December 21, 2011
以下のESPN Bostonの記事、最近書き続けている「数字野球批判」にもちょっと関係するし、日本の野球には存在しないタイプのエピソードだと思うので、後々のためにメモを残しておこう。
Source: Theo can't hire from Sox for 3 years - Boston Red Sox Blog - ESPN Boston
知ってのとおり、2011年シーズンの最後の最後に悲惨な3位陥落劇を演じたボストンを「クビになった」というか「抜け目なくカブスに脱出した」テオ・エプスタインだが、5年契約でカブスのプレジデント、つまり「GMより偉い立場」に抜擢された。
この、日本ではほとんど例のない「GMの他チーム移籍」については、どうもボストンとカブスの間で、「ボストン側が、FA選手獲得の場合と同じように、エプスタインの人的補償として、カブスからプロスペクトを獲得する」という合意が成立していたらしい。
この「ボストンのGMとプロスペクトの交換」についてESPN Bostonのローカル記事は、making a killing、「ボロ儲け」と表現して、不快感を露わにしている。
だが、この取引、「ボストン側だけが、ボロ儲けできる仕組み」だったわけではなくて、テオ・エプスタイン側もボストンから「自分の息のかかったスタッフ」をカブスにさらっていく合意をあらかじめ取り付けているという、ある種の「バーター取引」になっている。
つまり、要は「テオ・エプスタインのカブス移籍」には、もともとある種の「談合の空気」があったのである。
テオ・エプスタインは、カブス移籍にあたって、緊密な連絡をとりあっていた他チーム(レッドソックス、パドレス)の親しいGMやスタッフを、自分のカブス移籍にあわせて次々に引き抜いていった。
例えば、パドレスからは、GMのジェド・ホイヤーを引き抜いてカブスのGMに就任させたばかりか、GM補佐のジェイソン・マクロードまで引き抜いた。(この引き抜きがご破算になるかどうかまでは、上の記事ではわからない)
またボストンからは、エリア・スカウトを務めていたMatt Doreyをカブスに引き抜いて、national cross-checker(=「分析責任者」とでも訳せばいいか)に抜擢しようとした。(この引き抜きはセリグの「待った」によってご破算になる)
加えて、ボストンの後任GMに決まったベン・チェリントンは、もともとボストンのGM補佐としてテオ・エプスタインの腹心の部下だった人物であり、また、なんとパドレスの後任GMのジョシュ・バーンズも、かつてテオ・エプスタインの部下だった経歴をもつ。
こうした、レッドソックス、パドレス、カブスの3チームをまたいで、ある種の「セイバーメトリクス関連の人物による、談合的、馴れ合い的、人材のやりとり」が生まれつつある空気は、MLBのチーム同士の健全な独立性を著しく損なう行為であり、ブログ主も常に不快に思っていた。(それは、シアトルでいうなら、ジャック・ズレンシックが、元いたミルウォーキーと当時の人脈から、まるで廃品回収業者のように、いらなくなった選手ばかりをシアトルに回収して貯め込んでいく背任行為に似ている)
しかし、新天地カブスに、息のかかった一味(いちみ)を集合させようともくろんだテオ・エプスタインと、エプスタインの談合的人事の流れに乗じてカブスからプロスペクトをタダでガメようとしたボストンとの間で合意されていた「談合的馴れ合い人事」は、MLBコミッショナーのバド・セリグによって「拒絶された」。それが上のESPNの記事の主旨だ。
結果、ボストンは「エプスタインのカブス移籍に関して、一切の人的補償を受けられない」ことになった。(ブログ注:記事に明確には書かれていないが、今後MLBで似た事案が発生すれば、同じ判断が下されることになるだろう)
また、エプスタイン側に対しては、「今後3年間に渡り、ボストンから一切の人材獲得を禁止する」という判断が下された。
正直、ザマミロ、である。
そんなゴタゴタをボストンとテオ・エプスタインが引きずっている間に、ボルチモアの編成責任者に就任した元ボストンGMのダン・デュケットは、ボストンのtalent evaluator(これもまぁ分析の専門家のひとつだが、日本語にしにくい)のDanny Haasを、ボルチモアに引き抜いた。ダン・デュケット、抜け目ない男である(笑)
Danny Haasは、デュケットがボストンGMだった時代の1997年ドラフトで18巡目で指名してボストンに入団させた選手だが、Dannyの父親、Eddie Haasは、かつてアトランタ・ブレーブスのファームの監督を長くやった人物だが、ダン・デュケットがボストンGM時代に最も信頼していたtalent evaluatorだったらしく、親子2代でのスタッフ起用になる。
こうした思わぬ人材流出は、バド・セリグに思惑を封じられたボストンにとっては、もちろん痛手。そこも、ダン・デュケットにしてみれば、してやったり、だろう。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年11月8日、ボストンの2004年ワールドシリーズ制覇におけるダン・デュケットの業績を振り返りつつ、テオ・エプスタイン、ビル・ジェームス、マネーボールの「過大評価」を下方修正する。
Source: Theo can't hire from Sox for 3 years - Boston Red Sox Blog - ESPN Boston
知ってのとおり、2011年シーズンの最後の最後に悲惨な3位陥落劇を演じたボストンを「クビになった」というか「抜け目なくカブスに脱出した」テオ・エプスタインだが、5年契約でカブスのプレジデント、つまり「GMより偉い立場」に抜擢された。
この、日本ではほとんど例のない「GMの他チーム移籍」については、どうもボストンとカブスの間で、「ボストン側が、FA選手獲得の場合と同じように、エプスタインの人的補償として、カブスからプロスペクトを獲得する」という合意が成立していたらしい。
この「ボストンのGMとプロスペクトの交換」についてESPN Bostonのローカル記事は、making a killing、「ボロ儲け」と表現して、不快感を露わにしている。
だが、この取引、「ボストン側だけが、ボロ儲けできる仕組み」だったわけではなくて、テオ・エプスタイン側もボストンから「自分の息のかかったスタッフ」をカブスにさらっていく合意をあらかじめ取り付けているという、ある種の「バーター取引」になっている。
つまり、要は「テオ・エプスタインのカブス移籍」には、もともとある種の「談合の空気」があったのである。
テオ・エプスタインは、カブス移籍にあたって、緊密な連絡をとりあっていた他チーム(レッドソックス、パドレス)の親しいGMやスタッフを、自分のカブス移籍にあわせて次々に引き抜いていった。
例えば、パドレスからは、GMのジェド・ホイヤーを引き抜いてカブスのGMに就任させたばかりか、GM補佐のジェイソン・マクロードまで引き抜いた。(この引き抜きがご破算になるかどうかまでは、上の記事ではわからない)
またボストンからは、エリア・スカウトを務めていたMatt Doreyをカブスに引き抜いて、national cross-checker(=「分析責任者」とでも訳せばいいか)に抜擢しようとした。(この引き抜きはセリグの「待った」によってご破算になる)
加えて、ボストンの後任GMに決まったベン・チェリントンは、もともとボストンのGM補佐としてテオ・エプスタインの腹心の部下だった人物であり、また、なんとパドレスの後任GMのジョシュ・バーンズも、かつてテオ・エプスタインの部下だった経歴をもつ。
こうした、レッドソックス、パドレス、カブスの3チームをまたいで、ある種の「セイバーメトリクス関連の人物による、談合的、馴れ合い的、人材のやりとり」が生まれつつある空気は、MLBのチーム同士の健全な独立性を著しく損なう行為であり、ブログ主も常に不快に思っていた。(それは、シアトルでいうなら、ジャック・ズレンシックが、元いたミルウォーキーと当時の人脈から、まるで廃品回収業者のように、いらなくなった選手ばかりをシアトルに回収して貯め込んでいく背任行為に似ている)
しかし、新天地カブスに、息のかかった一味(いちみ)を集合させようともくろんだテオ・エプスタインと、エプスタインの談合的人事の流れに乗じてカブスからプロスペクトをタダでガメようとしたボストンとの間で合意されていた「談合的馴れ合い人事」は、MLBコミッショナーのバド・セリグによって「拒絶された」。それが上のESPNの記事の主旨だ。
結果、ボストンは「エプスタインのカブス移籍に関して、一切の人的補償を受けられない」ことになった。(ブログ注:記事に明確には書かれていないが、今後MLBで似た事案が発生すれば、同じ判断が下されることになるだろう)
また、エプスタイン側に対しては、「今後3年間に渡り、ボストンから一切の人材獲得を禁止する」という判断が下された。
Epstein, who this week hired an area scout from the Red Sox, Matt Dorey, and promoted him to national cross-checker, will be prohibited from adding anyone else from the Red Sox for a period of three years
正直、ザマミロ、である。
そんなゴタゴタをボストンとテオ・エプスタインが引きずっている間に、ボルチモアの編成責任者に就任した元ボストンGMのダン・デュケットは、ボストンのtalent evaluator(これもまぁ分析の専門家のひとつだが、日本語にしにくい)のDanny Haasを、ボルチモアに引き抜いた。ダン・デュケット、抜け目ない男である(笑)
Danny Haasは、デュケットがボストンGMだった時代の1997年ドラフトで18巡目で指名してボストンに入団させた選手だが、Dannyの父親、Eddie Haasは、かつてアトランタ・ブレーブスのファームの監督を長くやった人物だが、ダン・デュケットがボストンGM時代に最も信頼していたtalent evaluatorだったらしく、親子2代でのスタッフ起用になる。
こうした思わぬ人材流出は、バド・セリグに思惑を封じられたボストンにとっては、もちろん痛手。そこも、ダン・デュケットにしてみれば、してやったり、だろう。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年11月8日、ボストンの2004年ワールドシリーズ制覇におけるダン・デュケットの業績を振り返りつつ、テオ・エプスタイン、ビル・ジェームス、マネーボールの「過大評価」を下方修正する。