December 11, 2011

かつて「城島問題」のときにも発言を取り上げたことのあるFOXのケン・ローゼンタールは、情報集めの非常に得意なクチの悪いオッチャンだが、iPhoneに熱中してTwitterしまくるくらい茶目っ気さもある。もともと冷静な人物ではあり、感情むき出しに熱くなるタイプでもないのだが、ライアン・ブラウン事件についてはよほど「心が動かされた」というか「トサカにきた」らしく、そのローゼンタールが珍しく、やけに感情的になっている。
彼の記事で、ラファエル・パルメイロなどのようなステロイダーがいまMLB関係者の間でどういう厳しい評価のもとにあるのか、またステロイド問題についてどれくらいアメリカのメディアが絶望視しているかなど、いろいろMLBのステロイド事情の現状がわかる部分があるので、資料的に訳出しておく。


Even if NL MVP Ryan Braun is clean of PEDs, MLB never will be - MLB News | FOX Sports on MSN

A bombshell revelation about a major leaguer testing positive for performance-enhancing drugs. The player disputing the result through arbitration. A spokesperson for the player saying, “There was absolutely no intentional violation of the (drug-testing) program.”
MLBのPED(=performance-enhancing drug 筋力増強剤やヒト成長ホルモンなど競技能力向上に直接効果のあるドーピング薬物)テストの陽性で、ビックリするような事件が発覚した。プレーヤー側は代理人を通じて検査結果に異議をとなえている。選手のスポークスマンはこう言う。「故意のドーピング検査違反は、絶対にしてない」

As if an accidental violation is OK?
じゃあなにか。「意図的でない違反」ならオーケーだ、とでも言いたいのか?

(一部省略)

No, the real issue here is the same as before.
問題は今も昔も、何も変わりがない。

The sport is not clean. It never will be clean.
スポーツはクリーンじゃない。けしてクリーンにならない。

And while baseball continues to make tremendous advances in deterrence, adding HGH testing in its new collective-bargaining agreement, no one should ever be under the illusion that everything is fine and dandy.
野球界は、HGH(ヒト成長ホルモン)のテストを労使協約に盛り込むなど、ドーピング抑止のための大変な前進を見せ続けているにしても、これでなにもかもが正常になる、きちんとなるなどと、幻想を抱くべきじゃない。

I was angry when I heard the news about Braun on Saturday night. I’m sure a lot of fans were angry, too. On the day that Albert Pujols received a hero’s welcome in Anaheim, in an autumn when baseball is basking in unprecedented labor peace, steroid news again hijacked the sport.
僕は土曜の夜、ブラウンのニュースを聞いて、アタマにきた。たぶん、たくさんのファンもアタマにきてると確信している。(エンゼルス移籍が決まった)アルバート・プーホールズがヒーローとしてアナハイムに迎えられた、まさにその日だというのに、野球というスポーツが、かつてない安息を享受できた秋の日だというのに、ステロイドのニュースがスポーツをハイジャックしたのだ。(アタマにこないわけがない)

We all should just get used to it: The issue is never going away. At minimum, steroid talk will surface every year during the Hall of Fame election. And rest assured, major stars will continue to test positive on occasion, renewing our doubts and reminding all of us that you can’t always trust what you see.
我々はもうみんな、慣れてしまうべきだけなんだ。問題は無くなりはしない。ステロイド問題の議論は、すくなくともMLBの野球殿堂入りの選挙期間中くらいは浮上するかもしれないが、それ以外の時期には鎮静化してしまう。メジャーのスターたちは折にふれて検査をし、時々陽性のテスト結果が出ては、見る者すべてに、自分の見たモノすべてを必ずしも信頼してはいけないんだという猜疑心を思い出させ続ける。ただ、それだけなのだ。

(中略)

The problem for Braun, the problem for the sport, is that the stain will be difficult to erase, c.
ブラウンの問題は、スポーツ全体の問題でもある。消去不可能とまでは言えないにしても、消し去るのが非常に難しい「汚れ」みたいなものだ。

Rafael Palmeiro to this day insists his positive test in 2005 was the result of a tainted vitamin injection. Few want to hear it; Palmeiro’s reputation is in ruins. And really, no matter what Braun did ― or didn’t ― do, it is fair to ask, right now, how he even put himself in this position.
ラファエル・パルメイロは今日に至るまで、「2005年の陽性反応は汚染されたビタミン摂取の結果だった」と主張している。彼の話(=パルメイロの言い訳)に耳を傾ける人など、ほとんどいない。パルメイロの名声は崩壊している。実際にブラウンが何かしたにせよ、何もしてないにせよ、フェアなやりかたは、今すぐ彼に「君さ、この件について、どういう立場をとるんだ?」と、尋ねてみることだ。

As Selig has noted, Braun is part of a generation of players that began getting tested in the minors. Those players are familiar with the process, understand that they must consult with team trainers and doctors if they have any question about what they are putting into their bodies.
既に(MLBコミッショナーの)バド・セリグがコメントしているように、ブラウンは、マイナーでドーピングテストが始まった若い世代に属しているから、ドーピング検査のプロセスには詳しい。自分が摂取しているものについて何か疑問でもあれば、チームのトレーナーとか医師に相談すべき立場にあることを理解している。

It’s pretty simple; if you steer clear of PEDs and any substances that might be confused with PEDs, you can’t test positive.
話は非常に単純なのだ。PED、およびPEDと混同されるかもしれないありとあらゆる物質を避けてさえいれば、陽性のテスト結果が出ることなんて、ありえないんだ。

Drug-testing experts frequently say that only idiots test positive. And while Braun might present a perfectly valid explanation for his result, not everyone will be swayed. People are cynical now, even in the supposed “post-steroid” era.
ドーピング検査の専門家がよく言うのは、愚か者だけが陽性反応を示す、ということ。ブラウンは自分の検査結果について、何か完璧で適切な説明をすることができるかもしれないが、全ての人々の心を、その説明で動かせるとは限らない。たとえ今が「ポスト・ステロイド時代」であろうと、(かつてボンズの時代に嫌というほどステロイド事件を経験した)人々の心はいまだに懐疑的だからだ。

That era isn’t real, was never real and is never going to be real. I’m sorry, but nothing should surprise us anymore, not if we’re realistic in what we expect out of players, not if we’ve been paying attention all these years.
ポスト・ステロイド時代は、現在のところ実現していないし、過去においても実現してなかったし、将来も実現しないだろう。申し訳ない言い方だが、たとえ選手たちに何かリアリスティックに期待しているとしても、数年にもわたって彼らに関心を向け続けてきたとしても、もう私たちは何があろうと、もう驚きゃしないのだ。


Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
記事検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month