ロブ・ジョンソンのリード技術

2010年6月13日、「バランスの鬼」ヘルナンデス、8回2/3を2失点に抑え4勝目。輝きを取り戻しはじめたヘルナンデスの個性を、クリフ・リーとの「ストライク率の違い」から考える。ロブ・ジョンソン3安打。(2010年ヘルナンデス ストライク率表つき)
2010年6月9日、先発投手陣のここまでの捕手別防御率(CERA)を確かめ、ここまでの彼らのピッチングを振り返る。
2001年5月28日、クリフ・リー、ロブ・ジョンソンとのバッテリーでエンゼルスに10三振を食らわせる快投。「高め」の球の有効性を証明する配球術を披露。
2010年4月19日、ロブ・ジョンソン、フィスターのバッテリー、6回までノーヒットの超好投で、4月13日の無四球試合にひき続いて連勝。これもひとつの「城島クビ効果」。
2010年4月13日、初回イチローを三振にしたオークランドバッテリーのたいへん美しい配球。持ち球の少ないフィスターに「ストレートのみ」で素晴らしいピッチングを披露させたロブ・ジョンソン。2人のキャッチャーの「素晴らしき配球合戦」。
2010年4月5日、今年のシーズンを占うヘルナンデス、ロブ・ジョンソンのバッテリーの2010年版配球パターンを読む。
2009年11月18日、当ブログから勝手に、天賦の才をもつヘルナンデス、人の才能を引き出す才能をもつロブ・ジョンソンのバッテリーに、「ア・リーグ ベストバッテリー賞」を贈る。
最終テキサス戦にみるロブ・ジョンソンの「引き出し」の豊かさ (1)初球に高めストレートから入る
2009年10月6日、フェリックス・ヘルナンデス、今シーズン2度目のア・リーグ月間最優秀投手受賞! ロブ・ジョンソンにとっても3度目の栄誉となる担当投手の栄冠獲得で、キャッチャーとして最高の栄光あるシーズンだったことを完全に証明してみせた。
2009年10月6日、ヘルナンデスと松坂の近似曲線の違いから見た、ヘルナンデスの2009シーズンの抜群の安定感にみる「ロブ・ジョンソン効果」。(ヘルナンデスと松坂の2009ストライク率グラフつき)
2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)
メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(5)実証:ロブ・ジョンソンと城島との違い 「1死1塁のケース」
2009年9月29日、ストライク率が60%を切ったヘルナンデスをロブ・ジョンソンがリードしてオークランド24残塁、18勝目、9月は5勝0敗。サイ・ヤング賞をバックアップする今シーズン2度目のア・リーグ月間最優秀投手確定か。
2009年6月24日、低めのストレートのボール判定に悩まされながらも、ロブ・ジョンソンはクロスゲームを逃げ切り、6月の「1点差ゲーム」を7勝2敗とした。
2009年6月20日、7回QSで3勝目のバルガスは、6月14日キロス批判と対照的にロブ・ジョンソンの「ゲームメイクの上手さ」を称え、チームは5割復帰を果たした。(2)

June 14, 2010

偉大なるバカボンの父も言っている。

「 これでいいのだ。 」

Seattle Mariners at San Diego Padres - June 13, 2010 | MLB.com Gameday

"I was fine, I was strong,"
「ピッカピカだったろ?俺って強ええからな、イェイ」

わざと意訳したが(笑)、ゲーム後のインタビューでヘルナンデスはひさしぶりに彼の年齢相応らしい感情の爆発のさせかたをした。これから長いメジャー生活を送るであろう彼の今後のピッチングスタイルを考える上で、たいへん意味のあるインタビューである。読む価値がある。
Mariners win finale behind Felix's gem | Mariners.com: News


結論を先に書いておこう。
6月7日のクリフ・リーが「ストライクの鬼神」であるとすれば、本来のヘルナンデスは、同じ神でも「バランスの鬼神」である。
つまり、こういうことだ。ヘルナンデスは「ストライク・ボールの適度な混ぜ具合」や「球種を適度に混ぜるバランスの良さ」がピッチングの鍵になって、打者をゴロの凡打に打ち取る投手であり、だからこそ「ピッチング全体の適度なストライク率」あるいは「その試合におけるコントロールの出来の良さ・悪さ」が、他の投手よりもずっと大きな意味をもつと考えるのである。
「バランスが命」であるからこそ、キャッチャーとの相性が大事で、ヘルナンデスが本来もっているコントロールの悪さや、ピッチングの単調さを、補う役割がキャッチャーに求められる。
クリフ・リーは6月7日の登板で「78.5%」などという驚異のストライク率を記録して、シアトルの鬼門であるアーリントンでレンジャーズ打線を沈黙させてみせた。(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月7日、クリフ・リー、貫禄の107球無四球完投で4勝目。フィギンズの打順降格で、次に着手すべきなのは「監督ワカマツの解雇」
あのときのクリフ・リーが「ストライクの鬼」であるとすれば、ヘルナンデスは「バランスの鬼」であり、クリフ・リーとヘルナンデスは求めるべき目標が違うのである。



個性は、それぞれに違う。
違うから面白く美しく、また自分だけの個性という貴重な宝石を誰もが探し求める。みんな同じでは、どこまでも続くどんよりした梅雨空のようになってしまい、つまらないこと、このうえないし、価値もない。
大投手ロイ・ハラデイにはハラデイの投球術があり、「ストライクの達人」クリフ・リーのとは違う。リンスカムにはリンスカムのピッチングフォームがあり、ヒメネスとも、クリス・カーペンターとも違う。

ゲーム後のインタビューで、サンディエゴの監督バド・ブラックが今日のヘルナンデスのピッチングを絶賛しているが、その要因として「ストライク・ボールの配分の良さ」と「カーブの切れ」を挙げている。
true No. 1 pitchers という言葉のtrueという部分に、重みがある。1シーズンだけ良い投手を、バド・ブラック監督だってtrueとは呼びたくないだろう。
"Felix has come into his own as a staff ace," said Padres manager Bud Black. "He's turned into one of the true No. 1 pitchers. His ball-strike ratio was great, and that's the best overhand curve I've seen him throw."

今日のヘルナンデスは128球を投げ、ストライクを85球。全投球のちょうど3分の2がストライクであり、配球セオリーどおりの配合である。
バド・ブラック監督はこの配球全体をコントロールするヘルナンデスの能力の高さを絶賛しているわけだが、もちろん間接的にはヘルナンデスの良き相棒であるロブ・ジョンソンの素晴らしいリードに向けられた賛辞でもある。投球の3分の2ストライクを投げれば誰でもサイ・ヤング候補になれるわけではない。


ヘルナンデスのピッチング内容とストライク率の関係の深さについては、すでに何度も何度もこのブログで指摘してきた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)
今年2010年の4月21日にボルチモア戦で投げたときに、対戦相手のDHルーク・スコットもこんなことを言っている。球種をうまく混ぜたことが、あのゲームで9安打打たれながら自責点ゼロに抑えることができた要因になったというのである。
He did a good job of mixing up his pitches, hitting his spots, good sinker, good velocity on his fastball, hard curve, hard slider, good changeup.
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年4月21日、ヘルナンデス8イニングを無四球自責点ゼロの完投2勝目で、17連続QSのクラブレコード達成、シアトル同率首位!ロブ・ジョンソン、4回裏2死満塁の同点タイムリーと好走塁でヘルナンデスを強力バックアップ。


ヘルナンデスの四球が増えはじめるストライク率の臨界値は、この記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)を書いた時点では、四球数が3を越えるのを「ストライク率60%あたり」と推測した。
ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係

そのため、この1年くらいの登板で「ストライク率が60%前後以下になったゲーム」を太字にして表示してみた。

2009年後半ヘルナンデスのストライク率と四球数
8月1日  104球58ストライク 55.8% 四球4
8月7日  113球70ストライク 61.9% 四球6
8月12日 105球67ストライク 63.8% 四球4
8月18日 106球69ストライク 65.1% 四球1
8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球ゼロ
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
9月2日  114球67ストライク 58.8% 四球3
9月8日  113球69ストライク 61.1% 四球4
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
9月18日 104球65ストライク 62.5% 四球1
9月24日 108球77ストライク 71.3% 四球2 11三振
9月29日 120球69ストライク 57.5% 四球4
10月4日 107球72ストライク 67.3% 四球1
2010年前半ヘルナンデスのストライク率と四球数
4月5日  101球58ストライク 57.4% 四球6
4月10日 110球74ストライク 67.2% 四球1
4月16日 105球63ストライク 60.0% 四球2
4月21日 113球82ストライク 72.6% 四球ゼロ
4月26日 114球74ストライク 64.9% 四球3 負
5月1日  96球53ストライク 55.2% 四球4 負
5月7日  84球48ストライク 57.1% 四球4 HR3 負
5月13日 105球66ストライク 62.9% 四球2
5月18日 118球72ストライク 61.0% 四球2
5月23日 110球73ストライク 66.4% 四球1 負
5月29日 111球71ストライク 64.0% 四球3
6月3日  116球79ストライク 68.1% 四球1
6月8日  107球65ストライク 60.7% 四球3 ER7 負
6月13日 128球85ストライク 66.4% 四球1
Felix Hernandez Game Log | Mariners.com: Stats

見てもらうとわかるが、2009年はヘルナンデスがサイ・ヤング賞候補になった素晴らしいシーズンだが、ストライクが60%以下しか入らないゲームなどいくらでもあった。特に8月末から9月前半にかけて、サイ・ヤング賞が目の前にあるのがわかっていた重要ないくつかのゲームで、ストライクをとれないゲームが続き、あの時期は本当に苦しかったものだ。
だがそれでも、結果だけみれば、面白いように勝てたのである。
当時のブログ記事ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:September 2009)を読んでもらえばわかるが、9月24日の24残塁のように、たとえヘルナンデスの調子の良くないゲームでも、ロブ・ジョンソンがバッテリーとしての工夫などをして、投手単独ではなく「バッテリーとして」勝ちを積み重ね続けたことが、ヘルナンデスのサイ・ヤング賞レースを支えたのである。
もしそういう「歴史」がなかったら、いまごろとっくにヘルナンデスはキャッチャーを変えるかなにかしている。

よくロブ・ジョンソンのことを「投手にとりいるのがうまい」とかなんとか無意味な揶揄をするみすぼらしい人間がいるが、自分の無知を自分で晒すような真似をして何が面白いのだろう。今日もロブ・ジョンソンは3本のヒットでヘルナンデスを支えた。


ヘルナンデスのストライク率は2010年に入って突然落ちたわけでは、けしてない。2010シーズンに突然コントロールが甘くなって、そのために今年のヘルナンデスの調子がいまひとつ上がらないわけではないのである。
メジャーのスカウンティング能力は非常に高いから、ヘルナンデス、ロブ・ジョンソンのバッテリーの配球パターンだって分析され対策されているのは明らかだし、また一度指摘したように、2ストライクをとって打者を追い込んでからの変化球のキレがどうも今シーズンはいまひとつよくないとか、微妙な修正すべき点はたくさんある。
今日のようにカーブが切れると、ヘルナンデスのピッチングは非常に組み立てやすいだろうと思う。逆にいうと、あまりシンカーに頼るより、カーブで緩急をつけるヘルナンデスのほうが、ブログ主としては見ていて小気味いいし、安心できる。


そういう細かなことはプレーヤーにまかせておけばいいことであって、どうでもいいが、そんなことより大事なことは、「ヘルナンデスがどういう投手か」ということだ。
彼は、ストライク率が50%台の半ばに落ちるようなコントロールの甘いピッチングでは苦しい登板になるが、だからといって、クリフ・リーのようにストライクをむやみにとれる投手になる必要など、どこにもない。
ヘルナンデスは「バランスの鬼」。そのことがハッキリしたことが、このゲーム最大の収穫だと思う。

自分が誰なのかわからなくなっているローランドスミスにこそ、このゲームの深い意味をしっかりと噛み締めてもらいたいと思う。






damejima at 14:03

June 10, 2010

今シーズンのシアトルは捕手の故障が多いこともあって、捕手のポジションは4人ものプレーヤーが入れ替わっている。そんな彼らのここまでの成績はどうなっているのだろう。
とりあえず先発投手たちについて、CERA(投手の捕手ごとの防御率)と、被打率をまとめてみた。元データはBaseball Reference

以下のプレーヤーの名前の順番は、CERAのいい順に並んでいる。さらに二次的には被打率の低い順に並べてある。
上に名前があるほどCERAが良いが、だからといって必ずしも被打率がいいとは限らない。例えば、ジョシュ・バードはスネル登板時のCERAが2.35と素晴らしいが、被打率は.303と、びっくりするほど酷い。
1イニングだけとか3イニングだけとか、ほんのわずかしか受けていない2人の捕手の3つのケースは、リストから除外してある。また、よく知られていることだが、Baseball ReferenceとESPNとでは、計算基準の細部に違いがあることから数値に多少の差異が生じることがあるので注意されたい。


詳しくは下記を読んでもらうとして、いま地区ダントツ最下位にあるシアトルの借金の大半は、ローランドスミスとスネルの登板ゲームで生まれている。つまり「先発5番手の投手の先発ゲーム」で生まれていることを知っておいてほしい。
例えばQS%(=6回3失点以内で登板を終えるパーセンテージ)だが、バルガスの83%を筆頭に、ヘルナンデス77%、クリフ・リー75%、フィスター70%と、この4人が高い率を誇るのに対し、イアン・スネルはわずか13%、ローランドスミスなどはたったの10%しかない(2010年6月12日現在)。

シアトルのロスター投手のリスト・スタッツ
2010 Seattle Mariners Batting, Pitching, & Fielding Statistics - Baseball-Reference.com
シアトルのロスター投手のスタッツ
Mariners » 2010 » Pitchers » Advanced Statistics | FanGraphs Baseball



クリフ・リー
(数値は左からCERA、被打率、先発ゲーム数)
Adam Moore 0.00 .130  1ゲーム
Rob Johnson 2.23 .218  5ゲーム
Josh Bard   5.65 .267  2ゲーム
Cliff Lee 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
4月30日のクリフ・リーのシアトルデビュー登板はアダム・ムーアが受けていた。これはクリフ・リーに限らず、開幕の時期に大半の先発投手はムーアが受けており、どうやらチームはムーアを正捕手に、と考えていたようだ。
5月に入ってロブ・ジョンソンが受けるようになった。5月16日と21日の2試合こそバードが受けたが、その後クリフ・リー側からロブ・ジョンソンを指名捕手にした形になって、現在に至っている。
いまシアトルの勝ち星の稼ぎ頭は、もちろんクリフ・リーである。現在登板ゲームは4連勝中。ゲームごとに立てる配球戦略の確かさ、抜群のコントロール、ピンチでも動じない心の強さ、さほど早くないストレートでも討ち取れ、打者に狙いを絞らせない配球バランス。素晴らしい投手である。
例えばK/BB(三振数を四球数で割ったもの)は、チームダントツの15.00だ。これは破格の数値だが、奪三振の多さというより、与える四球が極端に少ないという意味になる。またイニングあたりに走者を出した割合を示すWHIPも、チームベストの0.93をマークしている。
ただ彼を真似ようとするなら、それは間違った試みだ。天才イチローのバッティングも実績も、誰も真似などできないように、クリフ・リーの投球術は誰も真似などできはしないと思う。なぜなら、ひとつにはイチローやクリフ・リーにはオリジナリティがあることと、また「ヒトから学べること」はひとつの大きな天賦の才であって、シアトルのプレーヤーにはその才能に欠ける平凡な選手が多いからだ。
何年もイチローを見ていても学べない選手たちに、クリフ・リーが学べるわけがない。
Mariners' rotation could learn a lot from Lee | Mariners.com: News


フェリックス・ヘルナンデス
Rob Johnson   3.77 .256  13ゲーム
参考◆2009シーズン
Jamie Burke   0.86 .174  4ゲーム
Rob Johnson   2.01 .217  25ゲーム
城島         7.22 .328  5ゲーム
Felix Hernandez 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
2009シーズンは知っての通り、開幕から5月までは城島が受けたゲームもあったが、その大半を負け、2009シーズン途中にヘルナンデスはロブ・ジョンソンを指名捕手にした。
2010シーズンもその流れが続いており、ロブ・ジョンソン以外の捕手は一度もヘルナンデスの球を受けていない。
今シーズン彼がいまひとつ波に乗れないことは、チームの勝率に影響を及ぼしているのはたしかで、ブログ主も彼のピッチングについて気になっていることは多い。
ひとつ例をあげるとすると「せっかく打者を追い込みながら、そこで明らかにはずれるボール球を続けてしまう」ことがある。これはブログ主がずっと気になっていることのひとつ。豪腕ヘルナンデスはこんなに決め球の無い投手だったっけ? と、クビを傾げることが案外多いのはなぜだろう。


ダグ・フィスター
Rob Johnson 2.17 .204  6ゲーム
Josh Bard   3.00 .241  2ゲーム
Adam Moore 3.00 .278  2ゲーム
参考◆2009シーズン
Adam Moore 1.29 .200  1ゲーム
城島       4.58 .271  9ゲーム
Doug Fister 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
ダメ捕手が日本に逃げ帰ってくれたことで恩恵を受けた投手の1人が、フィスターだ。2010年6月12日現在、クリフ・リーをしのいで防御率チーム1位の2.45をマークしている。
またイニングあたりに走者を出した割合を示すWHIPで、クリフ・リーに次ぐ0.96をマークし、K/BBにおいてもこれまたクリフ・リーに次ぐ数字3.20を残している。
フィスターがメジャーデビューしたのは2009年だが、わずか1ゲームをムーア、さらにわずか1イニングをロブ・ジョンソンが受けた以外は、全てのゲームで城島がキャッチャーを務め、上に挙げたような防御率4点台なかばで、2流以下の数字を記録した
2010シーズンは、4月のシーズン初登板でムーアが受けた後、ジョンソンが3ゲーム受けた。5月はジョンソン2ゲーム、ムーア、バード2ゲーム、ロブ・ジョンソンと、フィスターの球を受けるキャッチャーは必ずしも一定していない。
誰が受けてもフィスターはかなりの好成績を挙げて安定しているが、被打率の良さという点で明らかにロブ・ジョンソンが抜けている。アダム・ムーアは3人の中では被打率が.278と悪く、評価できない。ムーア先発時の被打率は、2009年に城島の残した被打率.271よりもさらに悪い。


ジェイソン・バルガス
Adam Moore   2.54 .180  7ゲーム
Eliezer Alfonzo 2.77 .286  2ゲーム
Josh Bard     3.12 .281  2ゲーム
参考◆2009シーズン
Rob Johnson   3.31 .246  7ゲーム
Jamie Burke   4.76 .304  1ゲーム
城島         5.40 .272  13ゲーム
Guillermo Quiroz 13.50 .480 1ゲーム
Jason Vargas 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
フィスター同様、ダメ捕手が日本に逃げ帰ったことで恩恵を受けた投手の1人。
バルガスの2009シーズンは、キャッチャーに恵まれないまま終わった運の悪いシーズンだった。何度も書いたように、2Aから上がってきたキロスとの相性が悪くトラブルがあり、その後は相性の合わない城島を押し付けられた。
「城島問題」の意味を理解しない、目の悪いシアトルファンからは「冴えないピッチャー」というレッテルを張られたが、なんのことはない、ダメ捕手が日本に逃げ帰った2010年にあっさり復活した。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「城島コピー捕手」キロスと「キロス問題」
開幕から7ゲーム続けてアダム・ムーアが受け、彼がケガをした後はジョシュ・バードが2ゲーム、バードがケガをした後はアルフォンソが2ゲーム受けている。バルガスについては、7ゲームも受けて被打率.180と抜群の数値のアダム・ムーアがひとり抜けた成績を収めている。


ローランドスミス
Adam Moore 5.02 .283  3ゲーム
Rob Johnson 5.90 .284  8ゲーム
Josh Bard   23.62 .625  1ゲーム
参考◆2009シーズン
Rob Johnson 2.57 .125  1ゲーム
城島       3.83 .247  14ゲーム
Ryan Rowland-Smith 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
4月 ロブ、ロブ、ムーア、ムーア、ロブ
5月 ロブ、ムーア、バード、ロブ、バード、ロブ
6月 ロブ
彼の球を受けるキャッチャーはゲームごとに変わる。そのランダムさは、シアトルの先発投手では一番だろう。ひとことで言って今シーズンのローランドスミスは、あらゆる点で「腰が座っていない」。
たとえキャッチャーが誰であろうと、CERAは5点を越え、被打率は2割8分を越えてしまう。彼が自分を見失った理由はよくわからない。
いま彼のホームラン被弾率は4.9%なのだが、これはチームワーストであり、HR/9(9イニングあたりの被ホームラン数)も、2.09と、チームワースト。。もちろん浴びたホームラン数も、12本で、これまたワースト被長打率.585、被OPS.973、どれもこれもワーストである。
また、LD%(Line Drive Percentage ライナーを打たれた割合)というデータがあるのだが、これまたローランドスミスが27%で、先発投手陣の中ではワースト。投手陣全体でみても、テシェイラの32%がワーストで、ローランドスミスはその次に悪い。バットの芯でとられられた打球をチームで最も多く打たれている(数字はいずれも2010年6月12日現在)。


イアン・スネル
Josh Bard     2.35 .303  2ゲーム
Adam Moore   4.84 .309  5ゲーム
Rob Johnson   5.40 .231  1ゲーム
Eliezer Alfonzo  5.79 .219  2ゲーム
参考◆2009シーズン
Adam Moore   2.50 .257  3ゲーム
城島         4.76 .261  6ゲーム
Rob Johnson   5.11 .186  3ゲーム
Ian Snell 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com
イアン・スネルが先発したゲームは、1勝9敗である。要は、スネル先発ゲームがシアトルの最大の借金の元になっているのである。
4月は全てアダム・ムーアが受けたが、5月に入ってコロコロとキャッチャーが変わるようになった。
5月 ロブ、ムーア、バード、バード、アルフォンソ
6月 アルフォンソ
捕手別にみると、一見すると、珍しくジョシュ・バードが一歩抜けているようにみえる。だがバードがキャッチャーのときの被打率はなんと「3割」を超えている。だからバードのCERAの低さは単なる運の良さとしかいいようがない。逆に、被打率の低いロブ・ジョンソンやアルフォンソのゲームはCERAが高いという、おかしな現象がある。
このことから推測できるのは、被打率を低く抑えようとすると、ホームランを浴び、ホームランを避けようとすると集中打を浴びるという、スネルのピッチングの迷走ぶりである。このことは彼のピッチングを複数回見たことのある人なら「そういえば、そうだ」と、大きく頷いてもらえることと思う。
ちなみにスネルのホームラン被弾率は4.2%。これはローランドスミスに次いで、チームワースト2位の記録だ(2010年6月12日現在)。


こうしてみてもらうと、シアトルの先発投手の柱は、2009年にはヘルナンデス、ウオッシュバーン、ベダードの3人が柱だったのが、2010年にクリフ・リー、(本調子とはいえないが)ヘルナンデス、フィスター、バルガスに代わっただけだということがわかる。
つまり言いたいのは、ルーク・フレンチを獲得したウオッシュバーンのトレードも、スネルのトレードも、何の意味もなかった、ということだ。ズレンシックの手腕に対する批判という意味でもある。

その2010シーズンに柱になっている4人の先発投手の大半を受けて、なんとかゲームを作っているのは、もちろん上で見たようにロブ・ジョンソンである。
バード、アルフォンソではゲームにならない。特にアルフォンソは、LAA戦でインコースしか打てない松井に何度もインコースのサインを出してはホームランを献上したように、スカウティングもへったくれもないリードをするのが見ていてイライラする。


それにしても、だ。
この2年のシーズンの、どのキャッチャー、どの投手と比べても、2009年の城島の数値が最も酷い。大半の先発投手において、ほかのどのキャッチャーよりも打たれ、ほかのどのキャッチャーよりも点を取られている。

よくあんな酷いキャッチャーに高い給料を払っていたものだと思う。






damejima at 15:18

May 29, 2010

ゲームはまだ終わっていないが、試合の勝ち負けがどうであれ、好打者の多いエンゼルス打線に10三振させてしまうのだから、クリフ・リーの投球術、やはりたいしたものだ。特にクリーンアップに6三振なのだから、失点はしたが内容は本当に素晴らしい。

Seattle Mariners at Los Angeles Angels - May 28, 2010 | MLB.com Gameday



これぞクリフ・リーの投球術という感じのゲームだ。
カーブの良さもさることながら、エンゼルス打線に要所で投げている高めの球が、非常に効果をあげている。
知っての通り、クリフ・リーのストレートは早くはなく、剛球を誇るという速球派投手ではけしてない。だが、3-0というカウントでも慌てることなく、落ち着いて打者を処理してしまうあたり、やはり投球術においてそこらの新人君とは格が違う。

投球術、というと、「とにかく低めに投げること」と思い込みがちだが、このブログでも何度も取り上げてきたように、低めのタマに強い打者だらけのメジャーでは、高めの球を効果的に使うことは十分に戦略として重要だ。

例えば、カーブを有効に使いたい投手にとっては、ストレートを低めに集めてばかりいるのでは、打者に球筋を読まれてしまう。ストレートをボールになるように高めに投げておくことも、カーブの有効性を高めるひとつのアイデアとして、メジャーでは研究が進んでいる。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(4)「低め」とかいう迷信 研究例:カーブを有効にする「高めのストレート」

また、例えばテキサスの打者のホットゾーン(=ストライクゾーンのどのコースを、どのくらいの割合でヒットしているか)をみると、このチームのほとんどの打者が「低い球」に対しては驚異的な打率を残している一方で、「高めの球」に対しては対照的に打てていないことがわかる。
2009シーズンの最終戦でロブ・ジョンソンは初球に高めの球から入ることで、強打者の揃うテキサス打線を翻弄した。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:最終テキサス戦にみるロブ・ジョンソンの「引き出し」の豊かさ (1)初球に高めストレートから入る






damejima at 13:26

April 20, 2010

4月13日のホームゲームで今シーズン好調のオークランド相手に一歩も引かない無四球の好投をみせていたフィスターロブ・ジョンソンのバッテリーが、こんどはボルチモア相手に6回までノーヒットに抑え込む好投をみせた。
イチローの浅いフライのランニングキャッチ、フィギンズのライト前に抜けるゴロを好捕して反転しながら見事に送球したファインプレー、ジャック・ウィルソンのファインプレーなど、ノーヒット・ノーランが達成されるとき特有の雰囲気があっただけに、7回にマーケイキスに初ヒットを許したときには、残念だと思うと同時に、なんとなく肩の荷が下りてホッとした(笑)

いくらブライアン・ロバーツが怪我(腹筋痛らしい)で欠場していて元気のないボルチモア打線とはいえ、6回を終えた時点で70球前後と、フィスターのピッチングは非常に効率がよかった。この2試合のホームでの登板で、許した四球はわずか1つである。
今日も終わってみれば、95球投げてストライク63。綺麗にボール:ストライクが1:2の理想配分になっていたことからも(四球、死球と続いた初回を除いて)いかにバッテリーがピッチングをコントロールできていたかがわかる。
これでフィスターはロブ・ジョンソンと組んで2連勝。やはりロブ・ジョンソンと組んだときの投手のERAは驚くほど低くなる。
Baltimore Orioles at Seattle Mariners - April 19, 2010 | MLB.com Gameday

投手コーチ リック・アデアの試合後のコメント
アデアも、この2試合のフィスターの仕事ぶりが「バッテリーとしての仕事」である部分を十分に認識している。
"I think in terms of movement and command, yeah," Adair said. "He was good. Again, he commanded both sides of the plate, was down in the zone and used his soft stuff when he needed to. He did a lot of things well and [catcher Rob Johnson] did a tremendous job with him."
Fister's gem, seven-run third down O's | Mariners.com: News


たぶんせいぜい2ヶ月もあれば、つまり夏になる前に数字的にハッキリ結果が出るだろうと思っているのだが、ロブ・ジョンソンとアダム・ムーア、この2人のマスクのゲームで、だいぶERA、被打率、四球数など、いろいろな数字に差が出る、と予測している。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年4月13日、初回イチローを三振にしたオークランドバッテリーのたいへん美しい配球。持ち球の少ないフィスターに「ストレートのみ」で素晴らしいピッチングを披露させたロブ・ジョンソン。2人のキャッチャーの「素晴らしき配球合戦」。

ちなみに、去年デビューのフィスターの年度別捕手別のCERAなど、簡単な数値をあげておく。
昨シーズンのフィスターはダメ捕手城島とばかり組まされ、53イニングでなんと11本もホームランを打たれている。
言い換えると、運の悪いことに彼はデビューイヤーに、まったくといっていいほどロブ・ジョンソンとはバッテリーを組ませてもらってない。つまり、まぁいってみれば、フィスターは「ロブ・ジョンソン効果」の凄さを何も体験しないまま、デビューシーズンを終わってしまったのである。

2009年 フィスターの捕手別データ
(数値はCERA、被打率、被OPS)
城島        53イニング 4.58 .271 .810 
ロブ・ジョンソン  1イニング 1.29 .250 .650
アダム・ムーア  7イニング 0.00 .200 .551
Doug Fister 2009 Pitching Splits - Baseball-Reference.com

2010年 フィスターの捕手別データ
(数値はCERA、被打率、被OPS)
ロブ・ジョンソン 15イニング 0.60 .120 .294
アダム・ムーア  4イニング  4.50 .333 .817
Doug Fister 2010 Pitching Splits - Baseball-Reference.com


いかに、2009年の監督ワカマツのチームマネジメントが、ダメ捕手に気をつかって投手を任せてしまい、チームの負けを無駄に増やしていたかがわかる。ほんとうにさっさと首にすべきだった。

2010シーズンはちょっと違う。フィスターとアダム・ムーアとの相性がイマイチだとわかると、サクッとロブ・ジョンソンとのバッテリーに切り替えて大成功を収めた。
2010シーズン開始当初は、ヘルナンデスローランド・スミスがロブ・ジョンソンの担当みたいな感じで始まったが、4月19日の段階では、デトロイト3連戦でローランド・スミスがアダム・ムーアに替わった一方で、4月13日以降フィスターの担当がロブ・ジョンソンに替わったように、柔軟な対応にはなっている。


これからクリフ・リーエリック・ベダードのベテラン投手たちが現場に復帰して陣容が本格的に整うわけだが、アダム・ムーアのリードがどうも単調であることがわかってきているだけに、(去年あちこちを手術しているロブ・ジョンソンの体調面に不安がなければ、だが)先発投手5人の大半をロブ・ジョンソンが受ける時期が遠からずやってくるのが当たり前の結果だと思っている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年4月6日、スネル、アダム・ムーアのバッテリーが多用し、延長サヨナラ負けを招いた「同じコースにストレート・変化球を続けるパターンの欠陥」をちょっと研究してみる。






damejima at 21:26

April 14, 2010

まだ試合は始まったばかりなのだが興奮している。

なぜって、投球術にたけた大投手ロイ・ハラデイや、ベテラン・クローザーのネイサンが投げているわけでもないのに、このゲームの序盤3イニングが、両チームの素晴らしいバッテリーワークによる「両軍配球ショー」のような様相を呈した、非常に稀にしか見られないテクニカルなゲームになっているからだ。
Oakland Athletics at Seattle Mariners - April 13, 2010 | MLB.com Gameday

こんな中身の濃いゲーム、長いシーズンでもそうそう見られないと思う。超レアといってさしつかえない。なぜNHKはこういう素晴らしいゲームを放送しないのだろう。アホウとしかいいようがない。


まずオークランドサイドだが、1983年生まれのカート・スズキが、素晴らしくコントロールのいい1988年生まれの若い左投手ブレット・アンダーソンとのバッテリーで、アンダーソン独特の低めに流れるカーブを非常に美しい配球の中で有効に使って、シアトルの打者たちを手球にとった。
ストレートを左右一杯(特にハーフハイト)に散らしながら、最後は左打者でいえばアウトロー、右打者ではインローに、沈みながら流れるカーブを空を切らせ続けているのである。

一方でシアトルの1983年生まれのキャッチャー、ロブ・ジョンソンは、まだ持ち球の少ない1984年生まれの右投手ダグ・フィスターに、ゲーム序盤、なんとストレートオンリーで勝負させ続け、コースの投げわけのみで、3イニングをもたせてしまった。(4回以降には変化球を混ぜ始め、結局フィスターはなんと無四球で8回を投げ切ってしまった

素晴らしい「配球合戦」である。

追記:試合後のフィスターへのインタビュー
Bradley's homer backs Fister's gem | Mariners.com: News
What worked so well?
何が今日の好投につながった?
"Attacking the hitters, being able to keep the ball down and kept things moving," he said. "[Catcher Rob Johnson] mixed the pitches well tonight."
「打者に向かっていったことだね。常にボールを低めに、そしてボールを動かし続けたこと」とフィスター。「(キャッチャーのロブ・ジョンソンが)今夜はうまく配球してくれたよ」



まずはとりあえず1回裏に天才打者イチローが三振にうちとられた場面から見てもらおう。
敵ながら天晴れ、素晴らしい配球である。たいへんに美しく、無駄がない(ただ、ロイ・ハラデイほどではない。彼は別格だから。)イチローの熱狂的なファンである自分が言うのだから間違いない(笑)

2010年4月13日 1回裏 イチロー 三振1回裏 イチロー
三振


以前に、下記の記事で、6つの配球パターンを紹介した。Pitching Professor Home Pageを主催するJohn Bagonzi氏によってWeb上に発表されている、ストレート、カーブ、チェンジアップ、3つの球種だけを使った6つの配球パターンである。
Pitching Professor Home Page

WebBall.com - Pitch Sequence & Selection

上の画像のイチローへの配球はこうなっている。

外一杯ハーフハイト ストレート 見逃しストライク
外にはずれる カーブ ボール
内一杯のハーフハイト ストレート ファウル
外にはずれる カーブ(2球目とまったく同じ球)空振り三振

まさに、John Bagonzi氏の紹介する6つの配球パターンのうちの5番目、5TH SEQUENCE Living on the outsideである。
三振した球は、見逃してボールになった2球目とまったく同じ球である。天才イチローに、一度は見逃したボール球を振らせて三振にしてしまうのだから、いかにこの配球が素晴らしいかがわかる。
また、これは典型的な「4球で打者を仕留める配球」になっていて、教科書に載せたいくらいの、いい意味でスタンダードな配球だ。野球をやっている多くの人にとてもタメになる教材のような、そういう配球だと思う。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(1)「外角低め」「ストレート」という迷信

5TH SEQUENCE
Living on the outside


1. Fastball outer half
2. Curveball low and away
3. Fastball in
4. Change-up low and away

カート・スズキは、よほどイチローを研究していると見える。なぜなら、以前紹介したように、イチローがメジャーで唯一苦手としているカウントが、「1−2」なのである。そういう部分も、カートはきちんと計算にいれた上でイチローを攻めている。今日のイチローは何度もこの1-2というカウントに追い込まれて、凡退させ続けさせられた。

なお、上に挙げた美しい配球が偶然に生まれたものではないことを証明する証拠を2つ挙げておく。1回裏に三振したフランクリン・グティエレスと、2回裏のチャンスの場面で三振したロブ・ジョンソンへの配球である。
グティエレスの三振の配球もまた「美しい4球配球」である。イチローは左で、グティエレス、ロブ・ジョンソンは右だから、右打者用にアレンジされているが、基本コンセプトは全く同じであることは、下記の2枚の画像を見てもらえばわかると思う。三振したのも、イチローとまったく同じ、低目のカーブである。

2010年4月13日 1回裏 グティエレス 三振1回裏 グティエレス
三振


3球目のストレートと、4球目のカーブは、打者から見て、途中まで少し軌道が似ている。打者の手元に来て、そこからスウッと流れるのだから、いやらしい。3球目をファウルしたグティエレスは、4球目もバットが止まらず、空振り三振。

2010年4月13日 2回裏 ロブ・ジョンソン 三振2回裏 ロブ・ジョンソン
三振


インローに、「ストライクになるカーブ」、「ボールになるカーブ」をしつこく、しつこく投げられて、最近は四球を選ぶのがうまくなってきたロブ・ジョンソンも、さすがに根負けし、三振。


さて、かたやシアトルのロブ・ジョンソンフィスターのこちらも若いバッテリーである。
フィスターのストレートのスピードは90マイル前後しかないのだが、非常にうまく「投げ分けて」、打者に狙いを絞り込ませないで、かわし続けることに成功した。

「投げ分ける」というと、日本ではどうしても「コーナーぎりぎりを、きわどく突く」というイメージをもたれやすいが、それではかえって単調になる。
次の画像のオークランドの6番チャベスを三振にとった場面を見てもらうとわかる。バッテリーが目標にしているのは、「むやみに苦労してコーナーをつくこと」(そしてかえってコースが甘くなり、打者にも狙いを絞り込まれて、ホームランを打たれること(笑))ではなく、「打者の狙いを適度に翻弄すること」である。
適度に翻弄できれば、それでいいのである。

初球  アウトハイ ストレート ファウル
2球目 アウトロー ストレート ボール
3球目 イン ハーフハイト ストレート 見逃し
4球目 アウトロー ストレート 見逃し三振

2010年4月13日 2回表 オークランド チャベス 三振2回表 オークランド
チャベス 見逃し三振


配球がちょうど「三角形」になるのが、このパターンがうまくいっているときの証拠。コーナーいっぱいばかり狙っていると、「四角」にはなるが、「三角形」にはならない。

初球から高めの球を使うのが、とてもロブ・ジョンソンらしい。何度も紹介しているように、彼の得意パターンの「アウトハイ・インロー」でも、高めの球から入る。
上で挙げたイチローの三振では、見逃した2球目を4球目で空振りして三振したが、チャベスは、2球目と似たコースの4球目を「見逃し」て三振している。
カート・スズキブレット・アンダーソン「振らせる三振」と、「見逃させる三振」の、ここが違いである。
おそらくチャベスはこの場面、変化球か、インコースのストレートでも待っていたのかもしれない。チャベスにそう思わせた、つまり、狙いをはずさせた原因は、明らかに3球目のストライクが、アウトローいっぱいではなくて、インコースのハーフハイトだったからだ。

もし3球目のストライクがアウトローいっぱいのストレートだったなら、どうだろう。打者に4球目を予測されて、投手には大きな制約、足枷(あしかせ)ができる。例えばアウトローに変化球をもってきてもファウルできてしまうかもしれないし、アウトローに2球続けてストレートでも、3球目で同じ球で追い込まれたプロの打者は同じ球筋を見逃してはくれない。
だからこそ、「ダメ捕手城島のごとく、ワンパターンにアウトローを突き続ける」のではなく「3球目のインコースがハーフハイトだからこそ、利いている」と明言できるわけだ。


こちらはおまけ。
いつもの「アウトハイ・インロー」パターンである。ここでは、ロブ・ジョンソン、フィスターのバッテリーはカーブを使った。
何度も言っているように、「アウトハイ・インロー」では、ストレートから入ったら、次にはストレートではなく、球種を変え、変化球を投げることがほとんどだ。これは高さだけでなく、球種も変えることで、打者に「アウトハイ・インロー」パターンの変化のスケールを大きく見せる狙いがあるのだと思う。
上で示した「イン・アウトのコース、ハーフハイトの高さを有効に混ぜながら、ストレートだけを投げわけて、打者の狙いをかわし続けるパターン」とは大きな違いがある。

2010年4月13日 3回表 ペニントン センターフライ 3回表 オークランド
ペニントン
センターフライ







damejima at 12:12

April 06, 2010

とうとうシアトルの開幕戦がやってきた。5年契約を結んだばかりのフェリックス・ヘルナンデスが先発。先発キャッチャーは良き相棒のロブ・ジョンソン
Seattle Mariners at Oakland Athletics - April 5, 2010 | MLB.com Gameday

立ち上がりのヘルナンデス、ロブ・ジョンソンのバッテリーはとにかくストレートをほうらなかった。シンカー、シンカー、また、シンカー。高速シンカーだらけ。そしてチェンジアップとカーブ。まるで王健民ばりのピッチングである(笑)

結果からいうと、ヘルナンデスはストレートを温存した。いざというときにならないと投げないし、投げるときには目の覚めるようなストレートをほおって三振を奪う。
ヘルナンデスに7分目のチカラで投げる貫禄が出てきた。素晴らしい。

またロブ・ジョンソンは今日のゲームで4つのダブルプレーをオークランドに食らわせた。去年同様、要所でダブルプレーに仕留めるロブ・ジョンソン流は健在である。(ロブ・ジョンソンが開幕試合でホームランを打ったのは出来すぎだが(笑)四球2つを選んだことがたいへん素晴らしい)
まだゲームは終わってないが
そして開幕戦勝利! 今年も彼らは頼りになりそうだ。


盗塁の多さ、四球の多さ。出塁率の高さ。そして打線の繋がり。2010年シアトルは、何もかもが変わろうとしている。


いくつか配球を紹介しておこう。
最初はハーフハイトのボールを多用したブログ主好みのパターン。

2010年4月5日ヘルナンデスのキレ味冴える配球ハーフハイトの配球パターン(3回裏・デイビス)

初球、2球目とインコースを変化球で突いて意識させておいて、3球目にいきなり、ほとんどここまで投げてこなかったストレートをアウトハイにズバン!と投げ、打者デイビスにファウルさせた。
この3球目を振らせたことで、4球目のアウトコース一杯に決まるカーブはまったく打者が手が出なかった。素晴らしい三振。



2つ目は、去年さんざん紹介してきた「アウトハイ・インロー」の典型的パターンだ。
日本では決め球はアウトローと決めてかかりやすいためか、「インハイ・アウトロー」パターンが多用される。インハイに変化球を投げておいて、決め球はアウトローにストレートを投げたがる。日本のプロ野球の中継でも見ながら一度メジャーの「アウトハイ・インロー」パターンと比べてみてほしい。
だが、メジャーでは(もちろん投手全員ではないが)、インロー(またはインコースのハーフハイト)にストレートを見せておいて、勝負球としてアウトハイに変化球を投げたりもする。まったく逆パターンである。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー

また、アウトのハーフハイトに変化球を何度も見せておいて、最後にインハイのストレートで勝負するパターンなども、配球教科書の最初のパートにのっていたりする。アウトローで決めることに固執しない様々な配球パターンが、若い頃から教え込まれているわけである。

4TH SEQUENCE
Away, away and in

1. Fastball lower outer half
2. Repeat fastball lower outer half
3. Curveball away
4. Fastball up and in

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(1)「外角低め」「ストレート」という迷信


ロブ・ジョンソンの多用するMLBで典型的な「アウトハイ・インロー」パターンは、コースの内外(うちそと)、高低を投げ分けるだけでなくて、早いストレート系のボールの後に緩い変化球(または逆)を投げることが多く、球種も変えてくる。つまり、球種の変化、ボールの軌道の変化に加えて、速度の変化、つまり緩急も加わる。
見た目にはただ内外に投げ分けているだけのように単純に見えるが、ヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリーでは、要所で多用され、非常に高い効果を挙げている。

2010年4月5日 開幕戦アウトハイ・インローの典型的パターン典型的な「アウトハイ・インロー」のパターン(5回裏・チャベス セカンドゴロ)

初球、アウトハイのカーブ。
2球目、インローに速度のあるシンカーで討ち取った。
ボールの内外のコース、高さ、、球種、ボールの軌道、速度、たった2球だが、あらゆる面で打者の目先を変え、けして打者にバットにまともに当てさせない。
2球目が、1球目と同じ速度のカーブではいけない。球種とスピードに変化がつかないからだ。だから2球目は、2シーム、速度のあるカットボール、速度のある高速シンカーなどでなければならない。







damejima at 13:51

November 19, 2009

ザック・グレインキーのサイ・ヤング賞の受賞について、FA移籍が予定されるカンザスシティの捕手ミゲル・オリーボ
"I loved him and we had a great relationship, but that's baseball."「彼のことは好きだし、素晴らしい関係が築けたと思ってるよ。(でも、俺、移籍するんだよね)それがベースボールってもんさ」と、そっけないコメントをだした。移籍するにしても、ちょっと大人げない。

一方、ヘルナンデスの球を受けたロブ・ジョンソンは対照的に、あれやこれや、ヘルナンデスのいいところを、いつものように熱心に語った。
彼のロングインタビュー映像はMLBトゥナイトで見た数分程度のものしかないが(そこでも、彼はまずヘルナンデスのことから話を始めている)、今回のヘルナンデスについてのコメントもおそらく、言葉のリズムからして、身振り手振りを交え、あの童顔に笑顔を浮かべながら目をキラキラさせて熱心に語ったことだろうと思う。

シーズンが終わっているというのに、この温度が保てることが、彼の特別な才能だ。

ヘルナンデスが月間最優秀投手を初受賞した翌月、
2009年7月のMLB Tonightによる
ロブ・ジョンソン インタビュー

肉声から彼の人柄のほのぼのさが伝わってくる。
Baseball Video Highlights & Clips | Rob Johnson talks with MLB Tonight - Video | MLB.com: Multimedia


実際、ロブ・ジョンソンに、「数字に表せる」特別な才能があるわけではない。
ブライアン・マッキャンホルヘ・ポサダビクター・マルチネスのように、スタンドにホームランをバカスカ放り込めるわけでもないし、ジョー・マウアーのように、イチローばりのハイ・アベレージでヒットを打ち続けられるわけでもない。ヤディア・モリーナほど、肩が強いわけではない。

彼にやれることといったら、ひたすら投手のやることを面白がり、興味をもつことくらいだ。好奇心というやつである。

今回のヘルナンデスのサイ・ヤング賞選考記事でのロブ・ジョンソンのコメントのトーンは、今年の夏に、ウオッシュバーンの新魔球「ドルフィン」を開発するに至った経緯を話したときのロブ・ジョンソンのインタビューと、トーンが共通している。
投手のやることに常に興味をもち、投手とのやりとりをいかにも楽しそうに話す。それがロブ・ジョンソンだ。
2009年7月6日、ロブ・ジョンソンが準完全試合を達成したウオッシュバーンの新しい魔球「ドルフィン」と、その開発にいたるコラボレーションについて大いに語った。

彼はひたすら投手のやることを、面白がり、驚き、感嘆し、リスペクトし、笑顔で話す。よほど、キャッチャーという仕事が好きなのだろう。わがままな旦那、勝新太郎のことをニコニコ話せる中村玉緒さんのような男だ。

家族。友人。夫婦。恋人。誰でも、一緒にいる相手のことを興味をもつのが普通だと思うかもしれないが、メジャーは欧米のオトナの世界である。必要以上に相手に深入りすることはない。上にあげたミゲル・オリーボのコメントがドライなわけではなく、ただロブ・ジョンソンが人懐っこいだけだ。
この、「人に対する興味、好奇心」というのは、おそらくロブ・ジョンソンのもつ「非常に特別な才能」だと思う。そうでもなければ、これだけのERAを投手から引き出せない。

実際、ロブ・ジョンソンは、「数字に表せる才能」があるわけではないが、「数字に表しにくい特別な才能」をもっている。「人の才能を引き出す才能」である。こういう才は、えてして人の目につきにくいものだ。


今年のヘルナンデスは、たしかに19勝した。だが、ストライク率のグラフで示したことがある通り、常に絶好調というわけではなかった。投手とはそういうものである。負け試合というのに完投してしまいそうになるロイ・ハラデイのような、超然としたオトナは、そうはいない。ヘルナンデスだって、リンスカムだって、まだまだ若い。
2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。(ヘルナンデスの2009ストライク率グラフつき)

2009年10月6日、ヘルナンデスと松坂の近似曲線の違いから見た、ヘルナンデスの2009シーズンの抜群の安定感にみる「ロブ・ジョンソン効果」。(ヘルナンデスと松坂の2009ストライク率グラフつき)


そういう若いヘルナンデスと、ロブ・ジョンソンが、2人してやってきたことが、今年の19勝という勝ち星、最多勝というタイトルにつながった。
ヘルナンデスの今シーズンのプレー(動画・MLB公式)
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia
ロブ・ジョンソンの今シーズンのプレー(動画・MLB公式)
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia

19勝を達成したヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリー

投手だけに贈られるサイ・ヤング賞は、たしかに逃したかもしれないが、バッテリーとしてみれば、このバッテリーは、今年のメジャー、ア・リーグで最高のバッテリーだったと確信している。


誰も贈らないのなら、勝手に贈るまでだ。


フェリックス・ヘルナンデス殿。
ロブ・ジョンソン殿。

当ブログより、
2009年ア・リーグ 最優秀バッテリー賞を勝手に進呈する。

from damejima






damejima at 18:48

October 13, 2009

ちょっと時間があいてしまったが、ヘルナンデスとロブ・ジョンソンの「サイ・ヤング バッテリー」が19勝目を飾った最終テキサス戦のことを書いてみる。
Texas vs. Seattle - October 4, 2009 | MLB.com: Gameday


このゲームについては、すでに初出の記事で「高めの球を効果的に使った好リード」と、明確に書いておいた。もちろん、ちゃんと理由があってのことだ。
2009年10月4日、ロブ・ジョンソン、高めの球を効果的に使った好リードや8回の刺殺などでヘルナンデスに5連勝となる19勝目、ついにア・リーグ最多勝投手達成!!

ロブ・ジョンソンの今シーズンの英雄的な勝率の高さについては、馬鹿な城島オタや、データも無しに「気分」でモノを言ったり書いたりする評論家やライター、あまりバッテリーワークの細部を見ずにモノを言うアホウが、雁首そろえ、しかもジェラシー丸出しにして(笑)、「勝てるヘルナンデスを担当しているんだから、勝率が高くて当たり前」みたいな、理にあわないことを言う場面を何度となく見せてもらって、いつも腹を抱えて笑わせてもらっていたものだ。こんな馬鹿丸出しの話はない。
ヘルナンデスを担当するだけでサイ・ヤング賞がとれるなら、コネ捕手城島だって去年まで3年連続でサイ・ヤング賞とはいわないまでも、ヘルナンデスやウオッシュバーンに月間最優秀投手くらい受賞させていなければおかしいわけで、理屈にあわない。
いい大人が子供でもわかるヒガミをクチにして得意げになっていては、恥をかくだけだ。

今シーズンのロブ・ジョンソンとヘルナンデスのバッテリーについては、何度も記事を書いたが、思うのは、「彼らはすべてのゲームで成功してきたわけではない」ということだ。
ときには、ストレートにキレがないために、なかなかストライクがとれないゲームもあった。また、初回から相手チームにヘルナンデスの配球の基本であるストレートに狙いを絞りこまれ、対応に苦しんだゲームもあった。特に8月は、対戦相手が思い切って狙い球を絞るゲーム運びをしてきたケースが続き、相手打線の狙いをはぐらかすのに苦労したものだ。
だが、たとえ対戦相手から研究され、スカウティングされようと、それを乗り越え、相手を研究し返し、苦しいゲームを乗り切ったときに、はじめて、「ア・リーグ最多勝」「月間最優秀投手2回」「サイ・ヤング賞有力候補」というような、栄冠が得られるものだ。

名誉がなんの苦労もなく手に入るわけはない。
勘違いしてもらっては困る。



まぁシーズンも終わったことだし、そんな苦労の多かったロブ・ジョンソンにとって、名誉あるシーズンの締めくくり、集大成になった最終テキサス戦をサンプルに、今シーズンのバッテリーとしての工夫ぶりや、ロブ・ジョンソンの「引き出し」の多さについてのメモを書きとめておこうと思う。


このテキサス最終戦で、ヘルナンデスが対戦した打者は25人。
ゲームを見ていても「高めの球をうまく使っている」と感じたわけだが、後で調べてみると、ヘルナンデスが「初球に高めのボールを投げた打者」が9人ほどいる。対戦したバッターの3分の1程度には、だいたい同じ球を高めに投げていることになる。
この「3分の1」、というのが、いかにもロブ・ジョンソンらしさである。これが2分の1になって、相手に読まれてはいけないのである。

2回 ティーガーデン 三振
2回 キンズラー   レフトフライ
3回 ジェントリー  サードゴロ
3回 ジャーマン   ライトフライ
4回 マーフィー   レフトライナー 左打者
4回 ブレイロック  三振 左打者
5回 ジェントリー  ショートゴロ
7回 ブレイロック  四球 左打者
7回 ティーガーデン サードゴロ
(7回 ジェントリー レフトライナー 投手メッセンジャー)

初球、右打者には(1人をのぞいて)「インハイ」、左打者には「アウトハイ」に投げている。球種はほとんどがストレート。
要するに、投手ヘルナンデス側からみれば、「9人に、初球をまったく同じコースに投げた」ということだ。投手にしてみれば、同じコースに投げればいいわけで、たいへん投げやすいはずで、余計な気を使う必要がなく、精神的な疲労感が軽減できる。


なぜ、これら9人のバッターに「高めの球から入ったか」といえば、理由は簡単だ。
テキサス打線の大半が「高めの球、特にインハイが苦手だから」だ。

だからこそ、これらのバッターはのべ9人が9人とも、ヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリーの「高めの初球」をヒットすることはできなかった。4人がストライクを見逃している。

初球の高めの球を打てないテキサス打線
2回 ティーガーデン ボール
2回 キンズラー   見逃しストライク
3回 ジェントリー  見逃しストライク
3回 ジャーマン   見逃しストライク
4回 マーフィー   空振り
4回 ブレイロック  見逃しストライク
5回 ジェントリー  ファウル
7回 ブレイロック  ボール
7回 ティーガーデン ボール

FOX SportsのMLBページでは、Hot Zoneといって、打者のコース別の打率を、上下左右に9分割したコース別に公開してくれている。
それをみると、テキサスの打者はかなりの数、というか、大半の打者が「高め」を苦手にしていることがわかる。あの巧打で知られる右打者キンズラーでさえ、インハイは苦手なのだ。

ボーボン インハイとアウトローが苦手
Julio Borbon, Center Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
マーフィー 典型的にハイボールヒッター
David Murphy, Left Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ブレイロック  インハイとインローが苦手
Hank Blalock, Designated Hitter, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
キンズラー インハイとアウターハーフが苦手
Ian Kinsler, Second Base, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ティーガーデン インハイが苦手
Taylor Teagarden, Catcher, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ジェントリー アウトコース低めしか打てない
Craig Gentry, Center Field, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN
ジャーマン 高めがまったくダメ。逆に低め、インコースは強い
Esteban German, Second Base, Texas Rangers, MLB Hot Zone - FOX Sports on MSN

では、
Hot Zoneの示すような「データ的に打率の低いコースに投げてさえいれば打たれない」のか? 打者全員に「初球は打率の低いコースを投げていれば、初球だけは打たれないですむ」のか?

いやいや。そんなわけがない。
それでは打者に配球を読まれてしまう。読まれたら終わりだ。だから「3分の1」の打者にしか、「初球 高めストレート」を使わない。

それに、インハイの打率が低いからといって、それが本当に苦手コースかどうかは正確にはわからない、ということもある。インハイに投げてくる投手が少なかったとか、インハイのサンプル数が少ないだけ、という可能性だってある。



プロの打者というものは、たとえそれが苦手なコースや球種のボールであっても、あらかじめ「来る」とわかっていれば打ててしまう。まして、160キロの速球であろうと、超高速のブレる球、ナックルであろうと、どんな球でも打ちこなしてしまうのがメジャーだ。

余談になるが、どうも「ボールが投手の指を離れ、ボールがホームプレートに到達するまでのリーチ時間」と、「通常の人間の反射スピード」を単純に比較すると、「ボールのスピードや変化のほうが早すぎて、とても打てるはずはない」らしい。
では、なぜプロのバッターがバットにボールを捉えられるのかといえば、トレーニングによって反射スピード(「カラダが反応する」というやつ)を上げている以外に、異常なほどの天性の動体視力、投手のフォームのクセに対する「読み」、配球から次の球種やコースを予測する「読み」など、さまざまな能力がからむことで、それではじめて「打てる」ということらしい。


「初球にテキサス打線の苦手な高め」はいいが、
2球目だって問題だ。

以前に「メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート」というシリーズで紹介した「メジャー捕手と城島の『対角パターン』の正反対ともいえる違い」を思い出してもらいたい。
もしこれがコネ捕手城島なら、「インハイにストレート」を投げたからには、次の球は「アウトコース低めいっぱいの変化球」、とくにスライダーを投げそうなものだ。
城島のよく使う「対角パターン」というやつだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート

だが、しかし、今回とりあげた9人の打者に、ロブ・ジョンソン、ヘルナンデスのバッテリーは、一度も「2球目に、アウトコース低めコーナーいっぱいにスライダーを投げる」ような、無駄に力が入って神経質なだけで、労力のかかる無駄なことをしていない。

たしかに初球に高めを投げた9人のうち、2球目に変化球を投げるケースは半数ほどある。だが、どのケースでも2球目に投げたのは「真ん中低め」(数人は「真ん中」に投げてしまっているが、これはおそらくコントロールミスの可能性が高いだろう)であって、カーブ、スライダー、チェンジアップを投げわけている。もちろん、「真ん中低め」を決め球に使うのは、メジャーの配球のパターンのひとつである。
この結果、何人かの打者は2球目で打ちとっている。また、こうした組み立てをしたのは、2回から5回と、7回の5イニングだけで、1回と6回は組み立てをまったく変えている。

要は、ロブ・ジョンソンとヘルナンデスは「高めから入る組み立て」においては、「2球目で打ち取れるものなら打ち取って、さっさとイニングをすませたい」のであって、ひとりに6球も7球も使って無理矢理三振をとりたいと最初から考えて、意味不明な苦労をみずから背負い込んで投げているわけではないということ。
そもそも「2球目に素晴らしい変化球をアウトコースコーナーいっぱい、いっぱいに使って、絶対に打者のバットを振らせない、きわどいピッチング」をしなければならない必要性など、どこにもない。
気楽にやればいいいのだ。それが、2009年5月にアーズマの言った「サンデー・フェリックス」だ。

カテゴリー.:「サンデー・フェリックス」byアーズマ

2009年5月24日、デイビッド・アーズマが「ヘルナンデスがロブ・ジョンソンと組むゲームと、城島と組むゲームの大きな違い」を初めて証言した。

一応いっておくと、ロブ・ジョンソンバッテリーに「三振を最初から獲りにいく配球戦略」がないのではない。実際、このゲームの6回には、突然、「低めから入る配球」に切り替えて、テキサス打線をズバズバと3者三振に切ってとっている。

そのことについては、また後のほうで書く。






damejima at 05:55

October 07, 2009

19勝を達成したヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリー
シーズン最終戦を勝ち、ハグする
ヘルナンデスとロブ・ジョンソン


予想どおり、9月のア・リーグ最優秀投手にヘルナンデスが選ばれた。おめでとう、フェリックス。あとはサイ・ヤング賞の発表を待つのみだ。
サイ・ヤング賞が獲れるとこを心から祈っている。

9月は6登板。5勝0敗、防御率1.35。46回2/3と、9月は途方もないイニング数を投げたが、自責点はわずかに7だった。

Hernandez named AL Pitcher of the Month | Mariners.com: News

ヘルナンデス関連の動画(MLB公式)
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia


ロブ・ジョンソンはこれで、6月のヘルナンデス、7月のウオッシュバーンに続き、担当する投手が3度目の月間最優秀投手受賞となった。彼の優れた資質を表現しきったシーズン、キャッチャーとしての名誉ある最高の2009シーズンに、立ち上がってスタンディング・オベイションし、心からの拍手を送る。

おめでとう、ロブ・ジョンソン。


2009年7月3日、ヘルナンデス、6月のア・リーグPitcher of Monthを受賞。6月に彼の球を受けたバーク&ロブ・ジョンソンにとっても名誉の受賞となる。

2009年7月5日、城島のいない6月を過ごすことができたフェリックス・ヘルナンデスは、6月の3勝ERA0.94で月間最優秀投手を獲得、ようやくオールスター出場を手にいれた。

2009年8月4日、ウオッシュバーン、7月のア・リーグPitcher of Month受賞!ロブ・ジョンソンは6月ヘルナンデスに続き2ヶ月連続で月間最優秀投手を輩出、キャッチャーとしての揺るぎない優秀さを証明した。

Players of the Month | MLB.com: News



シアトル公式サイトの受賞記事によれば、今シーズンのヘルナンデスは、まさに記録づくめ。

サバシアと並んでア・リーグ最多勝タイだが、勝率も.792で、これもア・リーグトップ。ロードゲームでの防御率1.99は、メジャートップ。奪三振217は、ア・リーグ4位。

またヘルナンデスは、球団史上200奪三振以上を達成した5人目のピッチャーとなった。さらに、ひとつのシーズンで、200イニング以上の登板、奪三振200以上、15勝以上の勝ち星、3.00以下の防御率を同時達成したのは、将来の殿堂入り確実の名投手ランディ・ジョンソン以来の快挙。


ヘルナンデスの全登板
Felix Hernandez Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN

4月6日  6回自責点1  城島 QS
4月11日 5回自責点5  城島
4月17日 6回自責点3  ジョンソン QS
4月23日 7回自責点0  ジョンソン QS 完封リレー
4月28日 8回自責点0  バーク QS 9三振
5月4日  6回自責点6  城島 負け  9三振
5月9日  4回自責点5  城島 負け
5月14日 7回自責点0  ジョンソン QS
5月19日 5回2/3自責点6 城島 負け
5月24日 8回自責点1  ジョンソン QS 10三振
5月30日 6回2/3自責点0  ジョンソン QS
6月5日  7回自責点1    ジョンソン QS
6月10日 7回自責点1    バーク QS
6月16日 9回自責点0    バーク QS
6月21日 7回1/3自責点0 バーク QS 8三振
6月27日 8回自責点0    ジョンソン QS 9三振
7月3日  7回自責点3    ジョンソン QS
7月9日  8回自責点1    ジョンソン QS
7月17日 8回自責点2    ジョンソン QS 8三振
7月22日 7回自責点1    ジョンソン QS 8三振
7月27日 5回2/3自責点7 ジョンソン
8月1日  7回自責点2    ジョンソン QS
8月7日  6回自責点3    ジョンソン QS
8月12日 7回自責点0    ジョンソン QS 10三振
8月18日 7回自責点1    ジョンソン QS 9三振
8月23日 6回自責点3    ジョンソン QS
8月28日 7回自責点3    ジョンソン QS
9月2日  8回自責点0    ジョンソン QS
9月8日  7回自責点1 ジョンソン→城島 QSサヨナラ負け
9月13日 7回自責点0    ジョンソン QS
9月18日 9回自責点1    ジョンソン QS
9月24日 8回自責点3    ジョンソン QS 11三振
9月29日 7回2/3自責点2 ジョンソン QS
10月4日 6回2/3自責点2 ジョンソン QS






damejima at 12:36
前の記事(2009年10月5日、ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を解き明かす。)で、近似曲線を使ってヘルナンデスのストライク率と四球数の関係を考えてみた。
かつてはストレートばかり投げたがったり、三振をやたらと取りたがったりしたヘルナンデスだが、ロブ・ジョンソンという最高のパートナーをみつけた今シーズンは、ひとことでいって「動じないピッチング」ができるようになったことが、データからもわかった。

どうなんだろう、
他の投手でも同じようなことは言えるのか?
四球数が変化をおこすストライク率の臨界数値は変わらないものなのか。

ちょっとイタズラ心が沸いて、今シーズン絶好調だったヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリーの抜群の安定感を、たいへん松坂君には恐縮だが、四球で崩れることが多いといわれ続けているボストンの松坂を引き合いにして、比較してみることにした。
下記のグラフで、黒い近似直線がヘルナンデス赤い近似曲線が松坂、である。(「近似曲線」とは何か、については、前の記事を参照)

ヘルナンデスと松坂 「ストライク率・四球数」近似曲線の違いクリックすると拡大します
©2009 damejima


なぜ、ヘルナンデスが直線で、松坂が曲線なのか。

見てもらうとわかるとおり、投手によって特性はまったく違っていた。
まず、ヘルナンデスだが、彼の近似曲線を「直線」で表現してあるのには、ハッキリした理由がある。ヘルナンデスの近似曲線が、2次式でも4次式でもたいした変化がなく、ほぼ直線になってしまうのである。
これは、彼のストライク率と四球数の関係が非常に単純で強靭な関係にあることを推測させる。単純に言えば、「ストライクが増えれば、非常に単純に正比例して四球が減る(逆に言えば、ボールが増えれば単純に四球が増える)」という関係にある、ということだ。
だから四球の計算式も、こんな簡単な計算式でほぼあてはまってしまう。
(四球数) = -0.2332 ×(ストライク率) + 17.024
calculating formula made by damejima
©2009 damejima


それに対し、ボストンの松坂の場合は、コトはまったく簡単ではない。
Daisuke Matsuzaka 2009 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com
近似曲線の形は、設定する関数の次元を上げていくほど、複雑な形状に変わっていく。だいたい5次式くらいの表現が、穏当な意味で実態にあてはまる感じがしたが、その計算式は、エクセルのいうところによれば、こんな複雑な式になるらしい。
とても複雑すぎて表示が手に負えないから画像にしておく。
松坂用の計算式
calculating formula made by damejima
©2009 damejima


ともかく松坂の場合、ヘルナンデスとの比較でいえることは、
(1)ストライク率が65%を越えると四球が急減
(2)逆に、65%を切ると、四球が急速に増える


なぜ松坂にこういう「ストライク率によって、ピッチングの状態が急激に変わる手のひら返し的な現象」が起きるのかは、正直、理由はよくわからない。
おそらく世間で言う「よい松坂」とは(1)の状態を指し、「悪い松坂」は(2)の状態を指しているのだろう。いずれにしても好不調の波が非常に激しく出るタイプなのは間違いない。

ただ、問題はこのデータから見えないところにある。
松坂のストライク率が65%を越えると急激に四球を出さなくなるといっても、そういう「やたらとストライクをとったゲーム」で果たして松坂の自責点が少なくなっているとはいえないからである。
例1)6月7日 テキサス戦 ストライク率69.6%
   5回2/3 自責点5 被安打10 四球なし
例2)6月13日 フィリーズ戦 ストライク率67.0%
   4回 自責点4 被安打7 被ホームラン2 四球1
Daisuke Matsuzaka Stats, News, Photos - Boston Red Sox - ESPN

これだけストライクが増えると急激に四球が急に少なくなる投手の場合、四球をほとんど出さない快投をみせたという可能性より、むしろ、例えばカウントを悪くしてから四球を出すのでなく、ストライクをとりにいってホームランをガツンと打たれている可能性も考えなければならない。
実際、松坂にはそういうゲーム例は多く、簡単なデータからではわからない、なんともいいようのないピッチングの解析しにくさ、複雑さがある。


この点、今シーズンのヘルナンデスの場合は、松坂のような複雑な事態はまったくない。ストライクが増えれば自然と三振が増え、相手打線は沈黙する。ただそれだけ。シンプルな話だ。
好不調の波がほとんどなく、悪いときでも勝てる。
このことが、今年のア・リーグ最多勝につながった。あきらかにこれは「ロブ・ジョンソン効果」である。



ちょっと抽象的になってしまった。具体例を一つだけ示しておこう。
四球数がちょうど3になるストライク率は、縦軸の3の部分を横に見ていけばいいのだが、ヘルナンデスがほぼ60%くらいなのに対し、松坂は62%から63%くらいになる。
つまり、松坂はストライク率がほんのちょっと悪くなるだけで、四球が増え、ピッチングが乱れてくる。
一方、ヘルナンデスは、松坂より低いストライク率のゲームでも、四球を出さない。それだけ、ヘルナンデスのほうが粘れて、ドッシリ構えたピッチングができているはず、ということになる。これが「ロブ・ジョンソン効果」だ。



今年のヘルナンデスは6月のア・リーグ月間最優秀投手初受賞にはじまり、オールスター初選出、ア・リーグ最多勝投手が決定、これに、まだ確定してはいないが、9月の最優秀投手とサイ・ヤング賞が加われば、もう何も言うことはない素晴らしいシーズンになる。
Players of the Month | MLB.com: News

こうした安定感のあるシーズンになった理由は、この近似曲線が示すとおり、調子の良いときも悪いときも大きな波を起こさず、淡々とシーズンを送ってきたことが最も寄与していると思う。

damejima at 04:08

October 06, 2009

ヘルナンデスのストライク率と四球数の関係クリックすると拡大します
���2009 damejima


これは、今シーズンの8月以降のヘルナンデスの「ストライク率」と「四球数」をグラフ化したもの。データ数は13。
点は、ゲームで実際に記録された数値で、X軸、つまり横軸がストライク率、Y軸、つまり縦軸は四球数。

13の点々の羅列の中に、「右下がりの直線」があるが、これは「近似曲線」である。
たくさんの点々、つまり個々のデータのもっている「法則性」を抽象化してまとめ、データ全体の傾向を見るためのもので、この場合は「右下がり」というのが、「ヘルナンデスのストライク率と四球数」というデータのもつ「傾向」だ、ということを示している。

近似曲線をつくるのは、まったく難しくない。
エクセルのグラフ機能に、近似曲線を加える機能があらかじめ備わっているので、エクセルに面倒なデータ入力さえできてしまえば、あとは散布データのグラフにいつでも近似曲線を追加できる。操作も簡単で、誰でもできる。
参考Excel:近似曲線を描く
近似曲線にはいくつか種類があり、ここで挙げたような直線だけでなく、対数や曲線でも表現できる。
だが「ヘルナンデスのストライク率と四球数」の場合、曲線にしてみたが近似曲線にはたいして変化がないので、いっそ面倒な二次式ではなく、1次式の直線でということで、シンプルに直線で表現しておいた。

この便利な近似曲線の機能によれば、ヘルナンデスのゲームでの四球数を求める数式はこうなった。

(四球数) = -0.2332 ×(ストライク率) + 17.024
calculating formula made by damejima
���2009 damejima


ヘルナンデスのストライク率と四球数

8月1日  104球58ストライク 55.8% 四球4
8月7日  113球70ストライク 61.9% 四球6
8月12日 105球67ストライク 63.8% 四球4
8月18日 106球69ストライク 65.1% 四球1
8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球0
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
9月2日  114球67ストライク 58.9% 四球3
9月8日  113球69ストライク 61.1% 四球4
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
9月18日 104球65ストライク 62.5% 四球1
9月24日 108球77ストライク 71.3% 四球2 11三振
9月29日 120球69ストライク 57.5% 四球4
10月4日 107球72ストライク 67.3% 四球1



無限にストライク率を上げても意味がない
〜「3球に2球ストライクを投げる」セオリーの意味


メジャーでは、「投球全体の3分の2をストライク、3分の1をボール」として配球する、という話がある。つまりストライク率でいうと、ちょうどいいのが66.7%程度だ、とかいうセオリーだ。(注:2つストライクを投げたら1球はずせ、などというくだらない話ではない)

この話を、ヘルナンデスの近似曲線を見てたしかめてみる。

y = -0.2332x + 17.024という直線をみてもらうとわかるのだが、四球数が1を切るのが、ちょうどストライク率68%あたりになっている。

数式から計算で求めると、こうなる。
1.0000= -0.2332x + 17.024
x = 68.71355

ストライク率68.7%が分かれ目、つまり、見かたをかえれば、ストライク率(X軸、つまり、グラフの横軸)をセオリーの66.7からドンドン高めていったところで、ある数値から先は四球数は1以下になる、つまり、ほとんど変わらなくなる、という意味になる。
具体的に言えば、理論的にはストライク率が69%とか70%くらいでも、十分に四球がゼロになる可能性がある、ということだ。
それどころか、もし実際の投球場面でストライク率が75%とかになれば、バッターのストライクゾーンにやたらとストライクばかり来ることになるわけだから、かえってバッター側からすれば狙い球を絞りやすくなって、打ち込まれるかもしれない。

だから、ヘルナンデスの場合、(もちろん、彼に限らず、投手全般に言えるわけだが)、ストライク率を異常に高めたとしても、あるパーセンテージから先は、四球を減らす効果はないのはもちろん、それどころか、かえって打たれやすくもなる可能性さえ出てくる、という話になる。

それにしても、ヘルナンデス限定のこのグラフを作ってみての結果だが、だいたいセオリーどおりになった。あらためて、「投球の3分の2をストライク」というセオリーはほんとうによくできている、と感心した。



ヘルナンデスの四球が増えだすストライク率の臨界値を
発見してみる


では、ヘルナンデスの場合、四球が増えだすのは、ストライク率でいうと、どのあたりだろう。近似曲線でみるかぎり、四球数が2を越えるのは、だいたいストライク率が65%あたり、四球数が3になるはストライク率60%あたりのようだ。

四球数が2になるのは、ストライク率65%あたり
2.0000= -0.2332x + 17.024
x = 64.425385

四球数が3になるのは、ストライク率60%あたり
3.0000= -0.2332x + 17.024
x = 60.137221

四球数4を数えるのは、ストライク率56%あたり
4.0000= -0.2332x + 17.024
x = 55.840956


実際のゲームでも、ヘルナンデスのストライク率が60%を切った4ゲームのうち3ゲームで、四球を4つずつ出しているので、この「ストライク率が60%を切ると、四球数は理論値の上では、3を越えてくる」という話は実態に即している。
だから、ことヘルナンデスの場合、ストライク率が60%を切ってきたときには、四球を3つ、あるいは4つは覚悟しないといけなくなる、という計算になる。

ヘルナンデスは、1試合に投げるイニング数は最低でも6とか7で、毎試合長いイニングを投げてくれる投手だが、その彼でも1試合で4四球を出してしまうことになると、ゲーム展開としては毎回走者が溜まり、やっかいな展開になる。

だからヘルナンデスの適正なストライク率場合は、できれば60%の後半、64%から68%の間、高くても70%までくらいまでという感じになる。


「ストライク率がよくないのに、四球をほとんど出していない」という意味での、ヘルナンデス登板ゲーム・ベスト3

以上の話から、ゲームでの四球数が、理論値である近似曲線を大きく下回ったゲームのベスト3を選びだしてみた。
これらのゲームはどれも、けして四球がゼロとか、1にできるようなストライク率ではなかったわけだが、実際のゲームでは四球をほとんど出していない。失点がけしてゼロだったわけではないが、四球数という面では好ゲームだった、ということになる。


8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球0
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
2009年8月28日、ヘルナンデス7回3失点QS達成で、13勝目。ア・リーグの「QS数」「QSパーセンテージ」、2つのランキング」のトップに立つ。
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
2009年9月13日、ダブルヘッダー第二試合、祝・イチロー9年連続200安打達成! ヘルナンデスとロブ・ジョンソンのバッテリー快勝! 7回を4安打1四球でテキサスを零封して15勝目。

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damejima at 15:52

October 02, 2009

書きたいことを書きつらねているうちに、いつのまにかシリーズ化してしまっている「メジャーと日本の配球論の差異から考える城島問題」 『damejimaノート』だが、ロブ・ジョンソンというキャッチャーがどういうキャッチャーなのか、城島と比べてみるのにわかりやすい例がないか、探してみた。

このシリーズの(2)では、イヴァン・ロドリゲスと城島を比べてみたわけだが、せっかくだから同じシアトルのロブ・ジョンソンと城島を比べてみようというわけだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー


比較条件は「投手モロー、四球直後の打者、テキサス」
できるだけ似たシチュエーションで、しかも、両者の特徴を際立たせる例となると、探しだすのに苦労した。両方のキャッチャーがマスクをかぶっている投手となると、シアトルではヘルナンデスやフィスターではなく、モローやスネルくらいしかいないからである。
結局、「モローが四球を出して、ランナー1塁になった直後の打者への配球」「同じテキサス・レンジャーズ相手」という同じ条件で、キャッチャーだけが違う2つの打席を選びだしてみた。
ランナーがいるシチュエーションを選んだのは、そういう場面ほど、両者の配球に対する考え方の違いが際立つ、と考えたからだ。

また「城島が四球を出しやすいキャッチャー」であることはデータからもよく知られていて、このブログでも何度も指摘してきた。だが、さらにいけないのは城島が「ランナーがいるシチュエーションで四球を出しやすい、つまり、ランナーを貯めて、大量失点につながる非常に痛い四球を出しやすいキャッチャー」でもあることだ。
ここでは、どうして城島がそういう、出してはならない四球を出してランナーを貯めて傷口を広げやすいのかという点について、あまり語られてこなかった「ランナーのいる場面での、城島の配球プロセスのもたつき」についても、多少説明になればとも思った。

1 ロブ・ジョンソン

2009年9月12日 アウェイ・テキサス戦 4回裏
先頭打者の5番ネルソン・クルーズを四球で歩かせた後の、
無死1塁 6番マーフィーの打席
結果:1塁ゴロ ダブルプレー
Seattle vs. Texas - September 12, 2009 | MLB.com: Gameday

2009年9月12日 投手モロー テキサス戦 マーフィー ダブルプレー

配球
アウトコース高め チェンジアップ ボール
アウトコース高め チェンジアップ ボール
インコース低め  ストレート   ストライク
真ん中低め    チェンジアップ(1塁ゴロ ダブルプレー)

特徴
ひと目みれば、(2)の記事(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー)で書いたパッジこと、イヴァン・ロドリゲスの「対角」パターン(2009年9月27日レンジャーズ対エンゼルス戦)と似ていることがわかるだろう。
3球目と4球目のコースは甘く見えるわけだが、結局のところ、1,2球目の高めにはずれるチェンジアップが効いた。というか、むしろ、1、2球目の「はずれるチェンジアップ」が効いているからこそ、こういう場合3球目では、神経質な城島が投手に細かすぎるコントロールを要求して無駄なプレッシャーを与えるような、あまり細部のナーバスさは、実は、まったく必要ない。
これはなかなか重要な点で、かつてアーズマがヘルナンデスについて指摘した「サンデー・フェリックス」という話(カテゴリー:「サンデー・フェリックス」byアーズマ)に通じるものがあるし、アダム・ムーアの例でも同じような、多少コントロールが甘くても打ち取れる実例がある。(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.: メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(6)実証:アダム・ムーアの場合


ロブ・ジョンソンのこの配球の特徴は、メジャーのキャッチャーに共通した基本的なものだ。

・城島のようなインハイとアウトローではなく、
 「インローとアウトハイとの対角線」を使っている
・ 外に変化球、内にストレート(参照:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(1)「外角低め」「ストレート」という迷信
・ 入りの球は変化球から入り、ストレートでカウントをとる
・ 決め球は変化球で、ゴロを打たせることに成功

ほかにも、結果的に決め球になった4球目のチェンジアップのコースが城島の固執する「外角低め一杯」ではなくて、「真ん中低め」というのも、いかにもメジャーらしいし、4球目と「少ない球数で勝負がついた」ことも、球数の節約を重視し、早いカウントで勝負することを尊ぶメジャーらしい。
素晴らしいダブルプレーだ。

日本での配球での考え方が、「配球の基本はアウトコースのストレート」という考え方に固執しがちだ、という話は、以下のリンクを参照ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』 序論:2009年9月30日、大投手ハラデイの「配球芸術」

日本では「決め球をストレートと想定して全体を組み立てがちだ」という話は、以下のリンクの話題を参照ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(3)「低め」とかいう迷信

今までいろいろ説明してきたことから、この打席に関していえば、ロブ・ジョンソンは非常にメジャーっぽい攻めをするキャッチャーであること、城島の配球パターンとはまったく異なるリードをしたこと、がわかってもらえると思う。


2 城島

2009年7月10日 ホーム・テキサス戦 3回表
1死後、9番ビスケールを四球で歩かせた後の、
1死1塁 1番イアン・キンズラーの打席
結果:このキンズラーの四球で傷口を広げて、1死1、2塁。直後に、2番マイケル・ヤングに3ランホームランという致命傷を負うことになる。
Texas vs. Seattle - July 10, 2009 | MLB.com: Gameday

2009年7月10日 投手モロー テキサス戦 キンズラー四球

配球
アウトコース低め  スライダー   ボール
アウトコース低め  スライダー   ボール
インコース低め   チェンジアップ ボール
インコース高め   ストレート   ストライク
アウトコース真ん中 ストレート   ボール(四球)

特徴
インハイのストレートと、アウトローのスライダー、お約束の組み合わせである。7月10日のキンズラーの四球といい、9月23日のタンパベイ戦でアップトンに2点タイムリーを打たれたのケースといい、同じパターンで何度打たれれば気がすむのだろう。
2009年9月24日 8回アップトン 2点タイムリー2009年9月24日
8回アップトン
2点タイムリー

初球と3球目が
インハイのストレート
2、4、5球目が
アウトローのスライダー


以下の特徴を、ロブ・ジョンソンのケースとの間で比較してみてもらいたい。違いがよくわかるはずだ。
・ イヴァン・ロドリゲスやロブ・ジョンソンのケースと違い、
  「インハイとアウトローとの対角線」に固執しがち
・ ピンチになった後の打者に対する入りの2球は
  「アウトコース低め」「スライダー」に固執しがち
  決め球もアウトコース低めに固執する傾向
・ カウントを悪くした後はストレートに頼り、
  必死にきわどいコースを神経質に突こうとするが、
  結局四球を出して、傷口を広げる
・ 3球目ごとにリズムを変えようとする、いわゆる「3拍子配球」

初球2球目を同じコース同じ球種で行き、3球目にリズムを変えて、インコースを突いた。そして3球目4球目と、内に2球投げておいて、3つ目(全体として見れば5球目)に、こんどはアウトコース。
つまり2度、同じパターンでリズム変更をやっているわけだ。

こういう「3球目ごとにリズムを変えようとする」というリード癖については、楽天の監督さんが「3拍子配球」とか命名して指摘している話と同じ話ではあるが、ここは別に野村氏の受け売りではない。野村氏の発言を知りたいなら、いちおうリンクだけ挙げておくので、そっちを読むといい。
“読まれた”3拍子配球…ノムさん理論的中(野球) ― スポニチ Sponichi Annex ニュース

実際、コネ捕手城島の「3拍子配球」(ゲーム後半になると「4拍子」になることが多いが、たいしてかわりばえしない)が最も典型的に多く見られるのは、こういう「対角パターン」においてではなく、ストレートを中心に、変化球をオカズに混ぜて配球する場合に多い。
つまり初球から言えば、ストレート、ストレート、チェンジアップ、というパターンだ。(ゲーム後半になると、ストレートの数を増やして、3球ストレートの後で変化球というパターンにしたりもする。また、混ぜる変化球はチェンジアップだけでなく、スライダー、またはカーブに変更することもある)
ともかくこのパターンでは、ストレートと、1種類の変化球の、合計2球種だけを使って打者を攻めることに特徴がある。いわば「ストレートが白米のごはんで、おかずに変化球」という、「幕の内弁当」パターンである。

わかってしまえば、単純すぎるパターンだが、それでも例えばトロントのバーノン・ウェルズなどは、何度も何度も、この「3拍子幕の内弁当」にひっかかっている。情けないバッターだ。
このブログが、ホワイトソックスやトロントのことを、「LAAなどと違って、相手バッテリーの配球パターンに対応する速度が遅すぎる」と常に批判的に言うのは、そのへんに理由がある。

2009年9月16日、今日のコネ捕手、リードは「ストレートは基本インコース、変化球はアウトコース」 たった、それだけ(笑)被安打9、8回にはホームラン被弾。ホワイトソックス打線の知恵の無さに助けられただけのゲーム。

2009年9月27日、コネ捕手城島、先発マスク3連敗。「1球ごとに外、内。左右に投げ分ける」ただそれだけの素晴らしく寒いリードで、トロント戦8回裏、期待どおりの逆転負け(笑)ローランド・スミス、自責点5。

2009年9月25日 トロント戦 2回裏 オーバーベイ セカンドゴロ 3拍子パターンの典型例 1
おかずにカーブを混ぜる「幕の内弁当」パターン


2009年9月25日 トロント戦
2回裏 オーバーベイ
セカンドゴロ
ストレート、ストレートで、3球目にカーブ。単純で馬鹿っぽいパターンだが、このゲーム序盤では効いていた。


2009年9月25日 7回 バティスタ 2点タイムリー3拍子パターンの典型例 2
おかずにカーブを混ぜる「幕の内弁当」パターン

2009年9月25日 トロント戦
7回裏 バティスタ
2点タイムリー
ゲーム終盤になると、ストレート、ストレート、カーブという、単純な3拍子パターンが効かなくなり、このザマ。最後は逆転負け。


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damejima at 02:48

September 30, 2009

サイ・ヤング賞獲得のためには、今は残りゲームをとにもかくにも勝利する必要があるヘルナンデスだったが、なんとか18勝目をおさめることができた。めでたい。

今日の登板の動画
Baseball Video Highlights & Clips | OAK@SEA: Hernandez hurls 7 2/3 strong frames - Video | Mariners.com: Multimedia


恒例のストライク率だが、前の登板からうってかわって60%を切って、4四球を与えた。ストライク率57.5%は夏以降の登板としては2番目に悪い。
たしかに、この数字が示すようにヘルナンデスはけして調子がよくはなかったが、大量失点にはつながらないのが、このバッテリーのいつもの持ち味。けして球威だけに頼っているわけではない。
投手の調子の良くないときも悪いなりにゲームを作れることが、ヘルナンデスがロブ・ジョンソンとバッテリーを組む理由のひとつになっていることだろう。
今日大量失点せずに済んだ理由はもちろん、長打をまったく許していないことが大きい。それと、2、3、4回と2人以上ランナーを出してたイニングでも、ロブ・ジョンソンが慌てず後続打者のアウトカウントを冷静に増やしてタイムリーヒット連発で傷を大きくしなかったことが大きい。(4回の失点はワイルドピッチがらみ。8回の失点も犠牲フライでタイムリーではない)

オークランドの24残塁(プレーヤーLOBの総計)が、今日のバッテリーのピッチングの答え。これで9月のア・リーグ月間最優秀投手が近づいた。

ロブ・ジョンソンは今日のゲームで5連勝。今月6勝2敗だが、ロブ・ジョンソンにヘルナンデスの登板ゲームだけ先発させているチームは何を考えているのか。コネ捕手城島の先発ゲームを真っ先に減らすべきだ。
だが、結局そういうマトモなことをしないチームは、かえってコネ捕手先発ゲームの負けばかりをファンに見せつけて、晒し者にしている。だから、どうせ結局はコネ捕手の醜態を腹を抱えて笑うだけだが。ざまあみろ、というところだ(笑)


2009 ロブ・ジョンソン出場ゲーム (9月29日まで)
あらゆる月で貯金を達成。
いまや貯金の合計は22


4月 8勝5敗 貯金3
5月 8勝5敗 貯金3
6月 8勝4敗 貯金4
7月 11勝5敗 貯金6
8月 8勝6敗 貯金2
9月 6勝2敗 貯金4

シーズン通算 49勝27敗(貯金22)
シーズン勝率 .645
Rob Johnson Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN

ヘルナンデスのストライク率

8月1日  104球58ストライク 55.8% 四球4
8月7日  113球70ストライク 61.9% 四球6
8月12日 105球67ストライク 63.8% 四球4
8月18日 106球69ストライク 65.1% 四球1
8月23日 101球67ストライク 66.3% 四球0
8月28日 104球63ストライク 60.6% 四球1
9月2日  114球67ストライク 58.9% 四球3
9月8日  113球69ストライク 61.1% 四球4
9月13日 109球65ストライク 59.6% 四球1
9月18日 104球65ストライク 62.5% 四球1
9月24日 108球77ストライク 71.3% 四球2 11三振
9月29日 120球69ストライク 57.5% 四球4

Oakland vs. Seattle - September 29, 2009 | MLB.com: Gameday

さて、問題のサイ・ヤング賞だが、とりあえず、今月ヘルナンデスは5勝0敗、防御率1.15だから、月間最優秀投手が獲得できればたいへん大きな後押しになる。
何度も言うようだが、かえすがえすも、9月8日のコネ捕手城島のサヨナラ負けがもったいなさすぎる。チームは疫病神からヘルナンデスから遠ざけておくべき。

ヘルナンデスの全登板
4月6日  6回自責点1  城島 QS
4月11日 5回自責点5  城島
4月17日 6回自責点3  ジョンソン QS
4月23日 7回自責点0  ジョンソン QS 完封リレー
4月28日 8回自責点0  バーク QS 9三振
5月4日  6回自責点6  城島 負け  9三振
5月9日  4回自責点5  城島 負け
5月14日 7回自責点0  ジョンソン QS
5月19日 5回2/3自責点6 城島 負け
5月24日 8回自責点1  ジョンソン QS 10三振
5月30日 6回2/3自責点0  ジョンソン QS
6月5日  7回自責点1    ジョンソン QS
6月10日 7回自責点1    バーク QS
6月16日 9回自責点0    バーク QS
6月21日 7回1/3自責点0 バーク QS 8三振
6月27日 8回自責点0    ジョンソン QS 9三振
7月3日  7回自責点3    ジョンソン QS
7月9日  8回自責点1    ジョンソン QS
7月17日 8回自責点2    ジョンソン QS 8三振
7月22日 7回自責点1    ジョンソン QS 8三振
7月27日 5回2/3自責点7 ジョンソン
8月1日  7回自責点2    ジョンソン QS
8月7日  6回自責点3    ジョンソン QS
8月12日 7回自責点0    ジョンソン QS 10三振
8月18日 7回自責点1    ジョンソン QS 9三振
8月23日 6回自責点3    ジョンソン QS
8月28日 7回自責点3    ジョンソン QS
9月2日  8回自責点0    ジョンソン QS
9月8日  7回自責点1 ジョンソン→城島 QSサヨナラ負け
9月13日 7回自責点0    ジョンソン QS
9月18日 9回自責点1    ジョンソン QS
9月24日 8回自責点3    ジョンソン QS 11三振
9月29日 7回2/3自責点2 ジョンソン QS






damejima at 20:08

June 25, 2009

終わってみれば、7安打3失点。7三振を奪い、2つのダブルプレー。見た目の数字の上では、まぁまぁなゲーム内容だ。

だがファウルし続けながら狙い球を待つパドレスのバッターの粘り強いバッティング、下位から上位につながる独特の打順構成、そしてアンパイアの微妙さ、ゲームをタフにするさまざまな条件のもとで、ロブ・ジョンソンと投手たちが珍しくゲームメイクにたいへん苦しんだ。
本当にタフなゲームだった。ひとつ勝つのも、本当に疲れる。

これで今月は1点差ゲーム7勝2敗2点差以上のゲームがほぼ5割しか勝てないから、シアトルの(城島が復帰するまでの)今の好調さを支えているのは、今日のような「1点差ゲームのきわどい勝利」なのである。

どんな苦しい勝ち方であっても、勝ちは勝ちだ。

1点差ゲームは必死になって拾っていかなければ、打力の乏しいシアトルの明日はない。なにはともあれ、虎の子の貯金を取り戻せて良かった。

だんだん日本同様に現地アメリカの気温も上がってきていている。投手陣の疲労が気になりはじめている。


1点差ゲーム(6月)
6月1日 BAL 1-0 ロブ・ジョンソン 勝
6月2日 BAL 3-2 ロブ・ジョンソン 勝
6月5日 MIN 1-2 ロブ・ジョンソン 負
6月6日 MIN 2-1 キロス 勝
6月17日 @SD 4-3 バーク 勝
6月18日 @SD 3-4 バーク 負
6月19日 ARI 4-3 ロブ・ジョンソン 勝
6月21日 ARI 3-2 バーク 勝
6月24日 SD  4-3 ロブ・ジョンソン 勝

ロブ・ジョンソン 4勝1敗
バーク      2勝1敗
キロス      1勝

San Diego vs. Seattle - June 24, 2009 | MLB.com: Gameday



あまりこんなことを言ってはいけないのだろうが、
ちょっとは言っておかないと、どうも気分が晴れない。


このパドレスとの3連戦になってからというもの、どうもアンパイアの判定が微妙だ。
特に、今日は先発モローが速球派なだけに、低めいっぱいの4シームを、特にランナーのいる切羽詰った場面でボール判定されてしまうと、経験の浅いモローのような投手はすぐに苦しくなって、気持ちが追い込まれてしまう。
これは今日、ロブ・ジョンソンがゲームメイクに苦しんだ原因のひとつだったと思うが、どうも昨日の球審といい、今日の球審といい、低め判定はなんだかとても渋いし、また、ランナーが出るとストライクゾーンが突然狭くなる傾向が初戦からあったように思えてならない。

モロー先発だと、どうしても投げる球種が少ない。まっすぐが組み立ての中心になって、単調になりやすい。そこへもってきて低めのきわどいところをボール判定されると、ボール先行のカウントになって、どうしてもストライクを置きにいきたくなる。

Randy Marsh氏。今日の球審であり、昨日の1塁の塁審である。
昨日は昨日で満塁でのイチローの一塁ラインぎわの当たりをファウル判定されてタイムリーが消えてしまい、今日は今日で、イチローのヒットで帰ってきたランナーをホームでアウト判定。
まぁ偶然だろう。そう思うことにしたい。


こういう話はどうしても、MLB公式サイトや新聞社などのサイトでは文字にしにくい話だろうし、気楽になんでも欠けるブログくらいは言いたい放題に言っておかないと、と思う部分がある。

明日はパドレス戦最終戦だが、LAD、BOS、NYYと強豪続きの遠征前に、気持ちのいいゲームを期待したい。
全力を尽くしたなら、勝っても負けても、文句は言わない。
明日のゲームでは公正な判定が続くことを祈りたい。


ちなみにパドレスの先頭バッターのグウィンという打者のことはあまり知らなかったのだが、打席での粘り強さには、ちょっと辟易するくらいの凄さがあった。素晴らしいリードオフマンである。
考えてみれば他チームから見たイチローは、グウィン以上にいやらしい、打ち取りにくいバッターなわけだが、なにせ毎日のようにイチローを見ているせいか、目がイチローには慣れてしまって、それが当たり前だと思いがちになっている。ファンとして反省せねばならない。






damejima at 15:00

June 23, 2009

(1)では、バークを飛び越す形で2Aからメジャーに上がったキロス起用を起点に、キロスと息があわないというバルガスの主張、キロスの起用スタンスについての監督ワカマツの思惑、バークの頑張りとキロスのDFA、バルガスのロブ・ジョンソンへの期待など、6月20日のバルガス登板には複雑な要素がからみあっていたことを書いた。


6月20日のアリゾナ戦で勝ったゲームの後で、ロブ・ジョンソンがバルガスのチェンジアップについて言及しているのだが、これにはいろいろと伏線がある。


6月14日のコロラド戦大敗後、監督ワカマツは「バルガスのベストピッチはチェンジアップだと思うが、(今日のコロラド戦では)外角低めのカーブとシンカーで何度も痛い目にあっていた。彼本来のゲームプランからはずれていた」と厳しい評価をした。
要はワカマツはバルガスに、チェンジアップを混ぜバルガス本来の配球パターンに戻ることを求める意味での「ゲームプラン改善」を求めた。

バルガス側も、チェンジアップがピッチングの上で重要な得意球であることを認めはしたが、一方では
自分本来のゲームプランとは違う流れのサインを出す捕手キロスの要求どおりに投げたことを主張し、「クビを振らなかったのを深く後悔した」という婉曲な言い方で、暗に、というより、事実上はハッキリと、バルガスはキロスとバッテリーを組むのを嫌がった
バルガスにとってのチェンジアップが、ベダードにとってのカーブ同様に、ピッチングの組み立てに重要だという点で、ワカマツとバルガスの間に意見の相違点はない。
だが、バルガスは自分のゲームプランを理解せずにゲームに出てくるキロスを嫌いつつ、自分がワカマツの望む5月29日のLAA戦のような、自分らしいピッチングをするには、ロブ・ジョンソンのようなクレバーなキャッチャーが必要だと、主張したわけだ。
Rainy, fateful fifth costly for Mariners | Mariners.com: News
2009年6月14日、新加入投手バルガスは、「城島コピー捕手」キロスが出したサイン通り投げ、打たれまくったことを心から後悔した。(2)

この城島そっくりの単調なリードをする城島コピー捕手キロスについての問題は、さまざまな経緯を経て、バークがメジャーに残り、キロスがDFAされることで決着をみた。
2009年6月16日、バークはヘルナンデス完封ゲームでついに「プチ城島問題」を抱えるキロスに実力で引導を渡した。(「キロス問題」まとめつき)



さて、そんな背景にそんな複雑な絡みのあった土曜のアリゾナ戦のバルガスだったが、ひさびさにロブ・ジョンソンとバッテリーを組んで無事3勝目をあげた。
ワカマツが絶賛したこのゲーム後のインタビューでバルガスは、ロブ・ジョンソンとバッテリーを組んでゲームプランがとてもうまくいったとたいへんに喜んだ。またロブ・ジョンソンの側も、バルガスのことを以下のように語って褒めた。

Johnson gave high marks to Vargas' sinker and changeup."He made his changeup work and when you can do that," Johnson said, "your fastball is going to be more effective."
ジョンソンはバルガスのシンカーとチェンジアップを高く評価した。「彼はチェンジアップを有効に使ってた。そうすることで速球も、より効果的になるんだよね」とジョンソンは言う。
Vargas steps up in Mariners' victory | Mariners.com: News


バルガスとロブ・ジョンソンのバッテリーが「チェンジアップ」をどう使ったかについては、以下の数字をみてほしい。

イニングごとに投げたチェンジアップ数
(1〜7回 GameDayで球種の記録漏れが数球あり
 必ずしも正確ではない)
2 1 1 0 2 3 2

1回から3回まで
チェンジアップは1イニングで1球程度の少なさ。ただ、わずか1球ながら「得意球のチェンジアップもあるぞ」と打者にイメージづけることに成功した。
ゲーム全体でもいえるのだが、バルガスが打者をチェンジアップで打ち取ったケースは、全7イニングで1人しかいない。このようにバルガスとロブ・ジョンソンのバッテリーはチェンジアップを決め球にはしていない。
それは例えば、比べるなら、シルバと城島のバッテリーのように、アウトコース低めに、シルバの得意なシンカーを連投し続けてホームランを打たれるような、そんな馬鹿な真似はしていない、ということである。
カウントはほぼ全て「2球目」で使っている。
試合後ロブ・ジョンソンは「アリゾナ打線は(初球を必ず振ってくるアップトンのように)打ちたがりが揃っている」と言っていた。おそらく、早いカウントから打ってくるアリゾナの打者に変化球の存在をイメージづけするためには「早いカウントで変化球をみせておかないと効果がない」という意味で、「2球目にチェンジアップ」という選択をしたと考える。

4回
本当はこのイニングこそ、圧巻だったと思う。
このイニングに投げた球種は、なんと4シームのみ。わずかひとつの球種だけで、速球派というわけでもないバルガスが、アリゾナのクリンアップを3者凡退に打ち取っているのである。
まさにロブ・ジョンソンが「チェンジアップを有効に使えば、速球も、より効果的になる」と試合後に言っている、その通りの演出だ。
バルガスのストレートがそれほど剛速球なわけではないにもかかわらず、結局1球も変化球を使わず、「チェンジアップなど変化球がいつか来そうなイメージだけで」3人を切り取ってしまったのだから、さすがである。

5回から7回
1回から4回に比べ、チェンジアップを多用したのが、この5回から7回。4シームしか投げなかった4回と対照的。
1人の打者にチェンジアップを2球使ったケースが2度あり、そのうちの1度は2球続けている。
ただ、アップトンにだけは、ロブ・ジョンソンが「この打席は、前の2打席と違って、初球を見送ってくると思った」と試合後に語っているように、アップトンの打ちに出るカウントが変わってないのを読み間違え、初球をホームランされた。それ以外は、なにも心配のいらない素晴らしいピッチングをみせた。


要は「あるぞあるぞと思わせておいて、できるかぎりチェンジアップは使わず、イニングを食いながら、ゲームをしめくくった」ということだ。

素晴らしいゲームプランである。



"He got a lot of first-pitch outs," catcher Rob Johnson said. "This team likes to swing. They were putting the bat on the ball, but were hitting 'em right at our guys."Johnson gave high marks to Vargas' sinker and changeup."He made his changeup work and when you can do that," Johnson said, "your fastball is going to be more effective."
「彼は初球でアウトをたくさんとれた」とロブ・ジョンソンは言う。「このチームは打ちたがりだからね。彼らは当てに来たけど、打球は野手の正面をついていた」ジョンソンはバルガスのシンカーとチェンジアップを高く評価した。「彼はチェンジアップを有効に使ってた。そうすることで速球もより効果的になるんだよね」とジョンソンは言う。

The battery had praise for each other.
バッテリーはお互いを褒めあった。

"It's nice having Rob back there tonight," Vargas said. "He's caught the majority of my starts and we just really went over the game plan before and got a pretty good idea of what I could do."
「今夜ロブとバッテリーを組めて楽しかったよ」とバルガス。「彼は僕の先発ゲームの大部分でマスクをかぶってくれてるから、僕らは事前に本当にちょっちょっとゲームプランをおさらいしただけで、僕ができることの範囲でかなりいいゲームプランができちゃうんだ。」

The key was changing speeds and keeping the free-swinging D-backs off balance.
キーポイントは、速度の緩急、それと、振り回してくるアリゾナの打者たちの体勢を崩させることだった。






damejima at 16:10

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