March 02, 2011
ホノルルで2月28日に与那嶺要さん(ウォーリー与那嶺、Wallace Kaname Yonamine, born June 24, 1925)が逝去なさった。享年85歳。
Wally Yonamine, 85, Dies - Changed Japanese Baseball - NYTimes.com
Wally Yonamine Minor League Statistics & History - Baseball-Reference.com
プレーヤーであれ、ファンであれ、我々は、先人に築き上げでもらったベースボールの文化的経済的な基盤があってこそ、楽しさを享受できている。だから、先人の足跡へのリスペクトなしに、野球を文化として考えることはできない。
戦後初の外国人選手として、戦後の日本野球の、発展というより、「戦後の日本野球を根本から変えてくれた恩人」のひとりであり、大きな功績のあった偉大な先人である与那嶺さんの逝去を心から悼むとともに、その素晴らしい足跡の片鱗に触れておきたいと思う。
お名前をどう表記するか迷う。
これまで日本では主に漢字で表記されてきたわけだが、マウイ島生まれの与那嶺さんはもともとアメリカ国籍の日系二世であり、戦後日本で初めてプレーした外国人選手としての業績も後世に讃えられてしかるべきなのだから、亡くなられた今となっては、漢字の「与那嶺さん」ではなく、同じマウイ島出身で日系4世のカート・スズキの名前をカタカナ表記するのと同じように、カタカナ表記で「ヨナミネさん」とさせていただくのが、これからはふさわしいように思う。
Wally Yonamine - Wikipedia, the free encyclopedia
Wally Yonamine Minor League Statistics & History - Baseball-Reference.com
まず、マウイで生まれた日系二世であるヨナミネさんは、野球選手である前に、日本人の子孫として初めて、プロフットボールプレーヤーになられた方だ。1946年に創立され、今ではフットボールの名門となったSan Francisco 49ersで、47年にランニングバックとしてプレーされている。(49ersがNFLに参加するのは1950年になってからのことで、チーム発足当時は別組織に属していた。だからヨナミネさんを「日系人初のNFLプレーヤー」と呼ぶのは多少正確さに欠ける)
近年、NFLにチャレンジする日本人の挑戦がなかなか成功しないのをみても、ヨナミネさんがフットボールの花形ポジションであるランニングバックとしてプレーできたという事実が、いかに素晴らしい快挙かがわかるし、誇りに思う。
フットボールプレーヤーとして足の速さが絶対条件であるランニングバックをつとめていたことでもわかるように、ヨナミネさんのプレーのひとつの特徴は、イチローと同じく、その「快足ぶり」にあった。
そして、そこに、ヨナミネさんが「戦後の日本野球に持ち込んだもの」があった。(つまり、ある意味で、「ヨナミネさんが戦後日本に持ち込んだタイ・カッブ時代のアグレッシブな野球」のうち、「スピードの部分を、イチローが21世紀のアメリカで、MLBに甦らせた」ともいえる)
ヨナミネさんは、激しいスライディングだけでなく、セフティバントを日本に導入したことでも有名。
ヨナミネさんの通算盗塁数は、163。それほど多くはない。
だが、なんといっても目立つのが、通算11回も記録したホームスチールだ。これは、日本プロ野球歴代1位。(2位は黒沢俊夫さんの10回)
加えて、ヨナミネさんは、1951年9月12日に、同一イニングに二盗、三盗、本盗を決め、1イニング3盗塁という、とてつもない盗塁記録も打ち立てている。
ちょっとMLBでのホームスチール記録もみてみよう。
回数では、案の定、遠慮のないアグレッシブなスライディングで有名だったタイ・カッブが、54回で、断トツのトップだ。
イチローにシーズン安打記録を抜かれたジョージ・シスラーも20回で、第8位。やはり、あの時代の選手はみんな走れる。あの小太りのベーブ・ルースだって、通算10回もホームスチールをしている。
MLB歴代ホームスチール記録
Stealing Home Base Records by Baseball Almanac
ホームスチール名人のヨナミネさんもアグレッシブな走塁で知られているプレーヤーだから、ヨナミネさんとタイ・カッブ、ホームスチールの名手2人のプレーには実は共通点が多い。
1951年にヨナミネさんが記録した「同一イニングに、二盗、三盗、本盗」という記録も、タイ・カッブはなんと4回も記録していて、ア・リーグ最高記録。これは、同じく4回記録しているナ・リーグのホーナス・ワグナーと並んで、メジャー記録ともなっている。
MLB歴代 同一イニング二盗、三盗、本盗 記録
Players who have stolen second base, third base and home in the same inning
「まさか」という場面でホームベースに突入してくる単独ホームスチールは、ある意味、野球の華だと思うし、ブログ主は非常に好きだ(笑)
ちなみに、足が遅いことで知られる元捕手の野村克也氏は7回ものホームスチールを成功させている一方で、日本の盗塁キング福本豊氏は7回試みて、わずか1回しか成功していない。バッテリーの油断を突く必要があるホームスチールが、必ずしも足の速さだけで決まるプレーではないことを、よく表している。
タイ・カッブは、シングルヒットを二塁打にしてしまうことでも有名だったが、その秘訣を後に明かして「外野手がボールを利き腕で処理するかどうかを、いつも注意深く観察していたのさ」と言っている。
ヨナミネさんが、盗塁数のキングではなくて、ホームスチールの稀代の名手だったのは、相手の隙を突くことで有名だったタイ・カッブと同じように、どんなプレーにおいても気を抜かず、常に相手の気の緩みを許さず、アグレッシブな全力プレーをし続けたからだと思う。
こうしてみると、首位打者を3回獲得し、走れて、バントも上手いヨナミネさんは、現代的なリードオフマンとして、イチローの大先輩でもある。
素晴らしい先達を持てたことを喜ぶとともに、
ご冥福を心から祈りたい。
Youtubeで見られるホームスチール
ジャッキー・ロビンソン
YouTube - Jackie Robinson Steals Home
アーロン・ヒル
YouTube - Aaron Hill stole home
ジャコビー・エルズベリー
YouTube - Jacoby Ellsbury Steals Home
ジェイソン・ワース
YouTube - 2009/05/12 Werth steals home
MLB公式サイトの動画で見られるホームスチール
クリス・ネルソン(COL)
Baseball Video Highlights & Clips | CIN@COL: Nelson steals home to put the Rockies ahead - Video | MLB.com: Multimedia
その他のサイト
オマー・ビスケール
オマー・ビスケル ホームスチール 野球動画まとめ - 動画共有サイトzoome
Wally Yonamine, 85, Dies - Changed Japanese Baseball - NYTimes.com
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プレーヤーであれ、ファンであれ、我々は、先人に築き上げでもらったベースボールの文化的経済的な基盤があってこそ、楽しさを享受できている。だから、先人の足跡へのリスペクトなしに、野球を文化として考えることはできない。
戦後初の外国人選手として、戦後の日本野球の、発展というより、「戦後の日本野球を根本から変えてくれた恩人」のひとりであり、大きな功績のあった偉大な先人である与那嶺さんの逝去を心から悼むとともに、その素晴らしい足跡の片鱗に触れておきたいと思う。
お名前をどう表記するか迷う。
これまで日本では主に漢字で表記されてきたわけだが、マウイ島生まれの与那嶺さんはもともとアメリカ国籍の日系二世であり、戦後日本で初めてプレーした外国人選手としての業績も後世に讃えられてしかるべきなのだから、亡くなられた今となっては、漢字の「与那嶺さん」ではなく、同じマウイ島出身で日系4世のカート・スズキの名前をカタカナ表記するのと同じように、カタカナ表記で「ヨナミネさん」とさせていただくのが、これからはふさわしいように思う。
Wally Yonamine - Wikipedia, the free encyclopedia
Wally Yonamine Minor League Statistics & History - Baseball-Reference.com
まず、マウイで生まれた日系二世であるヨナミネさんは、野球選手である前に、日本人の子孫として初めて、プロフットボールプレーヤーになられた方だ。1946年に創立され、今ではフットボールの名門となったSan Francisco 49ersで、47年にランニングバックとしてプレーされている。(49ersがNFLに参加するのは1950年になってからのことで、チーム発足当時は別組織に属していた。だからヨナミネさんを「日系人初のNFLプレーヤー」と呼ぶのは多少正確さに欠ける)
近年、NFLにチャレンジする日本人の挑戦がなかなか成功しないのをみても、ヨナミネさんがフットボールの花形ポジションであるランニングバックとしてプレーできたという事実が、いかに素晴らしい快挙かがわかるし、誇りに思う。
フットボールプレーヤーとして足の速さが絶対条件であるランニングバックをつとめていたことでもわかるように、ヨナミネさんのプレーのひとつの特徴は、イチローと同じく、その「快足ぶり」にあった。
そして、そこに、ヨナミネさんが「戦後の日本野球に持ち込んだもの」があった。(つまり、ある意味で、「ヨナミネさんが戦後日本に持ち込んだタイ・カッブ時代のアグレッシブな野球」のうち、「スピードの部分を、イチローが21世紀のアメリカで、MLBに甦らせた」ともいえる)
ヨナミネさんは、激しいスライディングだけでなく、セフティバントを日本に導入したことでも有名。
ヨナミネさんの通算盗塁数は、163。それほど多くはない。
だが、なんといっても目立つのが、通算11回も記録したホームスチールだ。これは、日本プロ野球歴代1位。(2位は黒沢俊夫さんの10回)
加えて、ヨナミネさんは、1951年9月12日に、同一イニングに二盗、三盗、本盗を決め、1イニング3盗塁という、とてつもない盗塁記録も打ち立てている。
ちょっとMLBでのホームスチール記録もみてみよう。
回数では、案の定、遠慮のないアグレッシブなスライディングで有名だったタイ・カッブが、54回で、断トツのトップだ。
イチローにシーズン安打記録を抜かれたジョージ・シスラーも20回で、第8位。やはり、あの時代の選手はみんな走れる。あの小太りのベーブ・ルースだって、通算10回もホームスチールをしている。
MLB歴代ホームスチール記録
Stealing Home Base Records by Baseball Almanac
ホームスチール名人のヨナミネさんもアグレッシブな走塁で知られているプレーヤーだから、ヨナミネさんとタイ・カッブ、ホームスチールの名手2人のプレーには実は共通点が多い。
1951年にヨナミネさんが記録した「同一イニングに、二盗、三盗、本盗」という記録も、タイ・カッブはなんと4回も記録していて、ア・リーグ最高記録。これは、同じく4回記録しているナ・リーグのホーナス・ワグナーと並んで、メジャー記録ともなっている。
MLB歴代 同一イニング二盗、三盗、本盗 記録
Players who have stolen second base, third base and home in the same inning
「まさか」という場面でホームベースに突入してくる単独ホームスチールは、ある意味、野球の華だと思うし、ブログ主は非常に好きだ(笑)
ちなみに、足が遅いことで知られる元捕手の野村克也氏は7回ものホームスチールを成功させている一方で、日本の盗塁キング福本豊氏は7回試みて、わずか1回しか成功していない。バッテリーの油断を突く必要があるホームスチールが、必ずしも足の速さだけで決まるプレーではないことを、よく表している。
タイ・カッブは、シングルヒットを二塁打にしてしまうことでも有名だったが、その秘訣を後に明かして「外野手がボールを利き腕で処理するかどうかを、いつも注意深く観察していたのさ」と言っている。
ヨナミネさんが、盗塁数のキングではなくて、ホームスチールの稀代の名手だったのは、相手の隙を突くことで有名だったタイ・カッブと同じように、どんなプレーにおいても気を抜かず、常に相手の気の緩みを許さず、アグレッシブな全力プレーをし続けたからだと思う。
こうしてみると、首位打者を3回獲得し、走れて、バントも上手いヨナミネさんは、現代的なリードオフマンとして、イチローの大先輩でもある。
素晴らしい先達を持てたことを喜ぶとともに、
ご冥福を心から祈りたい。
Youtubeで見られるホームスチール
ジャッキー・ロビンソン
YouTube - Jackie Robinson Steals Home
アーロン・ヒル
YouTube - Aaron Hill stole home
ジャコビー・エルズベリー
YouTube - Jacoby Ellsbury Steals Home
ジェイソン・ワース
YouTube - 2009/05/12 Werth steals home
MLB公式サイトの動画で見られるホームスチール
クリス・ネルソン(COL)
Baseball Video Highlights & Clips | CIN@COL: Nelson steals home to put the Rockies ahead - Video | MLB.com: Multimedia
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