May 25, 2013

あるウェブサイトで読んで、いつか何かの形で書こうと思って温めていた言葉がある。いい機会なので、勝手に引用させてもらうことにした。
勝手に引用しておいていうのもなんだが、引用元はあえて迷惑をかけたくないので、URLは晒さないし、言い回しも元の文章とできるだけ変えておくことにする。

アメリカ社会で暮らしてわかったのだが、日本人としては日常茶飯事な行為なだけに、気づかないで、ついついやってしまうことの中に、「アメリカ社会では嫌われる行為」が、いくつかある。
例えば、他人に対して同情すること、他人を凝視すること、他人になにか愚痴を話すこと、そして、意味もなく微笑むこと、などである。どれもこれも、日本ではよくあることだが、アメリカでは「相手を信じてない証拠」ととられてしまう。


いつも、この言葉を思い出すのは、ボコボコに打たれてベンチに帰ってきたときのピッチャー、あるいはチャンスに凡退してベンチに帰ってきたときのバッターをみるときだ。誰も、ケツや肩をたたいたり、声をかけたり、近寄ったり、そういうことをしない。誰も、なんのレスポンスもしないどころか、視線も合わさないのである。

それでいいのだ。
(シンパシーを持たないことと、それを見せないことは意味が違う)


骨折からようやくゲームに復帰したばかりのカーティス・グランダーソンが、またデッドボールを受けて骨折したわけだが、このことに同情を寄せる必要など、まったくない。

彼はそもそも、「ストレートだけを集中的に狙う」という戦略を徹底することで、アベレージ・ヒッターからホームランバッターに転身することに成功し、大型契約も得たわけだが、その戦略が対戦相手にバレて、インコース低めの変化球攻めにあうようになってから、まるで打てなくなり、ついには去年秋の優勝争いの最重要な時期にはスタメンさえ外されて、冴えない優勝を味わうハメになった。
Damejima's HARDBALL:2012年11月2日、2012オクトーバー・ブック 「スカウティング格差」が決め手だった2012ポストシーズン。グランダーソンをホームランバッターに押し上げた「極端なストレート狙い」が通用しなくなった理由。

その、キャリアの岐路にある彼が、今も最も狙いを絞っているであろう「インコースのストレート」を避けていては、仕事にならない。このことは、彼自身、よく理解している、と思う。


だからこそ、彼に同情なんて必要ない。
また、たぶん彼自身も望んでない。

彼が、デッドボールを食らうかもしれないインコースのストレートにさえ果敢に向かっていくことが、今の自分の「仕事」だと考えているとすれば、余計なクチを挟むべきじゃない。彼ならやれるし、やるだろう。だから余計なレスポンスなど、必要ない。


グランダーソンがどうやらライトで続けて起用される、つまり、イチローのベンチスタートが増える、という日に、グランダーソンが骨折したことで、わざわざイチローのところに「彼の骨折をどう思うか」なんて、聞かなければいいことを、わざわざ聞きにいって、さらにはそれを記事として流すなんてことをする日本のスポーツ新聞の記者は、ほんとにどうかしてる。
配慮のないことをするな、馬鹿、と言いたくなる。(もし質問されたイチローが「コメントはありません」と言ったとしても、たぶん日本人記者はありもしない想像をして悪意にとるだけで、同情などせず、そっけなくすることがアメリカっぽいマナーであることに、たぶん気づきもしないだろう)
アメリカ社会で、ポジションを争うライバル選手のデッドボールによる骨折について同情を示すようなコメントをニュースにする必要など、どこにもない。野球チームは老人の仲良しサークルではない。


これからもピッチャーがグランダーソンにインコース攻めをするのはわかりきっている。彼は今後も骨折するだろう。

しかし、それはグランダーソンの仕事の一部だ。
同情なんていらない。


ツイッターで、日本人はもっと強くなるべきだ、みたいなことをつぶやいたばかりだが、アメリカで負けないで、勝つってことを、もう一度きちんとととらえなおしていく、いい機会だと思うから、この記事を書いてみた。みんな、何事にも自信を持って、言いたいことを言って毎日を過ごしてもらいたいものだ。
もしイチローがチーム内での自分の扱いに不満があるなら、それを態度に現したり、トレードを望んだりしてもまったく構わないし、素知らぬ顔でいたければ、それでもいい。どちらでもいい。
だが、必要もないのにへりくだるのだけは、もう止めていいはずだ。


背すじを伸ばせ。そして
誰にはばかることなく、好きなようにバットを振れ。
なにもむつかしくない。





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