ピッチャーの投球フォーム(日米比較)

2017年7月16日、「投手の投げた球種とコース」「打撃結果」、この2つのわずかなデータからわかること。
2013年6月13日、ヴィダル・ヌーニョの股関節の故障と、ピッチングフォームの関係。(クレイトン・カーショーとのフォーム比較)
2013年5月24日、「ボールを振らず、かつ、ストライクだけ振れるチーム」など、どこにも「存在しない」。ボールを振るチームはストライクも振り、ボールを振らないチームは、ストライクも振らない。ただそれだけの話。
2012年6月21日、アリゾナのカレッジワールドシリーズ決勝進出が示す今年のPac-12の強さ。トレバー・ホフマンの典型的 「前ステップ」。
2012年4月9日、やはり「ビッシュ・ツイスト」に戻らなかったダルビッシュの「松阪風サード側蹴り出し」フォーム。
2011年4月18日、分解写真で、ひさびさに好投したボストン松坂投手のピッチングフォームを、昔のフォームと比べてみる。
2011年4月15日、Sam Holbrookの特殊なストライクゾーンに手こずったジェイソン・バルガス。バルガス、松阪、コーファクスのピッチングフォーム比較。
2011年3月25日、ノーラン・ライアンを思わせる「前ステップ」をみせる大阪ガスの松永昂大投手。高校からプロになった投手と、大学を経由した投手とのフォームの違い。
2011年3月24日、「やじろべえ」の面白さにハマる。
2011年3月23日、昔のダルビッシュと、今のダルビッシュ、どこが、どういう意味で違うのか。ノーラン・ライアン、松坂と比べながら、考える。
2010年10月26日、クリフ・リーの投球フォームが打ちづらい理由。「構えてから投げるまでが早くできている」メジャーの投球フォーム。メジャー移籍後のイチローが日本とはバッティングフォームを変えた理由。
2010年1月6日、豪球ノーコン列伝 ランディ・ジョンソンのノーコンを矯正したノーラン・ライアン。 ノーラン・ライアンのノーコンを矯正した捕手ジェフ・トーボーグ。 捕手トーボーグが投球術を学んだサンディ・コーファクス。

July 17, 2017

ある投手の投げた球種とコースと打撃結果

この2つの図は、左が「球種とコース」、右が「打撃結果」になっている。もちろん同じゲームでのデータであり、誰にでも入手できる。
資料:https://baseballsavant.mlb.com/

投手は誰かくらい、わかる人にはすぐにわかる(笑)
だから書かない。

そんなどうでもいいことより、大事なことは、「たったこれだけの単純なデータからさえ、野球の面白さが伝わること」だ。

バッター側チームが、この投手を攻略するためにどういう戦略をもってゲームに臨んだか、その戦略はどのくらい成功したか。反面で、このピッチャーがバッターをうちとるためにどういう組み立てをしているか、このピッチャーがそもそもどういう理由からこれだけの数の球種を使うのか、その狙いはどのくらい成功しているか、などなど。
言葉でグダグダ説明しなくとも、この図に十分すぎるくらい表れている。


だが、データ野球がさかんな昨今だからこそ、このことは強く言っておきたい。
「データさえ見れば現実がわかる」のではない。そういうおかしなことが言いたいのではない。「自分の眼が見たこと」「自分が直感したこと」の裏づけや確信を得るための手段として、こういう便利なものがある、ということだ。データだけ見ればスポーツがわかるなら、誰も苦労しない。


もしこの2つの図から、この投手が打たれるとしたら、「このコース」、あるいは「この球種」、あるいは「このカウント」などといえる「ゾーン」が見えてきたなら、絶対おもしろいと思うから、この投手の次回の登板を「いままでと違った視点から」じっくり見てみることをぜひおすすめしたい。(笑)この投手が「ゾーン」に落ちるときの特徴に気づくかもしれない。




damejima at 16:15

June 14, 2013

ヤンキースが4月末にメジャーに上げてきた新人ピッチャー、ヴィダル・ヌーニョは、そこそこいい球を投げるピッチャーだなとか思って見ていたが、すぐに股関節の故障でDL入りしてしまった。これは下の写真で明らかなように、ピッチングフォームそのものに「欠陥」というか「無理」があるためだ。


理屈より、比較したほうが早い。同じ左腕で、身体の左右のバランスのとれた非常に綺麗なフォームで投げるドジャースの好投手、クレイトン・カーショーの写真を並べてみた。
このブログで松坂やダルビッシュについて何度も書いてきたことだが、「つま先の向き」を見てもらいたい。
参考記事:Damejima's HARDBALL:ピッチャーの投球フォーム(日米比較)

ヌーニョの右足のつま先が完全にファースト側を向いてしまっている」ことでわかるように、ヌーニョは下半身がファースト側に向いたまま、ホームプレートに向かって腕を振っているから、踏み出した右足に加わる「ねじれ」が、投げるたびに股関節を直撃する。

対してカーショーのフォームは、「全身が伸びやかにホームプレート方向にまっすぐ向いていて、どこにも無理がない」。

クドクド説明するまでもない。
ヌーニョのフォームで股関節に負担がかからないわけがない。

ヴィダル・ヌーニョの歪んだピッチングフォーム

クレイトン・カーショーのピッチングフォーム


ヌーニョは2009年のドラフト48位(全体1445位)でクリーブランドに指名され、2011年3月にリリース。同年6月にヤンキースに拾われている。
まぁ、ドラフト順位が順位だし、コーチに助言してもらう機会もほとんどないまま現在に至っているのかもしれないが、それにしたって、この「できそこないのフォーム」のまま投げさせたのでは、すぐに壊れてしまう。

別にヤンキースのマイナーのピッチングスタッフを批判する意味で書いているのではない。単に、せっかく野球という素晴らしいスポーツでプロになれる才能に恵まれたのだし、せっかくの才能を故障でフイにしないようにしてもらいたいと願うから書くだけだ。


もちろん、あらゆるピッチャーがクレイトン・カーショーのようなフォームで投げなければいけない、などと、堅苦しいことを言うつもりはない。むしろ、それぞれに個性的なフォームで投げるほうがいい。

だが、ヌーニョの場合、「個性的」なのではなくて、単に「おかしなフォーム」「未完成なフォーム」なわけだから、故障する前に誰かが矯正してやらなくてはならない。
若いうちから「ほっといても活躍できる」のは、ほんの一握りの天性に恵まれた選手だけでしかない。そうした「天才たち」を除けば、シアトルがメジャーに上げてきたマイク・ズニーノじゃないが、きちんと指導も育成もしないまま、メジャーでゲームだけ経験させれば使い物になるというものでもない。

ちょっと使ってみました。壊れました。バイバイ。
それじゃ、寂しすぎる。

damejima at 02:42

May 25, 2013

まずはア・リーグ各チームの2013年5月の「ボールを振る率とスイング率との比例関係」を示すグラフを見てもらおう。

ボールを振る率とスイング率の関係

ア・リーグの各チームについて、横軸に「ゾーン外をスイングする率」(O-Swing%)、縦軸に「スイングする率」(Swing%)をとってある。
右下にも、左上にも、該当チームがない。このことは、チームの 「スイング率」 と 「ボールを振る率」、2つの事象の間の比例関係に、ほとんど「例外」がないことを意味している。線形近似の決定指数でみても、0.8681と、そこそこ高い。
(ただ、そのうち書くつもりだが、この0.8681程度の数字では、けして「両者の相関が完璧」なんて意味にはならない。完璧とまで言えるのは0.95くらいの高い数値にならないと無理)

こうしたことから、チーム単位でみると、「スイング率」 は 「ボール球を振る率」にほぼほぼ比例していることがわかる。
(ちなみに、チームごとのスイング率の差なんてものは、ほんのわずかな数字に過ぎないのは確かだ。だが、野球というのは「ほんのわずかな初期値の差が、結果の非常に大きな差になって表れるカオス的スポーツ」である。チーム間のほんのわずかな差を「有意」ととらえるかどうかは、人による)
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年11月9日、2012オクトーバー・ブック WS Game 4でフィル・コークが打たれた決勝タイムリーを準備した、イチローの『球速測定後ホームラン』 による『バルベルデ潰し』。


と、こんな話を聞かされると、
俗説を信じたまま野球を見ている大半の人は、
すぐこんなことを考えてしまう。

ボール球を振らないチームほど、スイング率が低いんだな。
じゃあ、無駄にボール球に手を出さないチームはやっぱり、ストライクをしっかりスイングしてるってわけだな


まったく笑える(笑)
頭は生きているうちに使え。

得点とOPSの相関数値を調べた程度のくせして、「OPSで得点の大半を説明できる」だのなんだの、腹を抱えて笑える俗説を打ちたてて自信満々になっていたくせに、OPSのデタラメさが明らかになっても自説を曲げる気配のない、どうしようもないOPS馬鹿とソックリな俗説が、ここにもある。

「ボール球を振らないチームは、選球眼がいいから、必然的にストライクを振る。だから打撃成績もいいはず」という俗説を信じてやまない人たちの考え方を、もうちょっとリクツっぽい話に直すと、たぶんこんなところだろう。

野球の投球は、「ボール」と「ストライク」、2つの相互に排他的な(あるいは独立した)ファクターから成り立っている。
だから、もし「ボール球をスイングする率」が、他チームより低い「ボールを振らないチーム」では、自動的に「ストライクを振る率」が高くなって、打撃成績も向上しているはずだ。


スジが通っている?
とんでもない(笑)

最初に挙げたグラフは、『チームにおけるスイング率』という事象が、『ボール球をスイングする』という事象との間に、そこそこの相関関係がある、という意味だ。

では、
その相関関係は、『ストライクをスイングするという事象』に影響して、その確率を押し上げるか?
いいかえると、「他チームよりボールをスイングしないチームは、他のチームよりストライクを多くスイングする」という仮説は妥当か?

結論など言うまでもない。
もちろん、正解は "No" だ。
理屈で説明するより、グラフで見たほうが説明が早い。

ア・リーグ2013年5月の「ボールを振る率とスイング率の比例関係」
ストライクを振る率とスイング率との関係


2つのグラフを見比べるといい。

ひとつの例外もなく、
上の「スイング率とボールを振る率の関係図」で、「左下」にあるチームは、下の「スイング率とストライクを振る率の関係を表わす図」においても、「左下」にある。

同じように、上の図で「真ん中」あたりにあるチーム、「右上」にあるチームは、下の図でも同じように「真ん中」「右上」にある。


つまり、こういうことだ。

結論

2つのグラフにおいて、あらゆるチームの位置は同じような位置にある。

このことから、チームごとのスイング率、つまり、それぞれのチームの「スイングしたがる度合い」というものは、実は、「ボール球を振る率」で決まるわけではない。「スイング率」と「ボール球をスイングする率」の相関係数がどれだけ高かろうと、なんだろうと、関係ない。

平たく言い直せば、
スイングしたがるチームは、
ボールも、ストライクも、両方振る。
スイングを抑制しているチームは、
ボールも、ストライクも、両方振らない。

ただ、それだけの話。


「OPS」と「得点」、たった2つの事柄の間の相関数字を調べただけで、野球すべてを説明できたようなつもりになっていたOPS馬鹿たちがやってきた間違いと同じ単細胞なミスが、ここにもある。
OPS馬鹿は、得点とOPSの単純な関係を調べただけで、指標として意味があると勝手に思い込んでいるわけだが、この場合、たとえ「ボール球をスイングする率」と「スイング率」との間に、ある程度高い相関関係がみられたからといっても、そのたったひとつの断片的な判定だけで、「スイング率を決定しているのは、ボールをスイングする率である」と断言できたりはしないのである。

ちなみに、野球の投球はたしかに「ストライク」と「ボール」の2つに分類される。だが、細かく言えば、この2つの現象が、相互に排他的な事象(Mutually exclusive events)であるか、あるいは独立な事象(Independent events)であると断定して扱っていいかかどうかを、単純に断言することなど、できない。
というのは、例えば「打者有利なカウントにあるバッターにとって、ボールの投球が、ストライク以上に『次の球をスイングする誘因』になっていること」は誰が考えても明らか、だからだ。
例えば、カウント2-0になったら、バッターは次の球を非常にスイングしたがる。だから、わざとボールを2球投げてカウント2-0にしておいて、次の球を「ほんの少し動くストレート系」を投げて、打者をゴロアウトにする配球術も、現実にMLBには存在する。
この「カウント2-0」の例にみられるように、「ボールとストライクとは、相互に排他的な存在とみなしてもいい」と単純に考えるのは、あまりにも野球知らずというものだ。

野球のボールとストライクは、コインの裏と表とは性質が全く違う。

野球というスポーツは、『カウント』や『配球』によってシチュエーションがめまぐるしく変化するところに面白みがある。
だから、現実の野球に存在するさまざまなケースで考慮すれば、ボールとストライクとは無関係どころか、むしろ「あまりにも密接な関連さえ、ありうる」と考えないかぎり、現実の野球にまったく近づけないとさえ、言える。そうでなければ、配球なんてものを考える意味がない。


ちょっと話が横道にそれた。
たとえ野球の投球が「ボール」(事象A)と「ストライク」(事象B)の2つだけで出来ていて、「スイング」という行為と「ボールを振る」行為との間にそこそこ強い相関関係がみられたからといって、「ボールを振らなければ、そのチームのストライクを振る率は上昇する」とか、「ボールを振らないチームは、他のどんなチームよりストライクを振っているから強い」などと断言できる根拠など、実はどこにもないのである。
チームとして、「『スイング率』と『ボールを振る率』との相関関係が高いこと」は、けして「その相関関係が、『スイング率』と『ストライクを振る率』を左右する」ということを意味しない。


こうした俗説はどんな思考プロセスから生まれてくるのか。
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野球ファンは、日頃から『ボール』と『ストライク』という2つの事象を、ついつい、相互に排他的な事象(あるいは独立した事象)と考えるクセが身についてしまっている。
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そこに、「ボールを振る打者は、選球眼が悪い」という、野球ファン特有の古い道徳が加わると、いつのまにか、「ボールを振ることと、ストライクを振ること、これら2つの現象の間には、どちらかが上がれば、どちらかが下がるというようなパレート最適的関係がある」という思い込みが生まれる。
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さらにそこに「ボールを振る率と、全体のスイング率とは、相関関係にある」なんてデータを提示されると、どうなるか。
自分の脳内で、「ボールを振らないと、スイングが減る。だから、ストライクを振る率は上がるから、打てるようになるに決まっている」と無意識に思い込んでしまう。


「ボールを振らないで我慢していれば、カウントは、より打者有利になる。だからボールを振らなければ必然的に、よりストライクだけを振れるから、いい打撃成績になる」と、常識的な視点から反論したがる人が出現するかもしれないので、あらかじめ言っておくが(笑)、そんなのはただの俗説だ。

例えば、ア・リーグで最もスイングしないチームであると同時に、ア・リーグで最も打てないチームでもあるシアトル・マリナーズのスイングデータを見ればわかる。
シアトルマリナーズという打撃不振のチームは、他のスイングしない系のチームに比べ、よりボール球をスイングし、よりストライクを振らない。
つまり、このチームの打者は、「ただただ打席で縮みあがって、萎縮していて、バットが振れないだけ」だ(笑)スイングを抑制することは、選球眼の向上を意味しないし、チームの打撃成績の向上も意味しない。


ストライクをフルスイングすることだけがヒットを打つ道であり、ボールを振らないことが四球を選ぶことであり正義だ、などという、何の根拠のない思い込みだけで勝手に作り上げた野球道徳をたよりにモノを言いたがるアホウな人間は実に多い。
だが、才能と、体格と、給料と、素晴らしい施設とスタッフに恵まれたメジャーリーガーでさえ実現できないことを、誰かれ問わず押し付けたがる人間が振り回す、その無根拠な断定的ロジックの土台は、実は、こんなにもいい加減な俗説でできているのである。


ア・リーグの「2つのスイング傾向」でわかる
「MLBの2種類の野球」の存在
2つのスイングスタイル

ちなみに、このグラフで赤い楕円で示したように、ア・リーグの野球には大まかに分けて2種類の野球がある。

スイングしたがるチーム
LAA、KC、CHW、HOS、DET、NYY、BAL
スイングを抑制したがるチーム
TOR、MIN、BOS、TEX、SEA、CLE、TB、OAK

この2つのグルーピング結果がかなり面白いのは、ゲーム結果がある程度予測できることだ。
例えば、アナハイムとカンザスシティの対戦があるとすれば、どちらもア・リーグ屈指の「スイングしたがりチーム」なわけだから、必然的に打ち合いの空中戦になる、と予測が立つわけだ。

また、今年ア・リーグ中地区でクリーブランドが強いわけだが、今年のCLEはかつてのような大味な野球ではなくて、細かい野球をやり出していることが、このグラフでハッキリした。
同じ中地区のデトロイトは、ア・リーグ屈指の「ボールを振らず、ストライクを振ってくるチーム」だが、けしてスイング抑制系のチームカラーではない。
シアトル、クリーブランド、タンパベイ、オークランドの4チームのスイング率は似たようなものだ。だから、「チームカラーが似ているはず」と思うかもしれないが、ストライクをスイングする率はオークランドが飛びぬけている。ずっと貧打と言われ続けてきたオークランドだが、このデータから今年のオークランドが「いやに打てている」という直観が、単なる偶然ではないことが、よくわかる。
ア・リーグ西地区は、スイングしたがるアナハイム、ヒューストンと、スイングを控えるオークランド、テキサス、シアトルの構成だが、明らかにオークランドとテキサスが頭2つくらい抜けていることは、このグラフだけでわかるというスグレモノだ。

ちなみにヤンキースだが、あらゆる意味で「中庸」といえる位置にある。めちゃくちゃにスイングするわけでもなく、かといって、ボールを見逃して出塁することに命をかけているわけでもない。
だからこそ、今のヤンキースは攻守のバランスで首位を保っているチームなのであって、このチームを「スラッガーの集まった打撃型のチームとみなして語る」ことになど、何の意味もない。あるわけがない。


こんな、たったこれだけのわずかな差が、チームカラーと、チームの打撃効率、ひいてはチームの予算効率を左右するのが、野球というスポーツの繊細さだ。

damejima at 10:31

June 22, 2012

Arizona WildcatsArizona Wildcats
Arizona Wildcats baseball - Wikipedia, the free encyclopedia

2012カレッジ・ワールドシリーズ(以下CWSと略)は、アリゾナが、優勝候補のひとつフロリダ州立を破って決勝進出を決めた。アリゾナの決勝進出はこれが7回目。これまでの6回の決勝進出では、半分の3回で優勝している(1976、1980、1986)ように、ここぞという大勝負に滅法強い。
NCAA Division I Baseball Championship Bracket - NCAA.com


アリゾナが属するPac-12の大学で、CWS本戦出場8校を選ぶ16校のスーパーリージョナルに出場できたのは、アリゾナUCLAオレゴンスタンフォード
このうち、全米ドラフトで全体1位指名が確実と言われ続けてきたMark Appel (実際には全米8位でピッツバーグ)のスタンフォードは、CWS直前の不調そのままにフロリダ州立に敗れ、本戦には出られなかった。
だが、同じPac-12のアリゾナが、Bracket 1でフロリダ州立を2度破って決勝進出を果たし、スタンフォードのリベンジを果たした格好になった。

アリゾナは、CWS直前、5月29日現在のランキングでは、NCAAでも、Baseball Americaでも、ベスト8には含まれていなかった。
それでも、決勝進出を果たすあたり、けしてマグレではなく、今年のPac-12は近年になくレベルが高かったといえるだろう。

Pac-12 ロゴ

Pac-12とか、ロングビーチ、フラートンなどが属すBig West等、太平洋岸のカンファレンスに属する大学は、かつては優勝常連校が揃っていたが、このところ、サウスカロライナ、フロリダ、アーカンソー、ルイジアナなどのSEC(Southeastern Conference)や、ノースカロライナ、フロリダ州立、ヴァージニアなどのACC(Atlantic Coast Conference)といった、大西洋岸のカンファレンスに押されっぱなしなイメージが続いていただけに、Pac-12のアリゾナが、ACCのフロリダ州立を連破しての決勝進出は、太平洋岸のカレッジベースボールファンにとって非常に喜ばしいニュースだろう。


Trevor Hoffmanどこをどうすると、こんなに足を上げられるのか(笑) 

ちなみに、アリゾナ大学出身のMLBプレーヤーといえば、ケニー・ロフトンというより、やはり、トレバー・ホフマンだ。
2010年9月8日セントルイス戦で、メジャー史上初の通算600セーブを達成。メジャー最多記録だった通算601セーブこそ、2011年9月19日ミネソタ戦で通算602セーブ目を挙げたマリアーノ・リベラ(現在の記録は608セーブ)に抜かれてしまったものの、MLBで最初に600セーブを記録したという金字塔は、永遠に誰にも抜くことのできない大記録だ。

トレバー・ホフマンの「ビッシュ・ツイスト」

トレバー・ホフマンの投球フォームは、踏み出した左足が真っ直ぐホームプレート方向を向く
これは、このブログで何度となく書いてきた「前ステップ」、つまり、「踏み出し足を一度も三塁側に蹴り出すことなく、ホームプレートに真っ直ぐ踏み出して投げる」、典型的なメジャー流の投球フォームである。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:ピッチャーの投球フォーム(日米比較)

damejima at 12:46

April 10, 2012

 
2012年4月9日 デビュー登板のダルビッシュのフォーム

これは、メジャー初登板時のダルビッシュのピッチングフォーム。初回に2番アックリーを三振に仕留めた場面。
Baseball Video Highlights & Clips | SEA@TEX: Darvish records his first career strikeout - Video | MLB.com: Multimedia(MLB公式動画)

左から2番目の写真
明らかに、このブログでいう「蹴り出し動作」をやっている。

一番右の写真
ホームプレートに踏み出した左足が「まっすぐホームプレート方向を向くのではなく、サード側に向いたまま」、「横向きに踏み出し」ている。これは「横ステップ」であって、2011年のフォームである「ビッシュ・ツイスト」の特徴のひとつである「前ステップ」ではない。上半身のひねりの効果が薄い。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月23日、昔のダルビッシュと、今のダルビッシュ、どこが、どういう意味で違うのか。ノーラン・ライアン、松坂と比べながら、考える。


MLBのレジェンドとして新人に格の違いを見せつけた
イチローの3安打

http://wapc.mlb.com/play?content_id=20494261



今年3月半ばに、ダルビッシュの渡米以降の投球フォームが「ビッシュ・ツイスト」しないフォームであることを指摘したが、あの段階からフォームがほとんど変化していない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年3月16日、上半身と下半身の動きが揃ってしまい、「ビッシュ・ツイスト」しないクリーブランド戦のダルビッシュのフォーム。
松坂投手そっくりの、左足のサード側への「蹴り出し動作」が、ハッキリと見てとれるが、蹴り出し動作の際に、不自然に爪先を曲げているのが、なんとも不恰好だ。
フォームもピッチング内容も、四球を連発してランナーを貯めては、タイムリーを打たれる松坂投手の悪いときにそっくり。これではいけないと思う。


より細かいことで言えば、左バッターへの配球が単調すぎる。アウトコースよりの2シームが来ることは、ほとんどの左バッターがわかって狙っていたはず。
また、ストレート系が得意なカイル・シーガーに2シームをタイムリーされた次の打席でも2シームを打たれるようなことも、いただけない。

ツイッターでも言ったことだが、投手が配球の主導権を握るMLBでは、投手に学習能力や打者のスカウティング能力がないと生き残れない。

せっかく2011年に、日本のプロ野球に在籍していながらメジャー仕様(=「ビッシュツイスト」)に改造することに成功していたダルビッシュの投球フォームは、テキサスに移籍したとたん、なぜか逆に、「MLB仕様に改造する前の、プロ野球風の日本式フォーム」に回帰してしまっている。これでは、逆戻りだ。
なぜこういう「先祖帰り」が起きるのか、理解に苦しむ。まるで、「外国に憧れて海外旅行に行ったにもかかわらず、海外に行ったら、どういうわけか日本食ばかり食べている気弱な旅行者」みたいな感じだ。


日本での蹴り出し動作「あり」のダルビッシュ(下)と、
蹴り出し動作「なし」のダルビッシュ(上)


ダルビッシュ分解写真(改)


松坂投手のフォーム(足をショート側に向ける瞬間)松坂投手の特徴のひとつである
「サード側への蹴り出し動作」


ダルビッシュが日ハム在籍時にメジャー仕様フォームとして開拓したと思われる「ビッシュ・ツイスト」においては、上半身は打者に背番号が向くほどひねっている状態なのに、下半身はホームプレートにまっすぐ「前ステップ」できていた。
以下、一番上の日本ハム時代のMLBスタイルの「ビッシュ・ツイスト」と、残り3枚の写真をよく見比べてもらいたい。今のダルビッシュが、いかに力感とまとまりがないか、わかると思う。


日本ハム時代の「ビッシュ・ツイスト
踏み出した左足のつま先が、綺麗にホームプレート方向を向いている。だが、上半身は後ろにわずかに体重を残しつつ、ひねったままを維持しているため、ここから腕を思い切り振ってボールを投げると、非常に大きなパワーが生み出される。

日本ハム時代の「ビッシュ・ツイスト」


渡米直後のブルペン

「ビッシュ・ツイスト」してないダルビッシュ(ブルペン)


3月13日 スプリング・トレーニング インディアンス戦

「ビッシュ・ツイスト」してないダルビッシュ(インディアンス戦)


4月9日 MLBデビュー登板 シアトル戦 in アーリントン

2012年4月9日 MLBデビュー登板のダルビッシュ


damejima at 14:47

April 19, 2011

ボストン・マラソンへの配慮から変則的な午前中のゲームになった今日のボストン対トロント戦で、最近不調だった松坂投手が7回1安打という素晴らしいピッチングをみせ、今シーズン初勝利をやっとものにした。
Toronto Blue Jays at Boston Red Sox - April 18, 2011 | MLB.com Classic

Top Plays | TOR@BOS: Dice-K dazzles through seven one-hit frames - Video | redsox.com: Multimedia

今日の松阪投手の投球フォームが公式サイトに挙がっていたので、それを分解写真に加工しなおして、過去のフォームと比べてみることにした。
過去のフォームは野球上達テクニック集  松坂大輔 -投球フォーム連続写真-)から拝借した。感謝したい。
比較しやすいように、拝借した写真のカットとほぼ同じ場面を並べるのに非常に苦労した。


まず、下が今日の松坂のフォームワインドアップだ。先にいっておくと、赤線で囲った部分に、過去のフォームとの違いが集中している。
2011年4月18日 松阪投手のピッチングフォーム


かつての松坂投手のフォーム
こちらは昔の松阪のフォーム。元記事の投稿日時から推定すると、2008年以前のフォームと思われる。
残念ながら、こちらはワインドアップではなく、セットポジションなため、神経質なことを言えば、上のワインドアップの分解写真とは厳密には比較できない。いちおう留意してもらいたい。


セットとワインドアップの違いはあるが、2つのフォームの違いをどう感じるだろうか。かなり変わったと感じる人、ほとんど変わらないと感じる人、野球観は人それぞれあるわけだから、いろいろな意見があっていい。

いちおうブログ主が感じる「2つのフォームの違い」を、2つばかり挙げておこう。赤い線で囲んだ「上段、左から4番目の画像」を注目してもらいたい。

1) グラブ位置
昔よりグラブ位置が高くなり、ホームプレートに向かってグラブをグイっと突き出す形になった。クリフ・リーの投球フォームがまさにこの「グラブを突き出すフォーム」だ。また、フォーム全体の流れの中で、左手の始動するタイミングが、昔より早くなっていて、左手の使い方を変えようとしていることが見てとれる。

2) 体幹の角度
昔のフォームでは、体幹がかなり前傾していて、「前かがみ」になっている。対して、今日の松坂は体幹がやや「立ち気味」になっている。たぶんホームプレート方向の視界はこのほうが確保しやすい。



総じて言うと、最近の記事でも指摘したことだが、たぶん松坂投手はもっと体幹をまっすぐ立てて、グラブ側の手を使うタイミングを変えるなどの改善を加えるなどして、もっとMLBっぽい投球フォームにフォーム改造していこうとしているのではないか、と思っている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月15日、Sam Holbrookの特殊なストライクゾーンに手こずったジェイソン・バルガス。

もちろん、それが成功しつつあるかどうかは、たった1日だけの登板ではなんともいえないわけだが、フォームだけからみると、ボールをリリースした後にまったく右足が上がらない躍動感の無さや、何度も指摘している「やじろべえ」の傾きが傾いたまま垂直に直ってはいないこともあるので、ブログ主としては、まだまだ根本的な改善とはちょっといえないと考える。








damejima at 11:54

April 16, 2011

ジェイソン・バルガスは、今シーズン2度目の登板だった4月8日のホームゲームで、シアトルがもともと苦手にしてきたクリーブランドにボコボコにされてしまったわけだが、まぁ、あのゲームは、ジャック・ウィルソンがあんな馬鹿な事件を起こした直後でもあったからしかたがない。
次の登板では6回2/3を1失点と、きっちり立て直してきた。


4月8日のゲームでまずかったのは、シアトルバッテリーが球審Sam Holbrookの特徴をよく理解していなかったことだろう。
このゲームの球審Sam Holbrookのストライクゾーンは非常に特徴があって、ゾーンが非常に狭くて、さらに、極端に高めのストライクをとる傾向がある。
このゲームでバルガスは最初低めのコーナーをついて打者をうちとろうとしていたが、このアンパイアを相手にそれはそもそも無理なピッチングコンセプトだった。


MLB関連の有名サイトであるHardball Timesは、2007年11月に「ルールブック上のストライクゾーンとあまりにも異なるストライクゾーンでコールするアンパイア」について記事を書いているが、Sam Holbrookの名前は、この記事の数々のランキングに名前が登場している。
Hardball Times:A zone of their own
最もストライクゾーンが小さい 6位
最も低目をとらない 3位
最も高めをとる  5位


データで見るSam Holbrookのストライクゾーンは非常に特殊だ。
以前何度か記事にしたように、(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年11月8日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (4)特徴ある4人のアンパイアのストライクゾーンをグラフ化してみる(付録テンプレつき))MLBのアンパイアにはいくつかのタイプがあって、びっくりするくらいストライクゾーンが違うものだが、それにしたってSam Holbrookほどストライクゾーンが高めにシフトしているアンパイアは、ほとんど他に例をみない。

サム・ホルブルックの非常に風変わりなストライクゾーン
赤色の線がルールブック上のストライクゾーン。
青色の線が、Sam Holbrook。左がレフト側、右がライト側。


最近、下記の記事で、最近のダルビッシュのフォームが、だんだんノーラン・ライアンというか、MLB的な「前ステップする投球フォーム」になってきていること、そして比較対象として、松坂のフォームが日本的な「横ステップする投球フォーム」であること、を書いた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月24日、「やじろべえ」の面白さにハマる。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月23日、昔のダルビッシュと、今のダルビッシュ、どこが、どういう意味で違うのか。ノーラン・ライアン、松坂と比べながら、考える。


MLB的な「前ステップ」。そして日本的な「横ステップ」。

ジェイソン・バルガスのピッチングフォームはどちらだろう。
言うまでもないことだが、バルガスは典型的なMLB的「前ステップのフォーム」の投手だ。バルガスは身体の重心バランスを示す「やじろべえ」の形がまっすぐに立っている。だから、ややもすると球威が不足するが低目をつくコントロールに安定感がある。

前ステップする投手は、「上半身のヒネリ」をしっかり使うことで球威不足を補うことは既に書いた(ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月25日、ノーラン・ライアンを思わせる「前ステップ」をみせる大阪ガスの松永昂大投手。高校からプロになった投手と、大学を経由した投手とのフォームの違い。
バルガスは、「下半身がホームプレートをまっすぐ向いて」いても、「上半身はまだ後ろ向きに残って」いて、全体として身体全体に強いヒネリが加わっている。この「ヒネリ」が球威不足を補う。ダルビッシュについて書いたことと同じだ。

ジェイソン・バルガスのピッチング・フォーム


体の「ヒネリ」という点について、もう少し書く。

松坂投手が先日登板したゲームのフォームを写真で見たが、ちょっと気になったことがあって、名投手サンディ・コーファクスと比べてみた。
グラブの位置に注目して見てみてもらいたい。

2011年版の松坂投手のフォーム松坂のグラブの位置は、腰の位置

サンディ・コーファクスサンディ・コーファクスのグラブ位置は、体の前方。

Sandy Koufaxのピッチングフォーム

松坂とサンディ・コーファクスを、ほぼ同じ位置でボールを持った写真で比較してみる。ちょっと興味深い。

松坂は、ボールをリリースするかなり前の、ホームプレートに踏み出す時点で、すでにグラブの左手は腰の位置にまで降りて来てしてしまっていて、ホームプレート側の左肩、左半身も、この段階でプレート方向に大きく開いて、打者から松阪投手の胸のチームロゴが見えてしまっている。
対して、サンディ・コーファクスは、グラブがプレート方向に突き出された状態でキープされ続けていることによって、右肩、右半身がファースト側を向いたままの状態が長く保たれ、開いていない。この特徴的な「グラブの突き出し」は、クリフ・リーにも全く同じことがいえる。


あくまでこれは想像でしかないが、松阪投手はこの開幕を前に「上半身にヒネリをきかすフォームに改造して、球威を増したい」と考えたのではないだろうか。
写真からして、胸を大きく張り、上半身にヒネリをきかせることで、なんとか球威を取り戻そうという意図が、なんとなく伝わってくるからだ。この試み自体は面白いとは思う。


だが、その意図は残念ながら成功していない。
なぜなら、根本的な部分のフォーム変更、つまり「横ステップ」から「前ステップ」への変更が着手されていないからだ。

松阪投手は見た目には、いかにも上半身をヒネって投げている、という風に見える。
だが実際には、サンディ・コーファクスとグラブ位置が大きく違うことからわかるように、ボールのリリースにいくタイミングのだいぶ前に、上半身からヒネリの効果が消えてなくなってしまっている。なんと表現すればいいかよくわからないが、「ヒネリ」がフォームの早い段階で消費され尽くしてしまい、上半身に貯金がほとんど残ってない。
そのため、いくら胸を張って投げたとしても、立ち投げ系のフォームのパワーの供給源である「上半身のヒネリ」がまったく効いてこない。

対して、サンディ・コーファクスは、上半身ができるだけホームプレート方向に向かないように、上半身がプレート方向に回転していくのを故意に遅らせている。だから、右足がプレート側にステップして、下半身がプレート側に向いた段階でも、上半身は長い時間ファースト側を向いている。
そのことで、「ホームプレートに向いた下半身」と、「ファースト側に向いた上半身」との方向に「差」ができる。この「差」、つまり「上半身のヒネリ」が長い時間維持されることで、ボールにウェイトがのり、また、打者からはボールが非常に遅れてリリースされてくるように見える。
こうしたサンディ・コーファクスの特徴は、MLBの同じタイプ、つまり「やじろべえが立ったまま投げるタイプ」の投手に共通して見られる特徴だ。


松阪投手の努力そのものには大きな敬意を表したい。この改造はまだ発展途上だから、しばらくは結果が出ないと思うが、MLB的な投球フォームに改造していく試みが成功することを祈りたい。








damejima at 23:08

March 26, 2011

最近のダルビッシュのフォームが、松坂投手のように、まず「蹴り出し動作」(=上げた左足を、いったん後方に蹴り出す投球動作。右投手の松坂はおおむねショートの守備位置方向)をまず行った後に、自分の左横の方向にホームプレートを見るイメージで、プレート方向へ横ステップして体重移動していく、「未完成なやじろべえ的 横ステップスタイル」ではなくて、「上げた左足を、そのままスッと下に降ろし」、「自分の上半身のひねりは、十分すぎるほど保ったまま」、「ホームプレートを自分のより正面に見るイメージで、いきなり踏み込んでいく」ような「ノーランライアン風、前ステップスタイル」に近づいてきていることについて、ちょっと書いた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年3月23日、昔のダルビッシュと、今のダルビッシュ、どこが、どういう意味で違うのか。ノーラン・ライアン、松坂と比べながら、考える。


日本の投手で、ノーラン・ライアンや、今のダルビッシュばりに、「蹴り出し動作が少なく、プレート方向にスッと足を下ろすフォーム」の投手がいないものかと、ネット上の画像をいろいろ探していたら、ちょうどよさそうな例がひとり見つかった。

松永昂大(まつなが たかひろ)投手。大阪ガス。

高松商業、関西国際大学の出身で、大学3年のときに阪神大学野球の2季連続MVPを獲得。プロ入りが期待されながら、ご本人の希望で社会人の大阪ガスに行った逸材。

写真で見比べてみてもらいたい。
ノーラン・ライアンは、6フィート2インチ(約188cm)ある背の高い右腕だが(とはいっても、最近のMLBでは2m以上ある投手がゴロゴロいたりするわけが)、松永昂大投手は173cm70kgの小柄な左腕で、2人の体格に違いはある。だが、ホームプレートに踏み込んでいくときの姿形はそっくりだ。
サイドスロー気味に投げる松永投手は、関西の学校出身の左腕ということもあって、元阪神の左腕のセットアッパーで、左バッターに投げるクロスファイアーで一世を風靡したジェフ・ウィリアムスの再来などとも言われるようだ。

彼の将来についてブログ主は、フォームが日本での指導で小さくまとまっていってしまい、プロ野球でセットアッパーとして酷使されていくより、いっそ、メジャーに直接チャレンジして、もっと上半身のひねりをきかせるか、胸の張りをもっときかせた躍動感のあるフォームにチャレンジしてみてはどうだろうか、などと思う。

松永昂大投手(大阪ガス)松永昂大投手(大阪ガス)の大学時代の投球フォーム

出典:【硬式野球部】松永昂大投手が2季連続MVP(阪神大学野球秋季リーグ)|関西国際大学

ノーラン・ライアンの投球フォームノーラン・ライアンの
投球フォーム

松永投手は、肩関節の柔軟性が足りないのかもしれないが、もう少し両肘を高くすると、もっとノーラン・ライアン風になる。やはり見比べると、ノーラン・ライアンのほうがずっと躍動感がある。


ちなみに、日本人投手のうち、「蹴り出し動作」があまりみられない投手というと、関西国際大学出身の松永昂大投手のほかに、たとえば斉藤隆投手(東北高校→東北福祉大学)、黒田博樹投手(上宮高校→専修大学)がいて、いずれもMLBの現役投手だ。NPBでは、藤井秀悟投手(今治西高校→早稲田大学)が、比較的蹴り出しが少ないようにみえる。

逆に、「蹴り出し動作」が非常に強くみられるのは、なんといっても、今後MLB移籍を目指すと思われる楽天の岩隈久志投手(堀越高校出身)が筆頭だろう。岩隈投手は松坂投手以上に、誰よりも強い「蹴り出し動作」がみられる独特のフォームで投げる。
ほかに田中将大投手(駒大附属苫小牧高校出身)、前田健太投手(PL学園出身)などにも、岩隈ほどではないが、「蹴り出し動作」がみられる。

岩隈投手のフォームクーニンスポーツさんから拝借し、加工。
これほどハッキリ後方に足を蹴り出す投手はそうそういない。


いくつか例を眺めてみると、大学出身の投手たちに「蹴り出し動作」があまりみられないのに対して、高校卒業後すぐにプロになった投手たちには「蹴り出し動作」が強くみられる、という傾向があるようにも見える。
これが日本の野球選手全体にいえるのかどうか、正確なことはわからないが、もしかすると日本の野球指導者の中で、とりわけ高校野球の指導者が投手をコーチするときのベースになっているピッチング・フォームが、「後方への蹴り出し動作」や、プレートに対して体を横に向けたまま倒していくイメージの体重移動を基本にしているために、こうした、高校を卒業してすぐにプロになった投手と、大学出身の投手との投球フォームの違い、という現象が起きている要因なのかもしれない。

前にステップする松永昂大投手プレート方向に「前ステップ」する松永昂大投手。
両肩を結んだラインが水平をキープ。人体の「やじろべえ」の形状に傾斜をつけない水平なフォームなだけに安定しているだろう。ただ、クリフ・リーのように大きく胸を張ってないし、ダルビッシュのような「上半身の強烈なひねり」も加わってない平凡な前ステップだけに、球威に問題があるかもしれない。


横にステップする松坂投手「蹴り出し動作」の後、
横ステップ」する松坂投手。
人体の「やじろべえ」形状を大きく傾斜させ、両肩を結ぶラインは地面に対して大きく傾斜する。体が大きくセカンド方向に傾く分だけ、重心位置がわずかながら上昇するから、力学的には不安定要素は増えやすい(その分だけ、体全体を回転させる運動は容易になる) そのため、ボールを持った右手とグラブを持った左手、両腕を左右に大きく広げることで、「やじろべえ」でいうと「腕を長くする」ような安定化対策なども必要になる。また、グラブを少し重いものにしてみるのも、もしかしたら「やじろべえ」のバランスを安定させる効果があるかもしれない。


と、なると、東北高校を卒業してプロに入ったダルビッシュが、自分の投球フォームから「蹴り出し」を無くしていったのは、プロになったばかりの時期にあった「高校生特有の投球フォーム」、つまり「後方への蹴り出しの強い、高校からプロに入った投手たち特有のフォーム」を、この数年で改造し、より進化させていっている、とでもいうことになる。
さすがダルビッシュ。






damejima at 06:03

March 25, 2011

前の記事で書いた松坂投手の投法だが、何の物理学的知識もないクセに、今の時点では「不完全で、未完成な、やじろべえ方式」なのではないか、と、勝手に思いだして、いま「やじろべえ」にハマりだしている(笑)
また「やじろべえ」とか「振り子」は、地震はもちろん、柔軟で安定した防災システムにもたぶん大いに関係がある。


鉄道車両に「振り子式車両」という、通過速度の向上と乗り心地の改善を狙った技術がある。
ブログ主は、いわゆる「鉄ちゃん」ではないため(笑)、よくはわからないのだが、できたばかりの頃、「単純に傾くだけだった」振り子式車両は乗り物酔いを起こす欠点を持っていたようで、背骨で内臓を錘(おもり)にして「やじろべえ方式」に支える人体もまた、左右への体重移動だけで簡単にコントロールできたりはしないのではないか、と、今の時点では思っているわけだ。
この「やじろべえと、人体、およびピッチングの関係の話」については、いつかただの好奇心としてだけでなく、きちんとした話にまとめられる日が来たらいいなと思う。
振り子式車両 - Wikipedia


下記の図は、大阪大学の2011年度大学院物理学科の入試問題に出題された「やじろべえ」だ。
大学院の、それも物理専門の入試に出題されるような複雑で高度なものを、頭に血が昇るのは誰よりも早いクセに、頭はけしてよくないブログ主が理解できるわけはないが(笑)、「やじろべえ」に内在している力学には、なにかしら「美」みたいなものが存在することは感じとれる。
大阪大学:過去の大学院入試問題
大阪大学2011年度大学院物理学科入試問題に出題された「やじろべえ」

こちらは、上記のリンク先の大学院入試問題を解いた人の描いた「傾いたやじろべえの状態」。回答を読んだが、難しくて、1行もわからない(笑)どうやら、単純にみえる「やじろべえ」には、非常に複雑で愉快な仕組みが隠れているらしい。野球と同じだ。
2011年度 大学院入試問題 物理学専攻解答 その1 - 〜なんとなく物理〜 - Yahoo!ブログ
大阪大学2011年度大学院入試問題を解いた人の書いた「やじろべえ」

問題の意味がさっぱりわからないブログ主だから、回答のほうの意味もさっぱりわからない(笑)が、「やじろべえ」は重心が支点より低い位置にあって、重心が支点と離れていることで安定していること、「傾いたやじろべえ」には、元の位置に復帰しようとする復元力が働くことは、あやしげな理解からなんとなくわかっている(笑)

上の、問題を解いた方の指摘で、「なるほど」と気づかされたのは、「傾いたやじろべえ」は、「傾くことで、重心位置がごくわずか上昇」して、「重心と支点の距離が、ごくわずかだが、接近する」という点だ。

支点と重心の位置の距離が近くなることは、「やじろべえ」にとって「不安定化」を意味する。支点と重心が重なると「やじろべえ」は「やじろべえ」でなくなる。これはよく飛ぶ紙飛行機をつくる原理と同じだ。
二足歩行するように進化してきた人体は、骨盤にささった位置にある背骨が、左右の内臓を錘(おもり)にして「やじろべえ方式」に支えるような力学的なしくみになっているらしいが、ブログ主の意見では、野球のピッチャーは、単純に「やじろべえ方式」に左右に体重を移動するだけのシステムでは、開発当初の振り子式車両が「お釣り」などさまざまな問題があったように、どうも「自分自身の力学的制御がうまくいかなくて、不安定になる部分が出てくる」のではないか。そんなことを思ったが、どうなのだろう。
人体の力学

横にステップする松坂投手横にステップする松坂投手

上に書いた大阪大学大学院の入試問題でわかるとおり、「やじろべえ」の形から横に傾くと、重心位置は「まっすぐ立った状態」よりもやや高くなり、重心が支点に近づくことで、やじろべえである人体は、わずかながら不安定化する。

一度でいいから、大学の物理の先生をとっつかまえて、死ぬほど野球の質問責めにしてみたいものだ(笑)


法隆寺などの五重塔などは、「やじろべえ」や「振り子」そのものではないが、さまざまな力学的な仕組みによって、ある種の柔構造を獲得することで、1000数百年の時を超え、壊れずにきたらしい。
資料:五重塔は耐震設計の教科書【プラント地震防災アソシエイツ】
野球とは関係ないが、津波の被害を防止するための防波堤とかの技術について、「やじろべえ」的に考えて思うのは、剛構造で、15メートルとか20メートルとか、ものすごく高くて硬いコンクリートの防波堤を作ったところで、所詮は人間の知恵、巨大津波のような自然の超越的パワーには勝てなかった、ということだ。

もし防波堤が硬いコンクリートではなくて、柔らかなシリコンでできていたらどうだったかな、などと妄想したくなった。
と、いうのも、三陸沖では、かつて100年ほど前にも巨大津波に襲われて、そのときも、今回同様の、2万2000人ほどの方が亡くなられているからだ。
明治三陸地震 - Wikipedia
100年という月日が経ち、数知れぬ人の努力、それも科学の発展初期によくある人生すべてを犠牲にするような献身的努力によって、日本の技術と科学と素材は格段に進歩してきた。
だが、やはり100年たっても、100年前とまるで同じように、2万人以上の人命が失われるのを防ぐことはできなかった。そのことに、ブログ主はある種の、言葉にできない感覚に襲われている。

科学に失望し、政治に失望して、ブルーになったのではない。
言葉にするのが非常に難しい。むしろ、ある種の「感銘」に近い。

100年たってもダメだったのは、技術の進歩がなかったからではなく、ぼくらの頭の中じゃないか。
1次災害の「地震」は、少しは予知もでき、家屋の全面的倒壊もなんとか防げるようになってきても、ぼくらの頭の中の構造はまだまだ「硬くできて」いて、2次災害の「津波」も、3次災害の「原発事故」も、4次災害の「電力不足」「帰宅難民」も「水不足」も、防げるようにはなってはいない、そういうことを知ったとき、ブログ主は、ただただ単純に「なるほどっ」と、膝を打ったのだ。
なぜだか失望はまったく感じない。むしろ、どういうわけか、まだまだやることだらけじゃないか、と、うれしくなる。

コチコチに硬い防波堤を作る、という発想は、ある意味の「硬い脳」から生まれてくる。津波や原子力のような、「人間の力をはるかに超越した自然界のパワー」を、力づくで封じ込めようとする発想だ。
だが、人の暮らしを守りたい、と思うのなら、「コンクリートの硬さ」だけではダメだ。そう思ったのである。別に、コンクリートの壁でなくて、シリコンでもいいのなら、ぷよんぷよん、ぽにょんぽにょんのシリコンでいい。
ブログ主はなんとなく、こういう気づきから、次の100年のライフスタイルが生まれはじめてきている気がする。


復興のためのスローガンについてだが、
「がんばる」は、やめてみようと思う。

なぜかというと、「がんばる」「がんばろう」というだけの発想は、いかにも「硬い、頑固なコンクリートのにおい」がするからだ。欝病の人に対する励ましの言葉で「がんばれ」は禁句だというが、災害で精神的に疲弊しきった沢山の人たちがいるにもかかわらず、こうも誰も彼もが「がんばろう」とか言い出すのでは、ちょっと気味が悪いし、工夫が無さ過ぎる。



できないとき、人は無理にがんばらなくていい。
たとえば、壊れ果てた故郷の土地にしがみついて命を落とし、健康をそこなうのではなく、モノがない、電気がないのなら西にでも一度逃げて、時期がきたら帰ったらいいし、そのまま、行った先の土地に住み着いて、その土地の土に、その土地の海のチリに還るのも、また人生だ。地盤沈下で使えない土地に無駄に再び大金を落とし必死になって元の町を復元しようとする頑固さばかりではなく、まったく新しい場所に新しい町をつくろうとする、そういうしなやかさもあっていい。

強い風に無理に抵抗しない、だが、けして屈しない。
そういう、しなやかさ。
それが、五重塔や、やじろべえ。
日本という、世界の東の果ての、小さい小さい場所で育まれた
美しい心の様(さま)である。






damejima at 15:01

March 24, 2011

工夫のない人ばかりが集まって、もめてばかりいる日本のプロ野球セ・リーグ開幕時期の問題について、もうちょっと書きたい気持ちがあって、いろいろと情報を追っていたのだが、馬鹿馬鹿しい主張ばかり聞かされて疲れきってしまった。

好きな野球のことなら、いくら考えても疲れない。むしろ、データを集めるにしてもなんにしても、むしろ楽しいくらいだが、こういう理屈の言い合いは別だ。
原因は、わかっている。お役所の大臣たち、球団オーナー、選手会、それぞれの発言は、細かくみていくと、それぞれがミスを犯しているからだ。
野球というビジネスの経済原理にそぐわないことを自粛という大義名分で平然と押し付けようとする大臣、本来は自分たちも被害者なのに世論を味方につけるのに失敗したまま自己主張しようとして二重に失敗しているオーナー、ガキくさい感傷的なことを平気で言い、水も電気もない真夏の厳しさを想定もせずダブルヘッダーも辞さないとかいってカッコつける選手会。
もうちょっとしたらまとめてはみるが、それぞれが、それぞれに自分の発言の落ち度を反省しなくてはいけない。

こういう出来の悪い屁理屈のコレクションから一度離れて、好きな野球の話に戻りたくなった。ちょっとダルビッシュの投球フォームのことでも書いて、気ばらししてみよう。

ダルビッシュ 体のヒネリ「ガニ股」豪腕
ダルビッシュ

これは最近のダルビッシュの投球フォーム。なんとまぁ、素晴らしく力強いフォームだろう。惚れ惚れする。
特徴的なのは、「左足」をホームプレート方向に踏み出しているのにもかかわらず、「上半身」が、「左足の向きとはまさに正反対」なこと。つまり、ダルビッシュは「プレートに背中を向けた状態を保ったまま、左足をホームプレート方向に踏み出せる」のである。
おそらく体を「故意に、強烈に、よじっている」のだ。


「左足の角度」だが、左膝の向きから察するに、ダルビッシュの左足のつま先はすでにプレート方向に向いて、両足の向きは多少「ガニ股っぽく」なっている。これは、一度、クリフ・リーと松坂投手の比較をしたとき引用したノーラン・ライアンに近い。

ノーラン・ライアンの投球フォームノーラン・ライアンの左足の角度
「ガニ股」な踏み出しで、
プレート方向を向いている

ボールを持った手は既にかなり高い位置にある

ホームプレートに踏み出すときノーラン・ライアンは、股関節を大きく開いて、はっきり「ガニ股」で踏み出していく。そのため、右足はサードを向いたままなのに、左足だけはホームプレートを向く。だから、左足と右足のつくる角度は、ちょうどアルファベットのTの字のように、90度の角度にかなり早い段階で開く。これは想像でしかないが、ノーラン・ライアンにとってのホームプレートは、普通の投手よりもずっと「自分の正面方向にプレートをイメージできる感じ」になっているはずだ。


ボストン松坂大輔投手のフォーム松坂投手の左足の角度
「内股」な踏み出しで、
三塁方向を向いている

ボールを持った手は、腰より下で「タメ」ている

一方、松坂投手は、写真のとおり、むしろ多少「内股な感じ」で踏み出していく。右足と左足がつくる角度は、カタカナのハの字程度というか、平行に近い。ボールへの体重の乗せ方は、ダルビッシュやノーラン・ライアンのように「ひねる」というより、蟹のように自分の体の横方向に向かって行う体重移動から発生する。横に向かって踏み出していくイメージだから、「やじろべえ」の原理よろしく、ボールを握った右手をあらかじめかなり低い位置に垂らして「タメ」をつくっておく必要があり、その下げた右肩を上げていきながら体重移動しつつ、ボールを握った手を上げていき、ボールに遠心力をつける。結局、松坂投手にとってのホームプレートは、ノーラン・ライアンと違って、「自分の左横方向にプレートがあるイメージ」になる、と思う。



こうしたダルビッシュ特有のフォームについては、こんな風に評論なさっている方がおられた。

「ダルビッシュのフォームには一つだけ欠点が有る。それはグラブ腕がフォロースルーで背中側に引かれる事だ。藤川球児のようにグラブ腕は最後まで胸の前に残らなければならない。グラブ腕が背中側に引かれるのは、投球腕を振る反作用がかかっているためで、言い換えれば、その反作用に抗しきれていない事を意味する。根本的な原因は脚の上げ方にあるのかも知れない。ダルビッシュの脚の上げ型は藤川球児より松坂に近い。」
トップハンド・トルク:ピッチング・守備

この「グラブ腕がフォロースルーで背中側に引かれる」という点について、ブログ主は、こんな風に考えてみた。

右投手が左足をプレートに向かってまっすぐスッと踏み下ろす、単にそれだけでは、ボールにまるでパワーが乗らず、球威が足りない。だから、ダルビッシュやノーラン・ライアンのように、「プレートにまっすぐ踏み出すが、それでも球威がある」という相反する事象を成立させるためには、「体をひねる」ことでボールにパワーを注入する必要がある
ノーラン・ライアンのフォームに「ひねる」という言葉をあてはめるならば、ダルビッシュのそれには「よじる」という言葉がふさわしい。
ダルビッシュがプレート方向に左足を踏み出した後も、打者側からはたぶんダルビッシュの背中が、かなりの長時間見えているのではないだろうか。それほど、彼のフォームには「強いひねり」が加わっている。
だから、その「ひねり」の結果として、「グラブを持ったほうの腕が、フォロースルーで背中側に強く引かれている」のだと思うのだ。

これはこれで、しかたがない、彼の個性だ。つまりあらかじめ上半身を強くねじっておき、投球動作の中で上体を強くひねり戻すプロセスで、グラブ側の腕が強く引かれることは、ダルビッシュの球威を生むメカニズムのひとつ、と、ブログ主は考える。
よほど体幹が強く、体が柔らかいのだろう。感心する。簡単に真似できることではない。


ダルビッシュが昔から、こういう「上半身にひねりを加えながら、まっすぐ踏み出す」フォームだったかというと、どうもそうではないようだ。その証拠を、とあるブログから拝借させていただいた。

ダルビッシュ分解写真(改)野球サイトPA日記:「Stop the World」 連続写真更新(と、コマの切り方)より引用

上の5コマと、下の5コマは、別々の日のダルビッシュ(たぶん下のほうが、より昔のフォーム)で、フォームが違う。違いは、上の画像で赤い線で囲った左から2コマ目の上下の画像(A)(B)にある。
上の左から2コマ目、(A)では、「上げた左足は、スッと下に降ろされている」のに対して、下の左から2コマ目(B)では、「上げた足は、一度後ろ(セカンド方向)に蹴りだしてから、前に伸びてくる」のである。
つまり昔のダルビッシュ(B)には「上げた足を、後ろに蹴り出す動作」が存在した

この昔のダルビッシュの「上げた足を、一度後ろに蹴り出してから、前に伸びてくる、昔のフォームの特徴」は、、これは、まさしく下記の記事で一度書いた松坂投手のフォームそのものである。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月26日、クリフ・リーの投球フォームが打ちづらい理由。「構えてから投げるまでが早くできている」メジャーの投球フォーム。メジャー移籍後のイチローが日本とはバッティングフォームを変えた理由。

松坂投手のフォーム(足をショート側に向ける瞬間)松坂投手は、左足を、ホームプレート方向に踏み出す前に、一度、自分の斜め後ろにあたる三遊間方向に向かって伸ばしている(左写真)
クリフ・リーにはこの「蹴り出し動作」が全くない。


前述のブログ(トップハンド・トルク:ピッチング・守備)の方も、
「ダルビッシュの脚の上げかたは、藤川球児より、松坂に近い。」
と、明確に指摘されておられる。
この記事の書かれたのは2009年3月だから、たぶんこの記事で指摘なさったのは、上の分解写真でいうところの「下の5コマ」、つまり「ちょっと前のダルビッシュ」だろう。
ならば、「松坂に近い足の動作をしていた、昔のダルビッシュ」、分解写真の指摘するダルビッシュのフォームの変化、このブログで松坂投手をクリフ・リーと比べた記事、すべてがツジツマがあう。


そんなわけで、ダルビッシュのフォームの変遷をちょっとまとめてみる。

かつてのダルビッシュの「上げた足の下ろし方」は、かつては、松坂投手そっくりの「後方蹴り出し型」だった。
それを近年「上げた足を、プレート方向にガニ股風にスッと下ろすノーラン・ライアン風」に修正し、その一方で、ダルビッシュ特有の「強くよじっておいて、打者にずっと背中を向けたままリリース動作に入るようなトルネード風のねじる上半身」がより強化され、球威を加えていった。


イチローのバッティングフォームが年々変わっていくことは有名だが、やはりプロの野球選手はたゆまぬ研鑽と変化がないと、一流でいつづけることは難しいのだ。

イチローのフォームの変遷MLBデビュー以降イチローのフォームの変遷
画像内に「今年」とあるのは、たぶん「2009年」の意味。画像はかつて某巨大掲示板でかつて流通していたものを拝借。


やっぱり野球のことを語るほうが、屁理屈こねるより、ぜんぜん楽しい(笑)いくら書いても疲れない。

いい加減、プロ野球を取り巻くおかしな屁理屈の山がマトモになって、盛大な開幕を迎えてほしいものだ。

damejima at 14:51

October 27, 2010



ブログ注:この動画の出典はESPNなわけだが、どうも元の動画は削除されたらしい。http://espn.go.com/video/clip?id=5728888


2010ワールドシリーズキューバ出身のHOF(ホール・オブ・フェイマー)、Tony Perezの息子、Eduardo Perezは、2006年にシアトルでプレーした後、引退して、同年からBaseball Tonightのアナリストをしているが、2010ワールドシリーズを前に、クリフ・リーと、ヤンキースのマーク・テシェイラアレックス・ロドリゲスとのポストシーズンでの対戦場面を引き合いに出しながら、クリフ・リーの投球フォームと、彼のボールの打ちにくさを関連づけて解説している。
Eduardo Perez Statistics and History - Baseball-Reference.com


Eduardo Perezの言いたいことを簡単にまとめると、クリフ・リーの手からボールが離れる瞬間になっても、打者たちは体重移動のきっかけをうまく作れないままスイングに入って、空振りしたり、あるいは見逃したりしている、ということになる。
たしかに打者が構えるタイミングがまったくあっていない。


ブログ主が思うに、クリフ・リーの投球フォームは、「右足を踏み込んでから、ボールをリリースするまでの一連の動作」が無駄がなく、それだけに、とても早い
ちなみに、クリフ・リーだけが早いのではなくて、メジャーの投手は日本の投手と比べて、「構えて、投げるまで」が早い

このクリフ・リーの「動作の無駄の無さ」は、右足をホームプレートに向けて踏み込んでいく時点での、「ボールを持つ位置の高さ」を見ると、ひと目でわかる。


以下に、クリフ・リーの「踏み込み脚が着地する寸前の画像」を、フィラデルフィア、シアトル、テキサス、3チーム分、集めてみた。クリフ・リーのボールを握っている左手が、踏み込み脚の右足が着地するだいぶ前に、すでに「肩の高さ」まで上がり終えていることがおわかりいただけると思う。
それにしても、まぁ、いつの時代を見ても、まるで同じフォームにしか見えない。驚かされる。
体全体を動かすシステム、メカニクスがきっちりと、しかも無駄なく決まっているために、「どう足を着いたか」とか「どれだけ膝を曲げたり、伸ばしたりしたか」というような雑多な要素でコントロールが不安定にならないことが、よくわかる。

フィラデルフィア時代のクリフ・リーの投球フォームフィラデルフィア時代

シアトル時代のクリフ・リーの投球フォームシアトル時代

テキサスでのクリフ・リーの投球フォームテキサス移籍後



日本人投手のフォームとの違いを見るために、試しにボストンの松坂大輔投手と比べてみる。

松坂投手のフォーム(足をショート側に向ける瞬間)松坂投手は、左足を、ホームプレート方向に踏み出す前に、一度、自分の斜め後ろにあたる三遊間方向に向かって伸ばしている(左写真)
クリフ・リーにはこの動作が全くない

さらに松坂は、この伸ばした左足を、ブルース・リーの旋風脚のように、自分の体の前で円を描くように、つま先をホームプレート方向に向け直していき、そこからやっとホームプレート方向に踏み出すみ動作が始まる。なんというか、いうなれば「脚で一度タメている」のである。


ボストン松坂大輔投手のフォーム次に、ホームプレートに向かって踏み出した瞬間の、「ボールを握った右手の位置」を見てみる。

踏み出した左脚が着地寸前だが、右手はまだ腰より低い位置にある。(左写真)
いってみれば利き手を腰の後ろに長時間とどめておく松坂投手は「手で二度目のタメをつくっている」。

2つの画像での説明でわかるとおり、松坂投手の「予備動作の多さ」が、クリフ・リーのピッチングフォームのシンプルさとの大きな違いだ

松坂投手は、踏み込む左足の足裏がもう着地しそうになっている段階でも、まだ背中が丸まっていて、胸を張れてないし、ボールはまだ「腰のあたりにタメている」
だから、この「腰ダメの段階」からですら、すぐにはボールをリリースできない。ただでさえたくさんの予備動作をこなしてきたのに、さらにここからいくつかの予備動作がまだ必要になる
やっとボールがリリースできる段階にたどり着くのは、胸を張り、左足を踏みしめて、両肩を回しつつ、ボールを持った右腕を振り上げ、とか、やらなければならない沢山の動作をこなしてからだ。

こうなると、悪くすると、テニスで言えば「ラケットを引く予備動作の処理が遅いために、相手の球を打ち返しそこねる」ような状態になる。

というのも、こなさなければならない予備動作の多い松坂投手の場合、予備動作をこなしている間に、うっかりすると、まだリリースのタイミングに至ってないのに「踏み込み脚が完全着地しきってしまう」からだ。そうなると、せっかくの体重移動は少なからず無駄になる。
たとえ話でいうと、「上半身と下半身が別々に旅行に出発して、目的地で同時に着く待ち合わせをしたはずが、下半身だけがずいぶんと先に目的地に到着してしまい、スウェイバックしたままの上半身が、いつまで待っても目的地に到着しないので、先に目的地で待っていた下半身が待ちくたびれた状態になる」わけだ。(実際、松坂のキャッチボールでのフォームは、上半身が異様にスウェイバックしている)

また、コントロールにも問題が生じる。
松坂投手はボールをリリースするまでに、こなさなければならない予備動作が多い。たくさんの交通手段を使う旅行のようなものだ。
もし経由する動作がうまくいかなくて、動作に「誤差」や「ブレ」が生じれば、それは必ずコントロールへ影響してくる。
例えば、踏み込んだ脚を着地させてからリリースするまで、いくつかある予備動作のどこか、例えば、腰の低い位置でタメていた腕を振り上げていく軌道が毎回違っているとか、軸足を曲げる量が毎回変わるとか、両肩の回し方、ショート方向に向けていた脚をホームプレートに踏み込んでいくときの足を伸ばす幅、これらのどれでもいいのだが、「ボールをリリースするたびに正確に行われるはずの数多くある予備動作のどこかに「誤差」や「ズレ」が生じると、それがどんなズレであろうと、コントロールに影響が出る
そうなると、なんというか、形容矛盾のようだが、松坂投手のフォームは「体全体を使った、手投げ」になってしまう。



それに対して、クリフ・リーの投球動作はだいぶ違う。

投球モーションに入って、踏み込み脚の右足を胸に引き上げた後、その右足は、そのままホームプレートに向かっていく

クリフ・リーの「胸に大きく引き上げた足を、そのままホームプレートに向かって踏み下ろしていく動作」では、松坂にあるような予備動作のいくつかが省かれている。第一に、ホームプレートに向かって足を踏み込む前に、自分の斜め後ろ方向(左投手のクリフ・リーなら、1,2塁間の方向)に向ける動作。第二に、後ろに向けた足を「一度、完全に伸ばす動作」。第三に、「一度後ろに向かって伸ばした足を、ホームプレート方向に向け直していく動作」。これらの松阪投手の動作の全てが、クリフ・リーにはない。

そして、上の3つのチームでの投球画像で見てわかる通り、踏み込み脚が着地する直前には、もう既に「胸を張って」、「ボールを肩くらいまで上げ」、「リリースのための予備動作」は終了しているから、いつでもボールを安定してリリースできる段階になっている

投球動作の早い段階で腕が上がっているから、クリフ・リーのリリースポイントは、足の着地位置から逆算した「常に同じ高さ」に決まる。(この高さが決まってリリースポイントが安定することを指して、stay tallと言っているのではないかと思うのだが、どうだろう)だから、クリフ・リーのフォームでは、腕の振りさえ安定していれば、常に安定したコントロールが得られる。
クリフ・リーのリリース・ポイント(2007、2008年)
Cliff Lee Pitch F/X 2008 « Mop Up Duty | Baseball News Sabermetric | Baseball History Bio

総じて言えば、クリフ・リーの投球動作はシンプルだ。
「脚を上げて」、「左右に体を開きながら踏み込み」、そして「投げる」。これだけ。いかにもメジャーの投手らしい。
日本の投手のように、「脚を上げてからボールを投げる前に、いくつか加えているタメをつくる動作」の大半が省略されていて、非常に無駄なく組み立てられている。
加えて、踏み込んで全体重が踏み込み脚に乗った瞬間にボールがリリースされるようにできているために、体重移動のパワーが無駄にならない。


書きだすとキリがないが、クリフ・リーと松坂の投球フォームの違いは、単に2人の個人差だけからきているのではなくて、日本とメジャーの野球文化の差異でもある。

MLBファンの大半がわかっていることだと思うが、メジャーの投手のフォームは日本と違って「構えてから投げるまでが、とても早い」。(もちろん、それは「クイックで投げている」という意味ではない)

日本で野球をしているなら、打者は、モーションの大きな、投球に時間のかかる投手が円を描くような大きなテイクバックでタメをつくっている間に、打席内で大きく体重移動しておいてボールが打席まで来るのを待つことができる。だから、ドアスイングのような大袈裟なスイングの打者であっても、投手のボールのリリースを見てからでも、体の前のポイントで差し込まれずにスイングすることができる。

だが、メジャーでは、そんな悠長なことをしていては、とても打てない。

天才イチローですら日本での打撃フォームをメジャー用に改造したくらいだ。イチ、ニの、サンで振ればヒットやホームランになるようには、メジャーのベースボールは出来てない。

ノーラン・ライアンの投球フォーム現役時代のノーラン・ライアン

ノーラン・ライアンは、クリフ・リー同様に、ホームプレート方向に踏み込む動作のかなり早い段階で、ボールを握った手を「高い位置」に上げ、リリースに備えている。こうした予備動作の開始タイミングの早さが、構えてから投げるまでの動作の早さに繋がるのだと思う。






damejima at 14:37

January 07, 2010

ノーラン・ライアンのコーチを受ける若き日のランディ・ジョンソンピッチング改造に取り組む
若き日のランディ・ジョンソン

“I was 40 years old, and to throw a 98-mile-an-hour in the ninth inning for the last out of the game, I still remember that,” Johnson said.
引退記者会見:自らのキャリアで最も輝ける瞬間は? と問われたランディ・ジョンソンは、「40歳の年齢で完全試合を達成し、そして9回でも98マイルを投げられたこと」と答えた)
Randy Johnson Retires; Matt Holliday Remains With Cardinals - NYTimes.com



2004年5月18日
ランディ・ジョンソン完全試合のBOX SCORE

May 18, 2004 Arizona Diamondbacks at Atlanta Braves Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com


ノーコン時代のランディ・ジョンソン

引退を発表したランディ・ジョンソンのキャリアをまとめたMLB Tonightの動画をみると、若き日のランディがひどいノーコン投手で、四球を出しまくっていたことを示す貴重なゲーム映像や、ノーラン・ライアンの指導を受けたことでピッチングが大きく改善され、大投手への道を歩きだしたことなど、ランディの22年の長いキャリアが一望できる。たいへんよくできた動画なので、ぜひ見てもらいたい。
MLB Tonight looks back at the career of Randy Johnson
Baseball Video Highlights & Clips | MLB Tonight looks back at the career of Randy Johnson - Video | MLB.com: Multimedia

ノーコン時代のランディ・ジョンソンの
与四球数・WHIP・K/BB

1989年 96   1.51  1.49
1990年 120  1.34  1.62
1991年 152  1.50  1.50
(=ノーラン・ライアンがPitcher's Bibleを発行した年)
1992年 144  1.42  1.67
1993年 99   1.11  3.11
1994年 72   1.19  2.83
Randy Johnson Statistics and History - Baseball-Reference.com

動画によればランディが1989年にシアトルにやってきたのは、あまりにもノーコンすぎてモントリオール・エクスポズにいられなくなったからだ。シアトルでの最初の4年間も、当時のWHIPの悪さをみればわかるように、四球数が毎シーズン100を越えていた。
シアトルに来たばかりのランディがまだたいした投手ではなかったことをみると、1990年代のマリナーズの観客動員がまだまだ低い数字に終わっていた理由もわかる。初期のランディ・ジョンソンは、まだ「ビッグ・ユニット」ランディ・ジョンソンではなく、ブランドン・モローのような、豪速球のノーコン投手のひとりにすぎなかったわけだ。(これはモローがダメ投手という意味ではない。ノーコンを修正するのは、ランディ・ジョンソン、ノーラン・ライアンでさえ、周囲の多大な協力があってはじめて実現した、ということである)

創立時以来のマリナーズ観客動員数推移グラフ


ランディ・ジョンソンのノーコン矯正のきっかけを作った
「ジ・エクスプレス」ノーラン・ライアンと
投手コーチのトム・ハウス


MLB Tonightの動画でランディ・ジョンソンのピッチング・フォームの改善のきっかけはノーラン・ライアンによるピッチング指導などと説明されているが、ライアンはランディがシアトルに移籍した90年代前半にはまだ現役投手であり、生まれ故郷のテキサスに所属していたわけで、なぜ同地区ライバルチームの投手であるランディをコーチングするに至ったのか? ちょっと経緯はよくわからない。
それはともかく、ノーラン・ライアンの投球術指導の能力の高さは、現在では折り紙つきだ。(例:スポーツ大陸)ノーラン・ライアンの著書Nolan Ryan's Pitcher's Bible (with Tom House, 1991)は、メジャー投手たちのピッチングの定番教科書となっていることで有名であり、ボストン松阪大輔の愛読書としても知られている。

このNolan Ryan's Pitcher's Bibleは、ライアンと、1985年にテキサスで投手コーチに就任し、80年代のノーラン・ライアンを甦らせたといわれている心理学の得意なトム・ハウスとの共著。
トム・ハウスはシアトル生まれの元投手で、いくつかの球団を経て、球団として発足したばかりの頃のマリナーズに入団、77年と78年に2シーズン投げて故郷のシアトルで引退している。
Tom House - Wikipedia, the free encyclopedia

コーチとしてのトム・ハウスはシアトルに在籍したことはないのだが、ランディ・ジョンソンとどこで接点があったのだろう?
ランディが若い頃に所属したモントリオールやシアトルでは、トム・ハウスのコーチ歴はないが、両者ともアストロズなら在籍したことがある。そのため、最初はトム・ハウスがランディを指導するとしたら、98年のランディのアストロズ在籍時か?とか思ったのだが、ランディはヒューストンに移籍する前の96年にトム・ハウスの共著でFit to Pitch(Human Kinetics Publishers, 1996. ISBN 0-87322-882-0. With Randy Johnson.)という本を出版している。
つまり、ランディとトム・ハウスの関係が始まったのは、90年代後半ではないく、90年代前半のシアトル時代なのは間違いない。

ちなみに下記の現地記事でも、ランディがトム・ハウスのコーチングを受けたのは、やはり90年代初頭のランディのシアトル時代、としている。やはりランディがシアトルにいて、他方ノーラン・ライアンとトム・ハウスがテキサスにいた90年代前半に、彼らの親密な関係は始まっている。
In the struggle to overcome his problems with ball control, Johnson got some valuable tips from world-famous pitching authority Tom House during the early 1990s. At the time House was pitching coach for the Texas Rangers.
Randy Johnson - Related Biography: Pitching Coach Tom House

これはただの想像だが、1991年時点ではノーラン・ライアンが、トム・ハウスとの共著Nolan Ryan's Pitcher's Bible本を出版したばかりの時代で、出したばかりの本のプロモーションがわりに、別球団のシアトルのノーコン投手ランディ・ジョンソンを指導してみせて、著書の内容の正しさを世間にデモンストレーションした、ということかもしれない。
指導対象にシアトルの投手を選んだのは、トム・ハウスがシアトル生まれで、しかも70年代にシアトルで投手をしていたというコネクションを利用したのかもしれない。
Nolan Ryan - Wikipedia, the free encyclopedia
ちなみに、テキサスで1988年にメジャーデビューした19歳のイヴァン・ロドリゲスがメジャー昇格2日目の6月21日にバッテリーを組んだのは、44歳のノーラン・ライアンだった。まだ新人のパッジも、おそらくノーラン・ライアンからは色々と感化されたに違いない。(そのわりには近年のリードは単調さが目立つが 苦笑)
Historical Player Stats | MLB.com: Stats


ランディ・ジョンソン以上のノーコン投手だった
ノーラン・ライアン


ノーコン投手時代のランディ・ジョンソンをコーチングして、彼が大投手になるきっかけをつくった「ジ・エクスプレス」ノーラン・ライアンだが、若い頃のライアン自身がランディ以上のたいへんなノーコン投手であり、ライアンのキャリア自体がまるでランディそっくりである(笑)だから、この師弟関係、なんとも微笑ましい。
ライアンはサンディ・コーファクスがドジャースで奪三振のメジャー記録をつくった1965年に、トム・シーバードン・サットンの先発投手全盛時代のメッツに入団した。以降ずっとノーコンに苦しんで、偉大な先発投手だらけのメッツでは居場所がなく、1971年12月に、アナハイムに移転する前の弱小球団だった時代のカリフォルニア・エンゼルスに放出された。
つまり、ノーラン・ライアンの若い頃は、ノーコンすぎてモントリオールにいられなくなってシアトルに放り出されたランディ・ジョンソンの若い頃そっくりなわけだ(笑)
若い頃のノーラン・ライアンは、1973年にサンディ・コーファクスのシーズン奪三振記録を塗り替えているわけだが、同時に、ランディ・ジョンソン以上の最悪の四球王でもあり、メジャー歴代ベスト3に入るシーズン200個以上もの四球を、それも2度出したことすらある。WHIPこそ、若い頃のランディ・ジョンソンの酷い数値に比べればマシだが、いかせんグロスの四球数がハンパなく多い(苦笑)

ノーコン時代のノーラン・ライアンの
与四球数・WHIP・K/BB

ちなみに、シーズン与四球204は、MLB歴代2位。202は、MLB歴代3位。183は、歴代7位(笑)さすが、何をやらせてもスケールが大きいノーラン・ライアン(笑)
1971年 NYM 116  1.59  1.18
1972年 CAL 157  1.14  2.10
1973年 CAL 162  1.23  2.36
(=ジェフ・トーボーグの引退シーズン)
1974年 CAL 202  1.27  1.82
1975年 CAL 132  1.43  1.41
1976年 CAL 183  1.32  1.79
1977年 CAL 204  1.34  1.67
1978年 CAL 148  1.41  1.76
1979年 CAL 114  1.27  1.96
Nolan Ryan Statistics and History - Baseball-Reference.com


ノーラン・ライアンのノーコン矯正のきっかけを作った
捕手ジェフ・トーボーグ


自分自身がもともとノーコン投手だった若き日のノーラン・ライアンに大投手になるきっかっけを作ったのが、当時カリフォルニア・エンゼルスでキャッチャーをやっていたジェフ・トーボーグ、というのも有名な話だ。
トーボーグは、「ライアンはモーションを急ぐために、足の踏み出しに腕の振りが追いついてない」と、フォームの欠陥を指摘したという。
その後ライアンは、監督や投手コーチも交えフォーム改造に取り組んだが、後年「機械的でうんざりすることもあったが、結局はこの作業が私のピッチングを変えることになった」と振り返っている。
(原資料:武田薫 「ノーラン・ライアン 「永遠の奪三振王」──その揺るぎなき本質」 『スポーツ・スピリット21 No.20 メジャーリーグ 栄光の「大記録」』、ベースボール・マガジン社、2004年、ISBN 4-583-61303-2、32-35頁。)

トーボーグは、後に監督業に転じて、クリーブランド、シカゴ、モントリオール、メッツ、フロリダの監督をやり、1990年にはシカゴでア・リーグ年間最優秀監督賞を受賞している。伊良部のフロリダ時代の監督でもある。
Jeff Torborg - Wikipedia, the free encyclopedia



捕手ジェフ・トーボーグにマウンドから投球術を伝授した
サンディ・コーファクス


Sandy Koufaxのピッチングフォーム

サンディ・コーファクスの背番号ウオッシュバーンロブ・ジョンソンの共同作業(参照資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:『ドルフィン』 by ウオッシュバーン&ロブ・ジョンソン)を思いおこさせるようなピッチャーとキャッチャーの共同作業によって、ノーラン・ライアンが大投手になるきっかけをつくったジェフ・トーボーグだが、彼がキャッチャーとして、とてもつもないノーコン投手だったノーラン・ライアンの球を受けていて、ライアンのフォームの欠陥を見抜くことができた理由は、トーボーグがドジャース時代に、あのサンディ・コーファクスの球を受けていたことにあるという。



トーボーグは、キャッチャーとしてカリフォルニア・エンゼルスに1971年に来たが、その前は、1964年から1970年まで7年間同じ西海岸のロサンゼルス・ドジャースに在籍していて、ノーラン・ライアンが1973年に記録を塗り替えるまでシーズン奪三振のMLB記録をもっていた大投手サンディ・コーファクスの球を実際に受けていた。
コーファクスの現役は1955年から1966年(58年にドジャースはブルックリンからロサンゼルスにホームタウンを変えた)だから、トーボーグとコーファクスは1964年からの3シーズンしかキャリアの重なりがないが、よく知られているように、コーファクスの全盛期はキャリア最後の4年間だから、大投手サンディ・コーファクスが最も輝きを放ったシーズンを体で最もよく知るキャッチャーが、このジェフ・トーボーグということになる。
コーファクスがメジャー奪三振記録382を作ったのも、最後のノーヒット・ノーランを達成したのも、引退前年の1965年。キャリア最後の4シーズンでコーファクスのWHIPは、4シーズン連続で1.00を切っている。ちなみに、コーファクスのキャリアWHIPは、1.11という、とてつもない数字だ。

サンディ・コーファクス 栄光の4年間の
与四球数・WHIP・K/BB

1963年 58  0.875  5.28
1964年 53  0.928  4.21
1965年 71  0.855  5.38
1966年 77  0.985  4.12
Historical Player Stats | MLB.com: Stats

Sandy Koufax Statistics and History - Baseball-Reference.com

そして、このコーファクスもまた、ランディ・ジョンソン、ノーラン・ライアンと同じく、若い頃は速球は速いもののコントロールの悪さから、ノーラン・ライアンほどではないが、四球が多かった(笑)
1955年 28  1.464  1.07
1956年 29  1.619  1.03
1957年 51  1.284  2.39
1958年 105 1.494  1.25
1959年 92  1.487  1.88
1960年 100 1.331  1.97


サンディ・コーファクスが達成した最後のノーヒッター(=1965年9月9日の完全試合)、そして、サンディ・コーファクスの奪三振記録を塗り替えたノーラン・ライアンが記録した最初のノーヒッター(1973年5月15日)、この両方の試合でキャッチャーをつとめたのが、ジェフ・トーボーグであるのも有名な話だ。
ちなみにトーボーグは、ライアンが最初のノーヒッターを達成した1973年シーズンを最後に引退している。まるでコーファクスの投球術をライアンに授けるためにメジャーリーガーになったような捕手である。

1965年9月9日
サンディ・コーファクスの完全試合のBOX SCORE

September 9, 1965 Chicago Cubs at Los Angeles Dodgers Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com
コーファクスの最後のノーヒッターゲームだが、実はドジャース側もわずか1安打。つまり、両チームあわせて、たった1安打の、超投手戦。試合時間はわずかに1時間43分。コーファクスはカブスを8回、9回と、6者連続三振に打ちとるなど、14三振を奪った。
1973年5月15日 ノーラン・ライアンの
最初のノーヒットノーランのBOX SCORE

May 15, 1973 California Angels at Kansas City Royals Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com



トーボーグ自身は、キャリア10年で打率,214、ヒット数わずか297本と、バッターとしてはさえない成績に終わったが、キャッチャーとして(または指導者として)、サンディ・コーファクスの投球術(あるいは投球フォームなのかもしれないが)をノーラン・ライアンに伝えた、という意味では、メジャーの歴史に残る大仕事をしたといえる。
「メジャーのキャッチャーは壁だ」なんていうのは、ただの迷信だ(笑)
またノーラン・ライアンは、キャッチャーのジェフ・トーボーグを経由することで、時代の離れたサンディ・コーファクスの投球術を受け継ぐことができた。さらにライアンは投手コーチのトム・ハウスとともにPitching Bibleとして集大成する仕事を成し遂げることでメジャーの投手たちを啓発し、ことランディ・ジョンソンに関しては、手取り足取りノーラン・ライアン流投球術のエッセンスを授けた、といえる。

1試合15奪三振以上試合数

1位 29試合 ランディ・ジョンソン
2位 26試合 ノーラン・ライアン
3位 10試合 ペドロ・マルチネス
4位  9試合 ルーブ・ワッデル
4位  9試合 サンディー・コーファックス
4位  9試合 ロジャー・クレメンス






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