「チームのチカラ」論

2020年2月11日、「チームのチカラ論」序論から見た、ドジャースは今年もワールドシリーズを勝てないと考える理由。
2018年11月3日、現状でいうデータとは「個人のチカラ」であり、「チームのチカラ」ではない。 〜 「チームのチカラ論」 序説

February 12, 2020

2018年11月に以下のツイートをもとに記事を書いた。

野球ファンにとって、「データ」といえば、「個人データ」、つまり、選手のプレーを分析したデータに過ぎず、それはゲームを決めているすべての要素ではまったくない。

引用元:2018年11月3日、現状でいうデータとは「個人のチカラ」であり、「チームのチカラ」ではない。 〜 「チームのチカラ論」 序説 | Damejima's HARDBALL


また、同じ2018年10月には「チームのチカラ」について書いた。

いま思うに、ジム・リーランド時代のデトロイトがシャーザー、バーランダー、ポーセロと、3人ものサイ・ヤング級投手を揃え、ミゲル・カブレラやビクター・マルチネスなど強打者をそろえても、ワールドシリーズを勝てなかったのは、たとえ個人それぞれに類まれな才能があっても、「チームの強さ」がそれを支えなければ、ワールドシリーズを勝てないという、単純な理屈だった。

2018年10月10日、2018年MLBの「チーム三振数」概況 〜 もはや時間の問題の「1600三振」。 | Damejima's HARDBALL

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そもそもチームとは、どんな「存在」だろう。
そもそも何を目的に存在しているのか。

チームは「ひとつの生き物」と、よくいわれる。チームが、単なる「個人の能力の合算」であるなら、集合体としてのチームが存在する意味がない。

それは、言い換えれば、チームには、「選手個人の能力とは別種のチカラ」が備わっていなければならない、という意味になる。


だが、その「チームに求められるチカラ」は、これまで明確な言葉で語られてきたか。まったくそうは思えない。むしろ、曖昧な勘だけに基づいた、曖昧な世間話だけが幅をきかせてきたとしか思えない。

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その曖昧な話を、この際、ハッキリさせていきたい。

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まず、「チームの仕事」とは、何か。

チームを、選手個人それぞれがもつ能力値の合算を超え、
プラスアルファ」を生みだせる組織にすること、だ。

野球というスポーツではよく、「ポストシーズンの戦い方は、レギュラーシーズンと同じではいけない」といわれるが、この点についても、これまでは具体性を欠く経験論しか語られてこなかったし、多くの指導者がレギュラーシーズンと同じ戦い方をして敗れ去ってきた。

レギュラーシーズンと同じではダメなら、では、どうあるべきなのか。
それについても(多少の極論を覚悟して)自分流に定義しておく。

レギュラーシーズンを「選手それぞれの能力の優劣によって行われる戦い」であるとするなら、ポストシーズンは、チームが創出する「プラスアルファのチカラ」の優劣が問われる戦いである。

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このように「チーム」「ポストシーズン」という2つを、「プラスアルファ」という単語でくくってみると、かつてデトロイトでジム・リーランドが、テキサスでロン・ワシントンが、ロサンゼルスでデーブ・ロバーツが、ワールドシリーズ優勝に手が届かなかったことに一定の説明がつく。

選手層の厚さにはまったく問題なかったが、
「チームとしてのプラスアルファを生み出す能力」が足りなかったのである。

プラスアルファの源泉がないままワールドシリーズに臨んだ彼らは、ロン・ワシントンやデーブ・ロバーツの継投ミスに代表される「マイナスアルファ」を表面化させ、大一番に負けた。

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では、チームが「プラスアルファを生み出せる場所」であるためには、何が必要なのか。言いかえると、チームがプラスアルファを生み出せない場所になっているとしたら、原因はどこにあるか。

2010年代後半の金満ドジャースを例にみてみる。
以下に近年のドジャースが「2012年以降あたりに獲得した有名選手と、その引退年度」を、引退年度順に示してみた。

ジョシュ・ベケット(2014年引退)
ダン・ヘイレン(2015年引退)
カール・クロフォード(2016年引退)
スコット・カズミアー(2016年引退)
アレックス・ゲレーロ(2016年自由契約)
エイドリアン・ゴンザレス(2018年引退)
ブランドン・マッカーシー(2018年引退)
チェイス・アトリー(2018年引退)
ハンリー・ラミレス(2019年時点で実質引退)
ジミー・ロリンズ(2019年引退)
マット・ケンプ(2019年実質引退)
カーティス・グランダーソン(2020年引退)

まったく酷いものだ。よくも、まぁ、「引退間際の有名選手」をこれだけかき集めたものだ。どれだけ多くの選手がキャリアの最後にドジャースから大金をせしめたことか。感心するしかない。

だが、このリストすら、「つぎはぎドジャースのすべて」ではない。他にも、シーズンが終わればいなくなるのがわかりきっている選手、マニー・マチャドやジョシュ・レディック、ダルビッシュなどに手を出し、ヤシエル・プイグなどのキューバ系に手を焼き、セイバー系のファーハン・ザイディをGMにしたかと思えば、あっという間にいなくなり、こんどはムーキー・ベッツ獲得に必死になっている。

ヤンキースと同じ、この金満チームがどれほど「つぎはぎだらけの、統一性のない、趣味の悪い豪邸」か、よくわかる。

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少なくとも言えることは、「つぎはぎだらけの家」でプラスアルファは生まれない、ということだ。

たとえば、ヒューストンがワールドシリーズを勝てたのはサイン盗みをしていたからだ、という説明は当たっていない。それだけが「理由」ではないからだ。
彼らのプラスアルファの一部がたとえ「インチキなサイン盗み」であったとしても、彼らには少なくとも、ドラフトの成功とその育成の成功、トレードの成功によって、チームの土台となる選手層の厚さと一体感があった。

ドジャースがワールドシリーズを勝てないのはサイン盗みされていたせいだ、という説明も当たっていない。彼らがポストシーズンを最後まで勝ち抜けないのは、それだけが「理由」ではない。
これほど右往左往し続けているドジャースがポストシーズンに毎年顔を出せるのは、単に「カネがあるから」でしかない。「つぎはぎだらけ」の家に住む成金の彼らには、「育ちの良さ」と「知恵」、つまり、「チームとしてのプラスアルファを常に生み出せる体質」がない。カネだけでワールドシリーズが買えるなら、カンザスシティが勝てたりはしない。

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もちろん、この程度の言葉を連ねたからといって、ポストシーズンの真髄を垣間見ることができるわけはないのだが、少なくとも「チームのチカラ」の真髄にちょっとずつ近づいて言語化していく上で、自分として大事な最初の一歩と考える。

damejima at 18:02

November 04, 2018

この秋、最も強く意識したことは、
野球ファンにとって、「データ」といえば、「個人データ」、つまり、選手のプレーを分析したデータに過ぎず、それはゲームを決めているすべての要素ではまったくない
ということだ。



今にして思うと、なんでこんな簡単なことを今まで気づかなかったのだろう。

野球はチームスポーツなのだから、選手個人個人のプレー分析だけで、ゲーム結果が評価できるはずもない。にもかかわらず、「チームのチカラ」の判定は、評価の表面に現れてはこない
(もちろん、言うまでもないことだが、個別のチームは内部に「他チームのチカラを分析した非公開データ」をたくさん持っているはずだが、それらは色々な意味で「一般化」されてはいない)



ボストンが地区優勝監督であるジョン・ファレルをクビにして、ワールドシリーズを勝ったヒューストンからアレックス・コーラを監督に迎えたが、これはつまるところ、「チームのチカラ」を向上させるための策であり、この他に類を見ない試みは、2018年のワールドシリーズ優勝で早くも結果が出た。

今年のボストンの打撃スタイルは、ホームラン数こそ全体9位だが、ダスティン・ペドロイア不在にもかかわらず、打点、得点でMLBトップ、打率でもMLBトップ。そして三振数1253は全体5位の「少なさ」と、中身が濃い。

ボストンが、思い切りのいい監督交代で、チーム内のケミストリーとオフェンスの質を劇的に変え、「より多くのヒット、より多くのタイムリーを打っていくことで、着実に打点を稼ぐヒューストン流に転向した」ことは明らかだ。

出典:2018年10月10日、2018年MLBの「チーム三振数」概況 〜 もはや時間の問題の「1600三振」。 | Damejima's HARDBALL



真逆のケースでいえば、テキサスが強かった2010年代初頭に、短期決戦の才能が皆無なロン・ワシントンが監督としてワールドシリーズ制覇を2度も逃している例がある。このケースではテキサスは解雇どころか、ワシントンに2015年までの契約を提示して、結局チームの「プライムタイム」を無駄にした。テキサスには、ボストンのような才能、つまり、チームのチカラを見極める才能がまったくなかった。

NPBの広島が、この3年間リーグ連覇を達成しながら、一度も日本シリーズを勝てていない。これもロン・ワシントンとほぼ同じで、「短期決戦におけるチームのチカラの欠如」が原因だが、監督はクビになっていない。


この短い紙幅と足りないアタマで、「チームのチカラ」とは何か、そして、それを測定する方法論を論じきるのは無理な話だが、少なくとも言えることは、OPSにみられた打率軽視のホームラン主義はむしろ「チームのチカラ」の向上にとってマイナスであることがハッキリした、ということである。




日本シリーズ2018において広島は、非常に低打率の打者ばかりが並んでいる低調な打線において、必死になって盗塁しようとしたわけだが、そういう行為には意味がない。
なぜなら、たとえほんのわずか盗塁が成功したとしても、次の打者にタイムリーが出るような打線状態ではないからだ。


2018年のヤンキース打線にしても、「アダム・ダン的な低打率ホームランバッター」ばかり並べたわけだが、そんな「確率の低いことに命をかけるギャンブル戦略」でタイムリーが頻繁に出るわけはない。当たり前の話だ。
参考記事:2014年10月20日、やがて悲しきアダム・ダン。ポスト・ステロイド時代のホームランバッター評価の鍵は、やはり「打率」。 | Damejima's HARDBALL


レギュラーシーズンは、他チームをロクに分析しもしない、あるいは、分析できていてもそれを確実に実行する能力のある選手がいない、あるいは、分析の必要性はわかってはいるが資金が無い、そういう「チグハグなチーム」を、シーズンの半分以上のゲームで相手にする。
だから、ヤンキースのような「100年前のベーブ・ルース時代そのままの、あまりにも古くさい編成」や、ロン・ワシントンや広島のような、「選手頼み、運頼みのチーム運営」でも、なんとかなってしまう。


だが、ポストシーズンはそうはいかない。

ポストシーズンでは、相手の戦力分析くらい、どこのチームでもやる。また先発投手のレベルも上がる。
当然、(普通なら)主力打者の打撃は封じられ、お互いの打線が低調に推移することになるから、先発投手の出来や、継投タイミングなどがゲームを大きく左右する最大のポイントになる。

打線では、レギュラーシーズンで大活躍した主力打者でも、弱点ばかり突かれるポストシーズンでは絶不調に陥ることがよくある。かわりに、分析のメインの対象にならないダークホース的な選手が意外な活躍をみせることも多い。調子の最悪なレギュラー打者(例えば広島の菊池)を上位打線に残すべきか、残すとしたら、どんな仕事をさせるかもポイントのひとつになる。


こうして眺めたとき、「互いのストロングポイントを封じあう」のが当たり前のポストシーズンにおいて、ゲームを左右する「チームのチカラ」のかなりの部分が、「戦略決定者の状況判断能力」なのがわかる。(決定者は監督とは限らない)



選手個人のチカラ以外の、「チームのチカラ」に関する議論が必要なときにきていると思うし、数字で知りたいとも思うわけだが、同時に、それは簡単ではないとも思う。

たしかに、あの監督は継投が上手いとか、選手からの信頼が厚いとか、あのジェネラル・マネージャーはトレードが上手いとか、そういう「印象論」には意味がないが、では、何を対象に、どう測定して、どう語るか。それは簡単なことではない。また、セイバーメトリクスもそうであるように、数字にできたからといって、数字の根本に錯誤があれば、その数字は客観的ではない。数字にも「洗練」「見直しの繰り返し」が必要なのだ。


今の自分にできることが、例えば日本シリーズの個々の場面で、「チームのチカラ」に関する状況判断の正しさや間違いを、根拠を挙げつつ指摘することくらいしかないのは、たいへん残念だ。
誰それのポストシーズン継投成功率は何パーセントだとか、トレードへの投資がチームにもたらした貢献度が何パーセントとか、そういう「誰でも思いつく簡単なことを手始めに、「チームのチカラに関する分析」だけでなく、「チームのチカラにかかわる人間たちの能力判定」がもっと進むべきだと思う。

damejima at 20:59
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