率の悪さはかねてから一般のファンですらわかっていることだけに、なんだそんなことかと、思うかもしれない。だが、問題は改善点としてのプライオリティ、優先順位だ。
SI.comは、2007シーズンに向けた要改善点のトップに出塁率改善を挙げたが、シアトルの内部はおそらく違う意見だっただろう。
オーナーからGM、フリースインガーご贔屓のライターから馬鹿な城島オタにいたるまで、「なに、ホームランさえかっとばしとけば、点はとれるさ。バットを馬鹿みたいに振り回したって勝ててるじゃないか。それでいい」とでも考えて、この問題の重みを甘く見てきた。
それがチームの「打てもしない大砲主義」に表れていた。城島オタは「今シーズンこそは30ホーマー」だのと、馬鹿げたことを毎日のように掲示板に書いていたものだ。

実際には、2006年の最下位というチーム順位と、2007のスプリングトレーニングの結果を受けて、2007年には十分にチームを改善しておくべきだっただろう。
だが、2007年の2位という出会い頭の事故、マグレ当たりのホームランのような順位が全てを誤魔化して、出塁率改善はないまま2007年は終わり、セクソンも、城島も、誰も彼もが大砲のフリをした旧式な火縄銃のまま、2008年シーズンは始まった。

その結果、深い致命傷を負ってチームはチームとして死亡したことを、シアトルマリナーズの歴史にしっかりと書きこんでおくべきである。

(この記事、(2)に続く)

CONSIDER THIS 2007
(=2007シーズンの要改善点。訳はおおざっぱなもの)
http://sportsillustrated.cnn.com/baseball/mlb/specials/spring_training/2007/previews/mariners.html
アリーグ西地区のダークホースになりたければ、チーム全体で出塁率アップに取り組むべき。昨シーズンのOBP.325はリーグ13位で、これはアリーグワーストの404四球(うち49は敬遠)による。イチローのように打率.320も打てるなら文句はいわない(=四球数の少なさも度外視できるという意味)だが、そんな打率が残せるのはイチローだけだ。ベタンコート(17四球 OBP.310)やロペス(26四球 .319)のようなシアトルの若手はもっとボールを選ぶべきだし、ベルトレ(47四球 .328)、ブルサード(26四球 .331)、城島(20四球 .331)のようなベテランも出塁率を改善すべき。

For the Mariners to have any hope of being an AL West dark horse, they have to make a teamwide commitment to reaching base. Their .325 on-base percentage last season ranked 13th in the league, thanks mostly to drawing an AL-worst 404 walks (49 of which were intentional). You can get away with fewer bases on balls if you're Ichiro Suzuki and hit .320, but there's only one Ichiro. Young Seattle players such as Yuniesky Betancourt , 17 walks in 558 at bats, .310 OBP) and Jose Lopez (26 walks in 603, .319 OBP) have to be more selective, while even veterans such as Adrian Beltre (47 walks in 620 at bats, .328 OBP), Ben Broussard (26 in 506, .331 OBP) and Kenji Johjima (20 in 423, .331 OBP) can improve. (後略)



damejima at 10:43
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  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。



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