July 09, 2011

2010年春に、ベテランアンパイア、Joe Westが、ヤンキースvsボストン戦の「ゲーム進行の遅さ」を批判する発言をしたことで、さまざまな反響が沸き起こったことを紹介したが、その中のひとりに、Phil Birnbaumというセイバー系の人物がいた。(まぁ、ぶっちゃけ、アナリストというより「純粋な数字マニア」と思ったほうがいい人物のようだが 苦笑)

Phil Birnbaumの調査がものすごいのは、「ゲーム進行が遅いというのなら、具体的に試合進行を遅らせているのが、どの選手の、どんなプレーかを調べてしまおう」という発想のもとに、さまざまな選手のプレーを「秒単位」で調べてランキング化しているからだ。よくもまぁ、ここまで調べるものだと思う(笑)
Sabermetric Research: Why are Yankees/Red Sox games so slow?

例えば、彼が調べた数字のひとつに、「キャッチャーがピッチャーに返球する速度」というのがある。こんな数字を調べた人、初めて見た(笑)
彼の説明によれば、「キャッチャーの返球は、1試合につき140回くらいはある。だから、もしそれがトロトロしていれば、当然のことながらゲーム遅延の原因になる」というのである。

たしかに。
言われてみればそのとおりだ。非常に論理的である(笑)だが、そこにあえて着目してしつこく調べるあたりが、なんとも「数字オタク」っぽい(苦笑)

ともあれ、彼が(たぶん)苦労して調べた「ピッチャーへの返球の遅いキャッチャー、早いキャッチャー ランキング」をみてやってもらいたい。
ただ、気をつけなければいけないと思うのは、彼がMLBのあらゆるキャッチャーを調べた、とは思えないこと。かなりマイナーなキャッチャーもランキングに登場しているから、かなり調べているのだと思うが、それにしたってここまで詳細な数字は、一生かかっても全員分は調べきれないだろうと思う。
眉間に皺を寄せたりせず、「なるほど。返球といえども、キャッチャーによってこんなに違うんだな」くらいのゆったりした気分で気楽に眺めるべきだろう。
(トップ3の名前の後にある2つの数字は、キャリア打率と、キャリアCERA。オリジナル記事にはなく、後からブログ側で付け加えた)

slow catchers: ゆっくりタイプ

+6.01 Gary Bennett   .241 4.65
+5.63 Benito Santiago .263 3.92
+4.73 Einar Diaz      .259 4.88
+4.43 Tom Wilson
+4.12 Ryan Hanigan
+3.76 Doug Mirabelli
+3.05 Javier Valentin
+2.87 Eliezer Alfonzo
+2.44 Kelly Shoppach
+2.40 Mike Piazza

fast catchers: せかせかタイプ

-4.67 Eddie Perez  .253 3.81
-4.09 Josh Bard   .256 4.13
-3.88 Omir Santos  .253 4.44
-3.88 Chris Coste
-3.58 Jeff Clement
-3.35 Ken Huckaby
-3.33 Charles Johnson
-2.97 John Flaherty
-2.97 Tom Lampkin
-2.61 Ben Davis

このランキングに注目したのは、実は理由があって、いまシアトルで控え捕手になっているジョシュ・バードの名前があったからだ。

バードが今シーズンプレーしたゲームは数試合しか見ていないが、「せかせかしたテンポでゲームを進める、せっかちなキャッチャーだな・・・・」と、反射的に思ったのを覚えている。

実は、ジョシュ・バードの名前は昔から頭にあった。
というのも、ダメ捕手城島がシアトルに在籍していた2007年のCERAランキングで、常にトップにいたのが、当時サンディエゴに在籍していたジョシュ・バードだったからだ。

2007年6月30日時点のCERAランキング
(ソース:ブログ資料)
●2点台
バード    2.56 SD
アルフォンゾ 2.91 SFG
●3点台前半
ヒル    3.03 CHC
ケンドール 3.21 OAK
バーク   3.25 SEA
ミラー   3.27 MLW
ボーエン  3.46 SD
スナイダー 3.47 ARI
●3点台後半
マーティン  3.56 LAD
カストロ   3.58 NYM
マウアー   3.60 MIN
ロ・デューカ 3.67 NYM
バリテック  3.72 BOS
マッキャン  3.77 ATL
ミラベリ   3.82 BOS
フローレス  3.86 WSN
ナポリ    3.87 LAA
モリーナ   3.92 SFG
フィリップス 3.99 TOR

城島     4.98 SEA

バードのキャリアのCERAは4.56。同時期のMLB平均は4.69だから、特筆すべき数字でもなんでもない。だが、こと2007年に限ってだけいうと、3.40と、CERAランキングの常に上位につけていたドジャース時代のラッセル・マーティンを上回るような数字だったので、よく覚えているのである。
Josh Bard Fielding Statistics and History - Baseball-Reference.com


「返球テンポの非常に早いキャッチャー」が、ゲームにどういう影響を与えるかについては、想像では色々言えるものの、間違いなくそうだ、と言いきれるほどの確証はない。

投球テンポがいいことで知られているクリフ・リーはかつてシアトル在籍時代に、ピッチングのアドバイスを求めたジェイソン・バルガスに対して「投球テンポを早くして、打者に考える暇を与えるな」と言ったものだが、「ピッチャーがテンポよく投げる」ことと、「キャッチャーがせかせかとしたテンポでプレーする」のは、意味がまったく違うとしか思えない。

ピッチャーのテンポの良さには、キャッチャーがせっかちに見えるほど早く返球し、光速でサインを決め、即座に投げるとか、そういう投手と捕手のやりとりの物理的速度などより、「ストライクを初球からビシビシ投げこむことができる、コントロールとクソ度胸の2つ」が投手に備わっていなければ意味がない。

ボール球ばかり、テンポ早くどんどん投げていたのでは、それだけで大量失点してしまい、まったくゲームにならない。
また、ボルチモアのような打線全体が早打ちしてくるチームとの対戦の場合、「打者が打ってくる早いテンポ」に「バードの早いテンポ」が合ってしまうと、途方もない連打を食らう可能性は考えられる。


投球テンポの主導権はやはり、ピッチャーが握っていてもらいたい、と思う。だから、キャッチャーがあまりにもせかせか、せかせか返球していたのでは、中には「迷惑だ」と感じる投手がいてもおかしくないと思ってしまうのだが、どうだろう。

「せっかち」と「テンポの良さ」は、やはり違うと思う。







Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
記事検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month