ヤンキース時代のイチロー

2015年2月26日、「1番イチロー、2番マイケル・ヤング、3番チェイス・アトリー、先発クリフ・リー」なんてスタメンがありえた「夢の2013年フィリーズ」。イチローへの2年14Mのオファーを懐かしむPhilliedelphia.com
2015年1月29日、2014年版「イチローのバッティングを常に冷やし続けたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶり」。
2014年9月24日、今思えば、ジーターの「シーズン」は、「2012年ALCSの途中退場」で終わっていたのだ、と思う。
2014年9月17日、ヤンキースに移籍後、出場ゲーム数、ヒット数、盗塁数で、イチローがチーム1位、というエライアスのデータ。
2014年9月11日、タンバペイの右腕アレックス・コブにノーヒット・ノーランを食らいかけたゲームが、クリス・ヤングの二塁打とサヨナラ3ランで劇的勝利に変身(笑)
2014年8月24日、「ヒトの想像力をインスパイアする人物」。15シーズンで達成したジョージ・シスラーの2810本あまりのヒット。それを1シーズン早く、14シーズンで抜き去ってみせたイチロー。
2014年7月7日、球審Marty Fosterによるアウトコース低めの「誤審」による見逃し三振で、火がついたイチロー。ファイヤーな7月の予感。
2014年6月15日、Joanna Hallの素晴らしい木曜日。
2014年4月4日、トロント戦3回表、イチローの内野安打のアウト判定を覆したExpanded Replay。
2014年3月17日、鈴木一朗をイチローに、さらにIchiroにした「スイングスピード」
2013年10月3日、ヤンキースにおけるイチロー打順+守備位置 全データ。
2013年9月17日、日本でも発覚、第二の「Debby Wong事件」となる『共同通信ホームラン写真捏造事件』。ホームランシーンを撮りそこなった共同通信のカメラマンが、「ニセの写真」をわかっているだけで3度にわたり配信。
2013年9月7日、今の『From-Hand-To-Mouth-Baseball』のヤンキースが勝つことが、本当に「野球の価値を高め、同時に、次の世代に野球の意義を伝える」ことになるのか。
2013年8月30日、「魔法の季節」の到来を告げるイチロー逆転2ラン。
2013年7月12日、ロビンソン・カノー自身が語った「いまチームで自分がやるべき仕事。イチローと自分の信頼関係」で知る、契約最終年のカノーの心の内、そして、カノーの前の打順にイチローを置く意味。
2013年7月11日、イチローのOver-The-Rainbow Catch!!!!!
2013年6月25日、イチロー、同点の9回裏2死走者無しからキャリア2本目のサヨナラホームラン!!! 1本目はマリアーノ・リベラを負け投手にしたが、2本目は勝ち投手に。
2013年6月19日、MLB史に残る「史上初のヤンキースタジアムで行われるレギュラーシーズンのドジャース対ヤンキース戦」で、イチロー神試合炸裂!
2013年6月12日、イチロー得意のトリックプレーに感心したオークランドの一塁手ブランドン・モスが、ヒットを打って出塁した走者イチローに話しかけた会話の中身。
2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
2013年5月4日、イチロー、フェンス際の大飛球をホームラン・キャッチ!
2013年5月3日、イチロー得意の「魔法」で「フェンス直撃のあわやホームラン」をシングルヒットに変え、続いて、ランナー2人の進塁を同時阻止するクレバーなファインプレー。
2013年4月23日、9回表2死満塁から、イチロー得意の「クローザーの初球打ち」。フェルナンド・ロドニーから決勝2点タイムリーで、ヤンキース連敗ストップ。
2013年4月20日、決勝点をたたきだしたイチローのバントの記録をヒットに訂正するよう、ヤンキースは申し入れるべき。
2013年4月12日、「躊躇し続けるヤンキース」のつまらなさ。
2013年3月23日、イチローがイチローになれた理由。
2013年3月1日、「イチローは僕のヒュミドールなんだ」 〜 マイク・モースだけにしかわからない「『イチローのいるシアトル』の甘く、ほろ苦い香り」
2013年2月4日、「自分の型を持つ」ということ。
2012年12月21日、ニューヨークまみれのクリスマス・キャロル(2) NFLニューヨーク・ジャイアンツとティム・マーラとポロ・グラウンズ
2012年12月21日、ニューヨークまみれのクリスマス・キャロル(1) ワシントン・アーヴィングとクリスマスとバットマン
2012年11月9日、2012オクトーバー・ブック WS Game 4でフィル・コークが打たれた決勝タイムリーを準備した、イチローの『球速測定後ホームラン』 による『バルベルデ潰し』。
2012年10月9日、2012オクトーバー・ブック 『マトリクス・スライド』。ついに揃った 『イチロー 三種の神器』。
2012年9月28日、『イチロー・ミラクル・セプテンバー』全記録(2)9月21日オークランド戦以降の「魔法」 〜イチローがアメリカで「ウィザード」と呼ばれる理由。
2012年9月28日、3000安打達成のための「38歳」という最初の壁。これからのイチローの数シーズンが持つ、はかりしれない価値。次の3000安打達成者予報。
2012年9月20日、『イチロー・ミラクル・セプテンバー』全記録(1)9月19日トロント・ダブルヘッダー全ヒット。東海岸が初体験する「ゲップが出るほどのイチロー体験」のはじまり、はじまり。
2012年9月15日、ヤンキースが「3対6で負け」、「3対2で勝つ」理由。
2012年9月8日、イチローが左投手のインコースを打った二塁打の意味。一塁塁審Jerry Mealsの大誤審に名指しで怒るニューヨークメディア。
2012年9月4日、レイズ戦球審Tony Randazzoによる、8回表イチローへの2球目のありえない悪質なストライクコール。
2012年8月19日、イチロー2打席連続ホームラン!黒田好投、8回を4安打1失点で12勝目。カウント1-2からホームランを打てるイチローの凄さ。
2012年8月10日、ジョー・ジラルディが語ったイチローの "heat"。興奮と圧迫感。高揚感とプレッシャー、そして名誉と批判。なにもかも覚悟の上の大舞台の「熱」。
2012年7月28日、Fielding Award投票者John Dewanの今年のイチローの守備に関する賛辞と、元マリナーズ監督ルー・ピネラが数年前に答えた 「イチローに関する10の質問」 by Jack O’Connell
2012年7月27日、49.571人を集め、やはり特別なゲームになったイチローのニューヨークデビュー戦。
2012年7月27日、ヤンキースの選手として最初にセーフコに登場したイチローに関する観客のオベーション動画集。
2012年7月23日、イチロー NY移籍!

February 27, 2015

Philliedelphia.com (注:ドメイン名はPhiladelphiaではない。Philliedelphiaだ。お間違え無きよう)のライターMatt Rappa@mattrappa)が、2012年オフを思い出して、こんな記事を書いている。
Flashback Friday: Phillies Nearly Signed Ichiro Suzuki for 2013 Season - Philliedelphia

記事のモチーフは、2012年12月にESPNのBuster Olneyが「フィリーズがイチローに2年14Mのオファーをしていた」とツイートしたことだ。それを2015年になって思い返して、「もし、あのときイチローがフィリーズの一員になっていれば・・・・」と回想するという、手の込んだスタイルになっている。


記事によれば、当時イチローのナ・リーグ東地区での打撃成績は、マイアミを除く全チームに対して3割2分を超える高打率を残していて、とりわけかつてフィリーズの本拠地だったヴェテランズ・スタジアムでは、3割5分を超える打率と.400の出塁率を記録している、というのである。

この記事でMatt Rappaが挙げた仮想オーダー、これがなにより「最高に痺れた」(笑)

ちなみに元記事の「仮想オーダー」では、9番は「空欄」なのだが、ブログ主が勝手に「クリフ・リー」を追加させてもらった(笑)(それと、個人的には4番はライアン・ハワードでなく、ドミニク・ブラウンのほうがいい)

1. Ichiro 9
2. Michael Young 5
3. Chase Utley 4
4. Ryan Howard 3
5. Carlos Ruiz 2
6. Jimmy Rollins 6
7. Domonic Brown/Darin Ruf 7
8. Ben Revere 8
9. Cliff Lee 1

そう。あまりに残念すぎるから言いたくないが(苦笑)、2013年のマイケル・ヤングは8月にLADに移籍するまで126試合フィリーズでプレーしているのである。(その後マイケル・ヤングはLADに行き、いまイチローのチームメイトになっている二塁手ディー・ゴードンとプレーしている 下の写真左)


もし2012年冬、イチローがフィリーズの2年14Mのオファーを受けていたら、イチロー、マイケル・ヤング、チェイス・アトリーの1番〜3番という打順が実現していたかもしれないのだ。ううむ。


だが、現実にはもちろん、
マイケル・ヤングは引退してしまっている。
Michael Young Statistics and History | Baseball-Reference.com


うーーーーーん・・・・・・・・・・・・・・・・・。
残念だ。残念すぎる。

関連記事:2014年2月2日、内野手の整備を通じてテキサスをポストシーズン常連チームに押し上げることに貢献したマイケル・ヤングの「キャプテンシー」は、内野崩壊とカノー流出を食い止められないデレク・ジーターの見かけ倒しのキャプテンシーよりはるかに優秀だ。 | Damejima's HARDBALL

マイケル・ヤング引退


damejima at 15:37

January 30, 2015

2013年9月上旬に、ヤンキース監督ジョー・ジラルディの不合理きわまりないイチローの起用ぶりについて記事を書いたが、その「2014年版」を書いてみた。
赤色部分:イチローがマルチヒットを記録したゲーム
青色部分:ジラルディがイチローを先発からはずしたゲーム

ジョー・ジラルディのイチロー起用の比較(2013年と2014年)2013年版のデータは以下のページにある。
2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。 | Damejima's HARDBALL

2014年版の元資料:
2014 New York Yankees Schedule and Results | Baseball-Reference.com

Ichiro Suzuki 2014 Batting Gamelogs | Baseball-Reference.com

上の縦長の左右2本のバーは、のバーが2013年2014年を示している。2013年のバーがやや短いが、これは2013年版の図が、当時まだシーズンが終わらない9月初旬に制作されているため、2013年の全試合が図に網羅されていないことによる。他意はない。


右の2014年版のバーが、左の2013年版と比べ、青い部分がやたらと多いことは、小学生でもわかるだろう。

クリックすれば細かい数字は見られるが、そんなものをチマチマ確認しなくとも、全体の色の印象で言いたいことは伝わるはずだ。2014年のイチローの詳細な打撃スタッツとあわせてみてもらえば、ヤンキース時代のイチローが「ふがいないチームメイトよりも打てて、守備も走塁も問題ない、なのに、安定した起用をされず、ゲームに使われなかったために、打撃スタッツを下げさせられていた」ことがわかると思う。

加えていえば、左打者イチローが左投手を問題なく打てて、チームの他の誰より「対左投手打率」が優れているにもかかわらず、左投手先発だと決まってベンチスタートだったことは、とりわけ腹立たしい。イチローが長年得意にしてきたヴェテラン左投手マーク・バーリーの先発ゲームですら、ベンチスタートだったのだ。これには当時多くのヤンキースファンからも疑問の声がツイートされ続けた。
左投手のゲームに先発できないことで、イチローのヒット数がどれほど「減らされた」ことか。まったくもって、腹立たしい限りだ。
#Fire Girardi


記事の下部に、2014年版の詳しいリストを示しておいた。

左は「2014年のヤンキースのゲームスケジュール
右は「2014年のイチローの出場ゲーム

赤色部分は「イチローがマルチヒットを記録したゲーム」
青色部分は「無能なジラルディがイチローを先発からはずしたゲーム」を示している。

図の意味は、クドクド説明しなくても、「色の印象と配列」で言いたいことはわかるとは思うが、ひとこといわせてもらうなら、青い面積の広さでわかるとおり、2014年のイチローの起用ぶりは、酷かった2013年よりも、さらに最悪なものだった。
2013年9月のあるゲームで、イチローをどうしても2番にしたくないジラルディは、なんとAロッドに2番を打たせた。その2013シーズンよりさらに酷いのだから、どのくらい酷い起用だったか、わかるだろう。


開幕からオールスターまで(4月〜7月)
まず、下図の「4月」「5月」の部分をみてもらいたい。「広大な青色エリア」が広がっている中に、「赤い部分」がポツン、ポツンと「挟みこまれて」いる。

このことで次のことがわかる。

2014シーズン開幕以降、4月5月のジラルディは、イチローを「スターター」と認めてはおらず、実際、ほとんど先発起用しなかった。

だが、それでもイチローは4月の不当に少なすぎる先発出場機会を得るたびにマルチヒットを記録し、明らかに絶好調な状態で2014年シーズンをスタートした。
ぜひ「2014年に初めてゲームに出た4月3日から、5月3日までの1ヶ月」のイチローの打撃成績をみてもらいたい。
打率 .375
出塁率.400
OPS .858

四球の大好きなビリー・ビーンがみても、長打と四球を過大評価するデタラメ指標OPSの好きな馬鹿がみても、素晴らしい数字が並んでいる。数字が苦手なくせにデタラメ指標だけは好きなヘボ監督でも、これには文句のつけようがないはずだ。
2014年スタート時のイチローの打撃は、けして悪くないどころか、むしろスロースターターの彼にしてみれば、2014シーズン開幕前に田口壮氏が「今年のイチローは間違いなくやりますよ」と太鼓判を押していたとおり、絶好調といえる万全の状態だったはずだ。

だが、それをみて6月のジラルディは、イチロー起用法を非常に細かいサイクルで「先発出場」と「途中出場」を交互に繰り返すという「最悪な起用法」にきりかえた。
うっかりすると「1日おきに先発と途中出場が交互にくりかえされる」のだ。こんな起用をされて選手が好調をキープできるわけがない
6月8日から7月11日にかけての1ヶ月、8試合でマルチヒットを記録するなどして抵抗し、7月中旬に「打率3割をキープ」していたイチローではあったが、さすがに4月の好調ぶりをずっとキープし続けたままでいることはできず、ジラルディは7月後半にようやくイチローのバッティングを「冷やす」ことに成功した。

こうして無能なジョー・ジラルディは前年に続き、2014年も「イチローのバッティングを冷やし続けること」に専念したのだから、本当に呆れてモノが言えない。まさか、チームの勝率アップや地区優勝より、自分好みでないプレーヤーの「冷却」やら記録阻止が生きがいとでも考えている監督、チームが存在するとは、夢にも思わなかった。


2014年開幕時にジラルディがイチローより優先して使った外野手は、例えば、2014年のヤンキースが1800万ドル(=約21億円)もの大金を払ったにもかかわらず、結局シーズン終了後に引退に追い込まれたアルフォンソ・ソリアーノだが、2013年7月のフラッグシップ・ディールでヤンキースに復帰する直前はナ・リーグにいたにもかかわらず、弱点のハッキリしているソリアーノのバッティングの攻略法は、それこそあっという間にア・リーグ全体で分析されきって、対策が終わっていたことは、2013年シーズン終盤9月の打撃の内容、特に移籍後60を越えていた三振の中身を分析すれば、十分明らかだった。
データ:Alfonso Soriano 2014 Batting Gamelogs | Baseball-Reference.com
にもかかわらずジラルディは、「攻略の終わっているソリアーノ」を開幕時に第4の外野手として位置づけて起用し、案の定2014年4月・5月に52もの三振をして、あっという間にイチローに追い抜かれた。
だが、ジラルディは、データ分析不足と、判断の遅れという2つの決定的なミスを、けして認めようとしなかった

また、2014年に15Mの大金を払った外野手カルロス・ベルトランはどうだろう。
これだけの大金をもらいながら、出場はたったの109試合。しかも、その109試合のうち、76試合がDHだ。シーズンの半分をDHで出ただけで15MもらったDH専業選手が、打率.233、出塁率.301、ホームランたった15本では、間違いなく給料泥棒だ。
守備はどうか。ベルトランは32試合でライトを守ったが、そのたった32試合で、dWAR、Rdrsなど、守備指標で考えられないほどのマイナスを記録している。到底ライトを任せられる守備レベルの選手ではない。(詳しい数値は各自調べてもらいたい)

こうした指揮官の愚劣な行いの結果、5月から6月にかけてのヤンキースは、5月14勝14敗、6月12勝15敗と、2014年のポストシーズン進出を逃す決定的な「不振期間」を作ることになった。

オールスター以降(7月〜)
7月25日イチローに待望のシーズン初ホームランが飛び出す。すると、さっそくジラルディはイチローを先発から遠ざけるのだから、このオッサンのやることだけは理解不能だ。
長打を打ったら休ませる、などという例は他にも数多くある。8月10日に二塁打を打つと、さっそく翌日は休み。9月10日・11日に2日続けて二塁打を打つと、ベンチ。9月23日二塁打、翌日ベンチ。ほんと、ジラルディはマトモじゃない。

8月のイチローの月間打率は.352と、7月後半の一時的な停滞から既にリカバリーしていた。

だが、図をみてもらうとわかるが、7月中旬から8月中旬にかけての図が、どっぷり青色に染まっている8月のジラルディは、月間.352打ったイチローを積極的に先発起用しようともせず、むしろ、6月にとった卑劣な手法同様に、先発出場と途中出場を細かいサイクルで交互に繰り返させたのである。

結果的に、2014シーズンのイチローがヤンキースで「チーム最高打率の打者であるにもかかわらず、控え選手扱い」などという、「合理性にまったく欠けた酷い扱いを受けた」のは、ひとえに、外野手獲得をみやみに乱発し続けて無駄に選手を抱え込んだブライアン・キャッシュマンの無能さと、どんなに好調でもイチローを使わない、左投手が打てるデータがあるにもかかわらず左投手先発ゲームでイチローを使わない、チーム打率が悲惨なことになっていてもチーム最高打率のイチローを使わないという、数々の無能さを披露し続けたジョー・ジラルディに、責任がある。

もし2014年のイチローの起用が実力通りのものだったなら、彼の2014シーズンの打撃成績はもっとはるかにマシなものだったことは間違いなく、また、達成間近だった多くの記録も、もっと肉迫できていただろう。さらには、シーズン終了後にFAとなってからのチーム選択においても、無用な苦労を強いられることなく、はるかに広い、容易な選択が可能だったことも間違いない。



2014ジョー・ジラルディによるイチロー起用ゲームリスト


damejima at 13:13

September 24, 2014

イチローがヤンキースに移籍した2012年をあらためて思い出している。

あれはヤンキースがシーズン終盤に失速して2位ボルチモアの強烈な追い上げを食らい、あわてふためいたシーズンだった。何度も書いてきたことだが、ラウル・イバニェスとイチローの奇跡的な活躍が、足がほとんど止まりかけていたヤンキースの背中を押して前進させ、食い下がるボルチモアをなんとか振り切って地区優勝を果たしたのだ。
この何年もの間、実は、ヤンキースのスタメンはたいした仕事をしてこなかった。だからこそ、いつも夏にあわてて選手を補強し、そういう「後からやってきた選手」が想定以上の活躍でもしないかぎり、地区優勝なんかできない。ヤンキースはそういうチームだっだ。

2012年9月20日、『イチロー・ミラクル・セプテンバー』全記録(1)9月19日トロント・ダブルヘッダー全ヒット。東海岸が初体験する「ゲップが出るほどのイチロー体験」のはじまり、はじまり。 | Damejima's HARDBALL

2012年9月28日、『イチロー・ミラクル・セプテンバー』全記録(2)9月21日オークランド戦以降の「魔法」 〜イチローがアメリカで「ウィザード」と呼ばれる理由。 | Damejima's HARDBALL


あの2012年は、いうまでもなく「ヤンキースの主力選手全体が、投手・野手に関係なく衰えてしまい、なおかつ、短期での自力復活は全くありえない」ことが明確になったシーズンだったわけだが、2012年あたりでは、たとえそれを声を大にして言ったとしても、ちゃんと耳に入って理解できる人はまだ少なかった。
というのも、当時はまだ「グランダーソン、Aロッド、スウィッシャー、テシェイラ、この4人だけでもホームランを120本以上打てるんじゃないか」だのなんだの、ありもしないことを信じ込みたがっている「現実を直視できない、頭の悪い人」が、GMや監督はじめ、ヤンキース関係者にも、NYメディアにも、ヤンキースファンにも、山のようにいたからだ。
そういう人たちは、例えばグランダーソンやAロッドがシーズン終盤の勝負どころでまったく働かず、ポストシーズンのデトロイト戦ではついにスタメンから外れされて、ベンチからゲームを眺めている、なんて光景をまるで想像もしてなかったし、そうしたみじめったらしい光景を見た後ですら「来年こそ彼らはやってくれる。そうに違いない」程度に思っていた。

もちろん、2012年だけでなく、2013年も2014年もずっとそうだったわけだが、彼らのような使えないスタメンを見切るタイミングが遅れた原因は、いつものように「決断力の無い監督ジラルディの判断の遅さ」だった。


その後、当然のことながら、2012年の選手の大半はこの2年の間に、ほとんどが引退するか、移籍した。
2012年シーズン後にラッセル・マーティン、ラウル・イバニェス、ニック・スウィッシャー、フレディ・ガルシア、ラファエル・ソリアーノなどがいなくなり、さらに2013年終了後にはマリアーノ・リベラ、アンディ・ペティット、カーティス・グランダーソン、ロビンソン・カノーなどがいなくなった。
野手で残っているのは、ガードナー、ジーター、イチロー、テシェイラくらいのものだ。

移籍した選手で、2014年にマトモに活躍できたのはロビンソン・カノーくらいしかいないが、ヤンキースはその「ヤンキース在籍選手のうち、今後とも主力として長期的に活躍できるであろう、ほんのわずかな選手であるはずのロビンソン・カノー」にどうしたものか再契約を提示しなかったために、ヤンキース生え抜きで、ヤンキースと再契約するつもりが十分あったのカノーを心底怒らせ、落胆させた。


ヤンキースがデトロイトに4連敗した2012年ALCSの第1戦と第4戦、2つのスタメン表は、2000年代ヤンキースの末路を象徴するデータだと思う。(数字は2012ポストシーズンの打率などの打撃成績)

2012ALCS 第1戦
Jeter .200
Ichiro .353
Cano .056 18打数1安打
Teixeira .200 .
Ibanez .231
A-rod .111 9打数1安打
Swisher .250
Granderson .000 11打数ノーヒット
Martin .143

第4戦
Ichiro
Swisher
Cano
Teixeira
Ibanez
Chavez
Martin
Gardner
Nunez


ALCS第1戦にあった、ジーターグランダーソンAロッドの名前が、第4戦のスタメン表にない。ジーターは怪我、残り2人はスランプで、スタメンを外れていた。そして10月のロビンソン・カノーに精彩はない。


ジーターにとっての2012年終盤は、足首のケガを押してチームのために出場し続けた辛いシーズン終盤だったわけだが、デトロイトとのALCS第1戦でついにチームメイトの肩を借りなければ歩けないほどの状態になり、途中交代せざるをえなかった。その後のジーターは第2戦以降も出場できず、チームのポストシーズン敗退をベンチから見守った。

この途中交代のときのジーターの「まるでジーターらしからぬ様子」について、イチローがコメントしている。

Usually Derek is the most upbeat person, always saying “Get ‘em tomorrow, another game tomorrow” stuff like that, always a real positive influence. But that night was the first time that I saw him say, “I don’t have a game tomorrow.” Seeing Derek Jeter like that was a moment that I’ll never forget.
「普段のジーターはすごく楽天的。どんなときでも 『明日がある。だから明日また頑張ろうぜ』みたいなフレーズで、チームメイトにほんとにポジティブな影響を与えてくれる。でもあの夜(=デトロイトとの2012ALCS)、そんな彼が「僕には明日ゲームがない・・・」と言うのを初めて見た。ああいうジーターを見たことは、僕にとって忘れられない瞬間だった」

Sweeny Murti: Favorite Derek Jeter Stories From The Yankees Clubhouse « CBS New York


翌2013シーズンのジーターは、足の怪我が十分治りきっていないにもかかわらず、「復帰してはDL入り」を何度も何度も繰り返し、キャプテンらしからぬ「焦り」を隠そうとはしなかった。
この2013年の「復帰を焦るジーター」は、イチローファン視点だけから正直に言わせてもらうと、彼が復帰するたびに、打順から守備位置からなにから、現場の選手起用が非常に混乱する、とても迷惑な存在だった。


カーティス・グランダーソンは、オースティン・ジャクソンのようなデトロイト時代のプレースタイルから、ヤンキース移籍後に「インコースのストレート系だけをフルスイングする」などという極端な手法で一躍ホームランバッターに変身を遂げたわけだが、そうした彼の極端な狙い打ちが他チームにスカウティングされ、通用しなくなったのが明確になったのが、この2012年だった。
Aロッドは、ドーピング問題が発覚してその後のシーズンを棒に振ることになった。


今思えば、ジーターの「シーズン」は、あの「2012年ALCSの途中退場」で終わっていたのだ、と思う。そしてたぶん、彼自身それを当時からわかってもいただろう、と思う。(ちなみに「シーズン」という言葉には、「旬」とか「最盛期」という意味もある)

誰もいなくなったのを見届けて、最後に自分が出て、ドアを閉める。それもキャプテンとしての仕事だと思うから、彼はこの2年の「余白」を頑張ってきたに違いない。

お疲れ様、デレク・ジーター。

さよなら。
デレク・ジーター。



damejima at 05:10

September 18, 2014

いいね。こういうデータこそ、日本のメディアは発掘すべきなんだけどね。まぁ、無理だろうな。



damejima at 07:42

September 12, 2014

おめでとう、クリス・ヤング
とにかく凄い試合だった(笑)
Tampa Bay Rays at New York Yankees - September 11, 2014 | MLB.com Classic


タンパベイ先発のアレックス・コブが好投して、4点ビハインドのシャッタアウト状態のまま、8回1死まで来たときにゃ、「こりゃノーヒット・ノーランあるかも」なんて思わせたわけだが、ここで打率2割しかない伏兵クリス・ヤングが2球目をセンターにツーベースヒットで、ノーヒッター達成をブレイク!



おおおぉぉ・・・
でも、まぁ、普通ここまででしょ。

次のバッターは、打てるわけもないドリュー。この選手がスタメンに居座っているのは、もちろん無能なジョー・ジラルディの贔屓によるもので、単なる選手起用ミス。だが、ここはさすがに代打マーティン・プラド
かたやタンパベイ監督ジョー・マドンは、ここで先発アレックス・コブからブラッド・ボックスバーガーにスイッチしたのだが、代打プラドがレフトスタンドに2ランホームラン! スコアは2−4。


なおも、エラーと死球で1,2塁のチャンスが続いたが、案の定、最近のエルズベリーと同じで、まったく打てる気配がないマーク・テシェイラが、インハイのカットボールを空振りして三球三振。8回裏終了。


ま、こんなもんだろうな・・・。
あとはズルズルっと負けるだけだろ。


9回裏。スコアは2−4のまま。タンパベイのピッチャーは、負けのこんでいるタンパベイにあっても今シーズン17セーブを挙げているクローザーの速球派左腕ジェイク・マギー

ま、終わりだろうね、なんて思ってると、いきなりチェイス・ヘッドリーの顔面にデッドボール。無死1塁。

ここで左腕が大得意な左打者、イチロー登場、すかさずセンターにライナーの二塁打!!! 無死2、3塁。さすが、左腕に強いイチロー。
ほらな。イチローを左腕先発のゲームでも使いなさい、無能なジョー・ジラルディ。

おおお。なにかあるかも・・。
と、思ってると・・・

クリス・ヤング、サヨナラ3ラン!!



まぁ、元が勝てる試合じゃなかっただけに、驚いたのもあるけどね(笑)


実は、ヤンキースタジアムでチェイス・ヘッドリーが顔面にデッドボールを受けたほぼ同時刻に、ミルウォーキーのミラー・パークで行われてるミルウォーキー対マイアミ戦で、今期絶好調でナ・リーグ二冠を維持してるジャンカルロ・スタントンが顔面にデッドボールを直撃されてたのね。
2つの「顔面へのデッドボール」は時間にしてわずか数分(感覚的には1分以下)しか違わなかったから、ほんとビックリ。

どうやらツイッター情報によるとスタントンの怪我は、血が打席の外にまで飛び散るのが見えたほど酷いものだったらしく、彼はとうとう起き上がることができず、ストレッチャーにのせられたままボールパークを後にした。(ちなみに、動画で倒れたスタントンを横にしゃがんで介護しているスキンヘッドの選手は、元・楽天で、今はマーリンズで活躍中のケイシー・マギー




どうやらベンチにいた選手や監督コーチがスタントンの容態が気になって、全員ダグアウト裏に行っちゃった時間帯があったらしく、ベンチが空っぽになってしまい、一時ゲームが完全に停止するほど混乱したらしい。
いくら大怪我した選手がでたとはいえ、ベンチが空になるなんて話、MLBでも聞いたことがない。



スタントンは、これからのMLBを支えていく若い実力あるスタープレーヤー。それだけに、何もないといいけど、こればっかりは祈るほかない。




damejima at 12:19

August 26, 2014

野球にかぎらず、記録更新というものには2つの瞬間がある。

ひとつは「並びかけた」瞬間。
もうひとつが、「抜き去った」瞬間だ。


いうまでもなくブログ主は、他のどんなことより「他者を追い抜くこと」に快感をおぼえるタチであり(笑)、「スピードで相手をぶっこ抜いて、あっという間に自分の背後に置き去りにする一瞬」が、このうえなく好きなのだ。
水泳の記録などもそうだが、タイ記録なんてものに「更新の快楽」はない。極端な言い方をすれば、タイ記録など記録ではないと言う人がいてもまったくおかしくないし、むしろ同感する。



だからイチローのMLBでのシングルヒット数がハンク・アーロンのそれに並んだといっても、別になんの感慨もないし、また、ハンク・アーロンのシングルヒット数を抜いた後も、たぶん別になんとも思わない。

たしかにハンク・アーロンは、ホームランの多さだけでなく、ヒット数においても、MLB通算3771本と、あの4189安打を打った球聖タイ・カッブにつぐMLB歴代3位の安打数記録をもつ稀代の安打製造マシンのひとりではある。
だがイチローは、日米通算ではあるものの、とっくの昔にアーロンを凌駕する4000本オーバーの通算ヒット数を記録しているわけであって、安打製造機の分野では日本製の最高峰マシンほうがアメリカ製よりも優秀であることをとっくの昔に証明し終わっている。
(そして、アメリカン・フットボールにおいてクオーターバックとランニングバックの役割の違いを無視して両者のスタッツを直接比較するのが馬鹿げているのと同じように、野球においてもホームランバッタータイプの打者とスピードスタータイプを直接比較することに意味などない)



むしろ、ここ最近でイチローの達成した記録で感慨深かったのは、15シーズンで2810本あまりのヒットを打ったジョージ・シスラーの通算ヒット数を、イチローが1シーズン早く、14シーズンで抜き去ったことのほうだ。これは嬉しかった。


誰しも高速道路で走行車線でノロノロ走っている遅い車を追い抜くときに経験することだが、「抜く側」からみた場合、走っている途中に容易に肩を並べることができる相手というものは、「抜けることが、最初からわかっている相手」だ。息も絶え絶えゴール地点でようやく追いつけた相手とは、わけが違う。

あえてぶっちゃけた言い方をすれば、イチローがジョージ・シスラーの15シーズンでの通算安打数記録を抜くこと自体は、長期休養を強いられる大怪我でもないかぎり、最初からわかっていた。


だが、それでも不思議なのは、シスラーの通算安打数記録に関してだけは、ハイウェイで他車を追い抜く爽快感とは違い、「イチローが肩を並べたとき」、ある種の感慨が感じられたことだった。
というのも、シスラーという人の記録には、もし彼がもっと恵まれた時代、恵まれた健康、恵まれた環境でプレーしていら、どれほどすざまじい記録をたたき出していただろう、という、「表面的な数字だけからではわからない、凄み」があるからだ。


よく早世した歴史上の人物について、もし彼(彼女)が生きて次の時代を過ごしたなら、どんな偉業を達成し、どんな人生をたどっただろうと想像をかきたてられる人物がいるわけだが、それと似たような感慨が、ことジョージ・シスラーの記録にはある。

そして、「日本のイチローファンがシスラーの記録を調べていて、想像をかきたてられる経験」は、アメリカのMLBファンがイチローを見たときにも同じように起こる。
多くのアメリカのMLBファンが、「もし、この選手がキャリアの最初からMLBでプレーしていたなら、どんな凄い記録をたたき出しただろう・・・」と想像をかきたてられ、その思いをSNSなどに綴っているのをよく見かけるのである。


そうした「ヒトの想像力をインスパイアする人物」は、歴史上、そうたびたび登場するものじゃない。

まさにジョージ・シスラーがそのひとりであり、そして同じように、イチローもそうだ。野球100年の隔たりを越え、ヒトとヒトが出会ったのは、両者がまさに「100年ごとにひとり出現するレベルの人物」だったからだ。


だからこそ、ジョージ・シスラーについては、通常の記録の更新時のように「相手を凌駕したときにだけ、快楽がある」のではなくて、むしろ、「肩を並べたときに、あらためて畏敬や畏怖の念を感じた」のだろう。そう、思う。

damejima at 11:59

July 08, 2014

2014年7月5日 ミネソタ戦イチロー見逃し三振
出典:Brooks Baseball
http://www.brooksbaseball.net/pfxVB/pfx.php?s_type=3&sp_type=1&year=2014&month=7&day=5&pitchSel=450282&game=gid_2014_07_05_nyamlb_minmlb_1/&prevGame=gid_2014_07_05_nyamlb_minmlb_1/&prevDate=75&batterX=65

7月5日のミネソタ戦9回表に、球審Marty Fosterの誤審による「アウトコース低め」の判定で見逃し三振させられた(投手:グレン・パーキンス)ことが火をつける形で、翌日、7月6日のミネソタ戦でイチローは、「すべて初球を、レフト前ヒット3本」を放ってみせた。ほんと、負けず嫌いな男ではある(笑)

特に面白かったのは、4回、先頭打者でて初球アウトコース低めをレフト前に打ち返したヒット。イチローは、ミネソタのリリーフ、アンソニー・スウォーザクが問題の「アウトコースの低め」を初球に投げてきたのを、待ってましたとばかり、レフト前に打ちかえした。
いうまでもなく、この打席、実際イチローは「アウトコース低め」が来るのを、手ぐすねひいて待っていたと思う。こうして相手のスカウティングを「2倍がえしする技術」があったからこそ、イチローはMLBで14年もやってこれたのだ。


Brooks BaseballでのPitch F/Xデータでみても、7月5日ミネソタ戦9回の見逃し三振は、高さ・コースとも、ほんのわずかストライクゾーンを外れていて、球審Marty Fosterの「誤審」なのはハッキリしている。
とはいえ、40歳にして、こんな際どい球まで見分けるイチローの相変わらずの選球眼にも感心するが、おそらくは、彼を最も苛立たせた最も大きな問題はそこではないだろうと思う。


一度2011年の記事で書いたことがあるが、MLBの球審は「コーナーぎりぎりの球」をあまりストライク判定しないのが普通だ。(もちろん、何度も書いてきたようにアンパイアごとの個人差は非常に大きく存在する)
参考記事:2011年7月11日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (5)カウント3-0ではゾーンを広げて四球を避け、カウント0-2ではゾーンを狭めて三振を避ける。あらためて明らかになったアンパイアの「故意にゲームをつくる行為」。 | Damejima's HARDBALL

以下のデータは、2011年7月11日の記事で引用したものと同じものを再掲したものだが、これでひとめで分かる通り、おおまかに言うなら「MLBの球審のストライクゾーンは、円を描くように分布している」のである。
カウント0-3と、カウント0-2の、ストライクゾーンの違い
出典:Pitching Data Helps Quantify Umpire Mistakes | Playbook | WIRED

だから、いくら「左バッターのアウトコースのストライクゾーンが、とてつもなく広い」のがMLBアンパイアの常識であるとはいえ、だからといって、左バッターのアウトコース低めのコーナーぎりぎりのところをスライダーやシンカーがかすめたように見えたからといって、そうそう簡単にストライクといってもらえないのが、MLBの常識、コモンセンスというものなのだ。(だから、かつてシアトルのダメ捕手城島がMLBのピッチャーにアウトコース低めコーナーいっぱいのスライダーばかり要求したのは、あまりにもMLBを知らない、無意味で馬鹿げた行為なのだ)


7月5日の球審Marty Fosterは、もともと「高めをまったくとらないMLBアンパイア」のひとりではあるが、かといって、「低め」ならなんでもストライクにするアンパイア、というわけではない。
Marty Fosterの7月5日の判定傾向に限って言えば、右打者、左打者問わず、「アウトコースの判定」が滅茶苦茶だったのであって、これほど不安定なアウトコース判定をされて、打者たちがアタマにこないほうがどうかしている。
データ出典:BrooksBaseball.net: PITCHf/x Tool | Strikezone Maps
2014年7月5日Marty Fosterの判定傾向



加えていうと、2014シーズンのイチローに対する判定は、細かいデータまで集めきれないが、印象としては、「低めをやたらとストライクコールされてばかりいた印象」があったのである。
だからか、今シーズンのイチローは、真ん中低めなど、低めを空振り三振するケースが増えていて、打席数が多くない割に三振数が多すぎた。



そうなると、スカウティング全盛時代だから、もちろん投手の側だって、馬鹿じゃない。イチローの三振パターンみたいなものを割り出し、それを執拗に繰り返してくるのが、今のMLBだ。

2014年版のイチロー攻略パターンは、いくつかあるが、例えば「イチローの打席だけでは、どういうものかストライクとコールされるアウトコース低めいっぱいの球でカウントを追い込んでおき、次に、遊び球でアウトコース低めに外れる球を投げておいて、4球目にインコースのハーフハイトに投げる」、または「追い込んだら、3球目にインハイを投げておいて、4球目にアウトコース低めいっぱいに投げる」という感じだった。

つまり、イチローの打席特有のアウトコース低めのゾーンの広さがバッティングに少なからず影響していたと思えるわけだ。(それでも3割打っているのは、さすがだが)


7月5日のアウトコース低めの誤審で見逃し三振させられ、いい加減にキレたのか、イチローが、その「ボール気味なのに、やたらストライク判定されまくって、クソ頭にくる低めの球」をしばきまくったのが、7月6日の3安打、というわけだ(笑)

2013シーズンにスカウティングされまくったのは、誰がどうみても明らかで、ヤンキースがどうみても高額契約なんか結ぶべきではなかった外野手アルフォンソ・ソリアーノが予想どおりDFAになって、ライトの定位置がイチローのものになった7月は、もともと苦手でもなんでもない左投手が先発するゲームでもスターターとして出場できそうだし、ひさしぶりにファイヤーな予感がする。(もちん、先発投手が足りないのなんて最初からわかりきっている馬鹿なヤンキースが、投手と交換にイチローをポストシーズン進出の可能性のあるチームに放出してくれるのが、最良の結果だが)

damejima at 15:08

June 14, 2014

ヤンキースがセーフコでゲームした木曜日、素晴らしい出来事があった。ひとりの野球ファンが長年の念願を果たしたのだ。
Lifelong M’s fan finally meets her hero (PHOTOS) | Q13 FOX News





Q13 FOXのライター、Lauren Padgett嬢が書いた心温まる記事によると、Joanna Hallさんは脳性まひと白内障をわずらっているようだ。


でも、そんなこと、断じて関係ない。

誰だって、自分が好きなプレーヤーに近くで会える日が来ることを祈っているものだし、まして、そのプレーヤーと握手できて、声までかけてもらって、さらにサインボールまでもらったら、有頂天になる。天にのぼるような気持ちになる。誰だって。
彼女がうれしいのは、そして、そんな幸せそうな彼女を見ていて微笑ましいのは、彼女が僕とまったく同じ、熱烈な野球ファンだからだ。ジョアンナがどういうシチュエーションにある人かなんて、関係ない。

おめでとう。
Joanna。

僕は心から、心から、あなたがうらやましいよ。

Needless to say, the surprise was a home run for Ichiro’s number one fan. by Lauren Padgett

Absolutely!

damejima at 11:13

April 05, 2014



New York Yankees at Toronto Blue Jays - April 4, 2014 | MLB.com Classic

1点ビハインドで迎えた田中将初先発ゲームの3回表、イチローの内野ゴロは明らかに「セーフ」で内野安打のはずだったが、1塁塁審のDana DeMuthの判定は「アウト」。

ここで監督ジョー・ジラルディが「チャレンジ」して、「セーフ」をもぎとったとたんに次のバッターの新人ソラルテに2点タイムリー・ツーベースが出て、ヤンキースが序盤に押されていたトロント戦の主導権を奪い返した。
MLB Instant Replay Review 029, 031: Dana DeMuth (01, 02) | Close Call Sports & Umpire Ejection Fantasy League


その後、ヤンキースがリードのまま8回表になって、ジャコビー・エルズベリーが打ったピッチャー・ライナーの1塁でのクロスプレー判定で、ジラルディは再びアンパイアのところに抗議に行き、そのままアンパイアが、「この試合2度目のInstant Replayによる判定」を行ったのだが、この2度目のビデオ判定は、「1度目が成功したから、2度目のチャレンジができた」わけではない




既に記事に書いておいたことだが、今シーズンから始まったExpanded Replay(ホームランだけでなく、他のさまざまなプレーに拡大されたインスタント・リプレイによるビデオ判定システム)のレギュレーションにおいては「7イニング以降には、両軍監督にチャレンジする権利はない」のだ。
「1度目のチャレンジが成功すれば、2度目もチャレンジできる(3度目はない)」のは確かだが、同時に、「7回以降は両軍監督にチャレンジする権利はない」ことを、大半のメディアとファンが忘れている。


では、なぜ「8回表にビデオ判定を行った」かといえば、あくまで「審判団が必要だと認めた」からであって、「ヤンキース側の2度目のチャレンジ」ではない。
そもそもジラルディがアンパイアのところに行った理由も、判定への抗議のためでって、その抗議によってアンパイアが「自主的判断」でビデオ判定を行うよう促したいという強い意図はあったにしても、だからといって「7回を過ぎているのに、2度目のチャレンジができる」わけではない。
2014年4月3日、今年から拡張されたMLBのインスタント・リプレイ。いまだによく周知されていないレギュレーションのまとめと、4つのMLB記録から明らかになりつつある「1塁塁審の問題」。 | Damejima's HARDBALL

1塁でのクロスプレーの多いイチローだが、近年では明らかに「セーフ」のケースで「アウト」と判定されるケースも増えていただけに、イチローにとっては、このExpanded Replayの多用は「ヒットの増加」を意味するものになりそうだ。


初先発した田中将だが、なんでもこの100年でヤンキースの新人投手が先発デビュー戦で8三振以上奪ったのは、1997年の伊良部投手(9奪三振)以来、2人目らしい。
まぁ、奪三振数はともかく、ヤンキースの新キャッチャーブライアン・マッキャンとの呼吸がイマイチ噛み合ってないことが露呈したことや、マッキャンのサイン通り投げているとスプリットばかりになってしまって配球が単調になり、抜けたスプリットの出現率が高くなることなど、たくさんの課題が見つかったゲームだったといえる。

マーク・テシェイラの故障、観客の乱入、2度のビデオ判定と、いろいろあったゲームだが、まぁ、田中の球については、良くも悪くも「想定内」の感じで、特に驚きはない。何度も書いてきたように、「ストレートとスプリットだけで押していくピッチング」では、遠からず行き詰ると思う。



蛇足だが、1塁ランナーのイチローが、牽制悪送球で三塁を狙ってタッチアウトになった場面があった。
あれはヤンキースのサード・コーチャーが手を回したりするから、ああミスが起こることになるのであって、イチローにまったく非はない。(下記の動画でも、実況アナが "Ichiro takes a look at third-base coach, he is giving him a wave" 「イチローがチラっとサードベースコーチを見たっ、コーチは腕を回している!」とリアルタイムで証言している)



ヤンキースのサード・コーチャーは、壊れた信号機として地元ヤンキースファンに有名なロブ・トムソン(Rob Thomson)だ。

2012年にも一度記事にしたことがあるが、ああいう「ランナーからボールの処理の遅れが見えないケース」で次の塁を狙うかどうかの判断は、ランナーのイチローではなくて、サード・コーチャーが判断してランナーに指示する。


2012年のポストシーズンのディヴィジョンシリーズで、「完全にアウトのタイミング」でホームに突入したイチローが、ボルチモアのキャッチャー、マット・ウィータースの2度のタッチを絶妙にかいくぐって奇跡的に生還した「マトリクス・スライド」があった。
だが、あの奇跡的なプレーが生まれた理由も、元を正せば原因は同じサード・コーチャー、ロブ・トムソンであって、どうみてもホーム突入は無理なのに、トムソンが腕をグルグル回し、イチローにホーム突入を指示したからだ。
2012年10月9日、2012オクトーバー・ブック 『マトリクス・スライド』。ついに揃った 『イチロー 三種の神器』。 | Damejima's HARDBALL



2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 位置解説






damejima at 11:28

March 18, 2014

とあるカナダの野球コーチの方がツイッターに挙げていた写真が、イチローのMLBでのバッティング面の秀逸さを物語っていて、なかなか興味深かった。ツイッター上のやりとりで許可をもらったので、転載して、そこから記事をひとつ書くことにした。(なお、オリジナルの写真にはアルファベットのAとかBという文字はない。この写真の意味について説明を加える上で必要だったため、当ブログ側で後から付け加えた)

イチローのスイング
ライアン・ブラウンのスイング


note:
今回の記事は、カナダのオンタリオ州Mississauga (=愛知県刈谷市と姉妹都市提携を結んでいるカナダの都市。ミシサガ、ミササガなど、日本語での読み方は数種類ある)で、子供向けの野球コーチをしていらっしゃるらしいDean Mariani氏(@MNBATigers2002)のツイートから許可を得て拝借させていただいた。二つ返事で快く転載を許可いただいたMariani氏のご厚意に、この場を借りてあらためて御礼申し上げたい。(下記がオリジナル画像)



さて、2つの写真を見比べてみる。
イチローライアン・ブラウンである。

子供たちに野球を教える仕事をなさっているらしいMariani氏が、2人の野手のスイングを並べることで指摘しようとしたことは、(質問して回答をもらったわけではないので、あくまで推測になるが) おそらく2人の野手のスイングの「共通点」だろうと思う。

もう少し具体的に書くと、氏が2人の野手のスイングの共通点として最も強調したかったのは、「バットの位置が、スイングのかなり早い段階で、加工後の写真で示したA点に準備されていること」だろうと思う。
バットはその後、A点とボールとを結んだ直線上にあるコンタクトポイントB点(=加工後の写真で示したB点)に向かって、A点からB点への最短距離をトレースする軌道上を動く。その結果、コンタクト率が高まるというわけだ。
「誰よりもボールコンタクト率の高いスイングをしたければ、こう打て」と、カナダの野球指導者がイチローを模範として現地の子供たちにスイングの基本を説明してくださっているのを見ると、イチローファンとしてやはり鼻が高い。


氏の指摘は既に他人が余分なコメントを加える必要のないストーリーなわけだが、このブログではあえて、この2人のスイングの「相違点」に着目してみることで、イチローのMLB加入後のスイングの意味をあらためて味わってみることにした。


「相違点」を以下に挙げてみる。
Aの位置
イチローは左足よりかなり内側
ブラウンはちょうど右足の上あたり

AとBとの距離
イチローは短く、ブラウンは長い

Bの位置
イチローは右足のかなり内側
ブラウンはちょうど左足の上あたり

ボールとBの距離
イチローは非常に短く、ブラウンはずっと長い

ボールの位置
イチローでは、既に右足あたりまで来ている
ブラウンではもっと離れた遠い位置にある


Mariani氏がバッティングフォームの模範例として取り上げていらっしゃるこれらの写真は、イチローとライアン・ブラウンがクリーンヒットやホームランを打ったときの写真だろうとは思ったが、残念ながら確かめていないので、もしかするとイチローは詰まった内野ゴロか意図的なファウル、ブラウンはサード側に切れるファウルや空振りをした打席なのかもしれない(笑)
なので、本当なら、投手の投げた球種、スピード、コース、そして、2人がどういう打球を打ったか、ヒットになったのか、そうでないのかを詳しく知ってからコメントすべきところなのだが、まぁ、しかたがない。


細かいこと抜きに大雑把な話として、という前提で語るとして、イチローとブラウンのスイングの「相違点」は歴然としている。

イチローのほうが、ブラウンより、はるかにバットの出を遅らせて、ボールを懐に呼び込んで打っている

イチローの場合、バットがまだA点にあるとき、ボールは既に「コンタクトポイントB点に到達する寸前」まで来ている。おそらく「ボールとB点の距離」は20センチ足らずしかない。
仮にボールとB点の距離を20センチ、球速を130km/hとして計算すると、「ボールがB点に到達するまでの時間」は、わずか約0.00554秒しかない。

これがブラウンの場合になると、「ボールとB点の距離」はイチローよりずっと広く、およそ2倍ちょっとくらいはある感じに見える。仮にボールとB点の距離が40センチ、球速が同じ130/hだとすると、「ボールがB点に到達するまでの時間」は、イチローの2倍、約0.01108秒となる。


もし仮に「2人が同じ時間で、バットの芯をA点からB点に移動させた」のだとしたら、「短距離の移動で済んでしまうイチロー」より、「より長い距離、バットを移動させなければならないライアン・ブラウンのほうが、スイングスピードが速い」ことになる。

だが、もちろん、実際には話はまるで逆だ。
(もちろん、この2枚の写真の投球の速度が同じという前提が必要だが)
イチローのように体に近い位置に引き付けて打つ場合、ボールは、コンタクトポイントであるB点まで、それこそ「アッという間」に到達してしまう。
だから、球速が同じなら、まだボールが遠くにある段階でスイングを開始するライアン・ブラウンよりも、呼び込んで打つイチローのほうが、はるかに速いスピードでバットをスイングしているのである。

この事実は、たとえ「A点とB点の距離」、つまり「バットをライン上に準備した位置Aから、コンタクトポイントBまでの距離」が、ブラウンのほうが多少長かろうと、変わることはない。
なぜなら、「A点からB点までの距離の個人差」は、人によって2倍もの差がつくことなどありえないが、「ボールがB点に到達する距離の個人差」は、イチローとブラウンの違いのように、2倍以上もの個人差になることが普通にありうるからだ。

にもかかわらず、
「ブラウンのようなタイミングで打つスラッガータイプのほうが、体に近いタイミングで打つイチローより、要求されるスイングスピードは、ずっと速い」とか、物理をまるで無視して思い込んでしまっている人は、思いのほか多い
この際だから、心当たりのある方はこれまでの自分の間違いを修正しておくべきだろう(笑)


また、「ボールがB点に到達するまでの距離が長いこと」は、極端にいえば「ゆっくり振っても間に合う」ことを意味する。
だから、「長打を打つためにはよほど早くスイングしなければ、間にあわない」というのは誤解なのであって、体にチカラを入れまくって、重いバットをあわてて振り回す必要は、実はどこにもないのだ。



つまるところ、
打者に要求されるスイングスピードを決めるファクターは、「バットをA点からB点まで移動させる距離の長さ」ではなく、ちょっとややこしい言い方にはなるが、「ボールからB点までの距離」、すなわち、「その打者がバットの芯をA点に準備し終えたときに、ボールが存在する位置」と、「その打者が、自分の身体のどのへんでボールをさばきたいかというB点」との距離で決まる


当然ながら、タイミングの異なるイチローとブラウンでは、必要なバットの重さや硬さ、材質や形状、全てが変わってくる。
また、左足が外旋しやすい右バッターと、右足が外旋しにくい左バッターでは、コンタクト時に許される体の開きがまったく違ってくる。



余談だが、この2枚の写真からいえることが、もうひとつある。
バッターが、早いタイミングでA点にバットを準備し、必要十分なスイングスピードでA点からB点にバットを移動させることができるなら、実は、スイングを始動してからバットをA点まで移動させる間の、バットの「移動ルート」や「スイング速度」には、「スイングはこういう形で始動しなければならない」とか、「こういう軌道でスイングし始めなければならない」とか、野球指導者が決めつけるほどの「厳しい制約条件」は、実は「ほとんどないということだ。
目指すのが、サダハル・オー直伝のダウンスイングだろうが、プリンス・フィルダーばりのアッパースイングだろうが、落合博満スタイルだろうが、クラウチングスタイルだろうが、スイング初期段階でのバットの移動ルートや速度には、ほとんど制約がないのだ。バットがボールに当たる瞬間の形さえビシっと決められるならば、あとは好きにバットを構えて、好きなように振りはじめればいい(笑)


日本の某有名フォーム分析サイトの主(あるじ)がNPB時代のイチローについて「イチローよりボールを見れる打者を見たことがない」と書いているのを見たことがある。それはMLBにおけるIchiroでも、同じように成り立っている。

だが、ただボールを長く見ることができるだけのバッターだったなら、イチローがIchiroになることはなかっただろう。
鈴木一朗が、イチローに、さらにIchiroになれたのは、彼に「たぐいまれなスイングスピード」があったからこそであることを、この1枚の写真が物語ってくれている。いうまでもなく、それはバットの重量の軽重以前の問題だ。

damejima at 04:51

October 04, 2013

ヤンキース移籍後のイチローの全スタメン時の打順と守備位置のデータを残しておく。
黄色い色のついた部分がイチローの出場ゲームと打順だ。詳細はパソコン上で画像部分をクリックして別窓で見てもらうしかないが、そのまま見てもらっただけでも、「黄色の部分の移動」をおおまかに眺めるだけで、2013シーズンのイチローの「扱い」がいかにコロコロ変化したか、手にとるようにわかるはずだ。


2012年
(イチロー加入以降のみ)

移籍後、ほとんどのゲームで8番か9番を打たされていたが、9月半ばになってほぼ2番に固定された。イチローの1番起用は4試合、2番起用は10試合。
チームは9月終盤のイバニェス9月22日以降 打率.405 15安打 4HR 9打点)とイチロー9月19日以降 打率.394 28安打 2HR 9打点)の活躍でかろうじてボルチモアの追撃を振り切って地区優勝した。

2012年ヤンキース全打順(イチロー加入以降)
データ出典:2013 New York Yankees Batting Orders - Baseball-Reference.com



2013年

あれほど地区優勝に貢献しながら、イチローの2013シーズンのスタートは6番あるいは7番が中心だった。またヤンキースはラウル・イバニェスについても再契約をオファーせず、彼は移籍先のシアトルで29ホームランを打って気を吐いた。
イチローがようやく2番に固定されるようになったのは、6月中旬以降から7月下旬まで。この時期チームはオールスターブレイクを首位で折り返した。

7月下旬、ジーターの「復帰と休養の繰り返し」が始まる。この「繰り返し」は3度にわたり、そのたびにイチローの打順は「ジーターの不安定な体調しだい」で2番と下位を往復するようになり、そこにソリアーノ獲得が重なり、イチローの起用は「6番または7番」で、しかも対右投手のほうが打率が低いにもかかわらず「先発が右投手だったとき限定」という意味のわからない起用になっていく。
(「右投手限定起用」については、以下の記事がより詳しい 参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。

結局イチローの1番起用は18試合、2番起用は38試合にとどまった。
2012年にヤンキースの2番を打った選手は、5人しかいなかったが、2013年はなんと3倍、「のべ15人」を数え、いかに今年のヤンキースが打順をいじくり倒したかがわかる結果になっている。2012年は「20人以上の選手が打った打順」はひとつもなかったが、2013年は、6番を20人、7番を21人の選手が打っている。

2013年ヤンキース全打順
データ出典:2012 New York Yankees Batting Orders - Baseball-Reference.com

damejima at 01:37

September 18, 2013

『共同通信ホームラン写真捏造事件』はともかく、アメリカの全国紙USA Todayでつい最近起きた『Debby Wong事件』のことは知らない人がほとんどだろうと思うけれど、そういう人にこそ、あの事件を知って、覚えておいてほしいと思うので、まず『Debby Wong事件』のあらましを説明する。


このブログが『Debby Wong事件』と呼ぶ「事件」は、USA Todayのカメラマン、Debby Wongが、自らの怠慢とミスでイチローの日米通算4000安打達成時の決定的瞬間の写真を撮りそこなったにもかかわらず、自分の撮影失敗を周囲に隠しとおしたまま、まったく別の日に撮影した「似た感じの、イチローがヒットを打った瞬間の写真」を、「イチロー日米通算4000安打達成時の写真」と偽ってメディアに配信した事件である。
「Debby Wongが用意したニセのイチロー4000安打達成写真」は、USA Todayが作成した「イチロー日米通算4000安打達成を報じる電子版記事」のビジュアルとして採用されて公開されたほか、USA Today傘下にあるUSA Today Sports Imageのウェブサイトにおいても公開された。

事件発覚直後、USA Todayは、Debby WongとUSA Today Sports Imageとの間で結んでいた写真提供契約を即座に打ち切った


『Debby Wong事件』を最初に報道したのは、当事者であるUSA Todayではなく、全米報道写真家協会(NPPA)のDonald Winslow氏で、2013年8月30日にNPPAのウェブサイトにアップされた。
この秋以降から、大手通信社のひとつ、ロイター通信が、ロイターと契約したカメラマンが撮影した写真を買い上げて契約各社へ配信するという従来のスタイルに見切りをつけ、かわりにUSA Today傘下にあるUSA Today Sports Image社の写真をロイターを通じて配信する手法に切り替えるという発表を行ったばかりだったことから、NPPAはDebby Wong事件を、単なる「個人的なミスを隠蔽するための写真すりかえ」としてではなく、スポーツジャーナリズムの今後に大きく関わる事件として扱った。
元記事A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA
資料記事Damejima's HARDBALL:2013年8月31日、『Debby Wong事件』 〜スポーツ・カメラマンDebby Wongが、「まったく別の場面のイチローの写真」を「イチロー4000安打の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事として公開していた事件。


上記の事件をひきおこしたDebby Wongは契約を打ち切られたわけだが、同時期に日本で似た事件が発覚した。それが、以下の「共同通信ホームラン写真捏造事件」だ。
ほぼ同時期に日米で似たような事件が発覚したことには、正直、驚いた。


共同通信社は17日、昨年5月〜今年7月のプロ野球3試合で、本塁打の写真と偽って同じ選手の別打席の写真3枚を配信していたと明らかにした。大阪支社編集局写真映像部の男性写真記者(28)が、本塁打の場面を撮影できず、別の写真を偽って出稿していた。他にも偽装して配信した可能性があるといい、同社は他の競技も含めて調査し、関係者を処分する方針。

3試合は、7月14日の阪神−DeNA戦、昨年9月4日のオリックス−ロッテ戦、昨年5月19日の阪神−楽天戦。ブランコ選手(DeNA)と根元俊一選手(ロッテ)、テレーロ選手(楽天)が本塁打を放った写真として加盟社に配信した。

同社によると、今月8日、この記者が出稿に手間取っていたため、写真映像部のデスクがパソコンを確認したところ、記者が同日撮影したプロ野球の試合の写真を、順番を入れ替えて保存していたことに気付いた。不審に思い、記者が撮影した昨春以降の写真を確認すると、3枚の写真説明が実際とは異なっていたことが判明したという。(太字はブログ側による)
<共同通信>プロ野球本塁打の写真偽装し配信 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース


いうまでもないことだが、新聞やテレビといった「マスメディア」は、予算や人員などの制約から、「自前で、ありとあらゆる事件、イベント、ニュースのオリジナルな情報ソースを用意できる」わけではない。

むしろメディアは、ありとあらゆる事件・イベントを、「自前の」記者・カメラマンを駆使して、「自前で」取材し、「自前で」記事と写真や動画を調達するかわりに、マスメディアのための情報提供サービスである「通信社」を情報源として、通信社の提供する大量のメニューの中から、その日に視聴者や読者に配信したい情報を「買い上げる」ことで、ようやくその日に必要とされるニュースの「品揃えのすべて」を調達できる。
そうした状況は、たとえナショナルメディアの大きな新聞社であっても、変わらない。メディアとして彼らが重きを置きたがる政治・経済は自前で取材したがるが、スポーツや文化は通信社から買いあげる情報に頼りっきりというケースは、当然ながら多々ある。
マスメディアは昔から大量のソースを、自前で取材することなく、「通信社」から仕入れたネタを情報として配信することで成り立ってきた「情報ブローカー」のような面が少なからずあったが、今ではさらに、新鮮味のあるネタ作りの下手な彼らは、インターネットからもたくさんのネタをこっそりピックアップするようになっている。

だが、マスメディアが通信社から有料で買い上げ続ける「ネタ」の中に、「ニセモノ」が混じっている可能性について、マスメディアが十分神経と予算を使って検査してきたとはいえない
それを「マスメディアと通信社の間の信頼関係」といえば聞こえはいいが、要は、『Debby Wong事件』にしても、『共同通信ホームラン写真捏造事件』にしても、マスメディアがこれまで通信社に「情報の製造」そのものを「丸投げ」しておいて、しかも入ってくるネタをほとんどチェックせずに配信していたことが、こうした情報捏造事件の発生を招いた背景のひとつでもある、ということだ。


だが、これらの事件は「マスメディアって、ほんとダメね」という嘆息で終われない。
なぜなら、それは、マスメディアにとっての外部情報源である「通信社」のひとつ、ロイターが、「従来のようにフリーのカメラマンから写真を買い上げる手法を打ち切って、写真の収集事業そのものを外部委託する」というニュースでわかるように、マスメディアが情報源として頼り切っている「通信社」それ自体さえも、「自前で」情報収集するのを止めてしまい、通信社のさらに外部にある情報源から通信社が「情報を買い上げ」、それを「マスメディアに向けて丸投げする」、そんな困った時代になってきている、ということがあるからだ。

当然のことながら、情報提供会社から通信社、通信社からマスメディア、マスメディアから視聴者・読者へと、「情報が丸投げされるステップ」が多くなればなるほど、情報の真偽のチェックは難しくなり、また、ニセ情報が捏造される危険性は増大していく


今回の日本の『共同通信ホームラン写真捏造事件』では、3件もの写真において「すりかえ」が行われている。この件数の「多さ」からみて、過去においてもこうした捏造行為が多々行われてきただろうと考えるのは、ごく自然な発想だ。
USA TodayはDebby Wong事件でカメラマンと即座に関係を断ったわけだが、もし共同通信がみずからをジャーナリズムの一角であると今後も自負し続けたいのであれば、共同通信も、USA Today同様、たとえそのカメラマンが正社員であろうとなんだろうと、懲戒解雇クラスの厳罰を科すくらいでないと、共同通信がこれからジャーナリズムがどうのこうのと言えなくなるような危機だと、ブログ主は考える。


それにしても、アメリカの『Debby Wong事件』では、事件のかなり詳しい経緯や撮影現場での生々しいエピソード、捏造を犯したカメラマンの「実名」もきちんと報道されているというのに、日本の『共同通信ホームラン写真捏造事件』では、詳しい経緯も、カメラマンの名前も、まるで報道されておらず、「ぬるい」こと、このうえない。
これこそ、なんとも嘆かわしいジャーナリズムの「日米の差」のひとつである。

damejima at 08:35

September 08, 2013

東京開催を示すIOCロゲ会長

IOC ロゲ会長は、2020年夏季五輪が東京に決まったことについて、投票直前に行われ、東京開催を決定づけたといわれる安倍首相のスピーチを念頭に置きつつ、「オリンピックの価値を高め、同時に、次世代にスポーツの意義を伝えるためのイベントとして、よく計画され安全なオリンピックを開催する。そういう“明日を見つける” 招待だった」と語ったが、この発言の「オリンピック」という部分を「野球」に置き換えて読むと、なかなか面白い。


例えば今のヤンキースだが、一部メディアや関係者は、あいもかわらずヤンキースが勝つことこそMLB全体の至上命令であるとか思っているかもしれないが、もし「今の」ヤンキースが勝つことが「野球の価値を高め、同時に、次の世代に野球の意義を伝え、広める」ことだと思っているとしたら、それは単なる見識の無さ、もしくは、思い上がりに過ぎない。

たとえば、エリック・クラプトンを素晴らしいブルース・ミュージシャンのひとりだと考えることは別に構わない。だが、クラプトンがブルースの全て、などと考えるのは、明らかに間違っている。同じように、ヤンキースは確かに素晴らしい野球チームのひとつではある。だが、ベースボールの全て、ではない。


「今のままのヤンキース」が勝ち続けてポストシーズンに進出したとしても、次世代の野球、そして次世代のヤンキースに、何も残りはしない。

野球というスポーツは、新しい時代を迎えようとしている。パワーとともに、分析力に裏付けられた集中力を攻守に兼ね備えたチームが躍進を遂げつつある。
野球はもはや、カネとステロイドにモノをいわせれば勝てる「マネーゲーム」ではないし、かといって、OPSのようなデタラメ指標を作った数字オタクが支配する「数字ゲーム」でもない。

ひるがえって、2013年ヤンキース野球は、インテリジェンスの裏付けを欠いた古い野球だ。その戦略的な粗さ、計画性の無さ、場当たり的な選手獲得、状況分析力の無さ、守備の軽視、無駄に使われ続ける予算執行のだらしなさ、PEDに関する態度の曖昧さ。むしろ、ヤンキースがそれら全てを改めることこそ、「野球の価値を高め、次の世代に野球の意義や面白さを伝える」ことになる。


ヤンキースは、自らが次世代に向けて生まれ変わるべきターニングポイントに来ていることを、もっと自覚すべきだ。それをきちんと考えるなら、いまジョー・ジラルディがやっているような野球は、From-Hand-To-Mouth-Baseballであり、こんな「毎日毎日、場当たり的なこと」ばかりやっているヤンキースが、次世代ヤンキースが育つ契機になるわけがない。

damejima at 11:12

August 31, 2013

2013年8月30日 イチロー7号逆転2ラン TOP page
Baltimore Orioles at New York Yankees - August 30, 2013 | MLB.com Classic

動画:Video: BAL@NYY: Ichiro tattoos a two-run shot to right field | MLB.com


今日のホームランをリアルタイムで見ることができなかった不幸な野球ファンは、まずは、上の動画を見て、ヤンキースファンの歓声の大きさを耳にすべきだ。4000安打もファンとチームメイトの喝采を受けたわけだが、プレーの価値を決めるのは、ホームランでいうところの本数でも飛距離でもない。「歓声の大きさ」だ。

王貞治氏のファンであるにしても、それでも、ホームランだけが凄いなんて思ったことは、一度もない。どういう経過でとろうと、1点は1点だ。魚を獲って稼いだ1万円も、夜中に道路を掘り返して稼いだ1万円も、デイトレで画面眺めて稼いだ1万円も、かわりない。

今日のイチローの逆転2ランに価値があると思うのは、それがホームランだからではない。スタンドにいる何万という数のヤンキースファンの大半が思わず両コブシを突き上げてしまうような、そういうプレーだったからだ。いざとなったら、打球の飛距離も弾道も、そんなもの、関係ない。それが野球における「9月」という特別な季節だ。
ファンが思わず拳を握りしめるプレーが生まれる場所は、スタンドにボールが消えていく瞬間だけとは限らない。投手の糸を引く豪球、目を疑うようなミラクルな守備、信じられない神走塁。どれでもかまわない。


去年9月にも、こういうホームランが、イチローに、そしてラウル・イバニェスに生まれ、そうしたプレーが、ボルチモアの追い上げで手の内からこぼれかかった地区優勝を再びたぐり寄せた。
資料:Damejima's HARDBALL:2012イチロー・ミラクル・セプテンバー全記録

スタンドの野球好きのファンは、今日のホームランの意味をよく知っている。
このホームランが価値があるのは、直前の負け越してはいけなかったトロントとのシリーズで、不甲斐ない負けを喫してしまったヤンキースが、いまポストシーズン争いをしている直接のライバル、ボルチモアに逆転を許してしまい、スタンドが冷えかかった、その直後のイニングに生まれた逆転ホームランであり、「イヤな流れ」を一瞬で断ち切って勝利を引き寄せ、ポストシーズン進出への希望を繋ぐ、そういう「一撃」だからだ。


ヤンキースのポストシーズン進出にいま必要なのは、人並み程度にはホームランが打てるようになった「勝率5割ちょいの、平均的な、昔どおりのヤンキース」ではない。
ハッキリ言わせてもらって、ヤンキースが3ゲームのシリーズで、3試合に1度くらいの確率で起こるホームラン攻勢で勝ったとしても、残りの2試合を守備の凡ミスと貧打と先発投手のミスで負けて、結局、勝率5割ちょっとをウロウロしたとしても、面白くもクソもない。
結局のところ、そんな勝率ではポストシーズン進出は果たせないし、ポストシーズンに進出できないほど弱体化したヤンキースなら、キャリアに限りのあるイチローが在籍する意味もない。

結局のところ、イチローが「熱く」ならないと、2012年9月ミラクル・セプテンバーの再現はできないと思うし、ヤンキースが本当の意味で熱くならないと思うのである。去年も書いたことだが、イチローのニックネームが "Wizard" なのは、ダテではない。

Ichiro the Wizard

彼、イチローが "Wizard" と呼ばれるのは、NBAの名選手のひとりで、非常に優れたプレーメーカーとして知られ、今年 ブルックリン・ネッツのヘッドコーチに就任したジェイソン・キッドがかつて指摘したように、イチローに「ゲーム支配能力」があるからだ。
Damejima's HARDBALL:2011年6月12日、NBAで初優勝したダラス・マーヴェリックスのジェイソン・キッドが言う『イチローの支配力』という言葉の面白さ。「ランナーとして1塁に立つだけで、ゲームを支配できる」、そういうプレーヤー。
好調な打者を、いじくり倒しては、冷やしてばかりいるジョー・ジラルディ」の目に、今日のホームランがどう映ったのか知らないが、イチローにまかせるべき仕事は、無能なエリック・ウェッジとシアトル・マリナーズがやったような、「イチローに3番という打順と打点を強制する」ような不合理かつ悪質な行為ではなく、イチローを、彼本来の「魔法」を使える「位置」に置くこと、つまり、「ゲームの流れを支配するタクトを振らせること」だ。

その「ゲームを支配する」という「魔法」は、なにもホームランでなくて構わない。守備での目を見張るファインプレー、相手チームを浮足立たせる攻撃的な走塁、相手を惑わせるトリックプレー、なんでもいいのだ。(例えば今日のイチローの2本目のヒットで、ファーストランナー、マーク・レイノルズがサードまで行こうとした(タッチアウト)が、走塁のいいボルチモアへの対抗心が生まれたのは、イチローの逆転2ランの生んだ「これで、いける」という雰囲気による一種の「触発」という魔法だ)

2013年8月30日イチロー逆転2ラン時のライトスタンド

2013年8月30日イチロー逆転2ラン時のライトスタンド

2013年8月30日イチロー逆転2ラン時のライトスタンド


2013年8月30日 イチロー7号逆転2ラン打ったのは、初球の4シーム。イチローのホームランが、往々にして「初球のストレートをフルスイングすること」から生まれることは、イチローファンにとっては「常識」。


damejima at 15:17

July 13, 2013

以下の記事はミネソタ遠征中に書かれたニューヨーク・ポスト紙Kevin Kerman氏の記事の訳出だ。長くはないが良い。いや、大変良い。今年読んだ野球記事の中で、今のところベストワンかもしれない。(2番目は2009年交通事故で亡くなったニック・エイデンハートにちなんで、ジェレッド・ウィーバーが産まれた自分の子供に『エイデン』と名付けた話)
元記事:Kevin Kernan: Robinson Cano, Ichiro Suzuki bond on New York Yankees despite different backgrounds, together help lead Yanks to 7-1 win over Minnesota Twins - NYPOST.com


ロビンソン・カノーは、いつもダグアウトで微笑んでいる。

だが、この記事からは、ドミニカからアメリカに渡ったひとりの男が、野球選手として、打席やダグアウトでは見せない沢山の感情が、言葉の裏側にきちんと聞こえてくる。とりわけ、彼が「言いようのない寂しさ」にひっそり耐えながらプレーしていることが、彼の言葉の端々から痛々しく伝わってくる。
この記事を訳したのは、イチローが登場するからではない。読んでもらえばわかる。

怪我人の続出で、ロビンソン・カノーがヤンキースでずっと一緒にプレーしてきた兄貴分たちが彼の目の前から消え、それでも頑張り続けなくてはならない立場にあるカノーが耐え続けている「寂しさ」は、けしてセンチメンタリズムではない。
それは、いわば、誰も到達しようと努力してこなかった高みを独り目指すイチローがずっと抱え込んだまま野球をやるしかない「孤高」と似た何かであり、誰かが解決してやれるような種類のものでは、まったくない。


読むにあたって頭にいれておいてほしいことがある。
契約最終年を迎えたカノーが、今年4月に代理人スコット・ボラスを解任し、新たに音楽プロデューサー、ジェイ・Zのロック・ネイションと契約したことだ。

スコット・ボラスはいうまでもなく、超高額契約をまとめることで有名な辣腕である。カノーもかつて、それなりに高額な4年30Mの契約を手にしている。(もちろんその金額は、今現在の彼の価値からみると、あまりに安すぎるが)
「ボラス解任」がどういう意味を持つのか、真意はどのメディアにもわかってはいないが、少なくとも、契約最終年という重要な年に代理人を解任したことは、「俺が自分の将来に望むもの。それはカネではない」という、ロビンソン・カノーからの強烈なメッセージなのではないか、と思う。

怪我人続出によって、契約の半分がゴミになりつつある苦境のヤンキースだが、ロビンソン・カノーとの再契約成功が今後の球団経営にとってどれほど必須なことなのか、誰もがわかっている。カノーとの再契約交渉がどの程度すすんでいるのか、憶測や推測が飛んでいるが、今のところヤンキース側が安心できるような状況にはないようだ。


ブログ主にしてみると、正直、ステロイド告白以降のAロッドなど、顔も見たくないと常々思っている。
だが、高校卒業後、2001年からずっと変わらずヤンキースに在籍し続けてきたロビンソン・カノーにとっては、ジーターがそうであるのと同じように、Aロッドもやはり「変わらぬ兄貴分」なのだ。この記事を読んであらためて痛感した。Aロッドがステロイダーであろうとなかろうと、打てようが、打てなかろうが、カノーは彼らを頼りに異国で頑張ってきたのだ。(だからといって、Aロッドのステロイドを許す気にはまるでならないが)


ロビンソン・カノーはいま、ヤンキースのクリンアップを事実上独りで背負って立っている。だから、ほとんど「マスト」に近い形で、出塁し、打点も挙げなくてはならない。
そういうきつい立場にある彼が、バッティングの上で参考にしているのが、自分の直前の打順で打つイチローのバッティングであり、あるいは、ダグアウトで笑わせてくれる同僚として頼りにしているのが、メディアが考えているより、ずっと明るくてお茶目な性格のイチローなのだ、というのが、以下の記事の趣旨だ。

ロビンソン・カノーはたぶん、本当に自分がヤンキースと長期契約すべきか、毎日プレーしながら、毎日迷っているのだろうと思う。もし、いまチームにイチローがいなかったら、彼の来年以降の契約に関する決断は、今頃どうなっていただろうか。

ロビンソン・カノーとイチロー



-------------------------------------------------


Worlds apart, Ichiro, Cano come together
イチローとカノー。
別世界にいた二人が、ひとつになる日。

Ichiro Suzuki marveled over the success of Robinson Cano. He talked about Cano’s amazing plate coverage and stunning power.“Usually, when you have that kind of power, you can’t cover as much as he can”, Ichiro told The Post.
ロビンソン・カノーの成功ぶりに目を見張っているイチローがニューヨーク・ポストに、彼のあらゆるコースを打つ驚異的な能力と衝撃的なパワーについて語ってくれた。
「まぁ、普通あれだけパワーがあるとね、彼みたいにあらゆるコースを打てたりしないもんだよ。」

He then smiled and said there is only one area where Cano can improve.
彼は、そんな(あらゆるコースを打てる)カノーにも、まだたったひとつだけだが、まだ改善可能な部分があることを指摘して、ニヤリとした。

“If he can get a better personality, he can become a better player” Ichiro joked through translator Allen Turner. “I want him to look at me and my personality.”
「もしアイツが性格さえもっと良かったらねぇ・・・、もっといい選手になれるのに(笑)」と、イチローは通訳アレン・ターナーを通じてジョークを飛ばした。「彼にはオレを見習って欲しいよ、まったく。」(記事一部省略)

When Ichiro’s comment was passed along to Cano, the superstar let out a laugh.
このイチローのコメントをカノーに伝えると、スーパースターは声を上げて笑った。

“That’s Ich. That is the side of him people don’t see. I love that he is so much fun to be around,”Cano said.
「イチらしいな(笑) みんな、彼のそういうとこ、わかってないからな。彼は一緒にいて楽しい奴なんだぜ?」とカノーは言う。(記事一部省略)

Cano admitted the Yankees struggles have been tough to deal with.
カノーは、ヤンキースがいますぐ苦戦続きを解消できる状態でもないことを認めた。

“I play the game because I love to win,” Cano said. “It's not about numbers, it’s about winning.”
「僕がプレーするのは、勝つことが好きだからだ。」とカノー。「(お金とか記録とか)数字のことを言ってるんじゃなく、勝つことそのものの話さ。」

Cano said playing without Jeter and A-Rod has taken its toll. The injuries keep coming with Hiroki Kuroda now dealing with a sore left hip flexor.
カノーは、ジーターとAロッドが不在のままプレーせざるをえないことは大きな損失だ、と言う。怪我人はまさにひっきりなしで、今は黒田が左股関節屈筋に痛みを抱えている。

“You have to understand you don’t have the same lineup you used to have,” Cano said. “That’s why I try my best to win. If you don't succeed, you are not going to help the team win. If you don't get the hits, you are not going to win.
「チームが昔と同じメンバーで戦ってるわけじゃないってことを、よく理解すべきなんだ。」とカノーは言う。「僕がいまプレーにベストを尽くして勝とうとしてるのは、それが理由さ。成功してなければ、チームを勝利に導こうという気にならないだろうし、また、ヒットを打ってなかったら、勝とうって気にもならない。」

“People say this guy worries about his numbers,” Cano said of himself. “That's not true. I know I have to succeed to help us win games. Jeter is a guy who gets on base a lot. Alex drives in runs. We miss those guys.”
カノーは自分自身についてこんなふうに言う。
「よく『ロビンソン・カノーは、数字のことばかり気にしてる』って言う人がいる。でも、それは真実じゃない。僕は、自分が(ジーターやAロッドがこれまでやってきたような)多くのゲームに勝利するのを支える立場を継承すべきだということを、よくわかってる。ジーターは、たくさん出塁する選手であり、アレックスはたくさん点を入れる選手だ。僕らは、彼らのような選手を欠いたままゲームしてる。(だから自分カノーは、出塁もして、打点も稼がなくちゃならない)」

“They are like family to me. It's like your own family. If they are not around you miss them. It's tough. You want to have them back as soon as possible.”
「ジーターやアレックスは僕にとって家族みたいなもんなんだ。自分自身のほんとの家族みたいな、って意味でね。もし家族が周りにいなかったら、寂しく思うだろ? そりゃ、こたえるよ。可能な限り早く戻ってきてもらいたいと思う。」

That is why he appreciates having Ichiro around.
いまカノーが自分の周りにイチローがいてくれることに感謝しているのは、それが理由だ。

“He’s always laughing, he’s having fun,”Cano said. “He really knows the game and knows how to play. I mean over 200 hits for 10 seasons, who does that? I love that he never wants to come out of a game. He is just like me in that way.”
「彼はいつも笑ってて、野球を楽しんでる」とカノー。「彼は野球を本当によく知ってて、どうプレーすべきかも、よくわかってる。10年連続200安打だよ? 誰も真似なんてできない。彼がゲームをけして諦めないことのもいいね。彼はその点で僕と似てる。」

Ichiro was on base three times last night with two singles and an RBI.
イチローは昨夜、2本のシングルヒットで3度出塁し、打点もあげた。

“He understands his swing and does not try to do too much,”Cano said. “He goes with the pitch and that has helped me, watching what he does. You have to understand what kind of player you are to succeed.”
カノーは言う。「イチローは自分のスイングってものがよくわかってて、無理にあらゆることをやろうとはしない。彼は様々な投球にあわせてスイングしてくれるから、僕は、彼が投球にどういうふうに対処したか観察して(そのあとで打席に入れるから)、とても助かってる。成功したければ、自分がいったいどんなタイプのプレーヤーなのか理解してなきゃって思う。」

Cano, 30, understands who he is as a player. Same goes for Ichiro, 39.
ロビンソン・カノー、30歳。自分がどういうプレーヤーなのか、彼はよく理解している。同じことが、39歳イチローにも言える。


蛇足だが、文中でロビンソン・カノーは何度もSucceed、あるいは、Successという単語を使っている。めんどくさいので「成功する」と直訳した箇所もあるが、彼が言いたいのはどちらかというと「継承する」「後を継ぐ」という意味だろう。もちろんそれは、彼の兄貴分であるジーターやAロッドがやってきた仕事や立場を「継承する」、という意味だ。

彼は、基本的には、古巣であるヤンキースを離れる気持ちなど最初から毛頭ないとは思う。ただ、だからといって、カノーの心にまったく迷いがないわけでもないはずだ、とも思う。人間は簡単じゃない。
もし迷いの生じる原因がほんのわずかあるとしたら、それは、「ヤンキースがあまりにも勝てない」とか、「ダグアウトの中に、彼の気持ちを受け止めて、わかってくれるチームメイト、同じ目線で一緒に戦ってくれるチームメイトが、いない」というケースだろう。


最近、ゲーム開始直前のダグアウトで、イチローがいろんな選手にさまざまなアプローチで接触し、士気を高めあっているシーンが目立つ。
あれは、イチローはイチローなりの「空気」の作り方で、寄せ集めのままだったヤンキースを少しづつ「ひとつのチーム」にまとめあげる作業に加わっているのだと思って見ている。
こうしたイチローの地味な作業が、チームを支えるきつい作業に耐えているロビンソン・カノーの心にも間違いなく届いていることが、このインタビューから、とてもよくわかる。


なお、Plate Coverageという単語の意味については、次の記事が参考になる。ミゲル・カブレラはやはり天才だ。マイク・トラウトが彼に追いつくのは、まだまだ先のことだろう。
Miguel Cabrera’s Ridiculous Plate Coverage | FanGraphs Baseball

damejima at 01:56

July 12, 2013



ジーター復帰戦で1番センターという、今の彼自身とチームに最も似つかわしいポジションでプレーしたイチローが、バックスクリーン前まで飛んだ大飛球をバスケットキャッチする「ウィリー・メイズ風キャッチ」を決めてくれた。
シアトル時代のスプリングトレーニングでのスーパーキャッチも含め、こうしたキャッチはこれまでにも何度か決めているわけだが、このキャッチのみに関して言うなら、捕球寸前、ほんのわずかだが、体の角度をライト側に変え、「回り込む」ことに成功しているのが素晴らしい。
あれほど余裕を持てない背走のさなかでも、最後に「回り込む余裕」を持てるのが、やはり10-Times-Gold-Glover、イチローというプレーヤーなのだ。
Suzuki catch helps secure Yanks’ win - NYPOST.com


センターの奥行きが120mちょっと(ヤンキースタジアムは408フィート=約124.4m)の今の時代の外野手と、センターの奥行きが483フィート(約147m)もあった縦長のポロ・グラウンズでプレーした1954年ワールドシリーズのウィリー・メイズとでは、要求されるプレーの質が決定的に違っていることについては、2年半ほど前にブログに書いている。詳しくはそちらを読んでもらいたい。
Damejima's HARDBALL:2011年1月9日、シーズンオフらしく、MLBのポジション別ゴールドグラブ受賞回数でも眺めながら、ウィリー・メイズとイチローの時代の違いを考えてみる。

Polo GroundsPolo Grounds

Polo Grounds, Eighth Avenue at 159th Street, 19401940年頃のポロ・グラウンズ
資料:A Little More New York in Black and White (photos and commentary)


damejima at 18:00

June 26, 2013



ヤンキース・黒田、テキサス・ダルビッシュの日本人先発投手対決ゲームで、イチローが、3対3の同点、9回裏2死走者無しの場面で、カウント1-2から右中間スタンドにサヨナラホームラン!!! 右投手からのホームランなのも、最高!!!
Texas Rangers at New York Yankees - June 25, 2013 | MLB.com NYY Recap

Texas Rangers at New York Yankees - June 25, 2013 | MLB.com Classic

イチロー サヨナラホームラン 2013年6月25日

イチロー サヨナラホームラン 2013年6月25日

2013年6月25日サヨナラホームラン




ピッチャーは、ヤンキース戦までERA0.95、5勝負けなし、速球を武器とする2009年テキサスのドラフト1位ルーキー、右腕のタナー・シェッパーズ。イチローは彼の97マイルのインコースをえぐる球を、ほんの少しバットヘッドを抑え込むような、パワフルなスイングで右中間に運んだ。今シーズンのイチローは対右投手のスタッツがやや低いが、これで右投手に対しても、まったく力負けしないことを証明した。

シェッパーズのコメント
"Wrong pitch at the time," Scheppers said. "He's a great hitter, and I probably showed him too many fastballs in that at-bat. I probably should have thrown him something different. He likes the ball down and in, and I kind of fed it to him."
「あの場面では、間違った投球をしてしまった。彼は偉大なバッターなわけだけど、あの打席では、僕が彼に速球ばかり投げ過ぎてたと思う。たぶんもっと違う球種をみせとくべきだった。彼はインコース低めが好きなのに、僕はご親切にも、彼の大好きなインローを投げてしまったんだからね。」
ソース:Texas Rangers at New York Yankees - June 25, 2013 | MLB.com TEX Recap

イチロー サヨナラホームラン 2013年6月25日打ったのは、インコースのハーフハイトの4シームと記録されているが、実際には少しシュート回転がかかっていた。

イチロー サヨナラホームラン Wrap


スタジアムにいた人たちの動画



------------------------------------------------------

参考:シアトル在籍時代のサヨナラホームラン
(2009年9月 投手:マリアーノ・リベラ



Damejima's HARDBALL:2011年10月22日、野球ファンの「視線共有」の楽しみ 例:2009年9月18日のイチローのサヨナラ・2ランホームランを、スタジアムの角度別に楽しむ。

Damejima's HARDBALL:2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。

Ichiro's walk-off shot stuns Mariano, Yanks | MLB.com: News

damejima at 12:51

June 20, 2013

Yankees LogoDodgers Logo
あまりにも見所の多すぎるダブルヘッダー第1戦で、どこから語ったものかわからないが(笑)、打棒炸裂のイチローがドジャースの期待の新人投手リュ・ヒョンジンの膝元の難しい速球をライトスタンドに放り込めば、マリアーノ・リベラが同じくドジャースの新人で、イチローと同じライトを守るヤシエル・プイグを得意のカットボールで三振に切って、(先日プイグが鼻に受けたデッドボールとは別の意味で)スーパールーキーの天狗の鼻をへし折って(笑)ゲームセット。
ヤンキースとドジャースが歴史上初めてレギュラーシーズンにヤンキースタジアムで対戦した歴史的なダブルヘッダーは、まずヤンクスのレジェンドたちがドジャースの新人君たちをあしらったゲームとなって終わった。
Ichiro powers Yankees to Game 1 win | YES Network

Video: Ichiro's huge game | MLB.com Multimedia

史上初ヤンキースタジアムレギュラーシーズンのLADvsNYY イチロー3号

イチロー3号ソロ・ホームラン
動画:Video: Ichiro's solo shot | MLB.com Multimedia

マトリクス風動画:GAMEREAX - Animated Sports Gifs and MLB Analysis – YES Camera Angle On Ichiro Homer

ホームランを打たれたリュ・ヒョンジンのコメント

"I put the ball exactly where I wanted it -- and he got it in the air and hit it out."
「まさに投げたいと思ったところに正確に投げた。そしたら彼に吸い込まれるような打球でスタンドに運ばれてしまった。」
Lyle Spencer: Shades of graceful star Ichiro Suzuki in electric Dodgers rookie Yasiel Puig | yankees.com: News


2点タイムリー
動画:Video: Ichiro's two-run single | MLB.com Multimedia

2013年6月19日ドジャース戦2点タイムリー

自身も2点タイムリーを打ったライル・オーバーベイの、イチローのレフト前2点タイムリーに関するコメント

He puts the bat on the ball, and he puts it in the perfect spot. It's an art.Two RBIs late in the game were big. He's Ichiro.
「彼はバットをボールに正確にコントロールして、パーフェクトな場所に打てる。それはひとつの『芸術』なんだ。ゲーム終盤の2打点は大きいよ。彼はやっぱり『イチロー』なんだ。」
Ageless Ichiro still has batting eye, speed


8回表のファインプレー
動画:Video: Ichiro's leaping grab | MLB.com Multimedia

2013年6月19日ドジャース戦8回ファインプレー

監督ジョー・ジラルディのコメント

"Let's not forget that he had a big defensive play in the eighth inning. That's a heck of a play,"
「(ホームランもいいけど)8回の守備のビッグプレーも忘れないでほしいね。あれは凄いプレーだった。」
Ichiro Suzuki's big day carries New York Yankees - ESPN New York

ESPN New York

With his bat, he propelled the Yankees offensively.With this glove, he robbed the Dodgers of a big inning.
「彼はバットでヤンキースを前進させ、グラブでドジャースのビッグ・イニングをもぎとった」
Ichiro Suzuki's big day carries New York Yankees - ESPN New York



「もってる」って、こういうことを言うのだ。

今日のイチローのホームランは、MLBでイチローの打ったホームランの中でも、最も美しいホームランのひとつだと思う。
Los Angeles Dodgers at New York Yankees - June 19, 2013 | MLB.com NYY Recap

歴史的な対ドジャース戦が行われた2013年6月19日

鮮烈なMLBデビューで週間MVPを受賞したばかりのスーパールーキーヤシエル・プイグだが、足の速さや打撃だけでなく、その強肩についても、イチローを引き合いに出したり、比較したりする記事やツイートはたくさんある。
イチローとプイグの「競演」に関する記事の例
Lyle Spencer: Shades of graceful star Ichiro Suzuki in electric Dodgers rookie Yasiel Puig | yankees.com: News
というのも、プイグがMLBデビューしてすぐのブレーブス戦で、ライトからの強肩で1塁ランナーをサードで刺したプレーが、イチローがMLBデビューしてわずか8戦目のオークランド戦で、サード手前でテレンス・ロングを刺してみせた、あの伝説の「レーザービーム」と似ていたからだ。

イチロー「レーザービーム」(2001年4月オークランド戦)
公式サイト動画:http://wapc.mlb.com/play?content_id=16865121



プイグの強肩(2013年6月8日ブレーブス戦)





これまで「1958年」という年がいかに特別な年だったか、ということについて、沢山の記事を書いてきた。MLBでは、ドジャースとジャイアンツが西海岸に移転した年であり、またそれはアメリカ社会が大きく変わっていくターニングポイントでもあった。
Damejima's HARDBALL:「1958年の西海岸」 特別な年、特別な場所。
かつてニューヨークのブルックリンにあったドジャースが西海岸に移転したのは1958年だが、その前後、1941年以降1981年まで、ワールドシリーズでヤンキースとドジャースは11回も戦い、その回数がワールドシリーズの対戦レコードとなるほど覇権を競いあった。サンディー・コーファクスドン・ドライスデールが投げ、ミッキー・マントルレジー・ジャクソンが打ち返す。それがこの黄金カードの歴史を作ってきた。

しかし、こと、レギュラーシーズンの記録となると、1997年にインターリーグ制が導入されて以降も、2004年と2010年にドジャースタジアムでの3連戦が2度、計6ゲームが行われただけで、ヤンキースタジアムでのゲームは一度も行われていない。(さくっと調べたところ、ネット上に、「2連戦が3度」という記述、「2003年と2010年」という記述があるが、いずれも間違っている)
2004年のゲーム結果
2004 New York Yankees Schedule, Box Scores and Splits - Baseball-Reference.com
2010年のゲーム結果
2010 New York Yankees Schedule, Box Scores and Splits - Baseball-Reference.com

つまり、今日の第1試合は、かつてブルックリンにあったドジャースがレギュラーシーズンの試合で初めてニューヨークに帰ってきた歴史的なゲームなのだ。

どうもわけがわからないのは、地元メディアや古くからのヤンキースファンと称する人たちが、ドジャースのニューヨーク帰還よりも、元ヤンキースのドン・マッティングリーが監督としてニューヨークに凱旋してきたことを優先するかのごとく騒いでいたことだ。
彼らには悪いのだが、マッティングリーがニューヨークに戻ったのは、単純に彼がドジャース監督だからなだけであって、それ以上の意味はない。それより「あのブルックリン・ドジャースがニューヨークに帰ってきたこと」のほうが、MLB史にとって遥かに重要なのは、言うまでもない。


もちろん、このゲームがドジャースにとってレギュラーシーズンでは初めてのヤンキースタジアムでのゲームであることを報じる記事は、もう掃いて捨てるほどあるわけだが、ブログ主に言わせれば、そんな誰でも書けることは、誰かが書くわけで、本当に知りたいと思うのは、「かつてニューヨークを本拠地にしていたドジャースが、なぜこれまでヤンキースタジアムでゲームをやらなかったのか、そして、なぜ初めてヤンキースタジアムに来ることになったのか、その理由」だ。

そこには、よほどなにか秘めたドラマというか、「ワケあり」な話があるに違いないと思うのだが、どうだろう。

ダブるヘッダー第1戦のWrapページ20130619
Los Angeles Dodgers at New York Yankees - June 19, 2013 | MLB.com Wrap


damejima at 07:47

June 13, 2013

6月12日オークランド戦のブランドン・ロスの2ランホームランで、イチローはライトで「あたかも捕れるかもしれないというフリ」をして、ランナーを釘付けにした。そのトリックプレーについて語るロスのコメントがなんともユーモラスだ。
動画(MLB公式):http://wapc.mlb.com/play/?content_id=27978007&c_id=mlb

Moss drilled a two-run shot to right on the first pitch he saw from Phil Hughes in the second, but he and baserunner Josh Reddick both were fooled by right fielder Ichiro Suzuki, who was camped under a nonexistent flyball, into thinking it had stayed in the park.
"That was an incredible deke," Moss said. "I told him when he got to first base, he deked me so well I didn’t want to give him credit for it. I was thinking, ‘I thought that was at least to the track!' "

モスは2回、フィル・ヒューズの初球をライトに2ランホーマーを打ち込んだが、打者モスと走者ジョシュ・レディックは2人ともライト・イチローのトリックにひっかかった。イチローは存在しないフライボールの落下点に入ったようにみせかけ、あたかもボールがまだフィールド内にあるかのように2人に思わせたのだ。
「凄いフェイントだったねぇ」とモス。(ブログ注:モスは一塁手なので、モスがホームランを打った後、別のイニングにイチローがヒットで出塁してファーストに来たとき、モスのほうから走者イチローに話しかけた。それが以下のコメント)
「イチローがファーストに来たとき言ったんだよ。『あまりにも上手に騙されたからさ、褒めたくないくらいだよ。少なくともウォーニングトラックまでくらいは飛んだはずだと思ったのにさ』ってね」

Moss, Straily, Doolittle shine in A’s win over Yankees | Oakland Athletics : The Drumbeat | an SFGate.com blog


damejima at 21:38

June 02, 2013

1999年3月に亡くなったジョー・ディマジオ追悼の意味をこめて、同じ年の4月25日に旧ヤンキースタジアムでジョー・ディマジオ・トリビュート・デイが行われ、ポール・サイモンがフィールドで "Mrs. Ronbinson" を歌ったことを書いた。
ついでだから、関連することをもうちょっと書いておこう。

Plaque at Ruppert Plaza commemorates Paul Simon in 1999.

このプレートは、旧ヤンキースタジアム跡地に出来たHeritage Fieldという野球場の横にある "Ruppert Plaza" という舗道に埋め込まれている。

Ruppert Plazaのプレート上の写真では四角形だが、これは写真がトリミングされているためで、実際には左の写真のごとく六角形の敷石に合わせたスノーフレークのようなデザインであり、旧スタジアムの歴史を彩った出来事のうち、特筆すべきイベントが厳選されてプレート化されている。ポール・サイモンが "Mrs. Ronbinson" を歌った1999年のイベントも、そのひとつだ。
要するに、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェームに星形の映画スターのプレートが埋め込まれているのと、意味は同じ。記念碑的役割だ。

プレートの文章にYankee Clipperとあるのは、もちろん "Mrs. Robinso" の歌詞に出てくるジョー・ディマジオのニックネーム。また、このプレートがあるRuppert Plazaの "Ruppert" とは、これも書くまでもないが、ボストンからベーブ・ルースを獲得し、旧ヤンキースタジアムを作り、ヴェテランズ委員会の推薦を得て今年7月に野球殿堂入りが予定されている元ヤンキースオーナー、Jacob Rupperのことだ。

Jacob Ruppert and Joe DiMaggio 1937
(写真キャプション:後列左から2人目、ボウタイをした人がジェイコブ・ルパート。手前に "Yankee Clipper" ジョー・ディマジオ)


Heritage Fieldは「3つの小さな野球場」。天然芝で、確かに気持ちのいいフィールドではあるが、それにしたって、まぁ、「草野球場」ではある。草野球場だからいけないというのではないが、せっかくのランドマークを他にもっと有効な活用法はなかったのかなと、つい思ってしまう。
Heritage Fieldの奥には、フットボール場を兼ねた陸上競技場(Joseph Yancey Track and Field)があるのだが、地下がRuppert Plaza Garageという駐車場になっている。

地図で確かめてもらいたいが、Heritage Fieldと陸上競技場の間の「プレートのある散歩道」が "Ruppert Plaza" で、そのすぐ隣の陸上競技場の地下にある駐車場が "Ruppert Plaza Garage" だ。
ネーミングが似ていて、非常にまぎらわしい。正直、どちらかをもっと違う名前にしたほうがいいと思う。
参考記事:Heritage Field Opens Near Yankee Stadium - NYTimes.com

Ruppert Plaza and New Yankee Stadium


アングルA
地下鉄4番線の高架になっている「161st.Yankee Stadium駅」のホーム上から西北西を見たアングル。ゲーム開催日にはホーム横のゲートから階段でスタジアムに続く道路に降りられる。左に見える小さい野球場が、旧ヤンキースタジアム跡地にできたHeritage Field。
ちなみに車で中央に見える道路の真ん中よりの車線を走って、立体交差部分を抜けていくと、左右の壁に野球のボールのレリーフを見ることができる。
新ヤンキースタジアムとHeritage Field(旧ヤンキースタジアム)


アングルB
アングルAとは逆で、Ruppert Plaza側からHeritage Fieldを見るアングル。奥に見える黒っぽい高架が、地下鉄4番線ホーム。人の歩いている舗道をよく見ると、六角形のブロックのところどころにプレートが埋め込まれているのがわかる。
Ruppert Plaza側から見たHeritage Plaza



実は、今回書こうと思った本当の主旨は、ヤンキースタジアム新築以降の「駐車場の採算悪化問題」についてだ。
ちょっとこれを見てもらいたい。

旧ヤンキースタジアム周辺に密集する「駐車場」

上の図に明るい青色で示されているブロックがたくさんある。
駐車場」だ。
旧スタジアムの周囲が青色だらけであることでわかるように、旧ヤンキースタジアムは周囲をぐるりと駐車場に取り囲まれたボールパークだった。空き地の少ない大都会のボールパークなのに、これだけの面積の駐車場が完備していて、しかも真横に地下鉄の駅があるのだから、ヤンキースタジアムはアクセス面では申し分ない。
実際、2009年に経済誌Forbesが発表したMLBの球場ランキングで新ヤンキースタジアムは、Accessibility、「交通アクセス」について「A評価」になっている。(総合順位:第7位)

ただ、(十分に確かめたわけではないが)Forbesが判定したAccessibilityとは、おそらく「公共交通機関を使った球場アクセスの良さ」という意味であって、「ヤンキースタジアムは、球場のすぐ隣に駐車場が腐るほどたくさんある」からアクセスが「A評価」になったわけではない、と思う。
というのも、Forbesの判定基準には、チケット代、おみやげ代などの Affordability(値ごろ感)という項目もあるのだが、そこに「駐車場料金」が項目として含まれているからだ。

おそらく駐車場の評価はアクセスの良さとしてではなく、主に駐車料金の値ごろ感で評価されていると思われる。ヤンキースタジアムのAffordabilityは「D評価」、つまり「とてもコストが高い」という評価になっていることからして、おそらく駐車場の料金についての評価は最悪に近いと思われる。
(ちなみに、Accessibilityが「C評価」なボールパークは、ドジャースタジアムやミルウォーキーのミラーパーク。球場ランキング上位球団で「アクセス」がC評価なのは、ミラーパークくらいしかない)
In Depth: America's Best Baseball Stadiums - Forbes.com


たしかに新ヤンキースタジアムは、駐車場に取り囲まれていた旧ヤンキースタジアムから、ワンブロックしか離れていないが、この「ほんのちょっとした距離」が、自家用車でスタジアムに来るような上客、つまり、地元の常連客に影響を与えた可能性がないとはいえない。(ただ、今のところそれを証拠立てる資料がみつからない)

ひとつだけ言えることは、「これだけ「あり余るほど」用意されているヤンキースタジアム周辺の駐車場が、稼働率が非常に悪く、収益が非常に悪化している」ということだ。


この「駐車場収益の悪化」については、ヤンキースの観客減少と結びつけたこんな2012年10月の低レベルな記事があるのだが、まぁ言いがかりも甚だしい(笑)
記事:資金繰りに苦しむヤンキースの駐車場運営事業体−観客減少で - Bloomberg
上の記事中に「ホームゲームの平均観客数は今年4万3691人と、昨年の4万5107人から減っている」とあるわけだが、たかだか1試合あたり1000人程度減ったくらいで、この記者が書いているような「2007年当時は(駐車場稼働率を)88%と想定していた」のに、「(実際の)駐車場施設の平均利用率は43%だった」なんて「ゆゆしき事態」が、起こるわけがない(笑)
もしヤンキースの観客が「半減」した、というなら、駐車場利用者数が「想定の半分以下だった」というのも理解できるが、観客数がそこまで激減するなんてことは、そもそもありえない。


要は、単純な話で
「スタジアム周辺の駐車場が
需要に比べてあまりにも多すぎる上に、
料金が馬鹿高い」

たったそれだけのことだ。


当然ながら、この「駐車場の需要予測の読みの甘さ」は、2007年の需要予測の段階から既に存在している。
その「読みの甘さ」が、とうとう駐車場を管理するブロンクス ・パーキング・デベロップメントの資金繰りとして顕在化するに至ったのが、2012年だった、それだけの話だ。
実際、「ヤンキースタジアムの駐車場の収益問題」が新聞ネタになったのは、2011年に次のような記事があるのを見てもわかるとおり、2009年に新ヤンキースタジアムが開場してほんのわずかしかたっていない時期には、既に問題になりつつあった。
記事(2011年):City to the rescue of Yankee Stadium garage fiasco; Lots could make way for affordable housing - NY Daily News


想定したほど駐車場需要がなかった(あるいは、減った)理由をハッキリ指摘している記事は今のところみあたらないが、おそらく「駐車場運営側が、ヤンキースタジアムに車で来る観客層の動向を読めていなかった」ことに理由があるだろうと推測される。
ヤンキースファンがスタジアムに公共交通機関を利用してやってくるようになった理由は、「安心してビールを飲みたいから」とか、「治安が悪いから夜の舗道なんて歩きたくないから」かもしれないし、「景気が悪いから、フォーブスのランキングで『D評価』になるほどバカ高いヤンキースタジアム周辺の駐車場代なんて、払いたくないから」かもしれない。
まぁ、理由はともかくとして、駐車場が供給過剰で、しかも、他のスタジアムより高い駐車料金で運営しておいて、アテが外れ、駐車場の収益が悪化している、そんなことまで「選手とチームのせい」にして記事を書く行為は、かなりどうかしているとしか言いようがない。


最初に挙げたRuppart Plazaの舗道に埋め込まれた記念プレートにしても、インターネット上で取り上げて話題にしているサイトは、ほとんどといっていいくらい、ない。
そのことでわかるのは、「旧ヤンキースタジアムの跡地利用は、けしてうまくいっていない」ということだ。(なぜ旧ヤンキースタジアムの跡地がその後どうなったか、知っている人が日本ではあまりに少ないのかも、それで十分説明がつく)
もし旧ヤンキースタジアムのせっかくのロケーションが、単に「駐車場からちょっと離れた新スタジアムに徒歩で歩いていくとき通るだけの『通路』として利用されている程度に過ぎない」としたら、跡地が十分活用しているとは、とても言い難い。

それに、ゲームが深夜に終わって、たとえ数分とはいえ、人気(ひとけ)の少ない「通路」を歩いていき、さらに、人気の少ない駐車場の内部を歩かなければならないとしたら、けして治安がいいといえないエリアでもあることだし、駐車場利用の頻度に強い影響があって不思議じゃない。


また、ブログ主は、これは単なる邪推だが、ヤンキースが最近「ヤンキースタジアムでサッカーをやる」なんて言い出した理由について、その理由が実は、野球そのものは多額の放映権料収入もあって黒字で、なにも問題ないが、「ヤンキースタジアムを市からの援助を得て作ったはいいが、駐車場需要を読み間違えて供給過剰になってしまい、かさみ続ける駐車場の赤字を埋めあわせるために、MLBのシーズンオフにスタジアムでサッカーを主催することで、スタジアム稼働日数を増やし、駐車場の稼働率を上げて、駐車場運営会社が市から借りている公債の返還にあてるためなんじゃないか?」などと思っているのだが、どうだろう。

damejima at 15:27

May 05, 2013

むはははは。たまらん。

2013年5月4日イチローのホームラン・キャッチ

オークランド初戦での2つの好守備に続いて、第2戦のイチローは、オークランド先頭ジョン・ジェイソのライト大飛球を、フェンス際でジャンピング・キャッチ。これ、捕ってなければ、確実にフェンス越えてた打球。

まぁ、そんじょそこらの外野手とはモノが違うということなんですよ、旦那。
Oakland Athletics at New York Yankees - May 4, 2013 | MLB.com Gameday



damejima at 04:07

May 04, 2013

MLBでWizard(魔法使い)とのニックネームをもつイチローが、オークランド戦で得意の「魔法」を使った。
動画(MLB公式):Baseball Video Highlights & Clips | OAK@NYY: Donaldson's single gets reviewed, stands - Video | MLB.com: Multimedia

Oakland Athletics at New York Yankees - May 3, 2013 | MLB.com Gameday

6回表、オークランド先頭の4番セスペデスが四球で歩いた後、5番ジョシュ・ドナルドソンのシャープな当たりは、今日MLBで初めて5番に入ったイチローの頭上を軽々と越えていく強烈なライナーで、あっというまにフェンスを直撃した。
なにせ、この打球、外野手に捕れるような打球でないどころか、プレーが終わってから、オークランド監督ボブ・メルビンが「ホームランかどうか確認してくれ」と、ビデオリプレーでの確認を審判団に要求したほど大きな当たりだった。

2013年5月3日6回表ドナルドソンの打球位置

しかし、この強烈なフェンス直撃のライナーを待ち受けていたのは、「シングルヒット」、しかも、打者自身はセカンドでアウトという過酷な運命だった(笑)


というのも、イチローが「あたかも自分が
『打球の落下地点に入っていて、いまにも捕球しようとするところだ』、という『フリ』をするというトリックプレー
」をやってのけたからだ。

この「魔法」のせいで、1塁走者セスペデスと打者走者ドナルドソン、2人のスタートが遅れ、打球がフェンスを直撃するのを目視してからのダッシュになったために、1塁走者のセスペデスはサードを蹴ることができず、打者走者ドナルドソンに至っては、ライト・イチローからの好返球でセカンドかなり手前で楽々アウト。まさにふんだりけったり。

2013年5月3日6回表打者走者をセカンドで刺すイチロー

本来なら、1塁走者が一挙に生還して無死2塁、あるいは、無死2、3塁だった場面が、1死3塁になったのだから、スタンドが拍手喝采だったのはいうまでもない。

まぁイチローが時折この「魔法」を使ってきた事実を知らないままMLBを見ている人には、なんのことやらチンプンカンプンかもしれない。なんせ、MLBライターたちのTwitterですら、素晴らしいトリックが成立したというのに沈黙を続け、まして、このプレーを即座に解説してみせたライターは誰ひとりいなかったのだから(笑)



しかし、本当のことを言うと、この「最初の魔法」もさることながら、技術的な見せ場、『野球の面白さを教えてくれる2つ目の魔法』は、同じイニングの直後にあった。


イチローの「最初の魔法」の後、サバシアが追加点となるタイムリーを許してしまい、2死2塁(セカンドランナー:デレク・ノリス)と場面が変わって、7番ネイト・フリーマンがライト前ヒットを打った。(ちなみに、この人の奥さんはLPGAツアーのプロ・ゴルファー、Amanda Blumenherst(アマンダ・ブルーメンハースト)。2人はノースカロライナにあるデューク大学同窓生)
二塁走者ノリスは、サードを猛然と回りかけたが、そこでストップ。いわゆる「イチローの抑止力」というやつだ。
オークランドのスタッフはア・リーグ西地区時代に嫌というほどイチローの「肩」を味わっているだけに、この接戦のゲームであえてサードランナーをホームに突っ込ませる勇気はなかった。


この場面、ライトのイチローはホームを守るクリス・スチュアートに2バウンドくらいで届く低い弾道のストライク返球をしているのだが、このホーム返球がなぜ、ホームへのダイレクト返球でなく、「バウンドするような低い送球」である必要があったか。


ホームでランナーを刺すこと「だけ」が目的なら、外野手は何も考えずにホームにできるだけ強い返球をして(理想的にはダイレクト返球だと思うかもしれないが、強肩外野手でないと、かえって山なりの送球でホーム到達が遅くなる)、サードを蹴ったセカンドランナーの足と勝負するだけでいい。

しかし、野球は単純じゃない。

もし二塁走者がサードを蹴り、そのランナーをホームでのタッチプレーでアウトにできなかった場合、あるいは、二塁走者が自重してサードを蹴らなかったが、外野手がホームにダイレクトに送球したボールが横にそれたりした場合、どうなるか。

その場合、打者走者フリーマンは送球間にセカンドに進塁してしまい、得点圏にランナーが残ってしまう
そうなれば、ただでさえスタミナの切れるゲーム終盤にヒットを連打されはじめたヤンキース先発CCサバシアに、さらに負担がかかる。もし追加点でも許せば、オークランド先発グリフィンの調子が最高だっただけに、ヤンキースの逆転の可能性はなくなる。


では、
打者走者フリーマンのセカンド進塁を阻止するために
外野手はどうしたらいいか。


ライトのイチローから捕手スチュアートへの返球の間には、ヤンキースの一塁手ライル・オーバーベイがいる。カットマンの彼は、もし「イチローからの返球が、二塁ランナーのホームインに明らかに間に合わない」と判断すれば、途中で送球をカットして、セカンド送球に備える。また、「イチローの返球で、二塁ランナーをホームでアウトにできる」と判断すれば、カットせず、返球をスルーすることを選択する(実際のゲームでオーバーベイは「スルー」を選択したが、打者走者はイチローのホーム送球が強かったため、セカンド進塁を自重した)

もし、この場合、イチローがオーバーベイの頭上をはるかに越え、捕手スチュアートに直接届くような「軌道の高い返球」をしていれば、どういうことが起きるか。
ヤンキースの一塁手オーバーベイは、「カット」を選択する余地がなくなるから、打者走者フリーマンは「本塁がアウトになるかどうか」に関係なく、躊躇なくセカンドに進塁できる可能性が高くなる。
その場合、もしイチローの返球がそれたり、ホームでのクロスプレーでホームに突入してきた二塁走者をアウトにできなければ、チームは1失点した上に、降板が近いサバシアが再び2塁に走者を背負って投げなければならないから、さらなる失点の可能性すら出てくる。


だからイチローは、「ホームでのクロスプレーになるような強い返球」であり、なおかつ、「ファーストのオーバーベイがカット可能な低い返球」を瞬時に選択して、二塁走者にサードを蹴らせず釘づけにすると同時に、打者走者をもファーストに釘づけにしてみせたのである。


Sabathia was helped in the sixth twice by the arm of Ichiro Suzuki, who picked up an outfield assist on a Josh Donaldson single off the top of the right-field wall and also made a strong throw home that pinned Norris at third on a Nate Freiman single.
Oakland Athletics at New York Yankees - May 3, 2013 | MLB.com OAK Recap

この2つの「魔法」で、イチローは最低でも2点の失点(ひょっとすると3点かもしれない)を防いでみせた。もしWPAだの、選手の働きを数値で判定したがるやつらが、こういう野球独特のプレーの意味すらわからない野球音痴のアホウでも、そんなことは知ったこっちゃない。

damejima at 16:23

April 24, 2013



フロリダでのタンパベイ第2戦、2-2で迎えた同点の9回表、2死満塁のチャンスに、イチローが、タンパベイの右腕クローザー、フェルナンド・ロドニーの初球、アウトコースの99マイルの2シームを、センター前にライナーで弾き返し、決勝点となる2点タイムリー。
今シーズン、ヤンキースは3連敗を一度も喫していないわけだが、このゲームを前に2連敗してしまい、このゲームも、1-2と、1点リードされて、タンパベイ先発デビッド・プライスが8回表になってもまだ投げているという劣勢にあった。
ちなみに8回表に同点にした場面も、1死ランナー無しからイチローがライト前ヒットで出塁し、次のニックスとのエンドランで、当たりの弱いレフト前ヒットで思い切ってサードに進塁したイチローの好走塁からきている。(ガードナーのクレバーな内野ゴロで生還)

今日の活躍は、イチローの動向にやきもきしているファンの胸をスカッとさせたことだろう。(もちろん、このブログは何も心配してない(笑) たぶんイチローはいま「右足のつきかた」を変えようとフォームをいじっている最中(あるいは不調でフォームがバラついている最中)だろうと思うからだ。数年前なら、スイングを始動するとき、投手にイチローの背番号がハッキリ見えていた。つまり、当時は右足を今よりずっと「クローズ」というか、サード側に向けたまま踏み出していた。今は、昔よりずっと「オープン」というか、セカンド方向に向けて踏み出している。2点タイムリーのシーンで、右足の爪先がマウンド方向を向いているのが、その証拠)
New York Yankees at Tampa Bay Rays - April 23, 2013 | MLB.com Gameday


8回表のヒットは、左腕デビッド・プライスから。左投手からのヒットだから余計に意味がある。
また、9回の2点タイムリーは、ドミニカをWBC初優勝に導いたMLB屈指のクローザーのひとり、フェルナンド・ロドニーの「典型的なクローザー配球」を打ったタイムリーだから、これも価値がある。


クローザーと対戦するイチローが早いカウントから打って出るときは、たいてい相手投手の配球の読みに自信のあるときだ。
いつぞやマリアーノ・リベラから打ったサヨナラ2ランも、「初球」を打った。あのときのリベラの初球カットボールは、2球目に全く同じコースに4シームを投げて、イチローに内野ポップフライでも打たせようとする布石だったはず。
マリアーノ・リベラの場合は、いままで何度も書いたことだが、打者に打球を外野に飛ばされたくないケースで、きわどいコース(例えば左打者のインコース)に、カットボールと4シーム(あるいはその逆、4シーム、カットボールの順に)続けて投げることで、打ち損じを誘ってくる。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。

ロドニーは、イチローの前で1死満塁で打席に入ったクリス・スチュアートに、「初球インハイの2シーム」に続けて「同じコースの4シーム」を投げることで、ファーストへの小飛球と言う「満塁のケースでの理想的な凡打のひとつ」を打たせることに成功している。

そもそもクローザーの配球パターンは多くない
例えばパペルボンやバルベルデ、藤川球児なら、ストレートで追い込んでスプリットか高めの釣り球。リベラならカットボールとストレート。ロドニーなら2シームと4シームだ。

そして、一度打者をうちとることに成功したクローザーは、次打者でも同じ配球を使ってくることも少なくない。


「同じコースに、カットボールのような、ほんの少し変化する速球系と、4シームを続けて投げることで、バッターに『打ち損じ』させる配球」というのは「クローザー特有の典型的な配球パターン」のひとつだが、こうした「クローザー特有の配球パターン」を早いカウントで打ちのめすのは、昔からイチローの得意技だ。
たぶん、イチローは、自分の前に打席に入ったスチュアートにロドニーが投げた球がどれもシュート回転していることを脳裏に焼き付けて打席に入ったことだろう。

damejima at 20:26

April 21, 2013

イチローのバントで前進するサード

トロントでの第2戦は、延長11回の無死1,2塁、イチローがサード、ブレット・ローリーの前に絶妙のバント。ピッチャーの左腕アーロン・ループが最初から間に合わないサードに投げ、これが悪送球になって2点が入り、ヤンキースがこのカード連勝したわけだが、このバントの記録が「犠牲バント」になっているのが納得いかない。
2得点はピッチャーの悪送球の結果として扱われるとしても、バントそのもの記録についてヤンキースは即刻「ヒット」に訂正するよう申し入れるべきだろう。
動画(MLB公式):Baseball Video Highlights & Clips | NYY@TOR: Suzuki hits a sacrifice bunt to drive in two - Video | yankees.com: Multimedia

このバント、たとえピッチャーの送球が悪送球でなくても、サードは間に合わない。

なぜなら、バントの瞬間、「三塁手が反射的に飛び出しているから」だ。だからこそ、記録は「ヒット」であるべきだ。上の動画の50秒過ぎあたりを見れば、イチローのバントの効果で三塁手が数歩勢いよく前進してしまい、そこから慌てて反転し、投手に背中を向けてサードベースに戻ろうとしていることがハッキリわかる。
前に飛び出した三塁手ローリーが、ベースカバーに間に合うようサードに戻るのは、最初から無理なのだ。

投手に背中を向けて三塁に戻る三塁手ピッチャーはまだ背中を向けている三塁手ローリーに送球しようとしている。三塁手のベースカバーは最初から間に合うわけがなかった。三塁での封殺は最初から無理なのだ。

態勢の整っていない三塁手に送球しようとする投手
態勢の整っていない三塁手に送球してしまう投手
三塁手はまだベースについてないのに送球がそれる
悪送球で決勝点が入る



上の最後の1枚で、三塁手があとずさりしながら、送球を捕球しようとしているわけだが、もし三塁手がかろうじて捕球したとしても、サードにスライディングした2塁走者バーノン・ウェルズに簡単にタッチにいけるわけではない。
なぜなら、三塁手の立ち位置は、見た目よりもずっとサードベースから離れた位置だからだ。たとえテレビ画面で見ると、まるで三塁手がサードのすぐ手前のように見える、としても、それはカメラアングルによる視覚的な錯覚だ。

マラソンのテレビ中継で、見た目には2位のランナーがトップのランナーの真後ろを走っているように見えるとしても、実際には「10メートル離れている」なんてことは、よくある。

そしてもちろん、「人間があとずさりする速度」なんてものは、「全力速力で走ってきたランナーが滑り込む速度」よりも、はるかに遅い。

2塁走者バーノン・ウェルズの位置


damejima at 06:03

April 13, 2013

迷えるヤンキースはいつまで「クラシックなアメ車みたいな野球」が通用すると思っているのだろう。アメリカ人のクルマの好みや需要がいつまでも変わらないと思っているとしたら大間違いなのは、数年前にアメリカの自動車市場の重要部分を占めるピックアップ・トラックやSUVの中古価格が急落したことなど、消費者の考え方の根本的変化を示す近年のマーケティング調査の結果を見るまでもない。


2012年に、夏までは地区優勝間違いなしと思われていたヤンキースが、夏を過ぎて主軸打者の攻撃力不足(特にAロッドグランダーソン)と、投手陣崩壊(特にセットアッパー)というダブルパンチにみまわれながらも、新GMダン・デュケットがチーム再生に成功した2位ボルチモアに優勝をかっさらわれずに済んだのは、ひとえにラウル・イバニェスと途中加入のイチローの奇跡的な活躍があったからだが、逆にいうと、2012年に「ついうっかり優勝できてしまった」ことで、ヤンキースは古い体質を変えていくチャンスを逸してしまった、とも言える。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年9月20日、『イチロー・ミラクル・セプテンバー』全記録(1)トロント戦全ヒット 東海岸が初体験する「ゲップが出るほどのイチロー体験」のはじまり、はじまり。

参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年9月28日、『イチロー・ミラクル・セプテンバー』全記録(2)オークランド戦以降の「魔法」 〜イチローがアメリカで「ウィザード」と呼ばれる理由。

Aロッドとグランダーソンは、2012ポストシーズンについにスタメンをはずされるところまで打撃成績が急降下したわけだが、原因は、既にブログにも書いたように、単なる「一時的な不調」ではなく、彼らのバッティング上の根本的な弱点や、打席で常に狙っている球種やコースが、他チーム(特に今まで大味な野球をやってきた同地区のチーム)に十分すぎるほど知れ渡ったためだ。
打席で常に弱点を徹底的に突かれるようになっている彼らの攻撃力低下は、半ば永続的なものであり、もう伸びしろなど、あるわけはない。ヤンキースのゲームをきちんと見ている人なら、つべこべ言わなくてもわかるはずだ。突然グランダーソンがインコースの縦に落ちる変化球を打てるようになるとは、(ドーピングでもしない限り)まったく思わない。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年11月2日、2012オクトーバー・ブック 「スカウティング格差」が決め手だった2012ポストシーズン。グランダーソンをホームランバッターに押し上げた「極端なストレート狙い」が通用しなくなった理由。

もっと言えば、ア・リーグ東地区は、ついこの間まで大味ないわゆる「大砲野球」でも十分やってこれた。
というのは、なんせ、同地区に毎年下位に甘んじてくれるチームがたくさんあり、そういう大味なチームが隙だらけの野球をやり続け、負け続けてくれてきたからだ。
ヤンキースやボストンなど本拠地の狭い上位チームは、金にモノを言わせて(たとえそれがステロイダーのゲイリー・シェフィールドやAロッド、ジェイソン・ジオンビーなどなどであっても)ホームランバッターを並べておきさえすれば、優勝争いを独占し続けることができた。

他方、例えばかつてのボルチモアは、早打ちの淡泊すぎるバッティング、酷い守備の大雑把な野球が特徴だったから、ヤンキースやボストンにとっては「いいカモ」であり、勝ち数を簡単に増やしてくれる「同地区の、対戦数の多い、おいしい対戦相手」、いわゆる「お客さん」だった。

だが今は違う。
ボルチモアはGMと監督を入れ替え、チーム体質を変えていく過程にあって、昔のような行き当たりばったりにスイングしまくる野球スタイルを止め、隙のない野球もできる体質に少しずつ変化し始めている。
2012年にチームの内部事情から大崩壊したボストンにしても、2013年を前に投手陣再建にうってつけてのジョン・ファレルをトロントから引き抜いて新監督に迎え、また、データをあらためてチームにしっかり注入し直して、データ主義野球を従来よりさらに前面に押し出し、早くもチーム再生に成功しつつある。ボストンはもともとMLBで最も待球型の打線だが、今シーズンはおそらくこれまで以上にバッターに徹底的に待球指示を出しているように見えるし、守備位置の決定にすら打者データが徹底活用され始めている。
またタンパベイは、OPS重視の古くさい打線構成があいかわらず機能しておらず、その点は馬鹿としか言いようがないが、なんといっても投手陣がいい。上位チームにたとえ打ち負けることがあっても、投手の違いで勝ちを拾っていける可能性がある。

トータルに見れば、打てるか打てないかわからないホームランだけに頼ってヤンキースが勝てるような時代ではなくなった、ということだ。
古くからのヤンキースファンや、ニューヨークのMLBメディアがどう考えようと、どう書こうと、現実の野球は変わりつつある。(ドーピングを摘発するための血液検査もそのひとつの例)ヤンキースが狭い球場でホームランだけ狙って強振し続けるドーピングスラッガーを並べておけば楽にワールドシリーズ優勝できたような「雑な時代」は、とっくに過去のものになりつつある。
そりゃそうだ。2012ワールドシリーズ優勝のサンフランシスコの強さ、分析力の高さをみてもわかることだ。ドーピングしまくっている主軸打者が、早いカウントのストレートだけ狙い打ちしてフルスイングしているだけで、ワールドシリーズに優勝できた雑な時代なんてものは、とっくに終わっていると考えるのが当たり前というものだ。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年11月10日 2012オクトーバー・ブック 投げたい球を投げて決勝タイムリーを打たれたフィル・コーク、三冠王の裏をかく配球で見事に見逃し三振にしとめたセルジオ・ロモ。配球に滲むスカウティングの差。


では2012年にかろうじて地区優勝を拾ったヤンキースは、オフに、昨シーズン終了間際のチーム編成の不備、つまり、「投打両面でのチカラ不足」という課題を解決できたのか。

言うまでもなく、解決などされてない。

ヤンキースの2012年オフの補強ぶりを簡単にまとめるなら、「『足りないもの』はほとんど補強されず、『既に足りていたもの』ばかり慌てて衝動買いしただけ」なのだから、チームバランスが修正できているわけがない。
ヤンキースの投打の戦力不足のうち、短期的課題はなんといっても「投手補強」だったわけだが、これがほとんど手がつけられていない。
また、去年のポストシーズンにあれだけ打てなくて問題になった野手についても、内野のスタメンのほとんど(テシェイラ、ジーター、Aロッド)が怪我で開幕を欠場しているにもかかわらず、GMキャッシュマンが補強したのは、その足りない内野手ではなくて、外野手ばかりを、それも手当たり次第に買ってくるという、わけのわからない補強ぶりだったわけだから、当然ロスターのバランスは著しく片寄ってしまい、さらに当然のことながら、選手起用は非常に歪(いびつ)なものになってしまった。


ヤンキースは、長期契約している大物先発投手が少ない。つまり投資の重点は、投手ではなく、打者だということだ。当然ながら、ペイロール(=選手に払うサラリーの年間予算)の大半を占めるのは、「高額サラリーの野手」という予算構造になっている。
怪我で、内野のレギュラーのほとんど(1塁テシェイラ、遊撃手ジーター、三塁手Aロッド)と、オフに契約を結び直した外野の中心選手グランダーソンが不在という異常事態のままシーズン開幕を迎えそうになってしまい、慌てたGMキャッシュマンは2013シーズンの開幕直前になって、つまり、もう移籍市場に選手がろくに出回ってない状態になって慌てて補強をした(つまりは、高い買い物をつかまされた)わけだが、その目的は当面の攻撃力不足を体面的に取り繕うためだけに過ぎなかった。

結果的に、「攻撃のヤンキース」という体面を取り繕ろってはみたものの、移籍市場に商品が並んでいない状態でのなりふり構わない一時的な補強は、結果的に外野手と内野手のバランスを悪くして、予算削減にも結局失敗してしまい、内野手は足りず、外野手は余っている。(例えば、ジーター不在の穴を埋めているショートのヌニェスがちょっと怪我をして欠場するだけで、内野の控えがいなくなってしまうという事態が起きるのも、そのせい)


MLBチームの編成は、ロスターが25人と、ベンチ入りできる選手数がもともと限られているだけに、ちょっとでもバランスを欠く選手構成になれば、すぐ弊害がハッキリ出る。特に、今のような「投打のバランスが強く求められる時代」には余計にそうなる。
例えば、下に挙げたグラフでわかる通り、かつてア・リーグ西地区で最も弱かった時代のテキサス・レンジャーズは、メジャーで最も失点するチームのひとつだった。当時のテキサスは、打線がいくら点を入れても入れても、キリがないくらいに投手が失点して、その結果、ひたすら負け続ける、そういう「バランスの悪い、ザルみたいなチーム」だった。

テキサスのホームラン率・被ホームラン率の変遷
テキサスのチームホームラン率・被ホームラン率の変遷


野球ではスタメンの選手が、攻撃面で9人分働き、守備でも9人分の働きをする、というのがとりあえずの理想ではある。だが、スタメンの中には、守備的な選手、攻撃オンリーの選手が入ることもよくあることなわけだから、「ひとつのチームで、9人分の攻撃力と9人分の守備力を実現すること」は、実際には至難の業だ。
ところが、馬鹿なことに、中には「超守備的」だの、馬鹿馬鹿しい目標を立てて大失敗している頭の悪いシアトルの例でわかるように、たとえ守備面で9人分以上の働きができても、攻撃面では2人分くらいの働きしかできないような「偏向したチーム」を作ってしまうアホなチームがある。もちろん、それではチームはマトモに機能しない。
それと同じように、やたらと攻撃だけに徹したチームを作ろうとして、同タイプのフリースインガーばかり集めて打線に並べてしまう頭のイカれたチームもバランスを欠いている。(これもかつてシアトルでやった馬鹿げた施策のひとつ)

今の時代は、投打にしても、内外野にしても、バランスを著しく欠いたチームがワールドシリーズを勝てるような、もう、そんな時代ではない。(もっといえばチーム内の人種構成にもバランスが必要になっている)
第3回WBC優勝のドミニカ代表にしても、かつてのような打撃オンリーのチームカラーではなくなっているからこそ優勝できたといえる。カリビアン・ベースボールは、もうかつてのようなスラッガーとキャッチャーだけが突出した、偏った野球などしていない。中米の野球が、優れた打者を輩出するだけでなく、しっかりした投手も生産できるバランスのとれた選手育成ができるように変化してきたからこそ、ドミニカはどんなタイプのチームと対戦しても、揺るがずに自分の野球ができる。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年3月16日、カリビアン・ベースボールの音色。


たぶんヤンキースの野手は7月のフラッグシップ・ディールまでに何人かが他チームに放出されることになるだろうが、たとえAロッドやグランダーソンがスタメン復帰して「本来のヤンキース打線」に戻ったとしても、それで打線が向上するとは限らない。
むしろ、対戦相手(特に対戦数の多い同地区のライバルチーム)に十分過ぎるほど研究され尽くされているこの2人の主軸打者がスタメンと打順を占領したまま打撃不調を続けることになったら、彼らをスタメンからはずしたくてもはずせないまま負け続けた2012年終盤の貧打が、単に再現されることにしかならないだろう。

好調なバッターを日替わりで使えばいい、と考える人もいるだろうが、毎日のように変わる「日替わりスタメン」「日替わり打順」というような流動的なチーム方針は、伸び盛りの若いチームならともかく、ヤンキースのような「高齢チーム」には明らかに向いてない

とかく管理者というものは「高額サラリーの選手はスタメンからはずせない」と思いこみがちだし(本当は遠慮なく外せばいいだけのことだが)、そういう不良債権の復調を待ってスタメンで使い続けている間に、せっかく好調だったバッターも調子を落としていき、その一方でなかなかAロッドやグランダーソンが復調しないというパターンは、2012年秋に既に経験していることだが、「変われないヤンキース」はたぶんこの夏に2012年ポストシーズンと同じような失敗を経験することになるだろう。
Aロッドやグランダーソンの高額サラリーを考えれば、ヤンキースは彼らをスタメンで使わないわけにはいかない、と考えて使い続けることだろうが、彼らが不調のせいでなく、他チームのスカウティングで恒常的に打てなくなっていることが明確になるまでの数ヶ月を我慢している間に、シーズンなどあっという間に終わってしまう。
そして、その「我慢」の間に、GMキャッシュマンが開幕直前になりふりかまわず補強した選手たちは、ポジションを交代交代で使われているうちに調子を落としてしまうのは目に見えている。
そうなれば、ファンは、2012年秋にチームがAロッドとグランダーソンをスタメンからはずす決断ができるまで躊躇し続けたムダな時間に経験したのと全く同じイライラを、またもや経験させられるハメになる。


まぁ、ハッキリ言わせてもらうと、
今のヤンキースは、ホームランを打とうが、打たまいが、ホームランでスカッとする、なんていう「抜けのいいチームカラー」ではない。やることなすことがそもそもチーム方針がハッキリせず、施策は後手後手に回るから、なにをしても抜けが悪いし、見ているほうがイライラする。 そういうチームだ。

ヤンキースGMにしても、ニューヨークメディアにしても、古くさいステレオタイプの「ホームラン量産 攻撃型ヤンキース」だけをどうしても見ていたい、というのなら、それはそれで構わない。(ただ、言っておくと、実際のヤンキースが、ずっとそういう「ステレオタイプなヤンキース」だったわけではない。そんなのは単に都市伝説に過ぎない)
古くて燃費も悪いアメ車にどうしても乗り続けたい、これに乗ってないとクルマに乗っている気がしない、というのなら、それはそれで好きにすればいいだけのことだし、チームが方針としてハッキリ打ちだせば、それですむことだ。ジョシュ・ハミルトンだろうが、ジャンカルロ・スタントンブライス・ハーパーだろうが、好きなだけ金を使って他チームの看板スラッガーをかっさらってきて、さっさと打線に並べればいい。(もちろん、ことわっておくと、他チームに弱点の知れ渡ったハミルトンはもう打てないから大金をかける価値はもうない)
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年10月6日、2012オクトーバー・ブック 「平凡と非凡の新定義」。 「苦手球種や苦手コースでも手を出してしまう」 ジョシュ・ハミルトンと、「苦手に手を出さず、四球を選べる」 三冠王ミゲル・カブレラ。

古いアメリカ野球で今のワールドシリーズに勝てる、と、本当に思うのなら、そうすればいい。


なのに、今は「躊躇する曖昧なヤンキース」なんてハンパなものを見せられ続けられているのだ。なんとも不愉快きわまりない。
ニューヨークの野球ファンは馬鹿じゃない。いまのヤンキースのチームプランの中途ハンパさ、抜けの悪さは、なにもアメリカの大手メディアのライターに言葉で指摘されなくても、最初から誰でもわかっている。客席の空席の多さを見れば、馬鹿でもわかる。
このブログとしても、不愉快きわまりない中途半端なチーム方針の下で右往左往させられるイチローを観ているのがあまりに不愉快だから、ブログを書こうとする手すら、ついつい止まってしまう。

本当にいい迷惑だ。


どこの誰が、いまのいま、どんな野球を見たがっているのか。
どんな野球をすれば、いまの時代に、最後まで勝ち続けられるのか。

そういう、ハッキリした時代に向けたメッセージがまるでアピールできてない「躊躇し続けるヤンキース」なんてものは、本当につまらない。

よく、ヤンキースは勝利至上主義だ、なんてことをいいたがる人がいるわけだが、いまのヤンキースは到底そんな厳格なチームではない。単に、いろいろな人の、いろんな契約の、いろんな都合を、ただ配慮しているだけの、抜けの悪い、八方美人の、後手後手のチーム。それが今のヤンキースだ。


イチローの処遇にしても、彼が「強いチーム」でスタメン争いに苦労するのを見るのなら、別に何も問題はない。なぜって、それが「競争というものの本質」だからだ。
しかし、「チーム自体が躊躇しまくりで、大型契約と不良債権の制約でがんじがらめになっている、弱いヤンキース」で右往左往、なんてのは、「競争」でもなんでもない。スポーツでもない。
そんなのは、ただの「ご都合」だ。テレビの前で「他人の都合」なんか見せられても、なにも面白くない。当然のことだ。

だいたい、2012年秋に一度死にかけたチームをポストシーズンに導く活躍をして、アンドリュー・ジョーンズやイバニェスといったスラッガー系のライバルを押しのけて外野のレギュラーポジションをもぎとり、さらに年齢を考えると破格ともいえる2年契約を得て、さぁ、今年は春からやるゾ、という肝心なときになって、トラブルを抱えまくったチームサイドがわけのわからない補強をじゃんじゃんやりました、また最初からやり直してください、じゃ、さすがのイチローだって、モチベーションが上がるわけがない。チーム運営が滅茶苦茶なシアトルで失わさせられた貴重なモチベーションを、もう一度上げるためにヤンキースに移籍したというのに、この中途半端な状態では何のために移籍したのかわからない。
「モチベーション」というやつは、誰でも同じではなく、ヴェテランになればなるほど、一度落ちたら、再度上げていくのに時間も手間もかかる、そういうものだ。ヴェテランの多いチームなのだから、そんなことくらい、理解しないとダメだろう。(まぁ、理解しているからこそ、多少不調でも6番に固定している、といえなくもないが、そんな中途半端な配慮で中途半端な打順に置くくらいなら、いっそ「9番」、つまり「裏の1番」とかのほうが、打線の繋がりとして、よほど面白い)


そしてあとひとつ。言うまでもないことだが、今の時代に求められる「強さ」は、「ドーピングスラッガーを並べたヤンキース」でもなければ、「中古の大砲を並べただけの、古いヤンキース」でもない。

damejima at 03:04

March 24, 2013

イチローがこの年齢にしてヤンキースのレギュラーであり、2度のWBCで結果を残してきた理由。それは、彼がMLBのレジェンドだから、でも、10年超MLBで活躍してきたから、でもない。

イチローが、ほかの誰よりも必死にグラウンドに立とうとしてきたから」だ。

他の誰よりも。
そう。誰よりも、だ。
必死。死ぬほど必死に、だ。

移籍当初、どんな打順でも打ち、レフトでも、センターでも、ライトでも守った。グラウンドに立って野球をやるためだ。その必死さの意味が、2013年春のWBCで、初めて昔のパンクを聴いたときのように、あらためて心にグサリと刺さった。



誰もがわかったつもりになっていた。わかっていたはずの、誰の眼にも見えていたはずの、彼の必死さは、実はまだ伝わりきっていなかった。

勝つ、ということに本当の本当に必死になったら、スモール・ボールも、ビッグ・ボールも、へったくれもない。勝たなければならない。勝ち続けたければ、いまのいま勝たなければ、明日がない。
そのためにいま、いま何ができるか。何なら、できるのか。何をして時を過ごしていなければならないのか。そういうシンプルなこと。それを、あれほど死ぬほど必死になってやってこれた人間が他にいない。必死になってやってきた。だから鈴木一朗はイチローになれた。


2013シーズンのMLBがもうすぐ始まる。
楽しみでならない。

イチローも年をとった。年とったからこそ、彼はまた怖いくらい真剣に野球をやるだろう。びっくりするほどの数の才能が、世界中から集まるMLBで。

damejima at 05:10

March 02, 2013

Davidoff Humidor No.6Davidoff Humidor No.6


2002年に亡くなられたパンチョ伊東さんの体調は2000年頃にはすでにかなり思わしくないものだったようだが、9月1日にホワイトソックスの本拠地、「新しいほう」のコミスキー・パークを訪れた、と記録にある。(パンチョ伊東のメジャーリーグ通信)本当に野球が好きで好きでたまらない方だったことがよくわかる。頭が下がる。

球場では試合前、旧知の間柄のホワイトソックスオーナー、Jerry M. Reinsdorf (ジェリー・ラインズドルフ。1936年ニューヨーク・ブルックリン生まれ。マイケル・ジョーダンが所属したシカゴ・ブルズのオーナーとしても有名)に偶然出会い、スイートルームに招かれて葉巻を勧められたという。
たとえMLBの球団オーナーになるような富豪であっても 『旧知の友人』 で 『気軽にスイートに招かれる』 というのが、パンチョさんのMLB人脈の無尽蔵さを物語る。感心するほかない。


2000年9月にパンチョさんが訪れたコミスキー・パークというのは、今でいうと、USセルラー・フィールドだ。というのも、1910年開場した旧コミスキー・パークが1991年に取り壊され、新たに建設されたホワイトソックスの本拠地は2003年まで旧球場と同じ『コミスキー・パーク』を名乗ったからだ。
だが、古くからの熱狂的なMLBファン、enthusiastであるパンチョさんが2000年9月の記事でUSセルラーを「コミスキー・パーク」と呼んでいらっしゃるのをあらためて見ることのほうが、かえって時代の「匂い」がリアルに感じられて、とてもいい。やはり時は移り変わるものなのだと、かえって時のうつろいが身にしみる。

2000年のホワイトソックスは、主砲フランク・トーマスの復活などもあって、約40年ぶりのワールドシリーズ進出か、と騒がれたほどの好調ぶりで地区優勝を果たすことになるのだが、ア・リーグ・ディヴィジョンシリーズ(ALDS)で、ワイルドカードでポストシーズン進出してきたシアトルに3連敗してしまい、世界制覇の野望は潰えてしまった。
(ちなみに、ホワイトソックスの日本語版Wikiにシアトルに負けたのが「リーグチャンピオンシップ」、つまりALCSであるかのような記述があるが、間違っている 2000 League Division Series - Seattle Mariners over Chicago White Sox (3-0) - Baseball-Reference.com

この翌年、2001年には、メジャー移籍したイチローセーフコで行われたMLBオールスターに出場することになった(イチローがランディ・ジョンソンから内野安打を打ち、盗塁したゲーム)が、体調の思わしくないパンチョさんは現地観戦できなかった。コミッショナー、バド・セリグはオールスター当日、パンチョさんからプレゼントされた黄色のネクタイをしめていた、という。



2002年オールスターは7月9日にミラー・パークで行われ、イチローも2年連続で先発出場しているわけだが、パンチョさんはイチロー2年目のオールスターの5日前、7月4日に亡くなっている。おそらく天国のブリーチャーから熱心に観戦なさったことだろうと思う。

Bleacher


ジェリー・ラインズドルフは、パンチョさんにすすめた葉巻の銘柄について、こんなことを言っている。
「キューバの上物は手に入らないが、
このドミニカ産もいいんだぜ」
となると、ラインズドルフのすすめた葉巻は、キューバ産の代表ブランド、コイーバ(Cohiba)やモンテクリスト(Montecristo)ではなく、キューバ産に比肩するドミニカ産葉巻で、1990年に生産拠点をキューバからドミニカ共和国に移したプレミアム・シガー、ダビドフ(Davidoff)だっただろう、ということになる。

Davidoff Aniversario - No.2

高級な葉巻の保管については、乾燥によるヒビ割れや、湿り気による青カビを防ぐために、humidorと呼ばれる専用箱に入れられ、湿度が70%前後に保たれる。(ちなみに香水を保管する箱を、高級葉巻の保管箱であるhumidorになぞらえて、Fで始まる綴りに変え、fumidorと呼ぶこともあるらしい)


今シーズン、三角トレードでナショナルズからシアトルに出戻ったマイク・モースだが、彼は元をただせば、パンチョさんがコミスキー・パークを訪れた2000年にホワイトソックスに入団している選手だ。(2000年6月19日に行われたアマチュアドラフト3巡目。全体82番目。パンチョさんが稀代のMLB通なのはいうまでもないが、シカゴ入団当時のモースの存在に気づいていたかどうかまではわからない)
3rd Round of the 2000 MLB June Amateur Draft - Baseball-Reference.com

そのモースがシアトルに来たのは、2004年6月27日にシカゴのモース、ミゲル・オリーボ、ジェレミー・リードと、シアトルのフレディ・ガルシア、ベン・デービスという3対2のトレード。そして、2009年6月28日にライアン・ランガーハンズとの1対1のトレードでナショナルズへ移籍した。
モースのシアトルにおけるキャリアのかなりの部分は、タコマでのマイナー暮らしで、メジャーでの出場試合数はわずか107ゲーム、打席数にして337打席でしかない。
モースがシアトルでの不遇時期に何を思っていたかはよくわからないが、少なくとも彼がナショナルズで開花した形になってから、三角トレードで古巣に凱旋したとき、彼がかつてシアトルに在籍した2004年から2009年までずっとチームの主力だった選手は、もう誰ひとり残っていなかった。(モースの在籍期間にフェリックス・ヘルナンデスが本当にエースといえる活躍をしたのは2009年のわずか1年だけでしかないし、2009年にシアトルに来た外様のフランクリン・グティエレスは「モースにとって、シアトルの匂いのする選手」ではないはず)


最初に挙げた文章を、どう訳せば、モースの使った Humidor という言葉の香りが損なわれずに済むか。


直訳すれば、「イチローは、僕に必要不可欠な湿めり気なんだ」とか、「イチローは、高級葉巻がクオリティを保つのに必要な『適度な湿度』をキープしてくれる宝箱的な存在の選手だ」とかいうことになる。
もっと意訳するなら、「自分がかつてシアトルにいた時代に嗅いだ あの『かつてのシアトル・マリナーズらしい香り』は、いま『イチロー』という存在の中に封印されている。その香りは常に僕に自分自身のかつてのシアトル時代を思い起こさせる」、とでもいうようなことになる。
シアトルでマイナー暮らしの長かったモースにとって、メジャー移籍直後からずっと目覚ましい活躍をし続けていたイチローは、いつかは自分もあんな風に第一線に立って活躍するんだという目標、あるいは、マイナー暮らしに耐えながら自分に対する自信を見失わないための支柱だっただろうと思う。

2001年のオールスターには8人もの選手がシアトルから選ばれ、さらにスターティングメンバーに4人もの野手が選ばれている。(イチロー、ブーン、オルルッド、エドガー)
モースは、シカゴで「強かった時代のシアトル」を知り、さらに「イチローのいるシアトル」にやってきて、やがて巣立ち、そして「イチローのいないシアトル」に戻ってきた。モースにとって、「イチローのいるシアトル」こそが「彼にとってのシアトル」なのは当然だ。
(ついでに言えば、それは2010年11月に亡くなったデイブ・ニーハウスにとっても同じだったはずだ。かつてブログに書いたように、「イチローのいるシアトル」こそが、「彼にとっての最後のマリナーズ」だった。 Damejima's HARDBALL:2010年11月15日、デイブ・ニーハウスにとっての「ラスト・マリナーズ」。

とすれば、最初の文章は、「イチローは僕にとって、僕がかつてのシアトルに感じた香りを封じ込めておいてくれる葉巻の箱のような存在なんだ」とか、軽く訳しておくだけでいいかもしれない。だが、それではモースがせっかく「ヒュミドール」という言葉を使って漂わせたかった「甘い想い出が発酵したときにだけ生じる、独特のかぐわしさ」や、モースがシアトルでの不遇時代に味わった「自分史における、ほろ苦さ」の微妙な感覚は消えうせてしまう。
匂いが消えてしまえば、シガーは台無しになる。もちろんジャック・ズレンシックの作った「匂いの消えうせたシアトル」は、「台無しになった後のシガー」だ。


結局、Humidorは、Humidorだ。そのまま味わうしかない。
そんな気がする。

伊東さん。それでいいっスよね。

damejima at 07:17

February 05, 2013

十二代目 市川團十郎


大鵬


忌野清志郎


イチロー


Ichiro 2


Hideo Nomo


「道を極め、自分の型をもつに至る」、ということと、
「型にはまる」「型にとらわれる」ということの違いは、
よく勘違いされ、混同されてもいる。

型にはまらないことは、型を持たない、という意味にはならない。むしろ、往々にして、道を極めた達人は、その人しか持ちえない独特の型を持つに至っていることが多い。

血気さかんな若いとき、「型にとらわれたくない」「個性を大事にしたい」と考えることは、よくある。
では、若いから型にはまらないのか、個性的なのか、というと、そんなことはない。というのも、若さはとかく型に流されやすいからだ。若く青臭い芸は、型にとらわれ、型苦しい。若さとは、他人と同じであることに安住し、群れて泳ぎたがる雑魚である、という意味でもある。若さを安易に可能性や個性に結びつける考え方そのものは、「年寄りじみた、型にはまった思考」でしかない。
気ままにやっていさえすれば、自分というものにたどりつけるわけではない。かえって、昔からある型を丹念になぞり続けるような、ひどく単調で、面白くもなんともない修練を淡々と積み重ねることでしか、自分の型に至る道が開けないこともある。


つまるところ、「型に学びながらも、埋没することなく、さらに自分だけの型をもつに至る」というちょっと矛盾した行為を、どうしたら実現できるか、という問いは、「自由」というものをいかにしたら獲得できるか、という問いに、とてもよく似ている。


日本の文化にとって、型というものがもつ様式美は非常に重要なものだ。そして、それは同時に「日本には独特の自由の様式がある」という意味でもある。
日本の文化に携わる人たちは最初、単調な修練の連続によって意図的に型にとらわれることからコトを始めるわけだが、その後、型の奴隷のまま終わるか、それとも、自分の型や自由をもち、モノになるかは、誰にもわからない。


自分の型をもつことができた人を、何人見ることができるか。これは、自分が生きて死ぬまでの、長いような、それでいて短いような暮らしがどれだけ潤いのあるものになるか、という点で、非常に重要だと思う。

自分だけの限られた世紀において、自分だけの型を持つに至った存在、Legendを目にすることができたなら、それは無上の喜びというものだし、出現してくれてありがとうと言いたくなる。

Copyright © 2013 damejima. All Rights Reserved.

damejima at 19:27

December 20, 2012

ルーニー・マーラ

ドラゴンタトゥーの女で使われたモーターサイクル

このバイクは、映画『ドラゴンタトゥーの女』でリスベット・サランデルが乗り回している美しいカフェレーサーだ。フロントもさることながら、「ケツ」からの眺めがなんともセクシーでたまらない。
デザインは、ロサンゼルスのファクトリー、Glory Motor WorksのJustin Kellの手によるもの。ベースはホンダのスクランブラー、CL350らしい。
She wouldn’t have an expensive modern bike– she would have an inexpensive, older bike that would be customized to fit her personality.
「(監督デビッド・フィンチャーから話をもらって、原作も読み、いったいリスベット・サランデルなら、どんなバイクに乗るだろう?と考えた結果)彼女なら、けして高価なバイクなどには乗らず、むしろ、手頃だけど自分のパーソナリティにぴったりフィットするようにカスタマイズしたオールドバイクに乗るだろう。そう思ったんだよね。」
THE EPIC BIKE BUILD GOES TO GLORY | THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO « The Selvedge Yard


"Matrix" に並ぶブログ主の超お気に入り映画のひとつ、『ファイトクラブ』の監督でもあるデビッド・フィンチャーの『ドラゴンタトゥーの女』で、パンクっぽい、壊れた女性ハッカーを演じたルーニー・マーラは、実は、NFLニューヨーク・ジャイアンツの創始者ティム・マーラの曾孫(ひまご)にあたっている。映画での役柄とはかけ離れた、いわゆる「お嬢様」であり、また、何代にもわたる生粋のニューヨーカーでもある。


Tim MaraNFL ニューヨーク・ジャイアンツの創始者ティム・マーラは、1887年にマンハッタン東南部、ロウワー・イーストサイドの貧しい家庭に生まれ、13歳のとき母の家計を助けるために早くも仕事についた。最初の仕事は奇しくも映画館の案内係だったという。
やがてティムは通りで新聞を売る仕事を経てブックメーカーの使い走りになり、さらに18歳のとき彼自身がブックメーカーになった。

ロウワー・イーストサイドの路上の子供たち(1906)
1906年当時のロウワー・イーストサイド。
資料:Old New York - missfolly: Children on Street, Lower East Side,...

ブログ注:『ユダヤ人のアメリカ移住史』より
「1880年代初頭、アメリカ・ユダヤ人社会史上に、決定的な転換期が訪れた。当時、ロシア国内で始まった「ポグロム」(ユダヤ人迫害)の嵐で、大量の東欧ユダヤ人がアメリカに流入することになったのである。ユダヤ移民の第3波である。まさに、どっと押し寄せてくるという感じでやって来た。ニューヨーク市の中心部に近い移民集住地区「ロワー・イーストサイド地区」は、おびただしい数の移民集団が住み始めて超過密状態になった。1910年時の同地区には54万2000人が居住し、当時そこは、インドのボンベイを除けば地球上で最も人口密度の高い都市空間であったといわれている。


1925年にティム・マーラは縁あって、草創期にあったNFLのニューヨークにおけるフランチャイズ権を、わずか500ドルで手にしてフットボール興行に乗り出した。
だが、当時のフットボールファンはカレッジフットボールに熱狂していたために、草創期のプロ・フットボールは観客動員に苦しみ、当初4万ドルもの損失を出している。
だがティム・マーラは挫けず、カレッジフットボール出身のスター選手Red Grangeが所属するシカゴ・ベアーズとの対戦を主催することで、翌年には14万ドル以上もの利益を出すことに成功した。

このときティム・マーラがニューヨーク・ジャイアンツとシカゴ・ベアーズのゲームを行ったのは、草創期のMLBチームも数々の試合を行った、かの「ポロ・グラウンズ」だ。アッパー・マンハッタンにあるポロ・グラウンズで行われたジャイアンツ対ベアーズ戦には、Red Grange見たさに6万5,000人から7万3,000人もの観客が集まったという。

Polo Grounds, Eighth Avenue at 159th Street, 1940
1940年頃のポロ・グラウンズ
資料:A Little More New York in Black and White (photos and commentary)
資料:Damejima's HARDBALL:2012年4月27日、一球一音、野球小僧と音楽小僧 (3)野球とティン・パン・アレー。1908年のポロ・グラウンズのゲームからインスピレーションを得た"Take Me Out To The Ball Game"
資料:Damejima's HARDBALL:2010年8月21日、ボルチモアのカムデンヤーズは、セーフコのお手本になった「新古典主義建築のボールパーク」。80年代のクッキーカッター・スタジアムさながらの問題を抱える「日本のスタジアム」。


「1925年のポロ・グラウンズ」といえば、MLBニューヨーク・ジャイアンツ(現サンフランシスコ・ジャイアンツ)からポロ・グラウンズを間借りしていた時代のMLBニューヨーク・ヤンキースが、ベーブ・ルース加入による人気沸騰を契機にハドソン川対岸のブロンクスに旧ヤンキースタジアム(1923年開場)を建設して移転し、ポロ・グラウンズを使わなくなってから「3年後」にあたっている。
つまり、1925年からポロ・グラウンズを本拠地にし始めたティム・マーラ所有のNFLニューヨーク・ジャイアンツは、MLBヤンキースと入れ替わりにポロ・グラウンズを使い出した、というわけだ。
NFLニューヨーク・ジャイアンツの創設はおそらく、「MLBヤンキースの抜けたポロ・グラウンズのスケジュール的な穴を、ちょうど埋める格好になった」ので、ポロ・グラウンズ側としてもタイミングが良かったのだろう。
資料:Damejima's HARDBALL:「1958年の西海岸」 特別な年、特別な場所。


NFLニューヨーク・ジャイアンツは、MLBニューヨーク・ジャイアンツがブルックリン・ドジャースとともにニューヨークを去っていく最後のシーズンとなった1957年の2年前にあたる1955年まで、ポロ・グラウンズを本拠地にしていたが、1956年以降はポロ・グラウンズからも撤退して、ブロンクスの旧ヤンキースタジアムに身を寄せることになった。
50年代末、伝統のポロ・グラウンズは「空き家」になりかけたわけだが、1960年からAFLニューヨーク・タイタンズ(現在のジェッツ)が本拠地にし、さらに1962年にはMLBニューヨーク・メッツがシェイ・スタジアムが完成するまでの仮の本拠地にして、ほんの一時期息を吹き返した。
だが、64年にシェイ・スタジアムが完成すると、メッツだけでなくタイタンズもシェイスタジアムに移転したため、ポロ・グラウンズの借り手がいなくなってしまい、ついにポロ・グラウンズは1964年に取り壊され、その長い長い歴史を閉じた。
Damejima's HARDBALL:2012年3月21日、1958年ドジャース、ジャイアンツ西海岸移転に始まる「ボールパーク・ドミノ」  (1)エベッツ・フィールド、ポロ・グラウンズの閉場
ちなみに、ベアーズのRed Grangeは1926年にフットボールリーグそのものの運営に乗り出し、NFLに対抗するAFLを創設、「ニューヨーク・ヤンキース」という名前のプロフットボールチームも作ったが、膝に大怪我を負ってしまい、フットボールのほうの「ニューヨーク・ヤンキース」は1年しか持たなかった。後にRed Grangeは古巣シカゴ・ベアーズに戻って現役を終えている。


ティム・マーラは1959年に71歳で亡くなったが、NFLへの貢献を認められ1963年殿堂入りしている。
また息子ウェリントン・マーラも、ジャイアンツの共同オーナーのひとりだったが、父親ティム同様にNFLへの貢献によって殿堂入りを果たした。ウェリントンは2005年10月に亡くなっているが、葬儀は11人の子供と42人の孫が参列した盛大なもので、葬儀後に行われたライバル、ワシントン・レッドスキンズとのゲームでは、ニューヨーク・ジャイアンツが36対0という劇的な勝利を収め、後世に語り継がれるゲームになった。
現在のニューヨーク・ジャイアンツ社長は、ウェリントンの息子で、創始者ティムの孫にあたるジョン・マーラで、そのジョンの弟ティモシー・クリストファー・マーラこそ、現ニューヨーク・ジャイアンツ副社長であり、『ドラゴンタトゥーの女』のルーニー・マーラの父親である。

ティム----ウェリントン----ジョン
             ----ティモシー----ルーニー・マーラ

damejima at 17:50
アン・ハサウェイ

アン・ハサウェイ

"The Dark Knight Rises"(邦題:『ダークナイトライジング』)で、セリーナ・カイル/キャットウーマンを演じた、アン・ハサウェイ

"The Girl with the Dragon Tattoo"(邦題:『ドラゴンタトゥーの女』で、リスベット・サランデルを演じた、ルーニー・マーラ

2人とも、最近のヒット映画でモーターサイクル(日本でいうところの「バイク」)を颯爽と乗り回す男勝りな女を演じて喝采を受けたわけだが、この2人の話題の女優、少なからず共通点がある。

というのも、この2人、ニューヨーク生まれ、ニューヨーク大学出身なのだ。(ついでに言うと、かつて映画『トゥームレイダー』でモーターサイクルを乗りまわしていたアンジョリーナ・ジョリーも、ニューヨーク出身ではないものの、ニューヨーク大学出身)


と、いうわけで
年末らしくニューヨークとクリスマスにまつわる話。




映画バットマンシリーズはそもそも、ニューヨークと切っても切れない関係にある。
"Gotham" は、19世紀の作家ワシントン・アーヴィングが最初に命名したニューヨークの古いニックネームなのだ。さらに言えば、アーヴィング自身もマンハッタン出身のニューヨーカーで、『ニューヨークの歴史』という著書もある。

DCコミックの名作のひとつ、『バットマン』で、主人公バットマンの住む街が "Gotham City" と呼ばれる大都会であることが明らかになったのは、このマンガが世に出た1939年5月の翌年、1940年のことだ。
DCコミックでバットマンの原作を書いていた1914年ニューヨーク生まれのBill Fingerの1970年のコメントによると、"Gotham"という街の名前のルーツは、「なんの気なしにニューヨークの電話帳をパラパラめくっていて、"Gotham Jewelers"という店の名前を偶然見つけ、『これだ!』と思いついた」ということになっている。
Then I flipped through the New York City phone book and spotted the name "Gotham Jewelers" and said, "That's it," Gotham City. We didn't call it New York because we wanted anybody in any city to identify with it."
http://io9.com/5934987/is-gotham-city-really-in-new-jersey

2002年から2009年までDCコミック社長をつとめた1956年ブルックリン生まれのPaul Levitzも、「ゴッサムシティとは、ニューヨークのこと」と明言していると、ネット上の資料にある。

さらには、映画『ダークナイトライジング』の脚本を手がけた、有名コミックライター、Frank Millerも、"Metropolis is New York in the daytime; Gotham City is New York at night." と発言している。
実際、『ダークナイトライジング』における「ゴッサム・シティ」は、川と川にはさまれた中洲の、橋とトンネルでつなぎあわされたメトロポリスとして描写されているのだから、誰がどう考えても、明らかにニューヨークのマンハッタン島をイメージして作られている。(とはいえ、映画の撮影自体は、ニューヨークではなく、主にペンシルベニア州ピッツバーグで行われた)

そんなわけで、ワシントン・アーヴィング命名による"Gotham" という言葉は、歴史的に「ニューヨーク」のシニカルなニックネームなわけだし、たとえ「ゴッサムシティは、ニューヨークではなく、その隣、ニュージャージーのことだ」という異説があるとか、ティム・バートンの製作したバットマン映画の何本かはシカゴを舞台として作られた、ということがあるにしても、バットマンシリーズにおける「ゴッサム・シティ」は根本的にはニューヨークであることに違いはない。他のどの街でもない。



Washington Irvingニューヨークを最初に "Gotham" と呼んだワシントン・アーヴィングは、彼自身マンハッタン生まれのニューヨーカーなのだが、母国語の英語以外の外国語に素晴らしく堪能で、当時のヨーロッパの文化人との交流も深かったし、後にスペインで外交官を務めたほどの語学力だった。
彼は、文学的な作品以外に、ヨーロッパの習俗や文化、習慣が、アメリカが現在のようなアメリカとして固まる前の「草創期アメリカ」にどういう形で流入し、定着したかについて、事実から伝説に至るまでリアルに書き残している。この点でのアーヴィングの功績は、今でははかり知れないほど大きく、アメリカ文化がどういう経緯で出来上がったかというアメリカ文化形成史を語る上で避けて通れない人物のひとりといえる。

例えば、アーヴィングは、ジョニー・デップ主演で映画化された『スリーピーホロウの伝説』の作者でもあるが、この『首無しのドイツ騎士』という都市伝説の背景には、18世紀末のアメリカ独立戦争において、なんとしてもアメリカ独立を阻止したいイギリスのハノーバー朝が、当時のイギリスと縁戚関係のドイツ貴族(例えばヘッセン・カッセル方伯)から多数のドイツ民間人を兵士として買い集め、戦場に投入していた事実が背景にあり、アメリカという国のルーツを知る重要資料のひとつになっていることは、既にこのブログで書いた通りだ。
Damejima's HARDBALL:2012年7月16日、「父親」とベースボール (4)アメリカにおけるドイツ系移民の増大。18世紀ドイツの美術史家ヨハン・ヴィンケルマンが欧米文化のルーツとして捏造した「白いギリシア」。

アーヴィングがニューヨークを「愚か者の集まり」という皮肉を込めて "Gotham" と呼んだのは、1807年。当時の彼は、長兄などの協力を得て1807年から翌1808年まで "Salmagundi" という風刺のための出版物を発行しており、みずから記事も連載していた。

"Gotham"の語源は、"goat-ham"、つまり「ヤギの村」だが、これはイギリスの古い逸話 "Wise men of Gotham"『ゴッサムの賢者』からきていて、この場合「ヤギ」は「愚か者」を意味している。

アーヴィングの "Salmagundi"は、大きさが日本の夕刊タブロイド紙のようなサイズであることから、「新聞」だと勘違いする人がいるようだが、英語版Wikiに、「"MAD"に近い」とされていることからして、むしろ内容の方向性は「雑誌」であるはず。
日本にもかつてタブロイド判の『STUDIO VIOCE』(1976年創刊、2009年廃刊 創刊時はタブロイドだったが、やがて小型化した)があったように、かつて出版が文化の主流のひとつだった時代には大判雑誌はけして珍しくなかっが、日本には "MAD" のようなタイプの雑誌文化は結局根づかなかった。(ちなみに、ネット上の資料には、"Salmagundi"を「アーヴィングの短編作品の名前」と紹介しているものもあるが、それも同じく間違い)

ちなみに、1952年に "MAD" を発行したハーヴェイ・カーツマンウィリアム・ゲインズ(ビル・ゲインズ)の2人も、ブルックリン出身のニューヨーカーで、ゲインズは編集者になる前にはニューヨーク大学に在籍していた。
アーヴィングの創造物のうち、"Gotham"というネーミングが、DCコミックの連載のひとつ『バットマン』に受け継がれた一方で、"Salmagundi"の風刺精神がECコミックの発行した"MAD"に受け継がれたと考えると、「ニューヨーク文化の系譜」という意味で、ちょっと面白い。

MAD創刊号の表紙 by ハーヴェイ・カーツマンECコミックの"MAD"創刊号
表紙はハーヴェイ・カーツマン

DCコミックのBatmanDCコミックの"Batman"


ワシントン・アーヴィングというと、「12月24日のクリスマス・イヴに、8頭立てのトナカイの橇(そり)に乗ってやってきて、子供たちにクリスマスプレゼントをしてくれる、真っ赤な服を着た聖人」という意味の「サンタクロース」を発明した人物として紹介されることもあるが、それは間違った記述だ。
アーヴィングは、1809年に出版した『ニューヨークの歴史』という著作の中で、「ニューヨークのオランダ人入植者の間に、12月6日の聖なる日を前にした12月5日にプレゼントを贈る慣習があること」を紹介したに過ぎない。

そもそも、サンタクロースのモデルとなったとされる人物を遡ると、西暦3世紀のギリシア人に行き着くらしいが、その人物は「12月6日」に亡くなっている。そのことから彼の偉業をたたえる聖なる日は、古来から「12月6日」とされてきた。
19世紀のニューヨークのオランダ系入植者たちに、12月6日の聖なる日の前日にプレゼントを贈る習慣が残っていることを著書で紹介したのはアーヴィングだが、彼が世界に新たなクリスマスの習慣が広まる最初のきっかけを作った張本人であるのは確かであるにしても、「サンタクロースの発明者」とまでは言えない。

12月24日、クリスマス・イブ、サンタクロース、赤い服、9頭目の赤い鼻のトナカイなど、「現在の12月24日クリスマス・イブのサンタクロース・イメージ」を作り上げたのは、12月6日の聖なる日の前日のプレゼント習慣を紹介したアーヴィングではなく、後世の人々だ。彼らは、アーヴィングによって広く知られるようになった「12月5日にプレゼントをする古くからある風習」に、主に商業的な目的からさまざまな変更を加え、後天的で人工的な習慣を作り上げていった。だから現在のサンタクロースは太古の昔からある天然自然の習慣では、けしてない。(例えば「赤い鼻のトナカイ」の話は、シカゴのモンゴメリー・ウォード社のコピーライターだったロバート・メイによって、1939年に販促目的で作られた)


ニューヨークは、古くはニュー・アムステルダムと呼ばれたように、もともとオランダからの入植者の多かった土地柄だが、この「オランダ系」というのが、現代のクリスマスの習慣やサンタクロースのイメージのルーツを探るポイントになる。


「赤い衣装を着てトナカイの橇に乗るサンタクロース」という「イメージ」を決定づけたターニングポイントは、1823年12月23日、ニューヨーク州トロイ市(NYCの隣)で発行されていたThe Troy Sentinel紙に掲載されたAccount of a Visit from St. Nicholas / The Night before Christmas(『聖ニコラスの訪問記/クリスマスの前の夜』)という匿名の詩である。19世紀後期にトマス・ナストによって赤い服を着たサンタクロースのイラストが大量に生産されたのも、この詩の流行が元になっている。

現代のサンタクロースイメージを決定づけたこの詩は、長く神学校教授クレメント・クラーク・ムーアの創作とされてきた。
ところが、文献分析の権威であるニューヨークのヴァッサー大学英語学教授Donald Wayne Fosterが「この詩は、ドイツ語はわかるがオランダ語を理解しないクレメント・ムーアの創作ではなく、オランダ系のヘンリー・リヴィングストン・ジュニアなる人物の創作物である」とした詳細な文献分析を、2000年にニューヨーク・タイムズが紹介したことから、最近では「ヘンリー・リヴィングストン・ジュニア説」が定説になりつつある。
フォスター教授が「サンタクロースの詩はムーアの創作ではない」と断定することに成功した根拠のひとつは、8頭のトナカイの名前のうち、オランダ系入植者の語彙において「雷」と「稲妻」を意味する "Dunder" "Blixem"という言葉について、ドイツ語は理解できるがオランダ語のわからないクレメント・ムーアは "Donder"、 "Britzen" と誤記していて、その間違いに気づかなかった、という点がある。(もちろん他にもたくさんの根拠が示されている)

ちなみに、この分析を行ったフォスター教授の在籍するヴァッサー大学は、『ダークナイトライジング』でキャットウーマンを演じたアン・ハサウェイがニューヨーク大学に移籍する前に在学していた大学でもある。(ちなみにメリル・ストリープもヴァッサー大学出身)



2012年のバットマン映画『ダークナイトライジング』の脚本について、脚本家ジョナサン・ノーランとクリストファー・ノーランは、「イギリスの文豪チャールズ・ディケンズの『A Tale of Two Cities(二都物語)』(1859年)から着想を得た」とコメントしている。

Charles Dickens,イギリスの文豪チャールズ・ディケンズは、『二都物語』だけでなく、『A Christmas Carol 』(クリスマス・キャロル 1843年)といった名作も書いているわけだが、そのディケンズとワシントン・アーヴィングは友人で、ディケンズ夫妻がアメリカ旅行をした際、アーヴィングは夫妻を自宅に招いてもてなしている。またディケンズは、有名な『クリスマス・キャロル』を含むクリスマスに関する彼の著作群について、「アーヴィングの影響を受けた」と明言している。
Charles Dickens later credited Irving as an influence on his own Christmas writings, including the classic A Christmas Carol.
Washington Irving - Wikipedia, the free encyclopedia

このことからも「19世紀以降のクリスマスイメージの形成」において、いかにワシントン・アーヴィングの著作の影響が強かったかがわかる。アーヴィングはサンタクロースの発明者ではないが、世界に新たなクリスマスの風習を広めたきっかけを作った張本人であることは間違いない。


そんなわけで、映画『ダークナイトライジング』の脚本は、ニューヨークを "Gotham" と初めて呼んだ生粋のニューヨーカー、ワシントン・アーヴィングのクリスマスに関する著述に影響を受けたと認めているチャールズ・ディケンズの作品をアイデアソースのひとつとして書かれている。
だから、こと『ダークナイトライジング』における「ゴッサムシティ」に関しては、「ニューヨーク」以外を指すなんてことはありえない。ヴァッサー大学とニューヨーク大学、ニューヨークにある2つの大学に在籍した経験をもつニューヨーク生まれのアン・ハサウェイ起用も含めて、ニューヨークの歴史にまみれて出来上がっている『ダークナイトライジング』は、ニューヨークが舞台でなければ、あらゆる辻褄が合わない。

Old ManhattanOld Manhattan, 1929


damejima at 17:20

November 10, 2012


Baseball Video Highlights & Clips | ALCS Gm1: Ichiro's two-run shot puts Yanks on board - Video | MLB.com: Multimedia

2012ALCS Game 1 9回裏 イチロー 2ランHR



2012ALCS(=American League Championship)で結局いいところなくデトロイトにスイープされ、敗退したヤンキースだが、結局のところ、ALCSの命運を分けたターニングポイントは、Game 1でヤンキースが4点リードされた9回裏にイチローラウル・イバニェスの2本の素晴らしい2ランホームランで劇的に追いついたにもかかわらず、負けたことにあった、と思う。


野球というゲームにおいて、小さな差異は、ときとして大きな差異を生み、結果を左右する

まぁ、このGame 1の10回以降の延長イニングは、いってみれば、バタフライ効果でいうところの『シリーズそのものの結果を大きく左右する初期値』だった、というわけだ。
まさに値千金の2本の2ランで、「非カオス的状態に固定されかかった」ゲームをせっかく『カオス状態』に持ち込んだのだから、このゲームだけはなにがなんでも死ぬ気で勝ち切って、その後の流れをモノにするべきだった。


日本の偉大な詩人宮沢賢治は、『春と修羅』の序文でこう言っている。

わたくしといふ現象は
假定された有機交流電燈の
ひとつの青い照明です
(あらゆる透明な幽霊の複合体)
風景やみんなといっしょに
せはしくせはしく明滅しながら
いかにもたしかにともりつづける
因果交流電燈の
ひとつの青い照明です


いったい『万物がせわしく明滅する』のは、何故か。

それは、我々と、我々を取り巻く事象が、「最初から結論ありきの予定調和」だけで出来ているのではない、からだ。
数学でいうところの「カオス的な事象」と「非カオス的な事象」は、あらゆる事象において交互に姿を現し、互いの位置を換え続ける。それは我々の眼には、偶然と必然がせわしなく明滅を繰り返しているように見える。

世界というものが持っているカオスと非カオス、2つの性質のうち、「カオス的性質」は、論理的には、非線形科学の登場によってようやくロジカルに語られるようになったわけだが、そもそも現実というものが「点灯しっぱなしの白熱電球のように、いちどスイッチが入ったら、あとは故障して切れて捨てられるのを待つだけの哀れな存在」ではないことに、ヒトは太古から気づいており、詩人は世界のカオス的な性質を「直観」から記述し続けてきた。


野球というゲームは「生きている」。
それだけに、野球という系は「非カオス的事象とカオス的事象が、交互にせわしなく明滅する複雑な系」とみるべき事象なのであって、非カオス的な予定調和事象の、それも初歩の現象程度しか取り扱うことができない三流の古くさいうえに幼稚な初歩の統計数字ごときで語り尽くせるわけがない。

実際、野球において『バタフライ・イフェクト』といえる事例はことかかない。小さな差異が、必ずしも常に小異を捨てて、ありきたりの平均的な結論に結びつくわけではなく、野球における小異は、ときとして大きな差異へ拡大して、やがてゲーム、シリーズ、シーズンを決定することがある。

いいかえると、そうしたカオス的展開をけして無視できないのが、野球という「必然と偶然のゲーム」の面白さのひとつ、なのだ。

Lorenz AttractorThe Lorenz Attractor



ALCS Game 1 9回裏のイチローの打席を
もういちどよく見てみよう。


ピッチャーは、デトロイトの「劇場型」クローザー、ホセ・バルベルデ。90マイル台の速球とスプリッターが持ち球だ。

ホセ・バルベルデのストレートが99マイルを記録できた時代は、どうも2008年から2009年あたりのアストロズ在籍時らしい。だがデトロイトでのバルベルデのスピードボールには、かつてほどの輝きはない。

バルベルデの99マイル記録

1)2008年4月29日チェースフィールド
アストロズ対ダイヤモンドバックス戦 9回裏
2ベースを挟んで3三振
April 29, 2008 Houston Astros at Arizona Diamondbacks Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com

2)2009年4月25日 ミニッツメイドパーク
アストロズ対ブリュワーズ戦 9回表
ミルウォーキー時代のフィルダーに2ランホームランを打たれる
April 25, 2009 Milwaukee Brewers at Houston Astros Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com


イチローの打席に話を戻そう。

初球。

イチローは「ど真ん中の92マイルのストレート」を見逃した。
92マイルという球速は、いくら最近のバルベルデの4シームにかつてほどのスピードがないとはいえ、いくらなんでも遅い

バルベルデは速球で押しておいてスプリットを混ぜるタイプのクローザーだが、初球に92マイルなんていう「ハンパな速度」の球を、それも「ど真ん中」に投げるということは、バルベルデが、『イチローは初球は絶対に振ってこない』と確信していたことを意味している。
「単に早めにストライクが欲しいから初球を置きにいった」、「イチローはあまり初球を振ってこないというスカウティングに倣った」、「疲労から球威がなかった」、「2球目にスプリットを投げて空振りさせるつもりだった」、初球に92マイルの4シームを投げた理由がどれなのかは正確にはわからないが、少なくともイチローが「初球のど真ん中を見逃した」ことで、バルベルデがイチローを「舐めた」ことだけは間違いない。

そして第2回WBC決勝韓国戦を例に出すまでもなく、これまでどれだけのバッテリーがイチローを舐めてかかって泣いたことか。



イチロー側の視点からも見てみる。

ブログ主は、この「初球見逃し」を、「イチローが最初からホームランを打つつもりで打席に入り、あらかじめ初球のストレートのタイミングを体感で測定した結果、『打てる』と確信して、2球目を待った」、と見る。
かねてからイチローは、「ホームランは狙って打つ」と公言している。バルベルデというピッチャーが速球で押してくるタイプであることはわかっている。ゲームは4点リードされている9回裏。速度とタイミングは把握した。あとは、ホームランを打てるインコースにボールが来るのを待つだけだった。

初球で、バルベルデのストレートの速度、タイミングを測定していたからこそ、2球目のインコースのストレートを、イチローは、「待ちかまえて」、「狙い打ち」した。快心の一打だったはずだ。
いつぞやマリナーズ時代に、NYYのクローザー、マリアーノ・リベラの初球、インコースのカットボールをサヨナラ2ランしたことがあったが、あれと同じコースの球だ。
マリアーノ・リベラから打ったサヨナラ2ラン(2009/09/18)


ホセ・バルベルデの速球をとらえた打球は
ライトスタンドに鮮やかに消えていった。


この後のラウル・イバニェスの2ランホームランもイチローと同じで2球目だったが、この2球、両方ともスプリットだった。
そう。イチローにストレートを打たれたバルベルデはスプリットに逃げたわけなのである。イバニェスはそれを見逃さなかった。

2012ALCS Game 1 9回裏 イバニェス 2ランHRラウル・イバニェスの
素晴らしい2ラン


この例でもわかるとおり、ほんとうにイバニェスはクレバーなバッターなのだ。素晴らしい。

イバニェスは『イチローに速球をやられたバルベルデがスプリットに逃げるのを見逃さず、スプリットを狙い打ちした』というわけだ。
いいかえると、イチローのホームランがバルベルデの速球を封じ、イバニェスの2ランの呼び水となった、ということになる。
バッテリー(あるいはキャッチャー)というものは、失点するまでは、たとえランナーが出ようと打者のインコースを攻め続けるくせに、失点したとたんにアウトコース一辺倒に切り替えてさらに墓穴を掘ったりするものだ。


ALCS Game 1でクローザーのホセ・バルベルデをイチローに破壊されたデトロイトは、代役クローザーに、ストレート中心にピッチングを組み立てるフィル・コークをたてた。
そのフィル・コークは、WS Game 4の延長10回、マルコ・スクータロにストレートを狙われて決勝タイムリーを打たれ、デトロイトはサンフランシスコにスイープされ、悲願のワールドシリーズ制覇に失敗することになる。

つまり、ワールドシリーズの舞台装置を用意したのは、イチローによる『バルベルデ潰しの速度測定後ホームラン』だったわけである。

damejima at 00:37

October 11, 2012


MLB.com Must C | Must C Crafty: Ichiro avoids tag with slick slide - Video | MLB.com: Multimedia






2012ディヴィジョン・シリーズは、どのカードでも劇的なシーンが続出している。
今年のポストシーズンをずっと観戦してツイートしているらしいドジャースのシェイン・ビクトリーノなどは、特にディフェンシブな面で、劇的なファインプレーが続出していることに感心してツイートしている。


ゲームを観るのに忙しすぎて、とてもブログにまとめている暇がない(笑) だが、資料として残しておくべき、という意味では、一部のデータや、思ったことを記録に残しておかないと、そのとき言いたかったことや、事実と事実のつながりが、記憶から消えてしまう。


ALDS Game 2でイチローがみせた神業スライディングについては、某巨大掲示板で誰かが、「これでイチローのMLBでのスーパープレーは、スローイングの『レーザービーム』(2001年)、キャッチングの『スパイダーマンキャッチ』(2005年。スパイダーキャッチと表記する人もいる)、そして、今回のベースランニングと、3つが揃ったわけだな」という意味のことを言っているのを見て、「なるほど。うまいこと言うもんだな」と感心した。
いってみれば「イチロー 三種の神器」というわけだ。1950年代の「白黒テレビ・洗濯機・冷蔵庫」、1960年代の「車・クーラー・カラーテレビ」みたいなもんだ(笑)


だが困ったことに、このスライディング、まだネーミングが定着してない。こういうのは困る。どんなネーミングに定着しようと、カッコ良くて覚えやすければ別に気にしないが、定まってないのは困る。決まった言い方、それも、日米で同じネーミングが存在するほうが、色々な意味で便利だ。


プレー直後

レーザービーム』、『スパイダーマン・キャッチ』がメディアとファンの両方でネーミングとして定着しているのと同様に、この神業スライディングのネーミングも、メディアとファンの間でひとつに定着して欲しいものだとは思うが、それには多少時間がかかるかもしれない。

というのも、プレー発生直後、ファンとメディアのネーミングが "Ninja" と "Matrix"、二手に分かれたからである。


プレー直後、アメリカのファンのツイートや掲示板への書き込みは、もうとにかく"Ninja"の連呼、連呼だった(笑) どうしてアメリカ人たちはあんなに "Ninja!" という単語を使うのが好きなんだろう(笑) ショー・コスギかよ(笑)
ヤンキース公式サイト掲示板 New York Yankees > General > Ichiro is a Ninja

一方、メディア関係者のツイートはというと、キアヌ・リーヴス主演の大ヒット映画 "Matrix"にたとえる人々が主流だった。
"Matrix"という言葉をすぐに使ったライターは、例えば、ESPNのAndrew Marchand、NYデイリー・ニューズのMark FeinsandAnthony McCarron
そして、ヤンキース公式ツイッター、MLB公式(Gregor Chisholm)も、すぐに「マトリクス」という単語のバリエーションで追随し、この神業スライディングに対する驚きと賞賛ぶりを伝えた。

NY Daily News
VIDEO: Ichiro Suzuki's 'Matrix' slide into home plate gives Yankees early lead against Baltimore Orioles in Game 2 of ALDS - NY Daily News
MLB公式
Ichiro makes like 'The Matrix,' deftly avoids tag | MLB.com: News
USA Today
Ichiro Suzuki's matrix move at home plate
ESPN
Ichiro with the slide of the century - Yankees Blog - ESPN New York
メディアでの表現は他に、 "dance"、"Twister champion"(野球コラムニストJeff Bradley)、"Tangoing" (ボルチモアのビートライターBrittany Ghiroli)と、「踊り」や「ダンス」というイメージに結びつけたツイートもみられたが、主流はやはり "Matrix" だった。


ちなみに、このゲームをリアルタイムで観ていたMLBプレーヤー、マット・ケンプシェイン・ビクトリーノも、速攻でツイートし、この神業プレーを絶賛した。





Matrix !!!!

個人的にはこのネーミング、『マトリクス・スライド』としたいところだ。(そうでなければ、『マトリクス・ムーブ』)


英語ネイティブでない日本のファンの間では「マトリクス・スライディング」とing形で表現したい人もそれなりの数いるとは思う。だが、このプレーに関するアメリカの野球メディアを参照してもらうとわかると思うが、このプレーについて、「スライディング」というing形での表記はされていない。
あくまで、ing形でない「slide」、なのである。


しかしながら、『マトリクス・スライド』とネーミングすることについては、ちょっとした事情がないでもない。
というのも、2011年にアメリカの高校生が記録したトリッキーなスライディングが、既に "Matrix Slide" とネーミングされ、ネット上に存在しているからだ。(もちろん、イチローのスライディングのほうが、はるかにレベルが高くて天才的なのはいうまでもない)
記事と動画:High school kid’s ‘Matrix Slide’ greatest slide ever? (video) | Off the Bench


ちなみに、『マトリクス・ムーブ』というネーミングで記事を書いたメディアも多数ある。
例:USA Today
Ichiro Suzuki's matrix move at home plate
いまの時点での検索結果では、『マトリクス・ムーブ』という言葉が野球のプレーに対して命名されたことは前例が無いようだ。"move" という言いまわしには英語としてのカッコよさがあるし、意味のわかりやすさもある。

ただ、日本のファンが今後このプレーを語るときの使いやすさを考えると、"move" という英語っぽい言い回しは、日本人には馴染みが少ないかもしれない。せめて、日本人の耳に慣れた「スライディング」という単語に少しでも近い『スライド』という単語を使ったほうが、より耳と記憶に残りやすいのではないだろうか、と思う。


うーん。困ったね。

『マトリクス・スライド』
『マトリクス・ムーブ』
『センチュリー・スライド』
『イチロー・マトリクス』

どういうネーミングになっていくのが、この神業にふさわしいか、よくわからない。


そんなこんなで、結局このブログとしては、『マトリクス・スライド』というネーミングが最もふさわしい、という意見にしておくことにした。
『マトリクス・スライド』というネーミングには、かろうじて「スライディング」に近い言葉が入っていて、日米のファンとメディアが同時に理解できるのがいいし、そもそも和製英語じゃないのが、とてもいい。(野球用語にせよ、日常会話にせよ、わけのわからない和製英語は少しでも減らしていきたい)

ただ、まぁ、いくら英語表現の正確さにこだわったとしても、時間がたつにつれて日本では『マトリクス・スライド』が、いつのまにか『マトリックス・スライディング』とか、和製英語風のing形に定着していってしまうかもしれないのは、想定済みだ(笑) それはそれで、しかたがない。時間の流れにはさからえない。


全体の位置関係

さて、ネーミングはともあれ、このプレーが神業であることに変わりはない。野球に詳しくない方もおられることだろうし、「なぜ、この世紀の神業スライディングが生まれたのか?」について少し補足しておきたい。

ヤンキースがボルチモアでオリオールズと対戦した2012 ALDS Game 2の1回表、2死1塁で、走者はイチロー。ここで、4番ロビンソン・カノーが、ライト線にツーベースを打った。

フェアとわかったイチローは、セカンドベースを蹴り、サードに全力疾走してくる。

ここで、ヤンキースのサードコーチャーが、腕をぐるぐると回して、イチローに「ホーム突入」を指示した。これが、神業スライディングが生まれた直接の発端だ。


写真を見てもらいたい。

2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 位置解説

イチローは、図中Bの位置。イチローは、ロビンソン・カノーが打ったライト線のライナーが、フェア、そして長打になるのを確認しつつ、ファーストからセカンドに全力疾走し、さらにはセカンドを蹴ってサードに向かっている。
この段階までの判断は、ランナーのイチロー自身が行う。というのは、セカンドに向かう間、ランナーのイチローからライト線の打球が見えるからだ。セカンドを蹴る前ならば、「ライト線に飛んだライナーがヒットになるかどうか」、さらには「長打になるかどうか」について、ランナーは自分自身で判断できる。

だが、イチローが、セカンドを蹴ってサードに向かった後は、「情報収集」と「判断」の手法はまったく変わる。

このケース、もし打球がフェアなら、明らかに長打になる。だから1塁ランナーがサードまで進塁することには、何の問題もない。問題は、「サードを蹴って、ホームに突入すべきか、どうか」だ。
足の速いイチローが、選択肢1)サードで止まるか、それとも、選択肢2)ホームにまで突入するかは、打球が速いだけに、外野手の肩の強さよりも、図中Aの位置で打球処理を行っているボルチモアの右翼手クリス・デービスが、「どのくらい上手に打球処理できるか」で決まってくる。
もしクリス・デービスの処理がモタついた場合は、イチローは生還できるが、打球が速いライナーであるだけに、打球処理がスムーズなら、いくら俊足のイチローでもホーム突入にはかなりのリスクが生じる。

問題は、右翼手デービスのプレーは「ランナーからみて背中方向」であるために、イチローにはまったく見えないことだ。
だから、サードに向かって疾走するイチローが、スピードを落としてサードに止まるのか、または、スピードを維持したままサードも蹴ってホーム突入を敢行するのか、という判断は、ランナーであるイチロー自身が行うのではなく、図の中のCの位置からクリス・デービスのプレーを注視している「サードコーチャーの指示」によってのみ決まる

このケース、サードコーチャーは、写真で見ればわかる通り、腕を大きく回して、「ホーム突入を指示」している。


だが、足の速いイチローがホームプレート付近に到達するより数メートルも手前で、ボールがボルチモアのキャッチャー、マット・ウィータースのミットに返球されていることから明らかなように、この「サードコーチャーのホーム突入指示」は、「明らかなミス」、ボーンヘッドなのだ。
この判断のミスの程度は、あまりにも酷い。普通ならクロスプレーにすらならない。

だが、イチローは、ホームプレートの手前であえてスピードを落とすことで、キャッチャー、マット・ウィータースのタグ、日本語でいえば「タッチ」を、2度までもかいくぐってみせた。

まさに神業

そしてこれは他のプレーヤーの凡ミスを取り返してみせるプレーでもある。これ以上の「チームプレー」はありえない。


1回目のエスケープ

2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』1回目のタグ


2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』1回目のタグ(2)



2回目のエスケープ
動画をコマ送りして見てみればわかるが、イチローは、ボルチモアのキャッチャー、マット・ウィータースのミットを、すんでのところで紙一重かわしている。

2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 2回目のタグ(1)


2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 2回目のタグ(2)


2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 2回目のタグ(6)


2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 2回目のタグ(3)


2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 2回目のタグ(4)


2012年10月8日 イチロー『マトリクス・スライド』 2回目のタグ(5)



three-foot rule

なお、こうしたベース周辺でのプレーに関して、いわゆる「3フィートルール」は適用されない。

野球のランナーの「走路」は通常、塁と塁を結んだ直線の左右両側に3フィートずつ、合計6フィート分の幅であり、ランナーが野手のタッチを避けるために「走路」を越えて走る、つまり、オーバーランすることはできない。
だが、「3フィートルール」は塁間での走塁に適用されるルールであり、「各塁と本塁ベース周辺では、この3フィートルールは適用にならない」。この点については、平林岳氏の指摘を待つまでもなく、聡明な野球ファン数名がプレー直後から既に指摘していた。


ああ。言い忘れたが、
ブログ主は、映画『マトリクス』の熱狂的なファンだ。当然、DVDは全て持っているし、キアヌ・リーヴスが手のひらをクイクイっとやるモノマネだって、できる(笑)
ちなみにキアヌ・リーヴスは、イチローがMLBデビューした2001年に、リトルリーグを舞台にした野球映画 "Hardball" に出演している。
このブログの『Marrix』に関する記事
Damejima's HARDBALL:2012年6月11日、「見えない敵と戦う」のが当り前の、ネット社会。

Matrix image


damejima at 18:40

September 29, 2012

適度に、とか、手加減なんて意味のないことをしないのが、
イチローの真骨頂だ。


9月19日からのダブルヘッダーを含むホーム3連戦でトロントをスイープしたあたりで始まった 「イチロー・ミラクル・セプテンバー」は、当然、オークランド戦以降も形を変えつつ続いている。
ある期間、イチローの走攻守は「度を越した好調」を維持し続けていた。あまりに好調過ぎて「ときどき度を越してしまう」のだが、ますます「空気の読めないイチロー」らしくていい(笑) 

そういう「周囲の空気と無関係に生きるイチロー的な流れ」の中で、9月21日以降のオークランド3連戦では、「野球マンガの中でしか起こりえないような出来事」がびっくりするほど次々と起きた。
第1戦で「イチローの打球が、ピッチャーのジャージーの中に入って内野安打」。「ワンバウンドするほど低いカーブを、軽々とヒット」。第2戦では、「新人君のサードベース踏み忘れで、サヨナラならず」の直後、「延長でとられた4点差を追いついて、しかもサヨナラ勝ち」。

ミネソタ3連戦はそれなりに平凡なゲームだった(笑)が、9月27日からのトロント(ビジター)第2戦で「グランダーソンのピッチャーライナーが、ピッチャーのグラブをはじき飛ばしたが、ピッチャーがそのグラブごとキャッチして、アウトになった」という非常に珍しいシーンを見たとき、「しめた! このゲーム、間違いなく勝った!」と思ったものだ(笑)


「特別なことが起きたゲームは、勝つ」。
その理由を、以下に書く。



最近活躍が多いせいで、大きく増えたイチローに関するアメリカのメディア記事を読んでいると、「火のついたイチロー体験」のまだ浅いメディアやブロガーが、いまだにたくさんいることがわかる。
なぜって、「火のついたイチローの周囲では、野球マンガでしか起こらないようなことが、平気で起きる」。そして、それこそが「本来のイチローの持ち味」だ、ということを、いまだに彼らが理解できていないからだ。


悪いけれど、日本の熱心なイチローファンなら、こんなことは、はるか昔から誰でもわかっている。

その、「とっくにわかっている我々」でさえ、イチローがプロデビューして20年、いまだに、なぜか「火のついたときのイチロー」が関わると「野球マンガでしか起こらないはずの出来事が普通に起こる」ことに驚かされ続けているのだ。
ましてや、「火のついたイチロー」未経験のニューヨーカーや、真のイチローの凄さに気がつこうとしてこなかったアメリカの野球オヤジどもが、「イチローと、イチローの出場するゲームで、野球マンガでしか起こらないような風変わりなことが次々と起こること」に、ビックリさせされないわけはない。(まぁ、イチロー初心者には、無理もないが)


だから逆に言えば、「イチローに火がついているかどうか、確かめる作業」なんてのは、まったく難しくない。キャンプ場で焚火するより簡単。子供でも、できる。
イチローと、イチローの出場する現実のゲームにおいて、「野球マンガでしかありえないようなことが、起きているかどうか」を確かめるだけ、それだけでいいのだ。
それが、「イチローに火がついているかどうか」を確かめる「リトマス試験紙」だ。

よくSF映画で、「時空の歪み」を計測することによって、その場所で「ワープ」が起きていたのかどうか確かめるシーンがあるが、あれと意味はほぼ変わらない。
もしもし「イチローに火がついた」なら、野球という常識まみれの空間は多少歪んでしまい、普段起こらないようなことも平気で起きるのである。だから、イチローに火がついたら、多少のハプニングで驚いていてはいけないのだ。


だからこそ、例えばワンバウンドの球ですらヒットにしてきたイチローを、やれ出塁率だの、選球眼だのと、へリクツばかり言うヤツは馬鹿だと、ブログ主は常に公言している。
ワンバウントの球を打ち、まるでスパイダーマンのように壁によじ登って捕れるはずのない打球を捕球し、ありえない塁まで盗塁しようとするくらい、「火のついたイチロー」には普通の出来事だ。
コアなデータ分析家の多いアメリカですら匙を投げたイチローに、ファン、メディア、データ馬鹿、評論家、野球監督、無能GMの「データや常識などという、あさはかなモノサシ」など、通用しない。


常識がはりめぐらされた「結界」のような膠着状態を打ち破る陰陽師のような役割が、イチローの本来の持ち味なのだ。
だから、膠着状態の続いた状態でイチローが塁に出ることによって、ホームランに頼ってばかりでタイムリーが出ず、得点力が大幅に低下して負け続けていたヤンキースに新たな展開が生まれてくるのは、当然のことだ。

だからこそ、他チームの監督、特にイチローをよく知るバック・ショーウォルターボブ・メルビンマイク・ソーシアなどは、「均衡破りのプロ」イチローの出塁を忌み嫌う。
当然だ。彼らは、「火のついた状態のイチロー」が出塁することによって、あらゆる均衡がほころびて、結界が破れることを、リクツ抜きにわかっていて、イチローのプレーから自由を奪うことに躍起になって取り組んできたのである。

もうおわかりだろう。
ゲームで、「おいおい、こんなことが起こっていいのか?」と思うような出来事を見たら、それはイチローが好調をキープしている証拠だと思っていいのだ。


9月21日 オークランド 第1戦
シャツヒット

Oakland Athletics at New York Yankees - September 21, 2012 | MLB.com Classic

3回裏、まだヤンキースにヒットの無い場面で、イチローの打球が、オークランド先発、ジャロッド・パーカーが、エリのボタンをはずして着ていたジャージー(ユニフォームの上のシャツのことだ)の中に飛び込んでしまう。
パーカーは、ボールを捕り出してファーストに送球しようと、襟元から手を突っ込んで必死にもがいたが、ボールを取り出すことができず、結果的にイチローは内野安打になり、ヤンキースのチーム初ヒットが生まれた。
次のイニング、マウンドに登場したパーカーの襟元のボタンは「きっちりと閉められていた」のを見たYES(=ヤンキースの実況担当チーム)の実況席は笑いころげた(笑)
試合後イチローも「一生に一度ないことでしょう」と言ってニヤニヤしていたようだ。たしかに一生見ることのないはずの出来事が起きたのは事実だが、逆に言えば、そういう「野球マンガでしか起きない、ありえないプレー」を、現実の野球で起こし続けてきた選手に言われてもなぁ・・・、という気もする(笑)
試合は結局ラッセル・マーティンのサヨナラホームランで、ヤンキース勝利。

9月22日 オークランド 第2戦
新人君のサードベース踏み忘れ
延長4点差をひっくり返してサヨナラ勝ち
延長13回表にオークランドに4点をとられ、誰もが「万事休す」と思った13回裏。先頭バッターのイチローがセカンド内野安打で出塁すると、均衡が破れた。あれよあれよと言う間にチャンスが広がって、ノーアウト満塁。
ここでまず、ピッチャー、パット・ネシェックがワイルドピッチ。イチローが生還して、3点差。さらに犠牲フライに続いて、ラウル・イバニェスの起死回生の2ランが飛び出して、同点に追いつく。
14回裏、エリック・チャベスがシングルヒットで出塁。ジーターがバントで送って、1死2塁のサヨナラのチャンスを作る。オークランドは、絶好調の2番イチローを敬遠して、1死1、2塁。ここでAロッドがセンター前を放った。本来ならセカンドランナーが生還してサヨナラになり、Aロッドがヒーローになる「はず」だった。
ところがなんと、セカンドランナーとして代走起用された新人メルキー・メサがサードベースを踏み忘れてしまい、ベースを回ってから気づいて、あわてて塁に戻るというボーンヘッドが起き、サヨナラを逃した。
1死満塁で、次打者カノーはピッチャーゴロ。サードランナーが本塁憤死して、2死満塁に変わり、バッターはヌネス。
ここでヌネスはファーストゴロだったのだが、オークランドの一塁手、ブランドン・モスが打球を足で蹴飛ばしてしまい、エラーに。サードランナーのイチローが生還し、ゲームセット。
まるで測ったように、イチローで始まり、イチローが生還したイニングによって、ゲームが終わった。
Oakland Athletics at New York Yankees - September 22, 2012 | MLB.com NYY Recap

サードベース踏み忘れ


動画:Budweiser: Walk-Off A Hero | OAK@NYY: Yankees walk off on an error in the 14th - Video | MLB.com: Multimedia


9月28日 トロント 第2戦(ビジター)

ボール&グラブ フライ・キャッチ

初回の2死2塁で、カーティス・グランダーソンが、トロントの新人ピッチャー、チャド・ジェンキンズのグラブを弾き上げるほどの強烈な当たりを打った。ジェンキンズはその打球をグラブに収めたかに見えたが、あまりにも強い打球だったために、ジェンキンズのグラブは真上に跳ね上がった。
だが、そのボールの入ったグラブが真上に跳ね上がったことが幸いして、ジェンキンズは落ちてきたボールとグラブを、グラブごとキャッチしたため、グランダーソンはアウトになった。
ジェンキンズは立ち上がりこそヤンキース打線を翻弄するかに見えたが、ランナーが出てからのピッチングがまったくダメなことがわかり、失点を重ねて、いつのまにかヤンキースの楽勝に終わった。


--------------------------------------------------


さて、かの有名なデータサイト、Baseball Referenceで、イチローのページを開けると、こんな表記がある。
Ichiro Suzuki Statistics and History - Baseball-Reference.com

Ichiro the Wizard


太字の名前に続けて、2行目に、Wizard とある。
Baseball Referenceでは、名前の後にカッコ書きがつく場合、その選手のニックネームとか略称という意味になる。Wizardとは「魔法使い」のことだが、データサイトの大御所であるBaseball Referenceが、アメリカにおけるイチローの代表的なニックネームとして、Wizardを挙げているわけだ。

だがこれは、日本ではコアなイチローファンくらいしか知らないニックネームだし、アメリカのスポーツメディアが記事でイチローのニックネームとされるWizardという単語を使う機会も、滅多にない。


データサイトの大御所であるBaseball Referenceは、プレーやゲームのデータについては、MLBの公式データにも肩を並べるくらいの高い権威があるのは確かだが、さすがに「選手のニックネーム」ともなると、Baseball Referenceに書かれているニックネームの全てが、ファンやマスメディアに広くオーソライズされているわけでもない。

例えば、デレク・ジーターのニックネームは、Baseball Referenceによれば "Mr. November" とか、 "Captain Clutch" とか記載されているが、実際に最もよく使われるニックネームといえばは、もちろん、短く「キャプテン」だ。
また、ニューヨークメディアはマーク・テシェイラを、短くTex、カーティス・グランダーソンを短縮してGrandyと呼ぶことも多いが、Baseball Referenceにおける記述では、Texは載せているくせに、Grandyのほうは記載していない。
Baseball Reference記載のニックネーム例

ベーブ・ルース
(The Bambino or The Sultan Of Swat)
ゲーリッグ
(The Iron Horse, Biscuit Pants or Buster)
ディマジオ
(Joltin' Joe or The Yankee Clipper)
アレックス・ロドリゲス (A-Rod)
ジーター (Mr. November or Captain Clutch)
テシェイラ (Tex)


では、 "Wizard" というニックネームがまったく使われいないかというと、そうでもない。

イチローがメジャーデビューした2001年のTIME誌の記事にも、既にWizardという単語が使われているし、また、2009年だかにESPNのChris Bermanが行ったイチローのニックネームに関する調査によれば(圧倒的な支持率とは到底いえないが)、いちおう最も高い比率で "Wizard" が1位に支持されている。

"Wizard!" the Mariners cried.
"Wiz-aaard!"
"Wizzzzz!"
Ichiro the Hero - TIME

ESPN.com - Page2 - Case No. 5, Ichiro Suzuki

The BrooklynTrolleyBlogger: N.Y. Yankees ~ Ichiro; The Wizard Comes Home

Ichiro Is Still A Wizard - Lookout Landing

イチローのニックネーム調査結果(ESPN)


The Wizardと名付けられた
シアトル時代の球団CM(2009年)



--------------------------------------------------

移籍して9月以降のイチローの活躍ぶりを見るかぎり、「火のついたときのイチロー」が、かつて石原裕次郎の歌った『嵐を呼ぶ男』、つまり、野球でいうなら、「常識による膠着や、事態の均衡、結界を破って、野球マンガの中でしか起こりえないと誰もが思っていることを、実際の野球で起こしてしまう、ある種、特別なプレーヤーであること」は確実なようだ。

と、なると、この "Wizard" 「魔法使い」という耳慣れないニックネームも、実は非常に要を得たニックネームなのかもしれない、という気がしてくる。

damejima at 23:31
かつて、デレク・ジーターが3000安打を達成する前の時代の話だが、次に「3000安打」を達成するプレーヤーは誰か?、という予測について、達成するのがあらかじめわかっていたジーター以外に、ジョニー・デーモンの名前が筆頭に挙がる、などという、ある意味で「とても悠長な」時代があった。

だが今年、40歳のイヴァン・ロドリゲスが2844本で引退し、同じく40歳のチッパー・ジョーンズが3000本を達成しないまま2700本台で引退することが確実になり、さらに、かつて3000本達成に最も近い打者と思われていたジョニー・デーモンやウラジミール・ゲレーロの所属球団がなかなか決まらずプレータイムが減少する事態が起きたことで、これからの時代の「3000安打予想図」は、非常に大きく塗り替えられた。


当り前のことだが、「通算安打数が3000本に近づく」ということは、「その選手のキャリアが終盤にさしかかる」という意味だ。この大記録の達成は、キャリア終盤から引退までの厳しい道のりの過程でのみ、達成される

例外はない。

今から思えば、2000年代中期に行われていた3000安打達成者の予測は、プレーヤーの記録達成を決定的に阻む要素が数多く存在することを忘れているものが多く、予測としての現実味に乏しかったものが多かった。
というのも、「年齢」、「評価の低下によるプレータイム減少」、「大きな怪我による長期休養」など、3000安打達成を阻害する要素を、あまり考慮に入れて語ってなかったからだ。

これらの阻害要因は、特に30代後半のプレーヤーには、選手の不摂生による怪我を除けば、どれも逃げようにも逃れられない要素ばかりだ。


このブログでかつて、「38歳という年齢」が、「年齢による衰えの始まるキーポイント」と書いたことがある。
これまでのさまざまな名選手のスタッツを見るかぎり、たとえ30代後半まで活躍できた名選手であっても、38歳以降に37歳以前の成績が維持できた選手は少ないし、逆にいうと、3000安打が本当に達成できるかどうか、そして3000本を越えて、どこまでの高みに達することができるかは、実は「38歳以降の、衰えが目立ちだした時期に、どれだけヒットを打てたか」によって決まるのである。
球聖タイ・カッブも、ピート・ローズも、最晩年になってもかなりの数のヒットを打っている。また、今年38歳になるジーターが200安打を達成したことは、彼が不世出の才能の持ち主であることを証明している。

5人のホール・オブ・フェイマーが
「37歳以降」に打ったヒット数

キャリア通算ヒット数の多い選手ほど、「キャリア晩年のヒット数」も多い傾向がある。
5人のホール・オブ・フェイマーが37歳以降に打ったヒット数


近年、メディアの3000安打達成予測では、以下の最近の記事例でわかるとおり、イチローの37歳シーズンでの失速をふまえて、イチローを飛び越えて、予測の照準を、より年齢の若いアルバート・プーホールズミゲル・カブレラに修正しはじめている。
もしそれらの予測が正しいと、(ステロイダーのアレックス・ロドリゲスの3000本をあえて無視することにして)、次の3000安打達成者は、なんと2010年代後半にならないと出現しないことになる。

NY Times 2011年6月予測
After Jeter Reaches 3,000 Hits, Who's Likely Next? - NYTimes.com

Hardballtalk 2011年7月予測
Who will be next to reach 3,000 hits? | HardballTalk

SB Nation 2012年2月予測
Which Players Will Join The 3,000-Hit Club? - Baseball Nation



このブログでも、3000安打達成の可能性がある現役選手を予測してみることにした。

まず、「現在の年齢」や「これまでのキャリアにおける、1シーズンあたりのヒット本数」などを考慮して、候補者リストを作ってみる。
本来なら、「38歳以降に顕著になることが多い、年齢からくる衰え」と、それによる「プレータイムの減少」をあらかじめ考慮して候補者を選ぶべきだろうが、それでは候補者がいきなり少なくなり過ぎてつまらない(笑)
だから、最初はあえて「38歳以降も、それまでのシーズン平均ヒット数くらいは打てる」との甘い想定から候補選手を選んだ。(それでも大多数の選手は候補リストから脱落する)


3000安打達成 候補選手名
(カッコ内は 年数/年齢/通算安打数/年平均安打数)

Derek Jeter (18年 38歳 3296本 180本/年)達成済
----------------------------------------------
Alex Rodriguez  (19 36 2894 186)ステロイダー
Omar Vizquel   (24 45 2876 157)出場機会減
Ivan Rodriguez (21 40 2844 181)引退
Johnny Damon  (18, 38) 2769 154 出場機会減
Chipper Jones  (19, 40) 2724 142 引退予定
Ichiro Suzuki   (12 38 2597 213)
Albert Pujols   (12 32 2241 183)
Michael Young  (13 35 2224 168)年齢に問題
Adrian Beltre   (15 33 2218 145)
Paul Konerko   (16 36 2177 165)年齢に問題
Juan Pierre    (13 34 2140 176)
Carlos Beltran  (15 35 2058 136)ペース遅い
Jimmy Rollins   (13 33 2020 152)ペース遅い
Miguel Cabrera  (10 29 1773 175)
Carl Crawford  (11 30 1642 149)トミージョン手術
Mark Teixeira   (10 32 1579 157) ケガがち


次に、上の候補者リストから、出場機会の少なさと年齢による衰えから3000本達成が困難そうな選手(ジョニー・デーモン、オマル・ビスケール)、達成ペースが明らかに遅くて引退までに達成できなさそうな選手(カルロス・ベルトラン、ジミー・ロリンズ)、怪我の多すぎる選手(カール・クロフォード、マーク・テシェイラ)、達成時の年齢が高すぎる選手(マイケル・ヤング、ポール・コネルコ)など、年齢を厳しめに考慮して、候補から外していく。
(マイケル・ヤングは、明らかに3000安打に値する才能のある選手で、大好きな選手でもあるだけに、非常に迷った。だが、候補から外した。彼はもしかすると近い将来、移籍してプレータイムを確保することが必要になる時代が来るかもしれない。もしそうなったら、テキサスをこよなく愛する選手だけに、進路に非常に迷うことだろう。今から彼のことをとても心配している)


次に、候補リストから、最終的に3000安打達成の可能性がかなり高いと思える選手のみを抜き出して、達成予想年度順に並べてみる。
日本人イチロー。ドミニカ人であるプーホールズ、ベルトレ。ベネズエラ人のミゲル・カブレラ。アメリカ以外の選手ばかりなことが、最近のMLBにおけるアメリカ人プレーヤー、特に白人プレーヤーの地位低下を如実に表わしている。
ピエールはアラバマ州出身のアフリカ系アメリカ人。彼の達成予測年齢は「39歳」と高いわけだが、アベレージヒッタータイプなだけに3000安打達成の可能性は残る、とみた。ベルトレの達成時の年齢もちょっと高すぎるとは思うが、「アーリントンのような打者有利球場でプレーし続ける」なら、なんとか達成にこぎつけることができるかもしれない、と考えた。

次の3000安打達成者予測
(カッコ内は達成時の年齢)

2013
2014
2015 イチロー(41歳)
2016
2017 プーホールズ(37歳)、ピエール(39歳)他
2018 ベルトレ(38歳)
2019 ミゲル・カブレラ(36歳)


こうして並べてみると、2010年代中期に3000安打を達成できそうな打者は、イチロー、ただひとりしかいない

そしてもうひとつ、わかることがある。それは
実は、今の若いバッターで、3000安打という大記録に手が届ききそうな選手は、アルバート・プーホールズやミゲル・カブレラのような天才バッターを除くと、他には全くといっていいほど見当たらない
ということだ。

つまり、若ければ3000安打を達成できる、というものでもない、ということ。


前にも書いたことだが、3000安打という記録を「不世出の大記録」のひとつだと断言できるのは、この記録が、メジャーデビュー直後から引退の間際まで、ずっとハイペースでヒットを打ち続けらなければ達成できない大記録だからだ。しかも、大きな怪我による長期休養は許されない。
Damejima's HARDBALL:2011年9月26日、3000安打を達成する方法(1) 4打数1安打ではなぜ達成不可能なのか。達成可能な選手は、実はキャリア序盤に既に振り分けが終わってしまうのが、3000安打という偉業。

Damejima's HARDBALL:2011年9月28日、3000安打を達成する方法(2) 3000安打達成者の「3つのタイプ」

いまの20代後半のバッターには、そうした「デビュー直後から天才バッターであり、なおかつ、怪我による長期休養の非常に少ない健康なバッター」は、ほとんど見あたらない。
たとえ今年の新人王がほぼ間違いないLAAのマイク・トラウトが将来3000安打を達成するとしても、それは、今シーズンの驚異的な打撃成績を、大きな怪我なしに、あと17シーズン連続で達成しなければならない。それでも彼の3000本達成は、2020年以降どころか、2030年以降と、はるか遠い将来の話になってしまう。


しつこいようだが、こんな大記録は、ほんの一部の、限られた天才にしか達成できないのだ。
したがって、「天才が出現しない時代」には、当然ながら3000安打達成者も出現しないのである。勘違いしている人が多いが、3000安打という大記録の達成者は、毎年のように必ず出現するわけではない。これだけの大天才が一堂に会して野球をやっている時代が、いつでもあったわけではないのだ。

今後の3000安打達成予報としては、2010年代後半にプーホールズ、ベルトレ、カブレラなどが達成したとして、それ以降は、3000安打達成者がまったく出現しない時代が長く続く可能性は、非常に高いと思っている。


だからこそ、MLBプレーヤーの長期的な質的変化傾向からみて、2010年代中期に向けて、大記録達成のニュースが枯渇していくと予測されるMLBにおいて、そのときのイチロー所属球団がどこになるかわからない今の時点で言わせてもらうなら、ヤンキース移籍による復活によって、2015年頃の達成が予測される「イチローの3000安打」と、それに向かってヒット数を伸ばしていく今後数シーズンのイチローの達成プロセスは、彼の所属球団にとって「非常においしい価値がある」と断言できる。
イチローのヤンキース移籍による復活劇は、MLBに関わるたくさんの人にとってはもちろん、このところ様々な軋轢でなにかと疲弊しがちな日本人にとっても、非常にポジティブな意味を持っている。


3000安打達成者の「打数と安打数の関係」の
タイプ分類

3000安打達成者の打数と安打数の関係 3タイプ分類(修正)

3000安打達成者の打席数と安打数の関係
3000安打達成者の打席数と安打数

damejima at 13:14

September 21, 2012

いまから2週間足らず前、9月8日ボルチモア戦でイチローが「左投手のインコース」を打ったツーベースに関する記事で、「左投手のインコースの球を、センター奥までライナーで打ち返したことに、今後のイチローを占う深い意味がある。」と、書いた。
Damejima's HARDBALL:2012年9月8日、イチローが左投手のインコースを打った二塁打の意味。一塁塁審Jerry Mealsの大誤審に名指しで怒るニューヨークメディア。

トロント戦で、まさにその通りになった。
気分がいい。


イチローの大活躍でトロントをスイープすることに成功したヤンキースだが、以下に「イチロー・ミラクル・セプテンバー」ともいうべき驚異的な9本のヒットを、ちょっとした解説をつけてメモに残しておくことにした。(もしイチローのいくつかのヒットがなければ、とっくにヤンキースは2位に沈んでいた。既に指摘しておいた「ヤンキースの貧打と、ラッセル・マーティンのアウトコース配球癖、ブルペン投手の崩壊」は、いまだに修正されていない Damejima's HARDBALL:2012年9月15日、ヤンキースが「3対6で負け」、「3対2で勝つ」理由。

以下のデータをいきなり見ても意味がない。
9月8日の記事などをあらかじめ読んで、「インコースのハーフハイト」、「カウント1-2」など、この5年ほどのイチローの苦手コース、苦手カウントなどをあらかじめ頭にいれ、また、「左投手」「得点圏ランナー」など、このところイチローについてとやかく言われていた「イチローの苦手パターン」も頭にいれておくことではじめて、この9本のヒットがいかに価値があるか、ハッキリとわかる、と思う。
このトロント3連戦でイチローは、それらの「イチローのことは何でも知っているといわんばかりの、知ったぶりの赤の他人がこれまで得意気に指摘したがった『イチローの苦手シチュエーションの全て』において、ヒット、ホームラン、タイムリーを打ってみせたのである。(ヤンキース移籍以降の対左投手打率、.362

ザマーミロ(笑)

イチローにこうした絶好調モードが訪れて「火がつく」ことは、もう2週間以上前に予測した。「火のついたイチロー」を試合で使う使わないは、ヤンキースの自由だ。だからブログ主は、イチローが何番を打ち、どこを守ろうが、まったく気にしていない

東海岸のMLBライターたちにしても、本当にミラクルな状態のイチローを、体験していないことは、このところ彼らの記事の書きっぷりをさんざん漁ってみて、よーくわかった。
彼らは、まだまだ「火のついいたイチロー」を知らない。彼らはシアトル時代のイチローのすさまじいMLBキャリアの意味を、実は、遠くからチラチラ眺めただけに過ぎないからである。

ちょっと足が速くて、多少守備の上手い、ヒットマシーンだって? 
左ピッチャー?

舐めてもらっては困る。彼らが持ち上げまくる予定だったジーターの8度目の200本安打という大記録すら霞むほどイチローに大活躍されてアタフタしている東海岸のメディアには、これからまだまだ嫌っていうほど「イチロー体験」をしてもらわなければならない。

このトロント戦で誰もが、打順の何番を打とうが、どの守備位置を守ろうが、目立つものはどうしたって必然的に目立ちまくることを、思い知らされたことだろう。

スポーツとは、そういうものだ。


ゲップが出るのは、まだまだ早い。
MLBがイチローの真価に気づかされるのは、これからだ。
MLB公式サイトのイチロー動画ページ
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia



----------------------------------------

ダブルヘッダー第一試合(2012年9月19日)
スコア:NYY 4-2 TOR
打順:1番
4打数3安打2得点
ファインプレー 1
Gameday:Toronto Blue Jays at New York Yankees - September 19, 2012 | MLB.com Gameday

「ヤンキースの選手の1日7安打4盗塁」
前日の雨による中止でダブルヘッダーとなった9月19日のトロント戦2試合で、イチローは「1日のうちに、7安打4盗塁」を達成。これをヤンキースの選手が達成したのは、イチローが初。(ソース:エライアス)


3-2と最少点差のリードで迎えた8回表、満塁の大ピンチを救ったイチローのファインプレー。このレフトへのハーフライナーは、太陽光の中を左右にブレながら野手の正面に飛んでくる、非常に難しい打球だった。

2012年9月19日トロント第1試合初回先頭ライト前ヒット初回
ライト前ヒット


投手:右(アルバレス)
カウント:1-0
コース:インハイ
球種:2シーム


2012年9月19日トロント第1試合3回裏先頭レフト前ヒット3回裏
レフト前ヒット


投手:右(アルバレス)
カウント:初球
コース:アウトコース ハーフハイト
球種:4シーム


2012年9月19日トロント第1試合8回裏グラウンドルールダブル8回裏
ダメ押し点につながるグラウンドルールダブル


投手:
(ダレン・オリバー)
カウント:0-1
コース:インコース ハーフハイト
球種:2シーム
左投手」の、しかも「インコースのハーフハイト」を、それも「レフト線」に流し打って、ダメ押し点につなげた価値ある二塁打。

初球と2球目は、同じインコース一杯の球ではあるが、性質はまったく異なる。初球は、よく「フロントドア」と呼ばれるコースどりで、ボールゾーンからぎりぎりストライクになる「フロントドア・スライダー」。これはたぶん左投手ダレン・オリバーの左バッターに対する会心の球のひとつ。2球目は、初球と逆で、ストライクゾーンからボールゾーンにはずれていく2シーム。
front door と back door 
左図で、Bが左バッターにとっての「フロントドア
初球のフロントドア・スライダーをボールだと思って見逃しストライクをとられた左バッターにしてみると、2球目の似たコースの球を「よしっ! こんどこそ」とばかりに強振していくと、こんどは入ってくるスライダーではなくて、インに食い込んでくる2シームだから、1塁線のゴロのファウル、もしくは、詰まった内野ゴロかなにかにうちとられてしまう。
それをイチローに、オリバーの想定したライトへの詰まった凡打どころか、逆にレフト線へツーベースされたのだから、左投手ダレン・オリバーとしては「お手上げ」なのだ。

----------------------------------------

ダブルヘッダー第二試合(2012年9月19日)
スコア:NYY 2-1 TOR
打順:8番
4打数4安打1打点4盗塁
Gameday:Toronto Blue Jays at New York Yankees - September 19, 2012 | MLB.com Gameday
動画:Baseball Video Highlights & Clips | TOR@NYY: Ichiro swipes four, singles home game-winner - Video | MLB.com: Multimedia

「1試合4安打4盗塁」
1918年以降のMLBで19回達成されている。イチロー自身は、2004年にマリナーズで既に達成済み。今回で2度目の達成となった。
6回と8回に記録した4盗塁のうち、8回の2盗塁は、今シーズンの盗塁阻止率ア・リーグ第二位39.1%の強肩キャッチャー、ジェフ・マシスから奪ったもの。
記録達成者のうち、2度の出塁機会における4盗塁で「4安打4盗塁」を達成したのは、リッキー・ヘンダーソン、ケニー・ロフトン、カール・クロフォード、そしてイチローの4人のみ。
ヤンキースの選手が「1試合4安打4盗塁」を達成したのは、1988年4月11日トロント戦のリッキー・ヘンダーソン以来、イチローが2人目。また、他チームで最も最近この記録を達成しているのは、2009年8月15日ボストン戦におけるテキサス・レンジャーズのフリオ・ボーボン

ホームスタジアムにおけるヤンキースの選手の「1試合4盗塁」
イチローの達成は、2005年のTony Womack以来。過去の最多記録は、ヤンキース在籍時代のリッキー・ヘンダーソンの「5回」(1918年以降)

ヤンキースの「1試合チーム7盗塁」
この試合でヤンキースは、イチローの4盗塁を含め、計7盗塁を記録したが、「ヤンキースの1試合7盗塁」は、1918年以降では2番目に多い記録。最多は1996年6月2日の「1試合8盗塁」。


2012年9月19日トロント第2試合2回裏2死1,2塁先頭センター前ヒット2回裏
センター前ヒット


投手:(ロメロ)
カウント:0-1
コース:真ん中低め
球種:4シーム


2012年9月19日トロント第2試合4回裏2死走者なしライト線二塁打4回裏
ライト線二塁打


投手:(ロメロ)
カウント:初球
コース:インハイ
球種:4シーム


2012年9月19日トロント第2試合6回裏2死走者なしライト前ヒット6回裏
ライト前ヒット

投手:(ロメロ)
カウント:初球
コース:真ん中やや低め
球種:カーブ
前の2打席で、イチローに4シームを速いカウントから連続でヒットにされていた左の先発投手ロメロは、この打席では配球プランを変え、初球に「時速75マイル(120キロ)」のカーブから入って、イチローを緩急でかわそうと考えた。
球種ごとの得意不得意を示すPitch Valueデータでみるかぎり、イチローの苦手なのは「速球」、次にこの「カーブ」ということになっている。
だが「火のついたイチロー」には、緩急も、カーブも通用しない。あっさりライト前ヒット。


2012年9月19日トロント第2試合8回裏2死3塁レフト前決勝タイムリー8回裏
決勝タイムリー

投手:(ループ)
カウント:1-1
コース:インコース ハーフハイト
球種:2シーム
ツイートしておいたことだが、この決勝タイムリーが生まれた「インコースのハーフハイトの球を流し打ちする」というヒットの打ち方は、もちろんデレク・ジーターのトレードマークの、いわゆる「ジップ・ヒット」の打ち方である。
この打ち方は、詰まった打球がフラフラっと上がって、外野手の前にポトリと落ちる。バックホームがきかないために、得点圏ランナーが生還しやすい打球になるし、打ち取ったと勘違いしやすいので、相手チームと相手投手に与える精神的なダメージは相当にデカい。
動画:Baseball Video Highlights & Clips | TOR@NYY: Ichiro singles to drive in the go-ahead run - Video | MLB.com: Multimedia



----------------------------------------


第3戦(2012年9月20日)
スコア:NYY 10-7 TOR
打順:8番
4打数2安打3打点2得点
Gameday:Toronto Blue Jays at New York Yankees - September 20, 2012 | MLB.com Gameday
動画:Baseball Video Highlights & Clips | TOR@NYY: Ichiro goes 2-for-4 with three RBIs - Video | MLB.com: Multimedia


2012年9月20日トロント第3試合3回裏先頭ソロホームラン3回裏
反撃の口火となる
ソロ・ホームラン


投手:(ラフェイ)
カウント:1-1
コース:インコース やや高め
球種:4シーム
2位のボルチモアがまったく負けてくれないため、地区下位のトロント戦を1試合も負けられないヤンキースだが、先発フィル・ヒューズが早々と失点して、0-2とリードされ、非常に重苦しい雰囲気が漂う中で飛び出した一発。起死回生とは、まさにこのホームラン。
動画:Baseball Video Highlights & Clips | TOR@NYY: Ichiro jacks solo shot to put Yanks on board - Video | MLB.com: Multimedia


2012年9月20日トロント第3試合4回裏無死1、2塁2点タイムリー二塁打4回表
逆転2点タイムリー

投手:(ラフェイ)
カウント:2-2
コース:インハイ
球種:カットボール
この2点タイムリーが価値があるのは、3球目のファウルによって、イチローのカウントが、キャリア通算打率が低い「カウント1-2」に追いこまれたにもかかわらず打ったタイムリーだからである。
ピッチャーの左のラフェイは、既にイチローの第一打席でインハイの4シームをホームランされている。そのためインコースで勝負するわけにもいかず、アウトコース中心の配球で、なんとか「イチローの苦手といわれるカウント1-2」を作ることに成功した。
だが、カウント2-2から、詰まらせて内野ゴロでも打たせてダブルプレーに仕留めるつもりだったと思われるインハイのカットボールを、見事に外野にライナーのツーベースを打たれ、泣くことになったのである。
動画:Baseball Video Highlights & Clips | TOR@NYY: Ichiro gives Yanks lead with two-run double - Video | MLB.com: Multimedia


第3戦の勝利によるメンタルな意味について、ニック・スウィッシャーは、こんなコメントを残した。
''I feel that we're getting that inner confidence back that we lost there for a little bit,'' Swisher said.「少し失いかけていた内側の自信みたいなものを取り戻せた気がする」
Suzuki, Swisher send first-place Yanks over Jays - Yahoo! Sports


また、この素晴らしい逆転2点タイムリーの打席については、長年スポーツ・イラストレイテッドで活躍し、最近USA Todayに移って、すぐにNational Sportscasters and Sportswriters Association (NSSA)の選ぶNational Sportswriter of the Yearに選ばれたスポーツジャーナリストの重鎮で、自ら認めるイチローファンでもあるJoe Posnanskiが、イチローが投手アーロン・ラフェイの「もくろみ」を1球1球崩していき、最後にタイムリーにもっていく駆け引きを細かく描いた、素晴らしい長文コラムを書いている。
Posnanski Named Inaugural Writer Of The Year « Baseball Bloggers Alliance
When I think of the 1990s, I think of Pearl Jam, Nirvana, the young Tiger Woods, the Clint Eastwood character in “Unforgiven,” Barry Sanders in motion, Emmitt Smith running, Michael Jordan in flight, Michael Johnson making the final turn, Mark McGwire taking batting practice.

Ichiro seems to me that sort of presence -- not just a fabulous player, but an indelible one. The stretch before he sets himself in the batter’s box. The amazing way he reaches out to spoil outside pitches. The running start he takes. (中略)

I won’t know for another decade or two how to look back on this particular time. I’m pretty sure, though, that watching Ichiro Suzuki hit will be part of the panorama.

Pennant Races: Nats Win! Oh, Wait ... | SportsonEarth.com : Joe Posnanski Article




damejima at 12:26

September 16, 2012

実は、このところヤンキースの試合を見ていなかった。
理由は、ヤンキースの「負け方のワンパターンさ」が性に合わないからだ。


7月末から見始めたヤンキース戦が面白くなくなってきた理由は、もちろんイチローがスタメン出場してない試合があるから、という、わかりやすい理由があるのもたしかだが、それ以上に大きいのは、今シーズンのヤンキースのゲームの中身が「勝つにしても負けるにしても、あまりにワンパターン」だからだ。

もちろん、ヤンキースはもともと大味な勝ち方をするチームではある。

だが、かつての強いヤンキース打線は、ホームランだけの打線ではなくて、案外四球とシングルヒットで繋げていく攻撃もできる「しつこい打線」でもあった。9月9日のボルチモア戦4回表にヒットと四球で延々と満塁をキープして4点をとったが、ああいう野球は、かつてのヤンキースの「おハコ」のひとつでもあった。
また、「ひたすら打ち勝っていくワイルドな野球」と、「ホームランは打つが、ワンパターンな負けばかりが増え続けていく弱い野球」とでは、まるで意味が違う。
策を尽くして負けるのはしょうがない。だが、負けがこむ理由というのは、たいていの場合「欠点に修正を加えるのが遅れること」からくる。何試合も同じパターンで負け続けるのは、弱いヤンキースだ。相手をきちんと研究しないで負け続ける「頭を使わない、雑な野球」を見させられ続けると、正直、飽きてくる。



もしいま、ヤンキースの負けパターンと勝ちパターンを短い言葉で表すなら、「3対6で負け、3対2で勝つ」、ということになる。(もちろん、なにも実際に3対6で負けてばかり、3対1で勝ってばかりなわけではない。あくまで、だいたい2対5とか、3対6で負けるとか、3対1、4対2で勝っているとか、そういう「たとえ話」だ)

ポイントのひとつは、長打を打ちまくって勝ってきたと「思われがち」なヤンキースの得点が、実は「常に3点どまり程度の攻撃力しかない」ということだ。
爆発的な得点力という「イメージ」をもたれやすいヤンキースだが、その得点力は「イメージ」よりもずっと低い。印象だけで語ってはいけない。得点力が思ったほど無いために、ヤンキースはいつのまにか「ゲームの勝ち負けは、投手、特にブルペン投手次第で決まる」という、なんともふぬけた消極的なチームになっている
今のヤンキースは、たまにホームランは打てるものの、逆に言えば、ただそれだけのことであり、投打の根本的なチカラに欠け、なおかつチグハグな、消極的チームだ。
ホームランなんてものは、思っているよりずっと出現率が低い。まして打率2割ちょっとの「低打率偽物スラッガー」を並べて、たまにホームランを打つのを待っているような消極的な野球ばかりしていたら、2位とのゲーム差が何十ゲームあろうと、追いつかれるに決まっている。
(いまのヤンキースと同じように、ホームランか四球かという単調で消極的なバッティングを推奨して得点力が著しく低いタンパベイが地区上位にぶら下がっていられたのは、単に投手陣が優秀だったからという、ただそれだけの理由)


ヤンキースの「負けパターン」

失点面

先発ピッチャーは、それがサバシアであれ、黒田であれ、6回または7回を「4失点」で終わる。
その後に出てくるコディ・エプリーがソロ・ホームランを打たれて、さらに1失点。次のイニングでジョバ・チェンバレンがさらに1失点して、ヤンキースの失点は、合計6になる。

黒田というピッチャーに、高評価を与える人は多い。
たぶん彼の防御率の低さを見て判断しているのだろうが、ブログ主は彼の防御率を信用してない。
黒田は長いイニングを投げられる、いわゆる「イニング・イーター」だから、防御率だけを見ると、実態より低めの数字が出やすい。
だが、「7回4失点」では、ヤンキースは現実のゲームで勝てないのだ。特にクロスゲームで、疲れの出てくる試合中盤に、不用意な失投による3点目、4点目の失点が痛すぎる。

サバシアも含めて、「7回4失点」の大投手に大金を払ってペイロールを窮屈にしたことで、結果的にブルペンや下位打線に予算をかけられず、質が下がるのは、今の「得点力がない上に、ブルペン投手陣が崩壊している、弱いヤンキース」には向かない選手構成だ。
これでは、ボルチモアのような新興チームに勝てない。
彼らのような若いチームは、若くて給料の安い先発投手たちが「5回3失点」くらいで短く登板を終えたとしても、打線の元気さとブルペンピッチャーの優秀さのために、ゲームには余裕で勝ててしまうからだ。

ヤンキースでは、7月から8月にかけて登板すれば必ず失点していた無能なブルペン投手、エプリーが9月半ばにようやくモップ(=敗戦処理)に回されたことで、9月の「ゲーム終盤に失点して、負けゲームを演出するピッチャー」はロバートソンに代わった。
負けは、サバシアや黒田など、先発投手につくこともあるが、ブルペン投手につくこともある。だから、いかにヤンキースのブルペンが崩壊しているかは、7月以降の負け投手を見てもわかる。
7月末にはエプリーが何度も負け投手になっていた。(7月20日オークランド戦、7月22日オークランド戦)それが、9月はロバートソンになっている。(9月3日タンパベイ戦、9月6日ボルチモア戦、9月11日ボストン戦
彼らが負け投手になったのは、どれもこれも地区優勝にかかわる重要なゲームばかりだ。

この2人のブルペン投手が「相手チームに狙い打ちされている理由」は、ハッキリしている。「球種の少なさ」だ。
エプリーは、「アウトコースにスライダーを投げるだけ」という、なんともワンパターンなピッチャーで、よくこの程度のピッチャーを優勝争いをしているシーズン終盤に使うもんだとしか思えないレベルの投手だ。打てないほうが、むしろどうかしている。
ロバートソンは、いい投手ではある。だが、残念なことに彼にはカットボールしか球種がない。ラッセル・マーティンと組めば、一定のコースにカットボールばかりが行くのだから、打たれないわけがない。
ヤンキースが悠然と走っていた首位の座を明け渡しかねない事態に陥った理由のひとつは、打てない上に単調で無策なバッティングと、ラッセル・マーティンの単調なリード以外にも、球種の少ない単調なブルペン投手に頼りきっていた投手起用のミスにも原因がある。


得点面

ヤンキースが、1試合で最低限期待できる基礎点」は、「2点」だ。子供でもわかる。(これがわからないでゲームを観ているやつは、単なる暇なアホだ)
ゲーム中盤に、グランダーソン(または他の誰か)のソロ・ホームラン。そしてジーターの放つタイムリー(またはソロ・ホームラン)。
毎試合期待できるのは、たったこれだけだ。あとは、グランディのソロ・ホームランが、四球のランナーのいる2ランになったりするだけの違いでしかない。

あと1点は、ゴニョゴニョっと生まれてくる。「その日かぎりの1点」だ。たいていの場合は、下位打線のヒット(または四球)、ジーターのシングルヒットで作ったチャンスを、2番か3番打者が、犠牲フライ or 内野ゴロ or ダブルプレーの間の得点か何かでランナーを帰す。(そうでなければグランダーソン以外の誰かのマグレっぽいソロ・ホームラン)
なんやかんやで、都合、3点。わかりやすい。

あまりニューヨークのメディアはハッキリ言わないように思うが、基本的に、今のヤンキースにおいては、「ホームランが打てること」と、「得点力の高さ」が混同されている、と思う。

いくらホームランが打てて、チームOPSが高いからといっても、チームは勝てるわけでもなければ、強いチームになれるわけでもない
いくらソロホームランを2本ばかり打とうが、負けるものは負ける。そして、負けたら、この大味なチームには意味がなくなる。言うまでもなく、9月に大事なことは「勝つこと」であって、勝てなければ、いくらソロ・ホームランを1本や2本打とうが、何の意味もない。
Damejima's HARDBALL:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど)

結果
6対3で、ヤンキースの負け。



なぜヤンキースの負けゲームが、こうもワンパターンにになるのか。ヤンキースの「3対6 負けパターン」の理由を、以下に挙げてみた。

失点面

失点面の主原因は、ヤンキース・バッテリーが、「相手バッターの弱点を、ピッチャーの配球にほとんど反映していないこと」にある。
特にラッセル・マーティンは、相手バッターの得意・不得意にまるで関係なく、どんなバッターであっても、同じパターンの配球を投手に要求している。(特にランナーのいる場面の弱気さは酷い)
簡単にいえば、これは「頭を使わない野球」である。失点が防げるわけがない。

得点面

1試合に2本でるかどうかという、一部のバッターのホームランだけに頼り切った打線。いくらチームの総ホームラン数が多くても、今のヤンキースの得点力は、実は、かなり低い。


マーティンがキャッチャーのときの配球のワンパターンさについては、既に何度も書いている。
マーティンの配球は、明らかに「アウトコースに片寄り過ぎている」。特に、ランナーが出た後は、まず間違いなく、「アウトコースのスライダーの連投」に走る。これだけ打たれているのに、マーティンは自分の配球パターンの修正ができていない。(このところスチュアートの出番が増えてきているが、それはもちろん「いいこと」だ)

スカウティングの非常に発達しているMLBにおいては、ヤンキースがこんな単純な配球ばかりしていることに気がつかないチームは無い。今のヤンキースのピッチャーは、相手チームにとって「いいカモ」であり、「良いお客さん」だ。

ドジャース時代のイメージがあるせいか、マーティンは、正直もっと上手いキャッチャーだとばかり思いこんでいた。
だが、ヤンキース野球を1ヶ月ちょっとの間、ベッタリ見させてもらって、その先入観が完全に間違っていたことがわかった。「ラッセル・マーティンの考える配球パターンは、かつてのダメ捕手城島と同レベル」と公言して、さしつかえない。(おまけに、マーティンの出すダメ・サインに、ヤンキースの若くて自信の無いブルペンピッチャーたちは、ほとんど首を振らないときている。9月9日ボルチモア戦でチェンバレンが一度首を振って、打者のインコース攻めに転じて快投を見せたが、すぐ元のアウトコース連投パターンに戻してしまった。本当にもったいない)

たとえラッセル・マーティンのヤンキースバッテリーが、バッターをカウントで追い込んだとしても、カウント1-2から投げるコースも、球種も、だいたい事前に「アウトコースの釣り球の、ボールになるスライダーが来る」ことは、子供でもわかる。だから、バッターに余裕をもって釣り球を見逃される
いくら打者を追い込んでも、ストライクを投げず、ボールになる釣り球ばかり連投するから、バッターに見逃されれば、当然カウントは苦しくなる。
苦しくなれば、ストライクゾーン内に投げざるをえなくなって、おそるおそる球を置きにいったアウトコースのストレートやスライダーを狙い打ちされる。

ワンパターンも、いいところだ。

こんな配球じゃ、ピッチャーの球数がいたずらに増えるばかりで、まったく意味が無いし、ブルペンピッチャーに自信もつかない。

たとえ次にどんなボールが来るのか、ある程度わかっていたとしても、弱いチームの若いバッターなら打ち損じてくれることも少なくない。だが、強いチームの経験を積んだ主軸打者には、そうはいかない。相手チームの主軸バッターの打撃傾向をまったく把握せず配球しているとしか思えないゲームが多すぎる。

スカウティングに基づかない
ヤンキースの配球戦略の失敗例

・アウトコースばかり待っているのがわかりきっているホワイトソックス打線に対して、ケビン・ユーキリスアダム・ダンに、アウトコースの球ばかり投げて痛打される
Damejima's HARDBALL:2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。
・待球型チームの多いア・リーグ東地区で、唯一、早いカウントから打ってくることが通例のボルチモア打線に、早いカウントで勝負を仕掛ける(これも黒田投手の例で恐縮だが、彼は負けたボルチモア戦の試合後、「球数が少なかったのは良かった」などと間違った発言をしている。だがボルチモア戦に限っては、「球数が少ないことが良いこととは限らない」。認識が根本的に間違っている)
・得意コース、得意球種だけを狙って長打を打つが低打率のボルチモアのマーク・レイノルズに、得意の「インハイ」「ストレート」を連投
・チームが崩壊して、打てるバッターのいなくなったボストン戦で、唯一打たれそうなジャコビー・エルズベリーに勝負を挑んで、サヨナラ負け


マーク・レイノルズの例を挙げてみる。

彼が得意なのは、コースでは「高め」。球種ではなんといっても「ストレート」と「カーブ」だ。カーブのようなブレーキングボールを打つ技術は、ボルチモアで最も上手い。逆に苦手なのは、「低め」と、スライダー、チェンジアップといった、いわゆる「オフ・スピード」の球だ。
これらの条件を頭に入れて、ヤンキースのピッチャーがホームランを打たれ続けた配球が、いかに馬鹿馬鹿しいものだったか、データを追いかけて見てみるといいと思う。ここに挙げたのはほんの一例に過ぎない。
マーク・レイノルズにホームランを打たれ続けていた間、ヤンキースバッテリーがどういう配球をしていたか、レイノルズの得意コースや得意球種と照らし合わせれるだけでも、なぜあれほどホームランを打たれ続けたか、わかるはずだ。

2012マーク・レイノルズのホットゾーン
Mark Reynolds Hot Zone | Baltimore Orioles | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN

ラッセル・マーティンは、普段あれほどワンパターンに「アウトコースの低めのスライダー連投」をやり続けているクセに、ホームラン連発されているマーク・レイノルズに限っては、彼の大得意な「インハイ ストレート」を投げ続けていたのだから、意味がわからない。

ホームラン時のレイノルズへの「インハイ
9月2日 5回表(投手:ヒューズ)
ホームラン時のレイノルズ(2012年9月2日5回表)
Baltimore Orioles at New York Yankees - September 2, 2012 | MLB.com Gameday

ホームラン時のレイノルズへの「インハイ ストレート連投
9月6日 6回裏 (投手:チェンバレン)
ホームラン時のレイノルズ(2012年9月6日6回裏)
New York Yankees at Baltimore Orioles - September 6, 2012 | MLB.com Classic

------------------------------------------

凡退時のレイノルズへの「スライダー連投
9月9日4回裏(投手:チェンバレン)
凡退時のレイノルズ(2012年9月9日4回裏)
New York Yankees at Baltimore Orioles - September 9, 2012 | MLB.com Gameday


おまけ:バントについて

下位打線の誰かが、数少ないノーアウトのランナーとして出塁すると、9月に入って「上位打線にはビッグボール、下位打線にはスモールボール」という「風変わりな実験」をしている監督ジョー・ジラルディは、たとえイニングがゲーム序盤の3回であっても、「初球バント」をやらせたがる。

だが、ビッグボール推奨チームのバッターには、メンタルと技術面の両方で「準備」がされてない。だからたいていのバントは失敗する。
そこでジラルディはどうするかというと、常套手段として、「初球バント失敗の次の球は、ほぼ必ず、ヒッティングに切り替える」のだ。

だが、このバントパターンも、相手チームのバッテリーはとっくにスカウティング済みなのだ。

だから、相手チームの投手は、バント失敗の次の2球目には、ほぼ必ずといっていいほど、「大きく曲がるアウトコースの変化球」を投げてくる。
バントを失敗したバッターは、力んでしまって空振り。そして、追い込まれて凡退。

高校野球ではないのだから、1球ごとにサインを変えたりするような大雑把なことをしても、それが実行できるチームと、できないチームがある。ビッグボールのヤンキースは明らかに後者である。それは例えばイチローの技術うんぬんの問題ではない。チームがそもそも、そういうことをやる雰囲気にないイニングと雰囲気の中で、突然バントを実行させても、うまくいくわけがない。

1球ごとにサインを変えるのが、「細かい野球」、「スモールボール」なのではない。むしろ、突然そんなことをやり出すのは、単に窮地に追い込まれた焦りを、相手チームに悟られるだけでしかない。

damejima at 06:44

September 09, 2012

2012年9月8日 2回表 イチロー タイムリー二塁打

動画:Baseball Video Highlights & Clips | NYY@BAL: Ichiro swats a double to score Martin - Video | MLB.com: Multimedia
Gameday:New York Yankees at Baltimore Orioles - September 8, 2012 | MLB.com Classic

これはボルチモア第3戦の2回表に、左投手ジョー・ソーンダースからセンターオーバーのタイムリー・ツーベースを打ったイチローの配球データ。左投手のインコースの球を、センター奥までライナーで打ち返したことに、今後のイチローを占う深い意味がある。

下記のデータを見てもらいたい。

これは、今シーズンのイチローの対・右投手と対・左投手に対するホットゾーンのうち、コース別の「打率」を示した図。「低め」の球には、鬼のように強い。

2012年 対・右投手打率(absolute color mode
これは得意コースを赤苦手コースを青で表したもの。
Baseball Prospectus | PitchFX Hitter Profile: Ichiro Suzuki
イチロー 2012年右投手ホットゾーン(absolute color mode)


同じデータを、「得意さの度合い」によって相対的に色に濃淡をつけるRelative Color Modeで見ると、こうなる。
イチローは、キャリア通算で、MLBの投手たちが決め球として非常によく使う真ん中低めの球に鬼のように強いというデータが残っている。さらに、球種で言うと、とあるブログによれば、チェンジアップなどのオフ・スピードの球に非常に強いというデータがある。(資料:Best Offspeed Hitters - Baseball Analytics Blog - MLB Baseball Analytics
そのキャリア通算でみられる「右投手の低め、特に、真ん中低めに滅法強い」という傾向は、2012年もまったく変わっていない。

2012年 対・右投手打率(relative color mode)
イチロー 2012年右投手ホットゾーン(relative color mode)



同じことを、こんどは対・左投手について見てみる。
例えば、インハイに強いことがわかる一方で、インローに広い苦手ゾーンがあることがわかる。

2012年 対・左投手打率(absolute color mode)
Baseball Prospectus | PitchFX Hitter Profile: Ichiro Suzuki
イチロー 2012年左投手ホットゾーン

2012年 対・左投手打率(relative color mode)
イチロー 2012年左投手ホットゾーン(relative color mode)


2007年からこうしたホットゾーンデータを収集しはじめていると思われるBaseball Prospectのデータで、2007年〜2012年のデータを見ると、2007年以降の通算と今シーズンを比べたときの、対・左投手に対する打撃成績の違いは、ホットゾーンに如実に表れている。

2007年〜2012年 対・左投手打率
(absolute color mode)
2007年〜2012年 対・左投手ホットゾーン(absolute color mode)

2007年〜2012年 対・左投手打率
(relative color mode)
2007年〜2012年 対・左投手ホットゾーン(relative color mode)


だが、こういう単純データだけが野球ではない。
こういうデータの断片だけを見て、やれ「イチローは左投手のインコースの球が打てなくなった」だのなんだの言いたがるデータ馬鹿は、日本にもアメリカにも山ほどいるわけだが(笑)、彼らがイチローのことをまるでわかってないということは、よくわかる。

というのも、イチローが「インコースのハーフハイトを苦手にしている」という事実自体は、なにも今シーズンに始まったことではないからだ。
上の2007年〜2012年のデータで見てもわかるが、インコースのハーフハイトのコース別の打率は、.220と、稀代の天才安打製造マシン・イチローにしてはかなり低い数字だった。だから、今シーズンの打率全体が下がったのは事実であるにしても、特別に今年だけがインコースを打てていないわけではない。


ブログ主がむしろ今年のイチローのホットゾーンに驚きを感じるのは、「ボールゾーンの球をヒットにする率が下がっていること」だ。

最近はセイバーメトリクスが幅をきかせるようになったせいか、やたらと打者に一定の出塁率を求める声が大きいが、イチローはもともとそういうタイプではない。(ちなみに、セイバーメトリクスの重要性や真実味が、セイバーが世の中に初めて登場した時代ほどでは無くなりつつあり、むしろ信頼性が低下しつつあることには、大半の人は気づいていない)

確認しておくと、イチローの選球眼は悪いわけではない。むしろ、かなりいいほうだ。

だが、天才というもの特徴は、
枠にはまらないこと」だ。

イチローは、ストライクだろうが、ボールだろうが、かたっぱしからバットに当ててヒットにできる。だから、ホットゾーンで見るとわかることだが、ストライクゾーンをはずれたボール球の打率が異常に高い。
こんなバッター、他にはウラジミル・ゲレーロくらいしか思いつかない。

なのに、最近では、無能監督エリック・ウェッジではないけれども、イチローに、あれをやれ、これをやれ、あれはするな、これもするなと、余計な「常識的な制約」を設けたがる指導者があまりにも多すぎる。
そして、悪いことに、イチローも、その律儀で真面目な性格が災いして、「ストライクだけを振り、ボールを見逃そうとする」ような、つまらない「常識」が働くようになってきてしまっている

それがいけない、と、ブログ主は思う。
天才は常識になど従う必要は、まったくない

どんなコースのボールだろうと、イチロー自身が「打てる!」「ヒットにできる!」と思ったのなら、好きなように振れば、それでいいのである。彼はそういうプレースタイルで野球殿堂に入ろうとしている稀代の天才打者なのであって、常識にまみれた他人がとやかく言うのは筋違いというものだ。

早くそういう「非常識なイチロー」を見たいものだが、今日の左投手のインコース打ちの成功は、イチローのバットがフル稼働する日が遠くないことを物語っている。



それにしても、ヤンキースに対するアンパイアの判定の酷さは、日に日に度を越してきている。
既にイチローへのアウトコースの判定の滅茶苦茶さについては記事にしたが、ああいう「いかがわしい判定」が、イチローに対してだけではなく、ヤンキース全体に行われつつあることを、ニューヨークのメディアも、今日のマーク・テシェイラのダブルプレー判定で思い知ったのではないだろか。
Damejima's HARDBALL:2012年9月4日、レイズ戦球審Tony Randazzoによる、8回表イチローへの2球目のありえない悪質なストライクコール。

このダブルプレー判定については、ニューヨークのメディアの大半はとにかく怒り狂っていて、一塁塁審Jerry Mealsの誤審を名指しで罵っている。(大メディアであるNew York Timesのタイトルと写真だけは冷静な対応だが、それでも本文中では冒頭部分で批判している)

NY Post
9月8日のダブルプレーを誤審したJerry Mealsを罵るNYメディア
Blown call costs Yankees in loss to Orioles; Girardi heated after game - NYPOST.com

Blaming umps is loser talk - NYPOST.com

NY Daily News
Jerry Meals' blown call in 9th inning dooms Yankees to 5-4 loss against Baltimore Orioles - NY Daily News

NY Times
Yankees Lose to Orioles and Drop Back Into Tie for A.L. East Lead - NYTimes.com

2012年9月8日 ボルチモア戦9回表 一塁塁審Jerry Mealsの誤審2
2012年9月8日 ボルチモア戦9回表 一塁塁審Jerry Mealsの誤審3
2012年9月8日 ボルチモア戦9回表 一塁塁審Jerry Mealsの誤審1


しかしまぁ、これでようやく、アンパイアたちがア・リーグ東地区の勝敗を操作したがっているということに、多くの人たちが気づくことだろう。それはそれで、遅ればせではあるにしても、いいことだ。

マトモに勝とうと思ったら、有無を言わせない勝ち方をしないと、クロスゲームでの判定でこれからも繰り返し嫌な思いをすることになりそうなわけだが、現状の投手陣の崩壊ぶりを考えると、なかなか有無を言わせない勝ち方もできない現状なのが辛いところである。


ちなみに、このJerry Mealsというアンパイア、昨年2011年7月26日のピッツバーグ対アトランタ戦延長19回にも、ありえない誤審を犯して問題になっている。
Pittsburgh Pirates at Atlanta Braves - July 26, 2011 | MLB.com PIT Recap

2011年7月26日パイレーツ対ブレーブス戦でのJerry Mealsの誤審

この試合、延長19回裏の満塁の場面で、アトランタのスコット・プロクターがサードゴロを打ち、ピッツバーグの三塁手ペドロ・アルバレスがホームに送球、ホームに突入した三塁走者フリオ・ルーゴはホームプレートの1メートル以上も手前でキャッチャーにタッチされた。
だが、球審Jerry Mealsは、この明らかすぎるアウトを「セーフ」と大誤審して、アトランタをサヨナラ勝ちさせたのである。
この判定が誤審だったことは、後にMLBが公式に認めている。
July 26, 2011 Pittsburgh Pirates at Atlanta Braves Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com

Major League Baseball and umpire Jerry Meals agree Meals made the wrong call in Atlanta's 4-3, 19-inning win over Pittsburgh early Wednesday morning.
MLB acknowledges Jerry Meals' missed call after Pittsburgh Pirates file complaint over 19-inning loss - ESPN




damejima at 21:42

September 06, 2012

「父親とベースボール」という記事の最後のまとめに向かって資料を読みあさる毎日が続いている。

Black Athena Writes Back: Martin Bernal Responds to His Critics例えば、『黒いアテナ』によって歴史学に旋風を巻き起こしたマーティン・バーナルが、『黒いアテナ』に対する各界からの反論に対する再反論をまとめた著作 "Black Athena Writes Back: Martin Bernal Responds to His Critics" (デューク大学出版会)は、日本では今年やっと訳本が出版されたばかりだが、その序文でバーナルは、「文化のオリジナリティをどう判断するか」について、非常に面白い指摘をしている。
この指摘は、短く触れるのがもったいないほど、あまりにも面白い。そのうち時間をみつかればちょっとした解説を書くつもりだが、「さまざまなものが外部から流入してミクスチュアを起こした場所にも、ゆるぎないオリジナリティは存在する。『流入』と『オリジナリティ』は矛盾せず、両立する」というバーナルの「オリジナリティに関する新しい発想」は、あまりにも面白い。

実は、この話が書かれているのは、序文ののほんの数行にすぎない記述部分なのだが、あまりにもクリエイティブな発想が含まれているためか、電気で打たれたように目からウロコが落ちた。
ロンドンオリンピックのあまりにも退屈な閉会式にみられたように、音楽であれファッションであれ、今のクリエイティブがあまりにもつまらないと感じている人には、ぜひこの著作の序文を読むことを薦めたい。それくらい、バーナルの基本姿勢はいい。


バーナルの『黒いアテナ』によって欧米文化の根幹を否定されたかのように感じて、躍起になって反論したがる欧米の研究者はとかく多いわけだが、独特の発想から「日本文化のあり方を敬愛する」と語るマーティン・バーナルは、実はギリシア文化をまったく否定などしていない。
ギリシアと日本とアップルの文化的共通点を、むしろ、バーナルなら記述できると思う。誰かこのテーマで彼にインタビューをすればいいのに、もったいない。日本文化には大陸から伝わったものも少なくないが、その大半をオリジナル化することに成功した日本独特の「オリジナル化するチカラ」の高さが、これほど短い言葉でわかりやすく説明されたのは初めてなのではないだろうか。

「起源こそがオリジナリティである」なんていう決めつけは、「最もオリジナリティのないオリジナリティ観」である。なんでもかんでも「起源」にこだわるような硬直した古い歴史観では、変容しつつある「オリジナリティの新しい意味」はまったく理解できないだろう。
(それは、他国の創造物をパクリ続けている人たちの好きな、みすぼらしい起源論とやらからも、また、以下のくだらない記事にみる某企業の元幹部という人の誤った過去のレビューの発想からも、よくわかる。シャープ元幹部が実名で明かす 日本のテレビが韓国製に負けた「本当の理由」  | 経済の死角 | 現代ビジネス [講談社]


と、まぁ、ひたすら野球以外のことにかまけているわけだが、ヤンキース対レイズの初戦で、8回に代打で出たイチローが三振したことくらいはわかっている。

その後、見ていると、この三振について、日本のメディアにも掲示板にも、どこにもきちんとした分析が載っていない。単に思いつきの書き込みや記事が並んでいるだけだ。
どうせ、いつものことだが、誰も彼もきちんとしたデータなど見ずに、テキトーに思いつきだけ書き並べて、「野球を語ったつもり」になっているわけだ。

くだらないにも程がある。

最近、日本と海の向こうの某国との間で、領土やなんやかんやの揉め事が表面化したせいなのかなにか知らないが、感情的なイチローバッシングも相変わらず多い。8番打者が打たないとポストシーズンに行けないような、ひ弱なチームは、最初から強くないのである。簡単な話だ。
また、他方では、カリフォルニアの裁判でサムスンへの訴訟に勝ったアップルへの執拗な攻撃もある。例えば、ニューズウィーク日本版のアップル批判記事などは、よくもまぁ、これだけ根拠の無い記者の主観を並べて批判したつもりになれるものだと感心するような、嘘くさい記事ばかり並んでいる。よほど悔しかったどこかの企業が金を出してパブリシティ記事でも書かせたのだろう。
(それにしても、某携帯電話のショップ内には、どうしてああも、日本語の怪しい人間が常駐しているのだろう? 日本人名のついた名札さえつけていれば日本人だと思ってもらえるとでも思っているのだろうか)


Tony Randazzoに抗議するジラルディ(この後、退場)
タンパベイ初戦でヤンキース監督ジョー・ジラルディは、球審Tony Randazzoの4回のクリス・ディッカーソンに対する見逃し三振判定を巡って、退場処分になっている。

実は、このアンパイアのチームにジラルディが退場させられるのは、今シーズン2度目なのだ。(最初の退場も既に記事にしている)
Damejima's HARDBALL:2012年8月9日、三塁塁審Tim Welkeのレフト線判定の優柔不断さに抗議して退場になったジョー・ジラルディの求める「ファイト」。
今日の4人のアンパイアのうちの3人、Tony RandazzoTodd TichenorBob Davidsonは、ジラルディが三塁アンパイアTim Welkeの判定を不服として抗議を続けて退場になった8月9日のタイガース戦でもアンパイアをつとめていたのだ。因縁の間柄といわざるをえない。



データで見るかぎり、ジラルディを激高させたディッカーソンの4球目判定それ自体は、よくある「きわどい球」のひとつでしかないとは思う。
曖昧なデータでしかないGamedayだけ見てモノを言っている人には「ボール」に見えたかもしれないが、PitchF/Xデータで見ると、たしかに「きわどい高さ」ではあるが、逆に言えば、「よくある普通のきわどい球」でしかない。
また、Tony Randazzoは、もともと低めをあまりとらず、高めのストライクゾーンになる傾向のアンパイアだ。

だが、たとえそうだとしても、ジラルディが退場するほど怒りまくったのも当然なほど、このところのヤンキースに対する球審のコールが酷いのは確かだから、ジラルディの抗議そのものは支持できる。

このところのアンパイアの判定は、このところ常にヤンキースの対戦チームに有利に働きすぎている。なにかこのところ、まるで球審全体が「ア・リーグ東地区を接戦状態にして、9月の野球を面白くしてやろう」とでも思っているかのような印象さえ受ける。
だから、ジラルディの抗議は、こと、ディッカーソンの判定への個別の抗議という意味よりも、このところずっと続いているヤンキース不利の判定の連続に、「もう、いい加減にしてくれ!」と抗議し、アンパイアのパフォーマンスを牽制する意味で、適切な対応だと思うし、当ブログはジラルディを支持する。
(この間のボルチモア戦で、ブルペン投手の酷い継投と、当たっているディッカーソンにアンドリュー・ジョーンズを代打に出したりした采配ミスは最悪だったが、それはそれ。ミスのない監督など、いない)


退場に関するデータをまとめているClose Call Sports: Ejectionsでも、さっそくこの退場をデータを交えた記事にしている。
Close Call Sports: Ejection 148: Tony Randazzo (2)


ジラルディが退場になったディッカーソンの4球目判定よりも、問題なのは、同じゲームの8回に代打で三振したイチローへの2球目の判定だ。
このイチローへの2球目の、アウトコースの4シームの判定の悪質さ、酷さに比べたら、ディッカーソンの4球目の判定くらい、どうっていうことはないレベルなのだ。
というのは、8回表のイチローへの2球目のストライクコールは、ありとあらゆるデータ上においてパーフェクトに「ボール」であり、しかも、このゲーム全体において「8回のイチローの打席でしかやっていない、異質かつ悪質な誤判定」だからである。

それくらい、8回のイチローへの2球目の判定は酷いし、悪質だ。

アウトコースにボール3個半から4個くらい外れているクソボールを「ストライクコール」されたら、どんなバッターでもインコースいっぱいの球(4球目)に手が出るわけがない。三振して当たり前だ。

Tony RandazzoTony Randazzo


まぁ、データを見るといい。

2012年9月4日 イチロー 8回表 三振New York Yankees at Tampa Bay Rays - September 4, 2012 | MLB.com Classic


2012年9月4日イチロー 8回表 三振 球審Tony Randazzo
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool

何度も何度も書いてきているように、MLBでは左打者と右打者のストライクゾーンは同じではない。(もちろん、世の中の野球ファンとやらは、そんなこと気にもかけずに、知ったかぶりを語り続けている)
優れたPitchf/xデータを提供してくれているBrooks Baseballが、球審のコール(=打者の見逃した球)をマッピングする際には、まずいったん全データをマップ上に並べ、次に、それぞれのバッターの体格の違いを考慮した補正を加え、さらに、右バッターと左バッターで分けて表示している。

上の図は、この日の球審Tony Randazzoが、左バッターに対して行ったコール(打者の見逃した球のみ)をいったんマッピングして、その後補正したマップだが、黒い実線で囲まれた四角形は「ルールブック上のストライクゾーン」であり、黒い四角形の左側部分に延長されている「破線部分」は、「MLBの球審が、左バッターに対する判定を行うとき特有の、アウトコースのストライクゾーンの広さ」を示している。
左バッターのアウトコースのゾーンの拡大部分の大きさは、アンパイアによって個人差はあるが、標準的には、だいたい「ボール2個分程度」と考えられる。

このデータを見てもらうとわかるとおり、イチローへの2球目のアウトコースの4シームは、ボール3個半くらいは外れており、しかも、こうしたアウトコースの「異常に広い判定」は、このゲームにおいて、なんと、「たった一度しか行われていない」のである。
ゲーム全体を通じてアウトコースの判定が広かったのならいざ知らず、この球だけをストライクとコールしたのだから、「悪意のある判定」と断定せざるをえない。

2012年9月4日 イチロー 8回表 2球目の誤判定 球審Tony Randazzo
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - PitchFX Tool │ 2012年9月4日 8回表 イチローの打席のデータ

去年4月に、球審Marvin Hudsonによるイチローの見逃し三振判定を記事にしたことがあったが、今回のTony Randazzoは、あれよりも酷い。このゲーム全体を通じてTony Randazzoはそこそこ正確な判定を行ったゲームでの出来事なだけに、Tony Randazzoには、ジラルディとともに「おまえ、いい加減にしろ」と言いたい。
Damejima's HARDBALL:2012年4月22日、球審Marvin Hudsonによる9回裏イチロー見逃し三振判定を異常と断言する「3通りの理由」。


それにしても、地元のチームが優勝争いをしていて、しかも、人気チームのヤンキースとゲームをした夜だというのに、17000人ちょっとしか観客が入らないタンパベイは、根本的な何かがマーケティング的に間違っている。ほんと、ありえない不人気球団だ。

damejima at 18:06

August 20, 2012

イチローと黒田
“If he’d been a Yankee for a number of years, who knows how many home runs he might have hit,”
by Joe Girardi, manager of NewYork Yankees


チケットソールドアウトの大観衆48,620人で膨れ上がったヤンキースタジアムで、イチローが2打席連続ホームランの活躍。黒田がキレのあるシンカーとスライダーを駆使して、8回を112球(75ストライク)、4安打1失点の好投をみせて12勝目。ボストンとのカードを勝ち越した。
Boston Red Sox at New York Yankees - August 19, 2012 | MLB.com Wrap

NY Times
Hiroki Kuroda Lifts Yankees Over Red Sox - NYTimes.com

NY Daily News
Hiroki Kuroda outduels John Beckett, Ichiro Suzuki adds two home runs as Yankees beat Boston Red Sox 4-1 at the Stadium - NY Daily News

Newsday
As a Yankee, the Ichiro of old returns

NewYork Post
Ichiro Suzuki, with two home runs in win over the Boston Red Sox, proves to be prime-time player - NYPOST.com
"He’s a prime-time player, even if he’s no longer a player in his prime. The curtain call brings him one step closer to True Yankeedom. Next stop, the postseason?"



CBS local
Hartnett: Ichiro Suzuki Has Found His Perfect Stage At Yankee Stadium « CBS New York

CBS local
Baseball fans have heard the speculation about Ichiro Suzuki for years.“If he really wanted to, Ichiro could hit __ home runs every year. It’s just that he wants to concentrate on getting hits and getting on base.”(一部省略)

That’s just a fallacy.

But if he was really a home run hitter, he would have hit them. He wasn’t choosing to hit singles instead of home runs. Nobody would do that.

Steve Silverman: Ichiro Move Paying Big Dividends For New York Yankees « CBS New York

Boston Herald
Yankees veterans Derek Jeter (three hits, two doubles) and Ichiro (two homers, curtain call) did most of the damage, and were the difference.
Josh Beckett not worth it - BostonHerald.com

Boston.com
Boston Red Sox - Beckett done in by Ichiro; Red Sox lose to Yankees - Boston.com



1本目のホームラン動画(YES)
ホームランボールをキャッチした人が抱き合って喜んでる姿がいい。このシーンは、2本のホームランをまとめた動画にない部分。
NY Yankees | Ichiro launches a solo home run to right field - Video

カウント1-2が苦手なのは、大半の打者がそうであって、なにもイチローだけの特徴ではない。
普通のバッターは、2ストライクをとられると、ほとんど全てのバッターが打者不利の状態になって、打率が大きく下がる。(投手が勝負せざるをえないフルカウントは打者有利)

だがイチローの場合は、他の打者が不利になるカウント0-2や、カウント2-2であっても、関係なく、ハイアベレージの打率をあげてきた。たとえ2ストライクをとったからといって、ピッチャーはイチローに対して有利になれるわけではないのだ。
これを言葉でいうのは簡単だが、非常に驚異的なことだ。天才イチローだからできることで、たとえ安打製造機と呼ばれるような高打率のバッターでさえ、2ストライク以降にはマトモな打率では打てていない。

カウント別打率(キャリア通算)
(左からマウアー、アブレイユ、ジーター、イチロー
0-2 .241 .174 .223 .253
1-2 .218 .212 .205 .225
2-2 .255 .238 .219 .279
3-2 .311 .275 .277 .319

なぜ、あらゆるバッターがカウント1-2で極端な投手有利状態になってしまうのか? それについては、ここでは書かないが、MLBでの配球論の基本が、「4球目で打者をうちとれるように設計されている」ことと、もちろん深い関係がある。


2本目のホームラン動画(MLB公式)
2本目のホームランを打ってダグアウトに帰ってきたイチローを待っていたのは、スタンドからの鳴り止まぬ「イチローコール」。これは、活躍した選手がダグアウトから出てくるのを催促する、いわゆる「カーテンコール」というやつ。イチローは、ヤンキース移籍後、初のカーテンコールを経験した。
Home Runs | BOS@NYY: Ichiro's second homer extends Yankees' lead - Video | MLB.com: Multimedia

1本目、2本目をまとめた動画(MLB公式)
Baseball Video Highlights & Clips | BOS@NYY: Ichiro blasts two home runs in win over Sox - Video | MLB.com: Multimedia

試合後ロッカールームでインタビューを受けるイチロー(YES)
イチローが試合終了直後にロッカールームで着換えている最中にインタビューを受けた動画は、非常に珍しい。間違いなく、ある種の珍品(笑) 
ちなみに、こんな場所にまでレポーターが入り込んでインタビューしているのは、単に、今日のゲームが全米中継だったため。全米のMLBファンが、照れまくるイチローを観たことだろう(笑)
Video Highlights & Clips - YESNetwork.com | Ichiro discusses his two-home run performance - Video

damejima at 15:11

August 11, 2012

NY Daily News紙のMark Feinsandは、ヤンキースのビートライターだが、今日のトロント戦で5打点を挙げて活躍したイチローについてのジョー・ジラルディのコメントを早々と紹介してくれている。
Damejima's HARDBALL:2012年2月22日、beat writerの「ビート」とは、「受け持ち区域」のこと。



“There’s always an expectation here – whether it’s fair or not – that when you get traded for here, you’re supposed to really come and help. Some guys are going to feel that heat, and I don’t think it’s really bothered him. I think he’s probably been through a lot in his life that’s really helped him in this situation.”
Joe Girardi

Mark Feinsand's post on New York Yankees | Latest updates on Sulia


これを、こんな風に訳してみた。

「ヤンキースにトレードされてきたからには、期待というものは常に存在するし、チームの力になってくれることを心底から期待される。それがフェアなものであれ、そうでないものであれ、ね。
そのことをプレッシャーと感じる選手もいる。だけど僕はイチローがそれで思い悩むとは思わない。彼が人生において酸いも甘いも経験してきた、そのことが、いまのシチュエーションにおいて、本当に彼に力を与えていると思う。」


heatという単語をどう訳すか、ちょっと迷った。

食べ物が「辛い」ことを、 "hot" と表現することは、ホット・チリ・ペッパーズではないけれど、日本でもかなりポピュラーな表現になってきている。
だが "heat" という言葉を耳にして、「熱」ではなくて、即座に「辛さ」、「プレッシャー」へと発想を転換していくのには、たいていの場合、時間がかかる。


野球で三塁手のことを「ホットコーナー」といったりもするわけだが、サードの守備は、強烈な打球が飛んでくることを避けられないだけに、常に派手なエラーを犯す危険性にも晒されている。

アスリートの中には、そういうホットな場所に立つことを「目立つから嬉しい!」と思える人もいれば、「もう勘弁してくれ」と尻込みするプレーヤーもいる。また、「目立つのが大好きなクセに、下手クソなプレーヤー」というのも、掃いて捨てるほどいる。

ホットな場所に立つことにつきものの、選手の内面的な興奮や高揚感、圧迫感やプレッシャー、メディアやファンからの批判や非難、そういったポジティブな面とネガティブな面のすべてが集まる場所と人間を、同時に、「たったひとつの言葉」で表現するとしたら、それがジラルディのheatというひとことに集約されている。
英語というのは、ときに非常に素晴らしい表現力があって、ことに、こういう「コト」をひとまとめに抽象的なまま端的に表現する能力については、日本語にない優れた表現力を発揮することがある。


ちなみに、今日ジラルディは点さの離れたゲーム終盤にブルペン投手を注ぎ込んだ。このことは、ファンやビートライターから、けっこうな数の批判を集めたようだが、ブログ主は、そうは思わなかった。

彼は石にかじりついても勝ちたいのだが、勝ちたいのと同時に、チームにもうすこし「ファイトする習慣」を根付かせたいのだと、かねがね思っている。
だからこそ今日のトロントとのゲームで、ちょっと気の抜けた守備とバッティングをみせた一塁手のケイシー・マギーと、プレーにインテリジェンスの無かったアンドリュー・ジョーンズを、ゲーム終盤に代えた。また、気の抜けたピッチングをしそうなブルペン投手も、彼らが打たれる前にどんどん変えていった。



たしかに、彼らを代えなくても、ゲームに勝てたのかもしれない。
でも、それではダメなのだ。
それは俺の考える勝ちではない。

と、考えたジラルディの発想は、非常によく理解できる。


ヤンキースという大看板を背負っているジョー・ジラルディが、イチローといえども最初から簡単に認めるわけはないことは、イチロー自身が一番よく知っていて、だからこそ必死にプレーしているのだと思う。
そして、移籍以降のイチローの守備、走塁、打撃、練習風景、あらゆる点を観察しつつ、10数試合使ってみたジラルディが「イチローを認める発言」をしたのだから、イチローファンとしては、ちょっと嬉しく思っていいと思うのである。


イチローは非常にファイトしており、しかも、技術がある。
そうジラルディは認めはじめているのだと思う。




damejima at 13:52

July 29, 2012

ツイートもしておいたが、New York Timesを中心に、イチローの名を最初にMLB中に轟かせた、あの2001年の「レーザービーム」に触れる記事の数が増えている。(まぁ背景には、外野守備がけしてほめられたレベルのものじゃないという、ヤンキース独特のディフェンス面の課題があるわけだが)
2001年4月11日オークランド戦で、ライト前ヒットでサードまで進もうとした一塁ランナー、テレンス・ロング(1994年メッツ ドラフト1位。2006年メッツで引退)を、イチローが信じられない送球でサード手前で刺し、MLBにおけるキャリア初の補殺を記録した、例のアレだ。




ちなみに、以下の記事では、イチローの3回のFielding Bible award受賞回数が、ヤディア・モリーナアルバート・プーホールズに次いで多いことを挙げながら、Fielding Award投票者でもあるJohn Dewanのイチローに関するコメントを引き出すことに成功している。
賞を選ぶ投票者が、投票結果が出る前のシーズン中に投票対象プレーヤーについてコメントするのは、ちょっと珍しい。まぁ、それほど、誰が見ても今年のイチローの守備指標は素晴らしい、というわけだ。
“Most people think his biggest asset is his throwing arm, but it’s not,” Dewan said. “It’s just simply the amount of ground that he covers out in the field, being alert and making plays that other right fielders don’t make.”(中略)
「多くの人が、イチローの最大の資産は、その強肩にあると思っているが、それは間違いだ。
イチローの強肩というのは、単に、彼がフィールドでカバーしている守備範囲が広大に広いことから導かれる結果に過ぎない。彼が 「ランナーの進塁抑止力」 を発揮し、他の右翼手にはできないプレーを成功させているのは、その守備範囲の広さのゆえだ。」
“He’s having a great defensive year,” Dewan said. “Think of it like a hitter having a good year when he’s older. You don’t expect it, but it’s happening.”
「イチローは今シーズン素晴らしい守備をみせている。打撃で考えてもらうとわかることだが、年齢のいったプレーヤーが好調なシーズンを迎えるなんてことが考えられるだろうか。普通なら期待できない。だが実際に起こっている」
Suzuki’s 2001 Throw Made Baseball Take Notice - NYTimes.com
ブログ注:John Dewanは、スポーツデータ分析会社スタッツ社の元・社長で、守備系セイバーメトリクスの代表的人物。野球における守備力を測るための指標のひとつであるプラス・マイナス・システムの考案者でもあり、Fielding Bibleの発行や、MLBの守備をゴールドグラブとはまた違った視点から評価するFielding Bible賞も主催する。
資料:Damejima's HARDBALL:dewan を含む記事


さすが、John Dewan。
よくわかってらっしゃる。


The Cutoff Manは、ブロンクスとロングアイランドで育ったニューヨーカーで、野球記者として30年を越えるキャリアをもつベテランであり、BBWAA、全米野球記者協会メンバーでもあるJack O’Connellが書いているブログだ。
About Jack O’Connell « The Cutoff Man

そのO’Connelが、ヤンキースで現役を終え(1984年)、ヤンキースで初めて監督を経験し(1986年-1988年)、後にマリナーズの監督にもなった(1992年-2002年)、ルー・ピネラに「イチローに関する10の質問」という形式で数年前に行ったというインタビューを、イチローのヤンキース移籍にあわせて掘り起こす形で掲載している。
イチローがヤンキースに移籍した今見ると、この記事、2001年からのシアトルでのいろいろな出来事が思い出されて、なかなか感慨深い。

ただ、この記事のピネラの解答、どれもこれも、どこかで一度見たような気がするのはブログ主だけだろうか?
ただ、それを、いつ、どこで見たのかが、どうしても思い出せない。単なるデジャブかもしれない(笑) それとも、もしかすると、昔から読んでいる「ピネラのイチローに関するコメント」のほとんどすべてが、実は、このインタビューが元ネタだというオチかもしれないが、ちょっと明言はしかねる(笑)
Piniella talks about Ichiro « The Cutoff Man


断わっておくと、この記事、ちょっと困った点がある。
いつインタビューが行われたのかが、実はハッキリしていない」のである。こういうのは、メディア記事として信頼性に欠けるといわざるをえない。



Jack O’Connellがこの記事をブログにアップした日時は、記事に、Posted on July 28, 2012 at 10:53 AMと明記されていることから、投稿タイミングが「イチローのヤンキース移籍以降」なのは間違いないわけだが、肝心の元ネタのインタビューが実施された時期が正確にわからない。

記事の冒頭で、A couple of years ago, I did a lengthy question-and-answer session with longtime Yankees favorite Lou Piniella about Ichiro Suzuki.と書かれていることから、インタビューが行われたのは数年前、つまり、「イチローのシアトル在籍時代」、ということになっている。
また、質問項目4に「イチローのシーズン200安打達成が10年続いた」という記述がある以上、インタビュー実施時期は、「2010年の秋以降」ということになる。
この2つの条件からすると、2010年の冬くらい、つまりルー・ピネラがシカゴ・カブスの監督を辞めて引退したあたりということにはなる。
イチローのヤンキース移籍をきっかけに、2010年に収録しておいたが、お倉入りになってホコリをかぶっていたインタビューを再掲載しただけかもしれないが、どうも、もうひとつ、しっくりこない。


ひとつ、問題がある。

本文中、7番目の質問項目「3000本安打について」のピネラの解答部分に、こんな記述がある。"When you get to his age [38], you start to deal with some injuries." 「もし彼の年齢(38歳)になったら、いろいろと怪我に直面し始めるものだ」。
もしピネラにインタビューしたのが、本当に「2年前の冬」なのなら、イチローの年齢を「38歳」と補足するのは、絶対におかしい


当然のことだが、38という数字に「他の箇所には存在しないsquare brackets(=角括弧、[ ] )」がついていることからわかるように、この[38]という部分は、ピネラの発言ではなく、インタビュアーであるブログ主、Jack O’Connellのつけくわえた補足部分だ。

Jack O’Connellが昔のインタビューに手を加えて記事にするときに、単純にタイプミスしただけかもしれないが、性格が悪いせいか(笑)、どうもひっかかる。
なぜまた、Jack O’Connellほどの記者歴30年を越えるヴェテラン記者が、この「間違えそうもない単純ミスを犯している」のか。なぜまた、この古い記事を再掲載するとき気をつけるべき「イチローのシアトル時代とヤンキース時代の混同」という単純ミスを犯したのか。それがわからない。どうしてもひっかかる。

わざと極端に詮索するなら、この記事の出処(でどころ)、実は、シアトルの関係者の誰かではないか、という気さえしないではないのである。
なんせ、Jack O’Connellはニューヨーク地区専門のビートライターだ。、そのニューヨーク専門のライターさんが、いくらアクの強いヤンキース動物園(Bronx Zoo)の名物選手のひとりだったピネラが引退したからとはいえ、シカゴ・カブス監督から身を引いたばかりのピネラに、シアトルの選手であるイチローのことを聞くという、ニューヨークとあまり関係のないシチュエーションが、どうも腑に落ちないのである。

(ついでにいうと、この10個の質問と回答集の、特に後半の部分の読後感は、質問項目10で、当時たぶん90本くらいだったはずのイチローの通算ホームラン数を「約100本」と表現していることなど、なんつうか、こう、シアトル時代のイチローについてではなくて、ヤンキース移籍という事件が発生して以降に語っている空気の匂いが微かにするのである。まぁ、いくら鼻には自信があるとはいえ(笑)、これについては、さすがに気のせいかもしれないとは思う。性格の悪さがこういうところに出る 笑)



加えて、もうひとつ指摘しておきたいのは、
以下の考えは、あくまでルー・ピネラの考えだ、ということ。いつも言うことだが、鵜呑みにしてしまわないことだ。

ピネラのマリナーズ時代のチーム運営については、当時のチーム成績の良さを理由にした多くの賛辞もあれば、当時の選手獲得、特に投手の弱体化批判など、批判も多数ある。
ブログ主にしても、このルー・ピネラの発言を紹介したからといって、では、このピネラ発言が自分の考えを100%パーフェクトに代表してくれている、などと思って書いてはいない。
発言の中には、「なるほど」と思うこともあれば、「やっぱりアンタ、本当はイチローの価値をそれほど信用してなかったんだな」と、あきれる部分もある。それが人間と人間の付き合い方というものだ。

リスペクトはもちろんするが、ブログ主は別にピネラの発言だからといって、盲従するつもりはまったく無い。



(以下、質問者はJack O’Connell。回答者はルー・ピネラ。以下でパーレン(丸括弧)内におさめられた部分は、すべてdamejimaによる補足

Q1. Can you remember your first impression of Ichiro?
イチローの第一印象を覚えていますか?
A: Ichiro first came to the Mariners as an exchange player in the spring of 2000. He was with us during the pre-exhibition period because he was not allowed to play in games. Watching him work out, I could tell that he could run, he could throw and he had good bat control. But we didn’t see him under game conditions.
イチローが最初に(提携球団のオリックスから)マリナーズに来たのは2000年のスプリングトレーニングだ。彼は(レギュラーシーズンの)ゲームには出られないから、オープン戦期間に帯同した。彼が練習するのを見て、走れるし、肩もいいし、バットコントロールもいいとわかった。でもメジャーのゲームに出られるコンディションだとまでは思わなかったね。


Q2. Before the 2001 season began, did you expect Ichiro to have as much success in the majors as he has had? Why?
イチローはこれまで(=2001年イチローのメジャーデビューから、Jack O’Connellによるピネラへのインタビュー時点までの、約10年間)数々の成功を達成してきましたが、あなたは2001年のシーズンが始まる前、それを期待していましたか? (もしそうなら)理由は?

A: I could not predict all that would happen, but no, it does not surprise me. He was a disciplined hitter with great physical tools. That spring with us in 2001, he put the ball in play, utilized his speed and didn’t strike out much. We got the feeling we had something special here. He was already a star player in Japan, so really the only question was how he would do in the 162-game schedule.
I remember our general manager, Pat Gillick, worked very hard to sign Ichiro. We thought it we got lucky that we might have a really good player for six or seven or maybe eight years. And look, he’s still playing at a high level in his 10th year in the big leagues.
そうなるのが予測できてたらいいんだけど、答えは「ノー」だな。(その後の成功を見て)驚きはしなかったけどね。彼は偉大な身体能力を備えていて、よく訓練されたバッターだった。2001年のスプリングトレーニングで、繋ぎのバッティングができてたし、スピードを生かしたプレーができ、あまり三振しない。チームに特別な選手が来た、そんな感覚があったね。彼は日本では既にスターだったし、ほんとに唯一といえる課題といえば、162ゲームというハードスケジュールの中で、彼がどうすればうまくやっていけるかという点、それだけだったんだ。
GMのパット・ギリックがイチローと契約するためにとてもハードに仕事してたのを覚えてるよ。我々は6,7年働いてくれる好素材が得られればラッキーだと思ってた。でも、見てのとおり、彼はメジャー10年目でもいまだにハイレベルのプレーをしてる。


Q3. I heard you were so worried about Ichiro’s power part because he hit only to the opposite field during preseason games in 2001 until you asked him to pull the ball. Is that a true story?
2001年のプレシーズンマッチで、あなたが引っ張って打ってみてくれと彼に要請するまで、イチローが流し打ちのヒットしか打たなかったために、彼のパワーについて、たいへん心配なさったと聞いたのですが、本当ですか?

A: Yes. The first few games for us that spring Ichiro hit the ball to left field exclusively. I remember talking to his translator and asking him if Ichiro could try to pull the ball so we could get a better idea of what he could do. The next day, Ichiro led off and pulled the first pitch over the right field wall for a home run. I saw what I needed to see and left him alone after that.
本当さ。あの春の最初の何ゲームか、イチローはレフト方向にしかヒットを打ってなかった。通訳を通じてイチローに頼んだのを覚えてるよ。「できたら引っ張ってみてくれないか。そしたら我々も、君に何ができるのかについて、もっとよく理解できると思うから」ってね。
翌日、イチローは先頭打者として最初の球を引っ張って、ライトスタンドにホームランをかっとばした。僕は何を理解しておく必要があるかわかったんで、それ以降、彼を好きなようにさせておくことにしたんだ。


Q4. Can you analyze the reasons why Ichiro was able to have 200 hits for 10 consecutive seasons? Which part of Ichiro’s hitting is impressive to you?
イチローが10シーズン連続で200本ヒットを打てた理由を分析していただけますか? イチローのバッティングのどの部分が印象的ですか?

A: He has great hand-eye coordination, which is important for a hitter, and he keeps himself in great physical shape. He can expand the zone a bit by chasing the ball up, but he puts the fat part of the bat on the ball so consistently and gets out of the batter’s box so quickly that infielders have to cheat on him. He actually is moving to first base often when he hits the ball, but he keeps his upper body straight and follows through on his swing. You don’t see anyone else do that.
彼は素晴らしい反射神経の持ち主なんだ。それは打者にとても重要なことだ。体調の自己管理も素晴らしい。ボールを最後まで見極めて打つから、ゾーンは広めだけど、彼は非常にコンスタントにボールをバットの芯でとらえてる。打席をとても素早く飛び出せるから、内野手はどうしても(打球より)彼の動きのほうに気をとられて(焦ってミスをして)しまう。彼は実際、ボールを打つのと同時にファーストに動き出してるくらいなんだが、にもかかわらず、上半身をまっすぐにキープして、きちんとフォロースルーの効いたスイングもしてる。
あんなことができる選手は、他にいない。


Q5. From the manager’s point of view, Ichiro should have selected more pitches to hit? Or he should have taken more walks?
監督という視点から、イチローはもっと選球すべきだと思いますか? また、彼はもっと四球を選ぶべきだと思いますか?

A: He is not going to walk much, that’s true, but he won’t strike out that much, either. His on-base percentage is not as high as maybe it should be for someone with a high batting average, but look, he gets on base with hits, so why worry about walks? His eyesight is superb, so it is not a matter of pitch recognition. He is just so adept at putting the ball in play. He’ll foul off a lot of pitches, but he does not swing and miss very much. Pitchers don’t want to walk him because of his speed on the bases. So if they get behind in the count, he still may get something to hit.
彼は四球をそんなに選ぶほうじゃない。それは確かだ。でも、彼は同時に、あまり三振しないバッターでもある。彼の出塁率はハイアベレージヒッターによくみられるほど、高くはない。
でも見てごらん。彼はヒットで出塁するんだから、なぜ四球について心配する必要がある? 彼の視力は素晴らしいから、選球眼そのものに問題があるわけじゃない。彼はたくさんの球をファウルにしようとするけど、空振りや打ち損じは少ない。ピッチャーは、彼が出塁したときの足の速さをよく知ってるから、彼を歩かせてもいいとは考えない。だからこそ、もしピッチャー不利なカウントでも、彼にはまだヒットを打つチャンスが残されてるんだ。


Q6. Do you have any specific memory of Ichiro during your managing career with the Mariners?
マリナーズ監督時代に、イチローに関して何か特別印象に残ったことはありますか?

A: It was during his first season, a game in Oakland. I don’t remember the hitter or runner, but I do know that the runner was very fast. He was on first base when the hitter drove the ball into the gap in right-center. Ichiro chased down the ball, and I was thinking I hope he throws the ball to second base to keep the hitter from advancing because I didn’t think he had a prayer of getting the other runner going from first to third. He made a perfect throw to third and got the guy. It surprised the runner, my third baseman, the coaches, me and even the umpire. It’s still one of the greatest fielding plays I have ever seen.
あれはメジャー最初のシーズンのオークランド戦だったかな。バッターとランナーが誰だったか、覚えてないけど、私はランナーがとても足が速いってことを知らなくてね。ランナー1塁で、バッターが右中間に打って、イチローがボールを追いかけた。
僕は、バッターランナーが(セカンドに)進むのを防ぐために、イチローがボールをセカンドに返球してくれるといいなと思ったんだ。まさかイチローが、三塁に進もうとしてる一塁ランナーをアウトにできるチャンスがあると考えるなんて、思いもしなかった。
ところがイチローは完璧な送球で、サードでランナーをアウトにしてみせたんだ。あれは、ランナーも、三塁手も、コーチも、僕も、そしてアンパイアでさえも、腰を抜かしたね。あれはいまだに、これまで見た中で最高の守備のひとつだよ。(=いわゆる2001年4月11日の「レーザービーム」のこと)


Q7. Do you think he can reach 3,000 hits in the majors?
あなたは彼がメジャーで3000本安打を達成できると思いますか?

A: The key is for him to stay healthy. He stays in great shape physically, which he will have to continue to do to get to 3,000 hits. I think it’s possible, but it won’t be easy. I figure it would take him at least four more years. When you get to his age [38], you start to deal with some injuries. If he can avoid that, he has a good shot at it.
鍵となるのは、彼が健康でいられるかどうか、だね。彼の体調は申し分ない状態にあるけど、彼は3000本安打に達するまで維持し続けなきゃならないだろうね。僕は可能だと思ってるけど、かといって、簡単なことでもない。僕の判断では、あと最低でも4年かかるだろう。彼の年齢 [38歳=ライターJack O’Connellによる補足。この補足自体は間違いである可能性が高い] くらいになれば、いろいろと怪我に遭遇するもんさ。もし彼がそれを回避することができたなら、3000本安打達成の見込みは大きいね。


Q8. Did you see any differences on Ichiro between now and the time when you were the manager?
あなたが監督だった頃と、今とで、イチローは何か違いますか?

A: The only thing I see is that he doesn’t score as many runs, but the Mariners are a much different team from the one I had when we had a strong offensive club. Put some good hitters around him, and he’ll score 100 runs again on a regular basis. He still runs very well, has great instincts in the outfield and plays with so much pride.
唯一違うと思うことは、彼があまり得点してないという点だな。でも、今のマリナーズは、非常に攻撃力があった私の時代のマリナーズとは全く違うチームだからね。彼の前後に良いバッターを置けば、彼は再びレギュラーシーズン100得点できるようになるはずだよ。彼にはまだ得点力も、外野手としての偉大な才能もあるし、他人に誇れるプレーができる選手だよ。


Q9. What do you think about how Ichiro’s speed helps his hit record?
イチローのスピードが、彼の安打記録にとってどう役立っているかについて、お考えを聞かせてください。

A: It’s a great asset. As I said before, infielders have to be on their toes with him. You see them often hurrying their throws on what are otherwise routine ground balls for any other hitter.
そりゃ大きな利点さ。以前も言ったように、内野手はいつでも動けるように構えてなきゃならない。誰かほかのバッターなら、ありふれたゴロだとしても、(バッターがイチローなら)内野手がスローイングするのにあわてるのを、よく見るだろ?


Q10. Should Ichiro make it to Hall of Fame? Why?
イチローは殿堂入りすべきでしょうか? その理由は?

A: Absolutely. He is one of the greatest leadoff hitters in the history of the major leagues. He has excelled at nearly every aspect of the game. Ichiro is not a power hitter, but he has still hit his share of home runs, almost 100, I think. He’s a great hitter, a great base runner, a great fielder with a great arm, a game breaker. All of those qualities add up to me as a Hall of Fame player.
当然イエスさ。彼はMLB史上、最も偉大な先頭打者のひとりだ。彼はゲームのあらゆる場面で卓越したプレーをしてきた。イチローはパワーヒッターじゃないが、僕は約100本というホームラン数は彼相応の十分な数字だと思う。彼は偉大なバッターであり、偉大なランナーであり、偉大な肩を持った偉大な野手であり、偉大な成功者だ。それらすべてのクオリティを積み重ねて考えて、私は彼を殿堂入りプレーヤーにふさわしいと思うよ。

damejima at 02:53

July 28, 2012

49.571人。2時間41分のショーが終わった。

イチローのニューヨークデビュー、ボストン戦は、10-3でヤンキース圧勝。
Boston Red Sox at New York Yankees - July 27, 2012 | MLB.com Box

Catch newly acquired Yankees outfielder Ichiro Suzuki while you can before he hits Cooperstown - NY Daily News

以下はイチローファンにとって常識のような光景ではあるが、こうしてきちんと、それも流麗に書奇残しておいてくれるニューヨークのメディアには感謝せざるをえない。
Ichiro Suzuki is in constant motion in the outfield. Even between pitches, he can been seen stretching his legs and making phantom throws as he seemingly loosens every joint in his body in preparation for the next play.
イチロー・スズキは外野で常に動いている。ピッチャーの投球の間ですら、彼はずっと足のストレッチや、Phantom throwをして(ブログ注:「シャドー・スローイングをしている」とか訳してもいいのだが、和製英語を増やしたくないので、あえて原文のままにする)、次のプレーに備えて身体のあらゆる関節をリラックスさせている。
by David Waldstein , New York Times電子版
Yankees Hammer Red Sox in Suzuki’s Home Debut - NYTimes.com


2012年7月27日NY Times電子版 Baseballページ トップ画面
 2012年7月27日New York Times電子版
 Baseballページ トップ

ツイートしておいたように、49.571人って観客数は、2012年4月13日のLAA戦の49,386人、2012年6月10日のNYM戦49,010人を抜いて、今シーズン最高の観客動員数
2012 New York Yankees Schedule, Box Scores and Splits - Baseball-Reference.com
ちなみに、2012年のヤンキースの観客動員数は、前日の時点で2,007,752人、1試合あたり42,718人。これは去年の同じゲーム数時点(2,078,166人、1試合あたり44,216人)と比較すると、約7万人の減少となっている。
Change in Baseball Attendance 2011 to 2012 - Baseball-Reference.com

2011年のレギュラーシーズンの観客数を見ると、9月24日のボストン戦が49,556人で、これが2011年の最高のようだから、今日の49.571人は、去年の最高観客数をわずかながら上回ったことになる。
2011 New York Yankees Schedule, Box Scores and Splits - Baseball-Reference.com
2010年は、8月7日の49,716人が最高のようで、今日の観客数はそれにはほんのちょっとだけ足りないが、ほぼ肩を並べている数字で、今日のゲームの集客数は、レギュラーシーズンとしては最高レベルだ。(ポストシーズンになれば5万人を超える)
2010 New York Yankees Schedule, Box Scores and Splits - Baseball-Reference.com
まぁ、いずれにしても、イチローのニューヨークデビューとしては、最高の数のお客さんがスタジアムに集まった「ホームのボストン戦初戦」だったわけだ。


いわゆる "roll call" をする外野席のヤンキースファン

イチローのニューヨークデビューを歓迎するヤンキースファン

動画(公式サイト):Baseball Video Highlights & Clips | BOS@NYY: Ichiro receives ovation from fans in Bronx - Video | MLB.com: Multimedia


それにしてもこの試合がユニークだったのは、試合時間の短さ

MLB公式サイトによれば、ヤンキースとボストンのゲームで、3時間を切る2時間41分というゲーム時間は、2005年9月11日にランディ・ジョンソンウェイクフィールドが先発したゲームの「2時間29分」以来、最短の試合時間だったらしい。
2005年9月11日の試合は、1-0でヤンキースが勝った投手戦だから、試合時間が短いのも頷けるが、今日のゲームは、乱打戦とまでいえないにしても、ホームランの飛び交う打撃戦で、投手戦ではないだけに、今日の試合が異例のスピーディーさで進行したゲームだったのは間違いない。
September 11, 2005 Boston Red Sox at New York Yankees Box Score and Play by Play - Baseball-Reference.com

また、このカードが3時間以内で終わったのは、2009年以来行われた61ゲームのうち、わずか5ゲームしかないらしい。





以前、アンパイアのJoe West(ジョー・ウエスト)が、ヤンキースとレッドソックスのゲーム進行の遅さについて、They take too long to play. (「やつらプレーが遅すぎる」)とクレームをつける発言をしたことがあったことは、一度このブログで記事にした。
元記事:Damejima's HARDBALL:2011年7月5日、ゲームの進行が遅いとクレームをつけた最年長ベテランアンパイアに、ジョナサン・パペルボンが放った"Go Home"の一言。

資料:Umpire Joe West blasts Boston Red Sox, New York Yankees for slow play - ESPN

ジョー・ウエストのこの発言に対して、当時ボストンのクローザーだったジョナサン・パペルボン(今はフィラデルフィアのクローザー)は、こんな風にやりかえした。
Have you ever gone to watch a movie and thought, 'Man, this movie is so good I wish it would have never ended.' That's like a Red Sox-Yankees game. Why would you want it to end?"
If you don't want to be there, don't be there. Go home.
「映画に行って『いい映画だから、終わってほしくない』って思ったことがあるだろ? レッドソックスとヤンキースのゲームも、まさにそれ。なんで終わらせたいって思うのさ? 嫌なら、スタジアムにいることない。とっとと家に帰りな!」
Umpire Joe West blasts Boston Red Sox, New York Yankees for slow play - ESPN


damejima at 16:59
ヤンキースに移籍したイチローをファンがスタンドから撮った動画がいろいろとYoutubeに上がってきているので、テキトーにまとめてみた。(漏れがあるとは思う)

ヤンキース移籍発表直後のセーフコ
試合前のウオームアップ






セーフコでヤンキースのユニフォームを着て登場した初打席で
スタンディング・オベーションする観客。


一塁側 スタンド上



一塁側 外野寄りの内野




三塁側 内野







http://youtu.be/QJPlj3uQxLk


バックネット裏からの角度






テレビ観戦していた人たち





おまけ
ESPNの特集をテレビで見ていた人




damejima at 14:34

July 24, 2012

イチローヤンキース移籍!
言いたいことはありすぎる。
とにかく、めでたい。
Ichiro Suzuki Acquired by Yankees From Mariners - NYTimes.com

Yankees acquire 10-time All-Star Ichiro Suzuki from Seattle, outfielder goes 1-for-4 in Bombers' 4-1 win over Mariners  - NY Daily News


そう。
椎名林檎も歌っているように、
時代なんて自分で造っていけばいいんだ。

イチローの記念すべきヤンキースで最初のメンバー表
記念すべきヤンキースでの最初のメンバー表。
「8番ライト イチロー」。

Ichiro's Yankees debut(MLB公式サイト動画)
http://mlb.mlb.com/video/play.jsp?content_id=23295039&topic_id=&c_id=mlb&tcid=vpp_copy_23295039&v=3







「未来は不知顔さ、自分で造っていく。」
 多分あなたはそう云うと判っているのに
 ほんのちょっとざわめいた朝に声を無くすの

 私はあなたの強く光る眼思い出すけれど
 もしも逢えたとして喜べないよ
 か弱い今日の私では
 これでは未だ厭だ


「答えは無限大さ、自分で造っていく。」
 枯れ行く葉が相変わらず地面を護っている
 そんな大地蹴って歩いては声を探すの

 私はあなたの孤独に立つ意志を思い出す度に
 泪を湛えて震えているよ
 拙い今日の私でも

 明日はあなたを燃やす炎に向き合うこゝろが欲しいよ
 もしも逢えたときは誇れる様に
 テレビのなかのあなた
 私のスーパースター

word by Ringo Shiina(東京事変)



いわゆる「イチメーターの人」として、日本のMLBファン、特にイチローファンで知らない人はいないのが、セーフコのライトスタンド最前列でいつも観戦して応援してくれたエイミー・フランジさんだが、彼女は今日はじめてイチローにサインをもらった
しかも、「イチメーター」のボードに。
イチローがエイミーさんに初めてサインしたという「イチメーター」

イチメーターにサインするイチロー

イチローからサイン入りのイチメーターを受け取るエイミーさん

サインされた「イチメーター」を受け取って涙ぐむエイミーさんサインされた「イチメーター」を受け取って涙ぐむエイミーさん

サインされた「イチメーター」を受け取って涙ぐむエイミーさん 2





イチローはその後、ボールもスタンドにいるエイミーさんに投げ、グラブを持ってスタジアムに来ているエイミーさんが見事にキャッチ。スタジアムに集まったヤンキースのファンからも、マリナーズのファンからも、やんやの喝采を受けた。

これが、そのボール。

イチローがエイミーさんに投げ、グラブにおさまったボール


http://mlb.mlb.com/video/play.jsp?content_id=23294615&topic_id=&c_id=mlb&tcid=vpp_copy_23294615&v=3

スタンドにいるエイミーさんにボールを投げるイチロー

イチローの投げたボールをグラブでキャッチしたエイミーさん






エイミーさんの応援がどれほど、日本のイチローファンを励まし、力づけたことだろう。

この日のイチローの「もてなし」を受ける権利が、
彼女にはある。

ありがとう、エイミーさん。
ヤンキースのイチローもよろしく。


試合後のインタビュー。
Ichiro on playing for Yankees(MLB公式サイト動画)
http://mlb.mlb.com/video/play.jsp?content_id=23294935&c_id=mlb


試合前にヤンキースの選手として初めてケージに入るイチロー
試合前のバッティング練習で、
ヤンキースの選手として初めてケージに入るイチロー。

礼に始まり礼に終わる日本人、イチロー
礼に始まり礼に終わる日本人。
それがイチロー。

damejima at 14:55
ハワイ移民150周年
No Ichiro, No watch.

Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です




Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。



Categories
ブログ内検索 by Google
Google

livedoorブログ内検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month