January 04, 2014

ミハイル・シューマッハ氏のスキー事故が時速10キロ程度の低速のときに起きたと聞いて、なるほど、と思った。(事故の詳細な経緯は知らないし、かつ興味があるわけでもないが)


よく思いだしてみれば、自分もMTBなどで何度も酷いコケかたを経験してきた中で、最も強烈なコケかたをしたのは、高速走行時ではなく、むしろ、超低速でコケたときだった。
油断してよそ見しながら走っていて突然コケたのだが、もう本当に、受け身どころか、考える間もなく「あっ」と思った瞬間にはもう、顔面がアスファルトに激突していた。

その激突がどれほど強烈だったか、どう表現すると他人様にわかってもらえるだろう。コケた直後に最初にやったことといえば、今でも忘れない。「指で鼻の隆起がまだ残っているかどうか確かめた」ほどなのだ。
どういう角度で自分が落下したのかすら、まるで記憶にない。ただ、「鼻が無くなってしまっているかもしれない」と真剣に思えたほど、顔面がまっすぐ地面に叩きつけられたことだけはわかっていた。
幸いなことに鼻は「ついていた」。顔を血だらけにしたまま、地面にへたりこんでいるしかなかったが、鼻がついていたことに心からホッとしたのを、よく覚えている。


いままでは、なぜあのとき顔面から地面に激突しなければならなかったのか、理解できていなかった。だが、シューマッハ氏のおかげでやっと多少理解できた。

高速走行時にコケたケースを思い返してみると、なんだかんだいっても「カラダ全体で転がる」ことができた。また、カラダ全体で投げ出されて地面に「着地」するまでの間、ほんのわずかな瞬間ではあるが「考える時間」があるから、カラダ全体で転がる事態に備えて多少なりとも「カラダを丸めること」や「アタマを保護するように転がること」ができていた。

つまり、高速走行時にコケるときには「カラダ全体が一気に前方に投げ出される」から、「パワー」や「加速度」がカラダに残されている。だから「高速走行時にコケたときのほうが、かえってカラダ全体で転がってショックを分散することが可能になる」ことがあるわけだ。
(もちろん、だからといって、高速でコケるほうが安全だ、などとは口が裂けてもいえない。高速でコケることそのものは非常に危険だ。だが、運動神経の非常に優れたシューマッハ氏のことだから、もし高速滑走中のゲレンデでの転倒なら、むしろ上手に転がって大事故を避けていたのではないかと思うわけだ)


対して、「超低速の自転車で突然コケること」は
原理がまるで違う。

超低速の自転車で突然コケるケースでは、「足がペダルにのった宙ぶらりんな状態のまま、コケる」ことになる。この、「足のふんばりがまったくきかなくなっている状態で、超低速でコケること」が、非常に危険なのだ。

超低速走行時の足のふんばりがまったくきかない状態で、もし突然自転車が停止する(あるいは足元がすくわれる)と、カラダ全体に十分な加速度が蓄えられてはいないわけだから、アタマの重量が非常に重い人間のカラダは、意識する間もなく頭部から瞬時に地面に叩きつけられてしまいかねない。たぶん、バイク乗りのいう「握りゴケ」にちょっと近い。
高速走行時なら、コケた後、カラダ全体でゴロゴロ転がってショックを分散することが可能だが、超低速だからこそ、それができないのだ。

スケートでいえば、もし速度がついている状態でコケたなら、加速度を利用し、カラダ全体で氷上を滑っていけば、身体に大きな衝撃が加わるのを避けられる可能性がある。
だが低速でコケると、足元をすくわれたカラダは宙を大きく舞って、腰や頭部など、重量のある部分から固い氷の上に落ちてしまう。これは、雪に慣れていない都会人が1年に1度あるかないかの積雪の時に恐々ゆっくり歩いているとき、カラダ全体が宙に舞い上がるようにコケて骨折するのと似ている。スノーボードでの死亡事故も緩斜面での事故が圧倒的に多いと聞く。


いままで、足元のおぼつかないお年寄りが風呂場やキッチンなどでコケて骨折したというニュースを何度も聞いたことがある。性格のよくないブログ主などは、正直に言うと、ゆっくりしか歩けないはずのお年寄りがどうして骨折するほどのコケかたをするのだ、骨が弱ってるのが本当の骨折の原因じゃないのか、などと、いままで無責任に思ってきた。
だが、やっと「超低速で突然コケるがゆえに危険であること」が多少は理解できたように思う。

新春早々、コケるのなんのと、縁起でもない記事を受験生には申し訳ないとは思うが(笑)、今までの自分の無理解を反省するためと、世間に注意を喚起して少しでもお役に立つためだから許してもらいたい(笑)


超低速だから大怪我しないのではない。
「超低速だからこそ、大怪我しやすい」のである。
油断めさるな。心の備えあれば、憂いもなくなる。

2014年が皆様にとって家内安全で無病息災な年であることを、心からお祈り申し上げたい。


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