June 20, 2010

トロントに出されたブランドン・モローが最近4試合で連続してQS(クオリティ・スタート)を決めている。トロントでは既に13試合に投げているが、そのうち8試合でQSを決め、QS率は既に61.5%にも達している
61.5%のQS率というと、LAAのアーヴィン・サンタナや、カンザスシティのバニスター、タンパベイのマット・ガーザ(いずれも57%)より上で、今シーズンなかなかのボストンのバックホルツ(62%)に肩を並べつつある、という意味になる。
たいしたものだ。移籍直後にありがちな不安定さが消えていき、このところ立派に先発投手としてモノになりはじめたらしい。



モローが、移籍にあたってのインタビューで I was never really allowed to develop as a starter.「僕は(シアトルで)先発投手としての成長の機会をまるで与えられなかった」とチームの自分に対する間違った扱いをハッキリ非難したのをよく覚えている。
シアトル時代のモローの処遇はそれはそれは酷いものだった。
彼をマイナーから上げてきては、(彼だけでなく、どんな投手にでもそうだったが)投手の個性をより伸ばし生かす術などまるで持たないダメ捕手城島相手とばかりバッテリーを組まさせては(11ゲーム 29.2イニングで最多)、四球を出しては痛打され続けただけでなく、そうした一度や二度の失敗ですぐにマイナーに送り返す、というような、あまりにも馬鹿げた選手起用をとっていた。
(この辺のプロセスは2009年のバルガスもよく似ている。2009年にバルガスはローテに戻ってきてはダメ捕手のキロスとばかり組まされ、またマイナーに落とされたりしていたものだ)→参照:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「城島コピー捕手」キロスと「キロス問題」

トロント移籍後のモローは不安定さがすぐに消えたわけではないが、きちんと試合に使われ続けているうちにピッチングの質が変わってきたようだ。
彼が移籍したばかりの不安定だった時期に彼のピッチングを冷笑していたモノを見る目の無い城島オタクやシアトルファンには「ダメな人はどこまでいってもダメなんですねぇ。また皆さんの低脳ぶりが証明されてしまいましたね」と申し上げておきたい。
Brandon Morrow Game Log | bluejays.com: Stats


シアトル時代にモローに対して日本に逃げ帰ったダメ捕手城島が行った最悪最低の所業というのは、シアトルファンの間ではたいへんに有名な話だ。
簡単にいえば、投手コーチのリック・アデアがストレート偏重で単調になりがちなモローのピッチングの「質」を変えるために「モローにカーブを投げさせてみる」という打ち合わせを試合前のミーティングでしていたにもかかわらず、ダメ捕手の城島がなんと、「自分だけの一存」で「モローにカーブのサインを一切出さなかった」というものである。
くだらないにも程がある話である。思い出したくもない。

こうしてモローはメジャーに上がるチャンスをもらうたびにダメ捕手を押し付けられ、先発投手としての結果がなかなか出せないまま、いたずらにマイナーとメジャーの間を行ったり来たりさせられ、そして挙句の果てにはチームから出されてしまった。
その不幸なブランドン・モローのキャリアに、今年絶好調のフィスターやバルガスと同様、ダメ捕手と縁が切れたことで、ようやく陽の目が当たろうとしている。めでたい、めでたい。

「城島打ち合わせ無視事件」の記録
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年12月22日、「投手コーチ・アデアとの打ち合わせを無視し、モローにカーブのサインを一切出さなかった城島」に関する記録。投手たち自身の「維新」による城島追放劇の舞台裏。

元データ:MyNorthwest.com シャノン・ドライアーのコラム
Joh Leaves the Mariners, What Now For Both - MyNorthwest.com
The real eye opener was in the game Brandon Morrow threw right before he was sent down. Don Wakamatsu had said in his post game press conference that it looked like Morrow's breaking ball was shaky the few times he threw it. When we asked Morrow about it he looked at us stunned and said that he didn't throw a breaking ball that game. The plan with Rick Adair and Joh going into the game was to incorporate the breaking ball, it was what he was working on but Joh never called one. His explanation, he couldn't get Brandon into a count where he could throw it.
本当にビックリしたのは、モローがマイナーに降格させられる直前のゲームである。監督ワカマツは試合後の記者会見で「今日のモローはブレーキング・ボールを何球か投げたが、どれも不安定に見えた」と話した。
私たち記者がモローにそれを尋ねると、彼は呆然と我々を見つめながら、「このゲームで僕はブレーキング・ボールなんて、1球も投げてないよ」と言ったのである。
なんでもリック・アデア投手コーチとジョーがゲーム前に立てたプランでは、ブレーキング・ボールを交えるはずだった。だが、ジョーはそれを一度もコールしなかったのである。ジョーの説明によると、モローがブレーキング・ボールを投げることのできるカウントに持ち込むことができなかったから、ということだった。



さてトロントに移籍してからのブランドン・モローのピッチングで何がいったい変わったのだろう。

結論は簡単だ。「カーブ」である。
細かい部分はさておき、下記のデータを見てもらおう。

モローの使った球種
(シーズン別 % 数字は左から、ファスト・ボール スライダー カーブ チェンジアップ スプリット)
Brandon Morrow » Statistics » Pitching | FanGraphs Baseball
2007年 80.0 10.5 0 3.3 6.2
2008年 70.7 16.2 1.9 0.9 10.3
2009年 70.5 15.0 4.8 9.8 0
2010年 62.9 16.6 10.8 9.7 0

2009年と2010年で最も大きく変わったことは、上の数値でまるわかりだろう。
「ストレートが大きく減り、そして、カーブを多用にするようになった」
実は、配球にバランスが出てきたことは、ストレート自体の効果も増している。というのは、ストレートの割合が減ったことで、ストレートを打たれるパーセンテージ自体が5%ほど下がったのである。打者にストレートに狙いを絞られずに済むことからくる、いい意味の相乗効果だろう。


2009年までモローのストレート率は「70%」を毎シーズンあたりまえのように越えていた。この「ストレート率 70%」という数値は「メジャーではよくある話」なのか、どうか。
先日書いた下記の記事でわかるとおり、個々の投手はともかく、チームごとに言うなら「ストレートを投げる割合が70%を越えるようなストレート偏重の投手陣など、メジャーのどこを探しても、シアトル・マリナーズくらいしかない」。つまり、2009年までのモローは「メジャーでもシアトルにしかいない、異常なストレート偏重投手」のひとりでしかなかった。

日頃メジャーを見ていればわかることだが、100マイルの超高速ストレートを誇る投手ですら、打たれるときにはやすやすとスタンドに放り込まれ、メッタ打ちにもあうのが、世界から非凡な才能だけを集めたメジャーという場所の恐ろしさで、基本的にストレートオンリーではメジャーでは長くは通用しない。
ステファン・ストラスバーグのような超例外もあることにはあるが、彼のストレートにしたって、かつてフェリックス・ヘルナンデスもそうであったように、やがては打者につかまる時期が来る、そういうものだ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月13日、「メジャーで最もストレートばかり投げる」シアトルのリリーフ陣。なんと「4球のうち、3球がストレート」。



実はトロントの先発投手陣はシアトルのリリーフ投手の対極にあり、「メジャーにおいて、先発投手陣が最もストレートを投げないチーム」だ。トロントのSP(先発投手)がストレートを投げるパーセンテージはヘタをすると50%を切るため、70数%もストレートを投げるシアトルのリリーフに比べ、20%も低い。
先日も書いたことだが、ア・リーグ東地区では「ストレートの割合を減らすかわりに、カットボールの多用でそれを補う」傾向が強くあり、トロントでも配球の10%程度がカットボールと、西地区、中地区のチームよりずっと多くのカットボールを使う。
American League Teams » 2010 » Starters » Pitch Type Statistics | FanGraphs Baseball

そんな中でみると、2010年6月18日現在のモローのストレート率62%という数字は、メジャーの先発ローテ投手のチーム別の数字においてみると「非常に平均的な数字」で、多すぎもせず、少なすぎもしない。つまり、「バランスがとれてきている」。
つまり、「移籍後のモローは、ストレートだけに頼らず、多少カーブを混ぜつつ、ピッチングにバランスがとれはじめている」。これだけでも、失意で移籍していくモローにくだらない罵声を浴びせた心無いクセに無能なシアトルファンを見返すには十分だろう。

だが単純なストレートを投げる割合を極端なまでに減らすトロントのローテーション投手としては、62%でもまだまだストレートの割合が高いほうだ。モローも今シーズンのオフにはカットボールでも覚えることになるかもしれない。
まぁ、いってみれば、トロントの投手コーチがやったことは
「ストレートに特徴のあるモローに、いきなりストレートを50%以上投げないように命じるのではなく、彼の個性を無理に壊さない範囲でカーブを混ぜさせていき、ピッチングの幅をゆるやかに広げていってやることに成功しはじめている」ということになる。


ダメ捕手の「壁」のないところでは、これほどスムーズに投手の改善がすすむのだから、ダメ捕手のいるシアトルから移籍した途端に活躍しはじめる投手が続出するのも無理はない







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