ドーピング、PED、ステロイド

2019年1月9日、「MLBで通用するセカンド、ショートは、30本ホームランが打てるタイプ」とかいうのは空想に過ぎない。
2015年4月14日、『父親とベースボール』 (13)ドミニカ出身選手などのドーピング多発問題の影響
2015年2月18日、「満票」で選ばれてなどいない新コミッショナー選挙についての日本メディアの虚偽報道。ステロイダー復権をうかがうヤンキースファンのロブ・マンフレッドには心底ガッカリ。
2014年10月7日、「アナボリック・ステロイドの影響は生涯続く。だから処罰はたとえ4年間の資格停止でも甘すぎる」とのカナダ・オスロ大学の研究を読んで、膝を打つ。
2014年3月28日、MLBとMLB選手会が新たなPEDの処罰方式 Joint Drug Agreement (JDA)に合意。
2014年3月25日、ドーピング目的のアナボリック・ステロイド常用が引き起こす大腿骨頭壊死などの「股関節の故障」について。
2013年7月25日、「やはり」EPOによる血液ドーピングをやっていたマルコ・パンターニ。
2013年7月23日、PED使用を認めたライアン・ブラウンの2011年リーグMVPは剥奪すべき。
2013年7月2日、怪我での引退の可能性が報じられていたアンパイア、Brian Rungeがドラッグテストに落ち、トリプルA降格。
2013年2月16日、消炎剤フェニルブタゾンから掘り起こす、1920年代のサッコ・ヴァンゼッティ事件と、1968年のダンサーズイメージ降着事件の奇妙な縁。
2013年1月14日、ステロイドがらみの殿堂入り投票結果にまつわるジム・パーマーの歯切れの悪い主張は、90年代にMLB、そして今年NHLをシーズン中のストライキという愚行に導いたDonald Fehrと同根でしかない。
2011年12月10日、ライアン・ブラウン事件の衝撃で珍しく感情的で悲観的な記事を書いたFOXのローゼンタール。
2011年12月10日、今年のナ・リーグMVPミルウォーキー・ブリュワーズのライアン・ブラウンがドーピングとの報道。

January 09, 2019



上に挙げたリンクは、ダイヤモンド・オンラインに2019年1月7日掲載されたクソ記事である。クレジットは「清談社 福田晃広」となっているが、「2000試合以上を取材してきたMLBアナリスト古内義明」に話を聞いたという体裁になっている。カノーの所属球団が間違っていることからしてライターはMLBに詳しくない人間だろうから、情報の責任の所在は実質、古内某ということになる。

その古内なる人物、記事中で、こんな「わけのわからないこと」を言っている。
「日本人内野手で、今後もし可能性があるとすれば、スピードがあり、中距離打者以上のパワーがある二塁手かと思います。たとえば、ホセ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)やロビンソン・カノ(シアトル・マリナーズ)のような、シーズンでホームランを30本ほど打てるタイプですね。ただ、今の日本のプロ野球界で、その条件に合う選手を見つけるのは正直厳しいです」


何を根拠にこういうわけのわからないことを言ってるんだ。と、言いたくなる。


まずは総論の間違いだ。

セカンドからいこう。

MLBの100年を超える歴史の中ですら、「30本ホームラン打てた2塁手」なんて、「のべ39人」しかいない。複数回達成者がいるので、選手数はその半分くらい、たった「20数人」しかいない。その「20数人」にしても、ロジャー・ホーンスビーのような古い時代の記録を除くと、大半が「2000年以降」の記録で、おまけに飛ぶボールなどでホームランが無駄に量産される「ホームランと三振の時代である2010年代」の例が多く含まれている。

つまり、MLBの、どの時代、どの選手を見て、そういう「空想」をしたのか知らないが、「ホームランを30本ほど打てるタイプしかMLBの二塁手になれなかった時代など、MLBのどこを探しても存在しないのである。


個々の例についてもみてみる。

「30本打てる内野手の例」としてホセ・アルトゥーベが紹介されている。だが彼は24本打ったシーズンが2度あるだけで、30本打ったことなど、一度もない。なのに、「30本打てるタイプ」に挙げるのは、どうかしている。彼の「シーズン平均ホームラン数」は、いまのところ「14本」。これは「歴代のホームランを打てるタイプの二塁手」より10本は少ない。だから、アルトゥーベはそもそも「30本打てる二塁手」というカテゴリーには到底入らない選手なのである。

カノーはたしかに、2度「シーズン30本以上のホームラン」を記録している。だが、こいつはアレックス・ロドリゲスやバリー・ボンズと同じ、「ステロイダーのクソ野郎」であって、その記録は詐称にすぎない。そして、その「ステロイド・ホームランのカノー」ですら、シーズン平均は「24本」に過ぎない。


近年「ホームラン30本打った二塁手」でいえば、挙げるべきなのは、達成2回のカノーより、2000年代後半に3回記録したチェイス・アトリーやアルフォンソ・ソリアーノだが、上の記事はアトリーもソリアーノも名を挙げていない。
アトリーのシーズン平均も「22本」で、ロビンソン・カノーとたいして変わらないが、ステロイダーでないだけマシというものだ。ちなみにイアン・キンズラーも、カノーと同じ2回、30本を達成しているが、シーズン平均は、アトリーと同レベルの「22本」で、30本には到底届かない。

「30本打たないとメジャーの二塁手になれない」などという設定はまったくのデタラメだ。


他の基本的な間違いも指摘しておこう。

最初に挙げた記事が配信されたのは「日本時間1月7日6:00」のようだが、その時点でカノーはとっくにシアトルの選手ではない。印刷媒体なら印刷後にトレードされたと言い訳もできるが、電子版は直そうと思えばいくらでも直せたはずだ。だらしないにも程がある。

また、日本の二塁手には、30本をそこそこコンスタントに打っている山田哲人がいるわけだが、どういうわけかこの記事は触れていない。これも解せない。自分は山田哲人がMLBで活躍できると思ったことはまったくないが、だからといって、「今の日本のプロ野球界には、30本打てる内野手はひとりもいない」と、上から目線で決めつけるのはおかしい。



次にショートについて。

総論はセカンドと同じである。
MLB100年の歴史で、「30本ホームラン打てたショート」なんてものは、奇しくもセカンドと同じ、「のべ39人」しかいないのである。この「のべ39人」には、カノーの先輩で、同じステロイダーのクソ野郎であるアレックス・ロドリゲスや、ミゲル・テハダなどの「ステロイダーのニセ記録」が含まれているから、リアルな達成者となると、もっと少ない。

個々の選手でみると、「ホームラン30本」は、例えばデレク・ジーターは一度も達成していない。ジーターに似たバッターで、同じ3000安打達成者でもあるロビン・ヨーントも達成してはいない。カル・リプケンはジーターより遥かに長打力があったバッターだったが、リプケンですらわずか一度しか30本を達成していない。

30本を2度達成したショートは、例えばノマー・ガルシアパーラ、トロイ・トロウィツキー、ジミー・ロリンズ、近年ではフランシスコ・リンドア、マニー・マチャドなどがいる。
ホームラン20本台後半の記録も、これら「30本を2度達成している選手」が達成した記録であることが多いために、ショートのハードルをもっと下げて、「25本以上」としたとしても、そのメンバーは「30本以上」とほとんど同じ顔ぶれにしかならない。

逆にいえば、30本打てるホームランバッターではないのにメジャーのレギュラーのショートになった選手なんて、掃いて捨てるほどいるし、むしろ、そちらのほうが「普通」だ。


これは余談だが、こうしてMLB全体を眺めたとき、「この2010年代に限って、ホームランを30本打ったセカンド、ショートが何人も出現しているのであるわけで、そのことは、「今のMLBが『三振かホームランかという異常な時代』であることの証拠」そのものである。
「2010年代に限ってホームランを30本打ったセカンド、ショートが何人か同時に出現した」ことは、その選手たちの実力がどれも「殿堂入りレベル」だから、ではなく、「飛ぶボール」とか、カノーのように隠れてステロイドをやって隠蔽薬を使っているせいだとしか、自分は思わない。


総じていえば、MLBのセカンドとショートを「ホームラン数」を基準にして「レギュラーとして通用するレベル」を設定するなら、「ホームラン30本」なんてものは、「殿堂入りレベルの選手」か、「ステロイダー」の記録でしかなく、それらはいずれも「特殊な例」でしかない。
「ごく普通のレベルのMLBのレギュラーのセカンド、ショート」を、ホームラン数でハードル設定するとしたら、20本どころか、なんだったら高打率ならという条件つきで「ホームラン15本」程度でまったくかまわない。実際デレク・ジーターがそうなのだ。

「MLBのセカンド、ショートは30本打てるのが当たり前」なんて話は、単なる空想に過ぎない。




damejima at 20:42

April 13, 2015

かつてMLBを揺るがしたBALCOスキャンダルでは、バリー・ボンズを筆頭に多くのネイティブなアメリカ人選手のドーピングがミッチェル報告として指摘された。
だが近年は様相が変わり、アレックス・ロドリゲス(アメリカ国籍だが両親はドミニカ人)に代表されるバイオジェネシス事件と、それ以降も散発的に継続しているMLBのドーピング摘発では、ドミニカを中心とした多くの中米出身選手のドーピングが数多く指摘されだした。
(特に根拠もソースも無いのだが、バイオジェネシス事件での大量処罰以降も散発的なドーピング摘発が続いているのは、あの事件で得られた捜査資料、例えば「納入履歴」や「メモ」などから新たに案件が発掘され、摘発されているのではないかとブログ主は想像している)


さて、近年いったいどのくらいのドミニカンがドーピングで処罰されているのだろう。ちょっと簡単に調べてみた。

まず英語版WikiのDominican-AmericansのリストにあるMLB選手たちをピックアップして、「過去にドーピングで摘発された経験をもつ選手たち」の名前を太字で示してみる。

Pedro Alvarez
Moises Alou
Trevor Ariza
Ronnie Belliard
Julio Borbon
Manny Delcarmen
David Ortiz (まだMLBに十分なドーピング処罰規定がなかったために処罰はされなかったが、2003年の検体が同じボストンのマニー・ラミレスとともに陽性反応を示した。 ソース:Ortiz and Ramirez Are Said to Be on 2003 Doping List - NYTimes.com
Placido Polanco
Albert Pujols
Manny Ramirez
Alex Rodriguez
Sammy Sosa
List of Dominican Americans (Dominican Republic) - Wikipedia, the free encyclopedia

上記リンクに漏れているドミニカ系選手
Vladimir Guerrero
Manny Machado
Adrian Beltre
Alexi Ogando
Carlos Santana
Zoilo Almonte
Edwin Encarnacion
Marcell Ozuna
Robinson Cano
Jose Bautista
Ivan Nova
Hector Noesi
Eduardo Nunez
Alfonso Soriano
Rafael Soriano


次に、「バイオジェネシス事件」でドーピング処罰を受けた選手たちからドミニカ(ドミニカ系アメリカ人を含む)とベネズエラの選手たちをピックアップしてみる。
Alex Rodriguez
Bartolo Colon
Melky Cabrera
Nelson Cruz
Jhonny Peralta
Cesar Puello
Fernando Martinez
Fautino de los Santos
Jordan Norberto
Francisco Cervelli(ベネズエラ)
Jesus Montero(ベネズエラ)


さらにBALCOスキャンダル、ミッチェル報告を含め、過去から近年にいたるまでに散発的にドーピングを摘発されたドミニカ出身選手を挙げてみる。
Miguel Tejada
Jose Guillen
Guillermo Mota
Wilson Betemit
Ervin Santana
Jenrry Mejia


MLBの多くのチームがドミニカに選手育成組織「アカデミー」を常設しているわけで、ドミニカ(そしてベネズエラ、キューバなど)で「生産」される選手たちの増加は、いまやMLBに大きな影響を与えている。
こうしてドーピング摘発者を眺めてみると、MLBの「主役」が、徐々にアフリカ系アメリカ人を含めたネイティブなアメリカ人から、中米の選手たちにシフトしていく中で、「ドーピング事件を起こす人種層」も90年代末のホームラン狂騒時代が終わって以降あたりから中米にシフトしていっていることは明らかだ。


実際にそうなのかどうかはわからないが、「ドミニカあるいはベネズエラから非常に高い才能が次々と輩出されるようになり、MLBのどこのチームを見ても多くの中米出身の選手たちがレギュラーの一角を占めるようになったこと」が、もしも「中米の野球におけるドーピングの蔓延」が理由であるなら、ブログ主はMLBがドミニカうやベネズエラなど、関係国の選手たちに強力なドーピング検査を強制し、不正選手を徹底排除することに、強く賛成する。
ドーピングによって得た好成績で名誉もカネも手に入るような時代など、不愉快きわまりない。


勘違いする人がいそうなのであらかじめ書いておきたいが、「大金が動くMLBの『豊かさ』が、中米のスポーツ環境を汚染した」のではない。たとえ豊かさの中にあっても不正をしない人は、たくさんいる。

問題なのは、「豊かさ」ではない。

「不正」の原因は、常に、そして単純に、く個人の「モラルの低さ」によるものだ。「自分の不正」を「他者の豊かさ」のせいにするのは、単純に「逃げ」や「言い訳」でしかない。大金欲しさに不正をはたらくモラルの低い選手を許すべき理由など、どこにもない。


このブログでは、MLBでアフリカ系アメリカ人の数が減少している問題をずっと書いてきている(記事カテゴリー:『父親とベースボール』〜MLBの人種構成の変化 │ Damejima's HARDBALL)わけだが、もしベースボールが「ドーピングをしていないとレギュラーにさえなれないと感じるスポーツ」になったら、誰だって馬鹿馬鹿しくなって、そのスポーツと真剣に取り組むことなど止めてしまうだろう。

そうならないためにも、そして、あらゆる国籍の選手たちが平等にチャンスが得られる環境を維持するために、MLBはドーピング対策に決然とした強い態度で厳しく取り組むべきだ。
(もちろん、あらゆる国籍の選手たちにドーピング検査が不可欠なこと、あらゆる国籍の選手たちに不正が許されないことなど、いうまでもない)

damejima at 09:24

February 19, 2015

コミッショナーがバド・セリグから、ニューヨーク生まれでヤンキースファンのロブ・マンフレッド(Rob Manfred)に変わってから、いろいろとMLBは雲行きがあやしい。

バリー・ボンズ、ジェイソン・ジオンビーなどのステロイダーの復権を意図した記事の氾濫。永久追放中のピート・ローズの復権と殿堂入りの噂。そして、ヤンキースにおける、ステロイダー、アンディ・ペティットの背番号の永久欠番。同じくヤンキースで大金を積んで口封じをはかった挙句に食らった長期の処罰から復帰する3000本安打目前のステロイダー、アレックス・ロドリゲスのファンに対する見え透いた謝罪。


もしステロイダーと永久追放者の名誉回復が強引に達成され、その一方で、クリーンなプレーによって殿堂入りを控えたイチローをあれほどぞんざいに扱った失礼きわまりないヤンキースがこれからもデカいツラし続けるようであれば、遠慮なくMLBなどクソミソにけなして、それから捨てさせてもらうつもりだ。


さて、マンフレッドがコミッショナーになるためには、オーナー会議での「30球団の4分の3の賛成」、つまり、「23票以上の賛成」が必要だった。

この投票の経緯についてだが、日本のメディアの報道には、「1回目の投票で23票に1票届かなかったものの、2回目では満票を集めた」(ソース:セリグ氏の後継者にマンフレッド氏、MLB次期コミッショナー:AFPBB News)などと、あたかもマンフレッドが円満かつ満場一致で選ばれたかのように報道したメディアがあったりする。

嘘こいてんじゃねぇよ、バカヤローと、まずは言っておきたい。ESPNとか英語サイトを見るといい。


第1回投票におけるマンフレッドの得票数= 20票

英語メディアで、上に挙げた日本のメディアのように「第1回投票が1票だけ足りない22票だった」と書いているサイトなど、自分は見たことがない。マンフレッドの新コミッショナー就任を小躍りして喜んだはずのNY Postですら、最初は「賛成20 対 反対10」だったと書いている。

CBSのJon Heymanによれば、最初から明確にマンフレッドのコミッショナー就任に反対していたのは、以下の7球団。CWS、TOR、OAK、LAA、MIL、ARI、BOS、CIN
中でも、ESPNの記事によるとホワイトソックスオーナー、ジェリー・ラインズドルフ(Jerry Reinsdorf)と、ブルージェイズ社長ポール・ビーストン(Paul Beeston)の2人が猛烈な反対をしたようだ。

この他、以下に書いた2回目以降の投票経緯から察するに、CWS以下の7球団以外にも、MIL、TB、WASがマンフレッド就任に反対票を投じたとみられる。


第2回投票 21票
第3回投票 22票
第1回投票で決まらなかったことから、ローマ法王を選ぶコンクラーヴェのごとく、再投票が続けられた。そのプロセスで、MIL (Mark Attanasio)、TB (Stuart Sternberg)の2チームが賛成に転じたことが、ESPNなど複数メディアによって記されている。(「第2回投票で、MILが賛成に転じた」としているメディアがいくつかあることから、第3回投票で1票増えた賛成票を投じたのは「TB」ということになる)
Rob Manfred voted next MLB commissioner - ESPN


第6回投票 23票
それが何回目の投票だったか、正確な話はともかくとして、マンフレッドのコミッショナー就任を決定づけた「23票目の賛成票」を投じた球団が、「WAS」であることは、ESPNはじめ複数のメディアが書いている。


どういう理由で、事実とは異なる「2度目の投票でマンフレッドが満票で選ばれた」などと虚偽の報道をするのか知らないが、そういう「世論操作」じみた行為は、メディアとして「訂正記事の掲出と、公式の謝罪が必要なレベル」とブログ主は考える。


それにしても、ブログ主が是非知りたいと思うのは、CWSやTORがマンフレッド就任に強硬に反対した「理由」だ。何の理由もなく彼らが強硬な態度をとるとは思えない。こういう情報を発掘してこそ、スポーツメディアが「ジャーナリズム」として成り立つのではないかと思うが、日本のスポーツメディアには何も期待していないので、どこか英語メディアで取り組んでみてもらいたいものだ。

damejima at 20:50

October 08, 2014

なるほどな。
なんかおかしいとは思ってたけど、やっぱりそうなんだな。

“Our data indicates the exclusion time of two years is far too short. Even four years is too short.”
我々のデータ(=アナボリック・ステロイドによるドーピングについての調査)によれば、(そうしたドーピングに対する処罰は)2年間の資格停止では短すぎるし、それどころか、たとえ4年間でも短すぎるくらいだ。
Effects of doping could be lifelong, say scientists - Athletics Weekly

こう語ったのは、アナボリック・ステロイドの身体への長期的影響を調査したオスロ大学・生理学教授、Kristen Gunderson氏。研究チームが学会誌Journal of Physiologyに発表した内容は、イギリスの陸上競技専門誌Athletics Weekly2014年6月号でも紹介された。

Gunderson氏がなぜ「アナボリック・ステロイドのドーピング処罰は4年といわず、生涯を通じた資格停止でもいい」と強く断言するのかといえば、理由は単純明快だ。彼らのマウスを用いた研究成果によれば、アナボリック・ステロイドの影響は、生涯ずっと続く可能性が高いと考えられることがわかったからだ。
I think it is likely that effects could be lifelong or at least lasting decades in humans.

In his study, mice were exposed to anabolic steroids for two weeks, which resulted in increased muscle mass.The drug was then withdrawn for three months, a period which corresponds to approximately 15% of a mouse’s lifespan.
After the withdrawal, the mice’s muscle mass grew by 30% in six days following load exercise, while untreated mice showed insignificant muscle growth during the same period.
研究では、マウスは2週間のアナボリック・ステロイド投与を行われ、筋肉量増加がみられた。投与はその後3週間停止されたが、これはマウスの寿命の15%にあたる。
「投与停止後のマウス」に6日間エクササイズをさせてみたところ、筋肉量は30%増加したが、その一方で、同じ日数だけエクササイズさせた「未投与のマウス」には明確な筋肉量増加はみられなかった。
Could the effects of doping be lifelong? - Cycling Weekly


詳しい内容は元記事を読んでもらいたいが、正直なところ、非常にイヤなニュースだ。気分が重くなったし、むかっ腹も立つ。

それはそうだろう。
野球でいえば、たとえアナボリック・ステロイドでドーピングしたのがバレて処罰を受けても、90ゲームばかり休んで復帰してくれば、こんどはおおっぴらにホームランを量産できる、なんてことが起こりうる可能性があることが科学的にわかった、という話なのだ。腹が立たないわけがない。


MLBで近年ドーピング処罰を受けた選手が資格停止期間を終え、復帰した後の打ちっぷりを見ていて、「あれれ? こいつ、今はステロイドやれないはずなのに、またホームラン量産しだしてるな・・・。なんなの、これ?」と思った経験は、誰しもあるはずだ。


ブログ主も、ある。
というか、いつもそう思ってきた。

具体的に名前を挙げさせてもらえば、ネルソン・クルーズメルキー・カブレラライアン・ブラウン、特に、ボルチモアのネルソン・クルーズについて、「ドーピング処罰明けというのに、ずいぶんホームランを打ってるけど、なんで?」と、ずっと不可解だな、と思っていた。


同じようなことは、野球だけではない。ドーピング摘発数のやたらと多い陸上競技や、自転車のロードレースなどでも、同様の事例をいくらでも見ることができる。
とかくメディアはそういう選手に限って、「ドーピングからの復帰後、初優勝。長いブランクに負けなかった誰それ」などと、すぐに「美談」に仕立て上げたがる。だが、そんな話は美談でもなんでもないことが、このオスロ大学の研究によってようやくわかったわけだ。

STAP細胞の捏造事件じゃないが、このオスロ大学の研究が本当に正当なものかどうかは十分な検証が必要ではあるが、それでも、この調査は今まで感じてきた「なんでこうなるかね・・。なんでだよ?」というモヤモヤした部分に「ようやく辻褄のあった、合理的説明が登場してくれた」という感じがする。


もちろん困ったことに、こうした「正確な」研究結果は、ある意味「諸刃の剣」でもある。

「たとえステロイドをやって不名誉な扱いを受けても、みそぎさえ済ませれば、こんどはヒーロー扱いされる」なんて可能性があるなら、「じゃあ、若い無名のうちにステロイドやっとくほうが得だよな。やっとくか。ザマーミロ、へっへっへ。」なんて話になりかねない。(というか、残念ながら実際そういう状態になっていると思う)

たとえステロイドをやって、不名誉な「ステロイダーのレッテル」を貼られ、所属チームをクビになるとか、人に後ろ指をさされるとか、不名誉な経験を経なければならないにしても、たとえそれが2年だろうと4年だろうと、「短期の処罰期間の不名誉さえ我慢し終えれば、再び良い成績を収められる可能性がどうやらあるらしい」という話が判明しつつあるのだとしたら、困った話にならないわけがない。

「カネだけ残れば、名誉なんか捨ててもいい」などという愚劣な選手ばかりが幅をきかせる結果をまねきかねない。ステロイドをやめた後、身体にステロイド時代の影響が残ったまま打撃で好成績をあげた選手が、さも名選手のような顔をしてダグアウトでニヤニヤしながら、ふんぞり返る、なんてことばかり起こるようになったら、スポーツとしての生命は終わりだ。


ただ、うまい話ばかりでもない。

というのは、前にも書いたように、ドーピング目的のステロイド使用は、骨格に「選手生命にかかわるほどの非常に重大な悪影響」をもたらす可能性があるからだ。
関連記事:2014年3月25日、ドーピング目的のアナボリック・ステロイド常用が引き起こす大腿骨頭壊死などの「股関節の故障」について。 | Damejima's HARDBALL

いいかえると、
ステロイドのせいで、筋肉だけは人並みはずれて隆々としてマッチョなのに、その一方で、骨、特に関節はボロボロで、手術が必要なほど、もろい」という、おかしな体格の選手
が量産される可能性がある。

あえて選手名を挙げることまでしなくても、今のMLBの主力選手で、「短い数シーズンに飛び抜けた好成績を収めたクセに、その後は、『骨の故障』ばかり繰り返すようになって、やたらと『休んでは復帰』を繰り返すようになった、奇妙なキャリアをもつプレーヤー」を、すぐに5人や10人、思いつくことができる。

こうした奇妙な選手たち、実は、若いときに続けていたステロイドの影響で骨がもろくなっているのが原因かもしれないのだ。

オスロ大学がいうように「アナボリック・ステロイドの影響は生涯続く」のなら、プラスの影響ばかりではなく、「マイナスの影響も、生涯続く」可能性があると考えるのが普通だ。
だから、たとえステロイドで一時的に好成績を収めても、あとになって骨や関節に重大な悪影響が現れるかもしれないのだ。そうなると、こんどは、「骨の丈夫さを人工的に保つための薬物を、シーズン中にやたら摂取しまくっている選手」とか「オフシーズンになると骨に関連した手術ばかりしている選手」なんてのが登場するかもしれない。(てか、実際登場していると思うが)


このニュースでますますステロイダーが嫌いになった。

damejima at 03:32

March 29, 2014




要旨のいくつかを下記に挙げておく。詳細については正誤確認中なので、あくまで正式には、MLB発表の文書を自分の目で参照してもらいたい。
http://mlb.mlb.com/pa/pdf/jda.pdf (pdfファイル)

1)PEDによる処罰
1度目/80試合(従来は50試合)の出場停止
2度目/162試合(従来は100試合)の出場停止で、183日間分のサラリーを失う(→下記注参照)
3度目/永久追放

2)PEDで処罰を受けたプレーヤーは、ポストシーズン(あるいはプレーオフ)には出場できない

3)PEDで処罰を受けたプレーヤーは、残りのキャリア全てにおいて、尿検査と血液検査を義務付けられる

4)シーズン中に行われる尿検査の数を、1400から3200に増やす。HGH検出のための血液検査を400から1200に増やす


ブログ注:
MLBにおける「契約サラリーの対象になるレギュラーシーズンの日数」とは、「所属球団のレギュラーシーズンゲーム162試合が開催される日数」という意味での、「162日間」のみを意味するのではなく、2014年シーズンでいえば、MLB全体の全日程期間である「183日間」を意味する。

例えば、アレックス・ロドリゲスはドーピングによって「162試合の出場停止」というる処罰を受けたわけだが、この処罰によって発生する「サラリーの支払い停止対象」は、あくまで「処罰対象である162試合のみのサラリー」を意味していて、「183日間すべてのサラリー」ではない。
そのためヤンキースは、「183日」から、レギュラーシーズン162試合が開催される「162日間」をマイナスした、「残りの21日間分のサラリー、約300万ドル」をロドリゲス側に支払うという、なんともおかしなことが起きた。

こうした不合理なことが起きるのは、いうまでもなく「これまでのPED処罰の方式に不備があったため」だ。


だが、今回のJDA締結によって、「162試合の出場停止」は、同時に、「183日間分のサラリーの支払い差し止め」を意味することになり、意味不明な「21日間のサラリー支払」という悪弊もこれで解消されることになったわけだ。

damejima at 06:37

March 26, 2014

アナボリック・ステロイドのようなドーピング手法が、「筋肉だけを都合よく発達させてくれる魔法」かなにかだと思いこんでいる人もいるかもしれないが、そんなものは幻想に過ぎない。
アレックス・ロドリゲスやバリー・ボンズなどのステロイダーが股関節の手術を繰り返しているのは「偶然ではない」のである。


ステロイドの濫用にはとりかえしのつかない副作用がある
例えば、ドーピングのためのアナボリック・ステロイド多用による副作用のひとつに、「ステロイド性骨壊死症」がある。
多くの場合、大腿骨頭壊死(avascular necrosis of the femoral head)によって股関節の故障が引き起こされ、悪くすると選手生命に重大かつ致命的な影響を及ぼすることになる。(股関節を hip あるいは hip joint ということから、hip avascular necrosisという言い方もある)

ブログ注:
なお、くれぐれも、骨壊死が「スポーツにおけるドーピングのみ」に限って起きる病ではないことに細心の注意を払ってもらいたい。
例えば、「特発性」といわれるケースにおいては (注:これは誤字ではない。「突発性」ではなく「特発性」と書くのが正しい) 突然発症し、しかも原因がほとんどわからないまま、短期間に症状が進んでしまう。
また、膠原病やネフローゼ(かつて寺山修司がかかった病)のような病気の場合、治療目的でステロイドが使われるため、やむをえずステロイドを常用し続けなければならなくなる方がいる。その場合、ステロイドによる治療の副産物として、やむなく骨壊死を発症してしまうことがある、といわれている。
だから、ゆめゆめ、骨頭壊死症のすべてを、アスリートのドーピング不正と安易に結びつけてはならない。また、いうまでもないことだが、スポーツ選手の股関節の故障のすべてが、ステロイドによるドーピングによる悪質行為というわけではない。


ステロイドでなぜ大腿骨の骨頭(femoral head=大腿骨のてっぺんの丸い部分)が虚血壊死(AVN, avascular necrosis)を起こしてしまうのか、というと、「大腿骨頭には、もともと血管そのものが少ない」からだ。

femoral head(大腿骨頭)


ステロイドはコレステロールに似た脂質だ。短期の使用なら体外に排出される機能がはたらくが、長期に常用すると血流障害の原因になる。大腿骨頭はもともと血行の悪い場所だから、ステロイドの常用で血流障害が起きると、とたんに大腿骨頭で「虚血が原因の骨壊死」が起きやすくなる、というわけだ。(高脂血症で骨壊死が起きるのも、まったく同じプロセス)

大腿骨頭壊死
「特発性大腿骨頭壊死症」|日本整形外科学会 症状・病気をしらべる
より拝借

骨壊死自体は痛みをともなわない。だが、壊死した大腿骨頭に体重がかかって潰れ、さらに陥没してしまうと、痛みが出てくる。陥没が拡大すると股関節の動きが悪くなる程度の話では済まなくなっていき、体重を支えきれなくなるほどの激しい痛みをともなうようにもなる。そして最終的には大規模な手術などの対策が必要になってしまう。

例:「骨切り」と呼ばれる手術法
骨壊死によって陥没が起きている部分を含む大腿骨頭を、いちど切ってから、くるりと回転させ、壊死による陥没部分が荷重部分にかからならないよう、位置を変更して付け直すという、なかなか難易度の高い術法。

大腿骨頭壊死の手術例
民医連 | 股関節の骨折と病気/体重を支える大事な関節
より拝借

人工関節変形が進行しすぎている場合、人工骨頭や人工関節などへの置き換えが行われる。

かつて2006年にツール・ド・フランスで総合優勝を果たしたフロイド・ランディスも、大腿骨頭壊死によって人工股関節を入れていた。
ドーピング発覚する前のランディスは、あたかも「プロ根性のあるアスリート」であるかのような扱いを受けていたのだが、後にドーピングが発覚してツール・ド・フランス優勝を剥奪されたため、人工関節の逸話も「単なる自業自得でしょ」というオチになった。



「ステロイドが原因で起こる大腿骨頭壊死の特徴」を調べてみると、「股関節の両方に出やすい」、「壊死部分が広く、急速に進行することも多い」、「多発性骨壊死が多い」などといわれている。
多発性」というのは、骨壊死が大腿骨頭だけでなく、膝や肩など、さまざまな関節で同時多発的に起きる、という意味。骨壊死はもともと血行の悪い場所で起きる症状なわけだから、ステロイドによるドーピングの副作用は、なにも大腿骨頭だけでなく、他の血行の悪い関節部、膝や肩にまで及ぶ可能性がある、というわけだ。

多発性骨壊死の痛みの及ぶ範囲


damejima at 03:23

July 26, 2013

ル・モンド紙によれば、1998年にツール・ド・フランスとジロ・デ・イタリアをダブル優勝したイタリアのサイクリスト、マルコ・パンターニの98年ツール・ド・フランス総合優勝時の検体を、「現在の技術」で調べたところ、EPO(エリスロポエチン)が検出され、彼が「やはり」血液ドーピングをしていたことが明らかになった、という。
今回の再検査では、総合2位のヤン・ウルリッヒ(ドイツ)にもEPOの痕跡があり、3位のボビー・ジュリッチ(ボビー・ジュリック)の検体からも疑わしい値が検出されていて、ランス・アームストロングより以前から既にツール・ド・フランスが「ドーピングまみれ」だったことが、あらためて立証された。

1998年ツール・ド・フランスの表彰式で並ぶ3人のドーピング使用者
Tour de France 1998
左からウルリッヒ、パンターニ、ジュリッチ


あえて「やはり」という表現をとったのには理由がある。

現在に至るまで、かつて自転車界のヒーローだったパンターニをあくまで弁護しようとする人が存在する。彼らは、主に以下のような主張を繰り返してきた。

主張A)パンターニは、ドーピングをやってない。
主張B)当時の自転車界はEPOが禁止されていない時代だった。だからパンターニは法的には無実。

誰が読んでもわかることだが、2つのロジックはまったく両立しない。
片方で「パンターニは、ドーピングなんて下劣なことはやってない」という「優等生的な潔癖さ」を主張しつつ、他方では「当時のルールでは、EPOは禁止されてない。だからパンターニのEPOは、法的には何の問題もない」と、まるで脱法ドラッグを覚えた優等生が自己弁護するかのような「世間ズレした、世渡り感覚」を主張している。

まるで一貫性も、整合性もない。
都合の良いことばかり言ってんじゃねぇよ、としか言いようがない。


彼らの主張を流し読みした人はたぶん、「当時はドーピングを規制するルールがそもそも無かったのか」とか、「当時はEPOを規制するルールがまったく無かったわけだから、EPOはいくらやっても合法だったんだろう」などと誤解する可能性がある。


だが、それはまるで事実に反している。

当時のUCI(国際自転車競技連合)は、血液中に占める血球の容積の割合を示す数値であるヘマトクリット値を規制していた。

なぜ当時のUCIが、EPOそのものではなく、ヘマトクリット値を規制していたかといえば、ひとつには、当時の技術ではEPOそれ自体を正確に検出できなかったからだ。

EPOを使ったドーピングでは、「EPO」という「手段」を使って、血液が持っている機能を人工的に上げて(それがヘマトクリット値の上昇という現象に現れる)、超人的な持久力を得るという「結果」を得ていた。
だから、EPOによるドーピングを摘発する場合、やり方は「2種類」考えられる。
1)ドーピングの「手段」であるEPOの使用そのものを発見し、摘発する規制(ドーピング摘発技術の進化により、現在ではこれが可能になった)

2)ドーピングの「結果」であるヘマトクリット値の異常を発見することで、結果からさかのぼってEPO使用を摘発する規制


ここまで説明すれば誰でもわかると思うが、「1998年当時は、EPOについてのドーピング規制はなかった」という主張は根本的に間違っている。
当時はまだ検体からEPOそのものを検出する技術がまだ開発されていなかったから、やむなくドーピングの「結果」である「ヘマトクリット値の上昇」という別の指標を使うことで、ドーピングを犯している選手を摘発していたという、ただそれだけのことだ。
これはドーピングの巧妙化にともなって、ドーピング物質そのものを検出するのではなく、ドーピングの隠蔽に使われる利尿剤の検出を行って、結果的にドーピングを摘発するのと同じ考え方だ。


現実にマルコ・パンターニは、1999年ジロ・デ・イタリアでヘマトクリット値が当時の規制値をかなり超えた「52」を示して、出場停止処分になっている。(これは自転車界を直接管轄するUCIによる自発的な摘発ではなく、イタリア当局による抜き打ちの検査によって摘発された。UCIは当時も今もドーピング摘発に及び腰であり、そのなまぬるい体質が自転車界を長くドーピングまみれにしてきた原因になってきた)

99年のジロにおけるパンターニの摘発は立派に「当時の技術レベルにおける、まがいもないドーピング摘発」であって、「当時はEPOに関する規制がなかった」という主張も、「パンターニは法的に問題ない」という主張も、どちらも事実とはいえない。当時のEPOに関する規制手法としては精一杯だったといえる「ヘマトクリット値による規制」に、パンターニは違反し、みずからの不正によって失格したのである。

そして今回、明らかになったのは、以前からわかっていた1999年のドーピングではなくて、その前年1998年のツール・ド・フランスでのドーピングであり、しかも、今回はヘマトクリット値の異常ではなく、EPOそのものがハッキリ検出されている。
加えていえば、2006年7月のコリエレ・デッラ・セーラ紙(Corriere della Sera, イタリア)によると、パンターニは、スペインのドーピングスキャンダルで有名なフエンテス医師と関係をもち、2003年にはEPOのみならず、成長ホルモン、アナボリック・ステロイド、更年期障害に関するホルモンを「ダース単位」で買い、多額の代金を支払ったとみられると指摘されている。
The doctor gave 'PTNI' more than 40,000 units of EPO, seven doses of growth hormone, thirty doses of anabolic steroids and four doses of hormones used to treat menopause.
Latest Cycling News for July 4, 2006 www.cyclingnews.com - the first WWW cycling results and news service

これでマルコ・パンターニのドーピングは、濡れ衣でもなければ、疑惑でもなく、れっきとしたドーピングそのものだったことが、あらためて立証された。彼が駆け上がったのは、フランスやイタリアの風光明媚な山岳ではなく、ドーピング物質で固められた、どす黒い山だ。


チームぐるみのドーピング事件であるランス・アームストロング事件では、アームストロングと同じチームの選手からも多くのドーピング処罰者が出ているが、「1998年以降、選手キャリアの大半ほでドーピングしていた」と自白しているオーストラリアのマット・ホワイトは、「1998年当時のイタリアのドーピング状況の酷さ」について、オーストラリアのテレビ番組でこんなことを言っている。
「イタリアに渡ったとき、あまりにもドーピングがおおっぴらだったので、非常に驚いたが、仕事をキープするには、自分もPEDをやらないと話にならない、と思った。イタリアに着いたその日のうちにドーピングをやった。非常識な話ではあるが、それくらい当時のイタリアではドーピング薬物が広く出回っていた」


ちなみに、1998年ツール・ド・フランスで、マルコ・パンターニに続く2位になったドイツのヤン・ウルリッヒは、昨年2012年に、これまでずっと否定し続けてきたドーピングスキャンダルへの関与を認めるコメントを出して謝罪している。
このウルリッヒは、パンターニがダブル・ツールを達成する1998年の前年、97年に、それまでたいした実績がないまま出走したツール・ド・フランスで突如として優勝し、一躍ドイツのヒーローになった人物で、ドイツに爆発的な自転車ブームを引き起こしたドイツのヒーローだった。

だが、2006年スペインでの有名なドーピング・スキャンダル『オペラシオン・プエルト』への関与が疑われ、2006ツール・ド・フランスの出走前日にチームを解雇され、事態は一変した。
ウルリッヒは、当時からずっと一貫して関与を否定し続けてきたが、2012年2月にスポーツ仲裁裁判所によってドーピングが確定し、2005年5月以降の成績は抹消され、ウルリッヒ当人もドーピングの事実を認める謝罪コメントを発表した。

ウルリッヒのオペラシオン・プエルトへの関与で抹消された成績は、「2005年5月以降」のものだが、今回の1998年の検体の検査結果によって、オペラシオン・プエルトよりずっと前から既にウルリッヒがEPOによるドーピングに手を染めていたことがわかったわけだ。
1997年に実績のないウルリッヒが突如としてツール・ド・フランスに優勝したことを、ドーピング以外でどんな説明がつくというのだろう。あらたなドーピングが判明した以上、ウルリッヒの成績抹消は、さらにさかのぼって、1990年代の成績についても抹消されるべきだ。


EPOが検出された18名

マルコ・パンターニ(イタリア)
ヤン・ウルリッヒ(ドイツ)
ローラン・ジャラベール(フランス)
ジャッキー・ドゥラン(フランス)
ローラン・デビアン(フランス)
エリック・ツァベル(ドイツ)
イェンス・ヘップナー(ドイツ)
マリオ・チポッリーニ(イタリア)
エディ・マッツォレーニ(イタリア)
アンドレア・タフィ(イタリア)
ニコラ・ミナーリ(イタリア)
ファビオ・サッキ(イタリア)
アブラハム・オラーノ(スペイン)
マルコス・セラーノ(スペイン)
マヌエル・ベルトラン(スペイン)
イェルン・ブライレヴェンス(オランダ)
ボー・ハンバーガー(デンマーク)
ケヴィン・リヴィングストン(アメリカ)

damejima at 00:59

July 23, 2013

かつてツール・ド・フランスを7連覇したアメリカのランス・アームストロングがようやくドーピングを認め、ツールにおける栄光のすべてを剥奪されたばかりだが、MLBでも、ようやくミルウォーキーのライアン・ブラウンがステロイド使用を認めて謝罪し、今シーズンの残り試合すべての出場停止という処罰を受けた。2013シーズン、この卑怯者の姿を見ることは、もうない。

だが、ライアン・ブラウンが今までどれだけいけしゃあしゃあと潔白を主張し続けてきたかを思いだすと、とても彼の謝罪を受け入れる気になどならないし、そもそも処罰が軽すぎる。
なにせこの選手はドーピングしつつ、リーグMVPを獲得したのだ。そのタイトルを剥奪することを、まず処罰の出発点にするのがスジというものだ。
(2011年MVPで次点だったマット・ケンプも同意見らしい。 Ryan Braun should lose MVP award, Matt Kemp says - ESPN Los Angeles

Ryan


この事件の経緯をちょっとまとめておきたい。

2011年10月ライアン・ブラウンのステロイド検出
2011年10月19日、ミルウォーキー対アリゾナのNLDS(ナ・リーグ地区シリーズ)で提出されたライアン・ブラウンの尿検体から、ステロイドの一種であるテストステロンが検出。50試合の出場停止が仮決定され、この時点で誰もがライアン・ブラウンは「クロ」だと了解した。
だが、ライアン・ブラウン側は辣腕の弁護士を雇い、ドーピングそのものの真偽を論議するのではなく、法的手続き、いわゆるdew processの不備を突くという戦略にでた。
ドーピング検査の検体は、適正な手続きにおいては「採取後、すぐに検査施設に発送」しなければならない。だが、ライアン・ブラウンの検体採取が土曜の夜だったため、係員は「週末で、発送業者はもう営業が終わっているだろうから発送できない」と考え、週が明けに発送するつもりで尿検体を自宅に持ち帰り、自宅の冷蔵庫で約48時間保管した。
ライアン・ブラウン側の弁護士は、「48時間の間に誰かが検体にドーピング薬物を混入してないと、誰が証明できる?」と、論点をずらすことで、テストステロン検出自体は事実だったにもかかわらず、処罰をきりぬけることに成功した。実際には 検体容器は3重に封印されていたため、封を切らずに外からドーピング薬物を混入するのは、ほぼ不可能だった。

このままうやむやになるのかと思われた「ライアン・ブラウン事件」だが、2013年、思わぬところから新展開があった。

マイアミ・ニュータイムズによるバイオジェネシス告発
ローカル紙マイアミ・ニュータイムズが、複数の有力選手がマイアミのクリニック「Biogenesis」からドーピング薬物を提供されていたと実名入りでスクープ報道したが、そこに、ほかならぬライアン・ブラウンの名があった。

この「バイオジェネシス事件」では、メルキー・カブレラの代理人に関係しているJuan Carlos Nunezという人物が、重い処罰をまぬがれるための証拠を捏造する目的で、第三者のウェブサイトを買収して、架空の薬物販売サイトにつくりかえ、あたかもそのサイトから購入した商品に意図せず禁止薬物が紛れ込んでいたように見せかけようとした。だが、ウェブサイト買収そのものがすぐにバレて、この卑劣な証拠捏造は失敗に終わった。

MLB代理人レビンソン兄弟の関与疑惑
今回のスキャンダルに名を連ねる選手の多くが、ブルックリンに事務所を構えるレビンソン兄弟の代理人事務所ACESと代理人契約を結んでいる。またメルキー・カブレラに関して、偽の薬物販売ウェブサイトを立ち上げて証拠捏造を図ろうとした人物も、身元はレビンソン兄弟の関係者だったりする。

かつての「ミッチェル報告」でドーピング薬物の供給者として摘発されたのは、元メッツ職員カーク・ロドムスキーや、元ヤンキース・トレーナーのブライアン・マクナミー(クレメンスやペティットに薬物を渡していた人物)だが、元ステロイダーのポール・ロ・デューカは「自分にロドムスキーを紹介したのはレビンソン兄弟」とメディアに明言しており、MLB機構も、ロドムスキーとレビンソン兄弟の関係を明らかにするために聞き取り調査を行ったりしている。

だが、レビンソン兄弟の関与を示す指摘が数多くあり、レビンソン兄弟が事件全体に関与しているのではという疑惑が常に取り沙汰され続けているにもかかわらず、現時点ではまだ決定的な確証には至っていない。


資料:レビンソン兄弟が代理人をつとめる選手リスト
(太字は、マイアミのクリニックの事件に関与したといわれる選手)

アレン・クレイグ
グラント・バルフォア
ジェイソン・モット
ジオ・ゴンザレス
ジョナサン・パペルボン
ジョニー・ペラルタ 追記:出場停止
ジョン・ジェイソ
ジョン・バック
ショーン・ビクトリーノ
スコット・ローレン
ダスティン・ペドロイア
デビッド・ライト
ナイジェル・モーガン
ネルソン・クルーズ 追記:出場停止
ヒース・ベル
プラシド・ポランコ
ブランドン・インジ
ブランドン・フィリップス
ブランドン・リーグ
ヘクター・ノエシ
ヘスス・モンテーロ 追記:出場停止
ホアキン・ベノワ
マイケル・ピネダ
マイケル・モース
マット・ハリソン
ミゲル・カイロ
メルキー・カブレラ
ラウル・イバニェス
フランシスコ・セルベリもかつてレビンソン兄弟を代理人にしていた 追記:出場停止


司法取引 plea bargaining
ちなみに、こうした大規模なドーピング事件では、事件の処罰が決まっていく初期段階で公式に謝罪した人物に世間の非難は集中するわけだが、だからといって、必ずしもその人物に厳罰が下るとは限らない。
というのは、『24』や『Major Crimes』などのドラマシリーズのファンならよくおわかりのように、アメリカでは司法取引が発達しているからだ。なんでも一説によると、起訴された事件のなんと8割が司法取引で結審しているらしい。
かつて「ミッチェル報告」で、カーク・ラドムスキーが選手リストを提供したのも、ミゲル・テハダが虚偽証言とヒト成長ホルモン摂取を認めたのも、アンディ・ペティットがいつのまにか現役復帰して登板できているのも、元はといえば彼らが司法取引に応じたからだし、バイオジェネシス事件でも、ライアン・ブラウンの処罰期間が来シーズン開幕以降ではなく、2013シーズンで終わるように繰り上げられているのは、ライアン・ブラウンが、往生際の悪いアレックス・ロドリゲスと違って、はやめに司法取引に応じたからだ。
司法取引に応じたライアン・ブラウンが、自分以外の選手のドーピングについて、どの程度まで証言しているかはわからないが、ここまで来るとあとは連鎖的に捕まっていくのが「アメリカらしさ」というものではある。
しかしながら、たとえ司法取引に応じて捜査に協力していようとも、ライアン・ブラウンのやったことは許されない。彼の穢れた2011年のリーグMVPは絶対に剥奪されるべきだと思う。

damejima at 18:06

July 03, 2013

先日、MLBアンパイアとしては若い50歳代のTim Tchidaが引退を決意した理由のひとつが、バッターのファウルチップがアンパイアのマスクを直撃する衝撃が長年積み重なったことによる首などの慢性的な怪我だった、という記事を書いたが、膝の怪我で休養している別のアンパイア、43歳のBrian Rungeにも怪我による引退の噂がある、と書いた。
Damejima's HARDBALL:2013年6月12日、アンパイア寿命を脅かす 「ファウルチップの脅威」。近年のデータ主義野球の浸透による「ピッチャーの平均投球数の増加」と、アンパイアの疲労。

ところが、そのBrian RungeがMLBがアンパイアに対してランダムに行う薬物検査に落ち、その結果トリプルAのアンパイアに降格処分になったと、MLBが発表した。
てっきり膝の怪我が周囲の同情を集めているものとばかり思っていただけに驚いた。(かわりにChris Conroyがメジャーのアンパイアに昇格)
AP NewsBreak: People familiar with situation say MLB umpire Runge let go after drug violation | Fox News

MLB dismisses umpire for drug violation - MLB - SI.com

彼の薬物検査からどんな薬物が発見されたのかは公表されていないが、MLBアンパイアのトリプルA降格がかなり重い処分なのは間違いない。World Umpires Association代表をつとめるJoe Westもコメントを拒否しているほどだ。(シーズン途中の降格は2000年以来らしいが、そのときの降格理由は「怪我」であり、やむをえない理由だから、今回とは意味が違う)

憶測でモノを言ってもはじまらないが、Rungeは、祖父から親子3代にわたってMLBアンパイアをつとめてきた家系で、よほどのことがなければ職を失うとは考えられない。その彼が公表できない理由で、しかもシーズン途中で降格処分になったのだから、ただごとでない理由による降格なのは、おそらく間違いない。


イチロー線引き退場事件

Brian Rungeは、イチローがアウトコースの判定に怒ってベース脇にバットで線を引いて、MLBでは初の退場処分にさせられたときの球審であることは何度も書いてきたが、彼はさらに、2012年4月21日ホワイトソックスのPhillp Humberがシアトル戦で完全試合を達成したゲーム、そして同年6月8日こんどはそのシアトルが複数投手によるノーヒット・ノーラン、combined no-hitterを達成したゲームの、両方の球審でもあった。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年6月8日、複数投手によるノーヒット・ノーラン、combined no-hitter達成!記念すべき試合の決勝点はイチロー!

完全試合とcombined no-hitterの両方で球審だったBrian Runge


damejima at 08:45

February 17, 2013

欧州で販売されているラザニアやハンバーガーなど、「牛肉」と表示されている肉製品の中に、馬肉など別の肉が混入されていた食品偽装事件が、欧州各国で問題になっているようだ。
この事件では、人体に有害といわれる薬品を含む馬肉がイギリスからフランスへの食品流通ルートに乗った可能性があるらしい。詳しいことはよくわからないが、ヨーロッパ全体を巻き込んでいる。


この馬肉混入問題で、ちょっと気になったのが、イギリスで問題の馬肉を処理した処理場で検出されたフェニルブタゾン(phenylbutazone)という薬物の名前だ。
欧州の馬肉混入問題、フランス卸売会社が偽装の疑い | Reuters


フェニルブタゾン(phenylbutazone)は、非ステロイド系の鎮痛性抗炎症薬で、獣医が競走馬などの消炎剤として用いる。
だから、今回のヨーロッパの食品偽装事件で問題になっている馬肉とは、単なる馬ではなく、「競走馬の肉」であり、しかも「ヨーロッパ競馬では禁止されているはずの消炎剤フェニルブタゾンをたっぷり使っていた」という二重の意味がある。さらにいうなら、イギリスでは馬肉を食べる習慣がないらしいが、イギリス国内の業者は禁止薬物を使っていた競走馬を処理して、フランスに食肉として輸出し、加工食品がイギリス国内に還流していた、ことになる。
(ここではあえて詳しく触れないでおくが、動物用の消炎剤、つまり炎症を抑える薬物を故意に人間が使っているケースがあるらしく、ブログ記事などでそのビックリするほどの効き目の強さに驚いている様子が書かれたりしている。だがアナボリック・ステロイドも同じだが、ちょっとは副作用の強烈さを考えろ、といいたくなる)

CNNの記事によると、「フェニルブタゾンには人間への重い副作用や発がん性が指摘されており、食肉への残留は認められていない」とのことで、「アメリカ国内では、人間への使用は禁止されている」らしいが、同時に「イギリスの専門家は、もしこの薬品が残留した馬肉を食べたとしても、副作用が出ることはまずあり得ない」と、のんびりしたことを指摘しているらしい。
CNN.co.jp : 馬肉混入問題、英で3人逮捕 有害薬品残留の恐れも - (2/2)


フェニルブタゾンという薬物と競走馬をめぐって、こういうなんだかよくわからない出来事が、起きるのは、実は初めてではない。というのは、過去のアメリカ競馬において何度か、このフェニルブタゾンという薬物をめぐる問題が起きているからだ。


日本の競馬統括機関であるJRAにおいては、競馬法第56条、第59条の別表(2)に明記され、「フェニルブタゾンは禁止薬物」とハッキリ規定されている。日本では、馬術競技においても、フェニルブタゾン検出による失格・罰金を課した事例もある。
JRAホームページ│JRA関係法令等

公益社団法人 日本馬術連盟 《Japan Equestrian Federation》・日本馬術連盟・日馬連・馬術連盟・公益社団法人 日本馬術連盟


ところが、CNNが「人間におけるフェニルブタゾン使用を禁じている」というアメリカでは、州ごとに一定の制限を設けつつも、全体としては競走馬に対するフェニルブタゾン使用は許容している。
ホースマン、フェニルブタゾンの閾値引き下げに反対(アメリカ)[獣医・診療] - 海外競馬ニュース(2010/09/22)【獣医・診療】 | 公益財団法人 ジャパン・スタッドブック・インターナショナル

ところが話はこれで終わらない。


1968年ケンタッキー・ダービーにおける
ダンサーズ・イメージ失格事件




ダンサーズイメージとピーター・フラー 1968年ケンタッキーダービー
写真左にいて、ダンサーズイメージに左手を置いているのが
オーナーのピーター・フラー氏。


1968年にケンタッキー州チャーチルダウンズ競馬場で行われたケンタッキー・ダービー(=日本でいう「日本ダービー」)で真っ先にゴール板を駆け抜けたのは、マサチューセッツのビジネスマン、Peter Fuller (ピーター・フラー。ファラーと記述しているサイトもある)氏所有のDancer's Image(ダンサーズイメージ)。2着は、2週間後にプリークネス・ステークスを勝つことになるForward Passだった。

愛馬のダービー優勝に満足げなピーター・フラーだが、喜びは長くは続かなかった。尿検査で禁止薬物 phenylbutazone が発見され、ダンサーズイメージは失格となってしまうのだ。
というのも、1968年当時、消炎剤フェニルブタゾンは、全米の競馬場で使用が許容されていたのだが、ケンタッキーダービーが行われるチャーチルダウンズ競馬場で「だけ」は使用禁止だったからだ。

オーナーのピーター・フラーは、それから長い間、ダンサーズイメージのダービー優勝確認を求めて法廷で争い続けたが、1973年に最高裁にもっていく期限が切れてしまう。
1968年のケンタッキー・ダービーから約5年が経過した1973年7月19日、かつて2着だったForward Passが「繰り上がりのダービー優勝馬」として認められ、関係者に優勝トロフィーが贈られるイベントが行われた。


日本では、この話はたいていここで終わってしまう。
だが、アメリカではまだまだ多くの余談がある。


ダンサーズイメージのオーナー、ピーター・フラーは、1923年にボストンで生まれている。父親の名は、Alvan Tufts Fuller(1878-1958)。彼は第50代マサチューセッツ州知事(1924-1929)をつとめた共和党員で、本来アメリカ史で有名なのは、息子ピーターではなくて、父アルヴァンのほうだ。

Alvan T. FullerAlvan T. Fuller

Governor of Massachusetts - Wikipedia, the free encyclopedia

Alvan T. Fuller - Wikipedia, the free encyclopedia

父アルヴァン・フラーも、息子ピーターと同じく、マサチューセッツ州ボストンで生まれている。この「ボストン」という土地柄が、のちのち彼ら親子の運命に大きく影響することになる。

父アルヴァンが知事在任中に起きたのが、アメリカ史で有名な「サッコ・バンゼッティ事件」だ。
2人の英語の苦手なイタリア移民が強盗殺人事件の犯人として逮捕され、裁判で死刑が確定したが、刑確定後、相対性理論で有名なアルバート・アインシュタインなど各界の著名人から助命嘆願書が州知事アルヴァン・フラーに届けられる事態になったのだが、州知事アルヴァンが最終的に特赦を拒んだことで、1927年に2人は電気椅子に送られている。

Sacco and Vanzetti - Wikipedia, the free encyclopedia

サッコ・ヴァンゼッティ事件で、国際的な助命嘆願を棄却した形になった州知事アルヴァンは、立場上、どうしても悪代官役と見られがちではある。だが、この強盗事件の真相が今もハッキリとしてはいない以上、アルヴァン・フラーの善悪を軽々しく判断するべきではないだろう。(例えば、当時サッコ所有の拳銃の弾道検査が後年になって行われ、犯行に使用された銃であることがほぼ確定した、なんてこともあるらしい)

後に共和党から大統領になったフーバーを早くから支持していたアルヴァンは、フーバーの下でフランス大使になる望みを持っていたなどともいわれるが、結局マサチューセッツ州知事を最後に政界から足を洗い、ボストンで自動車ディーラーを営む一方で、絵画収集に励んだ。
アルヴァンの絵画コレクションは、後にワシントンのナショナル・ギャラリー・オブ・アートや、ボストン美術館に寄贈されているが、それら両方の美術館で過去にアルヴァン・フラー・コレクション展が行われているほどだから、アルヴァンの絵画に関する眼力は相当に素晴らしいものだったらしい。

ナショナル・ギャラリーにおける
アルヴァン・フラー寄贈作品リスト(3点)
Alvan T. Fuller - Former Owner

ボストン美術館における
アルヴァン・フラー寄贈作品リスト(9点)
Collections Search | Museum of Fine Arts, Boston
アルヴァン・フラー寄贈のルノアール作品(ボストン美術館)
ボストン美術館のアルヴァン・フラー・コレクションのひとつ、ルノアールのBoating Couple (said to be Aline Charigot and Renoir)


さて話をアルヴァン・フラーの息子、ピーター・フラーと1968年に戻そう。


ピーター・フラーが1968年5月4日のケンタッキー・ダービーでのダンサーズイメージ降着を認めようとせず、長期にわたる裁判に訴えたことは既に書いたが、フラーは「俺は公民権運動に理解を示したことで、ボストンのやつらの感情を害した。だから俺とダンサーズイメージはset upされたんだ」と常々語っていたといわれている。

ニューヨーク・タイムズやボストン・グローブの記事などによれば、ピーター・フラーは、ダンサーズイメージのレースの優勝賞金(ブログ注:NY Timesの記事ではケンタッキー・ダービーの優勝賞金77,415ドル、ボストン・グローブではダービー前のレースの1着賞金62000ドルと書かれており、両者の記述は異なる)を、なんと、ケンタッキーダービーのちょうど1ヶ月前、1968年4月4日にテネシー州メンフィスで暗殺されたマーティン・ルーサー・キング・ジュニア牧師の妻、Coretta Scott Kingに全額寄贈することにしていた、というのだ。
Peter D. Fuller Dies at 89 - Had to Return Derby Purse - NYTimes.com

この場合、set upは、まぁ、「ハメられた」とか「濡れ衣を着せられた」という意味になるわけだが、父親アルヴァン・フラーは冤罪かどうかが争われた1920年代の「サッコ・ヴァンゼッティ事件」に遭遇し、その息子ピーター・フラーは1960年代の「ダンサーズイメージ降着事件」で濡れ衣を主張したわけだから、なんともいえない運命の巡り合わせではある。
しかも、父親アルヴァンは、マサチューセッツ州知事として移民に対する人種差別をあえて容認したと世界から批判され、その40年後、こんどは息子のピーターは、父親とは逆に、人種差別撤廃を目標に掲げた公民権運動に理解を示したために人から恨みを買ってハメられたと、マサチューセッツ最大の都市ボストンの保守ぶりを批判してみせることになったのだから、この親子を翻弄した運命はちょっとマジカルなものがある。まさに、事実は小説より奇なりである。


寺山修司ちなみに、1968年のダンサーズイメージ降着劇の起こったケンタッキー・ダービーの現場には、欧米競馬に詳しかった日本の詩人・寺山修司もいた。寺山は気にいっていたダンサーズイメージに「500ドル」儲けたらしい。当時は今と違って「1ドル=360円」の時代なのだから、寺山の賭け金は日本円にして「18万円」もの大金だったことになる。

寺山は勝ったと思ったダンサーズイメージの降着にもめげず、ダービーの2週間後、5月18日にボルティモアのピムリコ競馬場で行われたアメリカ牡馬クラシック三冠の第2戦、第93回プリークネス・ステークスも現地で観戦している。
プリークネス・ステークスでは、後年ケンタッキー・ダービー繰り上げ優勝を果たしたForward Passが勝ち、ダンサーズイメージは3着に負けたのだが、なんとダンサーズイメージ、こんどは進路妨害で再び降着処分を受けてしまうのだ。
つくづくついてない馬だが、そういう非運の馬にこそ思い入れの深い寺山としては、後に「忘れがたかった馬ベストテン」としてミオソチスなど10頭の馬名を並べた後に、「番外」として不運なダンサーズイメージの名を挙げるのを忘れていない。
のちに高齢になったダンサーズイメージは、種牡馬として日本に輸入されることになった。現在はトルコに血脈が多く残されているらしい。



さて、最後の余談だが、1968年ケンタッキーダービーでダンサーズイメージ降着事件があってからさらに20年たった1988年、フェニルブタゾン(phenylbutazone)という薬物は、またしても競馬で事件を引き起こしている。

ケンタッキーダービーが行われるチャーチルダウンズ競馬場で、1988年10月5日に、名物の国際レース、ブリーダーズカップが行われた。これは7つの異なる条件のG1レースを一日に行う格式高い国際レースなのだが、この日の優勝馬7頭のうち、6頭が、消炎剤フェニルブタゾンを用いていたことが判明。これにヨーロッパの調教師たちが抗議したことから、競馬における消炎剤使用の可否をめぐる激しい議論が巻き起こった。(優勝馬7頭の中には、世界競馬史の名牝と誉れ高い名牝ミエスクも含まれているが、果たしてミエスクが消炎剤を使った側か、そうでないかは確認していない)


ダンサーズイメージは1968年の降着事件で「チャーチルダウンズ競馬場では、消炎剤フェニルブタゾン禁止」というルールに泣いたわけだが、それから20年を経たら、こんどは「チャーチルダウンズ競馬場でも、消炎剤フェニルブタゾンを使用できる」というルールに変わっていた、ということだ。
現在、ヨーロッパ各国とニューヨーク州ではフェニルブタゾンのレース前使用を禁止しているが、ニューヨーク以外の州では、許容量に差があるものの、消炎剤フェニルブタゾンの使用は許されているらしい。
畜産統合検索システム


ダンサーズイメージのオーナー、ピーター・フラーは昨年2012年の春に89歳で逝去されている。おそらくは、1988年のブリーダーズカップでの薬物騒動を含め、アメリカ競馬の変遷を、苦笑いしながら眺めていたに違いない。


 「賭けない男たち、というのは、
  魅力のない男たちである」

  -------寺山修司 『誰か故郷を想わざる』------ 
 


damejima at 12:37

January 15, 2013

今年の殿堂入り投票が「該当者なし」に終わったことについて、さまざまな意見が出されたわけだが、あの名作ドキュメンタリー "Baseball" はじめ、"Civil War" などアメリカ史全体を透視するドキュメンタリーを数多く作ってきたケン・バーンズが、下記のような、歯に衣着せぬ強烈なコメントを言い放ってくれたおかげで、ブログ主などにはもう付け加えることがない(笑) なまぬるい中途半端な意見に貸す耳など、最初からない。

those motherf---ers should suffer for a while.
「あのマザー・フ××カーども、当分苦しむといいぜ、ッたくな。」
Ken Burns on Clemens, Bonds and the Baseball Hall of Fame: 'Those Motherf---ers Should Suffer' - The Hollywood Reporter

最初にこの記事のタイトルを目にしたとき、まさかケン・バーンズほどの有名人が、インタビューでなりゆきで使ったと思われる、いわゆる「フォー・レター・ワード」が、公のメディアにそっくりそのまま記事になるわけもなかろうにと思って記事を読んでみたのだが、伏字にはなってはいるものの、実際そう発言している箇所があって、ちょっとビックリ(笑)
まぁ、ゴネゴネ遠回しで何を言いたいのかハッキリしない意見記事を書いたESPNのジェイソン・スタークより、ずっといい。なにより清々しい。


ただ、ケン・バーンズのような文化人のストレートな意見や、ステロイダーを否定する多くのファンの辛辣だが素直な意見、さらにはボンズへの投票をあえて回避することを決断した大多数の野球記者たちのシンプルな考え方を、必ずしも野球にたずさわる全ての人々が受け入れている、というわけではない。
このことはチラっとくらいは頭に入れておかないと、全体像を見間違えることになる。

なので、あえて自分の立場とは違う意見をわざと訳出してみることにした。題材は、ボルティモア・オリオールズの地元紙、ボルティモア・サンに寄せられたホール・オブ・フェイマー、ジム・パーマーのコメントだ。


最初にことわっておきたい。
ジム・パーマーの意見の主旨は「わかりにくい」。

わかりにくさの原因には、「ささいな原因」と「大きな原因」、
2つある。

「ささいな原因」は、ジム・パーマーの英語の言い回しのわかりにくさにある。話し言葉を書き言葉に写しただけの文章というものは大抵そうなるわけだが、下記に引用した記事では、「ジム・パーマー自身は、何のことを指して言っているのかがわかって語っているが、他人にはわかりにくい箇所」が、いくつもある。それは例えば、必要な指示語が文面上で省略されてしまっていることなどから起きる。
インタビューを掲載したボルチモア・サン側で足りない言葉を書き足して補ってはいるものの、明らかにフォローが足りていない。

次に、「大きな原因」だが、これはジム・パーマーの主張の根本に大きな矛盾が多数あること、そして数々の矛盾が解決されないまま主張が積み重ねられていること、にある。特に、MLBサイド、選手サイドにとって都合のいい主張が、観客からの視点や、アメリカ文化史全体からの視点に欠けたまま、積み重ねられている。
そうした「内輪ウケ」の主張手法は、なにもジム・パーマーだけの問題ではなく、ステロイド時代を通過してきた人たちの一部に非常に頻繁にみられる共通の欠陥でもあり、彼らの主張の脆弱性でもある。


ボンズやクレメンスなどのステロイダーの殿堂入りに関するジム・パーマーの主張の基本点を、思いっきりギュギュッと一気に圧縮していくと、それは次の1点に凝縮させることができる。
1994年のストライキの悪影響で大きく減少した観客動員数を回復させるためには、90年代後期に『ステロイド容認によるホームランの大量生産』が行われたことは、演出として非常に有効だったのであり、それは必要悪というものだ。誰にも否定などできない。

正直、ジム・パーマーは、この要点を細かい話題より先に主張して、まず自分の立場を明らかにしておいて、それから細部を話すべきだと思うわけだが、彼はそれを巧妙に避けて、相互に矛盾する各論を順繰りにしゃべり、各論それぞれが、あたかも矛盾無くつなぎ合わされているかのように見せることに終始しているように見える。
おそらく彼は、自分の主張の根本が今の時代にそぐわないこと、そんな主張を表だってすれば批判が集まること、くらいは理解して話しているのだろう、と想像する。正直、こずるいやり方と言わざるをえない。

ジム・パーマーのような立場から言わせると、「ステロイドでたくさんホームランを打ってくれたバリー・ボンズは、ストの悪影響で危機的状態にあったMLBを救ってくれた、むしろ『功労者』だ」、「ボンズのようにステロイド使用以前に、すでに殿堂入りにふさわしいだけの成績をおさめつつあった選手については、殿堂入りを検討して当然だ」、そして「ステロイド使用によって、はじめて殿堂入りにふさわしい成績をおさめることができたような選手は、最低な選手で、殿堂入りすべきではない」とでもいうことになる。
また、「最も悪いのは、『ストライキ』と、その後の『ステロイド時代容認』という、2つの大きな愚行を行った選手会である。ステロイド時代そのものは、当時としては必要悪だった。非難すべきでない」という話になる。
そしてさらに話は飛躍して、「ステロイダーが高い給料をとってくれたおかげで、結果的にMLBの給料全体が上がった」、「ステロイドをやってない選手だって、給料上昇の恩恵をこうむったのだから、ある種の共犯関係だ。責任がゼロなどと言わせない」とまでジム・パーマーは主張している。
このロジックをさらに進めれば、ジム・パーマーの主張は言外に「観客だって、あのステロイド時代を楽しんでたじゃないか。アンタたちだって共犯だ。責任が無いなんて言わせない」と言っているのと同じことになる。


いやはや。
これではステロイドの是非という問題をストライキの是非にすり替えただけだ。矛盾だらけの主張をするのも、たいがいにしてほしい。

多数の細かい点を指摘し続けてもいいが、そういう些細な指摘の前に、例えばこんなことを考えてもらいたい。
ジム・パーマーは、1994年のストライキを主導し、ステロイド時代を容認した選手会長Donald Fehrと選手会を常々批判したいと思ってきたと言っているわけだが、当のDonald Fehrならたぶん、こんな風に主張して、自分のやった観客無視のストライキと、ステロイド時代容認を、自己弁護することだろう。
1994年のやむをえないストライキの影響で大きく減少した観客動員数を回復させるためには、90年代後期に『ステロイドによるホームランの大量生産』を容認することは、非常に有効な演出だったのであり、それは必要悪というものだ。誰にも否定などできない。


わかるだろうか。
ジム・パーマーの主張したがっている選手会批判と、シーズン中の長期ストライキなどというファン無視の愚行をやらかしてファンから総スカンをくらったDonald Fehr、両者の思考スタイルの間には、実は、ほんのわずかな差しかないのである。
と、いうより、「観客の視点、観客からみたモラル」「アメリカ社会からの視点やモラル」、さらには広く「アメリカ史全体からの視点やモラル」が欠けている、という意味では、両者の主張は同根から生じたものなのだ。
ストライキやステロイドがファン、MLB史、アメリカ史に与えた失望や落胆の大きさを考えるならステロイド時代など絶対に容認すべきでない、というシンプルな発想は、両者ともに無い。


ジム・パーマーの主張のベースをチラっと読むと、あたかも首尾一貫しているように感じる「ちょっと考えるチカラの弱い人」もいるかもしれないが(笑)、誰がどうみてもツッコミどころ満載の話である。

ジム・パーマーの主張には、90年代のストライキがそうだったのと同じくらい、「ルール」という感覚が欠けている。
また、悪いことに、「野球殿堂が誰のために存在しているのか」という視点が忘れ去られている。野球殿堂は、別に「野球という共同組合」の功労者を内輪で顕彰するために存在しているような、せせこましい存在ではない。
「人民の、人民による、人民のための政治」と言ったのはリンカーンだが、アメリカ史の一部になるということの意味の大変さと責任の重さは、"Civil War" " Jazz" "Baseball" など、一連の作品でケン・バーンズが描いてみせたとおり、ステロイダーや機構に関わった者たちの安っぽい言い訳が通用するほど簡単なことではないはずだ。

「観客の期待を大きく裏切ったストライキは間違っているが、ステロイド時代は必要悪として許されるべきだ」とか、「ボンズはヒーローだからオッケーだが、サミー・ソーサはダメ」とか、細かい矛盾を突っ込んでいけば、本当にキリがないほど突っ込める。(ちなみにサミー・ソーサは、スト前年の1993年にチーム史上初めて30-30を達成している)
さらに言うなら、「殿堂入りは聖域に入ることを意味しない」というなら、なぜ「サミー・ソーサはダメ」なのか。ジム・パーマーはマーク・マグワイアには言及してないが、もし人から聞かれれば、「ボンズはOKだがマクガイアはダメ」とでも言うつもりか。「フレッド・マグリフが殿堂入りできないのは悲劇」と冷めた口調で語る割に、ステロイド時代のどまんなかでパーマーと同じボルチモアでプレーしていたラファエル・パルメイロについての評価がやたらと甘いのは、なぜか。「ステロイド無しに3000本安打を打ったクレイグ・ビジオが初年度に殿堂入りを果たせなかった」のは悲劇ではないのか。「ストの影響による観客減少をリカバリーするためのステロイド時代は容認して構わない」のなら、ストの影響など皆無の時代にステロイドを使用したアレックス・ロドリゲスやメルキー・カブレラ、あるいはステロイド疑惑が報じられたライアン・ブラウンなど、2000年代以降のステロイダーは全員が殿堂入りにふさわしくないのか。ボンズはOKで、Aロッドはダメだとしたら、その理由は何なのか。それともボンズの殿堂入りを容認させるためなら、アレックス・ロドリゲスでも誰でも殿堂入りさせるべきだとでも主張するのか。
そもそもステロイドをやる前に何本のホームランを打ち、ステロイドをやった後に何本のホームランを打っていれば、殿堂入りにふさわしいというのか。ステロイドをやってなかった選手にまで責任を押し付け、この選手はオッケー、この選手はダメとか、上から目線でダメ出しするジム・パーマーこそ、「聖域からモノを言っている」のではないのか。
ボンズがナイスガイ? だから何。知らんがな。


まぁ、細かいツッコミはともかく、
ジム・パーマーの主張には「基準」が無さすぎる。
「基準を含まない主張」なんてものは、いくら何を議論しても、議論の結果が「ルール」に成長することはありえない。

いま必要とされているのは、
こういうルールに欠けた議論ではない。
例えば、ランス・アームストロングは、ありとあらゆるドーピング手法を使って名誉を盗み続け、ファンには失望と落胆だけを与えたドーピング犯罪者であって、自転車業界の救世主でもなんでもない。

Jim Palmer says HOF results are 'a shot across the bow of the whole Steroid Era' - baltimoresun.com


On no one getting in, including players not suspected of steroid use:
ステロイドの使用を疑われていない選手も含め、誰も殿堂入りを果たせなかったことについて
“Obviously there are a lot of voters that didn’t vote or didn’t vote for them. … Just because you have a bunch of guys that are suspected of performance enhancing drugs doesn’t mean you vote for guys that don’t belong in the Hall of Fame.”
「投票そのものを避けた投票者、ステロイダーでない選手にも投票しなかった投票者がいるのは明らかではあるね・・・。ただそれはね、単に、PED使用が疑われる選手たちには票が集まらない、でも、だからといって、殿堂入りにふさわしくない選手に票が集まるかというと、そういうことは起こらない。ただそれだけのことだよ。」
ブログ注)Performance Enhancing Drug=運動能力強化薬物。「PED」と略される。


On judging players beyond their statistics:
成績以外による選手評価に関して
“I love it -- character, sportsmanship and integrity. Do you think any of those guys when they rounded the bases looking like Popeye thought about sportsmanship, because they just made the pitcher feel bad? I don’t think so. So I don’t know if that has to be the criteria.”
「僕は好きだね。性格。スポーツマンシップ。品位とか。(腕まくりして筋肉をみせつけるポーズがトレードマークの)ポパイみたいに(ホームランを打った後で、これみよがしに)グラウンドを一周して、ピッチャーを不愉快な気分にさせる選手が、スポーツマンシップに溢れてると思うかい? 僕は思わない。成績以外の評価が殿堂入りの基準となるべきかどうか、そこまではわからないけどね。」

On Bonds’ and Clemens’ chances in the future:
ボンズとクレメンスの将来の殿堂入りの可能性について
“I still think at some point, unless you are going to just talk about the morality and the fact that you had the choice between right and wrong and the way you chose if you’re Clemens or Bonds, ultimately those guys are Hall of Famers before starting whatever they did.”
「善か悪か、白黒ハッキリさせるとか、クレメンスとボンズのどちらかだけを選ぶとか、そういう目的だけでモラルや事実関係を語りたいならともかく、もしそうでないなら、考慮の余地はある、と思う。彼らは、何かやらかす前には(実績という面で)殿堂入りにふさわしい選手たちだった。」

On the money and culture of the Steroid Era:
「ステロイド時代」の金と文化について
“Guys have always been trying to get an edge. But I think the point I am trying to make is that the union, they encouraged this because it was all about revenue. I’m listening to all the psychobabble today about let’s not blame the players that didn’t use them and all that. The question to me all the time, [is] if you really wanted to do the right thing and not just make the most money, why then, if it’s only 10 percent or 15 percent [of players that are users] why didn’t the other 75 or 85 percent of the players that weren’t doing it, why didn’t they say something? And the reason is that they liked the system. These guys hit the home runs, they get the big contracts, you have arbitration, your salary will be compared to this. This culture of baseball, of more revenue, more home runs, more people in the stands, blah, blah, blah, nobody was putting the ABS brakes on this. You have the union supporting it. They knew what was going on.”
「選手は常に、人より優位な立場にいたいと考えるものだ。
僕がずっと主張したいと思ってきたことは、それが収益に関係するからという理由で、『選手会がステロイド時代を奨励してた』ということさ。PEDをやってない選手についてはもちろん、あらゆる選手について、選手を非難するのは止めようっていう意味のあらゆる種類のたわごとを聞かされ続けてきた。
つねづね疑問に思ってきたことがある。もし金を稼ぐだけじゃなく、より正しいことをしたい、と考えるのなら、なぜPEDをやってる選手が10%から15%の選手に過ぎないとして、残りのPEDをやっていない75%か85%の選手たちはどうしてそのことに対して何も言わなかったのか?
選手たちは結局このシステムが気に入っていた、というのがその理由さ。PEDをやってた選手は、ホームランを打ち、大きな契約を手にする、調停においては、そういったPEDをやってる選手たちとサラリーが比較される。それが野球の文化だ。より多くの収入、より多くのホームラン、そしてより多くのスタンドの観客、などなど。誰もそうした関係性にブレーキをかけてこなかったし、選手会はそれを支持してきた。彼らは何が起こっていたのかを知っていた。」

On the writers’ statement Wednesday:
水曜の記者たちの声明について。
“The guys that belong in the end are going to get in it. But to me it was a rather loud statement to the people that played in the Steroid Era, especially if you had enhancements or people felt that you did. ‘You know what? We’re not real happy with this. We’re not putting up with this, at least not for now.’ … This is a shot across the bow of the whole Steroid Era, when it was all about revenue, when it was all about making money. I’m not, just, because I am in the Hall of Fame, saying that being elected is the Holy Grail, but some writers feel that way.”
「末端に属する人というものは、より言葉を差し挟みたいと考えるものだが、私には、あれ(=今回の投票結果)は、ステロイド時代にプレーしていた選手、とりわけPEDをやっていた選手と、それを知っていた人たちに対する、かなり声高なメッセージのように聞こえた。
『いいか。我々は『ステロイド時代』に満足してたわけじゃないし、隠し通そうとなどと思ってもいなかった。少なくとも今は賛成などしない』 .これは、(リーグやチームの)収益と(選手が)金を稼ぐことがすべてだった「ステロイド時代」全体に停止を命じる威嚇射撃なんだろうね。私は、自分が殿堂入りしているからといって、殿堂入りが(あらゆる罪が許されない)聖域に足を踏み入れたことを意味するとは思ってないが、記者にはそう考えてる人がいるようだ。」

On whether he thinks Bonds and Clemens are worthy (and Sosa):
ボンズやクレメンス(ソーサ)が殿堂入りに値するかどうかについて
“I’m not happy guys didn’t get in. I would have had no problem because of the resume of Clemens and Bonds from a strict standpoint of what they did on the field before they [were suspected PED users]. I wouldn’t have had a problem at all. But Sammy Sosa?”
「彼らが殿堂入りしなかったら悲しいことだ。(PEDをやってたかどうかを裁定する以前に)なによりも、フィールドの上で何を達成したかということだけに限って評価する立場から彼らを眺めたなら、彼らの殿堂入りには何の問題もない。でも、サミー・ソーサはどうだろうね?」

On how the Steroid Era affected others:
「ステロイド時代」が与えた影響について
“The problem is for a guy like Fred McGriff, who never had any kind of accusations and had almost 500 home runs, or Dale Murphy, their numbers pale [in comparison] and people forget how good they were. That’s the tragedy. But again it’s the tragedy of a culture that [union chief] Donald Fehr perpetuated from 1991 on. It wasn’t like people didn’t know what was going on. It wasn’t like people didn’t encourage it. They did. Now some people will step out and say it wasn’t overtly done. But there are a lot of guys that I talked to that played in that era that say that wasn’t the case. Maybe this is just a statement of what really went on. You really can’t change it. But you can judge it and I think the Baseball Writers' [Association] of America have done that.”
「問題は、フレッド・マグリフ(通算ホームラン数493本)みたいな選手たちだね。マグリフはあらゆる種類の非難を受けたことがないし、500本近いホームランを打ってもいる。なのに、彼らの成績はいまや色褪せて、彼らがどのくらい素晴らしい選手だったかも忘れられている。悲しむべきことさ。デール・マーフィー(同398本)にしても同じだ。
だけど、それは(MLB選手会会長の)Donald Fehrが1991年以降ひきずってきた文化的な悲劇の再来なんだ。何が起こっていたか知らなかったとか、奨励したりしなかったとか、そういう問題じゃない。選手会は知ってたし、奨励もしてた。誰かが一歩踏み出して、公然と『スレロイド時代はいまだに終わってなんかいない』と言いだす人がいるかもしれない。だけど(他方では)、ステロイド時代にプレーしてた選手で、私が話したことのある人たちには、『事実無根だ』と話す人も大勢いるんだ。ステロイド時代に起きていたことについての証言は、ほんのわずかしかない。そして、それを曲げることは誰にもできない。だが(外部から)判断を下すことはできるし、僕の考えでは、全米野球記者協会協会は既にその作業を済ませていると思う。」
ブログ注)Donald Fehr:1986年から2009年までMLB選手会会長。2010年からNHLのエグゼクティブ・ディレクター。2007年にミッチェル報告書が出された当時、選手会会長だった。また1994年以降のMLBのストを主導した。


On Rafael Palmeiro, who lost 22 votes this year:
今年22票を失ったラファエル・パルメイロについて
“He’s a victim of circumstance. He went to the congressional hearing, pointed his finger and said he never did it. And then he tested positive. Now, you know what, maybe it was a tainted [B-12 injection], who knows?”
「彼は時代環境の犠牲者だ。彼は公聴会に出席し、他人を名指しで非難する一方で、PED使用を否定した。(そういう切迫した立場で、否定せざるをえない状況を経験させられて)それから陽性反応(という事実)が出たわけだ。たぶんそれは(B12ビタミンの注射かなにか)穢れた手法だったかもしれないけど、どうなんだろうね。」

On Bonds and other ‘cheaters’:
ボンズとその他のキャラクターについて
“Bonds isn’t going to get any more votes because he was a nice guy. Because he was a jerk. But he was a hell of a player. I’m not sure that should keep you out of the Hal of Fame. If it did, there’d be a lot of guys out. I pitched against [Hall of Fame spitballer] Gaylord Perry who left fingerprints on the ball. And the umpires just laughed. So everybody’s kind of worked the system to some degree, but I think this is more of a statement of what the writers think of the whole culture.”
「ボンズはナイスガイだし、あれ以上の票を得ようとまではしてない。彼は、馬鹿なことをしたにせよ、素晴らしいプレーヤーでもあった。彼をこれからも殿堂入りから遠ざけておくべきかどうかは、わからない。もしそういうことになったら、たくさんの選手がボンズと同じ目にあうんじゃないかな。僕は、指紋がボールに残るほどの(明白な)不正投球をしていた(有名なスピットボーラーなのに殿堂入りしている)ゲイロード・ペリーと対戦した経験があるけど、アンパイアはただ笑ってただけだったさ。(そのアンパイアたちと同じように)程度の差はあれ、誰もが一定のシステムのもとで働く。(今回の殿堂入り投票の結果は)記者たちが野球文化全体に配慮した結果のメッセージというほかない。」


On what he learned from Cal Ripken Sr.:
カル・リプケン・シニアから学んだこと
“He always said, ‘there are no such things as shortcuts.’ Well, the shortcuts caught up with guys. The tragic thing to me is that if you didn’t do it, but you played in that era, there’s somewhat of an indictment. And that goes back to what the players’ union wanted. They wanted this. So there you go.”
「彼はよく『簡単に言えるようなことなんて無いもんだ』って言ってたもんさ。それは誰についても言えることだよ。悲しむべきだと思うのは、たとえPEDに手を染めていなかったとしても、ステロイド時代にプレーしていたからといって、なにがしか非難されかねない、ってことだ。この問題は結局、『(90年代当時)選手会が何を望んだか』という点に遡ることになる。選手会が、ああいう時代を望んだのさ。だからそこに行きつくんだ。」


damejima at 09:13

December 11, 2011

かつて「城島問題」のときにも発言を取り上げたことのあるFOXのケン・ローゼンタールは、情報集めの非常に得意なクチの悪いオッチャンだが、iPhoneに熱中してTwitterしまくるくらい茶目っ気さもある。もともと冷静な人物ではあり、感情むき出しに熱くなるタイプでもないのだが、ライアン・ブラウン事件についてはよほど「心が動かされた」というか「トサカにきた」らしく、そのローゼンタールが珍しく、やけに感情的になっている。
彼の記事で、ラファエル・パルメイロなどのようなステロイダーがいまMLB関係者の間でどういう厳しい評価のもとにあるのか、またステロイド問題についてどれくらいアメリカのメディアが絶望視しているかなど、いろいろMLBのステロイド事情の現状がわかる部分があるので、資料的に訳出しておく。


Even if NL MVP Ryan Braun is clean of PEDs, MLB never will be - MLB News | FOX Sports on MSN

A bombshell revelation about a major leaguer testing positive for performance-enhancing drugs. The player disputing the result through arbitration. A spokesperson for the player saying, “There was absolutely no intentional violation of the (drug-testing) program.”
MLBのPED(=performance-enhancing drug 筋力増強剤やヒト成長ホルモンなど競技能力向上に直接効果のあるドーピング薬物)テストの陽性で、ビックリするような事件が発覚した。プレーヤー側は代理人を通じて検査結果に異議をとなえている。選手のスポークスマンはこう言う。「故意のドーピング検査違反は、絶対にしてない」

As if an accidental violation is OK?
じゃあなにか。「意図的でない違反」ならオーケーだ、とでも言いたいのか?

(一部省略)

No, the real issue here is the same as before.
問題は今も昔も、何も変わりがない。

The sport is not clean. It never will be clean.
スポーツはクリーンじゃない。けしてクリーンにならない。

And while baseball continues to make tremendous advances in deterrence, adding HGH testing in its new collective-bargaining agreement, no one should ever be under the illusion that everything is fine and dandy.
野球界は、HGH(ヒト成長ホルモン)のテストを労使協約に盛り込むなど、ドーピング抑止のための大変な前進を見せ続けているにしても、これでなにもかもが正常になる、きちんとなるなどと、幻想を抱くべきじゃない。

I was angry when I heard the news about Braun on Saturday night. I’m sure a lot of fans were angry, too. On the day that Albert Pujols received a hero’s welcome in Anaheim, in an autumn when baseball is basking in unprecedented labor peace, steroid news again hijacked the sport.
僕は土曜の夜、ブラウンのニュースを聞いて、アタマにきた。たぶん、たくさんのファンもアタマにきてると確信している。(エンゼルス移籍が決まった)アルバート・プーホールズがヒーローとしてアナハイムに迎えられた、まさにその日だというのに、野球というスポーツが、かつてない安息を享受できた秋の日だというのに、ステロイドのニュースがスポーツをハイジャックしたのだ。(アタマにこないわけがない)

We all should just get used to it: The issue is never going away. At minimum, steroid talk will surface every year during the Hall of Fame election. And rest assured, major stars will continue to test positive on occasion, renewing our doubts and reminding all of us that you can’t always trust what you see.
我々はもうみんな、慣れてしまうべきだけなんだ。問題は無くなりはしない。ステロイド問題の議論は、すくなくともMLBの野球殿堂入りの選挙期間中くらいは浮上するかもしれないが、それ以外の時期には鎮静化してしまう。メジャーのスターたちは折にふれて検査をし、時々陽性のテスト結果が出ては、見る者すべてに、自分の見たモノすべてを必ずしも信頼してはいけないんだという猜疑心を思い出させ続ける。ただ、それだけなのだ。

(中略)

The problem for Braun, the problem for the sport, is that the stain will be difficult to erase, c.
ブラウンの問題は、スポーツ全体の問題でもある。消去不可能とまでは言えないにしても、消し去るのが非常に難しい「汚れ」みたいなものだ。

Rafael Palmeiro to this day insists his positive test in 2005 was the result of a tainted vitamin injection. Few want to hear it; Palmeiro’s reputation is in ruins. And really, no matter what Braun did ― or didn’t ― do, it is fair to ask, right now, how he even put himself in this position.
ラファエル・パルメイロは今日に至るまで、「2005年の陽性反応は汚染されたビタミン摂取の結果だった」と主張している。彼の話(=パルメイロの言い訳)に耳を傾ける人など、ほとんどいない。パルメイロの名声は崩壊している。実際にブラウンが何かしたにせよ、何もしてないにせよ、フェアなやりかたは、今すぐ彼に「君さ、この件について、どういう立場をとるんだ?」と、尋ねてみることだ。

As Selig has noted, Braun is part of a generation of players that began getting tested in the minors. Those players are familiar with the process, understand that they must consult with team trainers and doctors if they have any question about what they are putting into their bodies.
既に(MLBコミッショナーの)バド・セリグがコメントしているように、ブラウンは、マイナーでドーピングテストが始まった若い世代に属しているから、ドーピング検査のプロセスには詳しい。自分が摂取しているものについて何か疑問でもあれば、チームのトレーナーとか医師に相談すべき立場にあることを理解している。

It’s pretty simple; if you steer clear of PEDs and any substances that might be confused with PEDs, you can’t test positive.
話は非常に単純なのだ。PED、およびPEDと混同されるかもしれないありとあらゆる物質を避けてさえいれば、陽性のテスト結果が出ることなんて、ありえないんだ。

Drug-testing experts frequently say that only idiots test positive. And while Braun might present a perfectly valid explanation for his result, not everyone will be swayed. People are cynical now, even in the supposed “post-steroid” era.
ドーピング検査の専門家がよく言うのは、愚か者だけが陽性反応を示す、ということ。ブラウンは自分の検査結果について、何か完璧で適切な説明をすることができるかもしれないが、全ての人々の心を、その説明で動かせるとは限らない。たとえ今が「ポスト・ステロイド時代」であろうと、(かつてボンズの時代に嫌というほどステロイド事件を経験した)人々の心はいまだに懐疑的だからだ。

That era isn’t real, was never real and is never going to be real. I’m sorry, but nothing should surprise us anymore, not if we’re realistic in what we expect out of players, not if we’ve been paying attention all these years.
ポスト・ステロイド時代は、現在のところ実現していないし、過去においても実現してなかったし、将来も実現しないだろう。申し訳ない言い方だが、たとえ選手たちに何かリアリスティックに期待しているとしても、数年にもわたって彼らに関心を向け続けてきたとしても、もう私たちは何があろうと、もう驚きゃしないのだ。

damejima at 17:21
今年からブログ左上のデザインを変え、Play Cleanというアメリカで行われているスポーツキャンペーンに関するリンクを張るようにしている。「プレイ・クリーン」とは、年端の行かない高校生レベルにもステロイドが蔓延しているアメリカにおける反ドーピング・キャンペーンである。

というのも、明らかに、去年までアベレージヒッターだった選手が突然ホームランバッターになったりする最近のMLBは「変わった」と感じているからである。
「変わった」と思っているからこそ、ドーピングをした選手を批判したり無視するとかいうような直接的批判だけではなくて、オールスター投票の歪み、メープル・バットの問題、来年からMLBで始まるヒト成長ホルモン検出のための血液検査の話題、ホームランを必要以上に称揚するスタッツの問題点の指摘など、さまざまな角度から、「MLBのプレーの質を、2000年代の『イチロー時代』以前に戻そうとするかのような動きに関する指摘や牽制」、あるいは「必要以上にホームランを強調しよう、称揚しようとする考え方やスタッツに対する批判」を展開しているのである。
Do you want to make the shameful "Steroid Home Run Age" recurring? というメッセージはこのブログで作ったもので、「あの恥ずべき『ステロイド・ホームラン時代』に戻りたいのか?」という意味だ。

ライアン・ブラウン(ミルウォーキー・ブリュワーズ)ミルウォーキー・ブリュワーズはかつて現シアトルGMのズレンシックがスカウト部長、GM特別補佐として在籍していたチームで、ライアン・ブラウンもズレンシックの発掘した選手のひとり。もともとア・リーグ所属だったが、1998年のエクスパンジョンでナ・リーグに編入。2011年に編入以降初となる地区優勝を決めたが、もしドーピングが事実なら、ひさびさの優勝に泥が塗られたことになる。

今年のナ・リーグMVPを獲得したミルウォーキー・ブリュワーズのライアン・ブラウンPED(performance-enhancing drug)に関する陽性というニュースが飛び込んできた。この件に関する真偽はまだわからない。



USA Today
Ryan Braun tests positive for PED, says 'It's B.S.'

ESPN
Ryan Braun of Milwaukee Brewers tests positive for performance-enhancing drug - ESPN


PED、というとわかりにくい。要するに、「バリー・ボンズと同じような意味の、競技能力を向上させるドーピングをやった」ということだ。

ライアン・ブラウン本人は、いまのところこの件について、アメリカの全国紙USA TODAYのインタビューにこう答えている
"It's B.S."

B.S.というのは、"Bull S**t"(犬の****)という言葉。(後半の4文字の単語は、いわゆる4レターワードで、公の場所で子供を含めた他人の目に触れる場所で発言すべきことではない)。つまりライアン・ブラウンは、たいていのドーピング事件でそうであるように、今のところ「俺がドーピング? ありえねぇよ、くそったれが!」と言っているわけだ。

PED(performance-enhancing drug)というのは、あらゆるドーピングを指す広い意味の用語ではない。ほとんどの場合、狭義の筋肉増強剤や、ヒト成長ホルモンなどによるドーピングを指す。つまり、選手、アスリートの競技能力を、直接増強させる効果のある薬物を使って、競技結果をダイレクトに向上させる悪質なドーピンを指すのである。
Performance-enhancing drugs - Wikipedia, the free encyclopedia)
Although the phrase performance-enhancing drugs is typically used in reference to anabolic steroids or their precursors, world anti-doping organizations apply the term broadly.


このライアン・ブラウンの件に関する真偽が、クロであれ、シロであれ、このブログでのMLBのドーピングにまつわる批判は、これからもあらゆる面で続けていくつもりだ。

damejima at 11:34
ハワイ移民150周年
No Ichiro, No watch.

Play Clean
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  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。



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