『ピート・ローズ越え』、4000安打

2016年6月16日、「もしもイチローがMLBでデビューしていたら」という議論特有の慇懃無礼さと嘘くささ。「打数の違い」を故意に無視するレトリック。
2016年6月15日、イチロー・ヒストリーにおける 「クローザー潰し」。
2016年6月14日、ニューヨーク・ポスト紙ジョエル・シャーマン記事のdamejima版訳。かわいい魔女ジニーから、リチャード・ライト、バリシニコフ、モーツァルト、ヒッチコックまで。
2016年6月13日、ピート・ローズの弱弱しい反撃と、Cut4のくだらない3504本という予測をへし折っておくための4つのツイート、プラス1。
2015年8月24日、「ヒット1本あたりの打席数」ランキングでみれば、イチローの通算ヒット数の多さは「打順が1番だから」ではなく、むしろピート・ローズの安打数こそ単なる「打数の多さによるもの」に過ぎない。
2013年8月31日、『Debby Wong事件』 〜スポーツ・カメラマンDebby Wongが、「まったく別の場面のイチローの写真」を「イチロー4000安打の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事として公開していた事件。
2013年8月21日、イチロー・スーパーカウントダウン(11) イチロー、MLB通算2722安打でルー・ゲーリッグの通算安打数を越え、日米通算4000安打達成!
2013年8月14日、イチロー・スーパーカウントダウン(10) イチロー、MLB通算2023試合出場達成。「デビュー後13シーズンでの試合出場数」で、ピート・ローズの記録を38年ぶりに塗り替え、歴代1位達成。
2013年7月11日、イチロー・スーパーカウントダウン(7) カンザスシティ第3戦でMLB通算1997試合出場達成。MLB史上ピート・ローズしか達成していない「デビュー後13シーズンでの2000試合出場」まで、あと3試合。MLB通算2700安打まで、あと9本。
2013年7月4日、イチロー・スーパーカウントダウン(6)日米通算4000安打達成を意味する『ルー・ゲーリッグ越え』のMLB通算2722安打まで、あと37本。
2013年7月4日、イチロー・スーパーカウントダウン(5) ミネソタ第4戦でMLB通算1990試合出場達成。MLB史上ピート・ローズしか達成していない「デビュー後13シーズンでの2000試合出場」まで、あと10試合。
2013年6月24日、イチロー・スーパーカウントダウン(5)MLB通算出場試合数「1980試合」到達。ピート・ローズ以外達成していない「13シーズン・2000試合出場」まで、あと20試合。「ピート・ローズ越え」歴代1位まで、あと43試合。(誤データ修正版)
2013年6月12日、イチロー・スーパーカウントダウン(4)MLB通算2659安打達成で、「27歳から39歳までの通算ヒット数」でピート・ローズを抜き、MLB歴代1位。
2013年6月9日、イチロー・スーパーカウントダウン(3)おそらく"Unbreakable Record”となるイチローの「27歳から39歳までの間に打ったMLB通算ヒット数」。歴代1位ピート・ローズに、「あと1本」。
2013年6月5日、イチロー・スーパーカウントダウン(2)MLB通算2655安打達成し、テッド・ウィリアムズを抜いたことで得られた「確信」。さまざまな議論があることを承知していても、やはり誰もが書かずにいられない『4000本の栄光』。
2012年2月28日、年齢という視点で見ると、2011年のイチローのヒット数186本は、実は「メジャー歴代8位」の偉業。
2011年10月16日、3000本安打を達成する方法(4) 第2グループ「ピート・ローズ型」にみる、果てしなき欲望の旅。
2010年9月26日、「イチローより長打を打っている」と「自称」したピート・ローズの嘘。
2010年9月16日、ちょっと忘れっぽくなっているらしいピート・ローズ氏が、かつてスポーツ・イラストレイテッドの Joe Posnanskiに語ったことの覚え書き。

June 17, 2016

ジョー・ポズナンスキーがこんなコラムを書いてるんだけどさ。
ダメだね。ダメ。計算がまるでなっちゃいない。




ポズナンスキーは、「ピート・ローズとイチローの27歳から42歳までの打撃数値(具体的には打率やヒット数)が似てることを挙げた上で、「仮にイチローがMLBでデビューしていて、なおかつ27歳になるまでの間に899本のヒットを打てるかどうか」について書いてる。

彼は「なんの疑いもない。イチローは899本打てただろう」といちおう書いた上で、こうも書いてる。
If you got to the Major Leagues at age 20 and got 200 hits a year for 21 consecutive years ― every year until you were 41 ― you STILL would not get to Pete Rose’s hit total.
もし20歳でMLBデビューして、41歳になるまで21年連続200安打打ったとしても、ピート・ローズの安打記録には届かない。

つまり、彼が「暗に」いわんとするところは、
もしイチローが「20歳」でMLBでデビューしていたとしても、「41歳まで21年連続200安打」なんてできてたかどうかわからないし、もし仮にできてたとしても、ピート・ローズには届いてない可能性だってある。それくらい、やっぱりピート・ローズの記録は凄い。
ってことでもあるわけだ。いやらしい書き方するもんだ。


おいおいおいおい。
ちょっと待てよ、ポズナンスキー。
と、ブログ主は即座に思った。


「21年連続200安打できるかどうか」なんて、
単なるレトリックに過ぎない。

なぜって、ポズナンスキーだけでなく「もしイチローがMLBでデビューしてたら」という議論のほとんどが、「日本での打数の少なさを、MLBでの打数の多さにアジャストするとどうなるか」って視点が完全に抜け落ちているからだ。ポズナンスキーも例外じゃない。


わからない人のために説明しようか。

イチローが日本でプレーしてた時代、「1シーズンの打数」は540をようやく越えたのが2度あるだけで、600越えたことなど、一度もない。

だけど、MLBでは余裕で690前後ある。

日米で打数が大きく異なるのはいうまでもなく「1シーズンの試合数の違い」が原因だ。日本とアメリカでは、1シーズンで最低でも「150打数」程度、うっかりすると「200打数」近いくらい違うこともある。


ここで、「もしイチローがメジャーでデビューしてて、1994年から2000年までの7シーズン、毎年690打数だった」と仮定してみる。
すると、7シーズンの打数は4830で、「1994年〜2000年の仮想ヒット数」は、「打率」によって以下のように変化することになる。

仮想打率 仮想ヒット数(小数点以下切り捨て)
.330   1593本
.320   1545本
.310   1497本
.300   1449本
.290   1409本
.280   1352本


上の表で、「.330」という打率を最初に挙げたのは、実際のイチローの2010年頃までのMLB通算打率がそのくらいだったからだ。だから、非現実的な数字ではないどころか、非常に現実的な数字であり、若い体力みなぎるイチローがむしろ.330より高い平均打率を残した可能性だって十分ある。
だが、ここではいちおう控えめに「.330」としたまでだ。

打率.270以下は計算しても意味がないので計算しない。
なぜなら、打率がたった.270しかない若い1番打者が、7シーズンもの間、年間690打数も与えられるわけがないからだ。

この計算から
27歳になるまでに、たった899本しかヒットを打てなかった若い凡才ピート・ローズ」と、「27歳までに7年連続首位打者になった20代の天才イチロー」が、同等に比べられなきゃならない理由なんて、どこにもない
ことがわからない人間は馬鹿だと思う。


だがまぁ、まだわからない人もいるだろう。
あえてもうひとつ計算して、わかりやすくしておこう。


もし仮に「イチローがMLBでデビューしてて、仮に1994年から2000年までの間に4830打数あったとして、ヒットを899本しか打たなかった」としたら、打率はどうなるか。

.186だ。

「イチローが最初からMLBでデビューして、27歳になるまでにヒットを899本打てたかどうか」なんてことを真面目ぶって議論に組み込んだようにみせかけてるようなヤツが、その実、いかに慇懃無礼な人間か、これでおわかりだろう。
こういう「非現実的な話」を自分の文章に散りばめる人間が、リアルな議論をしているなどと、ブログ主はまったく思わない。たとえそれがジョー・ポズナンスキーであろうと、Cut4であろうと、だ。


もっと厳しくいわせてもらうと、ヒットを大量生産すべき貴重な若い時期にやっとこさ「899本」しか打てなかったような、そんなヘボい打者が、「若い時期のピート・ローズ」だ、ということだが、ピート・ローズの「最晩年」についても、その間の「ヒット数」と「打率」をひきくらべてみるといい。
晩年、ローズはプレーイング・マネージャー(選手兼監督)という立場を利用し、400打席以上を自分自身に与えながら、100本程度しかヒットを打っていない。そういう「ひどい低打率」だったにもかかわらず、彼は自分をスタメン出場させ続けた。それが最晩年の彼の通算安打記録の実態だ。(そしてその最晩年にローズは現役選手であるとともに現役監督でありながら、野球と自分のチームをギャンブルの対象にしていた)
参考記事:
2015年8月24日、「ヒット1本あたりの打席数」ランキングでみれば、イチローの通算ヒット数の多さは「打順が1番だから」ではなく、むしろピート・ローズの安打数こそ単なる「打数の多さによるもの」に過ぎない。 | Damejima's HARDBALL


ロジックというものはきちんと点検しないと騙される。

ちょっと聞きかじって、「ああ、たしかに、いくらイチローでも21年連続200安打はちょっと無理だろうな」などと思ってはいけないのだ。

「21年間シーズン200安打を続けられるかどうか」などという仮定を設けること自体が、単なる「上から目線からの恫喝」に過ぎない。そんな仮説は単なる机上の空論に過ぎないのである。

話はむしろ逆だ。

もし
日本の野球がもっと試合数が多くて、「日本でのイチローの打数」が「MLB並みの多さ」だったなら、当然「27歳になるまでのイチロー」がもっと多くのヒットを打っていたはずであることは、疑いようがない。
したがって、それが日本であろうと、アメリカであろうと、「27歳になるまでのイチロー」が「MLB並みの打数」を与えられていたなら、とっくの昔にピート・ローズの記録など追い抜いて、42歳時点では既に日米通算5000本に接近していた、と考えるのが、「マトモな議論」というもの
だ。

いいかえれば、
「イチローは打数の限られた日本で何年も過ごしたが、21年連続200安打なんかしなくても、イチローはピート・ローズに届いた。つまり、そのくらいイチローはMLBで、誰よりも早い、ものすごいスピードでヒットを量産し続けてきた」というのが、正しい表現だ。


加えて、ポズナンスキーはじめ「もしもイチローがMLBでデビューしていたら議論」なんてものに手を染めたがる人間はたいてい、ピート・ローズがさまざまな手を使って4256本のヒットを達成したのが「ようやく45歳で達成して、引退」であり、イチローは「まだ42歳で、なおかつ現役で、これからもヒット数は増える」ことも忘れている。
「42歳までのピート・ローズのMLBヒット数」は、「42歳のイチローの日米通算」より260本以上も少ない
のである。
日米通算というアスタリスクはともかく、同じ数字を3年も早く達成できた人間と、3年余計にかかった人間を同等に扱いたがる人は、もっと礼儀というものをわきまえつつ現実を直視したらいいと思うが、どうだろう。

3000安打達成者の1安打あたりの打席数

タイ・カッブ 3.123
(ジョージ・シスラー 3.205 3000安打未達成)
ナップ・ラジョイ 3.226
トニー・グウィン 3.256
キャップ・アンソン 3.298
トリス・スピーカー 3.413
ポール・ワナー 3.416
ホーナス・ワグナー 3.435
イチロー 3.437
(2016年6月19日現在)
ロッド・カルー 3.456
スタン・ミュージアル 3.503
デレク・ジーター 3.637
ポール・モリター 3.666
ジョージ・ブレット 3.686
ハンク・アーロン 3.697
ピート・ローズ 3.727
ウィリー・メイズ 3.806
ロビン・ヨーント 3.848
エディー・マレー 3.936
デイブ・ウィンフィールド 3.974
カル・リプケン 4.046
クレイグ・ビジオ 4.086
カール・ヤストレムスキー 4.092
リッキー・ヘンダーソン 4.369


damejima at 22:46

June 16, 2016

日米通算4257安打を献上してくれたのは、サンディエゴのクローザーフェルナン・ロドニーだった。そういえば、振り返ってみるとイチローのマイルストーンはけっこうクローザーで彩られている。

フェルナン・ロドニー
2016年6月15日 日米通算4257安打



マリアーノ・リベラ
2009年9月18日 サヨナラ2ランホームラン

記事)2011年10月22日、野球ファンの「視線共有」の楽しみ 例:2009年9月18日のイチローのサヨナラ・2ランホームランを、スタジアムの角度別に楽しむ。 | Damejima's HARDBALL
記事)2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。 | Damejima's HARDBALL

イム・チャンヨン
2009年3月24日 第2回WBC決勝 2点タイムリー



ホセ・バルベルデ
2012年10月13日 2012ALCS Game 1 9回裏2ランホームラン


記事)2012年11月9日、2012オクトーバー・ブック WS Game 4でフィル・コークが打たれた決勝タイムリーを準備した、イチローの『球速測定後ホームラン』 による『バルベルデ潰し』。 | Damejima's HARDBALL


ここまで挙げた場面ほど華々しくはないが、フェルナン・ロドニーから打ったこんなタイムリーもある。

フェルナン・ロドニー
2013年4月23日 NYY vs TB 満塁で2点タイムリー


2013年4月23日、9回表2死満塁から、イチロー得意の「クローザーの初球打ち」。フェルナンド・ロドニーから決勝2点タイムリーで、ヤンキース連敗ストップ。 | Damejima's HARDBALL


クローザーの「持ち球」は、ラファエル・ソリアーノのような軟投タイプとか、ジョン・フランコのように多彩な変化球を投げる投手は少なくて、たいていの場合は「速球+その投手に特徴的な変化球が1種類」という感じでシンプルな組み立てをする "Two-pitch Closer" が多い。

そのクローザーに特徴的な変化球」、というと、ビリー・ワグナーや若い頃のフランシスコ・ロドリゲスならスライダー。トレバー・ホフマンはチェンジアップ。マリアーノ・リベラは、当然カットボール。ジェイソン・イズリングハウゼンクレイグ・キンブレルは、カーブ。

こうやって並べてみると、特徴的で絶対的な変化球をひとつもったタイプのほうがクローザーとして大成している。


とはいえ、たいていのクローザーの持ち球は、昔のジョナサン・パペルボン、上原や藤川、かつてのデイヴィッド・アーズマなどのように、「速球とスプリット」という組み合わせが多い。
ホセ・バルベルデも速球とスプリットを組み合わせるTwo-pitch Closerだったが、いかんせん、スプリットにそれほど威力がないタイプなので、速球だのみになりがちだった。

「クローザーの初球とか2球目のインコースのストレートをフルスイングする」というイチローの戦略のドツボにはまってくれるクローザーは少なくない。この場合、球速が159マイルあろうと関係ないことは、2012年にホセ・バルベルデが証明してくれたのだった。

damejima at 19:02

June 15, 2016

ニューヨーク・ポスト紙のジョエル・シャーマンピート・ローズをたしなめた記事は、かのケン・ローゼンタールもほめちぎっている。
Don’t let Pete Rose’s hater dig ruin Ichiro’s milestone moment | New York Post


もちろんこの記事は速攻で日本語記事にもなっているのだが、細かい点で気にいらない。しょうがないから自分で訳した。


ジョエル・シャーマンはテレビ、映画、音楽、バレエなど、アートっぽいことが大好きとみえて、文章のあちらこちらに作品やアーティストに関連した言葉が散りばめられている。

例えば、日本語記事には訳出されていないのだが、文中に "I Dream of Jeanie" という言葉がある。これは1965年〜1970年に放送された古いコメディのタイトルで(邦題:『かわいい魔女ジニー』)、イチローのニックネームがWizard(=魔法使い)であることにちなんで筆者ジョエル・シャーマンはわざと使っている。
I Dream of Jeanie


2つ目は、これはあくまでブログ主の想像でしかないのだが、a native sonという表現はたぶん、アフリカ系アメリカ人作家リチャード・ライト(Richard Wright, 1908-1960)の1940年作品 "Native Son" を連想させるようにわざと書いているではないかと思う。
この作品はアフリカ系アメリカ人がこうむった不幸を題材にしているのだが、ジョエル・シャーマンは遠まわしにピート・ローズの発言の根底に流れる「無用な優越感と日本野球への差別意識」があからさまになることをたしなめたのではないか。(この話を理解するには、ジェームズ・ボールドウィンとか、そういうたぐいの本を読む必要があるかもしれない)



シャーマンはイチローを、ニューヨーク・シティ・バレエ団に所属したこともあるロシア出身のバレエダンサー、ミハイル・バリシニコフにたとえている。
これはもちろん、イチローの動作の「優雅さ」をバリシニコフにたとえて表現しているわけだが、それだけでなく、おそらくロシア出身のバリシニコフが1974年に亡命し、さらに1986年にはアメリカに帰化していることをふまえていて、アメリカのネイティブではないイチローが、アメリカの地元ファンの喝采を浴びてプレーし、今では将来の殿堂入りを約束されるほどアメリカに馴染んでいることを、バリシニコフと重ねあわせた表現だろうと思う。

Mikhail Baryshnikovミハイル・バリシニコフ

バリシニコフ風イチローのカーテンコールバリシニコフ風イチローの
カーテンコール

4257安打を祝福するペトコ・パークの観客にヘルメットを脱いで礼をするイチロー。立ち方がバレエダンサー風に見えるのは、「姿勢の良さ」のためだ。「姿勢」はアスリートの選手生命を左右する。


他に、モーツァルトをひきあいに出した箇所がある。これはシャーマンに限らず、アメリカのメディアでは最上級の褒め言葉のひとつといえるだろう。
というのは、その昔シリコンバレーのIT関係者の間でモーツァルトを聴くことが大ブームだった時代があったように(その後、モーツァルトを聞き飽きてしまい、ブームはベートーベンに移ったらしい)、モーツァルトはアメリカのインテリ層にとても人気が高く、モーツァルトにたとえられるということ自体が「褒め言葉」を意味するという側面が彼らにはあると思うからだ。まぁ、そのへんは日本の小林秀雄と、たいした差はない(笑)


また文末あたりで、ピート・ローズに関して "Frenzy" という単語が使われているわけだが、これはもしかするとロンドンのシリアル・キラーを扱った1972年のアルフレッド・ヒッチコック映画 "Frenzy" からのもじりで、ピート・ローズの下品さを皮肉った表現かとも思ったが、さすがにそこはハッキリしない(笑)




When a spring training game is played on the road, those who stay behind - mainly veterans - go through a workout. But there is a substitute teacher feel to it.
スプリング・トレーニングで、ロードゲームが行われる場合、遠征先に帯同しない選手(主にヴェテラン選手)はトレーニングにいそしむ。だが、それは臨時教員のような、腰の座らない感覚のものだ。

The manager and the main coaches are usually on the trip. The stands are empty. Reporters generally follow the team. The on-field work, therefore, is completed in quicker fashion with one eye on the first tee or jumping into the pool with the kids or some other free-time activity. It is a perk of being a veteran.
監督と主要なコーチは普通ロードに帯同し、スタンドは空っぽ。記者たちもたいていはチームに帯同する。フィールドワーク組は(=遠征に帯同しなかったヴェテラン選手たち)ゴルフの1番ティーとか、子供たちと飛び込むプールとか、自由に過ごせるオフシーズンならではのアクティビティに気をとられながら、グラウンドでの練習をそそくさと切り上げる。これはヴェテランならではの特権だ。

On one of these days I was the lone reporter who stayed behind at Steinbrenner Field. I was writing about a player who did not go on the trek, but up in the press box after the workout, I was not writing. I was entranced watching the lone figure who did not rush out to one of those free-time activities.
その日、記者では私だけが遠征に帯同せず、スタインブレナー・フィールド(=タンパベイにあるヤンキースの春キャンプ地。ニューヨークではない) にいた。遠征に行かなかったあるプレーヤーについて記事を書いていたのだが、練習後に(フィールドを眺めわたせる高い場所にある)記者席に上がっていったときには、記事を書いていなかった。オフシーズンの自由な娯楽に飛びつかなかった唯一の人物を眺めることに夢中だったからだ。

For 45 minutes, Ichiro Suzuki stood at home plate, pantomimed his swing and then raced at pretty much full clip to each base. A single, back to home. A double, back to home. He finished the whole tour, and then did it again. And again.
45分間、イチローはホームプレートのところに立ち、スイングの真似をして、それからフルスピードでそれぞれの塁打を想定した走塁を練習していた。シングルヒット。ホームプレートに戻る。こんどは二塁打。ホームに戻る。というように。全パターンを練習し終えると、すべてをもう一度やる。それが終わると、また繰り返す。

This was 2014. Suzuki was 40, already a legend in Japan, already accomplished enough to be a Hall of Famer here. And he was sweating alone inside a rather empty stadium practicing, well, practicing what exactly? Hitting an inside-the-park homer?
これは2014年の出来事で、イチロー40歳。既に日本のレジェンドであり、MLBでも既に野球殿堂入りに十分な実績をうちたてている。それでも彼は、すっからかんのスタジアムで練習に汗を流していた。練習であるにしても、それは何のための練習? ランニングホームランを打つためか。

When I asked the next day, Suzuki mentioned the need to stay vigilant to game possibilities. He had quick-twitch athleticism and hand-eye coordination at the peak of humankind. But to those blessings he added precision and economy of movement through hundreds and thousands of hours of what I viewed that day from the Steinbrenner Field press box. He was a genius not squandering his skills - Mozart playing his piano alone.
翌日イチローに尋ねてみたら、「ゲームで起きるあらゆる可能性に備えておくため」だという。人類最高レベルの鋭敏な運動神経とハンド・アイ・コーディネーションを持つ彼だが、それでもなお、私がスタインブレナー・フィールドの記者席から見たように、何百、何千もの時間を費やして、天性の才能にさらに「正確な動作」や「無駄のない動作」を付け加えていくのである。彼は、技能を無駄に浪費しないという面においても、たぐいまれな才能を持っている。それは、モーツァルトがひとりでピアノ練習をするようなものだ。

Suzuki running the bases in his prime was breathtaking, more of an “I Dream of Jeanie” stunt - a magical blink transporting him from one base to wherever he would stop next - rather than something an actual person could do.
全盛期のイチローの走塁といえば、それはもう、驚異的なものだった。まるで、魔法使いが登場するテレビ番組『かわいい魔女ジニー』でも見ているかのように、まるで何か瞬時の魔法みたいなものが彼を次に止まりたいと思うベースまで運んでるんじゃないか、などと思わせるようなレベルで、現実の人間にできるレベルをはるかに凌駕していた。

Seeing him still honing finer points when he could have rested on greatness just elevated my appreciation for him. It was such an obvious love letter to the game and why I feel good for him now as he approaches milestones not as just as accumulator, but somehow as a top-flight hitter again.
既に偉大な足跡に安住することが可能な地位にある彼が、なおもプレーの細部に磨きをかけ続けているのを見ると、私のリスペクトはより高まる。それは彼の野球に対する変わらぬ愛情であり、また、私が彼の野球に好感をもつ理由でもある。彼は、単にエスタブリッシュメントとしてではなく、最高の打者たらんとする努力を続けながら、マイルストーン到達に向かって歩み続けているのである。

(2ブロック省略)

Which led Rose to tell USA Today Sports: “It sounds like in Japan, they’re trying to make me the Hit Queen. I’m not trying to take anything away from Ichiro, he’s had a Hall of Fame career, but the next thing you know, they’ll be counting his high-school hits.”
ピート・ローズがUSA Todayにこんなふうに語った。「日本では私を『ヒットの女王』(=2番手)にしようとしているらしいな。僕はなにもイチローの価値をおとしめようなんて思ってない。彼は殿堂入りするに足るキャリアの持ち主さ。でも、気づいたら彼らは、イチローの高校時代のヒットまで数えだす始末になりそうじゃないか。」

So, I want to state this: Rose was my favorite player growing up, making me the rare Reds fan in Brooklyn. Pretty much everything since has offered disappointment, including these words. Serious baseball people recognize the inferiority of the Japanese league, Rose didn’t need to put words to it. No one equates Suzuki’s hit totals with those of Rose, though as an aside I believe if Suzuki began his career here, he would have been a 4,000-hit man - the evidence being he hit as well in the US as in Japan, despite the rise of talent around him.
私はこのことを言っておきたいと思う。
ローズは、子供時代に私がブルックリンで数少ないレッズファンになったくらい、大好きな選手だった。だが、この発言も含め、とてもガッカリさせられてばかりだ。シリアスな野球関係者が日本のリーグが(MLBに比べて)劣っていることを認識しているにしても、ローズがそのことについて言及する必要などない。誰もイチローの日米通算ヒット数がローズと同等とまで考えないが、その一方で、もしイチローがアメリカでキャリアを始めていたなら、おそらくヒットを4000本以上打っただろうと確信してもいる。それが証拠に、イチローは(MLBに来て)彼をとりまく選手のレベルが上がったにもかかわらず、アメリカで日本と同じようにたくさんのヒットを打ったではないか。

Is Rose really upset that Japan is celebrating a native son? Through his suspension, Rose has cloaked himself in love of the game as a defense mechanism. So why soil a moment when a baseball-loving nation is fascinated by our national pastime?
ローズは本当に日本が日本出身の選手を祝福しようとしているのを、かき乱してやろうとしているのだろうか。永久追放になっている間、彼は保身のために野球を愛してやまない人間を装ってきたわけだが、ならばなぜ、野球を愛する国のひとつが我々の国民的娯楽に魅了されている瞬間にケチをつけようとするのだ。

Suzuki’s achievements do not diminish Rose; they remind us how great he was. I mean, 4,256 hits, freaking wow. They played the game differently - Rose with lunch-pail frenzy, Suzuki with Baryshnikov grace. But at their core their souls were filled with the game, with the willingness to invest thousands of lonely hours to seek perfection.
イチローの偉業でローズが矮小化されるようなことはなどない。むしろ、それはいかにローズが偉大だったのかを思い起こさせるものだろうに。4265本のヒット、「すげぇ」としか言いようがない。2人はプレースタイルが異なる。ローズを「熱血な肉体労働者」とするなら、イチローは「優雅なバリシニコフ」だ。だが両者の魂のコアは野球でいっぱいであり、完璧な自分を追い求める孤独な時間をすすんで積み重ねる情熱で満たされている。

Rose should be at the front of the line celebrating a kindred spirit who would practice hitting inside-the-park homers alone after a spring training workout.
ローズは、スプリングトレーニングの練習の後で、たったひとりランニング・ホームランを打つ練習をするような、自分と同じ場所に属す人物を祝う列の「先頭」にいるべきだ。


damejima at 22:15

June 14, 2016









参考までに、上の最後のツイートでいう「落合が1999年に喝破」というのをご存じない人のために、Youtubeのリンクを挙げておこう。




落合博満は、「渡米前の」イチローとの対談において、「イチローに匹敵するような打者は、今のアメリカにはいない」という意味の断言をしている。

この「落合の断言」は後日、「渡米直後の」イチローが、MLBで通用するとか、しないどころの騒ぎではなく、渡米1年目にして新人王、首位打者、盗塁王、シルバースラッガー賞、ゴールドグラブ賞、リーグMVPに輝いた事実によって、文字通り「証明」されることになった。
イチローはさらにその後、10年連続して200安打、ゴールドグラブ、オールスター出場などを継続したわけだが、その「継続」は2001年の成績が「フロック」ではないどころか、むしろ「実力どおりの結果」だったことを証明した。


つまり、ブログ主が言いたいのは、
イチローの「野球の実力」が、「渡米前」の時点で既に、MLBの平均レベルをはるかに凌駕した高いレベルにあったことは、火をみるより明らかだ
ということであり、なおかつ、
このことは当時、わかる人にはとっくにわかっていた
ということだ。


賭博で永久追放になった元・選手が、「日本の野球なんて、しょせんメジャーのマイナー程度のレベルじゃん」と自分勝手に思うのは、個人の自由で、別にそれを止めさせようとはまったく思わない。

だが、もしピート・ローズと、その同調者が、「渡米前のイチローの実力は、しょせんMLBのマイナーレベルだったから、カウントに値しない」などと事実に反する発言をする、これからもしたい、のだとしたら、その議論は根本的に間違いであり、今後ともそうした暴論を許すわけにはいかない。


「渡米前のイチローがどういうレベルにあったかという議論」と、「日本の野球がMLBと比較してどのくらいのレベルにあるかという議論」は、まったく次元の違う議論なのだ。

にもかかわらず、これら2つの、次元の異なる議論を故意に混ぜて議論することによって、イチローの記録の意味や重さをこきおろすツールにするような行為は、アンフェアであり、また、スポーツマンシップに反する。


ちなみに、かつてCut4が「イチローがもし最初からMLBでデビューしていたら何本ヒットを打てるか」を試算して、「2014年終了時点で3504本」だのなんだのと予想したわけだが、ブログ主は「まるで予測になってない。馬鹿なこと、言うな。」としか思わない。

日本で1200本もヒットを打った人間が、MLBデビューで数百本のヒットで終わているはずもない。


計算を間違える原因は簡単だ。
Cut4の計算した「3504本」などという数字が「まったく科学的に根拠のない設定で計算した、なんの根拠もないデタラメ」からだ。

Cut4がやった「計算」というのは、シアトルマリナーズの1995年ドラフト1位指名選手だったプエルト・リコ出身の外野手ホセ・クルーズ・ジュニア(Jose Cruz)を「仮想イチロー」に見立てて「1990年代にMLBデビューしたイチローの、2000年までのヒット本数を計算する」という、まるで根拠のない手法だ。

よくこんな無礼な試みをするものだ。

なぜなら、以下のデータで明らかなように、ホセ・クルーズとイチローは、タイプがまったく違う選手だからだ。そして、選手としての「格」も「レベル」もまったく違うし、活躍の長さもまったく違う。
どこをどうすると、低打率のフリースインガーを、レジェンドクラスのコンタクトヒッターになぞらえられるというのだ。馬鹿げている。
Jose Cruz Statistics and History | Baseball-Reference.com

ホセ・クルーズ・ジュニアとイチローの違い

●ホセ・クルーズは大卒。イチローは高卒。
●ホセ・クルーズは1997年にようやくメジャーデビュー。イチローは1992年NPBデビューで、高卒3年後の「1994年」には既に打率.385を記録して首位打者
●ホセ・クルーズはメジャーデビュー後、数年の打撃成績だけがよかっただけのジャーニーマンで一発屋。イチローは将来の殿堂入りが約束されたレジェンドで打てて、守れて、走れる万能選手
●ホセ・クルーズは、シーズン100三振を5年連続で記録しているフリースインガーで、ホームラン20本前後(好調時)の中距離ヒッター。イチローは、1番打者で典型的なコンタクトヒッター


イチローは、なんと高卒3年後の「1994年」に打率.385を記録して首位打者になっている大打者だ。
にもかかわらずCut4は、仮想イチローのMLBデビュー年について、「もしイチローが最初からMLBデビューしていたら、ホセ・クルーズがデビューした1997年にメジャーデビューし、2000年まで、3シーズンちょっとのメジャーキャリアを積んでいたはず」だのとくだらない予測をしているのだから、笑ってしまう。

こんなの、何の根拠もない。

実際、仮想ではない現実の野球では、大卒ジャーニーマン、ホセ・クルーズのMLBデビューが1997年であるのに対して、高卒レジェンドのイチローの1軍デビューは1992年であり、イチローのほうが「5年も」デビューが早く、活躍の開始年齢もイチローのほうがずっと早い
こうした「大差」をまったく考慮せずに、Cut4は、1994年には打率.385を打っている実力の持ち主が、「1997年までマイナーでくすぶって、メジャーデビューを待つ」だのと間違った設定をして、2000年までのヒットの本数を予測した「つもり」になっているのだ。

そんな「馬鹿な予測」に
信憑性など、あるわけがない。


過去に3000安打関連記事でも書いたことだが、タイ・カッブが18歳デビューであるように、3000安打達成者の多くは、20代前半どころか、18とか19、20歳あたりでメジャーデビューしているのである。それくらい、3000安打とは、「デビュー当初から選ばれた選手のみがトライできる、偉大な記録」であり、言いかえれば、「若い頃から数字を積み上げ始めなければ、間に合わない」、「途方もなく達成に時間のかかる記録」なのだ。
2011年9月26日、3000本安打を達成する方法(1) 4打数1安打ではなぜ達成不可能なのか。達成可能な選手は、実はキャリア序盤に既に振り分けが終わってしまうのが、3000本安打という偉業。 | Damejima's HARDBALL
MLB歴代ヒット数ランキング上位打者のMLBデビュー年齢
ピート・ローズ 22歳
タイ・カッブ 18歳
ハンク・アーロン 20歳
スタン・ミュージアル 20歳
トリス・スピーカー 19歳
キャップ・アンソン 19歳
ホーナス・ワグナー 23歳
カール・ヤストレムスキー 21歳
ポール・モリター 21歳
エディ・コリンズ 19歳


Cut4が、イチローだけを「高卒以降、5年間マイナーでくすぶって、23歳MLBデビュー」などと、わけのわからない「設定」を押し付けて、それが正しい、などといえる根拠など、どこにもないのである。

追加:



damejima at 18:08

August 25, 2015

イチローの記念すべきメジャー10000打席が目前に近づいたわけだが、「ヒット1本あたり打席数」でみると、通算安打数歴代1位のピート・ローズが約3.727(小数点以下第4位を四捨五入、24シーズン)に過ぎないのに対し、イチローが3.421打席(MLBのみ、15シーズン弱)で、この両者のみの比較では、もちろんイチロー圧勝なのだ。


よく、イチローのヒット数が多い理由について、「1番打者は打数が多いのだから、ヒット数も多くて当然だ」などと、知ったかぶりに「間違ったこと」を公言するアホウをネット上でたまに見かけるわけだが、以下に挙げるランキングを見れば、そうした発言の馬鹿さがひとめでわかる。

イチローの通算ヒット数が多い理由は、1番打者だからではなく、「他の誰よりも効率的にヒットを積み重ねてきた打者だから、通算ヒット数も多くて当然」というのが正しい答えなのだ。


ちなみに球聖タイ・カッブは、3.123(24シーズン)という超絶的な数字である。ヒット数が多いだけでなく、ヒット生産のペースがMLB歴代No.1のありえないハイペースなのだ。

一方、ピート・ローズの「通算15890打席」はMLB記録であり、ピート・ローズとタイ・カッブは、プレー期間こそ「24シーズン」で同じだが、こと「打数だけ」で比べると、なんと「2806打席」も、ローズのほうが多い。
ピート・ローズ 15890打席(MLB記録)
タイ・カッブ 13084打席
差異 2806打席

こうした事実から、なぜ永久追放者ピート・ローズが、長らくタイ・カッブが持っていたMLB通算安打記録を上回れたのか、理由がわかる。
単にピート・ローズは「打数」が果てしなく多かった、だから球聖タイ・カッブの通算ヒット数を上回れた、ただそれだけに過ぎないのである。

イチローが毎日1番を打っていた時代の年間打数が約700だったわけだが、それでいうと「2806もの打数の差」というと、「イチローのようなレギュラーの1番打者が、4シーズン打つくらいの打数にあたる数字」なのだ。
そりゃ打席に立つことそのものに必死だったピート・ローズのほうが、ヒット生産効率歴代1位のタイ・カッブより、ヒットの実数だけは多くなるのも当然の話といえる。


ついでだから、以下に「3000安打達成者」の「ヒット1本あたり打席数」を、ヒット数上位に限ってまとめてみた。(小数点以下第4位を四捨五入 ジョージ・シスラーは3000安打未達成だが入れておいた)
このランキングからも、なぜタイ・カッブが「球聖」と呼ばれるのかがよくわかる。また、かつてイチローの前のシーズン安打記録保持者ジョージ・シスラーが、3000安打未達成ながらも、球聖タイ・カッブに迫る神がかり的な安打製造機だったこともよくわかる。タイ・カッブもシスラーも、伊達に長くMLB記録保持者だったわけではないのだ。
タイ・カッブ 3.123
(ジョージ・シスラー 3.205 3000安打未達成)
ナップ・ラジョイ 3.226
トニー・グウィン 3.256
キャップ・アンソン 3.298
トリス・スピーカー 3.413
ポール・ワナー 3.416
ホーナス・ワグナー 3.435
イチロー 3.437
(2016年6月19日現在)
ロッド・カルー 3.456
スタン・ミュージアル 3.503
デレク・ジーター 3.637
ポール・モリター 3.666
ジョージ・ブレット 3.686
ハンク・アーロン 3.697
ピート・ローズ 3.727
ウィリー・メイズ 3.806
ロビン・ヨーント 3.848
エディー・マレー 3.936
デイブ・ウィンフィールド 3.974
カル・リプケン 4.046
クレイグ・ビジオ 4.086
カール・ヤストレムスキー 4.092
リッキー・ヘンダーソン 4.369


上のMLB歴代ランキングから「約100年前、20世紀初頭の選手たち」を除いてみる。すると、近代のMLBにおいて「3.5以下の数字を残した選手」は、トニー・グウィン、イチロー、ロッド・カルー、わずか3人しかいないことがわかる。
トニー・グウィン 3.256
イチロー (2001-2010のみ) 3.270
イチロー (通算) 3.421
ロッド・カルー 3.456
以下 スタン・ミュージアル 3.503

近代野球における投手の質的発達、新たな変化球の開発、投球術の進化、圧縮バットの禁止、飛ばないボール、加えて、2000年代以降の打撃スカウティング技術の発達、飛球分析に基づく守備のポジショニングなど、さまざまなバッティングをめぐる環境変化を考えると、イチローが残してきた数字はまさに「近代野球の頂点に君臨する数字」といえるだろう。

damejima at 17:04

September 01, 2013

まずはクイズ。
次のAとB、2つの画像を見比べて、「違い」を探してもらいたい。
ヒントは2つ。
1)ヤンキースベンチに下りていく階段にいる人物
2)イチローの顔の向き


画像A)
USA TodayのカメラマンDebby Wongが「イチロー4000安打の画像」としてUSA Todayに供給した画像を使い、USA Todayが作成した記事のキャプチャー

原出典:NPPA(全米報道写真家協会)の以下の記事
A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA NPPA=National Press Photographers Association | NPPA

damejima注:この写真、本当は、何月何日のゲームの、どの打席の写真なのは、いまのところわからない。少なくとも、イチローの視線方向から察する限り、おそらく「センター前ヒット」であろう。(4000安打は「レフト前ヒット」)さらに、画像Bとの違いでいうと、ダグアウトに下りる階段付近に2人の選手がいるのが見える。(おそらくソリアーノとガードナー)

Debby WongがUSA Todayに提供した「偽物のイチロー4000安打写真」

画像Aのバリエーション(資料映像)
google.comの検索により、ネット上のキャッシュから採取。おそらく、USA Todayの記事に掲載された写真の「元画像」と思われる。
「偽のイチロー4000安打写真」の元画像と思われる画像


画像B)
イチロー4000安打についてのMLB公式サイトの動画から直接キャプチャーした「本物」のイチローの4000安打の瞬間の画像(レフト前ヒット)

イチローの視線が、本来の打球方向である「レフト側」を向き、ダグアウトの階段のところに、画像Aにある「2人の選手の姿」がない。

イチロー4000本の「正しい写真」(キャプチャー)


damejima注:
結論からいえば、USA Todayが当初「イチロー4000安打の画像」として報道していた画像Aは「ニセモノ」であり、イチロー4000安打達成の瞬間を撮影したものではない。
以下に、こうした「悪質な詐欺まがいの行為」がなぜ生じたのかという謎ときとなる記事を訳出してある。出典となっているNPPAとは、National Press Photographers Association、つまり、全米報道写真家協会のことであり、そんじょそこらの安っぽい協会ではない。(ちなみに、この記事タイトルは、おそらくは、野球の著述として名著といわれるJ. Patrick Lewisの "A Swing And A Miss" をもじったものだろうと思われる。いかにも報道の専門家らしいチョイスだ)



A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA
Aug 30, 2013
By Donald Winslow

NEW YORK, NY (August 30, 2013) – When New York Yankee Ichiro Suzuki swung at a pitch and connected with his 4,000th career base hit during the first inning of a home game against the Toronto Blue Jays on August 21st, it was a record-making moment worthy of the cacophony of motor-driven camera shutters that followed.
(和訳省略)

But at least two of the photographers working the game on the third base line that night didn't capture the moment: Debby Wong, a USA Today Sports Images photographer, and Andrew Theodorakis of the New York Daily News. Wong was either looking at her earlier pictures on the camera's LCD display, or she was pointing the camera elsewhere, when Suzuki hit. And Theodorakis' view was blocked by Wong, when she rested her 300mm lens over her left shoulder at the exact moment of the crucial pitch.
しかし、この夜、三塁側にいた少なくとも2人のカメラマンが、この決定的瞬間をカメラでとらえることに失敗した。USA Todayのスポーツ・カメラマン、Debby Wongと、ニューヨーク・デイリーニューズのAndrew Theodorakisだ。
Wongは、イチローがヒットを打った瞬間には、自分のカメラのLCDディスプレイで、自分が既に撮った写真を見ていたか、あるいは、どこか別の場所にカメラを向けていた。そして、その重大な投球の、まさに瞬間に、彼女(Wong)は自分の300ミリ望遠レンズを左肩の上にかついでいた。Theodorakisの視界が遮られたのは、そのためである。
(太字はdamejimaによる)

Which can happen, as those who frequently shoot sports can attest. Not everyone gets every important shot every time. Sometimes it's the photographer's fault. And sometimes the view is blocked by another player. Or sometimes the obstruction is an umpire, or a fan, or even – as in this case – another photographer.
(翻訳省略)

When she started hearing a few rumbles, Yankees' chief photographer Ariele Goldman Hecht came over from her first base spot to see what was going on.
ヤンキースのチーフ・カメラマン、Ariele Goldman Hechtは、彼女のいた1塁側カメラマン席からやってきて、いったいサード側で何が起きているのかと、イザコザについてヒアリングを始めた。

"To begin with, she [Wong] wasn't where she was supposed to be," Hecht said. "I had put her in the second row. It was crowded because of the record, and she told me that she had switched positions with one of the Japanese photographers. I told her that wasn't allowed. The Yankees decide who sits where." Hecht said that Wong apologized, and the photographer told them that she was sorry for blocking the shot.
「まず言えることは、『彼女(=Wong)は、彼女の居場所として設定してあった場所にいなかった』ということよ。」と、Hechtは言う。
「私は彼女を2列目に位置させた。イチローの記録達成で混雑してたからね。彼女は私に『ひとりの日本人カメラマンと位置を交代してもらった』って言ったんだけど、私は彼女に『そんなの、許可してないわ』と言った。誰がどこに位置するかを決めるのは、ヤンキースよ。」
Hechtが言うには、Wongはそれについて謝罪したといい、カメラマンは、Wongが撮影を邪魔したことを謝っていたと、彼らに言った。

And so the game went on.
そしてそのままゲームは進行した。

And in most circumstances this is probably where this small incident would have ended; we wouldn't have heard anything more about it. Only the handful of other photographers along the third base line who had witnessed the little dust-up between a couple of their peers would have had something to chat about for a few days.
(翻訳省略。カメラマンの位置関係で撮影にトラブルが起きること自体はよくある話だ、というのが、このパートのおおまかな主旨)

Except it didn't end there. Because later that night on the USA Today Sports Images photo Web feed a picture by Wong appeared. And then the same picture also appeared in a photo gallery published on the USA Today newspaper Web site. Its caption and photo credit said:
しかし、事件はそれだけで終わらなかった。
なぜなら、USA Today Sports Imageのウェブサイトに、Wongが「撮った」という写真がアップロードされたからだ。そして同じ写真は、USA Today電子版のフォトギャラリーにもアップロードされた。写真には次のようなキャプションとWongのクレジットが添付されていた。
(注:太字はdamejimaによる)

"New York Yankees right fielder Ichiro Suzuki singles to left field to record his 4000th career hit during the first inning against the Toronto Blue Jays at Yankee Stadium. Debby Wong, USA Today Sports"
(翻訳省略)

Wait ... What? The photographers who worked the Yankees game and who saw or heard what happened during the Suzuki hit were perplexed. How did she get this picture? A few compared Wong's image their own pictures and to others. The background looked different, one said. The swing and follow-through didn't look quite the same, another photographer said.
「おいおい・・・・・ちょっと待てよ・・・・・。」
ヤンキースのゲームに帯同しているカメラマンたち、そしてイチローのヒットの間に(カメラマン席で)起こった事件を見聞きしていた人々は、誰もが首をひねった。「いったい彼女はどうやって、この写真を撮ったっていうんだよ?」
何人かのカメラマンは、Wongの写真と彼ら自身の撮った写真、あるいは他のカメラマンの写真を比べてみた。あるカメラマンは「背景が異なっているように見える」と言い、別のカメラマンは「スイングと、フォロースルーがまったく違う」と発言した。
(注:太字はdamejimaによる)


The conversation had new life.

Then two days after Ichiro's big game the news broke that Thomson Reuters will soon be dropping their network of freelance sports photographers in North America come September. Instead of using their own shooters, Reuters will instead be taking a picture feed from the USA Today Sports Images team and delivering those images to Reuters picture clients around the world.
イチローのビッグゲームから2日経って、トムソン・ロイター(damejima注:いわゆる『ロイター通信』のことだと思えばいい)のこんなニュースが明らかになった。
ロイターは、この9月、北米のフリーのスポーツカメラマンを切って、(従来のように)ロイター自身がフリーカメラマンを使って写真を撮るかわりに、USA Todayのスポーツ画像チームが供給する写真を、世界中のロイターの顧客に向けて配信するというのだ。

With that development, the conversation really heated up inside sports photojournalism circles. The topics included who will – and who won't – be shooting major league sporting events in North America come this autumn. And what impact having former US Presswire photographers who have become USA Today Sports Images photographers shooting pictures for Reuters might have on the photojournalism industry and freelancers in North America.
この展開に、フォト・ジャーナリズムのサークル内部は、熱い議論でかなりヒートアップした。話題に上ったのは、この秋やってくる色々な北米のメジャーなスポーツイベントを、いったい誰が撮るのか(そして誰が撮れないのか)という話題であり、そして、ロイターのために写真を撮る元US Presswire(現USA Today Sports Image)のカメラマンたちが、北米のフォトジャーナリズムとフリーランサーに、非常に強いインパクトや影響を及ぼすことになるかもしれない、という話題だ。

Five days after the Reuters deal became known, when Suzuki's big hit had almost faded into recent history, USA Today Sports Images added fuel to the dialogue when they transmitted to their clients a "Picture Kill" notice for Wong's photo. They told their clients that it had come to their attention that the picture "was not correctly identified." Clients were advised to pull it from their archives.
ロイターの決定がわかって5日後、その頃にはイチローの4000安打はすでに直近の野球史にフェードアウトしつつあったわけだが、USA Today Sports Images社が議論に油を注いだ。
というのは、彼らがクライアントに、例のWongの写真の『掲載停止』をうながすと伝えたからだ。彼らはクライアントに対し、「Wongの写真が『正確にホンモノだと特定できない』として、クライアントに注意をうながし、クライアントのアーカイブから削除するよう助言した。
(damejima注: "Picture Kill" を『掲載停止』と訳した)

Bruce Odle, the president of USA Today Sports Images, told News Photographer magazine tonight that someone outside their company notified one of their staffers of a problem with the image. Earlier this week, News Photographer had learned that Wong's editors had requested her entire take so that they could examine the images shot by shot.
USA Today Sports Images社長のBruce Odleは今夜、News Photographer誌に、「スタッフのひとりが画像について問題を抱えているようだと、外部の人間から知らされた」と語った。News Photographer誌は今週はじめ、Debby Wongの記事の担当編集者が、Wongの撮った写真の全テイクを、あらゆるショットについてチェックしなおすようリクエストされていたことを知っていた。
(damejima注:News Photographer誌=全米報道写真家協会の発行する専門誌 News Photographer Magazine | NPPA

"We were made aware that an image provided by one of our contributors was not correctly identified and we immediately looked into the situation," Odle said tonight. "After determining that the photo was incorrect, we issued a Picture Kill to alert our customers consistent with industry practice and to minimize disruption or resulting impact, if any."
Bruce Odleは今夜、以下のように語った。
「我々は、我々の画像寄稿者のひとりが供給したある画像(=このブログ記事の最初に挙げた画像A)が『ホンモノでないこと』がわかったため、ただちに状況調査に着手した。結果、その写真が正しいものでないと断定されたため、われわれは顧客に対し、業界綱領に沿って、たとえそれがどんな程度のものであれ、損害やインパクトが生じるのを最小限にとどめるために、顧客に『掲載停止』の警告を発した。」

Odle also confirmed that in the aftermath, Wong's work agreement with the picture service has been terminated.
またOdleは、今回の警告の直後、Wongとの間にあった画像作品提供に関する契約を停止したことを認めた。

"We have clear language in our contributors agreement and we have internal policies consistent with industry practice with regards to ethical matters," Odle said.
「寄稿者との契約において明快に規定していることだが、我々は倫理的問題について業界の綱領に沿った内部的ポリシーを持っている。」とOdleは言う。

Wong did not immediately return calls requesting comment.
我々はDebby Wongにコメントを要請したみたが、すぐに返事は返ってこなかった。

USA Today Sports Images is an arm of the USA Today Media Group, which was formerly known as the Gannett Digital Media Network. Its parent company is Gannett Company, Inc.
Odle heads USA Today Sports Images, and he managed the sale of the company to Gannett in August 2011. It was founded by former Sports Illustrated photographer Bob Rosato, who is now its chief operating officer. The sports photo service rebranded itself in December 2012 to provide sports images to all Gannett properties. Before then, Rosato's picture service was known as US Presswire.
USA Today Sports Imagesは、USA Todayメディアグループの一部門だが、かつてはGannett Digital Media Networkという名前で知られており、親会社はGannett Companyだった。
現在USA Today Sports Imagesを率いているOdleは、2011年8月にGannettへの会社譲渡をマネジメントした人物。そもそもUSA Today Sports Imagesは、今は同社の執行役員になっている元スポーツ・イラストレイテッドのカメラマン、Bob Rosatoによって創立された写真提供会社で、2012年12月にGannettにスポーツ画像を供給する企業として改組されるまでは、US Presswireという名前で知られていた。



この事件は、表層的な話としては、こんな話になる。

USA TodayのカメラマンDebby Wongは、イチロー4000安打達成の決定的瞬間の画像を絶対に確保していなければならなかった立場にあった。Debby Wongは当日、ヤンキースサイドから指示されていた撮影場所から許可なく勝手に移動してまでして、撮影位置を確保した。にもかかわらず、その決定的瞬間に、Debby Wongはイチローにカメラを向けていないという決定的なミスを犯し、決定的瞬間を撮り損ない、さらには他のカメラマンの撮影を妨げた。
Debby Wongが写真を撮り損なった事実は、彼女と撮影場所を巡ってトラブルになったニューヨーク・デイリーニューズのカメラマンと、彼らがトラブルっているのを周囲で見聞きしていたカメラマンたちが知っていた。
だが、Debby Wongは、物理的に彼女に撮れるはずのないイチロー4000安打の写真について、(おそらく「手持ちのストック」の中から探したのだろうが)「似たような画像」を見つけてきて、それを平然と「イチローの4000安打の決定的瞬間の写真」としてUSA Todayに提出し、USA Todayは、その「Debby Wongが提出してきたニセモノの写真」を使い、記事にした。


なんとも呆れ果てた詐欺まがいの事件ではあるわけだが、この事件、実際には、さらに複雑かつ重要な倫理的問題を孕んでいると思う。

Debby Wongの現場での自己中心的な行動ぶりが感じさせる根本的な不愉快さ
この事件でカメラマンDebby Wongは、ヤンキースサイドからあらかじめ指定されていた撮影場所にいなかった理由として、不愉快にも「日本人カメラマンに場所を変わってもらった」と発言しているわけだが、それが本当に事実だったのかどうか、それがそもそも怪しい。
ヤンキースのチーフカメラマンが非常に具体的に指摘しているように、カメラマンの撮影位置は、あらかじめヤンキースサイドによって詳細に指定されていたわけだが、おそらくDebby Wongの現場での行動ぶりは、どうみても「ゴリ押し」かつ「わが物顔」の不遜な行動だっただろう、と想像できる。
そして最悪なのは、無理矢理に最前列の撮影ポジションを確保したクセに、この厚顔無恥なカメラマンはなんと、いまにもイチローが4000本目のヒットを打つかもしれないという打席で、「自分のカメラをイチローに向けてさえいなかった」という事実だ。
周囲のカメラマンに、「カメラ向けるつもりがないのなら、そこどけよ!! このバカヤロー!!」と、怒鳴り散らされてもしかたがない迷惑行為を、このカメラマンは平然とやってのけているのである。
事実、Debby Wongがイチローに向けていない300ミリのデカい望遠レンズを肩にかついで他のカメラマンの視界を邪魔したせいで、デイリーニューズのカメラマンはイチローの決定的瞬間を撮り損なっている。

デカい望遠レンズを肩にかついだ状態の例「大きな望遠レンズのついたカメラを肩にかついだ状態」の例(参考 これはたぶん400丱譽鵐此

問題なのは、こうした無神経な行為がまかり通ってしまうような空気と、画像流通についての手抜きともいえるシステムが、自由なジャーナリズムの気風を育ててきたはずのアメリカという国と、スポーツジャーナリズムの内部に生まれつつある、ということだ。
まぁ、おそらくはスポーツ画像を「独占的な商売」にして儲けたい人たちが現れ、そして、その人間たちに雇われているカメラマンに「慢心」という病が広がりつつあるのだろう。哀しいことだ。


メディアの商業主義化に沿って著しく浸食されつつあるスポーツ写真、ジャーナリズムとしての倫理
上の記事では、「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」と並行して、通信社ロイターが、北米のフリーのスポーツ・カメラマンから写真を買い上げるのを止め、USA Todayの写真部門にスポーツの画像供給を「丸投げする」ことにした、という話題が語られている。
北米のスポーツ・カメラマンたちが危惧しているように、今回の『Debby Wong事件』と、ロイターの方針変更の話は、「繋がっている」といわざるをえない。
ロイターの方針変更は、どうもこの記事を読む限りでは、きちんとした基本ルールが確立されないままの見切り発車のようだ。だから、今後も今回のような「ジャーナリズムの基本倫理に関わる大問題」を起こしかねない。
資料:Reuters Dumping North American Freelance Sports Photographers | NPPA


USA Todayが行った、ピート・ローズへのイチロー4000安打に関するインタビューとの関連で感じる不愉快さ
今回のイチローの日米通算4000安打という偉業の達成にあたって、どのメディアよりも先にピート・ローズのところにインタビューにのこのこ出かけて行って、イチロー4000安打に関する否定的コメントを引出してきたのは、ほかならぬ、この「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」を引き起こしたUSA Todayである。
Pete Rose says Ichiro can't catch him
事件全体の流れを考えると、イチローの偉業達成について、USA Todayが最初から何か「冷えびえとした意図」があったようにも見える。
ニセモノの画像を使った記事を作成しておいて、それを外部に向けてきちんと謝罪してもいないのに、その一方で、否定的なコメントをするのがわかりきっているピート・ローズにコメントをもらいにいっているUSA Todayの姿が無礼千万に見えるのは当然だろう。
料理の「味」を批評するにあたって、その料理を食べてもいないクセに、まったく別の店の料理の写真を掲載した上で、「あの店の味は、アメリカには追いつけっこない」などと冷ややかな批評を掲載するような行為は、どうみてもフェアではない。三流以下の仕事であり、悪質で、馬鹿げている。
こうした「パブリックな人類遺産であるスポーツに、個人的好みを反映させたがるようなバランス感覚に欠けたメディア」が、今後スポーツの画像を牛耳ることになるということについて、危機感を持っている北米のカメラマン、メディア関係者も、おそらく多数数いるのではないか。
USA Todayは、あくまで一般メディアなのであって、イチローの4000安打に喝采を贈ってくれたESPNやスポーツ・イラストレイテッドのようなスポーツ専門メディアではない。なのに、専門外のことを、商売になりそうだからという理由で牛耳りたがる人たちが出てきて、情報の流通を牛耳ろうとすることは、スポーツにとってプラスだとは、どうしても思えない部分がある。


スポーツメディアとしての生産性、クオリティへの疑問
もし仮に、多少の基本ルールが整備された上で、スポーツの画像の寡占化がやむをえず進んでいくとしても、もし今回の怠慢なDebby Wongのように、カメラマンが写真が撮りそこなったとか、思ったようなクオリティで供給できないとかいう最悪の事態に陥ったとき、そのカメラマンが謙虚な気持ちでコトに対処できるとは、到底思えない。
残念ながら、人は、自分が苦労して築いたわけではない山であっても、その山のテッペンに据えられると、まるで自分が大将になったような気になってしまう、そういう弱い動物だからだ。
もし、ロイターが全世界の顧客に配信するのがあらかじめわかっている写真を、ひとりのカメラマンが撮り逃した(あるいは思ったクオリティで撮れなかった)としたら、今回のDebby Wongのような卑劣な行動をとらないでいられるという倫理的保証はどこにもない。


まぁ、ともかく、この件に関して、おそらくヤンキースは事を荒立てたくないだろうが、日本の至宝イチローのファンとして、これは沽券に係わる問題であり、黙って見過ごすわけにはいかない
本来なら、この件できちんとUSA Todayなり、Debby Wongなりが謝罪するのがスジだと思うが、それがあろうと、なかろうと、この件をたくさんの人に知ってもらうことが、まず重要だと思うから、時間を割いて、この粗訳を作ってみた。


ブログ主は、この「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」について、単なる「写真をとりちがえた程度のミス」だとか、「自分のミスをとりつくろうための、どこにでもある愚行」だとか、まったく思わない。今回の事件は、PEDがそうであるように、スポーツとジャーナリズムの倫理を著しく傷つけている。

あまり上品な言葉とはいえないが、Debby Wongとそこに連なる人たちは、「他人が大事にしているもの」を、どこかで「なめてかかっている」。
こうした「なめている」人間たちが、イチローに限らず、スポーツの記録や出来事を、とやかく議論する資格はない。他人の撮影を邪魔する資格もない。もちろん、言うまでもなく、この程度の倫理しかもたないカメラマンやメディアに、ジャーナリズムなんてものを気取ってもらっては困る。


アートであれ、スポーツであれ、経済であれ、「他人を押しのけて前に進み出ること」そのものは、あっていい。それが自由競争というものだからだ。

だが、「他人を押しのける」にあたっては、周囲がその前に出ようとする人物の天性や足跡、気質を認め、その人物のために数歩うしろに下がって道を譲ることをよしとするだけの、オーラと実績と倫理がなければならない。
「こんどからロイターが私たちの撮った写真を全世界に配信することになったのよ。だから、私たちはなにがなんでも撮らなきゃならないの。わかるわよね?」と言わんばかりのあつかましいだけの人間が、「そこは、いつも私が使ってる場所よ。どきなさい」だの主張して、他人を押しのけ、最前列に居座って、なのに、カメラをまるで構えもしないまま、ふんぞりかえって、他人の撮影まで邪魔して、挙句の果てには、自分が撮ってもいない全く別の写真を「はい、どうぞ」と記事にして商売する、こんなことが当たり前になるなんてことを、ブログ主は許そうとは思わない。

damejima at 01:21

August 22, 2013





ゲーム後のフィールド内でのインタビュー:Video: TOR@NYY: Ichiro talks about getting 4,000th hit | MLB.com
チームメイトへのインタビュー:Video: TOR@NYY: Yanks discuss Ichiro's 4,000th hit milestone | MLB.com

イチロー4000安打の打席の配球3球目
ナックルボール
投手:R.A.Dickey
Toronto Blue Jays at New York Yankees - August 21, 2013 | MLB.com Classic


New York Yankees Logoイチローは、2013年8月21日ヤンキースタジアムで行われたトロント・ブルージェイズ戦の第1打席で、2012年サイ・ヤング賞投手、R.A.ディッキーの投じた3球目ナックルボールをレフト前にヒットを放ち、MLB通算安打数を2722本とし、ルー・ゲーリッグのキャリア通算安打数を越えると同時に、日米通算4000安打を達成した。
(記事の最初にある2つの動画は、1番目がヒットの場面のみ、2番目がイチローのキャリア全体をレビューしたもの)

イチローのユニホームが殿堂へ=日米4000安打で―米大リーグ (時事通信) - Yahoo!ニュース

MLBキャリア通算ヒット数ランキング(2013/08/21)


4000安打達成により、次の超えるべきハードルは、いよいよあと278本に迫ったMLB通算3000安打、となるが、これもまたマイルストーンのひとつに過ぎない。

(5000安打の可能性に関して聞かれたイチロー)
年齢に対する偏った見方がなければ、
 可能性はゼロではない


4000安打を達成し観客に礼をするイチロー

チームメイトに祝福されるイチロー

イチロー4000安打を祝福するヤンキースタジアムの観客

4000安打を達成したイチローを見てニヤけるムネノリ・カワサキ







MLB公式サイト・ヤンキース公式サイト
Ichiro Suzuki joins select group with 4,000th hit | MLB.com: News
イチロー4000安打のときのWRAPトップページ

MLB公式サイト

ESPN
Ichiro Suzuki to reach remarkable 4,000-hit milestone - ESPN
Ichiro Suzuki of New York Yankees gets 4,000th professional hit - ESPN New York
Ichiro joins the 4,000 hit club - Stats & Info Blog - ESPN
ESPN

SI.com
Watch: Ichiro collects his 4,000th hit | The Strike Zone - SI.com
SI.com


FOX Sports
Ich-i-ro! Ich-i-ro! | FOX Sports on MSN

YES Network
Ichiro 4K: Suzuki reflects on his mixed milestone

Joe Posnanski
Joe Blogs: Ichiro and Moon and Amazing Stories

New York Times
Suzuki Reaches 4,000 Hits as Yankees Gain in Playoff Race - NYTimes.com

USA Today
Ichiro Suzuki gets 4,000th hit between MLB and Japan

Washington Times
Ichiro Suzuki gets 4,000th career hit between MLB and Japan - Washington Times

Bloomberg
Yankees’ Ichiro Suzuki Joins Rose, Cobb With 4,000th Career Hit - Bloomberg

Guardian
After 4,000 hits in the US and Japan, Ichiro Suzuki is a star in his own right | David Lengel | Sport | theguardian.com

New York Daily News
Ichiro Suzuki reaches 4,000-hit milestone as Alfonso Soriano slugs Yankees to win over Blue Jays - NY Daily News

New York Post
Ichiro reaches 4,000; Soriano blast lifts Yankees to victory - NYPOST.com

Newsday
Ichiro Suzuki gets 4,000th combined career hit in Yanks' win

CBS Sports
Eye On Baseball - CBSSports.com WATCH: Ichiro collects 4,000th hit

SportingNews
Ichiro Suzuki notches 4,000th career hit in first at-bat vs. Blue Jays - MLB - Sporting News

Yahoo CANADA
Mr. 4,000: Ichiro reaches career milestone with classic base hit | Big League Stew - Yahoo! Sports

Tront Star
Ichiro Suzuki joins 4,000-hit club as Yankees down Blue Jays: Griffin | Toronto Star

Chicago Tribune
Ichiro Suzuki 4000 hits - chicagotribune.com

Bleacer Report
Yankees' Ichiro Suzuki Records 4,000th Hit in Pro Career | Bleacher Report
Comparing Ichiro Suzuki to MLB's All-Time Hit Leaders | Bleacher Report
How Many Hits Would Ichiro Have Had If His Entire Career Were in MLB? | Bleacher Report
「もしイチローがMLBでデビューしていても、スタン・ミュージアルのヒット数を越えていただろう」という記事。ただし、この記事、NPBとMLBの試合数の差を考慮にいれてない。

SB Nation
Ichiro records hit No. 4,000 in Japan and U.S. - SBNation.com

Business Insider
CHART: Why Ichiro's 4,000 Hits Compare Very Well With Pete Rose And Ty Cobb - Business Insider
イチロー、タイ・カッブ、ピート・ローズの比較
NPBとMLBの試合数の差が考慮されたこの記事では、イチローの4000本は十二分にタイ・カッブ、ピート・ローズの記録と比較しうる、という結論が出されている。

ドミニカの記事
Panorama Diario: Liga Americana: Ichiro Suzuki arriba a 4,000 hits entre GL y Jap���n

スペイン語の記事
Ichiro lleg��� a cuatro mil jits | Cubadebate

Yankees derrotan a Toronto en noche hist���rica (Video) - eldiariony.com

El samur���i de las 4 mil muertes

赤飯スタンプ


damejima at 07:23

August 15, 2013

デビュー後13シーズンにおける
MLB通算出場試合数ランキング


デビュー後13シーズンでの通算出場試合数、イチロー歴代第1位達成
data generated via Batting Split Finder - Baseball-Reference.com

2013年8月14日エンゼルス第3戦で先発出場予定のイチローは、「デビュー13シーズンでのMLB通算2023試合出場」を達成する。
これは、「デビュー後13シーズンにおける出場試合数」において、これまで長らく1位だったピート・ローズが1975年に達成した「2022試合」を、38年ぶりに塗り替え、MLB歴代1位を達成したもの。

この記録は、言うまでもなく、イチローのこれまでのキャリアが安定し、怪我のない健康なキャリアだったかを示している。(もちろん、ドーピングによる長期の出場停止などもありえない)

ちなみに、今年7月14日のミネソタ戦で、1番センターで出場して達成した「デビュー後13シーズンでのMLB通算2000試合出場」は、MLB史上、イチローとピート・ローズの2人しか達成していない記録である。
Damejima's HARDBALL:2013年7月14日、イチロー・スーパーカウントダウン(8) イチロー、MLB通算2000試合出場達成! MLB史上ピート・ローズだけしか達成していなかった「デビュー後13シーズンでの2000試合出場」の2人目の達成者となる

赤飯スタンプ


damejima at 05:10

July 12, 2013

7月11日カンザスシティ第3戦に1番センターで先発出場、タイムリー、ファインプレー、盗塁などと縦横に活躍したイチローは、これでMLB通算1997試合出場を達成。
関連記事:Damejima's HARDBALL:2013年7月11日、イチローのOver-The-Rainbow Catch!!!!!

これで、MLB史上ピート・ローズただひとりしか達成していない「デビュー後13シーズンでの通算2000試合出場」達成まで、あとわずか3試合となり、さらに、ピート・ローズを抜き去って歴代1位となるまで、あと26試合と迫った。

歴代2位だったエディ・マレーの「1980試合」に肩を並べたのが、ついこのあいだだった気がするのに、もうエディ・マレーの記録がはるか後方になりつつある。
現役でいるということ、そして、代打、代走、DHというレベルの現役ではなく、あくまでレギュラーでゲームに出て、攻守走を全てこなすレベルの現役であることの凄さを、あらためて感じないわけにはいかない。

デビュー13シーズンでのMLB通算出場試合数

デビュー13シーズン通算2000試合出場まで、あと3試合
data generated in 07/11/2013 via Batting Split Finder - Baseball-Reference.com(カンザスシティ第3戦を含む)

参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年6月24日、イチローMLB通算出場試合数「1980試合」到達。過去にピート・ローズだけしか達成していない「13シーズン・2000試合出場」まで、あと20試合。「ピート・ローズ越え」歴代1位まで、あと43試合。(誤データ修正版)


MLB歴代 通算出場試合数記録
Career Leaders & Records for Games Played - Baseball-Reference.com

現役選手の出場試合数記録
Active Leaders & Records for Games Played - Baseball-Reference.com

damejima at 22:37

July 05, 2013

イチローの「日米通算4000安打達成」は、同時に、「ルー・ゲーリッグの通算安打数を越えるMLB通算2722目のヒットを打ったとき」でもある。

ミネソタ遠征で絶好調のイチローのMLB通算安打数は、7月4日ミネソタ第4戦の3本のヒット(シングル、二塁打、三塁打)を加え、2685本
これに日本での「1278本」を加えた日米通算安打数は、「3963本」となり、日米通算4000安打達成まで、あと「37本」と、ついに秒読み体制に入った。

MLB通算安打数
日米通算4000安打まで、あと37本
Career Leaders & Records for Hits - Baseball-Reference.com

参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年6月5日、イチローがMLB通算2655安打達成し、テッド・ウィリアムズを抜いたことで得られた「確信」。さまざまな議論があることを承知していても、やはり誰もが書かずにいられない『4000本の栄光』。



ちなみに、イチローのメジャーデビューから現在に至る「27歳から39歳までの通算ヒット数」2659安打(2013年6月12日段階)で、これは、MLB通算安打数記録「4256本」のタイトルホルダーであるピート・ローズが、同じ「27歳から39歳まで」の間に打ったヒット数「2658本」を既に越えており、「同年代における安打数の比較」においては、イチローは既に通算安打数歴代1位の座をピート・ローズから奪い去っている

27歳から39歳までの間に打った通算ヒット数ランキング
(2013年6月12日現在)
27歳から39歳までの間に打った通算ヒット数ランキング 20130612
Provided by Baseball-Reference.com : Batting Split Finder Generated 6/12/2013

damejima at 09:42
7月4日ミネソタ第4戦に1番センターで先発出場し、2点タイムリースリーベースなど、3安打2打点と活躍したイチローは、これでMLB通算1990試合出場を達成。

これでイチローが、MLB史上ピート・ローズただひとりしか達成していない「デビュー後13シーズンでの通算2000試合出場」達成まで、あと10試合、さらに、ピート・ローズを抜き去って歴代1位となるまで、あと33試合と迫った。

デビュー13シーズンでのMLB通算出場試合数
デビュー13シーズン通算2000試合出場まで、あと10試合
data generated in 07/04/2013 via Batting Split Finder - Baseball-Reference.com(ミネソタ第4戦を含む)

参考記事:Damejima's HARDBALL:2013年6月24日、イチローMLB通算出場試合数「1980試合」到達。過去にピート・ローズだけしか達成していない「13シーズン・2000試合出場」まで、あと20試合。「ピート・ローズ越え」歴代1位まで、あと43試合。(誤データ修正版)


MLB歴代 通算出場試合数記録
Career Leaders & Records for Games Played - Baseball-Reference.com

現役選手の出場試合数記録
Active Leaders & Records for Games Played - Baseball-Reference.com


イチローは既に、この記録におけるMLB歴代2位だったホール・オブ・フェイマー、エディ・マレーの「1980試合」を抜き去り、単独の歴代2位に躍り出ていた。
あと33試合の出場により、イチローがMLB歴代1位ピート・ローズの「2022試合」を38年ぶりに塗り替え、「デビュー後13シーズンにおけるMLB史上最多試合出場プレーヤー」となる日が、刻一刻と迫っている。

2点タイムリースリーベース動画
Video: Ichiro's two-run triple | MLB.com Multimedia

2013年7月4日2ラントリプル

この日の活躍まとめ動画
Video: Ichiro's big day | MLB.com Multimedia

damejima at 09:25

June 25, 2013

以下は、
2013年6月23日、あまり知られていないイチローの歴代1位記録、「13シーズンにおける出場試合数、MLB歴代1位」。「MLB通算2000試合出場」まで、あと20試合。
というタイトルで書いた記事の修正版である。データに誤りがあったので、お詫びして訂正する。(該当記事は既に削除済み)

修正理由は単純な話で、データ検索の甘さから以下の根本的なデータを見落としていたからだ。
「MLBデビュー後、13シーズンにおける通算出場試合数の歴代1位」は、2013年6月23日時点では、イチローの「1980試合」ではなく、1963年から1975年にかけてピート・ローズが記録した「2022試合」である。
どういうものか、記事を書いてからも気になって、しつこく検索を繰り返していて、自分のミスに自分で気づいた。個人的にはむしろ、またひとつ「ピート・ローズの記録を越える楽しみ」を発見できたので、このミス自体を喜んでいる(笑)


デビュー後、13シーズンでの通算出場試合数
デビュー後13シーズンでの通算出場試合数ランキング
data generated in 06/24/2013 via Batting Split Finder - Baseball-Reference.com

MLBで「デビュー後、13シーズンで2000試合出場」という記録を達成しているのは、ピート・ローズの「2022試合」という記録が唯一無二の記録だ。この記録のMLB歴代2位が、HOFエディ・マレーで、MLB13シーズン目のイチローの通算出場試合数は、タンパベイとの4連戦を終えて1980試合(2013年6月23日終了時点)となり、ついに歴代2位に肩を並べた。

イチローは、あと20試合出場すると、ピート・ローズに続くMLB史上2人目の「デビュー後、13シーズンで2000試合出場達成プレーヤー」になることができる。おそらく7月末には達成できるだろう。

さらに、あと43試合出場すると、ついにMLB歴代1位のピート・ローズすら越えて、イチローが「デビュー後、13シーズンでのMLB史上最多試合出場プレーヤー」になることができる。こちらのほうは、たぶん8月中に達成できるだろう。

これでまたひとつ、ピート・ローズの記録を塗り替えることができる。めでたいことだ。

MLB歴代 通算出場試合数記録
Career Leaders & Records for Games Played - Baseball-Reference.com

現役選手の出場試合数記録
Active Leaders & Records for Games Played - Baseball-Reference.com


ちなみに、現役選手だけでみると、「13シーズンにおける出場試合数」のMLB歴代2位は、現役で33歳と若いアルバート・プーホールズの「1933試合」(2013年6月23日時点)で、イチローと40試合ちょっとの差しかない。もちろん彼も、イチローに続き、MLB史上3人目の「デビュー後13シーズンでの、2000試合出場達成者」になるのは間違いない。

ほかに、出場試合数ランキング上位500位までみても、現役選手は、33歳のアダム・ダン(1789試合 2013年6月23日時点)くらいしかいないし、彼の数字では「13シーズン・2000試合出場」に届かない。

だから、まだ13シーズンとはいえ、イチローとプーホールズは、通算出場試合数記録において、MLB史に残る傑出した歴史的大記録を残すことになる。(もちろん「13シーズンにおける通算打席数」でも、この2人が現役1位と2位だが、さすがに長年リードオフマンだったイチローが約8980打席であるのに対して、クリーンアップを打つプーホールズは8430ちょっとしかない)

イチローとプーホールズ、この2人に関してだけは、(やがてはプーホールズがイチローを抜いていくとしても)今後しばらく「抜きつ抜かれつの1位争い」がありうるわけだが、過去の「12シーズンの出場試合数記録」が、この2人から大きく離れた記録しかないために、イチローとプーホールズの「デビュー後13シーズンでの通算出場試合数記録」を抜きさる選手は、当分の間現れることはないし、もしかすると、もう現れないかもしれない。


ちなみに、「デビュー後14シーズンの通算出場試合数」では、同じくピート・ローズの「2184試合」という記録がある。
言うまでもなく、イチローがこのまま順調な現役生活を続ければ、来シーズンには、この「14シーズンの出場試合数」のMLB歴代1位記録も、イチローのものになる

デビュー後、14シーズンでの通算出場試合数ランキング
デビュー後14シーズンでの通算出場試合数ランキング
data generated in 06/24/2013 via Batting Split Finder - Baseball-Reference.com


無事是名馬とは、まさにこのことだ。出場試合数記録歴代ベスト10の10人でも、野球賭博で永久追放のピート・ローズと、ステロイダーで殿堂入りは永遠にありえないバリー・ボンズを除けば、全員が野球殿堂入りしている。
イチローが長く無事に出場できている理由には、入念なストレッチやインナーマッスルの鍛錬など、近代的なトレーニング手法によるものだけでなく、「アナボリック・ステロイドのようなドーピングに手を染めていない」ということが関係している、と個人的に思っている。

過去、サッカーなど各界の有名アスリートが股関節など関節にまつわる故障を理由に引退を余儀なくされている。(例えば海外チームでプレーするようになって、突然身体がびっくりするほどデカくなって、その後、グロインペインがどうとか言い出すパターン)
確たる証拠があるわけでもないが、それらの一部は、ステロイドで人工的に過度につけすぎた筋肉の重さに関節が耐えられなくなって故障したものだと思っている。30歳を前に、成長期なんてものがとっくに終わっている年齢だというのに、海外に行っただけでいきなり身体がガチムチマッチョになる、なんてことは、DCやマーベルとかのコミックじゃあるまいし(笑)、どこをどう考えてもありえない。

まさにステロイダーそのものの超人ハルクまさにステロイダーそのものの超人ハルク

Twitter Cardsに対応しました。




damejima at 02:23

June 13, 2013

6月12日オードットコロシアムで行われたオークランド戦でイチローは2本のヒットを放ち、これでMLB通算安打数を2659本とし、「27歳から39歳までに打ったMLB通算ヒット数」において、これまで1位だったピート・ローズ(2658本)を抜き、MLB歴代1位に躍り出た。
資料記事:Damejima's HARDBALL:2013年6月9日、おそらく"Unbreakable Record”となるイチローの「27歳から39歳までの間に打ったMLB通算ヒット数」。歴代1位ピート・ローズに、「あと1本」。

27歳から39歳までの間に打った通算ヒット数ランキング 20130612
Provided by Baseball-Reference.com : Batting Split Finder Generated 6/12/2013


イチローがMLBデビューしたのは、「27歳」。

だから、「27歳から39歳までに打ったMLB通算ヒット数」においてイチローが「MLB歴代1位」ということは、イチローがもしキャリアの最初からMLBでプレーしていたら、MLBの野球殿堂入りの目安のひとつといわれる「MLB通算3000本安打」どころか、空前の「MLB通算4000本安打」を達成し、さらには「ピート・ローズのもつMLB通算最多安打」に迫る安打数を、「MLBのみ」において達成した可能性が非常に高いことを意味している。

このことは、イチローが積み上げつつある「日米通算安打記録」が、単なる日本とMLBの記録の「合算」ではなく、他のどんなプレーヤーも到達したことのない「特別な記録」であることを意味している。

© damejima

damejima at 15:31

June 10, 2013

いよいよイチローピート・ローズという山を少しずつ越えはじめている。

27歳から39歳までの間に打った通算ヒット数ランキング
Provided by Baseball-Reference.com : Batting Split Finder Generated 6/9/2013

これはMLBで「27歳から39歳までに打った通算ヒット数ランキング」。27歳でMLBデビューしている2位イチローのMLB通算ヒット数2657本は、暫定1位ピート・ローズの2658本、つまり、「ピート・ローズがイチローと同じ27歳から39歳という年齢で打った総ヒット数」に、「あと1本」と迫っている。
いうまでもなく、近日中に1位はイチローになるだろう。ピート・ローズの「天下」はこうして少しずつ終わっていくのだ。

1位2位の2人と、3位Doc Cramerの記録が既に約250本も離れていること。現役で、イチロー以外で唯一ベスト10入りしているデレク・ジーターの安打記録は、最近の彼の長期DL入りにより今後大きく伸びることはないと思われること。そして、いまだ現役のイチローが今シーズンのゲームで安打数を伸ばせること。
あらゆる点を考慮すると、この「27歳から39歳までの間に打った通算ヒット数」は、2位イチローが1位ピート・ローズをかわした後、「シーズン262安打」、「10年連続200安打」と並んで、イチローのもつ「今後もう二度と破られそうにない記録」、いわゆる "Unbreakable Record" のひとつになることは、まず間違いない。


なお、この「27歳から39歳ランキング」において、ジョージ・シスラーは24位(2031本)と、MLB史に残る安打製造機のひとりである彼にしては少なめの数字になっている。これは彼が目の病に悩まされて「37歳」で引退しているためで、もし彼が39歳まで健康に過ごしたとしたら、MLBで過去にイチローとピート・ローズ、2人のみが達成できた「27歳から39歳までに2600本以上のヒットを打つ」という空前の数字に迫ることができたのは、やはりシスラーだったのではないか、と思う。
ちなみに、シスラーがセントルイス・ブラウンズでシーズン最多安打記録「257本」を打ち立てたのは、イチローがMLBにデビューしたのと同じ、27歳のときである。
George Sisler Statistics and History - Baseball-Reference.com


また参考までに記しておくと、「30代で打ったMLB通算ヒット数ランキング」は以下の通り。

30歳台で打ったMLB通算ヒット数ランキング
Provided by Baseball-Reference.com : Batting Split Finder Generated 6/9/2013.

こちらの記録のほうは、イチローがあと31本ヒットを打つとピート・ローズを抜くことができる。これも1位がイチローになるのは時間の問題だ。

こちらの記録のほうも、「27歳から39歳までのヒット数」と同様に、3位以下は既に引退している選手と、現在DL中のジーターだから、イチローがピート・ローズを抜いた後は、こちらもまた、イチローのもつ "Unbreakable Record" のひとつになるのは、ほぼ間違いない。

この「30代で打ったヒット数」では、最初に挙げた「27歳〜39歳のランキング」ではベストテンに名前がないクレイグ・ビジオが10位に入っていて、いかに彼が遅咲きの名選手だったかがわかって面白い。41歳で引退した彼が唯一記録したシーズン200本安打も、キャリア最高シーズン打率.325を記録したのも、彼が32歳のときだった。

27歳から39歳までに打ったヒット数と打数・打席の関係
X軸:ヒット1本に要した打数
Y軸:ヒット1本に要した打席数
(2013年6月10日現在 © damejima)

damejima at 01:28

June 06, 2013

いうまでもなく、このブログは、やがてイチローのMLB通算ヒット数が、毎月のように過去の有名プレーヤーの記録を追い抜きはじめる日々が始まること、そして、ピート・ローズタイ・カッブに「毎月、毎週、迫っていく、ヒッチコックサスペンスのようなリアリティ」が多くの野球ファンにインパクトを与え続ける日々が始まることを、ずっと楽しみに待っていた。
テッド・ウィリアムズの次の「毎日をワクワクして暮らすためのターゲット」はMLB通算2721安打のルー・ゲーリッグにしようかなと思っている。

誰しも、「イチローの日本での安打数1278本」+「ルー・ゲーリッグと同じMLBでの安打数2721本」=「3999本」であることをわかった上でイチローの4000本達成を心待ちにしているものとばかり思っていたが、どうやらそうでもないらしい(笑)あらためて書いておこう。
イチローが「日米通算4000本安打を達成するとき」、というのは、同時に、「ルー・ゲーリッグを越えるMLB通算2722目のヒットを打ったとき」でもある。


クリーブランド第3戦に代打として登場したイチローは、ボルチモアチョップでヒットを稼ぎ、MLB通算安打数を2655本とし、ついにテッド・ウィリアムズを抜き、通算安打数記録のMLB歴代単独72位につけた。

Ichiro passes Williams on all-time hits list http://mlb.mlb.com/video/play.jsp?content_id=27762091

この日のヒットについて、ヤンキース公式サイトのBarry Bloomが、なかなか味のある文章を書いてくれた。
Barry Bloom: Yankees outfielder Ichiro Suzuki embraces magnitude of 4,000 hits | yankees.com: News
イチロー本人でさえ「日米通算」という記録のあり方にそれほど重い意味を置いていないことは、これまでの報道から明らかだが、Barry Bloomがあえて「4000本」をタイトルにもってきたこの記事に、彼の書き手としての優秀さが表れていると思うのは、彼が「さまざまな議論があることなど、承知し、ふまえた上で書いている」からだ。


この記事が引用しているブライアン・キャッシュマンGMのこんなコメントがある。
"I can give you a list of guys who came here as superstars in other environments, and they were reduced to smithereens in New York,"
もっと破格の待遇でヤンキースに来たスーパースターで、ニューヨークで木端微塵になるほど価値が暴落した選手なんて、掃いて捨てるほどいる。

最初から高額サラリーで入団するフリー・エージェント系の選手の多い「あらゆる物価が高いヤンキース」のGMらしいコメントだが、Bloomは、イチローが「ヤンキースで木端微塵になった選手」かどうかについて、Ichiro is not one of them. とハッキリ断言した上で、イチローのこれまでのキャリアの特徴を以下のように端的にまとめている。
He's thriving for the Yankees and enjoys the history and tradition, even though he was always a small-market player in Asia and the U.S.
イチローは、アジアでもアメリカでも常にスモールマーケットのプレーヤーだった。にもかかわらず(ビッグマーケットである)ヤンキースに来てもサバイバルできていて、なおかつヤンキースの歴史と伝統を楽しんでもいる。

Bloomは、イチローのキャリアの特性を明らかにする上で、ビッグマーケット、つまり強豪球団育ちである松井のキャリアとの差を指摘した上で、こんなふうに断言している。
Yet, it's Ichiro, not Matsui, who eventually should have a plaque in Cooperstown, N.Y. From the beginning, Ichiro was drawn to the Hall of Fame as a rookie.
ニューヨークの野球殿堂にプレートが掲げられるのは、イチローであって、松井ではない。イチローにはルーキー時代から既に、野球殿堂に至る道が敷かれている。



彼の文章がいいのは、例えば2013シーズンのイチローがヤンキースでけして恵まれた環境でプレーできる環境に置かれているわけではないことをきちんと理解しながら、ヤンキースのマーケットの大きさに惑わされることも、現実から目をそらすこともなく、自分自身の意見として「イチローの業績と評価」ついて意見を述べていることだ。
ヤンキースでイチローは、さまざまな打順を打たされ、本職のライトや、ゴールドグラブを獲った経験もあって適性もあるセンターだけでなく、レフトまで守らされている。そのことも、Bloomはきちんと触れている。そして、言外に、そうした不安定な環境が必ずしもイチローの記録達成に関してプラスになるとはいえないことも、彼はきちんと理解している。


面白いのは、Bloomが、イチローの置かれた今シーズンの理想的とはいえないプレー環境や、日米通算記録の野球史的価値を認めるとか認めないとかいう数字オタクの議論を、すべてきちんとふまえた上で、それでも、イチローがテッド・ウィリアムズの通算安打数を抜いたことを意味する「2655本」について記事を書くことを選ぶのではなく、むしろ、あえて「4000本の栄光」について書き記すことを選んだことだ。
And now, with 4,000 hits beckoning, Ichiro is on the verge of joining the pantheon of the baseball gods.
いまや4000本安打達成が近づき、イチローは今まさに野球の神々の神殿の中に歩を進める、そういう地点に立っている。



今回の「2655本」についてのツイッターやメディアでの反応を眺めてもわかることだが、実は、イチローがMLB通算安打数でテッド・ウィリアムズに並び、そして抜いた「この地点」は、これまでの「単なる通過点」とはやや感触が違う。これまでは、どんな野球殿堂入り選手の安打数を抜いても、ほとんど記事になったり、関連記事がリツイートされたりという、「情報の渦(うず)」は起きなかった。
やはりテッド・ウィリアムズというプレーヤーは、単なる「MLBの歴史」なのではなくて、『歴史の中の歴史』なのだ。

その『歴史の中の歴史』、その「高さ」を越えていかないと、『歴史の中の歴史』になれないし、そもそも、毎日忙しい生活を送るたくさんの人々に、いまのいま起ころうとしていることの意味を理解してもらうことができない。
つまり、「テッド・ウィリアムズのような高い頂きを越えていく日々が始まることで、やっと、イチローという富士に似た孤高の山のもつ『空を突き抜けるとみまがうほどの、見上げるような高さ』を理解できる人が一気に増える」ということだ。

この「高さ」は、毎日毎月少しずつ積み重なっていくだけに、到達した高さが実感しづらい、そういう種類の「高さ」だ。無理にたとえるなら、それは「ずっと続けてきた定期預金が、ある程度まとまった金額になったとき、ようやく自分の貯金の『多さ』に気がついて、喜びをかみしめているサラリーマン」ような状態なわけで、イチローの「高み」になかなか気がつかない人がいるのも、こればかりはいたしかたない。


ともかく、今回の「テッド・ウェリアムズ越え」で、
ひとつ、とてもよくわかったことがある。

4000本安打達成というのは、日米の野球メディア、日米の数字好きの野球オタク、さらにイチロー自身が、これまで想定してきたレベルより、ずっと大きなインパクトを野球ファンにもたらすだろう、ということだ。


正直にいえば、このブログにしても、MLB3000本安打はともかく、日米通算4000本安打については、「日米通算」だからな、などと思った部分もなくはなかったのだが、今回の「テッド・ウィリアムズ越え」を経験したことで、今までと違う「感触」を持った。
それは、他の選手ならともかく、イチローの場合に大事なのは、「日米の野球記録を通算することが、果たして記録として正当性があるかどうか」なんていう「数字上の議論」ではない、ということだ。

意味があるのは、
「イチローという選手のキャリア全体が、
4000本という地点の『高さ』にふさわしいかどうか」

ただそれだけだ。


もちろん答えは、Barry Bloomも、
そしてこのブログ主宰damejimaも、意見は同じ。

Absolutely, YESだ。


「イチロー4000本安打達成」は、その達成時、「さまざまな議論があることなど、承知しているつもりでいるあなた」がタカをくくっているより、ずっと大きな反応を引き出すことだろう。
今後はこのブログでも、ひとめはばかることなく『4000本の栄光』について触れることにする。

まだ「2655本」の段階でさえ、こうなのだから、イチローの「4000本」は既に「4000本」という、とてつもない数字にふさわしいインパクトの大きさを持っている。

damejima at 14:03

February 29, 2012

1. Zack Wheat   221(1925) HOF
2. Tony Gwynn   220(1997) HOF
3. Ty Cobb      211(1924) HOF
4. Pete Rose     198(1978)
5. Eddie Collins   194(1924) HOF
5. Dummy Hoy    194(1899)
7. Kiki Cuyler     185(1936) HOF
8. Ichiro Suzuki  184(2011)
9. Hal McRae     183(1983)
10. Doc Cramer   182(1943)
Batting Leaders Before, During and After Age 37 - Baseball-Reference.com

これ、何かというと、「37歳という年齢で打ったヒット数の、MLB歴代ベストテン」だ。ソースは、MLBデータの殿堂、Baseball Referenceである。
下記リンクのAge-Based Leaderboardsという項目に、18歳から43歳まで、投打の様々な記録を年齢別に集計したデータが集められている。さすがBaseball Reference。素晴らしい記録集である。
MLB & Baseball Leaders & Records - Baseball-Reference.com


2011年に200安打が達成できなかったことから、メディアにやれ不振だのなんだの、わけのわからない心配をされた37歳のイチローだが、2011年37歳で打ったシーズン安打数186本は、実は「MLBの過去から現在に至るまで、全ての37歳のバッター」において「MLB歴代8位」だったりする。
(イチローの誕生日は10月22日なので、毎年シーズン終了後に年齢がひとつ増える。だから、MLBでのそれぞれのシーズンにおける年齢表示は、イチローにとって誕生日前の年齢ということになる)

2012年のイチローに、何を心配することがあるだろう。
くだらない。


じゃ、前年2010年の36歳のイチローのヒット数、214本は、MLB史において、どういう意味があったか。

MLB歴代2位」。

1. Sam Rice      216(1926) HOF
2. Ichiro Suzuki  214(2010)
3. Zack Wheat   212(1924) HOF
4. Paul Molitor    211(1993) HOF
5. George Sisler   205(1929) HOF
6. Pete Rose     204(1977)
7. Bill Terry      203(1935) HOF
8. Randy Velarde  200(1999)
9. Babe Ruth     199(1931) HOF
10. Luke Appling   192(1943) HOF
Batting Leaders Before, During and After Age 36 - Baseball-Reference.com

2010年36歳のイチローは214本のヒットを打ってシーズン200安打を達成したが、この36歳でシーズン200安打を達成したバッターは、長いMLB史においても、わずか8人しかいない
また、後で書くが、MLB史において36歳という年齢でシーズン200安打を達成したバッターが「10人以下」であるということは、実はMLBの選手のキャリアにとって、36歳という年齢が非常に意味のあるターニングポイントであることを如実に示している。


ついでだから、2001年にMLBデビュー以降、イチローの年齢それぞれにおけるMLB歴代ヒット数ランキングにおける順位をすべて挙げておこう。面白いことがわかるはずだ。

2001年 27歳 2位(1位 ジョージ・シスラー)
2002年 28歳   10位以内に入れず
2003年 29歳   10位以内に入れず
2004年 30歳 1位(2位 Matty Alou)
2005年 31歳   10位以内に入れず
2006年 32歳 5位
2007年 33歳 1位(2位 ロジャー・ホーンスビー)
2008年 34歳 6位
2009年 35歳 2位(1位 Nap Lajoie、Sam Rice)
2010年 36歳 2位(1位 Sam Rice)
2011年 37歳 8位


新人にして242安打を打ち、ア・リーグMVPに輝いた2001年(27歳)。262安打のシーズン最多安打記録を打ち立てた2004年(30歳)。238安打を打って2度目のシルバースラッガー賞に輝いた2007年(33歳)。これらのシーズンのイチローのMLB歴代ランキングが高いことは、誰でも簡単に想像がつく。

だが、むしろ面白いのは、イチローが32歳で迎えた2006年以降、それぞれの年齢時点におけるMLB歴代ヒット数ランキングから、ただの一度も落ちたことがないということだ。

逆にいうと、27歳でメジャーデビューして5年目までの「若い」イチローは、同じ年齢のMLB歴代バッターのヒット数ベストテンに、2度しか入れなかった。
イチローがMLBにおいて、他のあらゆる時代の同世代プレーヤーを置き去りにするほど抜きんでたチカラを発揮したのは、実は、31歳までの「若くて華々しいイチロー」ではなくて、2006年以降の「30代になり、MLBで揉まれてさらにひとまわり大きく成長したイチロー」だ、とも言えるわけだ。

面白いものだ。



ちなみに、イチローが2010年まで10年続けてきたシーズン200本安打という記録の持つ価値のひとつは、MLBの全バッターを、「年齢」という観点で見たときに、はじめてわかる部分もある。

シーズン200安打という記録は実は、それが大記録ではあるにしても、「35歳」までのプレーヤーでは、どの年齢においても、MLB史においてそれぞれ10人以上のバッターが達成している。ところが、「ある年齢」をターニングポイントに、急激に様子が変わる。

それが「36歳」だ。

「36歳」でシーズン200安打以上を達成したのは、8人と、MLB史において初めて「10人以下」になる。イチローもその名誉あるひとりだ。
これが、「37歳」になるとさらに激減して、わずか3人になり、38歳では3人、39歳1人、40歳1人。そして41歳以上でのシーズン200安打は、誰も達成していない。
「37歳以降に200安打を達成したバッター」は、MLB史を通算しても、合計7人しかいないのである。(のべ人数は8人だが、Sam RiceがMLBで唯一2回達成しているために、達成者数は7人ということになる)

「37歳以降」のシーズン200安打達成者リスト

37歳
Zack Wheat(221本)
Tony Gwynn(220本)
Ty Cobb(211本)
38歳
Pete Rose(208本)
Jake Daubert(205本)
Sam Rice(202本)
39歳 Paul Molitor(225本)
40歳 Sam Rice(202本)


37歳以降にシーズン200本安打を、それも複数回達成したバッターは、20世紀初頭のワシントン・セネタースの名選手、Sam Rice、ただひとりだ。
37歳以降にシーズン200安打を達成したプレーヤーはほかに、球聖タイ・カッブはじめ、サム・ライス、ザック・ウィート、トニー・グウィン、ピート・ローズ、ポール・モリターと、殿堂入り選手のオンパレードだが、その彼らですら、「37歳以降」はシーズン200安打をそれぞれ一度ずつしか達成できなかったのである。(ちなみに殿堂入りしていないドーバートも、首位打者2回、1966年レッズ球団殿堂入り、1990年ドジャーズの球団殿堂入りの名選手)



ファンは、常に身の程知らずの貪欲な生き物だ。
だから、プレーヤー側の、まるでイノチを削るような過酷な努力も知らずに、身勝手なことばかり言う。残念ながらブログ主も例外ではない。

正直言うとブログ主は、2011年、37歳で、もしイチローがシーズン200安打を達成していたら、と、今でも思ってはいる。前人未踏の11年連続200安打が達成できたばかりではなく、37歳以降に200安打を達成したMLB史に残る黄金の7人の仲間入りができなかったのが、残念でならない。


だが、37歳以降の200安打へのトライがどれほど大変なことか、知れば知るほど、37歳以降だからこそシーズン200安打を達成しておいてもらいたいと思う。

困難な記録だ。
だからこそ、イチローに求めたくなる。

他のプレーヤーになら、こんな無茶苦茶にハードルの高い要求など、しようと思わない。球史に残る不世出のプレーヤーだからこそ、他の、誰よりも高いハードルを越えてくれることを、心から願わずにいられないのだ。3番を打つかどうかなんて些末なことは、正直、どうでもいい。



イチローのトライする「38歳以降の世界」は、前にも一度書いたことだが、これまでごく少数の野手しか登頂できなかった頂点だ。そもそも、登頂の機会そのものが、100数十年のMLB史において、ごくわずかな人数のプレーヤーにしか与えられてこなかった。イチローのこれからの道のりが、チョモランマ的な最高峰の頂上を極めようとする、非常に困難な道のりなのはわかっている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年9月26日、3000本安打を達成する方法(1) 4打数1安打ではなぜ達成不可能なのか。達成可能な選手は、実はキャリア序盤に既に振り分けが終わってしまうのが、3000本安打という偉業。

しかし、イチローファンとして言うと、彼ほどのプレーヤーに期待する内容に、自分自身で手加減、手ごころを加えるようになったら、それこそ、おしまいだ。
ブログ主は、通算3000本安打達成はもちろん、「メジャーで7人しか達成していない38歳以降のシーズン200安打」にトライすることを、ファンとして、イチローに要求したいと思う。まずは1度でいいから達成してもらいたいし、もし2度達成できれば、もう絶句。何も言うことはない。
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damejima at 22:03

October 17, 2011

3000本安打達成には、「3つのルート」があることを指摘してきた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年9月28日、3000本安打を達成する方法(2) 3000本安打達成者の「3つのタイプ」
3つのルートのうち、第1グループ「カール・ヤストレムスキー型」は、「最も低打率」で記録を達成したグループであり、カル・リプケン的な「身体の丈夫さ」と、「息の長い選手生命をもったフランチャイズ・プレーヤー」が特徴。最初に入団したチームから一度も移籍することなく引退した選手も多い。
彼らが相対的には低打率でありながら3000本安打を達成できたのには、「ひとつの場所に根をはやして留まり、地道に努力していく、彼らの穏やかな性格や行動様式」に、そのルーツがあった。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年9月28日、3000本安打を達成する方法(3) 第1グループ「カール・ヤストレムスキー型」にみる、身体の丈夫さと、フランチャイズ・プレーヤーであることによる「幸福な長いキャリア」

3000本安打達成者の打数と安打数の関係 3タイプ分類(修正)
(クリックすると別窓で図拡大)


今回は第2グループ「ピート・ローズ型」を見てみる。
通算打率3割前後で3000本を達成するに至った「ピート・ローズ型」は、、第1グループ「カール・ヤストレムスキー型」とはかなり対称的な特徴をもつ。

それぞれの特徴を強調して言うなら、第1グループの「カール・ヤストレムスキー型」が「アットホームな農耕民族的定住」であるのに対して、第2グループの「ピート・ローズ型」は「狩猟民族的なハンティング」という特徴をもつ。
第2グループ「ピート・ローズ型」の選手たちは、第1グループの選手たちと違って「キャリア最晩年の移籍」を選択した点にひとつの特徴がある。第2グループの達成者たちのモチベーションは、「質よりも量」、「率よりも数」なのだ。
カンザスシティで全てのキャリアを終えたジョージ・ブレットを除く4人の選手が、10年以上同じチームに在籍したフランチャイズ・プレーヤーでありながら、キャリア晩年になって他チームに移籍している。
ピート・ローズ 22歳〜45歳
   CIN→キャリア晩年にPHI→MON→CIN
ハンク・アーロン 20歳〜42歳
   MIL→ATL→キャリア晩年にMILに戻る
ウィリー・メイズ 20歳〜42歳
   SFG→キャリア晩年にNYM
ジョージ・ブレット 20歳〜40歳 KC一筋
ポール・モリター 21歳〜41歳
   MIL→TOR→キャリア晩年にMIN

フランチャイズ・プレーヤーとしての道を捨ててまで、移籍によって自分のキャリアを延命させ、記録の上積みを狙う「ピート・ローズ型」の欲望のルーツは、アベレージ・ヒッターかホームラン・バッターかというバッティング・スタイルの違いより、個人的な性格の違いのほうが強く影響しているといってみてだろう。温厚なカル・リプケンと、賭博で永久追放になったピート・ローズを思い浮かべれば、2つのグループの性格の違いは誰にでもわかる(笑)


第1グループ「カール・ヤストレムスキー型」は、低打率なために、キャリアで一度も移籍しないことで安定したキャリアを送ることで、3000本安打という輝かしい記録を手にいれているが、第2グループ「ピート・ローズ型」の選手たちは、こと安打数について言えば、本来、「カール・ヤストレムスキー型」の選手たちより、かなりのゆとりをもって3000本安打を達成できる恵まれた才能を持っていたはずだ
それは、第1グループの選手たちとの通算出塁率の差などをからもわかる。第1グループのカル・リプケンロビン・ヨーントの通算出塁率は歴代ランキングでみると800位台だ。これは、3000本安打という大記録を打ちたてた選手にしては、通算打率が3割ないのと同様、思ったより低い順位に留まっている。
それに対して「ピート・ローズ型」の通算出塁率は、全員が歴代ランキング300位以内の選手ばかりと、安定した数字を残している。
「カール・ヤストレムスキー型」の
安打数と通算出塁率順位
カール・ヤストレムスキー 3419本 175位
エディー・マレー 3255本 457位
カル・リプケン 3184本 859位
ロビン・ヨーント 3142本 814位
デイブ・ウィンフィールド 3110本 593位
クレイグ・ビジオ 3060本 382位
リッキー・ヘンダーソン 3055本 55位

「ピート・ローズ型」の安打数と通算出塁率順位
ピート・ローズ 4256本 211位
ハンク・アーロン 3771 222位
ウィリー・メイズ 3283本 141位
ジョージ・ブレット 3154本 275位
ポール・モリター 3319本 281位



「執着」というものは、往々にして人の人生を変えてしまうものだ。
特に、人並み外れて異常な強い執着心をもった人間にしてみれば、「なにがなんでも、もっと記録を上乗せしたい」とか、「どこかにもっと輝かしいキャリアが待っているはずだ」と渇望する「飢えや執着」は、どうにも断ち切ろうにも断ち切れない。
ピート・ローズが野球賭博にかかわって永久追放になったことについても、彼が自制のきくタイプではなく「欲望を断ち切れない性格だった」ことにルーツがあるのだろう。

ある意味もったいないのは、「ピート・ローズ型」の3000本安打達成者の通算スタッツは、もしキャリア晩年の他チーム移籍以降の不本意な数シーズンがなかったら、もっと素晴らしい数字を残しただろう、という選手が多いことだ。
こと通算打率に関してだけ言えば、もし移籍によるキャリア延命でスタッツを低下させていなければ、もしかすると「ピート・ローズ型」の選手にも、3割2分以上のハイ・アベレージの中で3000本安打を達成した、天才的安打製造機集団、第3グループ「スタン・ミュージアル型」に匹敵する数字を残したままキャリアを終えるチャンスがあったかもしれない。

だが、彼らの強い「現役欲求」が、かえってそれを阻んだ。
「執着」が彼らの現役生活のある部分をかえって台無しにしたのである。



余談として、ポール・モリターイチローのエピソードについて。

モリターは、若い頃はセカンド、サードを守りつつ打席に立っていたが、1991年以降のキャリア後半には、主にDHとしての出場になり、それにともなってバッティングスタイルを大きく変更している。
若い頃のモリターは、三振が多い打者だったが、DHに変わったキャリア後半ではバッティングスタイルを「ボールを見ていくスタイル」に変え、三振率が下がると同時に四球率が上昇するなど、このバッティング・スタイルの変更は結果的にモリターの打撃スタッツを向上させた。
彼はシーズン200安打を4回達成しているが、うち3回はDHがメインになって以降であり、また、シルバースラッガー賞4回はいずれもDHとしての受賞である。
Paul Molitor Statistics and History - Baseball-Reference.com

モリターは2004年に招かれてシアトルで臨時打撃コーチをやり、この年にシーズン最多安打記録を塗り替えることになるイチローに「初球打ちはするな」と戒めた(笑)
だが、そのモリター自身は、たとえば最もホームランを打っているのは「初球」なのであって、指導方針とモリター自身のキャリアは、まったくもって矛盾している(笑)

モリターは、キャリア後半にDHになって以降のバッティングスタイルの変更で大きな成功をおさめた自分自身のキャリア特性から、「打ち気にはやっていた若い頃のスタイルは間違っていた。やはり、じっくりボールを見てスイングするスタイルが、打者として正しい道だ」とでも思いこんでいるのだろうが、悪いけれど、それは「若い頃は振り回してばかりで、スタッツはたいしたことはなかった」モリター個人のキャリア特性から出た考え方であって、他に類をみないイチローのプレースタイルや天才ぶりとは全く無縁の話だし、また、モリターは、自分の晩年のプレースタイルがいくら自分には向いていたとしても、それがすべての打者にあてはまるルールになるとは言えないことすら、すっかり忘れている。単に自分のスタイルを押し付けているようでは、指導者にはなれない。

イチローは、DHになって守備負担がなくなり、バッティングに専念するようになってはじめて大量の安打数を積み重ねることができた結果、はじめて大記録である3000本安打達成の道が開けたポール・モリターと違って、フルに守備をこなし、ゴールドグラブを10年連続受賞しつつ、200安打を10年連続して達成した「攻守走」揃った「スタン・ミュージアル型」の天才プレーヤーなのであり、ポール・モリターとはプレースタイルもキャリアのレベルも異なる。(もっと言えば、シアトル、あるいはアメリカの指導者やコーチの多くがイチローに対して、モリターと同じような、間違った指導を行っている可能性がある)

ともかく、こと安打製造技術に関しては、モリターにとやかく言われる筋合いではない。
The Seattle Times: The Art of Baseball: The art of Ichiro: Right hitter, right time



damejima at 09:11

September 27, 2010

ピート・ローズという野球賭博で永久追放になった人が、イチローのことをとやかく言っているようだが、ちょっと笑ってしまう(笑)

通算長打率
イチロー   .430
ピートローズ .409

【MLB】トーリ監督「ローズより優れた才能」とイチローを絶賛 - MSN産経ニュース


どうして、たとえば長打率という誰にでもわかるハッキリした数字があるのに、「オレのほうが長打を打ってる」なんてテキトーな嘘を公然と言ってのけられるのか。不思議なおヒトがいるものだ。
さすが、賭博で永久追放になった人なだけのことはある。


ハッキリしておいてくれたまえよ。オッサン。
通算長打率はイチローのほうが高い。


どうしてこういう笑い話みたいなことになるか、面倒だが、多少細かく説明しよう。

イチロー
(メジャー9シーズン+2010年シーズン9月26日まで)
二塁打   228本
三塁打   68本
ホームラン 84本 
Ichiro Suzuki Batting Statistics and History - Baseball-Reference.com

ピート・ローズ(24シーズン)
二塁打   746本
三塁打   135本
ホームラン 160本
Pete Rose Batting Statistics and History - Baseball-Reference.com

実数としてはメジャー生活が長いローズが上回る。だが、これを「1シーズンあたりの長打数」「長打1本あたりの打席数」に換算してみると、まったく様相が変わる。
こんな数字になる。

シーズンあたり長打数
イチロー(9シーズン+2010年シーズン9月26日まで)
二塁打   22.8本
三塁打   6.8本
ホームラン 8.4本

ピート・ローズ(24シーズン)
二塁打   31.08本
三塁打   5.63本
ホームラン 6.67本


1本の長打を打つのに要した打席数
イチロー(7301打席=2010年シーズン9月26日まで)
二塁打   32.02打席
三塁打   107.37打席
ホームラン 86.92打席

ピート・ローズ(15861打席)
二塁打   21,26打席
三塁打   117.49打席
ホームラン 99.13打席


どうだ。
二塁打以外、すべてイチローがピート・ローズより質的に勝る。「ピート・ローズがイチローより長打力がある」などと言える根拠など、むしろ、どこにも無い。
出塁率についても、ほぼ同じ通算スタッツのピート・ローズにとやかく言われるような筋合いはないし(通算出塁率 イチロー.376 ローズ.375)、二塁打数の違いにしても、イチローの盗塁数の多さと、メジャー最高レベルの盗塁成功率、併殺打の少なさなどをきちんと考慮すれば、ピート・ローズ程度の二塁打数くらい、別にたいしたことはない。

イチローは、既にピート・ローズの2倍以上の数の盗塁を成功させており、盗塁成功率は実に81.3%(2010年9月26日現在)と、80%を越えている。成功率に関してだけいえば、75.34%のルー・ブロック、80.76%のリッキー・ヘンダーソンすら越えている。ア・リーグ記録はWillie Wilsonの83.3%(300以上の企図数)だから、イチローは盗塁成功率のア・リーグ新記録も狙える位置にいる
ナ・リーグの歴代最低盗塁成功率57.1%を記録し、40数%もの盗塁を失敗して、せっかくのヒットを数多く無駄にし続けたピート・ローズに、別に何を言われようと、別に痛くも痒くもない。
Lou Brock Statistics and History - Baseball-Reference.com

Rickey Henderson Statistics and History - Baseball-Reference.com


通算出塁率
イチロー .376
ピート・ローズ .375


盗塁数
イチロー    382(失敗数 88 成功率 約81.3%)
ピート・ローズ 198(失敗数 149 成功率 約57.1%

(注;盗塁企図数200以上の全プレーヤーのうち、ピート・ローズの盗塁成功率57.1%は、ナ・リーグの歴代最低記録 ちなみにア・リーグ歴代最低は、ルー・ゲーリッグの50.2%だが、彼はホームランバッターだし、参考にはならない。102回成功、100回失敗)
Stolen Bases Records by Baseball Almanac


シーズンあたり盗塁数
イチロー 約38.2回(=2010年シーズン9月26日まで)
ピート・ローズ 8.25回

イチローのヒットに、382もの盗塁数を重ねあわせて考えてみれば、両者の出塁状況の大差は、さらにわかりやすい。
イチローは228本の二塁打以外に、382回もセカンド(あるいはサードへの盗塁)を陥れて、チームに多数の得点チャンスを与えてきた。つまり、イチローがバット(二塁打)と足(セカンドまたはサードへの盗塁)で得点圏の塁を新たに陥れた総数は10シーズン通算で600回以上にもなっていて、1シーズンあたりに直すと60回以上にもなるのである。
同じことをピート・ローズについて計算してみると、二塁打が1シーズンあたり約31本、盗塁が1シーズンあたり約8回だから、合計しても、1シーズンあたり40回にすら届かず、イチローの3分の2しかない。
シーズンあたり、わずか8回ちょっとしか盗塁しないピート・ローズでは、シーズンあたりの盗塁数が約40にも及ぶイチローのチャンスメイクの超絶パワーの比較対象にもならないのである。


そして、イチローの盗塁の芸術品たる所以は、盗塁失敗がわずか88回しかなく、盗塁成功率がメジャー最高クラスの81.3%にも達していることにもある
一方で、ピート・ローズは、盗塁数が24シーズンでわずか198しかないにもかかわらず、およそ40%以上もの盗塁を失敗している。(しつこいようだがピート・ローズの盗塁成功率57.1%は、盗塁企図数200以上でのナ・リーグ歴代最低記録

さらに、考慮すべきなのは「併殺打の数」だ。
イチローはメジャー10シーズンでわずか46しか併殺打を記録していない
他方、ピート・ローズの併殺打数通算で247もあり、アウトカウントをおよそ500も無駄に生産している。ピート・ローズは、1シーズンあたりイチローの約2倍の併殺打を打ち、実数ではイチローの約5倍の数の併殺打を打って、大量のアウトカウントを無駄に生産しているのである

つまりピート・ローズの生産したアウトカウントは、盗塁死において149、併殺打で約500足らずあるわけだから、この2つのケースの合計で「ピート・ローズが、自分のプレーミスでいたずらに増やしたアウトカウント数」は、なんと合計650もの数になる。
韋駄天イチローは常に全力プレーで1塁を駆け抜け続け、数々のダブルプレーを阻止し、数々の内野ゴロを内野安打化してきたわけだが、それはイチローが自分の快足を生かして無駄なアウトカウントを減らし、アウトさえヒットに変えたという意味であり、その数は相当数にのぼることの重要性を忘れてもらっては困る。


両者の差は
スピードの違い、
プレーの正確さの違い。
そしてクリーンさの差
」である。

これらの差は、すべてMLBの歴史的変化が背景にある。
たった1本のソロホームランを打つために20回も30回も三振するバッターが現代野球を作ってきたのではなく、スピードスター、イチローがメジャーの野球を変えた、といわれる所以(ゆえん)が、この「スピード」、そして「クリーンさ」にあると、何度説明すればわかるのだろう?
一度ケン・バーンズにでも、メジャーの歴史の大きな流れの変化について聞いてくるといい。

イチローとピート・ローズ、どちらが質の高いプレーをしてきたか?
考えるまでもない。


ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月9日、盗塁とホームランの「相反する歴史」。そしてイチローのメジャーデビューの歴史的意義。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月11日、イチローも登場するらしい9月末公開のスポーツドキュメンタリー"The Tenth Inning"を作ったケン・バーンズの横顔。彼の考える「MLB史におけるイチロー登場の意義」は、このブログと同じ。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月15日、イチローにケチをつけようとして大失敗したRob Dibbleと、イチローを賞賛したRob Neyer、「2人のRob」のどちらが「いまどきの記者」か。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月16日、ちょっと忘れっぽくなっているらしいピート・ローズ氏が、かつてスポーツ・イラストレイテッドの Joe Posnanskiに語ったことの覚え書き。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月20日、シアトル・タイムズのスティーブ・ケリーが、"The Tenth Innning"のケン・バーンズと共同監督のリン・ノビックが行った「イチローインタビュー」について当人に取材して書いた記事の、なんとも哀れすぎる中身とタイトル。


そう。
むしろ「二塁打をやっと打てるくらいで、長打は言うほど多くもないのに自慢したがり、足はそれほど速くないのに盗塁しては失敗ばかりして、併殺打もかなり多く、無駄なアウトカウントを増やすことに無頓着だった、見栄っ張りの雑なプレーヤー」に、いまさら何を言われようが、別に気にしないのである。






damejima at 19:33

September 17, 2010

スポーツイラストレイテッドのJoe Poznanskiが書いたイチローに関する記事を紹介したのは、今年2010年3月だ。その中にこんな記述があったのを、ちょっと思い出した。
(注:Joe Poznanskiの経歴については下記の記事に詳しく書いたので省略
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年3月26日、The Fielding Bible Awards選考委員で、2007年CASEY Awardを受賞しているスポーツ・イラストレイテッドのJoe Posnanskiがイチローを絶賛した記事の翻訳を読んでみる。
また、Joe Poznanskiの元記事全文の日本語訳は、あるサイトがネット上に公開している。他サイトに迷惑をかけたくないので、URLを出すのは控えたい。日本語で元記事を読みたい方は、検索エンジンで「イチローのようなプレーヤーはこれまでいなかった」とでもキーワードを入れて探すと出てくるので、そちらでどうぞ)


Pete Rose once told me that nobody -- NOBODY -- was going to break his hit record and, to punctuate the point, added: "And you can tell Ichiro he can count his hits in Japan."
ピート・ローズはかつて私に、「誰も、そう『ただの一人も』、僕の安打記録を打ち破ることはないだろう」と語った。彼は自分の主張をさらに強調するように、こうも付け加えた。「なんならイチローに『どうぞ日本でのヒット数をカウントに入れてもらって構わないよと(僕が言ってると)伝えてくれよ。」(注:カッコ内はブログ側の補足文)


ピート・ローズさん、あなた、こんなこと言ってましたっけね(笑)なのに、どういうわけでイチローの日本でのヒット数についてグダグダ言い出したのかな。まぁ、人間、年とると忘れやすくなるからねぇ。だから、このブログが過去を掘り起こしてみましたよ、と。(笑)
ま、Joe Poznanskiの予測(when it comes down to it, I suspect that Pete Rose doesn't really want to count Ichiro's hits in Japan.)どおりというところか。

さて、Joe Poznanskiは、36歳というイチローの年齢に着目して、「経歴と年代の異なるプレーヤー同士を、36歳時のヒット数」で横一線に比較してみている。


Well, of course, they played shorter seasons in Japan. But, by my count, Ichiro had 1,278 hits in Japan. That would give him 3,308 hits for his career.
もちろん、日本の野球シーズンはメジャーよりも短い。私の計算では、イチローの日本でのヒット数は1278安打。それを加えたイチローのキャリア通算安打数は3308安打となる。

Pete Rose entering his 36-year-old season? He had 2,762 hits. That would be 546 fewer hits.
36歳を迎えたピート・ローズの安打数? 2762。イチローより546少ない。

In fact, counting Japan, Ichiro has more hits than anyone had entering their age-36 season:
日本でのヒット数をカウントに入れると、イチローの36歳でのヒット数は、36歳を迎えてプレーした、他のどんなプレーヤーよりも多い。

1. Ichiro Suzuki, 3,308
2. Ty Cobb, 3,264
3. Robin Yount, 2,878
4. Rogers Hornsby, 2,855
5. Tris Speaker, 2,794
6. Stan Musial, 2,781
7. Pete Rose, 2,762
8. Derek Jeter, 2,747
9. Mel Ott, 2,732
10. Sam Crawford, 2,711


そしてJoe Poznanskiはこの記事の結論として、「私はイチローに似た選手をまったく考えつかない。まさにオンリー・ワンの選手だ」と絶賛している。
この意見自体にはブログ主も賛成だが、それでも、あえて1人選べと言われたら、ブログ主なら今の時点で即答できる答えがある。

Ty Cobb.

すみませんね。ピート・ローズさん。
いまイチローの比較対象は、あなたの単純な「ヒット数」じゃなくて、メジャーの歴史の変革期におけるイチローの意義であり、球聖タイ・カッブなんですよ。
すみませんね(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月9日、盗塁とホームランの「相反する歴史」。そしてイチローのメジャーデビューの歴史的意義。






damejima at 10:45
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No Ichiro, No watch.

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