May 06, 2011

勝ったゲームを、終わった後でMLB公式サイトのGamedayという機能で、ゆっくりたどってみるのは本当に楽しい。ライブで見ている時間とはまったく視点でゲームを見ると、「そうか」、「なるほど」と、気づかされることが本当に多いものだ。

テキサスとの第3戦は、1勝1敗のタイになった後のゲームで、しかも、シアトルのチーム勝率5割ラインが見えてきているだけに、勝つか負けるかで大きく違ってくる大事なゲームだったわけだが、われらがジェイソン・バルガスが、キャッチャーミゲル・オリーボとの息のあった素晴らしいバッテリーワークをみせてくれて、強敵を割と簡単にねじ伏せることができた。
Texas Rangers at Seattle Mariners - May 5, 2011 | MLB.com Classic

この連戦で先発した6人の投手たちの、ストライク率を書き出してみた。(最初の数字が総投球数、2番目がストライク数)

97-77  79.4% 9三振0四球  ピネダ  SEA
113-83 73.4% 11三振1四球 ルイス  TEX

102-68 66.6% 6三振1四球  オガンドー  TEX
96-63  65.6% 3三振2四球  バルガス   SEA
125-81 64.8% 12三振1四球 CJウィルソン TEX
103-65 63.1% 3三振2四球  ベダード    SEA



ストライク2 に対して、ボール1」という、MLBの典型的な配球比率については、これまでこのブログで、しつこくしつこく、書き過ぎるほど書いてきたが、この3連戦でのマイケル・ピネダコルビー・ルイスのストライク率は、それを遥かに上回っている。

このシアトル対テキサス3連戦で、先発投手で負けがついたのは、9三振を奪ったマイケル・ピネダと、11三振を奪ったコルビー・ルイスの2人だ。
クリフ・リー並みのとんでもなく高いストライク率で、これほど多くの三振を奪ったにもかかわらず、彼らは負けた。


思い出すと、去年秋10月のポストシーズン開幕戦、クリフ・リー73.1%もの高いストライク率で勝利を手にした日に、ロイ・ハラデイは、なんと、クリフ・リーすら超える76.0%と、ちょっと異常とさえいえる圧倒的なストライク率で、たった104球で9回を投げぬいてしまい、軽くノーヒット・ノーランを達成してしまった。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月6日、クリフ・リー、タンパベイを10三振に切ってとり、ポストシーズンまず1勝。フィラデルフィアでもみせた大舞台でのさすがの安定感。
だが、あんな超人的な芸当、つまり、ほとんどストライクばかり投げて相手をピシャリと抑え込むことができるのは、彼ら2人の名投手のような、並み外れた投球術を持った投手だからこそ可能になるのであって、並みの投手には無理な相談だ。


野球は「アウトをとる競技」ではあるが、別に「三振をとるための競技」ではない
三振をたくさんとったのに、味方が点をとってくれなくて負けるというセリフは非常によく聞く話だが、三振を多くとる投手がなぜそういう結果を招くのかについては、投手側にも多少理由があるケースもあるはずだ。


例えば、マイケル・ピネダ
彼は、まだ球種が少ない。
そういう投手が、4球に3球、ゾーン内にストライク、それも大半はファストボールを投げ続けるのだから、クリス・デイビスミッチ・モアランドエルビス・アンドラスといった、テキサスの誇る若い豪腕バッターたちに狙いを絞られて、自慢の剛球をミートされるハメになった。
特に、クリス・デイビスにホームランを打たれてはいけない。
打撃スタッツをみればわかることだが、彼は典型的なストレートボールヒッターだ。ストレートには異常に強いが、カーブなどはあまり打てない。
今日の第3戦、2点負けている場面の9回表にクリス・デイビスはピンチヒッターとして打席に立ったが、あの打席の平凡すぎる凡退ぶりを見てもらえばわかる。ブランドン・リーグが決め球のスプリッターを使うまでもなく、チェンジアップとシンカーだけで、クリス・デイビスのバットは空を切り続けた。

ピネダも、次回からちょっとは考えて投げないとダメだろう。

2011年5月5日 9回表 代打クリス・デイビス 三振

上は、ピネダがホームランを打たれた翌日のゲームの9回表に代打で出てきたクリス・デイビスをブランドン・リーグが三振にしとめた打席の投球の詳細。リーグとピネダのピッチングの違いを見るために挙げてみた。
リーグのこの配球は、ロブ・ジョンソンがよく使う、アウトハイとインローを投げ分ける、典型的なMLB的配球だ。以前から何度となく書いている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」 『damejimaノート』(2)「外角低め」「ストレート」という迷信 実例:「アウトハイ・インロー」の対角を使うメジャーのバッテリー
この配球では、インとアウトで球速にも変化をつけるためにアウトハイの球にストレート系、インコースに変化球を使うとか、内外で速度の投げ分けをすることがほとんどだ。
リーグの場合、高速シンカーが投げられるので、外に高速シンカー、内にチェンジアップと投げ分けて、内外で10マイルの速度差をつけて、クリス・デイビスを軽く三振にしとめた。


今日のコルビー・ルイスだが
打者の攻め方がワンパターンすぎて、見ていてつまらない。
例えば、打者が左なら、外を徹底して攻めておいて、最後インサイドで三振に仕留める。ただそれだけ。だから、あれを打てないのは、シアトルの下位打者が頭を使ってないだけのことだ。
追い込んだカウントを作るためにかなりの手間をかけるのがルイスの定石なわけだが、三振の数が増えるかわり、味方の守備時間も長くなりがちで、ただでさえ湿ってきているテキサス打線に元気がない。
投手が打者を追い込むカウントを作る前に、もし甘く入った球があれば、どれもが失点の原因になるし、早いカウントから打って出られると、案外ひとたまりもない。
イチローの2本のヒットなども、2本とも、カウントを作るための外角ストレートをレフトに弾き返したヒット。ルイスがインコースにスライダーで討ち取りにいく前に、アウトコースいっぱいにストライクが来るのがわかってしまっては、天才イチローは軽く打ちこなしてしまう。


ジェイソン・バルガスが、本来はチェンジアップ主体に打者をうちとる配球をするピッチャーであることは、これまで何度となく書いてきた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年6月20日、7回QSで3勝目のバルガスは、6月14日キロス批判と対照的にロブ・ジョンソンの「ゲームメイクの上手さ」を称え、チームは5割復帰を果たした。(2)
テキサスも、シアトルと同地区で、バルガスを何度も打ち崩した経験があるだけに、そのへんとっくに研究済みのはずだから、今日はたぶんチェンジアップを狙い打ちした打者も多数いただろうと思うが、そこは、さすが研究熱心なバルガスだ。
まるでカットボールを多用するア・リーグ東地区の投手たちのように、カットボール主体のピッチングにスッパリと切り替えて、テキサス打線を手玉にとった
地区ごとの配球文化の差異については、ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年6月13日、「メジャーで最もストレートばかり投げる」シアトルのリリーフ陣。なんと「4球のうち、3球がストレート」。(ア・リーグ各地区ごとのピッチング・スタイルの差異についてのメモ)を参照)

城島やキロスのような酷いキャッチャーとばかり組まされて誰もバルガスに注目していない頃から彼の才能に注目し続けているだけに、バルガスのピッチングについては誰よりも詳しいと思ってきたが、これほどカットボール主体に投げて成功したバルガスは見たことがない
たぶん、去年シアトルに在籍していたクリフ・リーに、カットボールの使い方についてしつこく質問していたバルガスのことだから、こういうゲームプランは、半年以上前から準備していたに違いない

対戦相手をきちんと研究してビヘビアを常に更新し、投手の進歩に対応し続けていけるのが「いい打者」なら、どんなに打者に研究されても、それをさらに乗り越えて、進歩し続けていけるのが、MLBにおける「いい投手」である

だとすれば、ジェイソン・バスガスは、間違いなく、「いい投手」だ。

2011年5月5日 4回表デビッド・マーフィー ダブルプレー4回表
マーフィー
初球のカットボールをダブルプレー








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