September 05, 2011
若手打者の打撃傾向についてあれこれ書いているうちに、複数の記事に書き散らして内容が散逸してしまっているので、「打者ごと」にまとめなおして保存しておくことにした。過去の記事と内容がダブるのだが、ご容赦願いたい。
まずは、マイク・カープから。
マイク・カープ
典型的なローボールヒッター、それも「インコースのローボール」に限られる。この打者が典型的なフライボールヒッターなのは、そのためだ。
スタッツを稼ぐのは、大半が「得意コースであるインコースの低い球を打ったフライかライナー」によるもの。ゴロさえ打たせておけば、まったくノーチャンスだ。
三振させる配球パターンが非常にハッキリしている打者でもあり、三振は非常にとりやすい。追い込んでおいて、外の高めのストレート、アウトローの変化球、インローのボールになる変化球、3つのうちどれかを投げておけばいいだけだ。逆にいうと、こんなわかりやすいバッターに長打を打たれてしまうような投手は、スカウティングに関心がない知恵の足りない投手だ。
メジャーに上がった直後に数字を残したが、BABIPの異常に高い打者であることからわかるように、「まだスカウティングされていなかった」のに加えて、単に「運がよかっただけ」。
フライボール・ピッチャー(それもスカウティングに関心の低い投手)にとっては非常に嫌なバッターだが、グラウンドボール・ピッチャーにしてみれば、これほどダブルプレーをとりやすいバッターはいない。ランナーが1塁にいるケースでは、アウトコースの変化球でゴロを打たせてダブルプレーに仕留めるのを狙うべき典型的なバッターだ。
ランナーズ・オンでの初球打ち
ランナーズ・オンと、そうでないときでスイングするカウントを変えるという、独特のカウント感覚を持っている。
なんとなくだが、「投手の油断やスキの出るカウントで強振してくる変則的な傾向」をもっていると思われる。「ここはスイングしてこない」と投手が油断しがちなカウントで、不意打ちをくらわせるように強振してスタッツを稼ぐバッターだ。
ランナーが得点圏にいるケースでの初球打ちが、異常に得意。チャンスの場面でけして待球せず、初球から思い切って打ちに出る奇襲策でタイムリーを稼いできた。8月末のエンゼルス戦までの「初球打率」は、なんと6割を超え、OPSが1.455もあった。(AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455)
投手は、ランナーが二塁にいるは、ストライクをとりたいだけのために、初球に低めのスライダーやカットボールを不用意に投げないことだ。
ランナーが出たからといって、マリアーノ・リベラがよくやる手を使って、カットボール、あるいはインコースのボールを詰まらせてセカンドゴロを打たせ、ダブルプレーに仕留めよう、などとカッコつけると、むしろ投手のほうが墓穴を掘ることになる。それはカープの最も得意な球種とコースなのだ。結構な数の投手がこの「ランナーを出した直後の初球に、インロー」のパターンで失敗している。
ここはむしろ、例えばランナーを十分に牽制しておいて、盗塁される危険性も覚悟で、カープの苦手なチェンジアップやカーブを勇気をもって投げることで、ダブルプレーという最良の結果を手にすべき。もし、ゴロでなく、空振り三振に仕留めたい満塁のようなケースでは、外の球で追い込んでおいて、カープの得意コースであるインローに、苦手球種のカーブかチェンジアップを「ボールになるように」投げるのが最適。
ちなみに、ア・リーグ東地区の投手との相性がいいのは、カープの得意なカットボールを多用したがる投手が多いためではないか。
ランナーのいないケースでは、逆にボール先行カウントになるまで待つ傾向もあるので、必ずしも早打ち打者というわけではない。あくまで、ヒッティングするカウントは、ランナーの有無によって変わる。
また、初球打ちが大得意な反面で、早打ち打者の多いMLBにあって誰もがヒッティングカウントにしている「カウント0-1」を苦手にしているのは、非常に珍しい。投手側の計算としては、初球さえファウルを打たせることに成功したら、2球目を振ってこないカープが見逃すような変化球で追い込んでおけば、あとは投手の勝ちだろう。
カイル・シーガーと非常に対照的なバッティング傾向をもつため、この2人の打席が連続するスタメンでは、どちらかが打ち、どちらかが凡退する光景が非常によくみられる。
得意カウント 初球、2-0、1-1、3-1、3-2
特に初球打ち AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455 BABIP.636
苦手カウント 0-1、1-2、2-2
得意球種 スライダー、カットボール
苦手球種 チェンジアップ(特にアウトロー)、外高めのストレート
得意コース インロー(典型的なローボールヒッター)
苦手コース 高め
苦手投手 グラウンドボール・ピッチャー
得意チーム NYY,BOS,TOR
Mike Carp Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN
打席例
2011年8月26日 ホワイトソックス戦 1回表
ダブルプレー
苦手球種のチェンジアップ。下に挙げた9月2日 オークランド戦のキャッチャーフライと同じボール。典型的なローボールヒッターだが、アウトローのチェンジアップは、低めでも打てていない。たぶん球種が問題なのだろう。
2011年8月29日 エンゼルス戦 8回裏
2ランホームラン
得点圏にランナーがいるケースのカープに「初球、インコース、スライダー」だけは、絶対に投げてはならない球だ。そのコースだけ、その球種だけを待ち受けているところに、指定どおりのコース、球種を投げれば、飛んで火にいる夏の虫、そりゃ打たれるに決まってる。
2011年8月31日 エンゼルス戦 7回裏
シングルヒット
「インローのカットボール」は、カープの最も得意な球のひとつ。スカウティングにピッタリあてはまる。
投手はダン・ヘイレンだが、初球、2球目と、カープの得意な「インローのカットボール」を連投してヒットを打たれているのだから、どうみても「不用意な配球」としかいいようがない。
2011年9月2日 オークランド戦 3回表
キャッチャーフライ
苦手球種のチェンジアップ。。典型的なローボールヒッターで、インローのスライダーやカットボールは非常に得意だが、チェンジアップは、いくら低めでも打てていない。
2011年9月3日 オークランド戦 4回表
空振り三振
苦手な高めのボール球を振って、三振。このゲームでは3三振しているが、三振した球は全部が「高めのストレート」。
2011年9月3日 オークランド戦 7回表
空振り三振
高めを苦手とするカープが高めのストレートについていけず、空振り三振すること自体は、別に驚くようなことでもない。だが、初球の「インローのスライダー」を見送ったのには、ビックリした。「初球、インロー、スライダー」とくれば、このローボール・ヒッターの黄金パターンのはず。だが、カープはスイングしなかった。
と、なれば、考えられる理由はひとつしかない。「ランナーがいないイニングの先頭打者だったから」だ。得点圏にランナーがいるときのカープなら、間違いなくこの球をフルスイングしていたはず。
やはりこのバッターは「ランナーの有無によって、スイングするカウントと、待つ球種が変わるバッター」なのは、たぶん間違いない。
2011年9月3日 オークランド戦 9回表
見逃し三振
やはり「高めのストレート」はは苦手なのだろう。この打席では全球ストレートを投げられて、2球のストライクを見逃して三振している。
2011年9月4日 オークランド戦 3回表
ダブルプレー
1死1塁の場面。インローのシンカーでダブルプレー。本来はインローの得意なバッターだが、チェンジアップが苦手なのと同様、シンカーも苦手らしい。3球目のカーブも空振りしている。
2011年9月4日 オークランド戦 5回表
2死1,2塁 ピッチャーゴロ
アウトローのシンカー。得点圏にランナーがいる打席だから、カープが初球をスイングしてくる典型的なパターンだ。ピッチャーは、シンカー投手のトレバー・ケイヒル。
もしここで不用意に「インローのスライダー」なんかを投げてしまうと、確実にタイムリーを食らうわけだが、投手ケーヒルのチョイスは「アウトロー」。ゴロを打ったら、典型的なフライボールヒッターのカープはノーチャンスだ。
2011年9月11日 カンザスシティ戦 7回裏
先頭打者 三振
アウトローのチェンジアップは、最もカープを三振させやすい球(他には、外高めのストレートも有効)。スカウティングに熱心でないエンゼルスと違って、カンザスシティはもともと分析好きの土地柄なせいか、カープにインコースの球をほとんど投げない。この打席も、苦手なアウトコース、そしてチェンジアップと、スカウティングどおりの攻めで3球三振。
2011年9月12日 ヤンキース戦 8回裏
無死1塁 ダブルプレー
カープがダブルプレー打を打つときのお約束の「アウトロー」。ランナーが1塁にいるときに、カープにアウトローに投げない投手は、スカウティングしてないと思うくらい、当たり前の配球。そろそろアウトローを苦手コースに加えてもいいかもしれない。
まずは、マイク・カープから。
マイク・カープ
典型的なローボールヒッター、それも「インコースのローボール」に限られる。この打者が典型的なフライボールヒッターなのは、そのためだ。
スタッツを稼ぐのは、大半が「得意コースであるインコースの低い球を打ったフライかライナー」によるもの。ゴロさえ打たせておけば、まったくノーチャンスだ。
三振させる配球パターンが非常にハッキリしている打者でもあり、三振は非常にとりやすい。追い込んでおいて、外の高めのストレート、アウトローの変化球、インローのボールになる変化球、3つのうちどれかを投げておけばいいだけだ。逆にいうと、こんなわかりやすいバッターに長打を打たれてしまうような投手は、スカウティングに関心がない知恵の足りない投手だ。
メジャーに上がった直後に数字を残したが、BABIPの異常に高い打者であることからわかるように、「まだスカウティングされていなかった」のに加えて、単に「運がよかっただけ」。
フライボール・ピッチャー(それもスカウティングに関心の低い投手)にとっては非常に嫌なバッターだが、グラウンドボール・ピッチャーにしてみれば、これほどダブルプレーをとりやすいバッターはいない。ランナーが1塁にいるケースでは、アウトコースの変化球でゴロを打たせてダブルプレーに仕留めるのを狙うべき典型的なバッターだ。
ランナーズ・オンでの初球打ち
ランナーズ・オンと、そうでないときでスイングするカウントを変えるという、独特のカウント感覚を持っている。
なんとなくだが、「投手の油断やスキの出るカウントで強振してくる変則的な傾向」をもっていると思われる。「ここはスイングしてこない」と投手が油断しがちなカウントで、不意打ちをくらわせるように強振してスタッツを稼ぐバッターだ。
ランナーが得点圏にいるケースでの初球打ちが、異常に得意。チャンスの場面でけして待球せず、初球から思い切って打ちに出る奇襲策でタイムリーを稼いできた。8月末のエンゼルス戦までの「初球打率」は、なんと6割を超え、OPSが1.455もあった。(AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455)
投手は、ランナーが二塁にいるは、ストライクをとりたいだけのために、初球に低めのスライダーやカットボールを不用意に投げないことだ。
ランナーが出たからといって、マリアーノ・リベラがよくやる手を使って、カットボール、あるいはインコースのボールを詰まらせてセカンドゴロを打たせ、ダブルプレーに仕留めよう、などとカッコつけると、むしろ投手のほうが墓穴を掘ることになる。それはカープの最も得意な球種とコースなのだ。結構な数の投手がこの「ランナーを出した直後の初球に、インロー」のパターンで失敗している。
ここはむしろ、例えばランナーを十分に牽制しておいて、盗塁される危険性も覚悟で、カープの苦手なチェンジアップやカーブを勇気をもって投げることで、ダブルプレーという最良の結果を手にすべき。もし、ゴロでなく、空振り三振に仕留めたい満塁のようなケースでは、外の球で追い込んでおいて、カープの得意コースであるインローに、苦手球種のカーブかチェンジアップを「ボールになるように」投げるのが最適。
ちなみに、ア・リーグ東地区の投手との相性がいいのは、カープの得意なカットボールを多用したがる投手が多いためではないか。
ランナーのいないケースでは、逆にボール先行カウントになるまで待つ傾向もあるので、必ずしも早打ち打者というわけではない。あくまで、ヒッティングするカウントは、ランナーの有無によって変わる。
また、初球打ちが大得意な反面で、早打ち打者の多いMLBにあって誰もがヒッティングカウントにしている「カウント0-1」を苦手にしているのは、非常に珍しい。投手側の計算としては、初球さえファウルを打たせることに成功したら、2球目を振ってこないカープが見逃すような変化球で追い込んでおけば、あとは投手の勝ちだろう。
カイル・シーガーと非常に対照的なバッティング傾向をもつため、この2人の打席が連続するスタメンでは、どちらかが打ち、どちらかが凡退する光景が非常によくみられる。
得意カウント 初球、2-0、1-1、3-1、3-2
特に初球打ち AVE.636 OBP.636 SLG.818 OPS1.455 BABIP.636
苦手カウント 0-1、1-2、2-2
得意球種 スライダー、カットボール
苦手球種 チェンジアップ(特にアウトロー)、外高めのストレート
得意コース インロー(典型的なローボールヒッター)
苦手コース 高め
苦手投手 グラウンドボール・ピッチャー
得意チーム NYY,BOS,TOR
Mike Carp Hot Zone | Seattle Mariners | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN
打席例
2011年8月26日 ホワイトソックス戦 1回表
ダブルプレー
苦手球種のチェンジアップ。下に挙げた9月2日 オークランド戦のキャッチャーフライと同じボール。典型的なローボールヒッターだが、アウトローのチェンジアップは、低めでも打てていない。たぶん球種が問題なのだろう。
2011年8月29日 エンゼルス戦 8回裏
2ランホームラン
得点圏にランナーがいるケースのカープに「初球、インコース、スライダー」だけは、絶対に投げてはならない球だ。そのコースだけ、その球種だけを待ち受けているところに、指定どおりのコース、球種を投げれば、飛んで火にいる夏の虫、そりゃ打たれるに決まってる。
2011年8月31日 エンゼルス戦 7回裏
シングルヒット
「インローのカットボール」は、カープの最も得意な球のひとつ。スカウティングにピッタリあてはまる。
投手はダン・ヘイレンだが、初球、2球目と、カープの得意な「インローのカットボール」を連投してヒットを打たれているのだから、どうみても「不用意な配球」としかいいようがない。
2011年9月2日 オークランド戦 3回表
キャッチャーフライ
苦手球種のチェンジアップ。。典型的なローボールヒッターで、インローのスライダーやカットボールは非常に得意だが、チェンジアップは、いくら低めでも打てていない。
2011年9月3日 オークランド戦 4回表
空振り三振
苦手な高めのボール球を振って、三振。このゲームでは3三振しているが、三振した球は全部が「高めのストレート」。
2011年9月3日 オークランド戦 7回表
空振り三振
高めを苦手とするカープが高めのストレートについていけず、空振り三振すること自体は、別に驚くようなことでもない。だが、初球の「インローのスライダー」を見送ったのには、ビックリした。「初球、インロー、スライダー」とくれば、このローボール・ヒッターの黄金パターンのはず。だが、カープはスイングしなかった。
と、なれば、考えられる理由はひとつしかない。「ランナーがいないイニングの先頭打者だったから」だ。得点圏にランナーがいるときのカープなら、間違いなくこの球をフルスイングしていたはず。
やはりこのバッターは「ランナーの有無によって、スイングするカウントと、待つ球種が変わるバッター」なのは、たぶん間違いない。
2011年9月3日 オークランド戦 9回表
見逃し三振
やはり「高めのストレート」はは苦手なのだろう。この打席では全球ストレートを投げられて、2球のストライクを見逃して三振している。
2011年9月4日 オークランド戦 3回表
ダブルプレー
1死1塁の場面。インローのシンカーでダブルプレー。本来はインローの得意なバッターだが、チェンジアップが苦手なのと同様、シンカーも苦手らしい。3球目のカーブも空振りしている。
2011年9月4日 オークランド戦 5回表
2死1,2塁 ピッチャーゴロ
アウトローのシンカー。得点圏にランナーがいる打席だから、カープが初球をスイングしてくる典型的なパターンだ。ピッチャーは、シンカー投手のトレバー・ケイヒル。
もしここで不用意に「インローのスライダー」なんかを投げてしまうと、確実にタイムリーを食らうわけだが、投手ケーヒルのチョイスは「アウトロー」。ゴロを打ったら、典型的なフライボールヒッターのカープはノーチャンスだ。
2011年9月11日 カンザスシティ戦 7回裏
先頭打者 三振
アウトローのチェンジアップは、最もカープを三振させやすい球(他には、外高めのストレートも有効)。スカウティングに熱心でないエンゼルスと違って、カンザスシティはもともと分析好きの土地柄なせいか、カープにインコースの球をほとんど投げない。この打席も、苦手なアウトコース、そしてチェンジアップと、スカウティングどおりの攻めで3球三振。
2011年9月12日 ヤンキース戦 8回裏
無死1塁 ダブルプレー
カープがダブルプレー打を打つときのお約束の「アウトロー」。ランナーが1塁にいるときに、カープにアウトローに投げない投手は、スカウティングしてないと思うくらい、当たり前の配球。そろそろアウトローを苦手コースに加えてもいいかもしれない。