July 02, 2011
今日のフィラデルフィア・フィリーズはローテの谷間的な日だったが、9回表に2点入れて逆転し、トロントに勝っている。ほんとうにこのチームは「負けないチーム」だ。
MLBファンは良く知っていることだが、フィリーズ打線はいつもゲーム終盤に得点を入れている印象がある。勝っていれば「追加点」「ダメ押し点」、負けていても「逆転」「サヨナラ」があるような気にさせられる。
気になったので、フィリーズのイニング別打率を調べてグラフにしてみた。いやー、予想はしていたが、いくつか他チームにはみられない特徴がある。
2011 Philadelphia Phillies Batting Splits - Baseball-Reference.com
フィラデルフィア

イニング別の打率で特に特徴的な点を挙げてみた。
これを読む上で気をつけてほしいのは、リーグ全体のイニング別打率なんていうものは1日ごとに大きく変化することがある、ということ。だから、あくまで今シーズンに限った話題だ、くらいに読んだほうがいいだろう。
イニング別の打率について、いくつか頭にいれておくべきことをメモしておこう。
まず、リーグ間の比較について。
いくつか勘違いしてはいけないポイントがある。
DH制のあるア・リーグのバッティングはいかにも「どのイニングでも穴が少なく、どのイニングにも打率が高そう」に思え、また、ナ・リーグは「投手に打順が回るのだから、イニング間の得点力にかなり凸凹がある」と思いがちだ。
だが、2つのリーグにそれほど差はない。
DH制の有無は、イニングごとの攻撃力についてだけ言えば、思ったほど影響を与えているように見えない。両リーグとも、全体の傾向は似ていて、「2回に打率が下がり、試合中盤は2割6分程度の打率で横ばいに推移し、ゲーム終盤には.240程度に下降する」。
両リーグのイニング別打率で、違いが出る可能性があるのは、「7回以降の打率」だろう。
ア・リーグでは、7回を過ぎるとチーム打率は明らかにガクンと降下していく。対してナ・リーグでは、9回に大きく下がりはするものの、7回、8回は、ア・リーグほど急激に降下しない。
いいかえると、「ゲーム終盤の打率では、ナ・リーグがわずかながら優勢」なのである。
そういえば、去年のワールドシリーズでテキサスがゲーム終盤でサンフランシスコに毎試合のように逆転負けをくらっていたのを、まざまざと思い出す。
次にフィラデルフィア独自のイニング別の打率傾向の特徴を見てみる。
どういうわけか「3の倍数のイニング」、3回、6回、9回に、打率が高いイニングが繰り返し現れる。
必ずしも「3の倍数のイニング」にだけ上位打線に打順が回ってくるとは限らないわけで、理由は他にあるだろう。
3イニングごと、という点から考えると、打順が一巡するたびに相手投手の傾向を把握して、しっかりと「バッターの狙い」が定まっていっているのではないかと推測するのだが、どうだろう。
あとで、ア・リーグのシアトルとボストンのイニング別打率データを挙げてみるので、比較してみてもらいたい。
フィラデルフィアのイニング別打率の最も強い特徴のひとつは「9回の打率の異常な高さ」だ。
ア・リーグであれ、ナ・リーグであれ、2回がそうであるように、「9回は、チーム打率が下がるのが普通というイニング」だが、フィリーズは違う。9回のイニング打率は.271もある。
いま、ナ・リーグで最もチーム打率が高いのはチーム打率.270を誇る中地区2位のセントルイス・カージナルスだが、セントルイスもやはり9回の打率が.281もある。
セントルイス

強いチーム、といっても、いろいろな強さがある。
フィリーズの「3の倍数のイニングの打撃力、特に9回の粘り強さ」は、ヤンキースのような「破壊力」とは違う。
たぶん彼らの日頃のスカウティング能力の高さ、研究心は、チームとして相当鍛えられているのではないだろうか。「試合序盤のエンジンのかかりの早さ」、「ゲーム中にでも相手投手を研究する探究心」、「ゲーム中でも相手投手に対応していく即応力」、「ゲーム終盤でも得点を諦めない、しつこさ」。
よくまぁ、ジェイソン・バルガスはこんなねばっこいチームを完封できたものだ。
ナ・リーグの強豪のゲーム終盤の粘り強さには、「代打の起用度、活躍度の差」もあるかもしれない。
ナ・リーグでは、ゲーム終盤に投手や、ヒットの期待できない打者に打順が回った場合、監督は躊躇なく代打を起用するため、ゲーム終盤になっても打率改善が期待できる。
ア・リーグでは、ゲーム終盤に打てない打者に打順が回ってきてしまっても、監督はほとんど代打を出さない。
この「代打の活用度の違い」は結果的に、「ア・リーグの監督は、どういうわけかゲーム終盤に低打率の打者が自動的に凡退するのを放置している」と言えなくもないような気がする。
比較の意味で、最後にシアトルとボストン、ア・リーグの2チームを挙げておこう。たぶんシアトルのグラフを見て、驚かれる人が多いと思う。
シアトル

ボストン

あれこれ説明する必要はないだろうが、シアトルのグラフの形状が、あまりにも他のチームと異なっている。特に違っている点を列挙しておく。
シアトルの打者の打撃成績があまりにも低く、チームの打撃成績が全体としても悲惨であることは誰でもわかっていることだが、どこが悪いのかがわかっていないことが多い。
このイニング別打率データでわかることのひとつは、シアトルの打者はけして「才能が無いから、バッティングが悪いのではない」ということだろう。
フィラデルフィアやセントルイス、ボストンといったチームは、初回や3回といった「早いイニング」からチームの打撃力の「地力」が出せる。
対して、シアトルの打線は、明らかに、エンジンのかかりがあまりにも遅く、諦めが早い。
このことの原因はいくつもあるだろうが、打率が低いとか、ホームランが少ないとか、そういう漠然としたことばかり言っているだけでは、いつまでたっても対策は立たない。
「エンジンのかかりの遅さ」は、つまり、相手投手の傾向をつかまえるタイミングが他のチームよりかなり遅くて、打順の3巡目くらいにならないと、相手投手をつかまえることができないために、相手チームに先取点をとられてゲームの主導権を失いやすいということだ。
これは、打者として才能がある」とか、ないとか、そういう問題とは別の問題もあるのではないか。
よく、球技では「ゲームに入れる」とか「ゲームに入れない」という言い方をするわけだが、シアトルの野手は、どういうわけか、「なかなかゲームに入れない選手が多い」のではないだろうか。
もしもその原因が、スタメンをコロコロ変えることにあるのだとしたら、監督エリック・ウェッジは、対策として、意味もなくスタメンを変え続けるのをそろそろ止めて、スタメン固定を考えるべきだ。
また、相手チームの投手を早くつかまえるために、野手はスカウティングをもっと打席に生かすべきかもしれない。さらに、自分の得意な球ばかり打っているようでは、早いイニングで相手投手をつかまえることなどできない、ということも言えるかもしれない。
また、ゲーム終盤の打率の低さを補う意味では、「代打」をもっと活用して、打てない選手をゲーム終盤で打席に無意味に送り出すのを止めるべきかもしれない。
とにかく言いたいのは、頭を使わず、ただ漠然と嘆いているだけでは、解決の糸口はつかめてこない、ということだ。
MLBファンは良く知っていることだが、フィリーズ打線はいつもゲーム終盤に得点を入れている印象がある。勝っていれば「追加点」「ダメ押し点」、負けていても「逆転」「サヨナラ」があるような気にさせられる。
気になったので、フィリーズのイニング別打率を調べてグラフにしてみた。いやー、予想はしていたが、いくつか他チームにはみられない特徴がある。
2011 Philadelphia Phillies Batting Splits - Baseball-Reference.com
フィラデルフィア

イニング別の打率で特に特徴的な点を挙げてみた。
これを読む上で気をつけてほしいのは、リーグ全体のイニング別打率なんていうものは1日ごとに大きく変化することがある、ということ。だから、あくまで今シーズンに限った話題だ、くらいに読んだほうがいいだろう。
1)普通は、9回の打率は、他のイニングに比べて下がるが、フィリーズはむしろ「打率が上がる」
2)3回、6回、9回と、「3の倍数のイニング」の打率が高い
3)普通2回の打率はどこのチームでも下がるが、フィリーズでは落ち込みが激しい。
イニング別の打率について、いくつか頭にいれておくべきことをメモしておこう。
まず、リーグ間の比較について。
いくつか勘違いしてはいけないポイントがある。
DH制のあるア・リーグのバッティングはいかにも「どのイニングでも穴が少なく、どのイニングにも打率が高そう」に思え、また、ナ・リーグは「投手に打順が回るのだから、イニング間の得点力にかなり凸凹がある」と思いがちだ。
だが、2つのリーグにそれほど差はない。
DH制の有無は、イニングごとの攻撃力についてだけ言えば、思ったほど影響を与えているように見えない。両リーグとも、全体の傾向は似ていて、「2回に打率が下がり、試合中盤は2割6分程度の打率で横ばいに推移し、ゲーム終盤には.240程度に下降する」。
両リーグのイニング別打率で、違いが出る可能性があるのは、「7回以降の打率」だろう。
ア・リーグでは、7回を過ぎるとチーム打率は明らかにガクンと降下していく。対してナ・リーグでは、9回に大きく下がりはするものの、7回、8回は、ア・リーグほど急激に降下しない。
いいかえると、「ゲーム終盤の打率では、ナ・リーグがわずかながら優勢」なのである。
そういえば、去年のワールドシリーズでテキサスがゲーム終盤でサンフランシスコに毎試合のように逆転負けをくらっていたのを、まざまざと思い出す。
次にフィラデルフィア独自のイニング別の打率傾向の特徴を見てみる。
どういうわけか「3の倍数のイニング」、3回、6回、9回に、打率が高いイニングが繰り返し現れる。
必ずしも「3の倍数のイニング」にだけ上位打線に打順が回ってくるとは限らないわけで、理由は他にあるだろう。
3イニングごと、という点から考えると、打順が一巡するたびに相手投手の傾向を把握して、しっかりと「バッターの狙い」が定まっていっているのではないかと推測するのだが、どうだろう。
あとで、ア・リーグのシアトルとボストンのイニング別打率データを挙げてみるので、比較してみてもらいたい。
フィラデルフィアのイニング別打率の最も強い特徴のひとつは「9回の打率の異常な高さ」だ。
ア・リーグであれ、ナ・リーグであれ、2回がそうであるように、「9回は、チーム打率が下がるのが普通というイニング」だが、フィリーズは違う。9回のイニング打率は.271もある。
いま、ナ・リーグで最もチーム打率が高いのはチーム打率.270を誇る中地区2位のセントルイス・カージナルスだが、セントルイスもやはり9回の打率が.281もある。
セントルイス

強いチーム、といっても、いろいろな強さがある。
フィリーズの「3の倍数のイニングの打撃力、特に9回の粘り強さ」は、ヤンキースのような「破壊力」とは違う。
たぶん彼らの日頃のスカウティング能力の高さ、研究心は、チームとして相当鍛えられているのではないだろうか。「試合序盤のエンジンのかかりの早さ」、「ゲーム中にでも相手投手を研究する探究心」、「ゲーム中でも相手投手に対応していく即応力」、「ゲーム終盤でも得点を諦めない、しつこさ」。
よくまぁ、ジェイソン・バルガスはこんなねばっこいチームを完封できたものだ。
ナ・リーグの強豪のゲーム終盤の粘り強さには、「代打の起用度、活躍度の差」もあるかもしれない。
ナ・リーグでは、ゲーム終盤に投手や、ヒットの期待できない打者に打順が回った場合、監督は躊躇なく代打を起用するため、ゲーム終盤になっても打率改善が期待できる。
ア・リーグでは、ゲーム終盤に打てない打者に打順が回ってきてしまっても、監督はほとんど代打を出さない。
この「代打の活用度の違い」は結果的に、「ア・リーグの監督は、どういうわけかゲーム終盤に低打率の打者が自動的に凡退するのを放置している」と言えなくもないような気がする。
比較の意味で、最後にシアトルとボストン、ア・リーグの2チームを挙げておこう。たぶんシアトルのグラフを見て、驚かれる人が多いと思う。
シアトル

ボストン

あれこれ説明する必要はないだろうが、シアトルのグラフの形状が、あまりにも他のチームと異なっている。特に違っている点を列挙しておく。
1)シアトルの打者は、試合序盤の打率が低すぎる
2)シアトルの打者は、試合終盤の諦めが早すぎる
シアトルの打者の打撃成績があまりにも低く、チームの打撃成績が全体としても悲惨であることは誰でもわかっていることだが、どこが悪いのかがわかっていないことが多い。
このイニング別打率データでわかることのひとつは、シアトルの打者はけして「才能が無いから、バッティングが悪いのではない」ということだろう。
フィラデルフィアやセントルイス、ボストンといったチームは、初回や3回といった「早いイニング」からチームの打撃力の「地力」が出せる。
対して、シアトルの打線は、明らかに、エンジンのかかりがあまりにも遅く、諦めが早い。
このことの原因はいくつもあるだろうが、打率が低いとか、ホームランが少ないとか、そういう漠然としたことばかり言っているだけでは、いつまでたっても対策は立たない。
「エンジンのかかりの遅さ」は、つまり、相手投手の傾向をつかまえるタイミングが他のチームよりかなり遅くて、打順の3巡目くらいにならないと、相手投手をつかまえることができないために、相手チームに先取点をとられてゲームの主導権を失いやすいということだ。
これは、打者として才能がある」とか、ないとか、そういう問題とは別の問題もあるのではないか。
よく、球技では「ゲームに入れる」とか「ゲームに入れない」という言い方をするわけだが、シアトルの野手は、どういうわけか、「なかなかゲームに入れない選手が多い」のではないだろうか。
もしもその原因が、スタメンをコロコロ変えることにあるのだとしたら、監督エリック・ウェッジは、対策として、意味もなくスタメンを変え続けるのをそろそろ止めて、スタメン固定を考えるべきだ。
また、相手チームの投手を早くつかまえるために、野手はスカウティングをもっと打席に生かすべきかもしれない。さらに、自分の得意な球ばかり打っているようでは、早いイニングで相手投手をつかまえることなどできない、ということも言えるかもしれない。
また、ゲーム終盤の打率の低さを補う意味では、「代打」をもっと活用して、打てない選手をゲーム終盤で打席に無意味に送り出すのを止めるべきかもしれない。
とにかく言いたいのは、頭を使わず、ただ漠然と嘆いているだけでは、解決の糸口はつかめてこない、ということだ。