December 23, 2011
「率と期待値を足し算しているOPSのデタラメさ」を書いてきたこのシリーズ記事で何度も強調しているように、OPSには何重にも「ホームランバッターを優遇する、数字の水増しカラクリ」が仕込まれている。
そのデタラメなカラクリは、ひとつだけではなくて、むしろOPSの計算プロセス全般に何重にも折り重なって仕込まれた悪質な仕組みである。この特定打者にのみ多重加算を行なう悪質なカラクリの大半は、通称「長打率」などと、実態にまるでそぐわない名称で通称されているSLGに仕込まれている。
SLGによって算出される数字は、何度も書いているように、単なる「打数あたりの塁打期待値」に過ぎない。また、ましてやSLG、ひいてはOPSは、「得点期待値」ではない。
それは、単なる塁打期待値に過ぎないSLGでは、ホームランを塁打数4と計算することから単純にわかる。SLGではホームランにシングルヒットの4倍もの評価を与えるわけだが、得点期待値におけるホームランの評価は、もっとずっと低く、例えば「wOBAにおけるホームランの得点期待値は、シングルヒットの約2倍程度」に過ぎない。得点期待値の計算においては「ホームランにシングルヒットの4倍もの数値を与える」などという馬鹿げた行為は行われていない。
以下の記事(3)では、四球の影響をこそこそと多重加算しているデタラメ指標OPSのデタラメさを、小学生でも理解できる簡単な計算によって明らかにして、「OPSは、その打者の得点力を表す」などというデタラメがウソ八百であることを示す。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月20日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (1)「OPSのデタラメさ」の基本を理解する
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月21日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (2)小学生レベルの算数で証明する「OPS信仰のデタラメさ」
SLGについての日本のWikiに、こんな記述がある。
誰が書いたのか知らないが、アホらしいにも程がある(笑)
「SLGは四死球による出塁を反映しない」だと?(笑)
打席数からではなく、「打数」を分母にした割り算で計算されるSLGが、「打数」を思い切り左右する「四球」の影響を受けないわけがあるかっ(笑)馬鹿なことを言うな。
以下、そのことを小学生レベルの簡単な計算でわからせて差し上げよう。
いま、仮に次のようなバッターがいるとして、四球数ゼロ、60個、120個の3ケースで、それぞれのOPSを計算してみる、とする。
一目瞭然だ。
赤色で示したSLGの増加傾向を眺めればわかるように、四球増加によるOPS加算は、OBPについて行われるだけでなく、「打数の減少」を介して、SLGに「二重に加算」されている。
(それにしても、たとえホームランを30本打っているバッターですら、もし四球が無いとなると、こういう、しみったれたOPS数値が出る(笑) これは、「OPSはバッターの長打力を表す」とかいうOPS信仰、OPS礼賛が、いかにウソっぱちであり、また、いかにOPSが「四球によって、ホームランバッターのOPS数値だけを水増しして加算するデタラメ指標」に過ぎないか、よくわかる。
「四球のまったく無いホームランバッター」のOPSが低いのは、この四球増加によるOPSの二重加算、水増し加算の恩恵を受けないからであり、ホームランだけでは、実は、OPS数値はたいして伸びない、のである。
現実の野球において、ホームランバッターのOPS数値を大きく伸ばしているのは、実はホームランによる塁打数の増加そのものよりも、この「二重加算」「水増し加算」される「四球数」だったりする。このことは次の記事で書く)
ほんと、OPSは呆れたデタラメ指標だ。
上の計算において青色で示したOBP(出塁率)は、四球がゼロ、60、120と増加していくにつれて、0.250、0.350、0.450と、「均等に」増加する。
それに対して、赤色で示したSLGは、まったく違う。四球数がゼロから60になるときには 0.444−0.400=0.044の増加であるのに対して、四球数が60から120になるとき 0.500−0.444=0.056と、「増加量自体が加速度的に増えて」いく。
これが「OPSの算出においては、四球が増えれば増えるほど(=打席が減れば減るほど)、SLGへの二重加算が加速されていく」ということの意味のひとつである。
話はまだまだ終わらない。
同じ計算を、さきほどはホームラン30本のホームランバッターで計算したが、違うタイプ、例えば総ヒット数は同じでホームラン10本のバッターについて計算してみると、違う結果が得られ、それによってさらに興味深い「OPSのデタラメぶり」がわかる。
こんどの計算では、ホームラン数を「10本」に減らしてみる。このバッターBでも、四球数ゼロ、60個、120個の、3つのケースで、それぞれのOPSを計算してみる。
ホームランバッターAと、アベレージヒッターBの「四球増加にともなうSLGへの加算の大差」を観察すると、このOPSというデタラメな指標がいかに「打者を歪んだ視点で評価しているか」が非常によくわかる。
2つの異なるタイプのバッターの比較をしたことで、SLG数値の二重加算パターンが、バッターのホームラン数によって、これほどまで違っていることの意味は、誰でもわかるだろう。
四球数増加に応じてOBPとSLGが同時に加算されるのが「四球増加にまつわるOPSの水増しのカラクリ」のひとつなわけだが、この「二重加算」は「あらゆる打撃成績のバッターに均等に数値が加算されるようにできているわけではない」のだ。
(もちろん、こうしたデタラメな現象は、ホームランバッターとアベレージヒッターの間にだけ起きるわけではなく、ホームランを40本打てるバッターと、20本しか打てないバッターの間でも、同じように起きる。
だが、このホームランバッター優遇水増し加算の恩恵を最も大きく受けるのは、ホームランが40本以上打てて3冠王にも手が届くような「打率の高い、ホンモノの才能に満ち溢れた、ホンモノのスラッガー」ではなく、ホームラン10数本から20数本の低打率のハンパなスラッガーたちであることは明らか。このことは次の記事で書く)
もう一度まとめなおしておこう。
こうしたデタラメなことが起きるのは、もちろん、SLG算出のための割り算における分子(=総塁打数)が大きいバッターほど、分母(=打数)の減少による恩恵を多く受けるからだ。
ちなみに、「打数が極端に少ないケース」において、このOPSのデタラメなカラクリがどう働くかを、少しだけ示しておこう。
例えば、1試合4打数におけるOPSの数値変化を、手計算してみればいい。
こんな、出来損ないのデタラメな数字を、これまで「指標」と呼んできたのだ。呆れるほどの酷さである。四球1個の増加によって引き起こされる数値の加算が、「二重に加算され」、なおかつそれで終わらず、「バッターのホームラン数によって、著しく不均等に手心が加えられ、水増しされている」ような指標に、何の意味もない。
(こうしたOPSのデタラメさを修正するために、あまりにも過大すぎるSLGの数値を、あらかじめ整数で割り算して「小さく」しておいてからOBPに加えるOPSの改良指標がある。(たとえば、SLGを整数3で割ってOBPに加えるのがNOI(New Offensive Index)
もちろん多重加算の仕組みをよく考えればわかるように、そんな場当たり的な修正を試みたところで、そんな付け焼刃の計算ではSLGへの多重加算のデタラメさはまったく修正できていないのだから、何の根本的な解決にもならないことは、言うまでもない)
つまるところ、OPSというデタラメな指標は、実は、バッターのタイプ、特にホームラン数の違いによって、バッターの評価基準がバラバラになっている。だから、タイプの違うバッターを相互に比較する能力など、OPSにはハナから無かったのである。
ホームラン数の大きくかけ離れたバッター同士、あるいは、打数の大きく異なるバッター同士について比較しようという場合、バッターによって評価基準がズレるOPSを評価基準に使うことに、まるでなんの意味もない。
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(続く)
そのデタラメなカラクリは、ひとつだけではなくて、むしろOPSの計算プロセス全般に何重にも折り重なって仕込まれた悪質な仕組みである。この特定打者にのみ多重加算を行なう悪質なカラクリの大半は、通称「長打率」などと、実態にまるでそぐわない名称で通称されているSLGに仕込まれている。
SLGによって算出される数字は、何度も書いているように、単なる「打数あたりの塁打期待値」に過ぎない。また、ましてやSLG、ひいてはOPSは、「得点期待値」ではない。
それは、単なる塁打期待値に過ぎないSLGでは、ホームランを塁打数4と計算することから単純にわかる。SLGではホームランにシングルヒットの4倍もの評価を与えるわけだが、得点期待値におけるホームランの評価は、もっとずっと低く、例えば「wOBAにおけるホームランの得点期待値は、シングルヒットの約2倍程度」に過ぎない。得点期待値の計算においては「ホームランにシングルヒットの4倍もの数値を与える」などという馬鹿げた行為は行われていない。
以下の記事(3)では、四球の影響をこそこそと多重加算しているデタラメ指標OPSのデタラメさを、小学生でも理解できる簡単な計算によって明らかにして、「OPSは、その打者の得点力を表す」などというデタラメがウソ八百であることを示す。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月20日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (1)「OPSのデタラメさ」の基本を理解する
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年12月21日、率と期待値を足し算している「OPSのデタラメさ」 (2)小学生レベルの算数で証明する「OPS信仰のデタラメさ」
SLGについての日本のWikiに、こんな記述がある。
長打率は四死球による出塁数を反映しないという欠陥があり、打者の総合的な打撃評価には必ずしも当たらないとする主張もある。
長打率 - Wikipedia
誰が書いたのか知らないが、アホらしいにも程がある(笑)
「SLGは四死球による出塁を反映しない」だと?(笑)
打席数からではなく、「打数」を分母にした割り算で計算されるSLGが、「打数」を思い切り左右する「四球」の影響を受けないわけがあるかっ(笑)馬鹿なことを言うな。
以下、そのことを小学生レベルの簡単な計算でわからせて差し上げよう。
いま、仮に次のようなバッターがいるとして、四球数ゼロ、60個、120個の3ケースで、それぞれのOPSを計算してみる、とする。
ホームランバッターAのケース
打席数600 ヒット総数150本
(うちホームラは30本。余計な要素を省くため、残り120本のヒットは全てシングルと仮定。また、犠打、犠飛、打撃妨害、走塁妨害は「ゼロ」と仮定)
四球ゼロの場合
(四死球、犠打、犠飛、打撃妨害、走塁妨害が無いため、600打席全てが打数になる)
OPS=OBP+SLG
=(150÷600)+(240÷600)
=0.250+0.400
=0.650
四球60個の場合
(四球増加により出塁数は60増える一方で、打数は60減少し、540になる)
OPS=OBP+SLG
=(210÷600)+(240÷540)
=0.350+0.444
=0.794
四球120個の場合
(四球増加により出塁数は120増える一方、打数は120減少し、480になる)
OPS=OBP+SLG
=(270÷600)+(240÷480)
=0.450+0.500
=0.950
一目瞭然だ。
赤色で示したSLGの増加傾向を眺めればわかるように、四球増加によるOPS加算は、OBPについて行われるだけでなく、「打数の減少」を介して、SLGに「二重に加算」されている。
(それにしても、たとえホームランを30本打っているバッターですら、もし四球が無いとなると、こういう、しみったれたOPS数値が出る(笑) これは、「OPSはバッターの長打力を表す」とかいうOPS信仰、OPS礼賛が、いかにウソっぱちであり、また、いかにOPSが「四球によって、ホームランバッターのOPS数値だけを水増しして加算するデタラメ指標」に過ぎないか、よくわかる。
「四球のまったく無いホームランバッター」のOPSが低いのは、この四球増加によるOPSの二重加算、水増し加算の恩恵を受けないからであり、ホームランだけでは、実は、OPS数値はたいして伸びない、のである。
現実の野球において、ホームランバッターのOPS数値を大きく伸ばしているのは、実はホームランによる塁打数の増加そのものよりも、この「二重加算」「水増し加算」される「四球数」だったりする。このことは次の記事で書く)
1)四球増加によるOPSへの加算は、OBPだけでなく、打数の減少を経由して、SLGにも「二重加算」されている。
2)この「四球増加によるOBP・SLGへの二重加算」は、四球1個あたりに均等に加算されているのではない。また、あらゆるバッターに均等に加算されているのでもない。
3)上の例でもわかるように、「四球数が増える(=打数が減る)」につれ、「四球増加による二重加算」は、加算される数値が加速度的に増やされていく。つまり、「四球が増えれば増えるほど、加算されるSLGが大きくなって、OPSが増加しやすく」なっていく。
ほんと、OPSは呆れたデタラメ指標だ。
上の計算において青色で示したOBP(出塁率)は、四球がゼロ、60、120と増加していくにつれて、0.250、0.350、0.450と、「均等に」増加する。
それに対して、赤色で示したSLGは、まったく違う。四球数がゼロから60になるときには 0.444−0.400=0.044の増加であるのに対して、四球数が60から120になるとき 0.500−0.444=0.056と、「増加量自体が加速度的に増えて」いく。
これが「OPSの算出においては、四球が増えれば増えるほど(=打席が減れば減るほど)、SLGへの二重加算が加速されていく」ということの意味のひとつである。
話はまだまだ終わらない。
同じ計算を、さきほどはホームラン30本のホームランバッターで計算したが、違うタイプ、例えば総ヒット数は同じでホームラン10本のバッターについて計算してみると、違う結果が得られ、それによってさらに興味深い「OPSのデタラメぶり」がわかる。
こんどの計算では、ホームラン数を「10本」に減らしてみる。このバッターBでも、四球数ゼロ、60個、120個の、3つのケースで、それぞれのOPSを計算してみる。
アベレージヒッターBのケース
打席数600 ヒット総数150本
(うちホームランは、こんどは30本ではなく、「10本」とする。余計な要素を省くため、残りのヒット140本は、全てシングルヒットと仮定。また、犠打、犠飛、打撃妨害、走塁妨害は「ゼロ」と仮定)
四球ゼロの場合
(四死球、犠打、犠飛、打撃妨害、走塁妨害が無いため、600打席全てが打数になる)
OPS=OBP+SLG
=(150÷600)+(180÷600)
=0.250+0.300
=0.550
四球60個の場合
(四球増加により出塁数は60増える一方、打数は60減少し、540になる)
OPS=OBP+SLG
=(210÷600)+(180÷540)
=0.350+0.333
=0.683
四球120個の場合
(四球増加により出塁数は120増える一方、打数は120減少し、480になる)
OPS=OBP+SLG
=(270÷600)+(180÷480)
=0.450+0.375
=0.825
ホームランバッターAと、アベレージヒッターBの「四球増加にともなうSLGへの加算の大差」を観察すると、このOPSというデタラメな指標がいかに「打者を歪んだ視点で評価しているか」が非常によくわかる。
ホームランバッターA
四球数ゼロ 0.400
60個 0.444(四球ゼロのときより+0.044増加)
120個 0.500(四球60個のときより+0.056増加)
アベレージヒッターB
四球数ゼロ 0.300
60個 0.333(ゼロのときより+0.033増加)
120個 0.375(60個のときより+0.042増加)
打者Aと打者Bにおける「SLG二重加算量の格差」
ゼロ→60 (打者A)0.044−(打者B)0.033=0.011
60→120 0.056−0.042=0.014
SLGの数値における「0.011の差」というのは、この仮計算の打数・ヒット数の設定においては、およそ「シングルヒット約7本分程度」に相当する。いいかえると、打者Aと打者Bがゼロから60個に四球を増やしたとき、OPSというデタラメ指標は、勝手に「打者Aにだけ」シングルヒット7本分にも及ぶアドバンテージを与えているのである。
つまり、打者Aと打者Bは「同数の60四球を増加させた」にもかかわらず、打者Aは打者Bに対し「まったく何もしてないのに、シングルヒット7本分くらいのアドバンテージをもらっている」のである。逆に打者Bは、同じ数の四球を増加させたにもかかわらず、さらにシングルヒット7本程度を加えないとSLGが追いつけない、わけのわからないハンデを押し付けられている、ことになる。
2つの異なるタイプのバッターの比較をしたことで、SLG数値の二重加算パターンが、バッターのホームラン数によって、これほどまで違っていることの意味は、誰でもわかるだろう。
四球数増加に応じてOBPとSLGが同時に加算されるのが「四球増加にまつわるOPSの水増しのカラクリ」のひとつなわけだが、この「二重加算」は「あらゆる打撃成績のバッターに均等に数値が加算されるようにできているわけではない」のだ。
(もちろん、こうしたデタラメな現象は、ホームランバッターとアベレージヒッターの間にだけ起きるわけではなく、ホームランを40本打てるバッターと、20本しか打てないバッターの間でも、同じように起きる。
だが、このホームランバッター優遇水増し加算の恩恵を最も大きく受けるのは、ホームランが40本以上打てて3冠王にも手が届くような「打率の高い、ホンモノの才能に満ち溢れた、ホンモノのスラッガー」ではなく、ホームラン10数本から20数本の低打率のハンパなスラッガーたちであることは明らか。このことは次の記事で書く)
もう一度まとめなおしておこう。
こうしたデタラメなことが起きるのは、もちろん、SLG算出のための割り算における分子(=総塁打数)が大きいバッターほど、分母(=打数)の減少による恩恵を多く受けるからだ。
1)四球が増えれば増えるほど(=SLG算出割り算における「分母」である「打数」が減れば減るほど)、SLGにおける四球の二重加算は加速していく。つまり、四球の多い打者ほど、わずか1つの四球でより多くのSLG数値が水増し加算され、OPSは「みせかけだけの増加」をみせる
2)総塁打数(=SLG算出割り算における「分子」)の多いホームランの多いバッターになればなるほど、SLGにおける四球の二重加算は加速していく。つまり、ホームランの多い打者ほど、わずか1つの四球でより多くのSLG数値が水増し加算されるようになり、OPSは「みせかけだけの増加」をみせる
3)こうした「二重加算」、「水増し加算」のカラクリによって、「ホームランバッター」「四球の多いバッター」「打数の少ないバッター」のOPSは、より有利な条件で「四球増加による、OPSの加速度的な加算」の恩恵を受ける
ちなみに、「打数が極端に少ないケース」において、このOPSのデタラメなカラクリがどう働くかを、少しだけ示しておこう。
例えば、1試合4打数におけるOPSの数値変化を、手計算してみればいい。
打数が極端に少ないケースにおけるOPSのカラクリ
仮に、4打数1ホームランの打者Aと、4打数1安打でシングルヒットの打者Bがいたとして、もし、凡退した3打数のうち、ひとつだけ四球を選んだ、としたら、OPSがどう変わるか、計算してみる。
打者Aにおいて、最初「塁打数4÷打数4」だったSLGの計算は、四球を選ぶと「塁打数4÷打数3」に変わるわけだが、このときの分母の数値の変化(=打数減少によるSLGの水増し)による打者AのOPSへの加算数値は、打者Bにおいて、4打数1安打が3打数1安打1四球になることによるOPSへの加算数値より、「はるかに大きい」のである。
打者Aの「四球によるSLG加算」
「総塁打数4」のまま、「打数」だけが4から3に減少
(4塁打÷3打数)ー(4塁打÷4打数)=0.333
打者Bの「四球によるSLG加算」
「総塁打数1」のまま、「打数」だけが4から3に減少
(1塁打÷3打数)ー(1塁打÷4打数)=0.083
打者Aが、わずかひとつの四球を選ぶことで加算されるSLG、0.333は、同じように四球をひとつ増やしただけなのにもかかわらず、打者Bに加算されるSLG、0.083の約4倍も水増しして加算される。
こんな馬鹿げたことが起きるのも、もちろん、分母である打数があまりに小さいと、計算結果に打数減少の影響があまりにも過大に表れるからだ。
こんな、出来損ないのデタラメな数字を、これまで「指標」と呼んできたのだ。呆れるほどの酷さである。四球1個の増加によって引き起こされる数値の加算が、「二重に加算され」、なおかつそれで終わらず、「バッターのホームラン数によって、著しく不均等に手心が加えられ、水増しされている」ような指標に、何の意味もない。
(こうしたOPSのデタラメさを修正するために、あまりにも過大すぎるSLGの数値を、あらかじめ整数で割り算して「小さく」しておいてからOBPに加えるOPSの改良指標がある。(たとえば、SLGを整数3で割ってOBPに加えるのがNOI(New Offensive Index)
もちろん多重加算の仕組みをよく考えればわかるように、そんな場当たり的な修正を試みたところで、そんな付け焼刃の計算ではSLGへの多重加算のデタラメさはまったく修正できていないのだから、何の根本的な解決にもならないことは、言うまでもない)
つまるところ、OPSというデタラメな指標は、実は、バッターのタイプ、特にホームラン数の違いによって、バッターの評価基準がバラバラになっている。だから、タイプの違うバッターを相互に比較する能力など、OPSにはハナから無かったのである。
ホームラン数の大きくかけ離れたバッター同士、あるいは、打数の大きく異なるバッター同士について比較しようという場合、バッターによって評価基準がズレるOPSを評価基準に使うことに、まるでなんの意味もない。
Copyright © damejima. All Rights Reserved.
(続く)