Debby Wong事件とスポーツジャーナリズム

2014年11月13日、2008年Yahoo.com記事の表現を「あたかも自分が聞いてきた」かのように根こそぎパクった丹羽政善の2010年日本経済新聞記事を発見。
2013年9月17日、日本でも発覚、第二の「Debby Wong事件」となる『共同通信ホームラン写真捏造事件』。ホームランシーンを撮りそこなった共同通信のカメラマンが、「ニセの写真」をわかっているだけで3度にわたり配信。
2013年8月31日、『Debby Wong事件』 〜スポーツ・カメラマンDebby Wongが、「まったく別の場面のイチローの写真」を「イチロー4000安打の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事として公開していた事件。

November 14, 2014

「年度」を覚えておいてほしいのだが、2010年7月日本経済新聞のスポーツ記事に、「2000年代MLBオールスターで、ア・リーグ名物として出場選手間だけで知られていた、イチローの試合前スピーチ」について、かつてダメ捕手城島の提灯持ちライターだった丹羽政善が書いた「イチローを巡る球宴のジンクスと後半戦の変化」という「妙な」記事がある。

丹羽はこの記事で「2010年オールスターでイチローは例のスピーチをやった」という証言コメントを、「たまたまスタジアム内の通路を通りかかったオルティーズ」を呼び止めて、あたかも「自分の耳で直接聞いた」かのような「芝居じみた書き方」をして紙面をかせいでいる。(具体的表現については以下の引用を参照)

だが、それはウソだ。

なぜなら、丹羽の2010年の記事は、表現と構成の酷似ぶりから判断して、この記事が書かれた2年以上も前、2008年7月に、アメリカの検索サイトYahoo.comのJeff Passanが、まったく同じネタである「オールスターでのイチローの試合前スピーチ」について書いた記事をパクって書いたのが明らかだからだ。

よく恥ずかしげもなく、こういう記事を掲載するものだ。

元記事のどこをどの程度パクったのかは細かい検証が必要なわけだが、少なくとも、2010年日経記事のいう「2010年オールスターで、丹羽という日本人ライターが、イチローが恒例の試合前スピーチをやったという話を、通りすがりに、デビッド・オルティーズから聞いた」という部分については、「まったく架空の話である可能性」すらあるといえる。

なぜなら、この「イチロー本人ではない他の選手から、『伝聞』で聞いた話」の「根幹部分」が、そもそも「過去の他人の書いた記事からパクっている」からだ。「伝聞記事が事実として成立するための根幹部分」が「パクリ」である以上、パクリ部分を事実のみに沿って謝罪した上で訂正し、パクリが行われた事実関係を正して襟を正すことをしない限り、記事は全体として信憑性を失う。当然のことだ。


では以下に具体的表現を採集しておこう。

まずは2010年丹羽の記事から。無駄な改行とタイトル類は省略してある。また、太字加工はブログ側添付によるもので、元記事にはない。
 13日行われたオールスターの試合後、なぜか薄暗い球場の裏通路をレッドソックスのデビッド・オルティスと並んで歩くことになった。下から見上げれば、193センチ104キロの彼の巨体は他の者を押しつぶしそうな威圧感がある。

その威圧感に圧倒されながらも、なんとか確認したかったのはオールスターのジンクスについて。イチローが出場した昨年までの過去9年、2002年の引き分けを除けばすべてア・リーグが勝利を収めてきた。それをア・リーグの選手に言わせれば、こういうことになる。

イチローが試合前にスピーチをしているからだ

始まりははっきりしないが、毎年のようにイチローを担いだのが、このオルティスだったのだという。

「イチローが、言いたいことがあるそうだ」と。

今年はどうだったのか? 足早に歩く彼に聞きたかったのはそれだけだったが、前日のホームランダービーを制した大男は白い歯を見せていった。

「今年もやったぜ。最高だったよ」

「なんと言ったのか?」との問いには、「“Bleep … bleep bleep … National League …bleeeeeeeeep … National - bleep」と、書き表すことのできないようなスラングを並べた。

ありきたりのフレーズではなく

「本当に?」と聞き返せば、「ガハハハハ」と笑っただけでイエスともノーとも言わなかったが、少なくとも、「ナ・リーグをやっつけようぜ」という、ありきたりのフレーズではなかったようだ。


では、次に、Yahoo.comのJeff Passanが、2008年に「イチローのオールスターのゲーム前に行うスピーチについて」書いた記事を引用する。

出典Ichiro's speech to All-Stars revealed - Yahoo Sports

A whisper here. A story there. Something about the greatest pregame speech since Rockne invoked the Gipper, one laced with profanity and delivered to the American League All-Stars every year.

"It's why we win," David Ortiz said.
(中略)

"That's kind of what gets you, too," Minnesota first baseman Justin Morneau said. "Hearing him say what he says. At first, I talked to him a little bit. But I didn't know he knew some of the words he knows."

The exact words are not available. Players are too busy laughing to remember them. Ichiro wouldn't dare repeat them in public. So here's the best facsimile possible.

"Bleep … bleep bleep bleep … National League … bleep … bleep … bleeeeeeeeep … National – bleep bleep bleepbleepbleep!"

"If you've never seen it, it's definitely something pretty funny," Morneau said. "It's hard to explain, the effect it has on everyone. It's such a tense environment. Everyone's a little nervous for the game, and then he comes out. He doesn't say a whole lot the whole time he's in there, and all of a sudden, the manager gets done with his speech, and he pops off."


以下に、「2010年丹羽の記事」が、構成と表現を含めて「2008年Jeff Passanの記事」からのパクリと断定する根拠をいくつか抜粋して示しておこう。
太字で示した「Bleep以下の部分」は、記事間でパクリが行われた決定的証拠である。
もっと詳しく言うなら、コミックでよくやるようにアルファベットの e を重ねて、bleeeeeeeeepと、音を伸ばすことを表現した部分の「eの数が、9つであること」まで同じだ(失笑)
また "National League" という表現の後に、"National" と省略表現をもってきた部分も、まったく同じ。開いた口がふさがらないほどのパクリぶりだ。だが、これだけでは終わらない。

くわしく読めばわかることだが、2008年Yahoo.com記事における「Bleep以下の太字部分」は、ジャスティン・モーノーのコメントについて書かれたパラグラフの中盤あたりに置かれた表現であり、筆者Jeff Passanは「Bleep以下の太字部分」を、モーノーの発言だとか、オルティーズの発言だとか、「誰が発言した言葉なのか」を明示していない
それはそうだろう。説明するまでもないことだが、この部分は「筆者Jeff Passanが選手たちから聞いたイチローのトラッシュ・トークを、もし放送コードに抵触しないように書いたとすると、これほど『ビープ音』だらけになるほど過激な内容だ」という意味で、Jeff Passanが、「誰がリークしたのか」については曖昧にボカしつつ、ジョークに逃げている部分なのだから、当然だ。
その「2008年製造のジョーク」が、どこを、どういう経緯を経ると、「2010年にデビッド・オルティーズ本人から聞いた発言を、曖昧にボカした表現」になるというのか。しかも「単語の選択までそっくり」に(笑) やることがあまりに安易すぎる。

丹羽は前振り部分で、「イチローの試合前スピーチとア・リーグのオールスター連勝をリンクさせる発言をした人物」について、「ア・リーグの選手に言わせれば」と、その発言をしたのが誰なのかについて「具体的に指摘するのをわざと避ける」奇妙な表現をとっている。
かたや、その2年前、2008年のJeff Passan記事では、「オルティーズの発言」であることが「明記」されている。

オルティーズが「オールスターでア・リーグは連勝できてるのは、イチローの試合前スピーチがあるからさ」と語ったコメントは、2008年には全米メディアで記事化されていることでわかるように、2000年代終盤には日米問わず多くの人が知っていた。
もう少し詳しく言うと、この発言の発信源が、ほかならぬ丹羽が取材した「はず」のオルティーズであることは、日米のイチローファン、日米のMLBファンの一部、アメリカのMLBメディアの一部においては、2010年どころか、その数年前から既に有名で、2010年時点でいえば、すっかり定着した感があった話なのだ。

それを2010年にもなってビートライターが曖昧に表現するのは、明らかにおかしい。まして「多忙なオルティーズと立ち話できるほど親しい、MLB通の人物」が、「オルティーズ本人から直接聞いたコメント」をもとに記事を書くというのに、わざわざ「ア・リーグの選手に言わせれば」などと「名前をボカして書く」こと、そのこと自体が、辻褄が合わなさ過ぎる。(もっといえば、イチロー本人に『今年はスピーチ、やりましたか?』と聞けばいいだけのことなのである)

どうみても、過去に何度か記事になっている話題を、新たに「オルティーズから直接聞いたという体裁」にして、2010オールスターのネタ記事として書こうとしていて、オルティーズ本人がとっくの昔にした発言をわざわざ冒頭に引用したのでは、「実はこの話題が、とっくの昔からあったネタで、しかも既にまったく同じ内容で記事化されているネタの、『使い回し』であること」が、MLBに詳しくない人の多い経済新聞の読者にさえバレてしまう。それを無理矢理避けようと記事構成をこねくりまわした結果、「ア・リーグの選手に言わせれば」などという、「おかしな表現」が生まれたに違いない。


ここまでハッキリした「パクリ」「使い回し」をやった理由について、考えられる言い訳としては「ビープ音として表現するジョークについてはパクったが、オルティーズから聞いたことは事実だ」という程度だろう。

だが、考えてみたらいい。丹羽の記事における「Bleep以下の表現」については、ライター本人がしつこいほど「書き表すことのできないようなスラングを並べた」だの、「『本当に?』と聞き返せば、「ガハハハハ」と笑っただけでイエスともノーとも言わなかった」だのと、「自分の耳で聞いた臨場感」を徹底して主張しているのだ。そんな「レベルの低い言い訳」が通用するわけがない。


かつて、2013年8月に、このブログが『Debby Wong事件』と呼ぶ捏造事件があった。
関連記事:2013年8月31日、『Debby Wong事件』 〜スポーツ・カメラマンDebby Wongが、「まったく別の場面のイチローの写真」を「イチロー4000安打の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事として公開していた事件。 | Damejima's HARDBALL

当時USA Todayの契約カメラマンのひとりだったDebby Wongが、イチローの日米通算4000安打達成時に、「まったく別のゲームのイチローの写真」を、「4000安打達成時の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事の一部として公開した、という事件だ。
この事件は当時全米報道写真家協会で大きな議論を呼んだ。USA Todayは「捏造の事実」が明らかになるやいなや、即刻Debby Wongとの契約を打ち切った。Debby Wong事件はジャーナリズムの問題として、けして小さな事件ではなかったのである。
(ちなみに同年2013年9月には日本の共同通信社でも、ホームランのシーンを撮りそこなったカメラマンがまったく別のゲームの写真を配信するという、同種の捏造事件があった)

丹羽が2010年日本経済新聞に書いた「2010年オールスターの試合前にイチローが例年どおりスピーチをした」という話が、もし捏造ならば、Debby Wong事件に比肩する「ジャーナリズムとしての問題」である。


最後に少し手の内を明かしておこう。

2年の隔たりをもって書かれた2つの記事の「相似性」がわかったのは、今年ツイッター上でたくさんリツイートされて話題になった「イチローのスペイン語によるトラッシュトーク」について書くために資料をあさったからだ。
2つの記事は、書かれた年にそれぞれ単独に読んだ記憶はある。だが、2つの記事を並べて読んだことはこれまで一度もない。だからかつては「2つの記事の相似性」に気づかなかった。


丹羽の記述を鵜呑みにすると、イチローがオールスターに出場するようになった2000年代のMLBオールスターでは、いつそれが開始されたのかは定かではないにしても、2010年まで連綿と、「一度も途切れることなく」イチローの英語による試合前スピーチが行われたことになる。

だが、それはブログ主の「記憶」とは違う

ブログ主の「うろおぼえの記憶」によれば、たしか「イチローのこれまでの10回のオールスター出場のうち、たった一度だけ、それまで恒例といわれ続けてきた試合前スピーチを『やらなかった』シーズンがあり」、そして、その「イチローがスピーチをしなかったオールスター」は、「出場選手だけが密かに楽しんでいたイチローの試合前スピーチが、記事化されて有名になって以降、2010年までのオールスターの、どれかだ」と、長い間思ってきたのである。

ネット検索の結果を見るかぎり、2008年Jeff Passan以外にもごく少数ながらこの件について書かれた記事はあるようだが、少なくとも2008年にJeff Passanの記事がある以上、「イチローが試合前スピーチをやらなかったオールスター」が存在する可能性があるのは、おそらく「2008年、2009年、2010年のどれか」だ。
当時「え? イチロー、今年は例のスピーチ、やらなかったのかよ・・・」と非常に残念に思ったのを、よく覚えているので、単なる「記憶違い」とはまったく思わない。

この「うろおぼえ」を「事実」にして記事にとりかかるべく資料をあさったわけだが、探し方がよくないのか、確証となる資料が(そして、反証となる資料も)いまだにみつかっていない。(もちろん、「うろおぼえの記憶」が間違いだとわかったとしても、丹羽の記事がパクリをやっていることは事実なのだから、批判を取り下げたりはしないし、この記事を削除するつもりもない)


スペイン語のトラッシュトークについて楽しく書いて、笑顔で今シーズンの出来事を振り返るつもりが、こういう硬いことを書かざるをえないハメになった。精神的に大変にくたびれる作業だが、まぁ、しかたない。
従軍慰安婦問題についての捏造記事を数十年にもわたって「事実」と主張し続けて国益を大きく損なってきたのは朝日新聞はじめとする新聞ジャーナリズムだが、丹羽の2010年記事の内容が本物であるかどうかは、スポーツ・ジャーナリズムがジャーナリズムとして成立するために、Debby Wong事件同様の、大事な問題だと思っている。

というのも、2010年の丹羽の記事が扱っているのは、他に類似資料、比較資料が少ない話題だからだ。もし放置すれば、後世のファンやスポーツ史研究にとっての「根底資料」のひとつになりかねない。ならば事実が曖昧なまま、ほっておくことはできない。




damejima at 11:01

September 18, 2013

『共同通信ホームラン写真捏造事件』はともかく、アメリカの全国紙USA Todayでつい最近起きた『Debby Wong事件』のことは知らない人がほとんどだろうと思うけれど、そういう人にこそ、あの事件を知って、覚えておいてほしいと思うので、まず『Debby Wong事件』のあらましを説明する。


このブログが『Debby Wong事件』と呼ぶ「事件」は、USA Todayのカメラマン、Debby Wongが、自らの怠慢とミスでイチローの日米通算4000安打達成時の決定的瞬間の写真を撮りそこなったにもかかわらず、自分の撮影失敗を周囲に隠しとおしたまま、まったく別の日に撮影した「似た感じの、イチローがヒットを打った瞬間の写真」を、「イチロー日米通算4000安打達成時の写真」と偽ってメディアに配信した事件である。
「Debby Wongが用意したニセのイチロー4000安打達成写真」は、USA Todayが作成した「イチロー日米通算4000安打達成を報じる電子版記事」のビジュアルとして採用されて公開されたほか、USA Today傘下にあるUSA Today Sports Imageのウェブサイトにおいても公開された。

事件発覚直後、USA Todayは、Debby WongとUSA Today Sports Imageとの間で結んでいた写真提供契約を即座に打ち切った


『Debby Wong事件』を最初に報道したのは、当事者であるUSA Todayではなく、全米報道写真家協会(NPPA)のDonald Winslow氏で、2013年8月30日にNPPAのウェブサイトにアップされた。
この秋以降から、大手通信社のひとつ、ロイター通信が、ロイターと契約したカメラマンが撮影した写真を買い上げて契約各社へ配信するという従来のスタイルに見切りをつけ、かわりにUSA Today傘下にあるUSA Today Sports Image社の写真をロイターを通じて配信する手法に切り替えるという発表を行ったばかりだったことから、NPPAはDebby Wong事件を、単なる「個人的なミスを隠蔽するための写真すりかえ」としてではなく、スポーツジャーナリズムの今後に大きく関わる事件として扱った。
元記事A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA
資料記事Damejima's HARDBALL:2013年8月31日、『Debby Wong事件』 〜スポーツ・カメラマンDebby Wongが、「まったく別の場面のイチローの写真」を「イチロー4000安打の写真」としてUSA Todayに供給し、USA Todayが記事として公開していた事件。


上記の事件をひきおこしたDebby Wongは契約を打ち切られたわけだが、同時期に日本で似た事件が発覚した。それが、以下の「共同通信ホームラン写真捏造事件」だ。
ほぼ同時期に日米で似たような事件が発覚したことには、正直、驚いた。


共同通信社は17日、昨年5月〜今年7月のプロ野球3試合で、本塁打の写真と偽って同じ選手の別打席の写真3枚を配信していたと明らかにした。大阪支社編集局写真映像部の男性写真記者(28)が、本塁打の場面を撮影できず、別の写真を偽って出稿していた。他にも偽装して配信した可能性があるといい、同社は他の競技も含めて調査し、関係者を処分する方針。

3試合は、7月14日の阪神−DeNA戦、昨年9月4日のオリックス−ロッテ戦、昨年5月19日の阪神−楽天戦。ブランコ選手(DeNA)と根元俊一選手(ロッテ)、テレーロ選手(楽天)が本塁打を放った写真として加盟社に配信した。

同社によると、今月8日、この記者が出稿に手間取っていたため、写真映像部のデスクがパソコンを確認したところ、記者が同日撮影したプロ野球の試合の写真を、順番を入れ替えて保存していたことに気付いた。不審に思い、記者が撮影した昨春以降の写真を確認すると、3枚の写真説明が実際とは異なっていたことが判明したという。(太字はブログ側による)
<共同通信>プロ野球本塁打の写真偽装し配信 (毎日新聞) - Yahoo!ニュース


いうまでもないことだが、新聞やテレビといった「マスメディア」は、予算や人員などの制約から、「自前で、ありとあらゆる事件、イベント、ニュースのオリジナルな情報ソースを用意できる」わけではない。

むしろメディアは、ありとあらゆる事件・イベントを、「自前の」記者・カメラマンを駆使して、「自前で」取材し、「自前で」記事と写真や動画を調達するかわりに、マスメディアのための情報提供サービスである「通信社」を情報源として、通信社の提供する大量のメニューの中から、その日に視聴者や読者に配信したい情報を「買い上げる」ことで、ようやくその日に必要とされるニュースの「品揃えのすべて」を調達できる。
そうした状況は、たとえナショナルメディアの大きな新聞社であっても、変わらない。メディアとして彼らが重きを置きたがる政治・経済は自前で取材したがるが、スポーツや文化は通信社から買いあげる情報に頼りっきりというケースは、当然ながら多々ある。
マスメディアは昔から大量のソースを、自前で取材することなく、「通信社」から仕入れたネタを情報として配信することで成り立ってきた「情報ブローカー」のような面が少なからずあったが、今ではさらに、新鮮味のあるネタ作りの下手な彼らは、インターネットからもたくさんのネタをこっそりピックアップするようになっている。

だが、マスメディアが通信社から有料で買い上げ続ける「ネタ」の中に、「ニセモノ」が混じっている可能性について、マスメディアが十分神経と予算を使って検査してきたとはいえない
それを「マスメディアと通信社の間の信頼関係」といえば聞こえはいいが、要は、『Debby Wong事件』にしても、『共同通信ホームラン写真捏造事件』にしても、マスメディアがこれまで通信社に「情報の製造」そのものを「丸投げ」しておいて、しかも入ってくるネタをほとんどチェックせずに配信していたことが、こうした情報捏造事件の発生を招いた背景のひとつでもある、ということだ。


だが、これらの事件は「マスメディアって、ほんとダメね」という嘆息で終われない。
なぜなら、それは、マスメディアにとっての外部情報源である「通信社」のひとつ、ロイターが、「従来のようにフリーのカメラマンから写真を買い上げる手法を打ち切って、写真の収集事業そのものを外部委託する」というニュースでわかるように、マスメディアが情報源として頼り切っている「通信社」それ自体さえも、「自前で」情報収集するのを止めてしまい、通信社のさらに外部にある情報源から通信社が「情報を買い上げ」、それを「マスメディアに向けて丸投げする」、そんな困った時代になってきている、ということがあるからだ。

当然のことながら、情報提供会社から通信社、通信社からマスメディア、マスメディアから視聴者・読者へと、「情報が丸投げされるステップ」が多くなればなるほど、情報の真偽のチェックは難しくなり、また、ニセ情報が捏造される危険性は増大していく


今回の日本の『共同通信ホームラン写真捏造事件』では、3件もの写真において「すりかえ」が行われている。この件数の「多さ」からみて、過去においてもこうした捏造行為が多々行われてきただろうと考えるのは、ごく自然な発想だ。
USA TodayはDebby Wong事件でカメラマンと即座に関係を断ったわけだが、もし共同通信がみずからをジャーナリズムの一角であると今後も自負し続けたいのであれば、共同通信も、USA Today同様、たとえそのカメラマンが正社員であろうとなんだろうと、懲戒解雇クラスの厳罰を科すくらいでないと、共同通信がこれからジャーナリズムがどうのこうのと言えなくなるような危機だと、ブログ主は考える。


それにしても、アメリカの『Debby Wong事件』では、事件のかなり詳しい経緯や撮影現場での生々しいエピソード、捏造を犯したカメラマンの「実名」もきちんと報道されているというのに、日本の『共同通信ホームラン写真捏造事件』では、詳しい経緯も、カメラマンの名前も、まるで報道されておらず、「ぬるい」こと、このうえない。
これこそ、なんとも嘆かわしいジャーナリズムの「日米の差」のひとつである。

damejima at 08:35

September 01, 2013

まずはクイズ。
次のAとB、2つの画像を見比べて、「違い」を探してもらいたい。
ヒントは2つ。
1)ヤンキースベンチに下りていく階段にいる人物
2)イチローの顔の向き


画像A)
USA TodayのカメラマンDebby Wongが「イチロー4000安打の画像」としてUSA Todayに供給した画像を使い、USA Todayが作成した記事のキャプチャー

原出典:NPPA(全米報道写真家協会)の以下の記事
A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA NPPA=National Press Photographers Association | NPPA

damejima注:この写真、本当は、何月何日のゲームの、どの打席の写真なのは、いまのところわからない。少なくとも、イチローの視線方向から察する限り、おそらく「センター前ヒット」であろう。(4000安打は「レフト前ヒット」)さらに、画像Bとの違いでいうと、ダグアウトに下りる階段付近に2人の選手がいるのが見える。(おそらくソリアーノとガードナー)

Debby WongがUSA Todayに提供した「偽物のイチロー4000安打写真」

画像Aのバリエーション(資料映像)
google.comの検索により、ネット上のキャッシュから採取。おそらく、USA Todayの記事に掲載された写真の「元画像」と思われる。
「偽のイチロー4000安打写真」の元画像と思われる画像


画像B)
イチロー4000安打についてのMLB公式サイトの動画から直接キャプチャーした「本物」のイチローの4000安打の瞬間の画像(レフト前ヒット)

イチローの視線が、本来の打球方向である「レフト側」を向き、ダグアウトの階段のところに、画像Aにある「2人の選手の姿」がない。

イチロー4000本の「正しい写真」(キャプチャー)


damejima注:
結論からいえば、USA Todayが当初「イチロー4000安打の画像」として報道していた画像Aは「ニセモノ」であり、イチロー4000安打達成の瞬間を撮影したものではない。
以下に、こうした「悪質な詐欺まがいの行為」がなぜ生じたのかという謎ときとなる記事を訳出してある。出典となっているNPPAとは、National Press Photographers Association、つまり、全米報道写真家協会のことであり、そんじょそこらの安っぽい協会ではない。(ちなみに、この記事タイトルは、おそらくは、野球の著述として名著といわれるJ. Patrick Lewisの "A Swing And A Miss" をもじったものだろうと思われる。いかにも報道の専門家らしいチョイスだ)



A Swing And A Hit (And A Miss) | NPPA
Aug 30, 2013
By Donald Winslow

NEW YORK, NY (August 30, 2013) – When New York Yankee Ichiro Suzuki swung at a pitch and connected with his 4,000th career base hit during the first inning of a home game against the Toronto Blue Jays on August 21st, it was a record-making moment worthy of the cacophony of motor-driven camera shutters that followed.
(和訳省略)

But at least two of the photographers working the game on the third base line that night didn't capture the moment: Debby Wong, a USA Today Sports Images photographer, and Andrew Theodorakis of the New York Daily News. Wong was either looking at her earlier pictures on the camera's LCD display, or she was pointing the camera elsewhere, when Suzuki hit. And Theodorakis' view was blocked by Wong, when she rested her 300mm lens over her left shoulder at the exact moment of the crucial pitch.
しかし、この夜、三塁側にいた少なくとも2人のカメラマンが、この決定的瞬間をカメラでとらえることに失敗した。USA Todayのスポーツ・カメラマン、Debby Wongと、ニューヨーク・デイリーニューズのAndrew Theodorakisだ。
Wongは、イチローがヒットを打った瞬間には、自分のカメラのLCDディスプレイで、自分が既に撮った写真を見ていたか、あるいは、どこか別の場所にカメラを向けていた。そして、その重大な投球の、まさに瞬間に、彼女(Wong)は自分の300ミリ望遠レンズを左肩の上にかついでいた。Theodorakisの視界が遮られたのは、そのためである。
(太字はdamejimaによる)

Which can happen, as those who frequently shoot sports can attest. Not everyone gets every important shot every time. Sometimes it's the photographer's fault. And sometimes the view is blocked by another player. Or sometimes the obstruction is an umpire, or a fan, or even – as in this case – another photographer.
(翻訳省略)

When she started hearing a few rumbles, Yankees' chief photographer Ariele Goldman Hecht came over from her first base spot to see what was going on.
ヤンキースのチーフ・カメラマン、Ariele Goldman Hechtは、彼女のいた1塁側カメラマン席からやってきて、いったいサード側で何が起きているのかと、イザコザについてヒアリングを始めた。

"To begin with, she [Wong] wasn't where she was supposed to be," Hecht said. "I had put her in the second row. It was crowded because of the record, and she told me that she had switched positions with one of the Japanese photographers. I told her that wasn't allowed. The Yankees decide who sits where." Hecht said that Wong apologized, and the photographer told them that she was sorry for blocking the shot.
「まず言えることは、『彼女(=Wong)は、彼女の居場所として設定してあった場所にいなかった』ということよ。」と、Hechtは言う。
「私は彼女を2列目に位置させた。イチローの記録達成で混雑してたからね。彼女は私に『ひとりの日本人カメラマンと位置を交代してもらった』って言ったんだけど、私は彼女に『そんなの、許可してないわ』と言った。誰がどこに位置するかを決めるのは、ヤンキースよ。」
Hechtが言うには、Wongはそれについて謝罪したといい、カメラマンは、Wongが撮影を邪魔したことを謝っていたと、彼らに言った。

And so the game went on.
そしてそのままゲームは進行した。

And in most circumstances this is probably where this small incident would have ended; we wouldn't have heard anything more about it. Only the handful of other photographers along the third base line who had witnessed the little dust-up between a couple of their peers would have had something to chat about for a few days.
(翻訳省略。カメラマンの位置関係で撮影にトラブルが起きること自体はよくある話だ、というのが、このパートのおおまかな主旨)

Except it didn't end there. Because later that night on the USA Today Sports Images photo Web feed a picture by Wong appeared. And then the same picture also appeared in a photo gallery published on the USA Today newspaper Web site. Its caption and photo credit said:
しかし、事件はそれだけで終わらなかった。
なぜなら、USA Today Sports Imageのウェブサイトに、Wongが「撮った」という写真がアップロードされたからだ。そして同じ写真は、USA Today電子版のフォトギャラリーにもアップロードされた。写真には次のようなキャプションとWongのクレジットが添付されていた。
(注:太字はdamejimaによる)

"New York Yankees right fielder Ichiro Suzuki singles to left field to record his 4000th career hit during the first inning against the Toronto Blue Jays at Yankee Stadium. Debby Wong, USA Today Sports"
(翻訳省略)

Wait ... What? The photographers who worked the Yankees game and who saw or heard what happened during the Suzuki hit were perplexed. How did she get this picture? A few compared Wong's image their own pictures and to others. The background looked different, one said. The swing and follow-through didn't look quite the same, another photographer said.
「おいおい・・・・・ちょっと待てよ・・・・・。」
ヤンキースのゲームに帯同しているカメラマンたち、そしてイチローのヒットの間に(カメラマン席で)起こった事件を見聞きしていた人々は、誰もが首をひねった。「いったい彼女はどうやって、この写真を撮ったっていうんだよ?」
何人かのカメラマンは、Wongの写真と彼ら自身の撮った写真、あるいは他のカメラマンの写真を比べてみた。あるカメラマンは「背景が異なっているように見える」と言い、別のカメラマンは「スイングと、フォロースルーがまったく違う」と発言した。
(注:太字はdamejimaによる)


The conversation had new life.

Then two days after Ichiro's big game the news broke that Thomson Reuters will soon be dropping their network of freelance sports photographers in North America come September. Instead of using their own shooters, Reuters will instead be taking a picture feed from the USA Today Sports Images team and delivering those images to Reuters picture clients around the world.
イチローのビッグゲームから2日経って、トムソン・ロイター(damejima注:いわゆる『ロイター通信』のことだと思えばいい)のこんなニュースが明らかになった。
ロイターは、この9月、北米のフリーのスポーツカメラマンを切って、(従来のように)ロイター自身がフリーカメラマンを使って写真を撮るかわりに、USA Todayのスポーツ画像チームが供給する写真を、世界中のロイターの顧客に向けて配信するというのだ。

With that development, the conversation really heated up inside sports photojournalism circles. The topics included who will – and who won't – be shooting major league sporting events in North America come this autumn. And what impact having former US Presswire photographers who have become USA Today Sports Images photographers shooting pictures for Reuters might have on the photojournalism industry and freelancers in North America.
この展開に、フォト・ジャーナリズムのサークル内部は、熱い議論でかなりヒートアップした。話題に上ったのは、この秋やってくる色々な北米のメジャーなスポーツイベントを、いったい誰が撮るのか(そして誰が撮れないのか)という話題であり、そして、ロイターのために写真を撮る元US Presswire(現USA Today Sports Image)のカメラマンたちが、北米のフォトジャーナリズムとフリーランサーに、非常に強いインパクトや影響を及ぼすことになるかもしれない、という話題だ。

Five days after the Reuters deal became known, when Suzuki's big hit had almost faded into recent history, USA Today Sports Images added fuel to the dialogue when they transmitted to their clients a "Picture Kill" notice for Wong's photo. They told their clients that it had come to their attention that the picture "was not correctly identified." Clients were advised to pull it from their archives.
ロイターの決定がわかって5日後、その頃にはイチローの4000安打はすでに直近の野球史にフェードアウトしつつあったわけだが、USA Today Sports Images社が議論に油を注いだ。
というのは、彼らがクライアントに、例のWongの写真の『掲載停止』をうながすと伝えたからだ。彼らはクライアントに対し、「Wongの写真が『正確にホンモノだと特定できない』として、クライアントに注意をうながし、クライアントのアーカイブから削除するよう助言した。
(damejima注: "Picture Kill" を『掲載停止』と訳した)

Bruce Odle, the president of USA Today Sports Images, told News Photographer magazine tonight that someone outside their company notified one of their staffers of a problem with the image. Earlier this week, News Photographer had learned that Wong's editors had requested her entire take so that they could examine the images shot by shot.
USA Today Sports Images社長のBruce Odleは今夜、News Photographer誌に、「スタッフのひとりが画像について問題を抱えているようだと、外部の人間から知らされた」と語った。News Photographer誌は今週はじめ、Debby Wongの記事の担当編集者が、Wongの撮った写真の全テイクを、あらゆるショットについてチェックしなおすようリクエストされていたことを知っていた。
(damejima注:News Photographer誌=全米報道写真家協会の発行する専門誌 News Photographer Magazine | NPPA

"We were made aware that an image provided by one of our contributors was not correctly identified and we immediately looked into the situation," Odle said tonight. "After determining that the photo was incorrect, we issued a Picture Kill to alert our customers consistent with industry practice and to minimize disruption or resulting impact, if any."
Bruce Odleは今夜、以下のように語った。
「我々は、我々の画像寄稿者のひとりが供給したある画像(=このブログ記事の最初に挙げた画像A)が『ホンモノでないこと』がわかったため、ただちに状況調査に着手した。結果、その写真が正しいものでないと断定されたため、われわれは顧客に対し、業界綱領に沿って、たとえそれがどんな程度のものであれ、損害やインパクトが生じるのを最小限にとどめるために、顧客に『掲載停止』の警告を発した。」

Odle also confirmed that in the aftermath, Wong's work agreement with the picture service has been terminated.
またOdleは、今回の警告の直後、Wongとの間にあった画像作品提供に関する契約を停止したことを認めた。

"We have clear language in our contributors agreement and we have internal policies consistent with industry practice with regards to ethical matters," Odle said.
「寄稿者との契約において明快に規定していることだが、我々は倫理的問題について業界の綱領に沿った内部的ポリシーを持っている。」とOdleは言う。

Wong did not immediately return calls requesting comment.
我々はDebby Wongにコメントを要請したみたが、すぐに返事は返ってこなかった。

USA Today Sports Images is an arm of the USA Today Media Group, which was formerly known as the Gannett Digital Media Network. Its parent company is Gannett Company, Inc.
Odle heads USA Today Sports Images, and he managed the sale of the company to Gannett in August 2011. It was founded by former Sports Illustrated photographer Bob Rosato, who is now its chief operating officer. The sports photo service rebranded itself in December 2012 to provide sports images to all Gannett properties. Before then, Rosato's picture service was known as US Presswire.
USA Today Sports Imagesは、USA Todayメディアグループの一部門だが、かつてはGannett Digital Media Networkという名前で知られており、親会社はGannett Companyだった。
現在USA Today Sports Imagesを率いているOdleは、2011年8月にGannettへの会社譲渡をマネジメントした人物。そもそもUSA Today Sports Imagesは、今は同社の執行役員になっている元スポーツ・イラストレイテッドのカメラマン、Bob Rosatoによって創立された写真提供会社で、2012年12月にGannettにスポーツ画像を供給する企業として改組されるまでは、US Presswireという名前で知られていた。



この事件は、表層的な話としては、こんな話になる。

USA TodayのカメラマンDebby Wongは、イチロー4000安打達成の決定的瞬間の画像を絶対に確保していなければならなかった立場にあった。Debby Wongは当日、ヤンキースサイドから指示されていた撮影場所から許可なく勝手に移動してまでして、撮影位置を確保した。にもかかわらず、その決定的瞬間に、Debby Wongはイチローにカメラを向けていないという決定的なミスを犯し、決定的瞬間を撮り損ない、さらには他のカメラマンの撮影を妨げた。
Debby Wongが写真を撮り損なった事実は、彼女と撮影場所を巡ってトラブルになったニューヨーク・デイリーニューズのカメラマンと、彼らがトラブルっているのを周囲で見聞きしていたカメラマンたちが知っていた。
だが、Debby Wongは、物理的に彼女に撮れるはずのないイチロー4000安打の写真について、(おそらく「手持ちのストック」の中から探したのだろうが)「似たような画像」を見つけてきて、それを平然と「イチローの4000安打の決定的瞬間の写真」としてUSA Todayに提出し、USA Todayは、その「Debby Wongが提出してきたニセモノの写真」を使い、記事にした。


なんとも呆れ果てた詐欺まがいの事件ではあるわけだが、この事件、実際には、さらに複雑かつ重要な倫理的問題を孕んでいると思う。

Debby Wongの現場での自己中心的な行動ぶりが感じさせる根本的な不愉快さ
この事件でカメラマンDebby Wongは、ヤンキースサイドからあらかじめ指定されていた撮影場所にいなかった理由として、不愉快にも「日本人カメラマンに場所を変わってもらった」と発言しているわけだが、それが本当に事実だったのかどうか、それがそもそも怪しい。
ヤンキースのチーフカメラマンが非常に具体的に指摘しているように、カメラマンの撮影位置は、あらかじめヤンキースサイドによって詳細に指定されていたわけだが、おそらくDebby Wongの現場での行動ぶりは、どうみても「ゴリ押し」かつ「わが物顔」の不遜な行動だっただろう、と想像できる。
そして最悪なのは、無理矢理に最前列の撮影ポジションを確保したクセに、この厚顔無恥なカメラマンはなんと、いまにもイチローが4000本目のヒットを打つかもしれないという打席で、「自分のカメラをイチローに向けてさえいなかった」という事実だ。
周囲のカメラマンに、「カメラ向けるつもりがないのなら、そこどけよ!! このバカヤロー!!」と、怒鳴り散らされてもしかたがない迷惑行為を、このカメラマンは平然とやってのけているのである。
事実、Debby Wongがイチローに向けていない300ミリのデカい望遠レンズを肩にかついで他のカメラマンの視界を邪魔したせいで、デイリーニューズのカメラマンはイチローの決定的瞬間を撮り損なっている。

デカい望遠レンズを肩にかついだ状態の例「大きな望遠レンズのついたカメラを肩にかついだ状態」の例(参考 これはたぶん400丱譽鵐此

問題なのは、こうした無神経な行為がまかり通ってしまうような空気と、画像流通についての手抜きともいえるシステムが、自由なジャーナリズムの気風を育ててきたはずのアメリカという国と、スポーツジャーナリズムの内部に生まれつつある、ということだ。
まぁ、おそらくはスポーツ画像を「独占的な商売」にして儲けたい人たちが現れ、そして、その人間たちに雇われているカメラマンに「慢心」という病が広がりつつあるのだろう。哀しいことだ。


メディアの商業主義化に沿って著しく浸食されつつあるスポーツ写真、ジャーナリズムとしての倫理
上の記事では、「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」と並行して、通信社ロイターが、北米のフリーのスポーツ・カメラマンから写真を買い上げるのを止め、USA Todayの写真部門にスポーツの画像供給を「丸投げする」ことにした、という話題が語られている。
北米のスポーツ・カメラマンたちが危惧しているように、今回の『Debby Wong事件』と、ロイターの方針変更の話は、「繋がっている」といわざるをえない。
ロイターの方針変更は、どうもこの記事を読む限りでは、きちんとした基本ルールが確立されないままの見切り発車のようだ。だから、今後も今回のような「ジャーナリズムの基本倫理に関わる大問題」を起こしかねない。
資料:Reuters Dumping North American Freelance Sports Photographers | NPPA


USA Todayが行った、ピート・ローズへのイチロー4000安打に関するインタビューとの関連で感じる不愉快さ
今回のイチローの日米通算4000安打という偉業の達成にあたって、どのメディアよりも先にピート・ローズのところにインタビューにのこのこ出かけて行って、イチロー4000安打に関する否定的コメントを引出してきたのは、ほかならぬ、この「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」を引き起こしたUSA Todayである。
Pete Rose says Ichiro can't catch him
事件全体の流れを考えると、イチローの偉業達成について、USA Todayが最初から何か「冷えびえとした意図」があったようにも見える。
ニセモノの画像を使った記事を作成しておいて、それを外部に向けてきちんと謝罪してもいないのに、その一方で、否定的なコメントをするのがわかりきっているピート・ローズにコメントをもらいにいっているUSA Todayの姿が無礼千万に見えるのは当然だろう。
料理の「味」を批評するにあたって、その料理を食べてもいないクセに、まったく別の店の料理の写真を掲載した上で、「あの店の味は、アメリカには追いつけっこない」などと冷ややかな批評を掲載するような行為は、どうみてもフェアではない。三流以下の仕事であり、悪質で、馬鹿げている。
こうした「パブリックな人類遺産であるスポーツに、個人的好みを反映させたがるようなバランス感覚に欠けたメディア」が、今後スポーツの画像を牛耳ることになるということについて、危機感を持っている北米のカメラマン、メディア関係者も、おそらく多数数いるのではないか。
USA Todayは、あくまで一般メディアなのであって、イチローの4000安打に喝采を贈ってくれたESPNやスポーツ・イラストレイテッドのようなスポーツ専門メディアではない。なのに、専門外のことを、商売になりそうだからという理由で牛耳りたがる人たちが出てきて、情報の流通を牛耳ろうとすることは、スポーツにとってプラスだとは、どうしても思えない部分がある。


スポーツメディアとしての生産性、クオリティへの疑問
もし仮に、多少の基本ルールが整備された上で、スポーツの画像の寡占化がやむをえず進んでいくとしても、もし今回の怠慢なDebby Wongのように、カメラマンが写真が撮りそこなったとか、思ったようなクオリティで供給できないとかいう最悪の事態に陥ったとき、そのカメラマンが謙虚な気持ちでコトに対処できるとは、到底思えない。
残念ながら、人は、自分が苦労して築いたわけではない山であっても、その山のテッペンに据えられると、まるで自分が大将になったような気になってしまう、そういう弱い動物だからだ。
もし、ロイターが全世界の顧客に配信するのがあらかじめわかっている写真を、ひとりのカメラマンが撮り逃した(あるいは思ったクオリティで撮れなかった)としたら、今回のDebby Wongのような卑劣な行動をとらないでいられるという倫理的保証はどこにもない。


まぁ、ともかく、この件に関して、おそらくヤンキースは事を荒立てたくないだろうが、日本の至宝イチローのファンとして、これは沽券に係わる問題であり、黙って見過ごすわけにはいかない
本来なら、この件できちんとUSA Todayなり、Debby Wongなりが謝罪するのがスジだと思うが、それがあろうと、なかろうと、この件をたくさんの人に知ってもらうことが、まず重要だと思うから、時間を割いて、この粗訳を作ってみた。


ブログ主は、この「Debby Wong・ニセ4000安打写真掲載事件」について、単なる「写真をとりちがえた程度のミス」だとか、「自分のミスをとりつくろうための、どこにでもある愚行」だとか、まったく思わない。今回の事件は、PEDがそうであるように、スポーツとジャーナリズムの倫理を著しく傷つけている。

あまり上品な言葉とはいえないが、Debby Wongとそこに連なる人たちは、「他人が大事にしているもの」を、どこかで「なめてかかっている」。
こうした「なめている」人間たちが、イチローに限らず、スポーツの記録や出来事を、とやかく議論する資格はない。他人の撮影を邪魔する資格もない。もちろん、言うまでもなく、この程度の倫理しかもたないカメラマンやメディアに、ジャーナリズムなんてものを気取ってもらっては困る。


アートであれ、スポーツであれ、経済であれ、「他人を押しのけて前に進み出ること」そのものは、あっていい。それが自由競争というものだからだ。

だが、「他人を押しのける」にあたっては、周囲がその前に出ようとする人物の天性や足跡、気質を認め、その人物のために数歩うしろに下がって道を譲ることをよしとするだけの、オーラと実績と倫理がなければならない。
「こんどからロイターが私たちの撮った写真を全世界に配信することになったのよ。だから、私たちはなにがなんでも撮らなきゃならないの。わかるわよね?」と言わんばかりのあつかましいだけの人間が、「そこは、いつも私が使ってる場所よ。どきなさい」だの主張して、他人を押しのけ、最前列に居座って、なのに、カメラをまるで構えもしないまま、ふんぞりかえって、他人の撮影まで邪魔して、挙句の果てには、自分が撮ってもいない全く別の写真を「はい、どうぞ」と記事にして商売する、こんなことが当たり前になるなんてことを、ブログ主は許そうとは思わない。

damejima at 01:21
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