NYY ブライアン・キャッシュマン ジョー・ジラルディ

2018年1月17日、自分の判断ミスでフェンス激突して怪我したにもかかわらず、シカゴ・ホワイトソックスを訴えた元NYYダスティン・ファウラーの「子供じみた訴訟」。
2015年2月25日、いまごろになってようやく「ジョー・ジラルディのイチローの扱いの酷さ」に言及したニューヨーク・ポスト紙。
2015年1月29日、2014年版「イチローのバッティングを常に冷やし続けたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶり」。
2014年11月25日、ナ・リーグ有力チームの「落穂ひろい」でチーム再建をはかろうとしてきたア・リーグのこの5年間の惨状と、「田中貯金」を食いつぶしただけの2014ヤンキース。
2013年10月17日、「左右病」と「プラトーン」の決定的な違い。「左右病監督」が結局はオーダー固定に向かうのはなぜか。
2013年9月18日、ニューヨーク・ポストのケン・ダビドフが書いた「2012年冬のヤンキースの失敗」についての浅はかな記事を紹介しつつ、ジラルディの選手起用のまずさがチームバッティングを「冷やした」証拠となるデータを味わう。
2013年9月13日、黒田という投手を評価しない理由。そして、なぜジラルディは満塁ホームランを打たれるような場面を自ら演出してしまうのか、について。
2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。
2013年8月8日、自分の属した時代に別れを告げる辛さ。Greedy Pinstripesの素晴らしい記事に拍手を贈る。
2013年8月5日、「生え抜きの成長、黄金期、ステロイド、そして衰退」 正しいヤンキース30年史。
2013年7月8日、カンザスシティ初戦でホームランが無いと「1996年以来の5試合連続HRなし」というけれど、96年ヤンキースはそもそもリーグで下から3番目のホームラン数でワールドシリーズ優勝し、黄金時代を築いたチーム。
2013年5月21日、 ジラルディの「忍耐」と、ショーウォルターの「先読み」が作り出したビューティフル・ゲーム。野球の面白さを堪能させてくれた両軍監督の選手起用の応酬。
2012年8月10日、ジョー・ジラルディが語ったイチローの "heat"。興奮と圧迫感。高揚感とプレッシャー、そして名誉と批判。なにもかも覚悟の上の大舞台の「熱」。
2012年8月9日、三塁塁審Tim Welkeのレフト線判定の優柔不断さに抗議して退場になったジョー・ジラルディの求める「ファイト」。
2011年10月6日、フィスター5回1失点の好投で、ALDS Game 5の勝ち投手に。デトロイトがヤンキースを破って、テキサスとのALCS進出!

January 18, 2018

元ヤンキースのダスティン・ファウラーがホワイトソックスを訴えて、「将来得るはずだった収入をよこせ」ってサ。ほんと、ガキには呆れてモノが言えない。



まぁ、何はともあれ、まずは動画を見て、「どういう状況で起きた怪我か」を確認してもらいたい。2017年6月29日ギャランティード・レート・フィールド(=かつてのUSセルラー・フィールド)のCWS vs NYY戦、1回裏、バッターはメルキー・カブレラ。ファウラーは6番ライトで、このゲームがMLBデビューだった。
New York Yankees at Chicago White Sox Box Score, June 29, 2017 | Baseball-Reference.com
次に、ファウラーが激突した「」を静止画で見てもらおう。

Dustin Fowler


ブログ主は、この怪我の場面をリアルタイムでは見てないし、このニュースに関する当時の記憶もない。なので、動画などを見て、あらためて事実を確認した。

動画を見る前は、こう思った。
「選手が、球場を管理する球団を相手にわざわざ訴訟を起こした」からには、よほどのことだろう。たぶん、怪我した場所に、「突出した危険な構造物」とか、「不自然な出っ張り」とかが、改善されないまま長期間放置されていて、ファウラーはボールパークの構造上の不備が原因で怪我したのではないか。


ところが、だ。
そうではないのである。


動画をみてもらえばわかるが、このライナー性のファウルフライにファウラーは「追いついてない」。

追いつけない理由には、2つの可能性がある。

ひとつは、「ファウラーの走力が不足しているか、もともと捕れない打球であるため、たとえ彼が全速で走っても、アウトにはできない」。2つめには、「躊躇しながら走っていたために対応が遅れた」。

いずれの場合にしても、ブログ主は、こうした「スタンドに入ってしまうかもしれないファウルフライ」で、「ライトを守る外野手が、フェンス寸前で膝を曲げて止まろうとした」のを見た記憶が、あまりない。

というのも、こういう場合、普通なら、フェンスに体を預けて、フェンス内に上手に倒れこむ(ときには観客の身体も衝撃の吸収や分散に使う)ことで、大事故を防ぐのが普通だろうからだ。


ファウラーの場合、そもそも「ホームでない球場なので、フェンスへの距離感がつかめていない」。

距離感がつかめないまま、ファウラーは、フェンス直前になって、最後の最後に、停止しようとして思わず膝を曲げており、そのために膝からフェンスに突っ込んでしまっている。
事故の直接の原因は、この「膝からフェンスに突っ込んだこと」にある。そして、そのさらに原因は、もとをただせば彼の「経験不足」に理由がある、としかいいようがない。


ファウラーはマイナーでの成績を参照してもらえばわかるが、本職は「センター」であって、ライトではない。(他に、レフトとライトもやっているが、レフトの守備機会のほうが多い)

その「マイナーですらロクにライトを守ったことがないルーキー外野手」を、「MLBデビュー戦」で、おまけに「ホームグラウンドではない、ビジターのボールパークでいきなり使った」のだから、そりゃ怪我もする。

監督は、もちろん、昨シーズンでヤンキースをクビになった、あの、ジョー・ジラルディである。

100億歩ゆずったとしても、ダスティン・ファウラーは「訴える相手」を間違っている。
もしジラルディが、彼のデビューをヤンキースタジアムでセンターとして起用していたら、結果はまったく違っていたはずだ。ファウラーがもし、どうしても誰かを訴えたいのなら、「新人をデビューさせるための場所とポジション、両方を同時に間違えた配慮の足りないアホな監督ジョー・ジラルディ」を訴えるべきだ。


まぁ、冗談半分な話はともかくとして、正直、こんなことで訴訟を起こしていたら、プロスポーツなんて成り立たない

もしスキーのジャンプ選手が試合で怪我をしたら、ジャンプ台とか気象庁を訴えるのか。柔道の試合で対戦相手に怪我をさせられたら、対戦相手とか、畳メーカーを訴えるのか。テニス選手が負けたら、サーブのときに音をたてた観客を訴えるのか。変化球が曲がらなくてホームラン打たれたら、ボールを作ったメーカーを訴えるのか。


おまけに、「得るはずだった収入をよこせ」というけれども、ルーキーなんてものは、「1シーズン限りでクビになって、生涯の総収入=40万ドルで終わるのも当たり前」の不安定な存在だというのに、わずか「1試合」どころか、「たった1度の守備機会しかメジャー経験がない選手」の、「将来性」だの「未来の収入」だなんてものが計算できるわけがない。


ほんと、馬鹿馬鹿しい。
馬鹿馬鹿しいにも程がある。

damejima at 17:37

February 26, 2015

なぜNY Postが、マイアミに移籍して、もうヤンキースとはなんの関係もないイチローの名前を使って「ひどく遠回しなジラルディ批評記事」を書きたがるのか知らないが、「まったく季節はずれ」な記事を書いている。

Why Ichiro is glad to be a Marlin ― and away from Joe Girardi | New York Post
「マーリンズ入りしたイチローが、ジョー・ジラルディから離れたことを喜んでいる理由」


くだらないにも程がある。
「もうチームにいない選手の名前を借りて、遠回しにチーム批評する」なんてチキンなことをする暇があるなら、NY Postはヤンキースがなぜ、ヒューズ、ロバートソン、フェルプスといった「まだ十分に戦力になるのがわかりきっている生え抜き投手陣」の『流出』を未然に防げなかったのかという記事でも書くほうが、よほど「自分たちに直接かかわるストレートな問題提起」になるだろう。

NY Postは今からでも遅くないから、フィル・ヒューズのところに行って「ヤンキース在籍時に能力が思うように発揮できなかったのは、なぜだと思うか」と質問し、ロバートソンフェルプスに「なぜヤンキースに残る気にならなかったのか」をインタビューしてこい、と言いたい。
ついでに言えば、ロビンソン・カノーに「今のヤンキースの低空飛行ぶりを外からどう見ているか」、さらには、ブランドン・マッカーシーショーン・ケリーに「なぜヤンキースから他チームに乗り換えたのか」と聞いてくるといい。
関連記事:2014年9月21日、フィル・ヒューズ自身が語る「フルカウントで3割打たれ、26四球を与えていたダメ投手が、被打率.143、10与四球のエースに変身できた理由」と、ラリー・ロスチャイルドの無能さ。 | Damejima's HARDBALL

ともかくNY Postは、イチローの名前を勝手に使って、遠回しなチーム批評に「利用」するような「卑しい行為」は心して慎むべきだ。


それにしてもNY Postは、イチローがジラルディから離れてハッピーになれたことに、「今ごろ気付いた」のだろうか? ブログ主に言わせれば、ヤンキースがもっと前にトレードしてくれればイチローは今よりもっとハッピーだったのにと言いたいところだが(笑)、いずれにしてもニューヨークメディアは気づくのが遅すぎるし、しかも、書いていることが的外れだ。

上の記事でNY Postの記者が「ヤンキース時代にイチローがジョー・ジラルディから受けた酷い扱い」の例として挙げているのは、例えばこんなケースだというんだから、笑える。
Ichiro collected his 3,999th hit of his combined career on Aug. 20, 2013, at Yankee Stadium in the first game of a doubleheader against the Blue Jays.
Ichiro was hoping to play in that second game to reach the milestone and get the moment out of the way, but was only used as a pinch runner in that game.
2013年8月20日、ヤンキースタジアムでのダブルヘッダーの第1試合で日米通算3999安打に達していたイチローは、第2試合出場でマイルストーンへの到達(=4000安打達成)を望んでいたが、実際には代走出場のみに終わった。

まったく三流メディアはいい加減なことを書くものだ。

ブログ主の知る限り、「イチローが会見など公の場で、『日米通算という形での記録』を自分が重視していると発言したり、そういう風にふるまった」などという話は聞いたことがない。
むしろ彼は、「日米通算という形での記録」についてはずっと意図的に感情を押し殺し、注意深く言葉を選んで発言して、評価を避けてきたはずだ。
ブログ注:もちろんブログ主自身の「日米通算についての考え」はイチロー自身とは違う。天才イチロー限定だが、彼の場合に限っては、たとえそれが「日米通算」であろうとなんだろうと、十分意味のある「記録」だと思っている。
そして、以下に引用するNHKの番組でイチローが「負け試合で、新人の後に代打に出されて味わった痛恨の体験」について語ったコメントを読めばわかることだが、イチロー自身だって自分の内部では日米通算4000安打という記録にまったく何の価値も見出していないわけではない、のである。

だが、NY Postの記事だけを読むと、あたかも「イチローが表立って『日米通算記録にこだわって』、第2試合出場を強く望んだかのように」書かれている。

おいおい、おいおい。
推測で勝手にモノを書くんじゃねぇよ。


例えば、イチロー自身がNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組に「4000安打達成の10日後の「代打」の屈辱」について語った例があるように、「イチロー自身が自分の言葉で語った、ヤンキースにおける酷い扱いの例」というのは、ちゃんと「ソース」が存在する。
だからNY Postは、曖昧に言葉を濁した情報源だの記者の憶測だのを元に記事を書かず、イチロー本人のコメントを引用しておけば、それが最も確実なのに、それをしないから物事おかしくなる。
「(4000安打達成の)10日後には9対1で勝っている場面で代打にいってるんですよ。悪い言い方すると屈辱。先発のメンバーは下がってる。10日前に4000本を打った僕が代打で出てる。試合決まってますから。僕の前に代打で出た選手はメジャーで1本もヒットを打ったことがないルーキー。このことっていうのは、僕の中で一生忘れない。忘れてはいけないこと。悔しかったんですよね。ライトフライで終わったんですけど。違う意味で今までで一番結果を出したかった打席だったんですよね。」
イチロー語った一生忘れない屈辱 - ライブドアニュース

ブログ主が覚えている限りでも、「ジョー・ジラルディのイチローに対する不合理きわまりない扱い」は、多々挙げることができる。(もちろん自分が観戦してないゲームでも少なからずあったに違いない

例えば、ジョー・ジラルディは、左投手先発ゲームで「左投手をまったく苦にしないで打てるイチロー」をけして先発させようとしなかった。このことも、ここでいう「酷い扱い」のひとつであり、ジラルディはイチローが長年お得意様にしてきたマーク・バーリー登板ゲームですら、先発させなかった。

また、シーズン打率.280以上を記録したイチローをベンチに座らせたまま、「打率1割台のクソみたいなバッティングの選手」を優先して代打に出すことも、1度ならずあった。
例えばジラルディは、打てない守備専の遊撃手ブレンダン・ライアンに、同じく打てるわけがないスティーブン・ドリューを代打に出すような意味不明で無駄な選手交代を、しばしばやった。
これなど、代打としてイチロー、もしくは、ドリューよりマシな打撃のできる若手を使っておいて、その後ドリューをショート守備につかせたほうがはるかにマシな攻撃ができるわけだが、ジラルディはライアンの代打にドリューを使うような意味不明な選手起用を、「ポストシーズン進出の希望がわずかながら残されていた時期」ですら、何度となくやったものだ。


マイアミ移籍会見でイチローは、「選手として必要としてもらえることを、この2年間欲していた」という意味のことを自分の言葉でハッキリ言ってのけた。
会見での原文
この2年間、欲していたものは、これだったのじゃないかなと思っています、選手として必要としてもらえること。これが僕にとっては何よりも大切なもので、大きな原動力になると思う。


もちろんブログ主は喝采した。
プロ・アスリートとして当然の話だからだ。


イチローは、2013年以降のヤンキースで、「チームがイチローのプレーを欲しているという確かな感覚が得られないまま」中途半端にプレーさせられ続け、だらしないチームがだらしなく負け、ポストシーズン進出に失敗するのを「遠くから」眺めさせられた
その原因は、GMキャッシュマンの度重なる大型契約の失敗によるペイロールの硬直化、ジラルディの不合理きわまりない起用法、怪我でロクに働かないのにレギュラーの座に居座っている高給取りの選手たち、アレックス・ロドリゲスに象徴されるチームのステロイド体質、ヤンキースの若手育成能力の無さなどにある。


発言に「耳を傾けて」さえいれば、行間に垣間見える「イチローの感情」は誰にでもわかる。彼が「ヤンキースでは酷い扱いを受けたと感じていたかどうか」なんて、イチローファンにしてみれば、なにもNHKのインタビューなど見なくてもわかる。
だが、ブライアン・キャッシュマンも、ジョー・ジラルディも、ニューヨークメディアも、イチローに「十分に耳を傾けて」はいなかった。いまさらNY Postが何か書いても、それはまったく「季節外れな行為」だし、そもそも書いていることの中身それ自体が「ピント外れ」だ。
いまさらNY Postに「ジョー・ジラルディから離れたことを喜ぶ理由」なんてものを(それも間違った形で)書いてもらわなくとも、そんなわかりきったことは、とうの昔から日本のイチローファンの「全員がわかっている」のである。

「おまえらは、やることなすこと、ことごとく遅えんだよ。書くならヤンキース在籍中に書け、この臆病モノ」と言っておこう。


もう一度繰り返す。

もしニューヨークメディアが、チームが長年抱えてきた欠陥を放置して没落しつつあることをようやく指摘してみる気になったのなら、Future Hall Of Famerであるイチローの発言やネームバリューを借りてそれを行うのではなく、記者が「自分の名前」を使って、「自分の責任」でやるべきだ。
イチローがああ言った、こう発言したなどと、いまさらチームにいない人間の名前を利用する行為を失礼だと思わないのだろうか。ほんとにチキン・ライターどもときたら、無礼きわまりないにも程がある。

関連記事:
2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。 | Damejima's HARDBALL

2013年9月18日、ニューヨーク・ポストのケン・ダビドフが書いた「2012年冬のヤンキースの失敗」についての浅はかな記事を紹介しつつ、ジラルディの選手起用のまずさがチームバッティングを「冷やした」証拠となるデータを味わう。 | Damejima's HARDBALL

2015年1月29日、2014年版「イチローのバッティングを常に冷やし続けたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶり」。 | Damejima's HARDBALL

damejima at 13:56

January 30, 2015

2013年9月上旬に、ヤンキース監督ジョー・ジラルディの不合理きわまりないイチローの起用ぶりについて記事を書いたが、その「2014年版」を書いてみた。
赤色部分:イチローがマルチヒットを記録したゲーム
青色部分:ジラルディがイチローを先発からはずしたゲーム

ジョー・ジラルディのイチロー起用の比較(2013年と2014年)2013年版のデータは以下のページにある。
2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。 | Damejima's HARDBALL

2014年版の元資料:
2014 New York Yankees Schedule and Results | Baseball-Reference.com

Ichiro Suzuki 2014 Batting Gamelogs | Baseball-Reference.com

上の縦長の左右2本のバーは、のバーが2013年2014年を示している。2013年のバーがやや短いが、これは2013年版の図が、当時まだシーズンが終わらない9月初旬に制作されているため、2013年の全試合が図に網羅されていないことによる。他意はない。


右の2014年版のバーが、左の2013年版と比べ、青い部分がやたらと多いことは、小学生でもわかるだろう。

クリックすれば細かい数字は見られるが、そんなものをチマチマ確認しなくとも、全体の色の印象で言いたいことは伝わるはずだ。2014年のイチローの詳細な打撃スタッツとあわせてみてもらえば、ヤンキース時代のイチローが「ふがいないチームメイトよりも打てて、守備も走塁も問題ない、なのに、安定した起用をされず、ゲームに使われなかったために、打撃スタッツを下げさせられていた」ことがわかると思う。

加えていえば、左打者イチローが左投手を問題なく打てて、チームの他の誰より「対左投手打率」が優れているにもかかわらず、左投手先発だと決まってベンチスタートだったことは、とりわけ腹立たしい。イチローが長年得意にしてきたヴェテラン左投手マーク・バーリーの先発ゲームですら、ベンチスタートだったのだ。これには当時多くのヤンキースファンからも疑問の声がツイートされ続けた。
左投手のゲームに先発できないことで、イチローのヒット数がどれほど「減らされた」ことか。まったくもって、腹立たしい限りだ。
#Fire Girardi


記事の下部に、2014年版の詳しいリストを示しておいた。

左は「2014年のヤンキースのゲームスケジュール
右は「2014年のイチローの出場ゲーム

赤色部分は「イチローがマルチヒットを記録したゲーム」
青色部分は「無能なジラルディがイチローを先発からはずしたゲーム」を示している。

図の意味は、クドクド説明しなくても、「色の印象と配列」で言いたいことはわかるとは思うが、ひとこといわせてもらうなら、青い面積の広さでわかるとおり、2014年のイチローの起用ぶりは、酷かった2013年よりも、さらに最悪なものだった。
2013年9月のあるゲームで、イチローをどうしても2番にしたくないジラルディは、なんとAロッドに2番を打たせた。その2013シーズンよりさらに酷いのだから、どのくらい酷い起用だったか、わかるだろう。


開幕からオールスターまで(4月〜7月)
まず、下図の「4月」「5月」の部分をみてもらいたい。「広大な青色エリア」が広がっている中に、「赤い部分」がポツン、ポツンと「挟みこまれて」いる。

このことで次のことがわかる。

2014シーズン開幕以降、4月5月のジラルディは、イチローを「スターター」と認めてはおらず、実際、ほとんど先発起用しなかった。

だが、それでもイチローは4月の不当に少なすぎる先発出場機会を得るたびにマルチヒットを記録し、明らかに絶好調な状態で2014年シーズンをスタートした。
ぜひ「2014年に初めてゲームに出た4月3日から、5月3日までの1ヶ月」のイチローの打撃成績をみてもらいたい。
打率 .375
出塁率.400
OPS .858

四球の大好きなビリー・ビーンがみても、長打と四球を過大評価するデタラメ指標OPSの好きな馬鹿がみても、素晴らしい数字が並んでいる。数字が苦手なくせにデタラメ指標だけは好きなヘボ監督でも、これには文句のつけようがないはずだ。
2014年スタート時のイチローの打撃は、けして悪くないどころか、むしろスロースターターの彼にしてみれば、2014シーズン開幕前に田口壮氏が「今年のイチローは間違いなくやりますよ」と太鼓判を押していたとおり、絶好調といえる万全の状態だったはずだ。

だが、それをみて6月のジラルディは、イチロー起用法を非常に細かいサイクルで「先発出場」と「途中出場」を交互に繰り返すという「最悪な起用法」にきりかえた。
うっかりすると「1日おきに先発と途中出場が交互にくりかえされる」のだ。こんな起用をされて選手が好調をキープできるわけがない
6月8日から7月11日にかけての1ヶ月、8試合でマルチヒットを記録するなどして抵抗し、7月中旬に「打率3割をキープ」していたイチローではあったが、さすがに4月の好調ぶりをずっとキープし続けたままでいることはできず、ジラルディは7月後半にようやくイチローのバッティングを「冷やす」ことに成功した。

こうして無能なジョー・ジラルディは前年に続き、2014年も「イチローのバッティングを冷やし続けること」に専念したのだから、本当に呆れてモノが言えない。まさか、チームの勝率アップや地区優勝より、自分好みでないプレーヤーの「冷却」やら記録阻止が生きがいとでも考えている監督、チームが存在するとは、夢にも思わなかった。


2014年開幕時にジラルディがイチローより優先して使った外野手は、例えば、2014年のヤンキースが1800万ドル(=約21億円)もの大金を払ったにもかかわらず、結局シーズン終了後に引退に追い込まれたアルフォンソ・ソリアーノだが、2013年7月のフラッグシップ・ディールでヤンキースに復帰する直前はナ・リーグにいたにもかかわらず、弱点のハッキリしているソリアーノのバッティングの攻略法は、それこそあっという間にア・リーグ全体で分析されきって、対策が終わっていたことは、2013年シーズン終盤9月の打撃の内容、特に移籍後60を越えていた三振の中身を分析すれば、十分明らかだった。
データ:Alfonso Soriano 2014 Batting Gamelogs | Baseball-Reference.com
にもかかわらずジラルディは、「攻略の終わっているソリアーノ」を開幕時に第4の外野手として位置づけて起用し、案の定2014年4月・5月に52もの三振をして、あっという間にイチローに追い抜かれた。
だが、ジラルディは、データ分析不足と、判断の遅れという2つの決定的なミスを、けして認めようとしなかった

また、2014年に15Mの大金を払った外野手カルロス・ベルトランはどうだろう。
これだけの大金をもらいながら、出場はたったの109試合。しかも、その109試合のうち、76試合がDHだ。シーズンの半分をDHで出ただけで15MもらったDH専業選手が、打率.233、出塁率.301、ホームランたった15本では、間違いなく給料泥棒だ。
守備はどうか。ベルトランは32試合でライトを守ったが、そのたった32試合で、dWAR、Rdrsなど、守備指標で考えられないほどのマイナスを記録している。到底ライトを任せられる守備レベルの選手ではない。(詳しい数値は各自調べてもらいたい)

こうした指揮官の愚劣な行いの結果、5月から6月にかけてのヤンキースは、5月14勝14敗、6月12勝15敗と、2014年のポストシーズン進出を逃す決定的な「不振期間」を作ることになった。

オールスター以降(7月〜)
7月25日イチローに待望のシーズン初ホームランが飛び出す。すると、さっそくジラルディはイチローを先発から遠ざけるのだから、このオッサンのやることだけは理解不能だ。
長打を打ったら休ませる、などという例は他にも数多くある。8月10日に二塁打を打つと、さっそく翌日は休み。9月10日・11日に2日続けて二塁打を打つと、ベンチ。9月23日二塁打、翌日ベンチ。ほんと、ジラルディはマトモじゃない。

8月のイチローの月間打率は.352と、7月後半の一時的な停滞から既にリカバリーしていた。

だが、図をみてもらうとわかるが、7月中旬から8月中旬にかけての図が、どっぷり青色に染まっている8月のジラルディは、月間.352打ったイチローを積極的に先発起用しようともせず、むしろ、6月にとった卑劣な手法同様に、先発出場と途中出場を細かいサイクルで交互に繰り返させたのである。

結果的に、2014シーズンのイチローがヤンキースで「チーム最高打率の打者であるにもかかわらず、控え選手扱い」などという、「合理性にまったく欠けた酷い扱いを受けた」のは、ひとえに、外野手獲得をみやみに乱発し続けて無駄に選手を抱え込んだブライアン・キャッシュマンの無能さと、どんなに好調でもイチローを使わない、左投手が打てるデータがあるにもかかわらず左投手先発ゲームでイチローを使わない、チーム打率が悲惨なことになっていてもチーム最高打率のイチローを使わないという、数々の無能さを披露し続けたジョー・ジラルディに、責任がある。

もし2014年のイチローの起用が実力通りのものだったなら、彼の2014シーズンの打撃成績はもっとはるかにマシなものだったことは間違いなく、また、達成間近だった多くの記録も、もっと肉迫できていただろう。さらには、シーズン終了後にFAとなってからのチーム選択においても、無用な苦労を強いられることなく、はるかに広い、容易な選択が可能だったことも間違いない。



2014ジョー・ジラルディによるイチロー起用ゲームリスト


damejima at 13:13

November 26, 2014



ステロイド時代がタテマエとしては終わり(実際には終わってない。ライアン・ブラウンを見ればわかる)、ワールドシリーズが「1年おきに、サンフランシスコ・ジャイアンツとセントルイス・カージナルスが優勝するためのシリーズ」になってずいぶんと年月が過ぎたが、この5年間、この2チームをはじめ、ナ・リーグ有力チームから、ア・リーグ、特に東地区に高額な長期契約で移籍した選手たちを数えあげてみたことがあるだろうか?(笑)

ラッセル・マーティン LAD→NYY(2011)→PIT→TOR(2015)
エイドリアン・ゴンザレス SDP → BOS(2011)→ LAD
アルバート・プーホールズ STL → LAA(2012)
プリンス・フィルダー MIL → DET(2012)→ TEX
カルロス・ベルトラン STL → NYY(2014)
ブライアン・マッキャン ATL → NYY(2014)
Shin-Soo Choo CIN → TEX(2014)
パブロ・サンドバル SFG → BOS(2015)
ハンリー・ラミレス LAD → BOS(2015)

太字ア・リーグ東地区に移籍した選手
赤色をつけたのは、成績の酷い年

いやはや。酷いもんだ(笑)

これだけ多くのナ・リーグの有力選手たちが、ア・リーグ、特に東地区に移籍した(加えて彼らは日本や中米で選手をあさってもきた)というのに、この5年間というもの、ワールドシリーズの主導権は常にナ・リーグ、サンフランシスコ・ジャイアンツとセントルイス・カージナルスに握られてきたのだ。

最近のア・リーグ、特に東地区、とりわけヤンキースのマネジメントが、どれほど迷走してきたことか。いい加減、自分たちのやってきたことの「失敗」くらい認められないのかね、と言いたくなる。
1958年にドジャースとジャイアンツがニューヨークから西海岸に移転して半世紀以上が経つわけだが、もし「フリーエージェント」というシステムと、ドラフト外の獲得、そして「ありあまるカネ」がなかったら、2010年代のア・リーグ東地区はとっくの昔に日陰の隅に追いやられていただろう。


例えば、温かい料理を冷めて台無しにしてしまってから客に出す「下手クソな料理人」、ヤンキース監督ジョー・ジラルディだ。彼を見ていると「選手操縦の下手さ」がよくわかる。
たとえイチローの調子が上がってヒートアップしていようと、「左投手を打てるのは右打者」などという根拠のない古い野球常識にとらわれて、左投手先発ゲームで起用しようとせず、1試合おきに起用するような意味のないことを繰り返して、打者としての調子を「冷やして」しまう。
参考データ2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。 | Damejima's HARDBALL
なのに、大金を払って獲得した選手は、払った金がもったいないとばかりに、ダメなのがわかっていても、しつこく起用し続ける。
また、そういう「怪我もち選手」に限って、ブライアン・キャッシュマンが、ところかまわず大金払って獲得してきてしまう(笑)

まったくもって成金の悲しい性(さが)としか言いようが無い。

チーム総得点とチーム総失点の差が小さいのに、勝利数が負け数より多いという、たったそれだけの理由にもならない理由で、ジョー・ジラルディは監督として有能だとか、わけのわからないことを言っている人を見たことがあるが(笑)、2014ヤンキースの貯金6は、「ひとりで13勝5敗と8つもの貯金を作った、田中将の貯金」を減らしながらもかろうじて維持した、たったそれだけの話だ。
もしも田中将が貯金8を作らなかったら、2014ヤンキースの貯金は総得点と総失点の差からはじきだされるデータ(=Baseball ReferenceでいうPythagorean W-Lなどのこと)どおりのレンジ、つまり「負け越し」「マイナス」に終わって、順位ももっと下だったはずだ。優秀だったのは田中将であって、ジラルディではない。

あれだけの予算を使っても、無能なGMキャッシュマンが「打てないくせに、怪我ばかりする野手」ばかり集めてきてしまい、チームの得点力は上昇しなかったにもかかわらず、提灯持ちメディア代表のニューヨーク・ポストなどは、御用聞きライターのひとり、Ken Davidoffが、「怪我がちなマーク・テシェイラのバックアップ一塁手がきちんと用意できなかったのは、イチローがロスターを占めていたせいだ」などと、とんでもなく的外れな、いいががり記事を書いたりしている(笑)
A-Rod can cause same first-base problem that Ichiro did | New York Post
体がもともと弱いのか、準備運動が足りないのか、アナボリック・ステロイドの副作用なのかしらないが、法外なサラリーをもらっているマーク・テシェイラが怪我がちなのは、マーク・テシェイラ自身のせいであり、そういう怪我もちなのがわかっている選手に大金を払う契約をしながら、バックアップの内野手を準備しないままシーズンインするのは、もちろんGMブライアン・キャッシュマンのせいなのに、記事には、テシェイラのフィジカルの弱さやキャッシュマンの無能さを批判するどころか、キャッシュマンのキャの字すらすら出てこないのだから、おそれいる(笑)

damejima at 10:19

October 18, 2013

不幸なことに、エリック・ウェッジといい、ジョー・ジラルディといい、近年イチローの上司になる監督には、どういう巡り合せかわからないが、いわゆる左右病監督が多い。

ちなみに、ここでいう「左右病」とは、根拠もなく昔の野球用語でいう『ジグザグ打線』に執着したがる監督、つまり、「打撃スタッツ、そのチームの選手構成、予算、チームの伝統的オーダー、スタジアムの形状など、数字的な裏付けがどこにもないのに、左打者と右打者を交互に並べた打線を常に組み続けることにパラノイア的なまでの執着を示す監督に対する揶揄」を意味している(笑)


困ったことに、「左右病」という言葉はもともと俗語なので、厳密な意味など決めようがない。しかしそれでも、「左右病」と、アール・ウィーバーやケーシー・ステンゲルの「プラトーン・システム」とを同一視するわけのわからない意見に、同意するわけにはいかない。
なぜなら、「左右病」という病には「汎用性を追求する結果、やがてはスタメン固定に行き着く」という特徴があるからで、そこが「専門性を追求するため、常に流動性を確保しようとする」ことを大前提とするプラトーン・システムと決定的に異なるからだ。


「打者を、左、右、左、右と、交互に並べる戦術」には、「左右、どちらの投手が出てきても、自軍はどのイニングにおいても、『最低ひとりおきには、その投手に対応できそうな打者が打席に入れる打順』を準備しておくことで、相手投手に常にプレッシャーをかけ続け、打ち崩そうとする意図」がある。
もう少し平たくいいかえると、「左打者と右打者を交互に並べておけば、相手投手が左だろうと右だろうと、あらゆるイニングで、どうにか打てる打者が最低ひとりは打席に入るから、毎イニング、チャンスが生まれる可能性をもてる」とでもいうような考え方だ。(逆にいうと、毎回必ず凡退しそうな打者が打席に入る、という意味でもある)

言うまでもなく、こうした「左右病思考」の根源にあるのは、「右投手を打ちやすいのは左打者であり、左投手を打ちやすいのは右打者である」だのという、太古の昔のコンピューターのような、凝り固まった考えだ。(言うまでもないが、この原則は必ずしも打者全員には、あてはまらない)
ここで特筆して覚えておくべきなのは、そもそも「左右病監督」の思考回路には「左投手の得意な左バッター」や「右投手の得意な右バッター」という「例外」が、まるで「想定されてない」ことだ。また、さらに興味深いのは、思考回路にそういう「例外」が想定されてない人間の視界には、例外的バッターそのものが「映像として、映ってすらいない」ことだ。


だからこそ、「左右病監督」の行き着く先は「スタメン固定」に向かうことになる。
なぜなら、「左右に並んでいると効果がある」と信じ込んでいる左右病監督の打線は、下手にスタメンの並びをいじってしまっては、その大事な「骨董品のような並び」が壊れてしまう(と、彼らが考える)からだ。彼らは「左右交互に並べておけば、あらゆるシチュエーションに対応できる」と思い込んでいる。(だからこそ、ウェッジのシアトルとジラルディのヤンキースはまったく同じ「貧打」という末路をたどった

壊れて困るものは、けしていじろうとしないし、いじらせない。
それが頭の固い人間の常だ。


ひるがえって「プラトーン・システム」だが、実施スタイルはさまざまあるにしても、基本は「相手の先発投手の左右にあわせて、それぞれに専用オーダーを用意すること」であったり、あるいは「ひとつのポジションに複数選手を用意して、かわるがわる起用すること」であったりするわけだから、「スタメン固定に向かう」どころか、むしろ根底には「使う選手の大幅な流動化、マルチファンクション化」の発想がある。

だから、いくら現象面が似ているからといっても、時間がたてばやがて使う選手が固着していきやすい「左右病」と、あくまで相手投手の攻略に最適対応できるメンバーを追求し、流動し続けるのが真髄である「プラトーン・システム」の追及する合理性を同一視することは、あまりに馬鹿げている。


ちなみに、オークランドでボブ・メルビンがやっている「オークランド風プラトーン」といわれているものがある。
これは、まずオーダーの軸として、打順とポジションを固定し、毎日上位打線として出場するeveryday player(クリスプ、ラウリー、ドナルドソン、レディック、セスペデス等)を打線の軸にして、そこに、投手が左か右かによって起用を変える「プラトーン的な2つのグループ」(左投手用:フライマン、カヤスポ、ノリス、クリス・ヤング 右投手用:モス、セス・スミス、ヴォグト、ソガード)を組み合わせる、というものだ。

またメルビンはそれだけでなく、2013ALDSのバーランダー先発ゲームの例でわかるとおり、(それが本当に効果的だったかどうかは別にして)右投手攻略のために左バッターを平気で6人並べることもいとわない。
なぜなら、もし「右投手を打ちやすいのは左バッター」ならば、ジラルディがやるように「左右と交互にならべる」なんて中途半端な対応をするより、「打てる確率がより高い左打者だけを、可能な限りたくさん並べておく」ほうが、より目的に近い結果を得られるはず、と、合理性追求魔王メルビンは考えるからだ。


「永遠の左右病」ジラルディも、もしかすると、プラトーンをやっている「つもり」だったりするかもしれないが(失笑)、ジラルディの「左右病打線」は、上の例でわかるとおり、メルビン風プラトーンとはまるで違う。
ジラルディとメルビンの「違い」は、ルアーフィッシングでたとえるなら、「なんでも釣れる汎用性の高いルアーを、たったひとつだけ用意して、あらゆる魚種を釣ろうとするアングラー」と、「釣りたい魚それぞれの専用ルアーを、それも天候の違いやシチュエーションの違いに応じて、必要な数だけ揃えて釣りをするアングラー」の「違い」、みたいなものだ。
結局は自分のお気に入りを固定的に使って左右に並べているだけのウェッジやジラルディのような「固着的」な左右病と、相手投手攻略のための最も効果的な打者を並べるためなら、たとえ毎試合でも打線を組み換えて対処しようとする「流動性」前提のメルビンのような現代風プラトーンとを、いっしょくたにする意味がわからない。


もし仮に、ジラルディが2013ヤンキースで「ボブ・メルビン風プラトーン」をやったとしたら、スプリングトレーニングかシーズン序盤に打撃成績のよかった選手数名を「every player」としてピックアップして、残りの野手を左投手用、右投手用と振り分けてオーダーを考えることになる。
そうなるとオールスター前のヤンキースの場合は、ガードナー、左投手でも打てるイチロー、そして主軸打者のカノーと、上位に打撃成績のいい左打者が3人並ぶことになる。それでも、イチローは左も打てるし、そもそもヤンキースタジアムの形状は左有利だから、何の問題もない。
もし仮に、イチローが「メルビン風プラトーン」でいうevery playerではないと判断するにしても、左打者のほうがより打てるイチローを「右投手用オーダー」に入れるような不合理な処遇は、言うまでもなく馬鹿げた行為だ。
だが、その馬鹿げたことを人前で堂々と実行したのが、ジラルディだ。
ジラルディは、打てようが打てなかろうが、左打者を3人並べることをとことん回避したがったし、また、打てようが打てなかろうが、常に右バッターを2番に挟みたがって、必死に合理性のない左右病打線の維持に執着し、左打者を打てるイチローを右投手だけに起用する馬鹿げた行為を恥ずかしげもなく続けてポストシーズン進出を逃した。




さて、長い余談はさておき。
ここからは、「左右病監督」のやりそうな典型的オーダーを考えてみることにする。


最初のステップとして、「監督が左右病かどうか」を抜きに、「MLBでよくみかけるオーダー」がどういう思考力学からできるのかを考えてみたい。

まずは主軸打者を決めてみる。
ポジション別wOBAからわかるように、打線の主軸は、教科書的になってしまうが、やはり「一塁手」または「三塁手」であることが多い。(もちろんボストンやカンザスシティ、ホワイトソックスのように、DHが4番というチームもあるが、優秀なDHが減っているために、けして多数派ではない。ホワイトソックスがキューバの一塁手アブレウと契約したのは、DHが4番を打つ状態を解消したいという意識のあらわれ。また2013ヤンキースは「3番の二塁手」が主軸だったが、これは明らかに「本来の主軸打者が不在であること」を示している)
資料記事:Damejima's HARDBALL:2013年9月25日、ポジション別wOBAからみた平均的なチーム編成と、かつてのヤンキースの特殊構造との比較。その「アドヴァンテージ」を実はまるで理解していなかった2013ヤンキースの編成の崩壊。

主軸打者になりやすい一塁手の多くは左打者、三塁手は右打者だ。だから
多くのチームの打順で、「一塁手と三塁手を、3番と4番に、どう並べるか」によって、以下の「2つのパターンの典型的オーダーの、どちらか」を選択するケースが多いことになる。
(ARIのような「一塁手が右打者のチーム」では、右の強打者がダブるのを避ける意味でサードに強打者を置くモチベーションは低い。また、以下では「3番と4番のどちらが中心打者か」という議論は捨象する)

パターン1)一塁手を3番、三塁手を4番
(例 TB CHC ジグザグにしやすいオーダー
 TEXの4番は右のベルトレだが、打順は左右病ではない)
1番 左
2番 右
3番 左 一塁手
4番 右 三塁手 例:ロンゴリア
5番 左


パターン2)三塁手を3番、一塁手を4番
(例 DET STL PIT LAD NYM WASなど
 典型的なジグザグにはなりにくい)
1番 左(スイッチを置くケースも稀にある)
2番 右(スイッチヒッターであることも多い)
3番 右 三塁手 例:ミゲル・カブレラ
4番 左 一塁手 例:フィルダー、デービス
5番 右(スイッチを置くチームもある)


まず「三塁手を3番、一塁手を4番に置くパターン2」で、
打順の「1番・2番」に注目してもらいたい。

特に投手が打席に入るナ・リーグでいえることだが、一塁手に名の通った左のスラッガーが多いリーグだけに、左の一塁手の打順を、9番の投手から最も遠い4番に置くパターン2をとるチームは少なくない。
今シーズンのポストシーズン進出チームでみても、STL(マット・アダムス)、PIT(モーノー)、LAD(エリドリアン・ゴンザレス)などの例がある。また、ア・リーグでもDET(フィルダー)の例があるが、フィルダーはもともとナ・リーグの典型的な一塁手だ。
(ARIのゴールドシュミットのように「一塁手が右利き」の場合、「一塁手を3番に置くパターン」もある。この場合は三塁手がスラッガーである必要がなくなるが、ARIには珍しい「右投左打の三塁手」エリック・チャベスが在籍しているため、「3番右の一塁手、4番左の三塁手」というレアなパターンが成り立つ)

「3番4番が右・左」の場合、監督がただ打線をジグザグ化したいだけの人物なら、1番2番を「右、左」にしておくだけで事は済むわけだが(ARIは実際に右左右左)、実際のチームに照らしてみると、むしろ1番は左で、1番から「左、右、右、左」にするチームが圧倒的に多い。

というのも、もともとこの三塁手を3番、一塁手を4番に置くパターン2には、ちょっとした難点があって、たしかに1番2番を「右、左」にしておけば上位打線はすんなり1番から4番までジグザグ化できるわけだが、それだと「右打者が1番」になってしまうのだ。
過去の統計で「左打者のほうが右打者より打撃成績がいい」ことが知られている。実際のチームでも、「よりファーストに近い左バッター」に1番を打たせるチームは多い。
いいかえると、「右の三塁手が3番、左の一塁手が4番を打つオーダー」において、「打線をジグザグ化するという、ただそれだけの目的のために1番を右打者にする、などという強引なやり方で、無理矢理に上位打線をジグザグにしている実例など、ほとんどない」のである。

資料:ここ50年間の左打者と右打者の打撃スタッツ比較例
左打者と右打者ではどちらが打てるか?


実例で多いのは、1番から4番を「左、右、右、左」にするケース。典型的なのはドジャースだ。

デトロイトは、珍しく1番バッターが右打者のオースティン・ジャクソンで、さらにハンターも獲ったから、右右右左と、右ばかりになっている。左右病の蔓延する中、これはかなり珍しい。まぁ、これはたぶん単純な話で、監督リーランドが左右病じゃない、というだけの話だろう(笑)
(ただ、2013ALCSの最中にリーランドは、打てない1番の右打者ジャクソンに業を煮やして下位に下げ、上位打線の打順をひとつずつ繰り上げるという荒業に出た。まぁ、リーランドも、この右打者が続く特殊な打順で万全だと思っているわけでもないようだ)

中には、2番に、純粋な右打者ではなく、スイッチヒッターを置くことで打線にスパイスをきかせることに成功しているチームもある。セントルイスのカルロス・ベルトランや、ピッツバーグのニール・ウォーカーなどがそうだ。
これは、2番にスイッチヒッターを置くことで、2番3番と右が続くのを避け、打線により広いバリエーションをもたせるちょっとした工夫だが、これがなかなか思いのほか効果があることを示している。クリーブランドでも、ニック・スイッシャーがたまに2番を打つことがある。

ボルチモアの打順はちょっとした特殊性があって、左の一塁手クリス・デービス、右の外野手アダム・ジョーンズと、左右の強打者がバランスよく揃っているにもかかわらず、思いのほか打順には苦労が多い。
ジグザグ好きのジラルディがボルチモアの監督なら、「1番左のマーケイキス、2番右のマチャド、3番左デービス、4番右ジョーンズ、5番スイッチのウィータース」とジグザグに組んで終わりにしそうだが(笑)、ならば、それで162ゲームいけるかというと、案外そうでもない。
というのも、左の一塁手クリス・デービスは、確かにホームランは打ちまくってくれるが、残念なことに、3番タイプではないからだ。おまけに、打率が極端に悪化する時期が必ずといっていいほど来る。
では、デービスを4番に置いておけば打順は絶対的に安定するか、というと、上の「一塁手が4番」という例ではないけれど、どういうものか、こんどは1番がどうも安定しなくなる。ロバーツも衰えたし、マクラウスもイマイチ。そもそもボルチモアには、マーケイキス不在時の穴を埋められる1番向きのバッターはいないのだ。
そんなこんなで、ボルチモアの打順は常にフラフラする。


グダグダと横道にそれてばかりいるが(笑)、要するに言いたいのは、打線をジグザグ化することを至情の快楽、生き甲斐としている「左右病監督」にとっての理想的なオーダーは、打線の並びが複雑化する傾向のある「三塁手に3番、一塁手に4番をまかせるパターン」ではなく、こむつかしいことなど何も考えなくても、打線をすんなりジグザグ化できて、なおかつ長期間にわたって固定化できる「三塁手に4番をまかせてジグザグ化するパターン」のほうだ、ということだ。

「永遠の左右病」ジラルディの思考回路の中では、怪我とステロイドさえなければ、すんなりヤンキースは「本来の、左打者と右打者が交互にきちんと並んだ打線」を取り戻すことができて、ワールドシリーズにすら出られそうだとか思っているのかもしれない(笑)

「左右病患者」ジラルディの「思考回路の中にだけ」存在している「本来の」ヤンキース
1番 左 ガードナー
2番 右 「本来」なら、ジーター
3番 左 カノー
4番 右 「本来」なら、Aロッド
5番 左 「本来」なら、テシェイラ


だが、ジラルディやニューヨークメディア、ブロガーなどの「思考回路の中にだけ存在している、『本来の』ヤンキース打線」とやらが、近年、一度でも理想形で機能したことがあるか。


まぁ、言わせてもらえば、老化し、怪我にまみれ、ステロイドの抜けたヤンキースでは、ジラルディの思い描くような「思考回路の中にだけにしか存在しない左右病打線」は、単なる「絵に描いた餅」でしかない。
編成予算の大半をくいつぶしている「怪我がちな高額サラリーのスペランカー」を常に複数かかえながら、それでもジラルディが「理想的な左右病打線」とやらにこれからもこだわり続けるなら、本来必要だった質と数の2倍の選手補強が必要になるのなんて、当たり前に決まっている。なぜって、Aロッドもジーターもテシェイラも、給料もらうだけで働かないからだ。

世の中の、どこに、昔のジータークラスの打てるショート、他チームの主軸を打っている三塁手にひけをとらない三塁手、テシェイラクラスの攻守を両立できる一塁手、これらすべてのポジションで、「本人と、本人が怪我だの出場停止だので休んでいる間の補強選手」という意味で、それぞれ「2人ずつ」雇えるチームがあるというのだ。

馬鹿も休み休み言ってもらいたい。

ヤンキースは本来なら「チーム力が下がって当たり前」のチームだ。なのに、そんなチームで「打者を左右に並べるなどという、たわいない、たいして効果があるわけでもない、無駄なこだわり」を続けている監督が「害毒」でない、わけがない。

damejima at 13:26

September 19, 2013

前から思ってたんだけど、ニューヨーク・ポストのKen Davidoffって、好きなライターなんだよな(笑)だって、面白いんだもん、この人。いつも「的はずれ」なのに、いつも自信満々だからさ(笑)
Yankees’ woes stem from a wrong winter | New York Post


この御大層な記事の主旨はですね、「2012年冬にヤンキースが次のシーズンのためにやったことで、最も大きなミステイクは何?」って話。まぁ、ブリーチャー・リポートなんかでよくある素人っぽいランキング形式の記事なわけなんだけど(笑)、ケン・ダビドフは以下の4点を挙げてる。

1)ラッセル・マーティンと再契約しなかったこと
2)イチローと再契約したこと
3)ケビン・ユーキリスと契約したこと
4)ジーターの健康問題について備えを怠ったこと

なら、さ。
なにもこんな長ったらしい記事クドクドと書かなくたってさ、「GMキャッシュマンが悪い」って、ひとこと書いとけば済む話じゃん?(笑)だって、全部キャッシュマンが責任もつべきことばっかりなわけだからさ。
外野手をあり余るほど獲得しちまって、レギュラー外野手が5人もいて、誰も彼も休ませながら使わなくちゃいけなくなって、誰も彼もバッティングが「冷えていく」一方で、内野手も、ブルペンも、キャッチャーも、いつまでたっても「マトモ」にならなかったのは、いったい誰のせいか、ちっとはアタマ使って記事書けよと。


まぁ、それはともかくとして、ダビドフがイチローとの再契約が間違いだったと主張するにおいて、彼が何を証拠というか、根拠に挙げてるかというとね、たったこれだけなんだな(笑)
His on-base percentage is now down to .297, the worst of his career.

この人、バーノン・ウェルズの出塁率には触れないで、「ジラルディに打撃成績を冷やされた」イチローのスタッツだけを槍玉に挙げようっていうんだから、こズルいねぇ(笑)でも、すぐに手の内がバレるような、程度の低い記事書いてるから、ケン・ダビドフが、いつ、なに書こうと、いつも笑って見てられるわけだけどね(笑)


ジラルディがやってる「選手のとっかえひっかえ起用」、まぁ、サッカーなんかでいう「ターンオーバー制」みたいな選手起用だけど、こうしたおかしな選手起用の被害が、イチローのバッティングに酷い「悪影響」を及ぼしたことは、もう書いた。
Damejima's HARDBALL:2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。

で、その「悪影響」はなにも、イチローだけに留まるわけじゃない。
以下に、2013ヤンキースで、ジラルディの「ターンオーバー制」的選手起用で使われている選手たちを中心に、主な野手の「打率」と「出塁率」を挙げておくから、見ておくとといい。今のヤンキースのバッティングの「冷え方」がひとめでわかるから。
(2013シーズン9月17日までのデータ 2013 New York Yankees Batting, Pitching, & Fielding Statistics - Baseball-Reference.com

数字でみれば、ヤンキースでいい出塁率残しているのなんて、ロビンソン・カノーくらいしかいないことは、マトモなライターなら理解できるはず(笑)特定選手の出塁率なんかあげつらう程度の記事なんか書いたところで、そんなの、なん意味も、価値もない。


出塁率(2013シーズン)
--------------------
Wells .287
Stewart .296
Hafner .296
Ichiro .297(=ジラルディの愚策の結果の数字)
Overbay .299
Soliano .300
Reynolds .301
Nunez .301
Jeter .308
A Rod .316 (Last 7 days)
Granderson .320
Gardner .344
A Rod .362 (2013)
Cano .390

最近の打率
--------------------
レイノルズ
28 days .342
14 days .281
7 days .188
Mark Reynolds 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

ウェルズ
28days .200
14days .200
7days .091
Vernon Wells 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

オーバーベイ
28days .188
14days .167
7days .077
Lyle Overbay 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

イチロー
28days .194
14days .194
7days .133
Ichiro Suzuki 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

グランダーソン
28days .212
14days .178
7days .211
Curtis Granderson 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com

ヌニェス
28days .278
14days .222
7days .111
Eduardo Nunez 2013 Batting Splits - Baseball-Reference.com


昔からイチロー嫌いなケン・ダビドフは、どうしてもイチローをあげつらいたくてたまらないのはわかるんだけどさぁ(笑)、出塁率が3割を大きく越えてる野手自体なんて、2013ヤンキースには「ほとんどいない」わけでね。それどころか、打率が2割越えたか超えないか程度の野手が打線にズラっと並んでるのが、今のヤンキースなわけ。
キャッシュマンのチーム操縦の下手さと、ジラルディの選手起用の下手さのせいで、野手のバッティングが、カノー以外、誰も彼も「下降線」だってことくらい、エクセル使って、小綺麗にグラフなんかにまとめなくてもわかるでしょ(笑)
左投手に強いイチローを左投手の日に全部休ませてる責任は、イチロー自身には無いよ、そりゃ。当たり前でしょうが(笑)

ブログ主なら、「2013年ヤンキースの失敗を10個挙げる記事」を書くとしたら、必ず、「好調だったイチローを、意味もなく干したこと」と、「ジラルディの選手起用」は必ず入れるよ。マジに(笑)


ほんとの原因をきちんと「えぐりだせない」から、いつまでたっても弱点が直らない。勝てない。それが、今のヤンキース。まぁ、ケン・ダビドフ程度の知見じゃ、無理だろうけどね。まったく浅はかな記事を書くもんだよ。

damejima at 09:43

September 14, 2013

以下、9月13日ボストン戦の7回裏に浴びた決勝の満塁ホームランが、なぜ「ヤンキース自身がみずから招きよせた人災」であるかを説明するわけだが、その前に、このゲームが、なぜ4-4の同点で7回裏を迎えたのかについて、ひとこと書いておきたい。
New York Yankees at Boston Red Sox - September 13, 2013 | MLB.com Classic


そもそも今日のゲームが最初から0-4と劣勢にあったのは、初回に黒田が4点をとられたからだ。
言うまでもないが、「ポストシーズンを争うような、カネのかかったチームの、高額サラリーの主力投手」として、4失点は多すぎるし、そもそも大量失点イニングが早すぎる。この失点数と失点イニングは、「もし2回以降のイニングでちょっとでも失点を重ねれば、即座に交代させられても、投手側から何も文句は言えないほどのレベルの失態」を意味する。
だが、黒田が交代させられずに済んだのは、単に、野手ばかり補強している偏ったロスター構成のヤンキースでは、本来補強ポイントだったはずのブルペンの台所が常に苦しいために、たとえ「初回に4失点した先発投手」でさえ、1回裏ではやばやと交代させるわけにはいかない、それだけだ。


4失点を1点ずつ取り返していくのは、とても骨が折れる。タイムリーなんてものは、チャンスが数回あって、やっと1回出るのが普通だし、そもそもヤンキースはタイムリーが出やすいチーム構成にはなっていない。たとえソロ・ホームランが数発出て2点くらいはなんとかなるとしても、4点差を一気にひっくり返すようなビッグイニングを作るのは、先発投手がマウンドから降り、ゲームが切羽詰ったタイミングにしか起こらないことがほとんどだ。


よくメディア解説者でもファンでも、黒田について「粘りのピッチング」などと呼んで褒めちぎりたがる人がいるが、ブログ主は全くそう思わない。
理由は簡単。この投手が常に「先取点を許してしまう先発ピッチャー」だからだ。

資料:2013黒田 全登板 ©damejima
黒田が先取点をとられたゲームを青色のセルで示した。(4月8日クリーブランド戦含む。この試合では、1回表ヤンキースが3点先制したが、1回裏に3失点している) なお、赤色のセルは、ヤンキースが先制しながら、黒田が打たれて逆転負けした試合。
黒田登板ゲームの詳細data generated by Hiroki Kuroda 2013 Pitching Gamelogs - Baseball-Reference.com

「投球数が無駄に多すぎる」こと、「テンポが悪く、野手の守備時間が長くなりすぎる」こと、「配球のワンパターンさ」など、この投手を好きになれない理由は他にも多々あるが、最も評価を下げているのは、他のなにより「先取点を簡単に与えすぎること」だ。
例えばブログ主は、2013年7月には、このピッチャーを一度もけなさなかった。それは、よくいわれるこのピッチャーの「防御率の良さ」が理由ではなく、「先取点をやらない登板が何試合も続いた」からで、単にそれだけに過ぎない。(もちろん、基本的に投手として高評価することにしたわけではない)

ダルビッシュファンには申し訳ないが、強豪相手だと、たとえ先発投手が「わずか1失点」であっても負けるなんてことは、よくある。むしろ、それが「ポストシーズン進出を狙うチームの主力ローテーション投手」に課せられた「宿命」というものだし、そういう強豪相手のクロスゲームで先取点をやらないことが、優勝チームの投手としての「ノルマ」でもある。
そういう立場にある投手が達成すべき「仕事」とは、数字の上でクオリティ・スタートとなる試合を積み重ねるなどという「うわっつらな仕事」ではなく、文字通り、勝つこと、そのものだ。
テキサスにとってのオークランド戦、デトロイトにとってのクリーブランド戦、ヤンキースでいえば同地区の上位チームとのゲームすべて。そういう、勝ちにくいゲームでも勝ててこそ、はじめて「仕事した」「エース」という言葉が似合う。(もっとも、「クオリティスタートできたから、仕事している」などという、低レベルな目標しか持たない投手だとしたら、話は別だが)
だから、今日のボストン戦のような大事なゲームでこそ、「先取点を簡単に与えてはいけない」のだ。ランサポートの数字なんて、どうでもいい。
先取点を与えて負けてばかりいては、防御率がいくらよくても、その投手の勝ち数は伸びないし、チームの勝率は上がらない。球数が多すぎれば、イニングイーターにすらなれない。当然のことだ。防御率がいいのに負けてばかりいる投手には、ちゃんと説明のつく「理由」がある。

単年だろうが、なんだろうが、これだけの額のサラリーをもらっている先発投手は「先取点をやらないピッチングができて当たり前」だと思っている。(同じように、20億近くもらっているステロイダーのAロッドがほんのたまにホームラン打ったからって、別に褒める気になどならない。「仕事」して当然のプレーヤーだ)
誰かのピッチングを「我慢のきくピッチング」と呼びたいなら、「先取点を与えるのが普通な投手」ではダメだ。先取点と追加点を、ダラダラ、ダラダラと相手チームに与え続けるような先発投手が、「我慢のきくピッチャー」であるはずがない。


さて、7回裏。
先頭シェーン・ビクトリーノがヒットで出塁すると
ジラルディは問答無用に黒田を降板させた。

ジラルディはマウンドに行く前に既に投手交代を手で示し、またマウンドの黒田と視線を合わせることも、言葉をかけることもしなかった。
なぜかといえば、理由は簡単、7回表にとうとう同点に追いついたというのに、その直後の先頭バッターをノーアウトで塁に出してしまうような、だらしないピッチングをしたからだ。
ブログ主はジラルディの選手起用のスタイルが大嫌いだが、この場面でジラルディが怒るのは当然だ。この交代については黒田が悪い

だが、血が頭に上ったジラルディは、次の投手を誰にするか、という点で、ゲームを左右する大きなミスを犯した


次の投手は、新人シーザー・カブラル
デビット・オルティーズに死球をぶつけ、
わずか2球で降板。


2013年6月に上げてきたヴィダル・ヌーニョというヤンキースのマイナー上がりのピッチャーがいたが、あの投手がそうだったように、このシーザー・カブラルというピッチャーも、フォームがおかしい。いずれ、股関節か肘か、体のどこかに重い故障を発症して長期休養する羽目になるだろう。こんなフォームのままマウンドに上げるなんて、ヤンキースのにはロクなピッチングコーチがいないとみえる。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年6月13日、ヴィダル・ヌーニョの股関節の故障と、ピッチングフォームの関係。(クレイトン・カーショーとの比較)

この新人ピッチャーのコントロールが根本的に悪いことについては、こんなフォームに作り上げたマイナーのピッチングコーチのせいだろうが、そんなことより問題なのは、こんな経験のない新人投手を、これほどヘビーな場面でマウンドに上げてしまうジラルディであって、言うまでもなく、監督ジラルディに責任の全てがある。ジラルディは、この大事なゲームの、それも、同点になった直後のノーアウト1塁という場面を、なぜまた、こんな経験不足の新人にまかせようという気になったのか。


死球でノーアウト1,2塁になって、ジラルディは、投手をプレストン・クレイボーンに交代させた。
だが、前の投手がたった2球でマウンドを降りてしまい、心も肩も準備ができていないクレイボーンは、代打ジョニー・ゴームズを四球で歩かせてしまい、さらに満塁のピンチを招くことになる。


クリス・スチュアートというキャッチャーの配球発想は、どういうわけか、ダメ捕手城島や去年までヤンキースにいたラッセル・マーティンのような、「頭をまるで使わないタイプのキャッチャー」と酷似している。スチュアートはピンチになると、とたんに「アウトコース低めの変化球」ばかり投げさせたがるのである。
資料:Damejima's HARDBALL:2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。
このクリス・スチュアートがいまだにヤンキースの正捕手でいられるのは、彼が打てるからでも、リードがいいからでも、肩が強いからでも、相手チームの打者の特徴を研究しつくしているからでもない。そもそも「キャッチャー」というポジションが2013年開幕前の補強ポイントのひとつだったにもかかわらず、ヤンキースが補強しようとしなかった、だからスチュアートも使うしかない、ただそれだけだ。
誰も言わないが、今のヤンキースは、ア・リーグ有数の選手層の薄いチームだ。だから、クリス・スチュアートがマスクをかぶり続けて、クソつまらない配球をやり続けることについての責任は、スチュアート本人以外には、GMブライアン・キャッシュマンに責任がある。

ジョニー・ゴームズだけでなく、ボストンというチーム自体が、MLBで最も待球してくるチームであり、可能な限り「ボール球を振らない」ということが徹底教育されている。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年5月24日、「ボールを振らず、かつ、ストライクだけ振れるチーム」など、どこにも「存在しない」。ボールを振るチームはストライクも振り、ボールを振らないチームは、ストライクも振らない。ただそれだけの話。

だからこそ、ヤンキースの先発投手たちとクリス・スチュアートがよくやるような「ボールになるアウトコースの変化球を空振りさせる」などという紋切型のワンパターンな配球戦略は、ボストンのような待球型チームとの対戦においては、そもそも通用しないのが当然なわけだが、ヤンキースバッテリーが「ボストン相手にはストライクゾーンで勝負しなければ最初から勝負にならないこと」に気づいたためしがない。
2012年にあれだけラッセル・マーティンのアウトロー配球を批判したわけだが、その後もヤンキースはまるで変わっていない。

実際、この代打ゴームズにしても、投手クレイボーンが、捕手スチュアートのサインにまんま従って、何も考えず投げこんでくる「最初からボールになるとわかっている、流れ落ちる軌道をえがく変化球の釣り球」に、まったく釣られず、振ってこなかった。

2013年9月13日 ジョニー・ゴームズ四球


加えて言うと、先発の黒田登板時からだが、ボストンは、ヤンキースのピッチャーが投げる球種のうち、「ストレート系」にずっとヤマを張り続けてきていて、それが、このゲームにおけるボストン打線の基本傾向だった。
もっというと、ボストンのバッターには、ホワイトソックスやブルージェイズ、エンゼルス、アストロズなどの「フリースインガーがズラリと揃った非分析型のチーム」(ここにヤンキースも含まれる)のように、「アウトコース低めのボールになる変化球」で簡単に空振り三振してくれるような簡単な打者は、ほとんどいない。(だからこそ、ボストンが勝負強い打線になっているわけだ)

だからこそ、もし「四球の許されない」満塁というシチュエーションになれば、突然登板させられてコントロールの定まらないクレイボーンと、アウトローの変化球で逃げる配球しか能がないスチュアートのヤンキースバッテリーがやろうとしている「ボールになる変化球を、なんとか振ってもらえないだろうか?」などという「曖昧で、かつ、弱気な作戦」が簡単に破綻するのは目にみえていた。
ヤンキースバッテリーが、このあとどこかで変化球でカウントを悪くしてしまって、ストライクをとるために「ストレート」を投げてくることは、この代打ゴームズを四球で歩かせた時点で、ほとんど確定していたといっていいのである。


ダニエル・ナバ、無死満塁の場面
アウトコースのチェンジアップで三振。

前の打者、ジョニー・ゴームズをアウトコースに外れる変化球の連投で歩かせてしまったクセに、次のダニエル・ナバの打席で「アウトコースの大きく外れたチェンジアップ」がたまたま効いて、三振がとれてしまった。
このことで、明らかにヤンキースのキャッチャー、クリス・スチュアートは、非常に大きな「勘違い」をした
「ゴームズは歩かせてしまったが、それでも、アウトコースの変化球でかわしておけば、なんとかなるのではないか」と、「甘すぎる判断」をしたのである。次打者サルタラマキアに対する初球で、ナバの4球目、5球目に投げたのと、まったく同じコース、まったく同じ球種を、3連投してまで使ったのが、その動かぬ証拠だ。
そして、監督ジョー・ジラルディもまた、同じ「勘違い」をした。「クレイボーンの変化球でなんとかしのげるのではないか」と、甘い考えを抱いたのである。だからこそ、ジラルディはコントロールのあやしいクレイボーンを替えなかった。


次打者、ジャロッド・サルタラマキア


次打者サルタラマキアへの初球は、前の打者ダニエル・ナバが三振した球と、まったく同じコース、まったく同じ球種の「チェンジアップ」だ。この球で、クレイボーンは、3球続けて「外のチェンジアップ」を投げている。
だが、サルタラマキアはピクリとも動かなかった
この「初球のチェンジアップ」でサルタラマキアが微動だにしなかったことで、「サルタラマキアの狙いが、『ストレート』、それもインコースのストレートであること」は確定していた。(もちろん、フォアボールの許されないこの場面では、打者が誰であろうと、ストレート系を待つ場面であることは言うまでもない)

だが、みずから満塁のピンチをまねいてしまい、「ボールになる変化球をアウトコース低めに投げ続ける」という「能無し配球」すらできなくなったクレイボーンとスチュアートのバッテリーは、サルタラマキアの対応ぶりをまったく観察せず、単なるストライク欲しさで、まさにその「投げてはいけないストレート」を、よせばいいのに「投げてはいけないインコース低め」に投げてしまう


結果、満塁ホームラン。

付け加えておくと、サルタラマキアは典型的な「ローボールヒッター」なのである。

サルタラマキアの右投手に対するHot Zone
サルタラマキア HotZone
via Jarrod Saltalamacchia Hot Zones - ESPN

2013年9月13日 7回裏 サルタラマキア満塁ホームラン



どうだろう。
2013年にヤンキースが野球というものを舐めてかかってチームを作った結果の、ほとんど全てがここに凝縮して表現されているのが、おわかりだろう。
New York Yankees at Boston Red Sox - September 13, 2013 | MLB.com Classic

この満塁ホームランは、
偶然などではない。

damejima at 13:10

September 10, 2013

今シーズンのヤンキース監督ジョー・ジラルディイチロー起用については、多々、言いたいことがある。

とりわけ、今シーズン、イチローのバッティングが好調であっても不規則、不連続な起用を止めず、さらには、起用するにしても、今シーズンの夏までに限っていえば左投手よりも打率が低かった右投手先発ゲームばかり起用し続け、結果として、バッティングを(さらに、ときに守備の勘さえも)「冷やし」続けてきたことについて、不快感を隠そうとは思わない。
例:Yankees hottest hitter, Ichiro Suzuki, pulled from game by Joe Girardi in double switch  - NY Daily News
「イチローがあまりにも絶不調だから先発を外されている」とか、「ジーターやAロッドが戦列に復帰したから、イチローをより打率の高い左投手先発ゲームをメインに起用する」というふうな、十分に合理的な「イチローを起用しない理由」「起用を減らす合理性」があるならば、こんなめんどくさい図を作ってまでして、文句をつけようとは思わないが、ジラルディの選手起用には合理性が欠けている。だから文句をつけるのが当然だ。
(ジラルディが「野手のバッティングを冷やした」のは、なにもイチローだけではなく、イチローと同じように、起用されたり、されなかったり、行き当たりばったりに起用され続けている他の打者でも、同じような事態は起きている)

大いに不満な今シーズンのイチローの起用ぶりを記録として残しておくため、まずは以下の図を用意してみた。長大な図だから、そのまま見るのではなく、まずはクリックして別窓にファイルを開き、さらに図をクリックして拡大して、「原寸大」で見ることをすすめる。


わざわざこんな図を作ったのは、ひとつには、後世の人に「2013年にイチローのバッティングは衰えた」などと、わけのわからない誤解をしてもらいたくないからだ。
マルチヒットで調子を上げかけるたびに、毎試合スタメンで使われるようになるどころか、むしろ先発から外され、マイナス30度の冷蔵庫で冷やされるような馬鹿馬鹿しい、不合理な起用ぶりで、ホットなバッティングが維持継続できるわけがない。

また、これも後世の誤解を避ける意味で、「2013年8月以降のイチローは、右投手をまるっきり打ててないわけではない」こともハッキリさせておきたい。
図からわかるように、イチローは、右投手先発ゲームにばかり起用され、バッティングを「冷やされ」だした「8月9日以降から9月8日まで」の1か月間において、右投手先発ゲームで出場した試合数の約3分の1にあたる「6試合」でマルチヒットを記録しているからだ。

つまりは、こういうことだ。
2013シーズンのある時期、イチローが右投手を打ちあぐねた時期があったのは確かであるにしても、他方で、左投手からかなりのヒット数を効率よく稼いだことによって、トータルには打率を2割8分台に乗せ、さらに上昇させつつあった。(そしてシーズン当初、チームは地区首位を走った)
にもかかわらず、ジラルディは、2013年シーズン終盤に突如としてイチローを、打率の高い「左投手先発ゲーム」ではなく、むしろ、より打率の低い「右投手先発ゲーム」でのみ起用する、不合理きわまりない起用法をイチローに押し付けだして、そのことは結果的にイチローのバッティングを「冷やし」た。
しかも、当初は、左投手先発ゲームのゲーム終盤の代打や守備要員としてゲームに出ていたが、やがてベンチに座ったままゲームが終わることが目立ちだした。
その結果、イチローのプレータイムは、「得意な左投手ゲームでの完全な欠場」と「苦手な右投手ゲームでのスタメン」が交互に繰り返される異常な状態にあり、しかも、「出場するたびに、異なる打順を打たされる」ような、データ上の合理性がまったく欠如し、かつ、プレーヤーに過度のストレスのたまる状態に直面させられだした。
イチローが8月初旬以降の1か月の右投手先発ゲームで記録した「6回」のマルチヒットは、そんな「わけのわからない起用」のさなかに記録されたものなのだから、むしろ、たいしたものだといえる。


基本的に言いたいことのひとつは、「イチローの出場ゲーム」を表す図の右半分において、「赤色部分(=マルチヒットのゲーム)と、青色部分(=イチローが先発起用されてないゲーム)とが、常に交錯して存在していること」によってハッキリ示されている。
これは、イチローにマルチヒットが続きだしたとき、あるいは、その直後、必ずといっていいほどジラルディはイチローを先発から外していることを意味している。

具体的にいえば、例えば「7月28日」にイチローは「左投手先発ゲーム」で4安打している。にもかかわらず、ジラルディは、その直後の「左投手先発4ゲームを含む8ゲーム」において、半分の4ゲームでイチローを先発させず、左投手先発ゲーム4試合のうち、3試合を先発させていないのだから、この監督の起用は意味がわからない。バッティングが「冷えて」当然である。
同様に、「8月9日」に3安打、「8月18日・20日」には2日続けて2安打しているにもかかわらず、数試合で先発から外されている。また「8月30日」には逆転2ランを打ったにもかかわらず、直後に左投手先発ゲームが3試合続くと、ジラルディはイチローを先発から外し続けた。

図から、7月末以降にイチローが、今シーズン得意としている左投手先発ゲームで、ほとんど起用されていないこと、さらには、たとえ左投手相手にマルチヒットを打ったとしても先発起用が続かないことは、図の最も右側に記した「」というマークと、イチローの打撃成績を対比させてもらえばわかるはずだ。
8月以降にイチローが左投手のときに先発することもあったように思う人がいるかもしれないが、それは「9月8日」がそうであるように、ジーターが怪我で休んだとか、何か理由があってのことで、ジラルディは左投手先発の日は基本的にはイチローをスターターから外している。


また、この図から、言いたいこと、言えることは、単に「左投手先発ゲームでもイチローを使え」などというような、単純なことばかりではない。

例えば、あまり言及している人がいないことだが、7月にヤンキースと対戦したチームは、大半のゲームで右投手を先発させている。(左投手より右投手のほうが得意なロビンソン・カノーは、7月に多かった右投手との対戦で5月6月の不調な感覚を乗り越えるきっかけを掴んだ)
だが、7月末以降にヤンキースがアルフォンソ・ソリアーノやマーク・レイノルズといった右打者を補強し、右打者ジーターが復帰して、ヤンキースの打線が変化すると、さっそくヤンキースの対戦チームは左投手を先発させるゲームをかなり増やしてきた。

夏に左投手先発ゲームが増えたことで、それまで左投手に高い打率を残していたイチローの起用が8月以降増えたのか、というと、実際には、図を見てもらうとわかるとおり、逆に減少して、右投手先発ゲームでばかり使っているのだから、まったく頭にくる。

例えば、移籍当初、驚異的な打撃成績を残した右打者アルフォンソ・ソリアーノだが、彼がヤンキースに移籍してきたときには、ヤンキースが右投手とばかり対戦していた時期(=7月)を過ぎていた。そのためソリアーノは移籍当初から彼の得意な左投手との対戦も多く、それで高い打撃成績を維持できた。
というのは、ソリアーノは、2013年でも、キャリア通算でみても同じなのだが、「左投手のほうがはるかに得意な、典型的な右バッター」だからだ。
Alfonso Soriano Career Batting Splits - Baseball-Reference.com
ナ・リーグにいたソリアーノのことをよくわからないア・リーグのチームは、おそらく当初は彼の得意不得意がわからず、面食らって打たれもしただろうが、それは「ソリアーノに対する単なるデータ不足」であり、その後ソリアーノの打撃がパタリと止まったことでわかるように、ヤンキースの右打者獲得の効果なんてものが永続するわけではない。

そして、チームがたとえ右打者を増やしたからといって、いわゆるジグザグ打線を組めばいいかというと、そうではないことは、各打者のデータなどから明らかだ。

この図から言えることについては、これからも必要に応じて記事にしていく予定。

2013ジョー・ジラルディによるイチロー起用ゲームリスト
© damejima

凡例 legends
図のもっとも右側に「」とあるのは、「相手チームの先発が右投手だったゲーム」を意味する。この記号は、7月以降について、つけてある。全ゲームつけると良いのはわかっているが、これを調べて図示する作業が、もう、考えられないほどめんどくさい(苦笑)
図の凡例


damejima at 10:02

August 09, 2013

前の記事で書いたことだが、ヤンキースというチームがこの30年間にやってきたことは、つまりこういうことだ。
Damejima's HARDBALL:2013年8月5日、「生え抜きの成長、黄金期、ステロイド、そして衰退」 正しいヤンキース30年史。

低迷し続けた80年代が過ぎ、ヤンキースは90年代中頃、ようやく若い選手を育てる手法に転じることにした。勝率はみるみる上昇。90年代末には黄金期を迎えた。だが、2003年以降になると、チームはステロイド系スラッガーを抱えこみながら、ゆるゆると下降し続け、やがて「次の時代をどうするか」難しい選択を迫られた。

アレックス・ロドリゲスのステロイド問題は、直近のヤンキース30年史という「ちょっと高い位置」から眺めると、バーニー・ウイリアムスの全盛期が終わるのと並行して90年代末の「黄金期」が終了したあとも、ヤンキースは、まるで医師が重篤な状態にある患者に対して延命措置を施すかのように、ひたすら黄金期を「延命」し続けようと、もがき続けてきた中で生まれてきた問題だ。
かつて若手だったリベラがいまや引退を目前にしているわけだが、ヤンキースは「リベラ、ジーターの次の世代をどう開拓するのか」という長年の課題に明確な手を打てないまま、ゆっくりと下り坂を下っていく。これは、いってしまえば、社会の高齢化に明確な手を打たないまま高齢化社会時代を迎えてしまった日本の年金制度のような話だ。


バイオジェネシス事件には、アレックス・ロドリゲスの弟分で、かつてヤンキースに2005年から2009年まで在籍し、期待の若手のひとりと言われ続けて結局芽が出なかった、かつてのセンター、メルキー・カブレラも深くからんでいる。

これはなにも「一部選手のステロイド使用を、ヤンキースがチームとして公認していた」とか、「黙認していた」とかいう意味で言うのでは全くないと明確に断っておいてから言うのだが、もしファンやメディアも含めた意味の「ニューヨーク・ヤンキース」が「アレックス・ロドリゲスがやってきたような何か」をこれまで一切認めてこなかったなら、そもそも2000年代中期の「下降を続けていくヤンキース」自体が存在せず、むしろ、2000年代前半のどこかでヤンキースは一度バッタリと停止して、もっと違う道(例えば新しいチームづくりへの道)を歩んでいたかもしれない。

だから、ヤンキースにとって、いま起きている「アレックス・ロドリゲス問題」をどう処理するか、という問題は、実は意味的には、単なる「スポーツ選手のドーピングについての道徳的な善悪判断」なのではなくて、むしろある種の「清算」といったほうがいい部分がある。
たとえば長く愛し合ってきた男女が関係を「清算」するとする。その行為は、法律や道徳からみた善悪の判断には必ずしも沿わない。当事者は、いいことも悪いこともひっくるめて色々と脳裏に思い出しながら、「これでひとつの時代が終わるんだな・・・・」と感傷にとらわれながら、どこにあるのかわからない終着駅をアテもなく探しながら、右往左往することになる。
外から、「あなたがたはもう、長い時間を清算するときだ」と冷静に言い放たれたとしても、酔っ払いが長居しすぎた店で飲み代を払ってタクシーで家に帰るように、簡単にはいかないのである。


珍しくこんなことを考えたのも、この記事を読んだからだ。
The Greedy Pinstripes: It Is Time To Sell: Brett Gardner

この記事の内容については触れてもしょうがない。記事の意味、記事の価値は、自分で読んで、自分で判断してもらいたい。
読む人それぞれが、それぞれの立場から読むしかない。どんな思い入れをもってゲームを眺めているかは、人によってまるっきり異なる。


ひとことだけ言うと、
この記事の書き出しは、とてもいい。

Writing this article really hurts me as a fan of not only the Yankees but of Brett Gardner as well.
この記事を書くことは、ヤンキースファンであるだけでなく、ブレット・ガードナー・ファンでもある自分自身をひどく傷つけることになった。

ヤンキースという「構造材の耐用年限が到来した、古いビルディング」には、遅かれ早かれ、再建の必要なときが来る。

ブレット・ガードナーは、ヴェテランの多いヤンキースにしては唯一の若いスタメンといえる選手だ。
その彼に、「近未来のヤンキースにおいて、どういう役割を期待するのか」を考えること、そして「未来の彼に、何が期待できるのか」を判断し、想定しておくことは、「先発ローテーションをどう再建するのか」という最も重要な課題に次いで、「これからのヤンキース」を考える上の不可欠な要検討事項であるのは確かだ。
だが、たいていの人は漫然としかモノを考えない。若い頃のジーターの打撃成績やキャプテンシーと、今のガードナーとでは、あらゆる点で比べものにならない「差」があることすら考慮しないまま、「そりゃ、これから若手を使う時代になったら、生え抜きの中では唯一スタメン張ってるガードナーがリーダーになるにきまってるだろ?」などと、型にはまった紋切型の意見しか持たない。そして、型にはまった思考がこのチームを硬直化させてきたことに疑問すら持たないくせに、昔からのヤンキースファンを自称したがる。

人をいなす能力にだけは長けているニューヨークのメディアだが、彼らにしても、バーニー・ウイリアムスの引退以降、これまで有り余るほど長い時間があったにもかかわらず、ヤンキースがここまで老朽化するまで、この問題についてのきちんとした議論の場を用意してこなかった。


だが、この記事を書いたDaniel Burchは、違う。

たぶん彼は、この問題、つまり「これからヤンキースはどう再生すべきか」について、嫌になるほど考え抜いてみたのだろう。そして、考える上で、あらゆる前提条件を一度とっぱらって考えてみたはずだ。
結果、彼は「自分でも考えもしなかった、ある地点」にまで、うっかりたどりついてしまう。それは、「ガードナーは放出すべき」という「自分でも思ってみなかった結論」だ。
それは、彼自身が記事の冒頭でいっているように、「ヤンキースファンであると同時に、ガードナーファンでもある自分自身を酷く傷つける」結果になった。

でも、彼は勇気をふりしぼって書いた。
It Is Time To Sell: Brett Gardner
ブレット・ガードナーは、今こそ売り時だ」と。


この記事の主張の中身が的を得ているか、そうでないかは、この際判断しない。そんなどうでもいいことより、この「書きづらい記事」をいまのタイミングで書くことの「辛さをともなった、真摯さ」に敬意を表して、Daniel BurchGreedy Pinstripesに、心からの敬意をこめた拍手を贈りたいと思う。

例えばイチローにしても、ヤンキース移籍を前にして考え抜いた結果、「自分は『これからのシアトル・マリナーズ』に必要ない」と自分自身について結論づけた行為も、やはり彼自身を傷つけたことだろう。
ヤンキースとの再契約を選んだ2年契約については、ブログ主には賛成しかねる部分もあるにはあるが、それを外野から声高に言うより前に、決めづらいことを決める一瞬一瞬の決断に対して敬意を忘れないようにしなければと、この記事を読んで、あらためて考えさせられた。

いまのジョー・ジラルディにしても、言いたいことは山のようにある。だが、Daniel Burchの「真摯さ」には、とても学ばされるものがあったことだし、ジラルディ・ヤンキースのゲーム手法の稚拙さを全く批判をしないわけにもいかないのだが、なにもかもを否定するのはもう少しだけ我慢してみることにしたいと思う。

damejima at 03:22

August 06, 2013

ヤンキース、というと、すぐに「常勝」だのなんだのという単語を連想したがる奇妙な人が日米問わず多いようだ(笑)まぁ、たぶん日本でいうなら、セ・リーグ某球団ばかり見てきたか、MLBをよく知らない人たちの慣習なのだろうが、そんなもの、どうでもいい(笑)
MLBを見てきた人なら誰でもわかっている。ボストン・レッドソックスがかつてお荷物球団だった時代があるのと同様、この30年のヤンキースの歴史は、けしてこのチームがずっと常勝だったわけではなく、むしろ「他のあらゆるプロスポーツ同様に、容赦ない栄枯盛衰のリズムに従ってきた」ことを物語っている。
そんなことくらい誰でもわかりそうなものだが、歴史に目をつぶって間違った自説を信じたままでいたい人もたくさんいるようだ。そんな人間に何を言っても馬耳東風。放っておいて遠くから冷笑するに限る(笑)
New York Yankees Team History & Encyclopedia - Baseball-Reference.com

何度も書いてきたように、ヤンキースという「ビルディング」が、80年代から90年代初頭にかけての長い低迷期を90年代中期に抜け出し、ある意味の「建て替え」に成功できた根本理由は、1990年代中期に、この30年間でたった一度だけ、ヤンキースのファームが本来の「育てる」という機能を最大限に(それも奇跡的なくらいに)発揮したからだ。
だから、その後のヤンキースの繁栄は、90年代に一度だけ成功した若手育成によって組み上げられた「太い鉄骨」、つまり「構造材」の強靭さによってもたらされただけの果実なのだ。
バーニー・ウイリアムスの全盛期の終焉は、彼を中心としたヤンキース黄金期の終焉を意味していて、2003年以降の「黄金期後のヤンキース」は単に、ステロイド・ホームランを量産するバッターをカネでひたすら買い集めながら、「ビルの骨組みである『太い鉄骨』が錆び朽ちるまでの強度」によって「ビルディング全体をなんとかもたせてきた」に過ぎない。
「ヤンキースの構造材となった選手」は、具体的にはもちろんジーターやリベラなどだが、彼らが役割を終わろうとしつつある今、若い世代の「跡継ぎ」を育ててこなかったヤンキースの屋台骨が根本から揺らぐのは当然の結果であって、驚くことでもなんでもない。


1981年
80年代唯一のワールドシリーズ進出と、後の選手育成
Gene Michaelの功績

この30年間、選手以外で「最もヤンキースに貢献したといえる人物」が誰かといえば、選手を「買う」ことしが眼中になかったヤンキースのファーム・システムをたった一度だけ復活させ、ヤンキース黄金期を支える「構造材」を大量生産することに成功したGene Michaelのような人物だといっていい。近年のヤンキースのステロイド・ホームランバッターの名前を挙げられる人はいくらでもいるだろうが、そんなことはどうでもいい。
Gene Michaelは1990年ヤンキースGMになり、92年にバック・ショーウォルターを監督に据え、彼とともに若い人材を育て上げた人物だが、同時に、1981年に「ヤンキースの80年代における唯一のワールドシリーズ進出」を果たしたヤンキース監督でもある。また、黄金期のキープレーヤー、バーニー・ウイリアムスがトレードされそうになったとき、ショーウォルターとともに阻止した人物でもある。
「ヤンキース史」とか「ヤンキース年表」と自称するもののうちで、Gene Michaelの仕事の重みを軽視しているものは全て無視していいと思う。


1982年〜1993年
ポストシーズンに一度も進出できない長い低迷期

監督時代のGene Michaelによる80年代唯一のワールドシリーズ進出の後、1982年から1993年までの12シーズン、ヤンキースは一度もポストシーズンに進出していない。この間、ビリー・マーチン、ヨギ・ベラ、ルー・ピネラなど、数々の名監督がヤンキースを蘇生させようとしたが、誰も悪い流れを変えられなかった。


1992年〜1995年
ジーン・マイケル、バックショーウォルター体制の登場

誰も流れを変えられなかったヤンキースを「変える」ことに成功したのが、1990年にGMに就任したGene Michaelだ。彼はヤンキースの選手編成の手法そのものを根本的に見直して、カネで選手を買ってくるのではなく、ファームで生え抜きの若い選手をゼロから育てた。
例えば、バーニー・ウイリアムスは、1992年にヤンキースのマイナーであるColumbus Clippersのゲームに、マイナーでの経歴としては最多の「95試合」に出場している。同じくジーターも1995年にColumbus Clippersで最多の「123試合」に出場しているし、リベラがメジャーデビューしたのも同じ1995年だ。(ちなみに若い時代のリベラのトレードを思い留まったのも、このGene Michael)
Gene MichaelがGMに就任した1990年、ヤンキースのスタメンに誰ひとりとして3割を打っているバッターはおらず、先発ピッチャーは全員がERA4点台という、2013年よりずっと酷いチームだった。
だが、Gene Michaelは就任の4年後、94年には、ヤンキースを地区優勝できるチームに仕上げている。これは、それまで東西2地区制だったア・リーグが、中地区を設けて「3地区制」になったため、東地区の強豪が他地区に分散したことが寄与したのも確かだが、それよりなにより、バーニー・ウイリアムス、ジーター、ペティット、ポサダ、リベラ、カノーなど、ファーム育ちの生え抜き選手が成長したことによる。


1996年〜2002年
バーニー・ウイリアムスの全盛期とダブる、
「ヤンキース黄金期」

ヤンキースに復活をもたらしたGene Michaelとバック・ショーウォルターのコンビは1995年で退き、翌96年からはGMがBob Watson、監督がジョー・トーリという新コンビにガラリと変わる。これはせっかく収穫を迎えた麦を他人に収穫させるようなもので、よくこんなことをしたものだと思う。
後にBob Watsonは、1997年にワールドシリーズ連続出場を逃した責任をとらされて1998年2月退任しているが、今にして思えば、あまりにもハードルが高すぎる。もしその条件を、Bob Watsonの後任として1998年2月にヤンキースGMに就任したブライアン・キャッシュマンにあてはめるなら、彼はもう何回も辞任していなくてはならない。しかし、彼は一度も辞めてない。

言うまでもないことだが、「キャッシュマン、トーリ体制」は、「ジーン・マイケル、バック・ショーウォルター体制」が生産した「ヤンキースというビルディングの骨組み」をそのまま受け継いだに過ぎない。
それは、ボストン・レッドソックスで1994年から2002年までGMだったダン・デュケット(現ボルチモア・オリオールズ編成責任者)が集めた人材を、後任GMであるテオ・エプスタイン(現カブスGM)が踏襲しただけなのに、あたかも2000年代のボストンの強さがエプスタインの手腕の成果ででもあるかのように誤解され続けてきたのと、まったく変わらない間違いだ。


2003年〜
ステロイド・ヤンキース

MLBでは、地区最下位になるような弱小球団は、翌シーズンのドラフトで才能あるドラフト上位選手の指名権を得ることでチーム再建への一歩を踏み出すことができる仕組みになっている。若い選手はサラリーが安いわけだから、こうしたドラフトによる再建方法は、育成に時間がかかりはするものの、コスト面では安上がりで済む。
だが、90年代末ヤンキースのように、毎年のように優勝する状態が続くと、ドラフトによる有望新人の指名権獲得は期待できなくなっていき、同時に、選手獲得コストがうなぎ登りに上昇していくことになる。そうなると、自軍の若い有望選手をキープしたまま選手レベルを維持しようとすると、他チームから高額なサラリーのFA選手を買うか、ドラフト外でラテンアメリカやアジアから選手をかき集めるくらいしか方法がなくなる。
実際、2000年代中期ヤンキースのスタメンには、2004年入団のAロッドはじめ、メルキー・カブレラ、シェフィールド、ジオンビーなどなど、ステロイド系スラッガーが多く名前を並べている。その背景には、ヤンキースが「ジーン・マイケル、バック・ショーウォルター体制」で作ったせっかくの若手育成機能をみずから放棄し、再び1980年代のような「カネで選手を買い集めるシステム」に戻ってしまい、なおかつ悪いことに、そこに「ステロイドの蔓延」も加わってしまった、ということがある。
いま多くの人がイメージする「ホームランの多い常勝ヤンキース」とは、2000年代に作られた人工的な「偶像」でしかない。

2006年にヤンキースが、1997年から28年間も傘下に置いてきたAAAのColumbus Clippersを手放してしまったのだが、その背景には、ヤンキースが「若い選手を育てる」のを止め、「FA選手を買う」という選手編成方針の転換があった。

例えばNeil Allenは、2003年、2004年、2006年にColumbus Clippersの投手コーチをつとめているように、長くヤンキースのさまざまなマイナーチームで投手育成の要職をこなしてきた人だが、彼は、ヤンキースが2006年にColumbus Clippersを手放すと、ついにヤンキースを離れてしまい、翌2007年からはタンパベイ・レイズのマイナーであるDurham Bullsの投手コーチに就任して、とうとう長年続いてきたヤンキースとの絆を断つことになった。
これは、ヤンキースのファームシステムが再び80年代のような弱体化傾向にあることを示す事例のひとつであり、マイナーのコーチ流出はヤンキースの若い選手の才能がなかなか開花しない原因のひとつにもなっていると思われる。


2012年〜
ノン・ステロイド・ヤンキース

2000年代中期に「若い選手を育てる」路線を自ら捨て、「FA選手を買う」路線に戻ってしまったヤンキースだが、買ってきた高額サラリーの選手たちの度重なる怪我、ステロイドによる出場停止、贅沢税問題など、さまざまなトラブルを抱えていて、その結果、予算はとてつもなく「硬直化」している。つまり、足りない選手を補強しようにも、自由に予算を使うことができないのである。
そして、おまけに悪いことに、予算の自由度がまるで無い中で、GMブライアン・キャッシュマンは、内野手やピッチャーのような「絶対的に不足しているポジション」の選手ではなく、外野手のような「既にダブついているポジションの選手」ばかり買ってくるのだから、まったくもって始末が悪い。

ステロイドのせいもあって、ホームランを量産する選手への風当たりは、いうまでもなく、きつくなり続けている。
最近のアンチ・ドーピングの流れを受けて、MLBでも大規模かつ執拗なドーピング検査が行われるようになったこともあるし、また、近年のデータ活用の発達で、打者の傾向が簡単にスカウティングされるようになってきたこともある。ヤンキースに限らずだが、ホームランを量産するスラッガーや主力先発投手など、長期高額契約選手のプレーに対するマークは、年々きつくなっていくばかりだ。
言うまでもないことだが、これまでステロイドを使って長打を量産してこれた選手が、近年の規制強化でステロイドが使えなくなったことで成績がガタ落ちした、ということもあるだろう。おおっぴらにならないだけだ。

こうした中、ジーター、リベラといった長年ヤンキースの骨組みとなってきた「構造材」には耐用年数の限界が見えてきている。

2012年は、Aロッド、グランダーソンなど高額サラリーの主軸打者の長期のスランプ、主力投手サバシアのストレートの球威低下、Aロッドのステロイド問題、あらゆる問題が表面化しかけたが、それでもヤンキースは、イバニェスイチローカノーなど、一部選手の頑張りによって、かろうじて地区首位を拾った。
だが、翌2013年は、前のシーズン終盤で活躍をみせたイバニェスと再契約せず、またイチローを重用しないという、ピント外れのままのスタートとなり、さらに重い怪我でDL入りする主力選手が続出。また、補強ポイントを間違ったピント外れの選手補強が連綿と続くことで、2013年ヤンキースは結果的に「内野手は常に不足し、逆に、外野手は常にあり余っている状態」、「打力は足りないので補強が必要だが、かといって、投手力も補強されない、投打が両方壊滅する状態」、「補強した野手のポジションがあまりにもかぶり過ぎていて、どれだけ野手を補強しても同時には出場させられない」などという、アンバランスな状態になった。

せっかく好調期を迎える野手が出てきたとしても、好調期→起用法の変更→調子落ち→好調期→起用法の変更→調子落ち、という「ムダな繰り返し」の連続では、チームの得点力なんてものが安定するわけはない。
こうした「的確でない選手獲得を原因とする、度重なる起用法の変更」と「ジラルディの不安定な選手起用」は、2013ヤンキースにおけるひとつの「連続したワンセットの自己崩壊現象」であり、ヤンキース野手陣を常に不安定な状態におとしめる大きな原因のひとつになっている。
ベテランの多いチームにとって「意味のわからない不安定さ」はプラス要因にはならない。ヤンキースが2013年にやっている頻繁な起用法変更は、ベテランの競争意識を煽って成績を向上させるような代物では、さらさらない。

2014年〜
不透明なヤンキース

怪我をしてゲームに出られない主力選手、ピークを過ぎた選手と結んだ5年を超えるような長期契約に多くの予算が裂かれているバランスを欠いた予算配分により、来年以降もヤンキースのチーム予算の硬直化は避けられない。今後ヤンキースがとるべき対策が、どの程度の「深さ」なのか、誰もまだ測定していない。

damejima at 01:29

July 09, 2013

ESPNのシニアライター、ジェイソン・スタークのツイートによれば、もしカンザスシティ初戦でヤンキースにホームランが無ければ、5試合連続ホームランの無いゲームとなり、「1996年6月」以来の出来事らしい。
ホームランの無かった4試合のうち、3試合に勝っているというのに、神経質な人だ(笑)


人はメンタルの非常に弱い動物だ。

「1996年6月以来」とか、ちょっと人に言われると、それだけでデータに弱い人などは、「ああ、1996年も貧打だったのか・・・・。いったい地区何位だったんだ? 4位くらいか・・・?」などと思ってしまう。


だが、1996年ヤンキースにとって、「5試合連続でホームランがない」という記録をつくった「1996年6月」は、実際には、「18勝11敗、勝率.621」と、このシーズンにおける「最も勝率の高かった月」である。
しかも、だ。月別ホームラン数が最も多かったのが8月の40本、月別チーム打率が最も高いのが7月の.294であるにもかかわらず、シーズンで最も勝率がよかったのは「6月」で、この「1996年6月」は、チームホームラン数が最も少なく、かつ、チーム打率が最も低い月だったのだ。
1996 New York Yankees Batting Splits - Baseball-Reference.com


簡単なことだ。
野球はホームランの数で決まるのではない
たったそれだけのことだ。


1996年ヤンキースの総ホームラン数は「162本」しかない。
これは、2012年ア・リーグでたとえると、リーグ平均「179本」に達しない数字であり、この年に貧打の汚名をほしいままにしたシアトルの「149本」とそれほど大差ない。
1996 American League Season Summary - Baseball-Reference.com
1996年ア・リーグのチームホームラン数トップは、ボルチモアの「257本」だから、ヤンキースは約100本もの大差をつけられている。リーグ最下位だったミネソタから数えて、下から3番目のホームラン数なのだ。
個人単位でみても、チーム最多のホームランを打ったバーニー・ウィリアムスでさえ29本で、30本打てたバッターはひとりもいない。


この「ホームランが打てない1996年のヤンキース」、
シーズン最後にどうなったか。

2位ボルチモアに4ゲーム差をつけて地区優勝。ALDSでテキサス、ALCSでボルチモアを蹴散らし、ワールドシリーズで4勝2敗でアトランタも退けてワールドチャンピオンになっているのである。

もういちど書いておこう。
野球はホームランの数で決まるのではない

勝てばいい。それだけのことだ。

近年のヤンキースの黄金時代を築いたのは、バーニー・ウィリアムス、若いデレク・ジーター、シンシナティから来たポール・オニール、シアトルから来たティノ・マルチネス、ボストンから来たウェイド・ボッグスなど、ハイアベレージで打てて、しかもそれが長期に持続できる選手たちが一堂に会したことによって生まれた90年代後半ヤンキースの「濃密な」野球スタイルであり、2000年代以降にステロイド・スラッガーをズラリと並べ、毎年200本以上ホームランを打ちまくったわりに、わずか1度しかワールドシリーズを勝てなかった「まやかしの」ヤンキースではない。(もちろん2013年ヤンキースが1996年ヤンキースと同じだ、などと野暮なことを言うつもりはない。選手層の厚みがあまりに違いすぎる)


ちなみに、1996年ヤンキースで、キャッチャーとしてワールドシリーズ優勝を経験したのは、他の誰ならぬ、現監督ジョー・ジラルディ、その人だ。
ジラルディはコロラドから移籍してきた1996年にヤンキースでワールドシリーズ優勝を経験。その後4シーズンの在籍中に運よく3度のワールドシリーズ優勝を経験している。
Joe Girardi Statistics and History - Baseball-Reference.com


人はキャリアによってつくられる。
こうしてあらためて眺めてみると、ジョー・ジラルディの経験にある「ヤンキース」とは、ホームランがそれほど打てなくてもワールドシリーズに勝ち続けられた90年代のヤンキースの黄金期であるだけに、ブログ主ですら、監督としての彼の野球にときとして「あまりの小ささ」を感じ、その「細かさ」を不満に思ったりするのも、ある意味、彼ならではのキャリアのなせる業かもしれない。

damejima at 07:58

May 22, 2013

New York Yankees at Baltimore Orioles - May 20, 2013 | MLB.com Box

シーズンハイとなる11本ものヒットを打たれながらも、なんとか4失点に抑えたCCサバシア
6回をわずか3安打に抑えたが、そのうち2本がソロホームランで、先取点を許したフレディ・ガルシア

サバシアは6回1/3で102球もの球数を投げ、
ガルシアはわずか6回66球しか投げていない。

2人のヴェテランの好対照な投球内容だが、
どちらをより優れていると考えるかは、好みによる。
少なくとも味方の守備時間の長さにおいては、
ガルシアのほうが短いとは言える。


しかし、それぞれの投球数には、それぞれの意味がある。
ヤンキース監督ジョー・ジラルディは、いつもサバシアを我慢して我慢して使う。
他方、オリオールズ監督バック・ショーウォルターは、今のガルシアで「使えるところのみ」を切り取って、持ち味を最大限発揮させようとしている。


去年、「ヤンキースの先発ピッチャーは、6回または7回を4失点で終わる」と書いたことがあるわけだが、「最近の」サバシアは、いつ大量失点してもおかしくない。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年9月15日、ヤンキースが「3対6で負け」、「3対2で勝つ」理由。
というのも、サバシアのストレートの球威が失われてしまい、どうしても「変化球」に頼らざるをえなくなっているからだ。さらに悪いことに、かつて得意だった「右バッターのインコースにストンと決まって、見逃し三振をとるカーブ」も、どういうものか、投げきることができない。
だから今のサバシアの配球は、どうしても「外のスライダーか、シンカーばかり」になってしまう。このことは相手打線もわかってゲームに臨んでいるから、どうしても狙い打ちにあう。


かつてのボルチモアは、早打ち打線とジェレミー・ガスリー(今は移籍先で大復活)に代表される弱体な投手陣が特徴の大味なチームで、ア・リーグ東地区ではヤンキースやボストン、タンパベイといった上位チームにとっては「単なる、おいしいお客さん」でしかなかった。
だが、GMとして2000年代ボストンの黄金期を準備した本当の立役者ダン・デュケットがGMに、そしてチーム立て直しに定評のあるバック・ショーウォルターが監督になったことで、すっかり体質が変わり、いまやア・リーグ東地区のポストシーズン常連チームとなりかけている。
このゲームでも、ボルチモア打線は、明らかにサバシアのボールになる変化球をしっかり見極めつつ、アウトコースにストライクをとりにくる変化球に狙いを絞って、ヒット量産に成功している。さしものサバシアも、今はボルチモアの上位打線だけでなく、下位打線にも四苦八苦させられる。
ボルチモアはもう昔のような「お客さん」ではない。


他方、フレディ・ガルシア。
2004年6月までシアトルの主力投手だった彼だが、ヴェテランになってからは「つかまりそうで、つかまらない変化球投手」という持ち味の技巧派になり、たしか去年の中心球種は「スライダー」だったと記憶しているが、このゲームでの中心球種は「シンカー」で、そこに「スプリット」「カーブ」「スライダー」を適度に混ぜて、2本のソロホームランを除けば、ヤンキース打線に芯でとらえたバッティングをさせなかった。
ガルシアは、去年まで2シーズン、ヤンキースに在籍していたわだが、2012年オフにヤンキースは再契約を提示しなかった。というのも、2012シーズン終盤にヤンキースが地区優勝争いで、2位ボルチモアに激しく追い上げられて最悪に苦んだ時期、ガルシアはどうしても勝ちたいゲームで、ちょうど今サバシアがやっているのと同じように、「カウントを悪くして、苦しまぎれに外一杯のコースに置きにいった変化球を、狙い打たれてばかりいる」という悪循環を繰り返して、ボルチモアに追い上げを食らったシーズン最終盤にはとうとうローテーションから外されているからだ。

つまり、2012年終盤のガルシアは、「つかまりそうで、つかまらない」どころか、「つかまりそうで、予想通り、つかまってしまう投手」だったわけで、ヤンキースに残れなかったのは当然だった。

もちろん、ガルシアがアウトコース低めのスライダーばかり投げて打たれていたのには、当時のヤンキースのキャッチャー、ラッセル・マーティンがアウトコースのスライダーばかり使いたがって単調なサインを出していた、というのも大きく影響している。(だからこそ、ガルシア同様にマーティンにも再契約を打診しなかったのだと思う)
参考記事:Damejima's HARDBALL:2012年8月20日、アウトコースの球で逃げようとする癖がついてしまっているヤンキースバッテリー。不器用な打者が「腕を伸ばしたままフルスイングできるアウトコース」だけ待っているホワイトソックス。

しかし、今日のゲームのガルシアの変化球は、けして「アウトコースのスライダー」一辺倒ではない。シンカーこそ甘い球も多かったが、それでもスプリットやチェンジアップを含め、さまざまな変化球を、それもさまざまなコースに投げわけることで、ヤンキース打線に的を絞らせなかった。特に、ヤンキース2巡目以降に多投した「チェンジアップ」は効果的で、ほとんど誰もつかまえることができなかった。


2013年のガルシアは、一度サンディエゴとマイナー契約したが、スプリング・トレーニングが終わる3月末にリリースされてしまい、その後投手不足に悩むボルチモアにマイナー契約で拾われ、5月以降に4度先発している。そして、理由は知らないが、どの登板も70球程度しか投げていない。
だが、その「ボルチモアで、投球数を限定して使われているガルシア」は、WHIPが1.075と、近年では一番いい数字になっている。確かなことはわからないが、ガルシアの肩の衰えを承知した上で、フレディ・ガルシアのいいところだけを使おうという、バック・ショーウォルター流(あるいはリック・アデア流)のクレバーな選手起用のように思う。


それにしてもこのゲーム、
両チームの監督の選手起用の応酬が面白かった。

6回まで2-2ながら、サバシアの調子の悪さを見越したショーウォルターは、調子の良かったガルシアを6回で早めにマウンドから降ろし、7回からはリリーフをどんどん投入して、ゲーム終盤の勝ち逃げを図った。そして、かたやジラルディは、ランナーを出し続けて苦しむサバシアを7回まで引っ張ろうとした。

ショーウォルターの「継投」は、ガルシアが抑えていたライル・オーバーベイに勝ち越しホームラン(スコア3-2)を打たれ、ジラルディのサバシア「続投」は、サバシアが例によって例のごとしの単調なアウトコースの変化球を狙い打たれて連打され、逆転を許して失敗してしまう(スコア3-4)。
結果だけいうと、ショーウォルターの「継投」策も、ジラルディの「続投」策も、両方とも失敗ではあるが、形勢としては、ややボルチモアの狙う「勝ち逃げ」にやや分があった。


ジラルディは、それでも「我慢」を選んだ。
これが功を奏した。

というのも、1点差を追いかける8回表に、コロラドから来たばかりのショート、ブリニャックに代打バーノン・ウェルズを出したため、その裏、8回裏に、ウェルズがそのままレフト守備につかせるのと同時に、代打を出したショートの守備にジェイソン・ニックスを入れなければならなくなったわけだが、ここでジラルディは、このところ打撃いまひとつだったイチローの打順にニックスを入れて、外野を左からウェルズ、ガードナー、グランダーソンにするのではなくて、センターのガードナーをニックスと交代させ、外野をウェルズ、グランダーソン、イチローの3人にしたからだ。(だから、グランダーソンは慣れないライトではなく、長年慣れているセンターを守れた。ヤンキースの外野でダブついているのは、正確に言えば「外野手」ではなく、「センター」なのだ)


結果的に、このイチローをラインナップに残したジラルディの忍耐を貫く戦術が、延長10回表、先頭バッターのイチローのノーアウトからの二塁打と、その後の勝ち越しに繋がった。(もちろん、逆転を許した直後、今年チャンスに異常に強いクリス・デービスを敬遠して勝負を避け、今シーズンは打者としてそれほど怖くないマット・ウィータースとの勝負を選んだ采配も、なかなかだった)バーノン・ウェルズのタイムリーで生還するイチロー(20130519)


ジラルディの忍耐。
ショーウォルターの先読み。

両監督の戦術の応酬は、とても見ごたえがあった。ひさしぶりに野球というものの面白さを見せてくれた両軍監督に拍手を贈りたい。

damejima at 02:18

August 11, 2012

NY Daily News紙のMark Feinsandは、ヤンキースのビートライターだが、今日のトロント戦で5打点を挙げて活躍したイチローについてのジョー・ジラルディのコメントを早々と紹介してくれている。
Damejima's HARDBALL:2012年2月22日、beat writerの「ビート」とは、「受け持ち区域」のこと。



“There’s always an expectation here – whether it’s fair or not – that when you get traded for here, you’re supposed to really come and help. Some guys are going to feel that heat, and I don’t think it’s really bothered him. I think he’s probably been through a lot in his life that’s really helped him in this situation.”
Joe Girardi

Mark Feinsand's post on New York Yankees | Latest updates on Sulia


これを、こんな風に訳してみた。

「ヤンキースにトレードされてきたからには、期待というものは常に存在するし、チームの力になってくれることを心底から期待される。それがフェアなものであれ、そうでないものであれ、ね。
そのことをプレッシャーと感じる選手もいる。だけど僕はイチローがそれで思い悩むとは思わない。彼が人生において酸いも甘いも経験してきた、そのことが、いまのシチュエーションにおいて、本当に彼に力を与えていると思う。」


heatという単語をどう訳すか、ちょっと迷った。

食べ物が「辛い」ことを、 "hot" と表現することは、ホット・チリ・ペッパーズではないけれど、日本でもかなりポピュラーな表現になってきている。
だが "heat" という言葉を耳にして、「熱」ではなくて、即座に「辛さ」、「プレッシャー」へと発想を転換していくのには、たいていの場合、時間がかかる。


野球で三塁手のことを「ホットコーナー」といったりもするわけだが、サードの守備は、強烈な打球が飛んでくることを避けられないだけに、常に派手なエラーを犯す危険性にも晒されている。

アスリートの中には、そういうホットな場所に立つことを「目立つから嬉しい!」と思える人もいれば、「もう勘弁してくれ」と尻込みするプレーヤーもいる。また、「目立つのが大好きなクセに、下手クソなプレーヤー」というのも、掃いて捨てるほどいる。

ホットな場所に立つことにつきものの、選手の内面的な興奮や高揚感、圧迫感やプレッシャー、メディアやファンからの批判や非難、そういったポジティブな面とネガティブな面のすべてが集まる場所と人間を、同時に、「たったひとつの言葉」で表現するとしたら、それがジラルディのheatというひとことに集約されている。
英語というのは、ときに非常に素晴らしい表現力があって、ことに、こういう「コト」をひとまとめに抽象的なまま端的に表現する能力については、日本語にない優れた表現力を発揮することがある。


ちなみに、今日ジラルディは点さの離れたゲーム終盤にブルペン投手を注ぎ込んだ。このことは、ファンやビートライターから、けっこうな数の批判を集めたようだが、ブログ主は、そうは思わなかった。

彼は石にかじりついても勝ちたいのだが、勝ちたいのと同時に、チームにもうすこし「ファイトする習慣」を根付かせたいのだと、かねがね思っている。
だからこそ今日のトロントとのゲームで、ちょっと気の抜けた守備とバッティングをみせた一塁手のケイシー・マギーと、プレーにインテリジェンスの無かったアンドリュー・ジョーンズを、ゲーム終盤に代えた。また、気の抜けたピッチングをしそうなブルペン投手も、彼らが打たれる前にどんどん変えていった。



たしかに、彼らを代えなくても、ゲームに勝てたのかもしれない。
でも、それではダメなのだ。
それは俺の考える勝ちではない。

と、考えたジラルディの発想は、非常によく理解できる。


ヤンキースという大看板を背負っているジョー・ジラルディが、イチローといえども最初から簡単に認めるわけはないことは、イチロー自身が一番よく知っていて、だからこそ必死にプレーしているのだと思う。
そして、移籍以降のイチローの守備、走塁、打撃、練習風景、あらゆる点を観察しつつ、10数試合使ってみたジラルディが「イチローを認める発言」をしたのだから、イチローファンとしては、ちょっと嬉しく思っていいと思うのである。


イチローは非常にファイトしており、しかも、技術がある。
そうジラルディは認めはじめているのだと思う。




damejima at 13:52

August 10, 2012

デトロイトとの最終戦のアンパイアの布陣は、こんな感じ
まぁ、なんつか、なんとなくジョー・ジラルディの退場(5回目)も起こりうるような、問題児アンパイア軍団ではある(笑) 実際、球審の判定の片寄りにも泣かされ続けたシリーズでもあった。

HP: Todd Tichenor
1B: Tony Randazzo
2B: Bob Davidson
3B: Tim Welke
New York Yankees at Detroit Tigers - August 9, 2012 | MLB.com Box

Damejima's HARDBALL:Todd, Tichenor を含む記事

Damejima's HARDBALL:2011年8月13日、退場データのみを扱った個性的サイトにみる「トラブルメーカーのアンパイアは、やはり退場者数も多い」というデータ。

Close Call Sports は、前にも一度紹介したが、アメリカのプロスポーツの「退場処分」だけを集めたサイトで、Pitchf/xデータで名高いBrooks Baseballと並んで、ブログ主のお気に入りのサイトのひとつ。どのアンパイアが、今年何回退場させているか、なんてことも簡単に調べられる。
これだけニッチな出来事にこだわりぬいたサイトというのも、なかなかない。ケタはずれのデータマニアの数多くいるアメリカならではのサイトといえる。
当然ながら、今日のジラルディの退場もさっそく記事になっている。
Close Call Sports: Ejection 114: Tim Welke (1)


今日の試合を見てなかった人のために書いておくと、

If Ichiro keeps doing things like this, #Yankees fans will be very, very happy: atmlb.com/QJG0h0

— New York Yankeesさん (@Yankees) 8月 9, 2012
">イチローのタイムリーなどでヤンキースが2点をリードして迎えた5回裏、先発黒田アレックス・アビラに2ランを打たれてしまい、同点になった。
その後、アウト2つとシングルで、2死1塁。ここでアンディ・ダークスに、アウトコース低めのシンカーを、レフト線にタイムリ・ツーベースを打たれた。

このツーベースは、物理的には、よく見るとオンラインであり、「フェア」という判定自体は結果的には正しい。

だが、いけないのは、三塁塁審Tim Welkeが、判定に迷って、途中で判定を変えたことだ。

MLB公式サイトの動画ではわかってもらえないのが残念だが、Tim Welkeは、最初にファールのジェスチャーをした。それから右腕を直覚にした不可思議なポーズ(これは以下の写真を参照)になったまましばらく硬直して、それから急に判定を変え、激しく「フェア」のジェスチャーをした。
途中でコールを変えられたら、レフトが誰であっても対応なんてできない。

動画:Baseball Video Highlights & Clips | NYY@DET: Girardi tossed for dirsputing a call - Video | MLB.com: Multimedia
2012年8月9日 判定をくつがえすTim Welkeにとまどうイバニェス

ヤンキースのレフトは今日は、ラウル・イバニェスで、運の悪いことに、守備の天才イチローではなかった。
イバニェスは、当然ながら、塁審のファウルのジェスチャーを見ていたから、初動が遅れ、おまけに、ボールが手につかずにもたついてしまい、結果的に1塁ランナーがホームインしてしまった、というわけ。


Tim Welke というと、今年5月2日のドジャース対ロッキーズのゲームで、ジェリー・へアストンの三遊間のゴロをダイビングキャッチした三塁手からの送球が、右へ大きくそれたので、塁を離れて腰をかがめてボールをキャッチした一塁手トッド・ヘルトンの足が明らかにベースから離れていたにもかかわらず、「アウト」判定をするという誤判定事件を起こしている。
May 2, 2012 Los Angeles Dodgers at Colorado Rockies Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com
2012年5月2日ドジャース対ロッキーズ戦のTim Welkeの誤審

2012年5月2日ドジャース対ロッキーズ戦のTim Welkeの誤審 2

2012年5月2日ドジャース対ロッキーズ戦のTim Welkeの誤審 3

Tim Welke makes one of the worst calls you’ve ever seen in baseball | Big League Stew - Yahoo! Sports

このときの判定について、後日のゲームでTim Welkeはへアストンに謝罪するのだが、性格のいいへアストンは「あの角度じゃ見えなかっただろうし、しかたがないよ」と謝罪を受け入れている。
"He said he was sorry," Hairston said. "He's been a really good umpire for a long time and, you know what, obviously because of the angle he didn't see it.
Hairston receives apology from umpire | dodgers.com: News


まぁ、いろいろな意見があるだろうが、このへアストンの一件にしても、性格の悪いブログ主に言わせれば、わざわざ「一塁手の足が見えづらいポジションにいるTim Welke」が悪い。
写真から見るかぎり、このときTim Welkeのとったポジションは、基本の「三塁手の送球に対して直角となる位置」ではなくて、セカンドの守備位置寄りの、やや斜め前方の角度から見ている。そのため、そもそも最初から一塁手の足は見えにくい。
これは、おそらく、クロスプレーを予測して、体を目一杯伸ばして捕球するであろう一塁手のファーストミットに、いつボールが収まるのかを見きわめたいという理由でそうしているのだろうが、だとしたら、一塁手のトッド・ヘルトンの前足があれほど深い角度で折れ曲がっていることから、ヘルトンの左足がベースから大きく離れていることを類推すべきだ。もし、そうでないなら、もっと違う角度、つまり、ヘルトンの足も見える角度から判定すべきだろう。

今日のレフト線のオンラインの当たりの判定を迷ったことも考え合わせると、もしかしてTim Welke、遠くがあまりよく見えてないんじゃないか? とさえ思わせるフシがあった。


アーマンド・ガララーガの完全試合をぶち壊したジム・ジョイスの例の世紀の大誤審にしても、アンパイアの位置から見ると、1塁主とランナーは多少重なって見える(下の写真)。だが、同じシチュエーションを、こんどは1塁スタンド側から見ると、ランナーがアウトであることに異議を挟む余地はない。
つまり、1塁塁審は必ずしもベストポジションにいてくれるとは限らないのだ。
だが、ファーストミットにボールが収まる瞬間のタイミング中心にだけ見て判定していればすむのなら、アンパイアなんていらない。1塁塁審はもっと頭と足を使って、自分がファーストのプレイを見る角度を工夫すべきだ。
アーマンド・ガララーガの完全試合を壊したジム・ジョイスの誤審 1

アーマンド・ガララーガの完全試合を壊したジム・ジョイスの誤審 2



だが、まぁ、そんな細かいことより、大事なことは、ジョー・ジラルディが「ファイト」していることだ。彼はいま、「ファイトする選手」を求めてもいる。

ヤンキースというチームは、非常にテンションが高く、いわば「高気圧なチーム」であると同時に、どういうものか、気圧の非常に高い自転車のタイヤ、例えばロードレーサーの固いチューブラータイヤにピンホールが開いて圧力が抜けていってしまうように、突如として気の抜けたプレーが続くことが往々にしてある。
それは例えば、タイムリー欠乏症、内外野の守備の乱れ、粘りのないバッティング、気の抜けた併殺打の山、バッテリーの単調でワンパターンな配球などが、それにあたる。これらの「低気圧ヤンキース」は、このチームが打撃重視で構成されたチームであることとは関係ない。単に意識の問題だろう。
Yankees Beat Tigers, but Anxiety Persists - NYTimes.com


ジョー・ジラルディがいま選手に求めていることは、おそらく細かいミスを減らすことじゃなく、単純に、ファイトすること、最後まで諦めないことだ。たぶんその結果としてミスも減ると思っているんじゃないか。
ファイトすることの大事さはよくわかるし、イチロー移籍以降でいうと、デトロイト戦ではだいぶ改善されてきた。
チーム全体でいえば、タイムリーが出るし、バッティングに粘りも出てきて、無気力な併殺打も減ってきた。
イチローにしても、バッティング面で打点が増えているのはもちろん、捕れるとは限らないのに、ホームランを追いかけてコメリカパークのフェンスによじのぼっているのも素晴らしい。


いまヤンキースの低気圧さがいまだに表れていて気になるのは、内外野の守備の乱れと、単調でワンパターンな配球という守備面くらいだ。

もしイチローが2人いてくれれば、ヤンキースのライトとレフトを同時に守れるのにと思っている日本のイチローファンはきっと多いことだろう(笑)

ファイトする姿勢を選手に伝える方法のひとつとして、気にくわないプレーにデカい声で抗議して退場してみせる、というシンプルな手法は、ブログ主はたいへんに好きだ。監督という職業の人は多少は熱くなれるようでなくちゃ、と思う。


3ボールで四球になっても、何をされても、黙ったまま負けている西海岸の無口なヘボ監督より、100万倍マシだ。

Damejima's HARDBALL:2011年7月9日、Sam Holbrookのミスジャッジで試合は台無しになったと、語ったエリック・ウェッジは、「気づいた」のか。それとも、「気づかない」のか。

Damejima's HARDBALL:2011年7月24日、みずから牙を抜いて相手にさしだしてチームに「負け犬メンタリティ」をたっぷり塗りこめた「負け犬指導者」エリック・ウェッジの「3ボール四球黙認事件」を批判する。

Damejima's HARDBALL:2011年7月26日、無死満塁の押し出しのかかった判定で、球審ボブ・デービッドソンの問題判定に泣かされたアダム・ケネディ。抗議すらしない弱気なエリック・ウェッジ。




イギリスの400mランナー、デレク・レドモンドは、1988年ソウルオリンピック出場を怪我でフイにするが、親子で努力を重ね、1992年のバルセロナオリンピックで優勝候補の一角として陸上男子400mに出場したが、レース途中、突然ハムストリングの故障にみまわれ、走れなくなる。
だが、やがてデレクは静止を振りきって立ち上がり、足をひきずりながらゴールを目指した。ゴール前100mでは、係員の静止を振り切ってコースに飛び出してきた父ジム・レドモンドが息子に肩を貸し、親子は65000人の観衆のスタンディング・オベーションの中、ゴールラインを越えた。
このときの光景は後に、2008年北京オリンピックのVISA cardのコマーシャルに採用され、俳優モーガン・フリーマンがナレーションを務めた。デレクは陸上引退後もアスリートとして、バスケットと7人制ラグビーのイギリス代表選手となった。また父親ジムは、2012年ロンドンオリンピックの聖火ランナーのひとりに選ばれた。


damejima at 12:05

October 07, 2011

Game 5までもつれたデトロイトとヤンキースのALDSが終わった。
低めをとらない球審に苦しみつつも、ダグ・フィスターが5回を1失点でしのいで、勝ち投手。
コントロールのいいフィスターだけに、カーブやスライダーなど、低めに決まる球はいくらでもあったが、今日の球審ではまるでとってくれない。こんな不利な状況で、よく5イニングもちこたえた。特に5回の満塁のピンチを、フィスターが2つのポップフライで乗り切った時点で、デトロイトのこのゲームの勝ちが6割方決まった。(デトロイトの監督リーランドは、もう1イニングいけそうなフィスターを下し、シャーザーをリリーフ登板させたかと思うと、早々に降板させ、フラフラ投げて満塁から押し出し四球をやらかしたフィリップ・ベノワをなぜか2イニング目も使ったり、どうもよくわからない投手起用だった)

さぁ次はテキサスとのア・リーグチャンピオン決定シリーズだ。
頑張れ、ダグ・フィスター。
Detroit Tigers at New York Yankees - October 6, 2011 | MLB.com Classic


それにしても、今日の球審Ted Barrettは酷かった。今シーズン見た球審の中でも、5本指に入る。Sam Holbrookを越えた酷さ。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
まず、とにかく低めをまったくとらない。
それと、左バッター。アウトコースがボール2つ分くらい広く、インコースが狭いために、ゾーン全体が大きくアウトコース側にズレている。

かと思うと、この球審、試合終盤になって、突然デトロイトのピッチャーの投げる低めをとったりしだした。さぞかしヤンキースのバッターはフラストレーションがたまったことだろう。

通常のTed Barrettのストライクゾーン
(Game 5でのゾーンと全く違っていることに注意)
Ted Barrettのストライクゾーン


CCサバシアは、5回から1回1/3投げたが、キャリア初のリリーフ登板だったらしい。1失点してしまい、これが結果的に決勝点になってしまった。フィスターの失点が1点だけだったために、負け投手はヤンキース先発イヴァン・ノヴァだったが、実質的にはサバシアのこの失点が決勝点だから、サバシアにやったことがないリリーフ登板させたヤンキース監督ジョー・ジラルディは、チャンスで三振ばかりしていたアレックス・ロドリゲスとともに、たぶんニューヨークの口うるさいメディアとファンの絶好の餌食になることだろう。
加えてジラルディは、5回の2死2塁のピンチで、ミゲル・カブレラを敬遠し、ビクター・マルチネスと勝負するチョイスをしている。
今シーズンのマルチネスをずっと見守ってきたブログ主の立場からいうと、マルチネスが打席に入る前から「おいおい、ジラルディ。わかってなさすぎる(笑)」と思って見ていたら、案の定、マルチネスは決勝点となるタイムリーを打った。


シアトルから無意味に放出されてデトロイトに移籍後、デトロイトのポストシーズン進出に大きな功績のあったダグ・フィスター、そして、「そのシチュエーションに必要なバッティング」を確実に成功させ続けてきた今シーズンのビクター・マルチネスのバッティング。
今シーズンの力をそのまま発揮できたデトロイトが、見事にヤンキースを打ち破った。



damejima at 12:45
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  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
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  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
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