April 24, 2013
フロリダでのタンパベイ第2戦、2-2で迎えた同点の9回表、2死満塁のチャンスに、イチローが、タンパベイの右腕クローザー、フェルナンド・ロドニーの初球、アウトコースの99マイルの2シームを、センター前にライナーで弾き返し、決勝点となる2点タイムリー。
今シーズン、ヤンキースは3連敗を一度も喫していないわけだが、このゲームを前に2連敗してしまい、このゲームも、1-2と、1点リードされて、タンパベイ先発デビッド・プライスが8回表になってもまだ投げているという劣勢にあった。
ちなみに8回表に同点にした場面も、1死ランナー無しからイチローがライト前ヒットで出塁し、次のニックスとのエンドランで、当たりの弱いレフト前ヒットで思い切ってサードに進塁したイチローの好走塁からきている。(ガードナーのクレバーな内野ゴロで生還)
今日の活躍は、イチローの動向にやきもきしているファンの胸をスカッとさせたことだろう。(もちろん、このブログは何も心配してない(笑) たぶんイチローはいま「右足のつきかた」を変えようとフォームをいじっている最中(あるいは不調でフォームがバラついている最中)だろうと思うからだ。数年前なら、スイングを始動するとき、投手にイチローの背番号がハッキリ見えていた。つまり、当時は右足を今よりずっと「クローズ」というか、サード側に向けたまま踏み出していた。今は、昔よりずっと「オープン」というか、セカンド方向に向けて踏み出している。2点タイムリーのシーンで、右足の爪先がマウンド方向を向いているのが、その証拠)
New York Yankees at Tampa Bay Rays - April 23, 2013 | MLB.com Gameday
8回表のヒットは、左腕デビッド・プライスから。左投手からのヒットだから余計に意味がある。
また、9回の2点タイムリーは、ドミニカをWBC初優勝に導いたMLB屈指のクローザーのひとり、フェルナンド・ロドニーの「典型的なクローザー配球」を打ったタイムリーだから、これも価値がある。
クローザーと対戦するイチローが早いカウントから打って出るときは、たいてい相手投手の配球の読みに自信のあるときだ。
いつぞやマリアーノ・リベラから打ったサヨナラ2ランも、「初球」を打った。あのときのリベラの初球カットボールは、2球目に全く同じコースに4シームを投げて、イチローに内野ポップフライでも打たせようとする布石だったはず。
マリアーノ・リベラの場合は、いままで何度も書いたことだが、打者に打球を外野に飛ばされたくないケースで、きわどいコース(例えば左打者のインコース)に、カットボールと4シーム(あるいはその逆、4シーム、カットボールの順に)続けて投げることで、打ち損じを誘ってくる。
参考記事:Damejima's HARDBALL:2011年5月28日、アダム・ケネディのサヨナラタイムリーを生んだマリアーノ・リベラ特有の「リベラ・左打者パターン」配球を読み解きつつ、イチローが初球サヨナラホームランできた理由に至る。
ロドニーは、イチローの前で1死満塁で打席に入ったクリス・スチュアートに、「初球インハイの2シーム」に続けて「同じコースの4シーム」を投げることで、ファーストへの小飛球と言う「満塁のケースでの理想的な凡打のひとつ」を打たせることに成功している。
そもそもクローザーの配球パターンは多くない。
例えばパペルボンやバルベルデ、藤川球児なら、ストレートで追い込んでスプリットか高めの釣り球。リベラならカットボールとストレート。ロドニーなら2シームと4シームだ。
そして、一度打者をうちとることに成功したクローザーは、次打者でも同じ配球を使ってくることも少なくない。
「同じコースに、カットボールのような、ほんの少し変化する速球系と、4シームを続けて投げることで、バッターに『打ち損じ』させる配球」というのは「クローザー特有の典型的な配球パターン」のひとつだが、こうした「クローザー特有の配球パターン」を早いカウントで打ちのめすのは、昔からイチローの得意技だ。
たぶん、イチローは、自分の前に打席に入ったスチュアートにロドニーが投げた球がどれもシュート回転していることを脳裏に焼き付けて打席に入ったことだろう。