スモーク、アックリー、カープ、シーガー、ウェルズなど

2012年6月7日、「手でタイミングをとるスイング」にフォームを変え、さまざまな球種に対応できるようになってきたマイケル・ソーンダースの進歩に目を細める。
2012年4月13日、左バッターに頼って得点を挙げてこそいるが、打線には決定的な穴があり、右バッターはほぼ全滅、監督の「左右病」には意味がなく、結局勝率につながらないシアトル。
2011年9月4日、シアトルの若手打者の打撃傾向と打席サンプル集 (3)キャスパー・ウェルズ
2011年9月4日、シアトルの若手打者の打撃傾向と打席サンプル集 (2)カイル・シーガー
2011年9月4日、シアトルの若手打者の打撃傾向と打席サンプル集 (1)マイク・カープ
2011年8月31日、得意不得意がわかりきっているシアトルの打者にすらヒットを許すダン・ヘイレンの不用意さ。
2011年8月30日、エンゼルス第2戦でひきつづきシアトル打者の検証。あまりにも予想どおりなので、検証終わり。
2011年8月29日、高橋尚投手の「打たれるべくして打たれた」決勝2ラン。
2011年8月27日、キャスパー・ウェルズがデトロイト時代に頻繁に対戦していたア・リーグ中地区の投手たちが、ウェルズをどう凡退させるのか、観察してみた。
2011年6月28日、サウスカロライナ大学、カレッジ・ワールドシリーズ2連覇。先発Michael Roth、父親の応援に報いる。
2011年6月24日、体調の悪いダニー・ハルツェンを3イニングしか使えなかったヴァージニアが敗れ、CWS決勝カードはフロリダ対サウスカロライナに。ちょっとユニークなピッチング・スタイルのMichael Rothと、彼の父親との絆。
2011年6月17日、「そういえばダスティン・アックリーのメジャーデビューの日はイチローが3安打してフィリーに完勝したんだよな」と、一生言えるわけで。「Carolina Double カロライナ・ダブル」もビューティフル。
2011年5月31日、ジャスティン・スモークの逆転3ランで逆転勝ち!ひゃっほおううううううう!!!!
2011年4月27日、5打点スモークの2試合連続ホームランの凄い打球。ベダード、無四球で2009年6月7日以来の勝利!
2011年4月25日、「2月のサウスカロライナ、父と息子のキャッチボール」。February in South Carolina, a father and his son played catch.
2011年4月19日、ジャスティン・スモーク選手のご尊父のご逝去を悼み心からお悔やみ申しあげます。My Thoughts and prayers are with Justin and his family.

June 08, 2012

マイケル・ソーンダースのバッティングが今シーズン非常に良化していることに、誰もが驚いている。

彼の最大の弱点が、カウントを追い込まれてからのインコース低めの変化球であることは、誰もがわかりすぎるほどわかっていたことだが(いまのジャスティン・スモークにも同じ欠点がある)、今年はなんと、そのインローの変化球をカットできるようにすらなってきている
また、昔から長打できるのはインコースの高めのストレート系だけであり、MLBの左バッターが誰でも苦労するアウトコースの2シームを長打できるほどのパワーをバットに伝達する技術などなかったわけだが、今年は外の球でもホームランできている。
かつてのソーンダースの欠点は、2009年のメジャーデビュー以来、これまで何シーズンも進歩が見られなかっただけに、たいていのファンは彼のキャリアも今年で終わりかと諦めかけていたわけだが、変われば変わるものだ。


デビュー当時と今とで、彼のバッティングで最も変わった点は、なんといってもタイミングのとりかただ。

昔のソーンダースのバッティングフォームは、ピッチャーが動作を開始するタイミングや、投げる球種とまったく無関係に、自分のタイミングでバットを引き、来る球をスイングする、たったそれだけの「ワンタイミングのスイング」でしかなかった。(これだとバットを引いて待っている間に、せっかくバットにためこんだ加速度は、まるっきり失われてしまう)
だから、結局のところ昔のソーンダースが用意できていたのは、「ストレート系に合わせた、たった1種類のタイミングだけ」だったわけで、これでは投手に少しでもタイミングをズレされる、つまり、チェンジアップや高速シンカーような変化球を投げられると、もう手も足も出なかった。


それにくらべて今シーズンのソーンダースのスイングは、下の動画の比較でわかるように、バットを持った手を細かく動かしながらピッチャーの投球動作の開始を待ち、動作開始にピタリと照準をあわせてバットを引き、スイングを始動できるようになっている。
この「手を細かく動かしつつ、スイング開始タイミングを、球種や投手のクセにアジャストする工夫」を導入したおかげで、ストレート系であれ、変化球であれ、スイングするタイミングや始動のきっかけの異なるさまざまな球種に細かく対応することが可能になってきたわけだ。


彼がメジャーデビューしたのは、2009年7月25日のクリーブランド戦だが、当時のソーンダースと今のソーンダースの打撃フォームを動画で比べてもらうとよくわかるはず。

2009年
8月5日 投手 ケイル・デイビス(KC)
Baseball Video Highlights & Clips | SEA@KC: Saunders' first extra-base hit has Seattle up - Video | MLB.com: Multimedia

2012年
6月5日 投手 ギャレット・リチャーズ(LAA)
Baseball Video Highlights & Clips | SEA@LAA: Saunders skies a solo homer to center - Video | MLB.com: Multimedia

マイケル・ソーンダースの動画(MLB公式)
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia


と、まぁ、書くと、
「なーんだ。タイミングかえただけの話かよ」と思われてしまいがちだ(笑)
そうでもない。下の画像を見てもらうとわかる。タイミングの取り方を変えただけで打てるようになるものでもない。

マイケル・ソーンダースの2012年版打撃フォーム

これは今年のソーンダースで、6月5日のLAA戦でホームランを打った打席のソーンダースの「構え」だ。打ったのは、カウント3-1からの96マイルの4シーム。


バットの角度に注目してもらいたい。

このときの投手ギャレット・リチャーズは、常に95マイル以上のストレートが投げられる速球派だが、今シーズンのソーンダースは、こういう速球派との対戦においても、バットをまだ少し寝かせたままにしておき、いつでも打てる態勢になってしまうのを「我慢」できる

この「待ち時間」が、パワーを生む。

もし「ピッチャーの投球動作にもっと早くから合わせていた昔のソーンダース」なら、「ピッチャーの投球動作の早い段階で、すでにバットの角度が立ってしまい、いつでもスイングできる態勢に入っていただろう」と思う。


テニスでは、野球でいう「振り遅れ」を避ける意味で、「できるだけ速くラケットを後方に引いて、構えていなさい」と、テニスでいう「構え遅れ」を避ける指導をすると聞く。
だが、「素材のしなり」を含み、なおかつ「先端が重くて、長い」木製バットを一連の動作で振り回す野球のバッターの場合、バットをあまりにも早く引きすぎて、つまり、必要以上に早いタイミングでしっかり構えきってしまうと、バットのヘッドに蓄積できるはずのパワーがスッと抜けてしまい、力感の無いスイングになってしまう。


マイケル・ソーンダースのスイングは、たとえて言えば、ルアー釣りでルアーを遠くにキャストする動作にちょっと似ている。
ロッドをふりかぶっても、すぐにキャスト(投げる)わけではなく、ルアーの重みや、ロッドのしなりから生まれる遠心力が、ロッド先端にしっかりと「のって」、ロッドが最大にたわむ瞬間を一瞬だけ待って、それから一気にスイングする。
この「待ち時間の長さ」は、そのとき使うルアーの重さや、ロッドのしなり具合などの条件によって、さまざまに変化する。そして重いルアーより、ロッドのしなりを利用して軽いルアーを遠くに飛ばすほうが、遥かに難しい。そして上手いアングラーは細くて「しなる」ロッドを使いこなせる。

基本的なルアー・キャスティング

フライフィッシングのHatch Cast

バットの重さに振り回されるのではなく、バットの「重み」や「たわみ」、遠心力で振りぬこうと思うと、この「待機時間」は必要以上に長すぎては困る。
ルアーのキャストにたとえると、ロッドをあまりにも早く後ろに構えて、あまりにも待ち過ぎると、ロッドから「たわみ」が抜け、真っ直ぐになってしまうから、もうルアーを遠くに投げる遠心力は生まれてこない。


かつてのマイケル・ソーンダースのスイング動作は、ロッドのたわみを利用してキャストできない下手くそなアングラーそのもので、あまりにも律儀に早くからバットを引きすぎていて、力感がなかったが、今のソーンダースは、どこでもルアーを飛ばせる、上手なアングラーだ。

ルアー


damejima at 09:45

April 14, 2012

去年の貧打ぶりを知っていれば、4月12日時点で、ア・リーグで最もヒット数の多いチームがシアトルである、と言われても、誰もピンとはこないだろう。(以下、数値は全て4月12日時点)
だが実際、ヒット数に関してだけ言えば、今シーズン圧倒的な戦力を擁しているデトロイト、テキサスより、シアトルののほうが多いのだから、事実は小説よりも奇なりだ(笑)
かといって、シアトルのチーム打率が高いわけでもないのだから、世界の7不思議といってもいい(笑)
(というか、単に特定の左バッターだけがヒットを打っているだけのことだ。ヒット数の多い順にいえば、イチロー、アックリー、左打席のフィギンズ、シーガー、モンテーロ)

SEA ヒット数 71 チーム打率.252
DET 63 .304
TEX 58 .257
LAA 56 .272
NYY 54 .249
2012 American League PH/HR/Situ Hitting - Baseball-Reference.com


だが、これをwOBAで見てみると、話は全然違ってくる。
ベスト5からシアトルが消え、かわりにボルチモアとタンパベイ、要するに、東地区のチームの名前が上がってくる。この理由はもちろん、シアトルのヒット数に占める長打の割合が低いから。
他方デトロイトは、何度も書いているように、もともとチーム打率の高いチームで、しかも今年から長打力向上のためにプリンス・フィルダーを獲り、他の打者も好調。今年のデトロイトは、ヒット数も長打力も東地区のチームを圧倒しており、ア・リーグ断トツの打撃力を誇るチームといえば、デトロイトだ。

DET .360
NYY .334
BAL .333
TEX .330
TBR .329
American League Team Stats » 2012 » Batters » Dashboard | FanGraphs Baseball


こういうことを書くと、すぐに「やっぱり野球は長打だよな」なんて馬鹿なことを言いたがる人間がいるものだ(笑)。
まぁ、論より証拠、ア・リーグ各チームの得点数を見てもらおう。長打をバカスカ打って得点しまくっている「はず」の東地区のチームの名前が、再び消え失せる。東地区の野球が、いかに「塁打数がムダに多いが、実は得点に結びつかない、大味な野球」になっているかが、よくわかる。

DET 40
TEX 31
SEA 31
LAA 30
NYY 29


あの極限的貧打だったシアトルの得点数が、今の時点だけならア・リーグトップクラスというのにも驚かされるが、もっと驚かされるのは、その得点の多さがチーム勝率にほとんど反映されない点だ(笑) (まぁ、まだホームでゲームしてないという点は差し引いてもいいが)
野球というものは、常識的なチーム運営をやっているだけなら、投手力と打撃力が両立することはない。予算というものは無限ではないのであって、よほど一方的に勝つトレードでもできない限り、オフェンスに注力すればディフェンスが低下する、またはその逆の現象が起きるだけのこと。
シアトルが先発投手を犠牲にしてバッティングの充実を図るような偏った補強ばかりしていれば、あの素晴らしかった投手力が急降下して打撃にチームカラーがシフトするくらいのことは想定内。しかも、その内容は効率的なものではない。


今シーズンのア・リーグで、そのバッターが打席に入ったときにいたランナーの人数の合計(Baserunners, BR)、ランナーが得点した点数(Baserunners who Scored, BRS)、ランナーの人数に対する得点の割合(BRS%)を見てみる。(ランナーといっても、ここでは「得点圏走者」という意味ではないし、BRS=RBIとは限らない。それにしても、「ランナーを多く背負う打順」というのが、チームにもよるが、実は4番より、3番や5番6番だったりするデータなのが面白い)

打席でランナーの多いバッター ベスト20
Nick Swisher     31人 4点 13%
Derek Jeter      24 2 8%
Justin Smoak   22 1 5%
Brennan Boesch   21 5 24%
Ben Zobrist      21 3 14%
イチロー        21 3 14%
Torii Hunter      21 3 14%
Jose Bautista     21 1 5%
Robinson Cano    21 0 0%
Michael Young    20 6 30%
Adrian Gonzalez   20 5 25%
Mark Teixeira     20 1 5%
Jeff Keppinger    20 0 0%
Carlos Pena      19 6 32%
Edwin Encarnacion 19 5 26%
Nelson Cruz      19 4 21%
Kurt Suzuki       19 3 16%
Matthew Joyce    19 3 16%
Vernon Wells      19 2 11%
Michael Saunders 19 1 5%

打席でランナーがいるシチュエーションの多いバッターのランキングには、ヤンキースはじめ、東地区のバッターの名前がやたらゾロゾロ挙がってくるわけだが、彼らの「ランナーをホームに帰す率」が総じて低い。いくら長打があるとはいえ、彼らの得点効率(ひいては、彼らの高額なサラリー対する得点効率)は、けして良くはないことがわかる。もし彼らがホームランを打てなければ、いくら長打が打てても無駄が多いバッターが多いだけに、チームの得点力は急激に下降線になる。

またシアトルは、たとえ長打は少ないにしても、ヒット数は多いのだから、得点につながる野球ができているか、というと、そんなことはない。いくらランナーを数多く出そうと、例えば4番スモークにランナーを帰すバッティングができないのだから、得点には天井が決まってしまう。
(というか、今年のローテ投手の防御率悪化は目に見えているのだから、投手を犠牲にして獲得した打者たちがチームの得点数を大きく伸ばす日でも来ない限り、得失点差は永遠に改善されず、得失点差に影響される勝率は改善されない
シアトルで、ヒット数が多い割に得点につながらないのには、ちゃんと理由があって、それはよくいわれるような「長打が無いから、得点できない」わけではない。スモークを4番に使わなければならない理由は、今のところ、どこにもない

ランナーの多さが得点につながらないバッター ベスト5
Robinson Cano (NYY) 21人 0点 0%
Jeff Keppinger (TBR 6番打者) 20 0 0%
Justin Smoak (SEA) 22 1 5%
Jose Bautista (TOR) 21 1 5%
Mark Teixeira (NYY) 20 1 5%
Michael Saunders (SEA) 19 1 5%

逆に、ランナーをムダにしないバッターのランキングをみると、東地区のバッターの名前が消え、デトロイトのバッターが浮上する。これが今年のデトロイトの強さ。
3番ミゲル・カブレラは、ランナーを背負って打席に立っている打者ベスト20に入っていないが、それでも44%のランナーをホームに帰してしまうというのだから、驚異的。誰だって、そんなバッターと勝負したくはない。

ミゲル・カブレラの打席にランナーが思ったほど多くない理由は、2番バッター、ブレナン・ボーシュの打点の多さを見れば、なんとなく理由が想像できる。
デトロイトと対戦する投手にしてみれば、3番ミゲル・カブレラと勝負するくらいなら、2番ボーシュとの勝負を選ぶわけだが、実は打率こそ低いものの勝負には強いボーシュにタイムリーを打たれて涙目、なんていうケースが増えつつある。(3番に座ったイチローの前の、2番バッターに打点が増えつつあるのにも、似たような理由がある。かつては1番イチローの前の9番ベタンコートにもそういう打点恩恵があった)
デトロイトのリードオフマンといえば、かつてはカーティス・グランダーソンだったが、グランダーソンのサラリーが高騰する前にヤンキースにトレードして、かわりに獲得した1番・センターオースティン・ジャクソンが絶好調で、グランダーソンの穴を完全に埋めて余りある活躍をみせつつあるのも大きい。
グランダーソンに払うはずだった高いサラリーを考えると、グランダーソンが毎年ホームランを40本打ち続けるとはとても思えない以上、オースティン・ジャクソンとダグ・フィスターの2人は、「給料は安く、戦力は高い選手」を獲得できた、理想的な勝ちトレードだ。こういう選手獲得によってペイロールを節約しながら戦力補強できるからこそ、デトロイトはプリンス・フィルダーに食指を伸ばせた。

ランナーが得点につながるバッター ベスト5
(Miguel Cabrera 16人 7点 44%)
Michael Young 20 6 30%
Carlos Pena 19 6 32%
Edwin Encarnacion 19 5 26%
Adrian Gonzalez 20 5 25%
Brennan Boesch 21 5 24%


ちなみに、Ptn%(Percentage of PA with the platoon advantage)というデータで見ると、シアトルが72%で、ア・リーグトップ。(2位はOAK71%、3位CLE65%。最下位はTEXの45%。デトロイトは53%。強力打線のチームは打線をそれほどいじっていない)
この数値は、相手ピッチャーが左なら右打者を並べ、右なら左バッターを多くぶつけるという風に、「相手投手の左右に対して、打者の左右が逆になっているパーセンテージ」のこと。
シアトルは、上位打線にフィギンズ、スモークと、2人のスイッチヒッターがいるわけだから、もともと相手投手の左右にあわせやすい打線ではあるが、この2人だけでPtn%が「72%」もの高さになるわけがないわけで、あくまで高いPtn%の元凶は、監督エリック・ウェッジが相手投手に合わせて打線をいじりたおす「深刻な左右病」にある。

だが、以下の数値を見なくとも、シアトルのゲームを常に見ていればわかるように、ヒットにしても、ホームランや長打にしても、シアトル打線のヒットの大半は「投手の左右を気にしない左バッターの活躍」によるものであり、ウェッジが相手投手によって打線をコロコロ入れ替える戦略が、ヒット数の多さにつながっているわけではない。
事実、ブレンダン・ライアン、ミゲル・オリーボ、キャスパー・ウェルズなどと、休養しているグティエレスも含めて、シアトルの右バッターの大半はまるで機能を果たしていない。また、スイッチヒッター、スモークの右打席も機能していないし、ヘスス・モンテーロのスイングは明らかにスラッガーのスイングではない。
エリック・ウェッジの「左右病」がシアトル打線の好調さにつながっているわけではないのだから、本来なら、好調な打者をどんどん上位に移して、不調のスモークをさっさと4番からはずすべきだ。
だが、シアトルというチームは、いつもそうだが、「どうせそのうち、そうせざるを得なくなること」を、すぐには実行せず、しばらく様子を見て症状を重くして失敗する。
弱いチームの「弱さ」とは、一瞬のチャンスをモノにできない「引きの弱さ」であり、また、予想できるピンチを回避できない「逃げ足の遅さ」である
長くは続かないチャンスをモノにしないうちに、左バッターの好調期間が終わってしまえば、また元の貧打に戻るのは目に見えている。

vs RHP as RHB 打率.230 ヒット数14
vs RHP as LHB .260 45
vs LHP as RHB .156 5
vs LHP as LHB .438 7
RHP=右投手、LHP=左投手
RHB=右バッター LHB=左バッター
2012 Seattle Mariners Batting Splits - Baseball-Reference.com

damejima at 05:04

September 05, 2011

キャスパー・ウェルズ


典型的ローボールヒッター
マトモな選手なら全員が持っているべき、「腕をたたんでインコースをスイングする技術」そのものがない。よくこんな選手を獲得してくるものだ。
当然のことながらインコースが苦手。メジャーのバッターがシーズン通してプレーできる選手になるには、「ひと目でわかる欠点があること自体が致命的だ。この選手はメジャーのバッターにはなれない。断言できる
ヒッティング・カウントについては、典型的なMLBの早打ちタイプ。2球目、3球目に勝負をかけてくる。0-2、1-2、2-2、フルカウントと、2ストライクをとられたあらゆるカウントでのバッティングで、スタッツがガクンと下がる。
P/PAは4.04なのに、BB/PAが去年より悪化していることからわかるように、基本的には3球目までに勝負が決着する典型的早打ち打者。四球を選ぶタイプではない。

高めが苦手。速球に強いカイル・シーガーと違って、高めの早い球についていけなさそうだ。マイク・カープと違って、チェンジアップは得意。
投手は、インコース、高めが苦手なこと、早いカウントから打ってくること、きわどいコーナーの球でも器用に打てる打者だが同時にボール球でも振ってくる打者でもあることなどを頭に入れて対戦すればいい。

得意球種はチェンジアップ、カットボール、苦手球種はシンカー、スライダー、カーブ。
持ち球の関係で、どうしてもウェルズの得意なカットボールを投げたいのなら、苦手なのが明白なインコースに投げるべきだし、同じように、ウェルズの得意なチェンジアップを投げたいなら、ストライクにせず、ボールにする球として投げることで、安全性が高まる。
ローボールヒッターのウェルズへのフィニッシュとして、苦手な高めにストレートで押して三振でもさせるか、ボールになる外の変化球を空振りか凡退させるか、迷うところだが、無理せず、低めの、それもボールになる変化球を投げて凡打させておけばすむ。
ただ、8月末のホワイトソックス戦のデータから、苦手意識があるのは球種よりも「コース」らしいので、球種はそれほど気にしなくていいかもしれない。

ローボールヒッター
2ストライクをとられると、打てない
インコース、高めが苦手
シンカーがまったく打てない
たとえ得意球種でもインコースに投げられると打てない
追い込まれると、ボール球に手を出すクセ


得意カウント 1-0、0-1、1-1、2-1(特に1-1)
苦手カウント 0-2、1-2、2-2、3-2
得意球種 チェンジアップ、カットボール
苦手球種 スライダー、カーブ、(8/27追記 シンカー
得意コース アウトロー、インロー
苦手コース 高め、インコース
得意チーム BOS,MIN,OAK.TEX
苦手チーム LAA,CLE
Casper Wells Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN

クリーブランド戦でのデータ
第1戦
第1打席 インコース シンカー 死球
第2打席 アウトロー ストレート シングルヒット
第3打席 アウトロー ボール球シンカー ライトフライ
第4打席 アウトコース ハーフハイト ボール球のストレート セカンドゴロ
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 22, 2011 | MLB.com Classic

第2戦
第1打席 インコース高め シンカー サードゴロ
第2打席 ど真ん中 シンカー ファーストゴロ
第3打席 インコース真ん中 ボール球シンカー 空振り三振
第4打席 真ん中高めのストレート 空振り三振
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 23, 2011 | MLB.com Classic

第4戦
第1打席 アウトロー ボール球のカットボール 空振り三振
第2打席 ややインコースより ど真ん中のシンカー ファーストフライ
第3打席 アウトコース ボール球のカットボール セカンドフライ
第4打席 アウトロー スライダー サードフライ
第5打席 インコース カーブ 見逃し三振
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 24, 2011 | MLB.com Classic

対ホワイトソックス ジョン・ダンクス
第2戦
第1打席 外のチェンジアップ 空振り三振
第2打席 インコース低め ボール球のカットボール 空振り三振
第3打席 インコース低め ストライクになるカットボール 空振り三振
Chicago White Sox at Seattle Mariners - August 27, 2011 | MLB.com Classic

クリーブランドの「シンカー」パターン
インコースのカットボールで追い込み、
高めからシンカーを落として空振りさせる

配球の細かい部分は省略させてもらったが、クリーブランドの投手たちは、インコースのカットボールで追い込んでおいてから、シンカーを投げて凡退させるパターンを多用している。持ち球にスプリッターのある投手なら、シンカーのところをスプリッターでも代用できるだろう。
カットボール自体はウェルズの得意球種のはずだが、苦手なインコースに投げられると、とたんにミートできなくなる。ウェルズは球種の得意不得意よりも、よほどインコースに苦手意識があるとみた。
逆にいうと、「苦手なコースのあるバッターとの対戦」においては、球種がたとえそのバッターの得意な球であっても、苦手コースにさえ投げられるなら、なにも怖がる必要はなく、むしろ、凡退させるのに絶好な切り札にできるということ。勉強になる(笑)

ホワイトソックス ジョン・ダンクスの
「カットボール」パターン

高めの球で追い込み
インローのボールになるカットボールで三振

ウェルズを3打席3三振させたホワイトソックスのジョン・ダンクスも、ウェルズの弱点である「高め」「インコース」といった「コースの弱点」を徹底的に突いている。最初に高めを多投して追い込んでおき、最後はインコース低めの完全にボールになるカットボールを振らせるのが、ダンクスのパターン。クリーブランドも使っていた「インコースのカットボール」がここでも使われている。


打席例

2011年8月30日 エンゼルス戦 5回裏
三振
インコースのストレート。彼がインコースが苦手らしいのは、もう、よーくわかっているが、0-2、1-2、2-2、3-2、あらゆる2ストライク後のバッティングが苦手なバッターでもある。
1-2と追い込んだ後は、何も考えず漫然とピッチングしている投手なら、よくありがちな「追い込んだら、アウトコースの低め」とかいう知恵のない、紋切型の配球をしてしまう典型的なシチュエーションなわけだが、きっちりインコースに厳しい配球をしてくるところに、今日のソーシアの「絶対に勝つんだ」という「やる気」を感じた。
2011年8月30日 5回裏 ウェルズ三振


2011年9月9日 カンザスシティ戦 2回裏
三振
アウトコースのシンカーで3球三振。「シンカーがまるっきり打てない」というスカウティング通りで、驚くにはあたらない。
むしろ、見てもらいたいのは2球目アウトローのチェンジアップ。キャスパー・ウェルズの得意な球種とコースであり、ストライクをとろうと思っていたらヒットになっていた球だ。空振りをとれたのは、たまたま低めに外れたため。投手はジェフ・フランシス。シアトル打線に痛打されまくって自責点5で3回もたなかったが、この2球目の不用意さから、ピッチングの幼さがよくわかる。
2011年9月9日 ロイヤルズ戦 2回表 キャスパー・ウェルズ 三振



damejima at 01:52
カイル・シーガー

典型的なストレート系ヒッター
けして、カープのようなローボールヒッターではないにもかかわらず、なぜかカープと並んでシアトルで最もフライアウト率が高い打者でもある。たぶんスイングそのものにフライになる原因があるのだろう。

スライダーへの苦手意識
いかんせん低めが苦手なのが、メジャーのプレーヤーとしてやっていく上で致命的なのは明らか。ハーフハイトの甘い球を仕留めるのは得意。スライダーへの苦手意識は相当なものがありそうだが、その元をたどると「低めの球への苦手意識」に辿り着く。
対戦する投手は、球が浮かないようにコントロールに気をつけつつ、低めの変化球で勝負しておけばいいだけ。このことが、対戦チーム全体に浸透するのに、そう時間はかからないはず。
同地区のライバルとしてこれから数多く対戦しなければならないア・リーグ同地区のエンゼルス、テキサスには、既に低スタッツが既に残されている。同地区だけに、新人といえども既にある程度スカウティングされてしまった、とみなければならない。

得意カウント 初球、1-1、2-0、2-1、3-1、0-2、
苦手カウント 1-2、2-2
得意球種 カットボール、ストレート
苦手球種 スライダー
得意コース インロー、ハーフハイト、
苦手コース アウトロー、真ん中低め
苦手投手 しいて言えばフライボール・ピッチャー
苦手チーム LAA,TEX
Kyle Seager Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN


打席例

2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第1打席
センターフライ
外低めのチェンジアップ。
2011年8月26日 カイル・シーガー 第1打席


2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第2打席
二塁打
真ん中のストレート。ストレートの強いバッターに、ストレート3連投、しかもど真ん中では打たれて当然
2011年8月26日 カイル・シーガー 第2打席


2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第3打席
センターフライ
真ん中低めのカーブ。スカウティングどおり。
2011年8月26日 カイル・シーガー 第3打席


2011年8月26日 ホワイトソックス戦 第4打席
空振り三振
外低めにはずれるチェンジアップ。初球、2球目と、得意なはずのインコース、ハーフハイトの球を連続して見逃しているあたり、やはり、スライダーによほどの苦手意識があるのだろう。早いカウントでは得意なストレート系に絞って待っていることが、よくわかる。
2011年8月26日 カイル・シーガー 第4打席


2011年8月29日 エンゼルス戦 8回裏
三振
アウトコースのスライダー。オリーボにヒットを許し、ソーシアは次のキャスパーを敬遠させて、1死1、2塁にしてまでキャスパーと勝負し、ダブルプレーをとりにきた。つまり、それだけ「打ちとる自信があった」ことになる。
この場面で高橋尚は「ストレート系ヒッター」カイル・シーガーに、ストレートを初球、3球目と投げているのだが、これはちょっと危ない。3球目のストレートは少し浮いていて、タイムリーを打たれても不思議ではなかった。
この打席、最後は、このブログのスカウティングどおり、シーガーが大の苦手にしている「アウトローのスライダー」で三振させているのだが、どうも高橋尚投手は、きちんと相手打者のスカウティングをきちんと反映して投げていると思えない投球をする。
2011年8月29日 8回裏 シーガー三振 投手 高橋尚


2011年8月30日 エンゼルス戦 4回裏
ダブルプレー
初球のアウトローのストレート。ストレートは得意球種のはずだが、「いくら好きな球種でも、それが苦手なアウトローに来たときには、凡退する」、それくらい、シーガーのアウトローへの苦手意識は強い。あえて打者の好きな球種を、その打者の苦手なコースに投げることは、コントロールさえ気をつければ非常に効果がある。
2011年8月30日 4回裏 シーガー ダブルプレー


2011年8月31日 エンゼルス戦 2回裏
二塁打
インコースのカットボール。
このバッターが最も苦手にする「アウトコースのスライダー」に翻弄され続ける様子は、既に一度書いた。この打席でも、2球目のど真ん中のカーブを見逃している理由は、非常によくわかる。このバッターはゆっくり大きな動きをする変化球についていけないので、こういうボールを最初から諦めているからだ。
このバッターは、ストレートかカットボールが自分の得意コースのインローやハーフハイトに来るのだけをひたすら待ち受けているような、「定置網の漁師」みたいな打者なのだから、「インコースのストレート系」はもちろんタブーだ。
このヒットを打たれたのは2回裏だが、試合終盤になって集中力が切れてきたときに、結局ダン・ヘイレンのピッチングはどんどん緩んでしまい、打者のスカウティングを無視して、自分の好きな球を漫然と投げ込んでしまうことになって失点した。
2011年8月31日 カイル・シーガー 二塁打 SEAvs.LAA





damejima at 01:37
若手打者の打撃傾向についてあれこれ書いているうちに、複数の記事に書き散らして内容が散逸してしまっているので、「打者ごと」にまとめなおして保存しておくことにした。過去の記事と内容がダブるのだが、ご容赦願いたい。

まずは、マイク・カープから。


マイク・カープ

典型的なローボールヒッター、それも「インコースのローボール」に限られる。この打者が典型的なフライボールヒッターなのは、そのためだ。
スタッツを稼ぐのは、大半が「得意コースであるインコースの低い球を打ったフライかライナー」によるもの。ゴロさえ打たせておけば、まったくノーチャンスだ。
三振させる配球パターンが非常にハッキリしている打者でもあり、三振は非常にとりやすい。追い込んでおいて、外の高めのストレート、アウトローの変化球、インローのボールになる変化球、3つのうちどれかを投げておけばいいだけだ。逆にいうと、こんなわかりやすいバッターに長打を打たれてしまうような投手は、スカウティングに関心がない知恵の足りない投手だ。
メジャーに上がった直後に数字を残したが、BABIPの異常に高い打者であることからわかるように、「まだスカウティングされていなかった」のに加えて、単に「運がよかっただけ」

フライボール・ピッチャー(それもスカウティングに関心の低い投手)にとっては非常に嫌なバッターだが、グラウンドボール・ピッチャーにしてみれば、これほどダブルプレーをとりやすいバッターはいない。ランナーが1塁にいるケースでは、アウトコースの変化球でゴロを打たせてダブルプレーに仕留めるのを狙うべき典型的なバッターだ。

ランナーズ・オンでの初球打ち
ランナーズ・オンと、そうでないときでスイングするカウントを変えるという、独特のカウント感覚を持っている。
なんとなくだが、「投手の油断やスキの出るカウントで強振してくる変則的な傾向」をもっていると思われる。「ここはスイングしてこない」と投手が油断しがちなカウントで、不意打ちをくらわせるように強振してスタッツを稼ぐバッターだ。
ランナーが得点圏にいるケースでの初球打ちが、異常に得意。チャンスの場面でけして待球せず、初球から思い切って打ちに出る奇襲策でタイムリーを稼いできた。8月末のエンゼルス戦までの「初球打率」は、なんと6割を超え、OPSが1.455もあった。(AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455)
投手は、ランナーが二塁にいるは、ストライクをとりたいだけのために、初球に低めのスライダーやカットボールを不用意に投げないことだ。
ランナーが出たからといって、マリアーノ・リベラがよくやる手を使って、カットボール、あるいはインコースのボールを詰まらせてセカンドゴロを打たせ、ダブルプレーに仕留めよう、などとカッコつけると、むしろ投手のほうが墓穴を掘ることになる。それはカープの最も得意な球種とコースなのだ。結構な数の投手がこの「ランナーを出した直後の初球に、インロー」のパターンで失敗している。
ここはむしろ、例えばランナーを十分に牽制しておいて、盗塁される危険性も覚悟で、カープの苦手なチェンジアップやカーブを勇気をもって投げることで、ダブルプレーという最良の結果を手にすべき。もし、ゴロでなく、空振り三振に仕留めたい満塁のようなケースでは、外の球で追い込んでおいて、カープの得意コースであるインローに、苦手球種のカーブかチェンジアップを「ボールになるように」投げるのが最適。
ちなみに、ア・リーグ東地区の投手との相性がいいのは、カープの得意なカットボールを多用したがる投手が多いためではないか。

ランナーのいないケースでは、逆にボール先行カウントになるまで待つ傾向もあるので、必ずしも早打ち打者というわけではない。あくまで、ヒッティングするカウントは、ランナーの有無によって変わる。
また、初球打ちが大得意な反面で、早打ち打者の多いMLBにあって誰もがヒッティングカウントにしている「カウント0-1」を苦手にしているのは、非常に珍しい。投手側の計算としては、初球さえファウルを打たせることに成功したら、2球目を振ってこないカープが見逃すような変化球で追い込んでおけば、あとは投手の勝ちだろう。
カイル・シーガーと非常に対照的なバッティング傾向をもつため、この2人の打席が連続するスタメンでは、どちらかが打ち、どちらかが凡退する光景が非常によくみられる。

得意カウント 初球、2-0、1-1、3-1、3-2
特に初球打ち AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455 BABIP.636
苦手カウント 0-1、1-2、2-2
得意球種 スライダー、カットボール
苦手球種 チェンジアップ(特にアウトロー)、外高めのストレート
得意コース インロー(典型的なローボールヒッター)
苦手コース 高め
苦手投手 グラウンドボール・ピッチャー
得意チーム NYY,BOS,TOR
Mike Carp Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN


打席例

2011年8月26日 ホワイトソックス戦 1回表
ダブルプレー
苦手球種のチェンジアップ。下に挙げた9月2日 オークランド戦のキャッチャーフライと同じボール。典型的なローボールヒッターだが、アウトローのチェンジアップは、低めでも打てていない。たぶん球種が問題なのだろう。
2011年8月26日 ホワイトソックス戦 1回表 カープ ダブルプレー 


2011年8月29日 エンゼルス戦 8回裏
2ランホームラン
得点圏にランナーがいるケースのカープに「初球、インコース、スライダー」だけは、絶対に投げてはならない球だ。そのコースだけ、その球種だけを待ち受けているところに、指定どおりのコース、球種を投げれば、飛んで火にいる夏の虫、そりゃ打たれるに決まってる。
2011年8月29日 8回裏 カープ 2ラン 投手 高橋尚


2011年8月31日 エンゼルス戦 7回裏
シングルヒット
インローのカットボール」は、カープの最も得意な球のひとつ。スカウティングにピッタリあてはまる。
投手はダン・ヘイレンだが、初球、2球目と、カープの得意な「インローのカットボール」を連投してヒットを打たれているのだから、どうみても「不用意な配球」としかいいようがない。
2011年8月31日 マイク・カープ シングル


2011年9月2日 オークランド戦 3回表
キャッチャーフライ
苦手球種のチェンジアップ。。典型的なローボールヒッターで、インローのスライダーやカットボールは非常に得意だが、チェンジアップは、いくら低めでも打てていない。
2011年9月2日 SEAvsOAK カープ キャッチャーフライ


2011年9月3日 オークランド戦 4回表
空振り三振
苦手な高めのボール球を振って、三振。このゲームでは3三振しているが、三振した球は全部が「高めのストレート」。
2011年9月3日 ホワイトソックス戦 4回表 カープ 三振


2011年9月3日 オークランド戦 7回表
空振り三振
高めを苦手とするカープが高めのストレートについていけず、空振り三振すること自体は、別に驚くようなことでもない。だが、初球の「インローのスライダー」を見送ったのには、ビックリした。「初球、インロー、スライダー」とくれば、このローボール・ヒッターの黄金パターンのはず。だが、カープはスイングしなかった。
と、なれば、考えられる理由はひとつしかない。「ランナーがいないイニングの先頭打者だったから」だ。得点圏にランナーがいるときのカープなら、間違いなくこの球をフルスイングしていたはず。
やはりこのバッターは「ランナーの有無によって、スイングするカウントと、待つ球種が変わるバッター」なのは、たぶん間違いない。
2011年9月3日 ホワイトソックス戦 7回表 カープ 三振


2011年9月3日 オークランド戦 9回表
見逃し三振
やはり「高めのストレート」はは苦手なのだろう。この打席では全球ストレートを投げられて、2球のストライクを見逃して三振している。
2011年9月3日 ホワイトソックス戦 9回表 カープ 三振


2011年9月4日 オークランド戦 3回表
ダブルプレー
1死1塁の場面。インローのシンカーでダブルプレー。本来はインローの得意なバッターだが、チェンジアップが苦手なのと同様、シンカーも苦手らしい。3球目のカーブも空振りしている。
2011年9月4日 アスレチックス戦3回表 カープ ダブルプレー


2011年9月4日 オークランド戦 5回表
2死1,2塁 ピッチャーゴロ
アウトローのシンカー得点圏にランナーがいる打席だから、カープが初球をスイングしてくる典型的なパターンだ。ピッチャーは、シンカー投手のトレバー・ケイヒル
もしここで不用意に「インローのスライダー」なんかを投げてしまうと、確実にタイムリーを食らうわけだが、投手ケーヒルのチョイスは「アウトロー」。ゴロを打ったら、典型的なフライボールヒッターのカープはノーチャンスだ。
2011年9月4日 オークランド戦 5回表 カープ 投ゴロ


2011年9月11日 カンザスシティ戦 7回裏
先頭打者 三振
アウトローのチェンジアップは、最もカープを三振させやすい球(他には、外高めのストレートも有効)。スカウティングに熱心でないエンゼルスと違って、カンザスシティはもともと分析好きの土地柄なせいか、カープにインコースの球をほとんど投げない。この打席も、苦手なアウトコース、そしてチェンジアップと、スカウティングどおりの攻めで3球三振。
2011年9月11日 ロイヤルズ戦 7回表 カープ 三振


2011年9月12日 ヤンキース戦 8回裏
無死1塁 ダブルプレー
カープがダブルプレー打を打つときのお約束の「アウトロー」。ランナーが1塁にいるときに、カープにアウトローに投げない投手は、スカウティングしてないと思うくらい、当たり前の配球。そろそろアウトローを苦手コースに加えてもいいかもしれない。
2011年9月12日 ヤンキース戦 8回裏 カープ ダブルプレー





damejima at 01:23

September 02, 2011

夏になって西地区首位のテキサスを猛追していたはずの8月のエンゼルスだが、もうひとつ追い上げムードの波に乗り切れていない理由が、なんとなくシアトルの4連戦でみえてきた。どうも、こう、鉄壁の緻密さでゲームに臨んでいるはずのマイク・ソーシアらしからぬ「雑さ」が、特に投手に見えるのである。
4連戦初戦に決勝2ランを許した高橋尚といい、自責点2ながら若いバッターに不用意なヒットを許してしまうダン・ヘイレンといい、マイク・カープにシンカーを4連投して決勝2点タイムリーを打たれたスコット・ダウンズといい、こう言ってはなんだが、エンゼルスの野球も大雑把というか、緩くなったものだと思う。
さしもの闘将マイク・ソーシアも、ちょっと年をとったのかもしれない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月29日、高橋尚投手の「打たれるべくして打たれた」決勝2ラン。

Los Angeles Angels at Seattle Mariners - August 31, 2011 | MLB.com Classic


7回裏 マイク・カープ
シングル
打ったのは「インローのカットボール」。マイク・カープは何度も書いたように、典型的ローボールヒッターだ。得意球種はスライダーカットボール。苦手球種はチェンジアップ。特に得点圏シチュエーションでの初球打ちなどにも強い特徴がある。
「インローのカットボール」はスカウティングにピッタリあてはまるカープの最も得意な球のひとつだ。投手はダン・ヘイレンだが、初球、2球目と、同じ「インローのカットボール」を続けて投げて打たれたヒットだから、不用意な配球としかいいようがない。

2011年8月31日 マイク・カープ シングル


左打者へのインコースのカットボールといえば、ヤンキースのマリアーノ・リベラがすぐに思い出されるが、前にも書いたことを引用すると、同じ左打者のインコースのカットボールによる配球でも、マリアーノ・リベラなら、こういうふうには攻めない。

リベラの典型的な「カットボール・パターン」は、カットボールを2球連投したりしない。まずカットボールをインコースに投げてえぐっておいたなら、次のボールに選択するのは、カットボールではなくて、「ストレート」だ。
この配球を打者側からみると、インコースをえぐるカットボールで腰を引いた直後に、同じようなコースに同じような球速のボールが来るわけだから、自分では十分に踏み込んで打っているつもりなのに、実際には無意識に腰を引きながらスイングしてしまっている、とか、自分ではストレートをスイングしているつもりなのに、無意識にカットボールにあわせるスイングをしてしまって、ひっかけるようなバッティングになったりしてしまう。
リベラの配球の妙は、100マイル近い豪速球を投げておいてからスプリットで空振りさせるような「大げさな変化」ではなくて、カットボールとストレートの「ほんのわずかな違い」を使って、プロの打者の「素人にはない反射神経」や、「動くカットボールにさえ反射的に対応ができてしまう、プロのバットコントロール」を逆に利用している点だ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。


カイル・シーガー
2回裏 二塁打
打ったのは、上のカープと同じ「インコースのカットボール」。ストレート系ヒッター、シーガーが最も得意とする球種であり、コースだ。得意球種がストレート、カットボール、苦手がスライダー。得意コースは、インローとハーフハイト、苦手が、真ん中低めとアウトロー。
このバッターが最も苦手にする「アウトコースのスライダー」に翻弄され続ける様子は、既に一度書いた。
この打席でも、2球目のど真ん中のカーブを見逃している理由は、非常によくわかる。このバッターはゆっくり大きな動きをする変化球についていけないので、こういうボールを最初から諦めているからだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月27日、予想通り1ヶ月で燃え尽きたズレンシックとエリック・ウェッジ演出による8月の線香花火大会。1ヶ月で擦り切れるのがわかっているドアマットの取り換えみたいな「マンスリー・リサイクル」の馬鹿馬鹿しさ。

このバッターは、ストレートかカットボールが自分の得意コースのインローやハーフハイトに来るのだけをひたすら待ち受けているような、「定置網の漁師」みたいな打者なのだから、「インコースのストレート系」はもちろんタブーだ。
このヒットを打たれたのは2回裏だが、試合終盤になって集中力が切れてきたときに、結局ダン・ヘイレンのピッチングはどんどん緩んでしまい、打者のスカウティングを無視して、自分の好きな球を漫然と投げ込んでしまうことになって失点した。

2011年8月31日 カイル・シーガー 二塁打 SEAvs.LAA


ダン・ヘイレンについてこうして書いていると、スカウティング関係なくピッチングしているように見えるタンパベイのジェームズ・シールズを思い出した。
いいピッチャーなんだけどな。ジェームズ・シールズ、ダン・ヘイレン。彼らには、クリフ・リーロイ・ハラデイを見ているときに感じる「ピッチング芸術」を感じない。

だから彼らのファンになるところまでいかない。
残念だ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月3日、打者のスカウティングを全く頭に入れてなさそうに見えるタンパベイのJames Shields。



damejima at 08:25

August 31, 2011

今日は、気のゆるみがみられた29日の初戦とは一転してマイク・ソーシアらしいソツのないゲーム。徹底して足を使って容赦ない攻撃をしかけ、投げては、打者のウィークポイントを徹底してついてきている。

欠点やミスは誰にでもある。
問題なのは、「みつかった穴が、修理・修正できるものであれば即座に修正を促していく修正のスピード、修正できない欠陥かどうかを判断する見極めのスピード、修正できない欠陥を部品ごと交換する踏ん切りのスピード、これらのスピードの速さ」だ。
シアトルの仕事ぶりは常に、日本のお役所仕事の「のろまさ」に似ている。この10年、「城島問題」へのカタツムリが這うような極端にノロい対応ぶりだけでなく、大きな判断ミスを繰り返し犯し続けたGMの交代の遅さ、意味も目的もわからないトレードによる戦力ダウン、修正できない欠点が既にスカウティングされているプレーヤーでも起用しつづける無能な選手起用による勝率ダウン、チーム運営のあらゆる点について、「スピーディーな対応」というものを、「かけら」すら見たことがない



カイル・シーガーの「球種」と「コース」(=ストレート系が得意。スライダー、アウトローが苦手)、キャスパー・ウェルズの「コース」(=インコース、縦の変化が苦手)、マイク・カープの「カウント」(=スライダー、インローが得意。得点圏走者での初球打ちなど)などのスカウティングポイントを引き続き検証してみた。
元記事:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月27日、予想通り1ヶ月で燃え尽きたズレンシックとエリック・ウェッジ演出による8月の線香花火大会。1ヶ月で擦り切れるのがわかっているドアマットの取り換えみたいな「マンスリー・リサイクル」の馬鹿馬鹿しさ。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月27日、キャスパー・ウェルズがデトロイト時代に頻繁に対戦していたア・リーグ中地区の投手たちが、ウェルズをどう凡退させるのか、観察してみた。

まだゲームは終わってないのだが、当初の判断が正しいことがよーくわかった。わかってしまえば、もうつまらない。カープのタイムリーにしても、「え? なぜそこでこの打者の大好きなインローの変化球、投げちゃうわけ?」という感想しかない。
インディアンス、ホワイトソックス、エンゼルスと3カード続けてきたシアトルの若手打者の検証はこれで終わりにする。
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - August 30, 2011 | MLB.com Classic


4回裏。カイル・シーガー
初球のアウトローのストレート。ダブルプレー。
ストレート、カットボールを得意にし、スライダー、アウトコースを苦手にするバッターだが、「好きな球種が苦手コースに来たとき」はこんな風に凡退するものだ。あえて打者の好きな球種を、その打者の苦手なコースに投げることは、コントロールさえ気をつければ非常に効果がある。
2011年8月30日 4回裏 シーガー ダブルプレー


5回裏。キャスパー・ウェルズ
4球目のインコースのストレート。三振。
彼がインコースが苦手らしいのは、もう、よーくわかっているが、0-2、1-2、2-2、3-2、あらゆる2ストライク後のバッティングが苦手なバッターでもある。
1-2と追い込んだ後は、何も考えず漫然とピッチングしている投手なら、よくありがちな「追い込んだら、アウトコースの低め」とかいう知恵のない、紋切型の配球をしてしまう典型的なシチュエーションなわけだが、きっちりインコースに厳しい配球をしてくるところに、今日のソーシアの「絶対に勝つんだ」という「やる気」を感じた。
2011年8月30日 5回裏 ウェルズ三振




damejima at 13:27
雑なプレーを見るのが死ぬほど大嫌いだ。
敵も味方も、そんなの関係ない。


首位テキサスを猛追するエンゼルスだが、シアトルとの初戦の試合ぶりを見る限り、戦略の緻密さで知られてきたマイク・ソーシアにしてはどこか雑なゲームぶりだったように思えた。本気でテキサスを追い落とす気があるのかどうか、エンゼルスらしさが、どうも伝わってこない。
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - August 29, 2011 | MLB.com Classic

カイル・シーガーが「球種」と「コース」(=スライダー、アウトローが苦手)、キャスパー・ウェルズは「コース」(=インコース、縦の変化が苦手)にバッティングの苦手ポイントのひとつがあるように、マイク・カープの場合、「カウント」が重要ポイントのひとつで、とりわけ「カープは初球打ちが得意で、得点圏にランナーがいるケースでは特に初球を強振してくる」ということを書いたばかりだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年8月27日、予想通り1ヶ月で燃え尽きたズレンシックとエリック・ウェッジ演出による8月の線香花火大会。1ヶ月で擦り切れるのがわかっているドアマットの取り換えみたいな「マンスリー・リサイクル」の馬鹿馬鹿しさ。


彼のファンの方々にはたいへん申し訳ない言い方だが、高橋尚投手は自分にとって関心のある選手ではないのと、二段モーションに見えてしかたがないのもあって、いままで記事に一度も名前を出したことすらないのだが、この日のピッチングをみるかぎり、正直、雑すぎる
とてもじゃないが、緻密なベースボールで知られたソーシアのエンゼルスが、優勝を狙って負けられないゲームの同点で迎えた終盤に登板させる投手のテンションとは思えない。


8回裏の先頭打者ダスティン・アックリーに、カウント2-2から、雑な4球目を投げた後、5球目に、90マイルの力の無いストレートをど真ん中に投げてツーベースを打たれたのも情けない話だが、マイク・カープへ、よりによって「初球に、インコースの、スライダー」を投げたのは、優勝のために負けられないチームのブルペン投手として正気の沙汰ではない。

どうだ、このブログのカープに対するスカウティングが正しいだろ、とか言いたいから、言うわけではない。カープが「初球打ちの化け物」であることくらい、誰だって数字を見ればわかる。打率がなんと6割を超え、OPSが1.455もあるのだ(AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455 エンゼルス戦前の数値)。そして、インコースと、スライダーが得意。

つまり、だ。
得点圏にランナーがいるケースのカープに「初球、インコース、スライダー」だけは、絶対に投げてはならない球なのだ。そのコースだけ、その球種だけを待ち受けているところに不用意に投げれば、飛んで火にいる夏の虫、そりゃ打たれるに決まってる。

2011年8月29日 8回裏 カープ 2ラン 投手 高橋尚



ホームランを打つまでのカープは、3打席あって、投手は元マリナーズのピニェイロ
ピニェイロのGO/AOは、ビジターでは1.43。つまり8月26日の記事で書いたとおり、ピニェイロは、カープが最も苦手にしているグラウンドボール・ピッチャーなのだ。実際、ピニェイロはカープを3打席で2度ゴロアウトにうちとって、問題なくうちとっている。
ピニェイロはカープに、初球に一度もインコースを投げていないし、スライダーも投げていない。きちんとスカウティングを守っている。
ピニェイロのカープの初球の球種とコース
1回2死  アウトコースのシンカー 外野ライナー アウト
3回2死1塁 アウトコース低めのカーブ ボール
5回2死3塁 真ん中低めのシンカー ファウル

5回の2死3塁、つまり得点圏にランナーのいるシチュエーションでは、カープは予想どおりピニェイロの初球をスイングしている(ファウル)。やはり、カープは初球を執拗に狙っている打者のは間違いない


ついでにいうと、カープに2ランを浴びた後の高橋尚のピッチングもよくない。
オリーボにヒットを許し、ソーシアは次のキャスパーを敬遠させ、1死1、2塁にしてダブルプレーをとりにいった。
この場面で高橋尚は「ストレート系ヒッター」カイル・シーガーに、ストレートを初球、3球目と投げている。3球目のストレートは少し浮いていて、タイムリーを打たれても不思議ではなかった。カープへの「初球、インコース、スライダー」といい、なんでこう配球に厳しさがないのだろう。
この打席、最後は、このブログのスカウティングどおり、シーガーが大の苦手にしている「アウトローのスライダー」で三振させているのだが、どうも高橋尚投手は、きちんと相手打者のスカウティングをきちんと反映して投げているとは思えない。

2011年8月29日 8回裏 シーガー三振 投手 高橋尚


追記: 2011.8.30
これはおまけ。翌日30日のゲームから、カイル・シーガーの4回裏のダブルプレー打。やはりシーガーは「アウトロー」が苦手。

2011年8月30日 4回裏 シーガー ダブルプレー


こういう形でスカウティングが当たっても、ちっともうれしくない。スタメンがだいぶ入れ替わってエンゼルスの野球も変質してきてしまっているのわかるが、それでもやはり、エンゼルスらしくないエンゼルスは、できることなら見たくない。
どうせならキャッチャー出身のソーシアがベンチからすべての配球のサインを出してでも、グウの音も出ないスカウティングで、得意不得意のハッキリしているシアトルの実力不足の若手くらい、ビシッとうちとってもらいたいものだ。


追記 2011.9.2
エンゼルスは上に書いたシアトル4連戦の後、アナハイムに戻って、ミネソタとの連戦を戦っているのだが、初戦を5-12で落としている。
高橋尚は、このゲームの8回無死満塁のピンチで登場したのだが、1死をとった後、ミネソタの9番打者ドリュー・ビュテラという新人キャッチャーに2点タイムリーを浴び、記録上は自責点1だが、実際には3点の失点をしている。
ビュテラという打者は、打率.168という超低打率の「打たれてはいけない」打者。データでみるかぎり、ビュテラのホットゾーンは「真ん中低め」だけしかない。
だが、高橋尚は、その「真ん中低めだけしか打てない打者」に、カウント2-2からわざわざ「最も得意な真ん中低め」を投げ、2点タイムリーを打たれてしまうのだから、いくらデータが少ない新人打者とはいえ、軽率だったと言われても言い訳のしようがない。
真ん中低めに投げてしまったのが、意図的なのか、コントロールミスだったのかどうかはわからないが、この打者のスタッツを見るかぎり、他に簡単に打ちとれる球があったはずだ。
Drew Butera Hot Zone | Minnesota Twins | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN

Minnesota Twins at Los Angeles Angels - September 2, 2011 | MLB.com Classic

ドリュー・ビュテラのホットゾーン

2011年9月2日 LAA対MIN 投手高橋尚 打者ビュテラ



damejima at 08:42

August 28, 2011

キャスパー・ウェルズは、スタメン試合数が少ない選手だが、デトロイトから来た選手だから、ア・リーグ中地区のチームとの対戦経験は10ゲーム前後ある(シアトル移籍後の対戦を含む)。
シアトルはいまクリーブランドに続いて、ホワイトソックスとの3連戦中で、ちょうどア・リーグ中地区との7連戦だから、西地区の投手よりは多少なりともウェルズの特徴をある程度スカウティングしていると思われる中地区のピッチャーたちが、どうウェルズを凡退させるのか、観察してみた。

ウェルズのシアトル移籍後のデータだけからみた基本的特徴のうち、最もハッキリしている特徴は、以下のとおり。得意球種はチェンジアップ、カットボール、苦手球種はスライダー、カーブだが、下に書いたとおり、問題なのは球種より「コース」らしいので、あまり気にしなくていい。
ローボールヒッター
2ストライクをとられると、打てない
インコース、高めが苦手

結論から先にいうと、
新たにわかったことが、3つほどある。
シンカーがまったく打てない
たとえ得意球種でもインコースに投げられると打てない
追い込まれると、ボール球に手を出すクセ


対クリーブランド
第1戦
第1打席 インコース シンカー 死球
第2打席 アウトロー ストレート シングルヒット
第3打席 アウトロー ボール球シンカー ライトフライ
第4打席 アウトコース ハーフハイト ボール球のストレート セカンドゴロ
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 22, 2011 | MLB.com Classic

第2戦
第1打席 インコース高め シンカー サードゴロ
第2打席 ど真ん中 シンカー ファーストゴロ
第3打席 インコース真ん中 ボール球シンカー 空振り三振
第4打席 真ん中高めのストレート 空振り三振
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 23, 2011 | MLB.com Classic

第4戦
第1打席 アウトロー ボール球のカットボール 空振り三振
第2打席 ややインコースより ど真ん中のシンカー ファーストフライ
第3打席 アウトコース ボール球のカットボール セカンドフライ
第4打席 アウトロー スライダー サードフライ
第5打席 インコース カーブ 見逃し三振
Seattle Mariners at Cleveland Indians - August 24, 2011 | MLB.com Classic

対ホワイトソックス ジョン・ダンクス
第2戦
第1打席 外のチェンジアップ 空振り三振
第2打席 インコース低め ボール球のカットボール 空振り三振
第3打席 インコース低め ストライクになるカットボール 空振り三振
Chicago White Sox at Seattle Mariners - August 27, 2011 | MLB.com Classic

クリーブランドの「シンカー」パターン
インコースのカットボールで追い込み、
高めからシンカーを落として空振りさせる

配球の細かい部分は省略させてもらったが、クリーブランドの投手たちは、インコースのカットボールで追い込んでおいてから、シンカーを投げて凡退させるパターンを多用している。持ち球にスプリッターのある投手なら、シンカーのところをスプリッターでも代用できるだろう。
カットボール自体はウェルズの得意球種のはずだが、苦手なインコースに投げられると、とたんにミートできなくなる。ウェルズは球種の得意不得意よりも、よほどインコースに苦手意識があるとみた。
逆にいうと、「苦手なコースのあるバッターとの対戦」においては、球種がたとえそのバッターの得意な球であっても、苦手コースにさえ投げられるなら、なにも怖がる必要はなく、むしろ、凡退させるのに絶好な切り札にできるということ。勉強になる(笑)

ホワイトソックス ジョン・ダンクスの
「カットボール」パターン

高めの球で追い込み
インローのボールになるカットボールで三振

ウェルズを3打席3三振させたホワイトソックスのジョン・ダンクスも、ウェルズの弱点である「高め」「インコース」といった「コースの弱点」を徹底的に突いている。最初に高めを多投して追い込んでおき、最後はインコース低めの完全にボールになるカットボールを振らせるのが、ダンクスのパターン。クリーブランドも使っていた「インコースのカットボール」がここでも使われている。



damejima at 18:23

June 29, 2011

2011カレッジ・ワールドシリーズ(CWS)は、サウスカロライナがフロリダに連勝して、2010年の初優勝に続く連覇を達成した。サウスカロライナはこれでCWSにおける勝利数を合計で28まで伸ばし、CWS勝利数でも26勝で並んでいたフロリダを抜き去って、歴代単独10位。
Florida vs South Carolina - Baseball Division I - June 28, 2011 - NCAA.com

University of South Carolina repeats as College World Series champion | MLB.com: News

決勝で先発したのは、仕事を辞めて応援にかけつけた父親のエピソードで一躍有名になった、あのMichael Rothである。
なんというか、やはり何かを持っている投手だ。チャンピオンシップ・シリーズでも、ノーアウトのランナーを背負う場面でも冷静に三振がとれている。プロでも何か粘り強い仕事をしそうな気がする。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月24日、体調の悪いダニー・ハルツェンを3イニングしか使えなかったヴァージニアが敗れ、CWS決勝カードはフロリダ対サウスカロライナに。ちょっとユニークなピッチング・スタイルのMichael Rothと、彼の父親との絆。

サウスカロライナを連覇に導いたヘッドコーチRay Tannerは、ジャスティン・スモークの父、故キース・スモークに息子スの背番号の入ったチーム・ジャージーを贈った、あのレイ・タナーである。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月25日、「2月のサウスカロライナ、父と息子のキャッチボール」。February in South Carolina, a father and his son played catch.






damejima at 21:48

June 26, 2011

2011カレッジ・ワールドシリーズ(CWS)は、Bracket 2の決勝、ヴァージニア対サウスカロライナ戦が行われ、サウスカロライナが延長13回裏に相手のエラーでサヨナラ勝ち。サウスカロライナはこれでCWSにおける勝利数を26とし、歴代ベスト10位になった。

2011カレッジ・ワールドシリーズ ロゴ
27日から行われるチャンピオンシップ・シリーズは、フロリダ対サウスカロライナ
決勝に進むのは、フロリダが7回目、サウスカロライナ11回目。フロリダが優勝すれば初優勝、サウスカロライナが優勝すれば2回目の優勝で、去年に続く2連覇。
College World Series - Wikipedia, the free encyclopedia


ヴァージニア先発のダニー・ハルツェンは、打者10人から8三振を奪うという快投ぶり。だが3イニング終えた時点で降板。見ていて最初は突然の降板にびっくりしたが、どうやら今日もともと体調が悪く、コーチのブライアン・オコーナーは「ものすごく明るい将来を控えた若者だし、リスクを犯すわけにいかない」と、最初から短いイニングの登板と決めていたらしい。
降板後のハルツェン自身はあきらかに投げられないことにずっとイライラしていたが、ありがたいコーチである。
Virginia coach Brian O'Connor said. "But my plan coming into the game was for him to have a short stint. He was feeling under the weather today, and he was gutting it out as much as he could. He was in pretty miserable shape after the first inning. And this kid's got a very, very bright future. And I was not going to put that at risk of him feeling under the weather on four days' rest and putting his career in jeopardy."
South Carolina won a 13 inning game to advance to the College World Series Final against the University of Florida | MLB.com: News
under the weather:「体調が悪い」


もしハルツェンの体調が万全だったら明らかに結果は違うものになっていたことだろうが、これもスポーツの勝負のアヤ。
それに、ハルツェン降板後のヴァージニアには勝機が何度となくあった。延長で3度も満塁のチャンスを作りながら、2回もタブルプレーで残塁の山を築いた。敗戦はヴァージニアの自滅である。

それにしても両チーム、攻撃も粗いが、守備のエラーが多すぎる。正直、見ているのがつらいほどの低レベルで、途中で観戦を止めてしまった(苦笑)両チームともドラフトで指名されているプロ予備軍を多数抱えているのだから、もうちょっとしっかりプレーしてもらいたい。


そういう、ちょっと残念な凡戦の中で、見ていて妙に興味ひかれたのは、サウスカロライナの先発のMichael Rothのピッチングのユニークさ。
今年のドラフトでクリーブランドから31順目(全体938位)で指名された左腕なのだが、スリークオーターで投げたり、サイドスローで投げたり、ノラリクラリした変則的スタイルが、かえって妙にそそられる。どこにでも転がっているノーコンの剛球投手よりぜんぜん面白い。クリーブランドはいい買い物をしたと思う。
31st Round of the 2011 MLB June Amateur Draft - Baseball-Reference.com


Michael Rothには、このカレッジ・ワールドシリーズでちょっとしたエピソードが生まれた。

Michael Rothはサウスカロライナ大学の地元出身の選手で、彼の父親DavidはサウスカロライナのGreenville Countyで某外国メーカー(日本車ではない)の自動車ディーラーで働いている。
去年サウスカロライナ大学は悲願のカレッジ・ワールドシリーズ初優勝を飾った記念すべきシーズンだったわけで、Michael Rothは37回1/3を投げて自責点0.97と、初優勝に大きく貢献した立役者のひとりになったのだが、このとき、Michael Rothの父は、会社を休んで応援に行くことができなかった。
Player Bio: Michael Roth - SOUTH CAROLINA GAMECOCKS

今回のサウスカロライナの2年連続のカレッジワールドシリーズ進出で、父Davidは、こんどこそは息子の晴れ姿を見ようと、大西洋岸のサウスカロライナから中部のネブラスカ州オマハまで応援にかけつけているのだが、実は、今回の応援実現のために、勤めていた自動車ディーラーを辞めているのである。

この話題は、最初にMichael Rothが
"My dad had to quit his job to make it out to Omaha."
と、「息子の応援をしようとした父が、会社に失業させられた」というニュアンスでツイートしたことなどもあって、全米レベルのニュースになり、勤務先の自動車ディーラーには400本を越えるファンから抗議電話が殺到したらしい。

Roth didn't expect focus on dad: Pitcher's father quit job to watch son pitch in Omaha | The Post and Courier, Charleston SC - News, Sports, Entertainment

David Roth, Father Of South Carolina Pitcher Michael Roth, Quits Job To See Son Pitch

After Roth’s father quits job to go to CWS, employer takes the heat

もうここまで世間が盛り上がると、会社側もメディアにステートメントを出さないわけにはいかないわけで、こんなニュアンスのコメントを出した。
「Davidは従業員としてよくやってくれていた。今回辞めることになったのは、あくまで彼の個人的な事情と意思だ。会社側としては残念に思っているし、サウスカロライナのカレッジ・ワールドシリーズも応援している。頑張ってほしい。」
資料:会社のステートメントへのリンクを含む記事
Car Dealership Issues Statement on Michael Roth's Dad, David | wltx.com
まぁ、想定内というか、なんとも味気ないコメントだこと(笑)まぁ、こんなものだろう。ちなみに、Yahooの写真でみるDavid父ちゃんは、怒ったらマジに怖そうな、まさに「星一徹」風味のゴツ過ぎる親父さんである(笑)


Michael Rothの父親の雇用問題がどう決着するか、とか、息子のために仕事を辞めてしまうことの事の良し悪しは、まぁ野球とは関係ないことだし、価値観の違いによって判断の分かれることだ。
それはそれとして、Michael Rothの父親のエピソードと、今年4月にジャスティン・スモークの父親キース氏が病気で亡くなられたときの話とあわせると、アメリカ南部の「家族を大切にする気風」がよくわかる。
スモークの父、故キース・スモーク氏も、息子に、野球と同じ重さをもって厳格な礼節を叩き込むタイプの父親だったらしいが、また同時に、息子の活躍を誰よりも喜び、誇りに思う典型的なアメリカ南部の良き父親でもあった。、
見た目の風貌が非常に怖いMichael Rothの父親Davidだが(笑)、たぶん息子の活躍を目を細めて見るときの表情は、故キース・スモーク氏と同じように優しげなのだろう。
結局はこうした息子想いの南部の父親たちが立派な野球選手を育てて全米のMLBチームに送り出しているのだ。家族を思う気風の行き過ぎについて、外部から批判することに歴史的な意義がなかったわけではないが、息子の一生に一度あるかないかの大舞台の応援くらい許してやれないのは、器量が狭いと言われてもしかたがない。


何度も書いてきていることだが、
やはりアメリカにおけるベースボールは、父がグラブを持たせた息子を連れてスタジアムに行くといったファミリー・アフェアーなのであり、ベースボールは、ケン・バーンズが描くように、アメリカの家族を繋ぐ文化的な「ベース」である。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月25日、「2月のサウスカロライナ、父と息子のキャッチボール」。February in South Carolina, a father and his son played catch.






damejima at 05:49

June 18, 2011

ダスティン・アックリーがメジャーデビューしたフィリー相手の初戦。観客34,345人。わが天才イチローが3安打を固め打ちして、新人君に勝利を贈った。粋なことをするもんだ。いやー、素晴らしいバッティング。ピネダも練習しているチェンジアップをついに実戦投入して、対戦相手にスカウティングされはじめている自分のピッチングを立て直しにかかって7勝目。(3回表二死ランナー無しの場面でジミー・ロリンズに投げた2球目、6回表ジミーロリンズへの3球目など)

Gameday:Philadelphia Phillies at Seattle Mariners - June 17, 2011 | MLB.com Classic
判定マップ:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool 2011年6月17日フィラデルフィア第1戦
(今日の判定は、左バッターのインコースが狭すぎで、アウトコースが超広い。つまり、左バッターだけゾーン全体が三塁側に大きくズレてる。球審Doug Eddings

2011年6月17日 球審Doug Eddingsの判定マップ


アックリーはメジャー初ヒットのバッティング面より、8回表の5-4-3のダブルプレーがよかったな。カルロス・ルイーズのハードスライディングを綺麗に避けながらのストロングスロー。なかなかだった。長年セカンドベースマンを誰にするかで悩まされてきたシアトルだけど、悩み事が、これでひとつ減った。
なんせ、ノースカロライナ大学出身のダスティン・アックリーと、サウスカロライナ大学出身のジャスティン・スモークの、「Carolina Double カロライナ・ダブル」(©damejima)だからね。なんとも、びゅーてほー。アトランティック・コーストの野球ファンも喜んだんちゃないのかな。(ちなみに、サウスカロライナにはCarolina Double Marathonっていうハードな耐久マラソンレースが実際あるらしい 笑)

ダスティン・アックリーの「カロライナ・ダブル」について、ブレンダン・ライアン
"That's not an easy play," Ryan said. "It just shows more poise and his calm. That calm is something that can't really be taught, so I think we're all pretty impressed."
「いンやぁ、アレ、簡単なプレーじゃなかったわねぇ。なんつぅの、あの子、落ち着きあるんだがね。ああいう「落ち着き」ってぇのは、教えようとして教えられるもんじゃないンよね。うん。オジちゃん、感心ちまちた。だから、このあとエビフリャー食べるがね。アンタも来る?エドガー・マルチネス通りでクルマ止めて待っとるがね。」
Dustin Ackley begins highly anticipated Mariners career in style | Mariners.com: News

ついでだから、復調したイチローのバッティングについて、エリック・ウェッジ
Mariners manager Eric Wedge said after the game. "But you see that bat head staying in the zone a lot longer. The plane of his bat is where it needs to be. Like I've said before, he's a tough hitter to critique because it's a very, very unique approach.
「バットヘッドが、ベスポジにピタっ。スイングの軌道面も、理想的なとこにピタっ。前もいうたんやけどさ、イチローいうたら、どうにもコメントしにくいバッターやねんな。そらそうよ。バッティングに対するアプローチがあまりにも超絶ユニークすぎやわ。あんなん、他におらん。それにしても、このイカ焼きうまいわ。阪神百貨店で買うたんやで。さすがイチローの国の食いもんやで。」
Mariners Blog | Mariners put a complete team effort into this one on offense, defense and the mound | Seattle Times Newspaper


ひさしぶりにラウル・イバニェスの姿も確かめられて、それも大満足。シアトルはレフト、空けて待ってますよ? イバちゃん(笑)ペゲーロより、イバちゃんがいい(笑)

イチロー RF
ライアン SS
グティエレス CF アダム・ジョーンズ CF
イバニェス LF
スモーク 1B
アックリー 2B
オリーボ C
ケネディ DH
募集中 3B

サード? ライアン・ジマーマンがいいな(笑)






damejima at 14:08

June 01, 2011

勝ったぁああああっっっ!
ジャスティン・スモークの決勝逆転3ラン!!!
ひゃっほぉぅぅぅううううううう!!!!!

2011年5月31日 8回裏 スモーク逆転3ラン
Baseball Video Highlights & Clips | BAL@SEA: Smoak's three-run shot puts Seattle up late - Video | Mariners.com: Multimedia

"Smoke On The Water" Live in Tokyo


Baltimore Orioles at Seattle Mariners - May 31, 2011 | MLB.com Classic

今日の勝利を呼び寄せたのは、言うまでもなく「不振のショーン・フィギンズを2番からはずしたこと」だ。今日の劇的な勝利で、2番からフィギンズをはずすという方向性は当分の間、堅持されるだろう。
エリック・ウェッジ、グッジョブ。

Ichiro RF
Ryan SS
Smoak 1B
Cust DH
Gutierrez CF
Kennedy 2B
Olivo C
Rodriguez 3B
Peguero LF

Bedard P

そう。
フィギンズが2番にいない。
いないどころか、スタメンにも入っていない。

かわりに2番に入ったのは、ブレンダン・ライアン
ボルチモアの先発ジェレミー・ガスリーの出来が素晴らしく良く、シアトルは5安打しか打てなかったが、そのうちの2本を打ってくれた。


8回裏は、イチローの1、2塁間を抜けそうなヒット性の当たりを好捕したボルチモアのファースト、ルーク・スコットが、イチローの俊足に焦って一塁へ悪送球したことから始まった。(記録はエラー)

ここで、この日初めて2番に入ったブレンダン・ライアンがヒットでつなぎ、
そして、ジャスティン・スモークの見事な3ランショット。
こんな劇場的展開でスタジアムが沸かないわけがない。その後リーグがセーブを記録して、リーグトップの15セーブ

こういう日にスタジアムにいられた観客は幸せだ。

すもぉぅぅーーーく・オン・ザ・ぅおーーーたーーーーーー
a fire in the sky. Yeah!
セーフコは ぴっきぴきにロックしてるぜぇえええ。


それにしても、
昨日、ショーン・フィギンズを放出すべきって記事を書いて、その中で、ローリング・ストーンズって単語を使った、そのとたんに、フィギンズがスタメンはずれて、しかも、スモーク・オン・ザ・ウォーター
この曲、スイスのジュネーブで実際にあった火事を元ネタにしてて、歌詞の中にローリング・ストーンズが出てくるんだよね(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月30日、言語学的意味論から考える「しぼむ風船」ショーン・フィギンズ。






damejima at 13:37

April 28, 2011

デトロイト第2戦、ビジターで圧勝。
素晴らしいゲームだった。
Seattle Mariners at Detroit Tigers - April 27, 2011 | MLB.com Classic

スモーク 2試合連続ホームラン from バーランダー


2011年4月27日 ジャスティン・スモーク 3ラン

先週、父の葬儀を終えたばかりのジャスティン・スモークがチームに戻ってきて、昨日今日と、いきなり2試合連続ホームラン。試合後のインタビューによるとバーランダーのストレートだけを待っていたらしい。("I was just looking for a fastball to hit." Seattle Mariners at Detroit Tigers - April 27, 2011 | MLB.com SEA Recap
今日のホームランは流し打ちで、あのバーランダーのアウトコースいっぱに決まる97マイルの速球を、この広いコメリカ・パークの左中間の奥にまで放りこんでしまうのだから、凄い。
まさに同じスイッチのスラッガー1塁手マーク・テシェイラばりの3ラン。AVG.302、OBP.408、OPS.979。

デトロイトの先発バーランダーの話
Verlander said. "I was trying to go down and away, and I basically got the pitch six inches higher than I wanted. He went down and got it _ that was a nice swing."
「外角低めを投げようと思ったんだけど、思ったところより6インチも高くいってしまって、つかまってしまった。いいスイングをするバッターだね」
Mariners rout error-prone Tigers 10-1 - Mariners News - MyNorthwest.com


ついでに、これも(笑)アウト判定だったが、明らかにセーフのフィギンズの本塁へのスライディング。

オリーボの幻のタイムリー 2011年4月27日 デトロイト戦


今日の先発ベダードは本当に素晴らしかった。
88球投げて、ストライク60。ストライク率68.1%。球数が少なく、しかも、四球を出さなかった。小気味いいテンポで投げていて、見ていても気持ちよかった。
ストレートのスピードが戻って、しかも、彼本来のボールである得意のカーブがキレキレ。序盤こそボールが高めに上ずって1点を失ったが、ゲーム後半にはストレートでカウントを悪くするとカーブで持ち直すというパターンで、終わってみれば、7回1失点の無四球登板だ。

ベダード、やればやれる。

なんだが、ヘルナンデスウオッシュバーン、そしてベダードの3本柱で面白いように勝ちまくった2009年春を思い出した。


そして打線の集中力も素晴らしかった。
Team RISPが、7-for-15。つまり、得点圏に走者がいるシチュエーションが15回もあって、しかも、そのうち半分の7回タイムリーが飛び出している。
こんなにタイムリーの出まくるシアトルを見るのは本当に楽しい。


スモークが忌引きでいない間に代役をつとめてチームを鼓舞してくれたのはアダム・ケネディの好調な打撃だったが、スモークがチームに戻ってくるにあたって、どうスタメンを構成しなおすか、アダム・ケネディをどう使うかが、このところ日米のファンの間でいろいろと議論されていた。
今日のゲームでは、ジャック・ウィルソンをスタメンに戻さず、好調アダム・ケネディをセカンドベースマンとしてスタメンに残す形をとった。もちろんブログ主は大賛成
今日の打順は、スモークとアダム・ケネディの間に絶不調ジャック・カストを挟んだ打順になっていたが、スモーク、ケネディを続けた打順にすべきだと思う。








damejima at 08:21

April 26, 2011

カレッジ・ベースボールでUSCといえば、1970年代までなら、かつての名門で、カレッジ・ワールドシリーズ最多の通算12回優勝を誇るUniversity of Southern California、南カリフォルニア大学を指しただろう。だが、近年ではサウスカロライナ大学、University of South Carolinaを指す。
現在もコーチを務めるRay Tannerが1997年に就任してからというもの、サウスカロライナ大学野球部 South Carolina Gamecocksは、所属するSEC(Southeastern Conference)のチャンピオンシップの常連となり、2010年にはついにカレッジ・ワールドシリーズを制覇して全米No.1に輝いた。Ray Tannerはいま、カレッジの勝率レコード(634勝282敗)を持っている。

South Carolina Gamecocksのロゴマーク South Carolina Gamecocksの
 ロゴマーク

ボルチモア・オリオールズの名選手ブライアン・ロバーツは、このサウスカロライナ大学Gamecocksの出身で、1999年にボルチモアから1位指名されて入団した。
ノースカロライナ州出身のロバーツは、父マイクがノースカロライナ大学のコーチをしていた縁で、最初はノースカロライナ大学のプレーヤーだったのだが、父親が大学野球部のコーチ職を解かれてしまったことからサウスカロライナ大学に移り、そこで名プレーヤーに育った。ベースボールアメリカの選定するベスト・ディフェンス・プレーヤーに選ばれ、通算打率.353。またSECの盗塁カンファレンス記録を作っている。

サウスカロライナ州サウスカロライナ州はイギリスから最初に独立した13州の一つ。ニックネームはThe Palmetto State(パルメット椰子の州)


下に訳出したのは、ブライアン・ロバーツと同じように、父親から野球の楽しさを教えてもらったジャスティン・スモークのストーリーだ。

以前、素晴らしいドキュメンタリーを制作し続けている映像作家ケン・バーンズの野球ドキュメント作品"Baseball" "The Tenth Inning"を紹介したときに、
「ベースボールの楽しみは、まるで遺伝子が親から子に伝わるように、両親から子供に大切に伝えられてきた『家族の文化』である」と書いたが、ブライアン・ロバーツと父マイクにしても、下で描かれているジャスティン・スモークと父キースにしても、ベースボールを親子の絆にした典型的なアメリカの親子であることに注意して読んでもらえると非常にうれしい。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月10日、"The Tenth Inning"後編の語る「イチロー」。あるいは「アラスカのキング・サーモンはなぜ野球中継を見ないのか?」という考察。


Former Gamecock star Smoak
coping with loss of father

By Philip M. Bowman
Former Gamecock star Smoak coping with loss of father | The Herald - Rock Hill, SC
(訳)
まるで映画「フィールド・オブ・ドリームス」のような話だ。だが映画より素晴らしいといえるのは、これが実際にあった話だからだ。

コロンビア市(=サウスカロライナの州都)、2月なかばの日曜日に、父と息子はそれが最後となるキャッチボールと、ひととおりのバッティング練習をした。野球はジャスティンと父の絆である。癌という病がその絆を断ち切ることはない。

24歳のスモークはかつて、ストラットフォード高校とサウスカロライナ大学で野球のスタープレーヤーだった。現在はシアトル・マリナーズの1塁手で、アリゾナで行われるスプリング・トレーニングに向かう準備をしていたのだが、いまは、彼に野球を教えてくれた人とキャッチボールをして、自分のスイングについて意見をもらうのが優先だった。

昨年5月に肺がんと診断されたキース・スモークは、2月なかばのその日、カロライナ・スタジアムで車椅子に座り、微笑みを浮かべながら、自分の息子にボールを投げた。
家族に付き添われたキースは、サウスカロライナ大学の野球部コーチであるレイ・タナーから、背中にK. Smoakとネームが入り、息子スモークがつけていた背番号12番が入ったジャージーをプレゼントされていた。(ブログ注:スモークの背番号はテキサス時代は大学時代と同じ12。シアトル移籍後は17)
「たぶん僕の人生最良の日だったね。家族と一緒にいられたんだから」と、キースは記者に語った。


キース・スモークは、息子とキャッチボールをして2ヶ月と少し経った火曜に、57歳で亡くなった。(ブログ注:MLB公式では54歳となっている)タナーはいち早くジャスティンに連絡した人のひとりだった。マリナーズは彼を忌引リストにいれた。

タナーは言う。
「僕はジャスティンに、キースを悼む気持ちを伝えると同時に、こう言ったんだ。あのカロライナ・スタジアムで過ごした特別な午後は、息子である君と、君の家族、そしてUSCの野球関係者にとって大切な人の人生への祝福の時だったに違いないってね。家族を慈しむ特別な時間さ。彼の父は、スモークの人生にとって欠かすことのできない存在だった。
彼の両親は、試合だけでなく、練習にも来てくれた。キースは彼の息子とチームをとても大切に考えてくれていたんだ。ジャスティンがドラフトされて遠くに旅立つときも、われわれは、ジャスティンがいなくなるのを寂しく思うのと同じくらい、彼の両親との別れを惜しんだものさ。」

ジョン・ローズはジャスティンがダイアモンド・デビルスでプレーしたときのコーチだ。10代の時期というと、父と息子は、とかく荒れた関係になったりするものだが、ローズがいうには、スモーク家の場合にはそれはなかった。
「彼らの関係はそりゃ親密なものだったよ。10代というと、両親、とくに父親のことを疎ましく思いがちなものだ。だけどジャスティンと彼の父の場合はまったくそんなことはなかった。ジャスティンは厳しくしつけられていたと思う。しょっちゅう言葉をかわしていたしね」

ストラットフォード高校での若いスモークは、1年生のときからそこらじゅうのスカウトマンから注目の的になっていた。ストラットフォードのコーチ、ジョン・シャリューはこの若いプレーヤーがとても分別があり、しかも礼儀正しかったと言っている。
「彼の父が、彼に礼儀正しさを教えたといっていいだろうね。キースはジャスティンに、一緒にプレーするプレーヤーへの敬意を教えつつ、コーチした。それは今のような時代には大切なことだ。」

マリナーズの監督エリック・ウェッジは、チームはスモークがチームに復帰する前に、彼が必要とするだけの時間を十分与えると言っている。葬儀は土曜の11時にAldersgate United Methodist Churchで行われ、Carolina Memorial Parkに埋葬される予定だ。

ブログ注:
下記のリンク記事によれば、ブライアン・ロバーツの父マイクは、スモークがマット・ウィータースなども所属していたダイアモンド・デビルスという野球チームに所属していた当時に、スモークをコーチしたことがあるらしい。
For Smoak, the final step | GoGamecocks



サウスカロライナ大学時代のジャスティン・スモークサウスカロライナ大学時代のジャスティン・スモーク






damejima at 09:31

April 20, 2011

今日のデトロイトとのゲームに、シアトルの若い才能ある一塁手ジャスティン・スモークの姿がないのは、彼のご尊父Keith Smoak氏の容態が悪くなり、病床の父のもとに帰ったからだ。さきほど、ご尊父が逝去なさったことを、ツイッターで知った。享年54歳。
ゲームは13-3で、圧勝。イチローが4安打3得点2盗塁の大活躍で、ある意味の追悼試合を勝利に導いた。また、数日チームを離れることになるジャスティンの代わりに臨時のロスターとして上がってきたカルロス・ペゲーロは、さっそくゲームの決まった試合終盤に退いたイチローにかわってライトを守った。

ジャスティンの父の逝去を悼む人たちのツイート
justin smoak - Google Search

Detroit Tigers at Seattle Mariners - April 19, 2011 | MLB.com Classic

Justin Smoak placed on bereavement list; Carlos Peguero recalled from Triple-A | MLB.com: News

まだ24歳と若いジャスティンが大事な父親を失った深い悲しみを思うと、とても心が痛い。

我々ファンの心は若いジャスティンと共にある。そのことを伝えるとともに、心からご尊父の冥福を祈りたい。

My Thoughts and prayers are with Justin and his family.


追記
さきほどMarinersの公式ツイッターが、今日の快進撃に、Who is with us here at Safeco Field? と、つぶやいた。
もちろん僕らは、今日、誰がセーフコのフィールドで躍動するプレーヤーたちを守ってくれていたのか、みんながわかっている。ありがとう、Keith。これからもチームを見守ってください。




今日のイチローの見事な4安打
http://www.youtube.com/watch?v=pPJgpnf2v6c






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  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
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