December 04, 2014
以下の記事では、誰にでもわかる簡単な数字を使って「オークランドGMビリー・ビーンは、なぜジョシュ・ドナルドソンを放出しても構わないと考える」のかについて考える。
単にこのトレードの是非を問うのではなく、もっと深く、「ビリー・ビーンが、彼独自の野球セオリーにおいて重視する野手の打撃能力の具体的な種類とレンジ」、さらには可能なら「彼のオフェンス編成に関する思考パターンと、その問題点」まで指摘してみるつもりだ。
あらかじめ断っておきたいのは、「ブログ主は、ビリー・ビーンの方法論に同調するつもりなど、まったくない」ということだ。彼の『どこを切っても金太郎飴』的なチーム構成のやり方は、心底つまらない。選手は「素人の理科実験の道具」じゃない。
ビリー・ビーンが、自軍でメジャーデビューし(注:ドラフトはCHC)、トップスターのひとりにまで成長したオールスタープレーヤーを唐突にトレードしたことは、メディアのみならずMLBファンの間でも多くの議論を呼び、多くが懐疑的な見方を抱いた。ファンにとって最も理解できないのが、「いったいどんな根拠があって、ビリー・ビーンは期待度の高い29歳の三塁手をトレードしても大丈夫だと思えるのか?」という点だ。
給料が問題?
ドナルドソンの給料が高騰するのには、まだ時間がある。
言い訳にならない。
だが、この際だから「カネの話」は置いといて話を進めてみよう。以下では純粋に「野球選手としての能力比較」から話をする。
ドナルドソンの打撃成績:Josh Donaldson Statistics and History | Baseball-Reference.com
この疑問について即答したのは、Fangraph主宰デイブ・キャメロンくらいなのだが、ブログ主はトレード直後、こう書いておいた。
明らかにドナルドソンとブレット・ロウリーの打撃成績には「大きな差」がある。では、どういう「理屈」で考えると「2人は同じくらいの価値だ」なんてことがいえるのか?
まず、これを見てもらいたい。
上段は、トロントから獲得したブレット・ロウリーの2014年の「リアル打撃スタッツ」(70ゲーム)、下段は、キャリア全体の打撃成績を「162ゲームあたりの数値に補正したシーズン平均値」だ。この「補正」ってやつをよく覚えておいて以下を読んでもらいたい。
Brett Lawrie Statistics and History | Baseball-Reference.com
補正の「前後」をしっかり比べてみてもらいたい。
何がわかるか。ブレット・ロウリーの次のような「潜在能力」だ。
この「脳内補正」が、ドナルドソン放出の謎を解く「鍵」だ。
(注意してもらいたい。ブログ主が「ロウリーの潜在能力」とやらを信じているわけでも、「実在」すると言っているわけでもない)
おいおいっ! ブレット・ロウリーは「故障のない選手」なのか? 長期のスランプを経験するタイプじゃないのか? だが、そういう「正しい疑問」は今は置いといてもらって(笑)、ひたすら読み続けてもらいたい。
ちょっと考えればこのブレット・ロウリーのサンプルから「類推」するだけで、ビリー・ビーンがこれまで選手採用の基準としてどの点を「重視」し、何を「完全に無視」してきたのか、ハッキリとわかるはずだ。(ただし、それは「ブレット・ロウリーには高い潜在能力があるから、能力が既に開花していて給料高騰も予想されるドナルドソンと交換してもいい」なんて単細胞な話でもない。話を続けよう)
ここまできたのだからオークランドの他の野手の打撃成績もみてみる。
たぶん「ビリー・ビーンの謎」の核心に、より迫れるはずだ。
ドナルドソン放出や、ビリー・バトラー、アイク・デービス獲得といった「個別の話」だけで終わってもつまらない。どうせやるなら、「ビーンが選手に求める打撃能力の具体的レンジ」や「彼がプラトーン・システムにこだわる理由」、果ては、彼の思考方法の「根本パターン」までも明らかにすることに挑戦したい。
表は、2014年のオークランド野手の「リアル」打撃スタッツだ。
補正前
チーム内で「特に良い数字」を赤の太字、「悪い数字」を黒の太字で示した。
俊足のトップバッター。
三振と四球と打点とホームランの多いクリンアップ。
守備専門の、打撃のよくない二塁手。
意外性のある打撃をするキャッチャー。
なんともまぁ、平凡きわまりないラインアップだ。
出塁率が特別優れた選手を並べているわけでもない。もしジョシュ・ドナルドソンとブランドン・モスがいなかったら、全く機能しない打線だろう。
当然、この程度の打線では飛びぬけた打撃スコアをたたき出したジョシュ・ドナルドソンが「打線のコア」であって、トレードによる放出などまったく考えられない。
ところが、だ。
補正後の表をみてもらうと、話がまったく違ってくる。
単にこのトレードの是非を問うのではなく、もっと深く、「ビリー・ビーンが、彼独自の野球セオリーにおいて重視する野手の打撃能力の具体的な種類とレンジ」、さらには可能なら「彼のオフェンス編成に関する思考パターンと、その問題点」まで指摘してみるつもりだ。
あらかじめ断っておきたいのは、「ブログ主は、ビリー・ビーンの方法論に同調するつもりなど、まったくない」ということだ。彼の『どこを切っても金太郎飴』的なチーム構成のやり方は、心底つまらない。選手は「素人の理科実験の道具」じゃない。
ビリー・ビーンが、自軍でメジャーデビューし(注:ドラフトはCHC)、トップスターのひとりにまで成長したオールスタープレーヤーを唐突にトレードしたことは、メディアのみならずMLBファンの間でも多くの議論を呼び、多くが懐疑的な見方を抱いた。ファンにとって最も理解できないのが、「いったいどんな根拠があって、ビリー・ビーンは期待度の高い29歳の三塁手をトレードしても大丈夫だと思えるのか?」という点だ。
給料が問題?
ドナルドソンの給料が高騰するのには、まだ時間がある。
言い訳にならない。
だが、この際だから「カネの話」は置いといて話を進めてみよう。以下では純粋に「野球選手としての能力比較」から話をする。
ドナルドソンの打撃成績:Josh Donaldson Statistics and History | Baseball-Reference.com
この疑問について即答したのは、Fangraph主宰デイブ・キャメロンくらいなのだが、ブログ主はトレード直後、こう書いておいた。
いろいろデータみながら考えてみた。たぶんビリー・ビーンの頭の中じゃ、ブレット・ロウリーとジョシュ・ドナルドソンはまったく「同価値」なんだろうな、という結論に達した(笑)彼にとって、2人の違いは「年齢」だけだから「若いほうをとった」っていうだけなんだろうと結論した。
— damejima (@damejima) 2014, 11月 29
明らかにドナルドソンとブレット・ロウリーの打撃成績には「大きな差」がある。では、どういう「理屈」で考えると「2人は同じくらいの価値だ」なんてことがいえるのか?
まず、これを見てもらいたい。
上段は、トロントから獲得したブレット・ロウリーの2014年の「リアル打撃スタッツ」(70ゲーム)、下段は、キャリア全体の打撃成績を「162ゲームあたりの数値に補正したシーズン平均値」だ。この「補正」ってやつをよく覚えておいて以下を読んでもらいたい。
Brett Lawrie Statistics and History | Baseball-Reference.com
補正の「前後」をしっかり比べてみてもらいたい。
何がわかるか。ブレット・ロウリーの次のような「潜在能力」だ。
「ビリー・ビーンの目に映る」ブレット・ロウリー
もしも「長期にわたる故障やスランプがまったくない」ならば、本来のロウリーはもっと多くの、ヒット、二塁打、ホームランが打てる選手だし、必要なら盗塁もできる。ただ、三振数はかなり増えるし、打率や出塁率は、多少マシになる程度で、ほとんど改善しない。
この「脳内補正」が、ドナルドソン放出の謎を解く「鍵」だ。
(注意してもらいたい。ブログ主が「ロウリーの潜在能力」とやらを信じているわけでも、「実在」すると言っているわけでもない)
おいおいっ! ブレット・ロウリーは「故障のない選手」なのか? 長期のスランプを経験するタイプじゃないのか? だが、そういう「正しい疑問」は今は置いといてもらって(笑)、ひたすら読み続けてもらいたい。
ちょっと考えればこのブレット・ロウリーのサンプルから「類推」するだけで、ビリー・ビーンがこれまで選手採用の基準としてどの点を「重視」し、何を「完全に無視」してきたのか、ハッキリとわかるはずだ。(ただし、それは「ブレット・ロウリーには高い潜在能力があるから、能力が既に開花していて給料高騰も予想されるドナルドソンと交換してもいい」なんて単細胞な話でもない。話を続けよう)
ここまできたのだからオークランドの他の野手の打撃成績もみてみる。
たぶん「ビリー・ビーンの謎」の核心に、より迫れるはずだ。
ドナルドソン放出や、ビリー・バトラー、アイク・デービス獲得といった「個別の話」だけで終わってもつまらない。どうせやるなら、「ビーンが選手に求める打撃能力の具体的レンジ」や「彼がプラトーン・システムにこだわる理由」、果ては、彼の思考方法の「根本パターン」までも明らかにすることに挑戦したい。
表は、2014年のオークランド野手の「リアル」打撃スタッツだ。
補正前
チーム内で「特に良い数字」を赤の太字、「悪い数字」を黒の太字で示した。
俊足のトップバッター。
三振と四球と打点とホームランの多いクリンアップ。
守備専門の、打撃のよくない二塁手。
意外性のある打撃をするキャッチャー。
なんともまぁ、平凡きわまりないラインアップだ。
出塁率が特別優れた選手を並べているわけでもない。もしジョシュ・ドナルドソンとブランドン・モスがいなかったら、全く機能しない打線だろう。
当然、この程度の打線では飛びぬけた打撃スコアをたたき出したジョシュ・ドナルドソンが「打線のコア」であって、トレードによる放出などまったく考えられない。
ところが、だ。
補正後の表をみてもらうと、話がまったく違ってくる。