April 28, 2016
ひさしぶりに野球の記事を書く。
こんなに肩がこる作業だとは思わなかった(笑)
よくこんなめんどくさいこと、1000本以上やったものだ(笑)

2016年4月26日 at Dodger Stadium
最初の写真はドジャー・スタジアムでフランク・ロビンソンに並ぶMLB2943安打を打ったときのイチローだ。この写真の「意味」というか「凄さ」は、わかる人には誰もがわかっていることなのだが、中にはわからない頭の悪い人もいる。今回はそういう、わけがわからない人のために書く(笑)
まず、先日マーリンズ・パークで8号ホームランを打ったときのブライス・ハーパーの写真とイチローを並べてみる。下半身のカタチに注目してもらいたい。

2016年4月21日 Marlins Park
まだ意味がわからない?
そういう人のためだけに、もう少しだけ書く(笑) ほんと、めんどくさいな(笑)
上のイチローとハーパーの比較写真は、「下半身のカタチがまったく同じ」だ。これは誰にでもわかる。
だがひとつ、「決定的な違い」がある。
なぜなら、ハーパーの画像が「スイング前」であるのに対して、イチローのほうは「スイング後」だからだ。
そう。2943安打のイチローは、
「スイング後」のはずなのに、
下半身は「スイング前の基本位置のまま」
なのだ。
さて、その意味を知るために同じ打席のブライス・ハーパーで、通常パターンのバッティング・フォームの推移を見てみる。

この連続写真で、最も重要な、野球好きなら誰もが気づかなくてはいけないと思う点のひとつは、踏み出した「右足のピント」がブレていない、という点だ。
逆にいえば、右足以外、つまり「上半身」と「左足」のピントは常に「ブレて」いる。つまり、それらは「高速移動している」状態にある。
にもかかわらず、「右足」、特に「右膝から下のピントだけ」が、常にあっている。つまり「動いていない」。
これはもちろん、熱心な野球ファンなら誰でもわかっていることだが、左打者の場合、「踏み出した右足」をできるだけ開かないようにしながら「左足と上半身だけを旋回」してバットをスイングしているからだ。(ただし右打者の場合は、左足と右足の股関節の可動域の違いから、必ずしも左打者と同じ動作になるとはいえない)
文字で読むと簡単にできそうに思うかもしれないが、実際にはそうではない。「身体の右半分は回さず、左半分だけ回す」というような、不自然な、無理のある動作は簡単に実現できるものではない。
次にブライス・ハーパーの3枚の写真の「ベルトの位置」(というか臍の位置)を見てもらいたい。
野球における臍下丹田の重要性を熱心に語ったのは、2012年に亡くなった、かの榎本喜八翁なわけだが、スラッガー系の打者はよく「伸び上がるチカラ」とか「スウェイするチカラ」をバットパワーに利用している。
ハーパーの「ベルト位置」を3枚続けて見ると、彼が「少し伸び上がってスイングしている」ことがわかる(他に彼はファースト方向に下がりつつ長打を打つことも多々ある)。
面白いことに、定規をあててハーパーの「眼の高さ」を調べてみると、彼の「眼の高さ」はほとんど変わっていないことがわかる。
伸び上がっている、なのに、眼の高さは変わっていない、のだ。
もちろん、ボールを最後までしっかり見るために視線はあまりブレないほうがいいに決まっているから、スラッガーとしては「伸び上がりながらも、同時に、眼の高さは変えないようにしたい」わけだ。
だがこれも、実際やってみると簡単ではない。人間、伸び上がって動作すれば、眼の高さも当然変わるものだ。
それを防ぐというか、矛盾を解消するには、例えば次のような2つの動作を同時にこなすような「工夫」が必要になってくる。
ややこしいこと、このうえない。
だが、こんなことはあくまで野球のイロハであり、打者はこうした複雑な動作を若い頃から練習で身につけている。
複雑な動作というのをもう少し詳しく書くなら、打者は「無理な姿勢と無理な動作をわざと身体に強いる」ことで、カラダ全体、特に骨が一時的に蓄える「窮屈なチカラ」を、スイング、特にバットヘッドの回転に向けて急激に開放することでボールを弾き飛ばそうとする。
だが、この「窮屈なチカラの開放」というやつは、概して「途中で止めることが難しく、途中で止めると溜めたチカラが発散して消え、無力化してしまう」という難点がある。
だからこそ、投手にとって打者とのかけひきで重要なのは、打者が長年の習慣として身にしみつかせた「連続的なチカラの開放動作」を、途中で止めさせたり、変更させたりすることで、チカラを分散・発散させ、バットヘッドに集中させないという点に真髄があるわけだ。
ここまでくれば最初に挙げたイチローの写真の「意味」は、もう説明しなくてもいいはずだ。彼は
こんなこと、腰痛持ちの老人にはとても無理だ(笑)
投手の投球術によって打者がバランスやタイミングをズラされて「下半身のカタチを崩されて」しまい、やむなく「手だけ」でバット操作してボールを無理矢理当てにいくのが、「手打ち」だ。
だが2943安打のイチローは、見てのとおり下半身はまったく崩されていない。これは手打ちではない。まったく違う。
普通ならば、バットを止めるか、通常のヒッティング状態に移行していきそうなものだが、イチローは「顔」と「下半身」を「バットを振り始める前の位置」に止めたまま、上半身の回転だけでバットを振り切ってしまうという独特の荒業(笑)を行っている。
身体とバットのすべてを止めるというのならともかく、下半身に加えて顔まで残したままバットだけ振り切る、なんてことは、普通なら筋肉も関節も脳もついていけない。
自分はやれると思う人は、どうぞバッティングセンターででも試すといい。
こういうのを見れば、今シーズンのイチローがコンタクト率が異常に高いのも当然の話で、説明するまでもない。イチローだからこそ、あんなボール球をレフトにライナー性の打球が打てるし、ボールもストライクも関係ない。
いつぞや2012年にヤンキースで地区優勝した年にマット・ウィータースのタッチをかいくぐってホームインした「マトリクス・スライド」もそうだったが、自分の身体を自分の思ったように動作させる能力と、それを支えてきた技術と身体能力とトレーニング、これこそが「イチロー」だ。
2012年10月9日、2012オクトーバー・ブック 『マトリクス・スライド』。ついに揃った 『イチロー 三種の神器』。 | Damejima's HARDBALL
こんなに肩がこる作業だとは思わなかった(笑)
よくこんなめんどくさいこと、1000本以上やったものだ(笑)

2016年4月26日 at Dodger Stadium
最初の写真はドジャー・スタジアムでフランク・ロビンソンに並ぶMLB2943安打を打ったときのイチローだ。この写真の「意味」というか「凄さ」は、わかる人には誰もがわかっていることなのだが、中にはわからない頭の悪い人もいる。今回はそういう、わけがわからない人のために書く(笑)
まず、先日マーリンズ・パークで8号ホームランを打ったときのブライス・ハーパーの写真とイチローを並べてみる。下半身のカタチに注目してもらいたい。

2016年4月21日 Marlins Park
まだ意味がわからない?
そういう人のためだけに、もう少しだけ書く(笑) ほんと、めんどくさいな(笑)
上のイチローとハーパーの比較写真は、「下半身のカタチがまったく同じ」だ。これは誰にでもわかる。
だがひとつ、「決定的な違い」がある。
なぜなら、ハーパーの画像が「スイング前」であるのに対して、イチローのほうは「スイング後」だからだ。
そう。2943安打のイチローは、
「スイング後」のはずなのに、
下半身は「スイング前の基本位置のまま」
なのだ。
さて、その意味を知るために同じ打席のブライス・ハーパーで、通常パターンのバッティング・フォームの推移を見てみる。

この連続写真で、最も重要な、野球好きなら誰もが気づかなくてはいけないと思う点のひとつは、踏み出した「右足のピント」がブレていない、という点だ。
逆にいえば、右足以外、つまり「上半身」と「左足」のピントは常に「ブレて」いる。つまり、それらは「高速移動している」状態にある。
にもかかわらず、「右足」、特に「右膝から下のピントだけ」が、常にあっている。つまり「動いていない」。
これはもちろん、熱心な野球ファンなら誰でもわかっていることだが、左打者の場合、「踏み出した右足」をできるだけ開かないようにしながら「左足と上半身だけを旋回」してバットをスイングしているからだ。(ただし右打者の場合は、左足と右足の股関節の可動域の違いから、必ずしも左打者と同じ動作になるとはいえない)
文字で読むと簡単にできそうに思うかもしれないが、実際にはそうではない。「身体の右半分は回さず、左半分だけ回す」というような、不自然な、無理のある動作は簡単に実現できるものではない。
次にブライス・ハーパーの3枚の写真の「ベルトの位置」(というか臍の位置)を見てもらいたい。
野球における臍下丹田の重要性を熱心に語ったのは、2012年に亡くなった、かの榎本喜八翁なわけだが、スラッガー系の打者はよく「伸び上がるチカラ」とか「スウェイするチカラ」をバットパワーに利用している。
ハーパーの「ベルト位置」を3枚続けて見ると、彼が「少し伸び上がってスイングしている」ことがわかる(他に彼はファースト方向に下がりつつ長打を打つことも多々ある)。
面白いことに、定規をあててハーパーの「眼の高さ」を調べてみると、彼の「眼の高さ」はほとんど変わっていないことがわかる。
伸び上がっている、なのに、眼の高さは変わっていない、のだ。
もちろん、ボールを最後までしっかり見るために視線はあまりブレないほうがいいに決まっているから、スラッガーとしては「伸び上がりながらも、同時に、眼の高さは変えないようにしたい」わけだ。
だがこれも、実際やってみると簡単ではない。人間、伸び上がって動作すれば、眼の高さも当然変わるものだ。
それを防ぐというか、矛盾を解消するには、例えば次のような2つの動作を同時にこなすような「工夫」が必要になってくる。
1)体幹を急激に伸ばして、伸び上がりながらも加えて、左打者なら
2)身体を弓なりに曲げて傾け、目線は上がらないようキープ
3)右足はミートまで固定しながらもさせなければならない。
4)左足と上半身は激しく回転
ややこしいこと、このうえない。
だが、こんなことはあくまで野球のイロハであり、打者はこうした複雑な動作を若い頃から練習で身につけている。
複雑な動作というのをもう少し詳しく書くなら、打者は「無理な姿勢と無理な動作をわざと身体に強いる」ことで、カラダ全体、特に骨が一時的に蓄える「窮屈なチカラ」を、スイング、特にバットヘッドの回転に向けて急激に開放することでボールを弾き飛ばそうとする。
だが、この「窮屈なチカラの開放」というやつは、概して「途中で止めることが難しく、途中で止めると溜めたチカラが発散して消え、無力化してしまう」という難点がある。
だからこそ、投手にとって打者とのかけひきで重要なのは、打者が長年の習慣として身にしみつかせた「連続的なチカラの開放動作」を、途中で止めさせたり、変更させたりすることで、チカラを分散・発散させ、バットヘッドに集中させないという点に真髄があるわけだ。
ここまでくれば最初に挙げたイチローの写真の「意味」は、もう説明しなくてもいいはずだ。彼は
1)「スイング初期の下半身」を基本に忠実な位置のまま中断して、スイング終了後にまでキープし続けたままのである。
2)上半身だけを鋭く回転させて、まるで「鎌で稲穂を刈り取るように」バットを振り切ってライナー性のヒットを打ち
3)そのくせ、顔(目線)だけは、スイングが終わりかけてもずっとミートポイントを見続ける位置に残っている
こんなこと、腰痛持ちの老人にはとても無理だ(笑)
投手の投球術によって打者がバランスやタイミングをズラされて「下半身のカタチを崩されて」しまい、やむなく「手だけ」でバット操作してボールを無理矢理当てにいくのが、「手打ち」だ。
だが2943安打のイチローは、見てのとおり下半身はまったく崩されていない。これは手打ちではない。まったく違う。
普通ならば、バットを止めるか、通常のヒッティング状態に移行していきそうなものだが、イチローは「顔」と「下半身」を「バットを振り始める前の位置」に止めたまま、上半身の回転だけでバットを振り切ってしまうという独特の荒業(笑)を行っている。
身体とバットのすべてを止めるというのならともかく、下半身に加えて顔まで残したままバットだけ振り切る、なんてことは、普通なら筋肉も関節も脳もついていけない。
自分はやれると思う人は、どうぞバッティングセンターででも試すといい。
こういうのを見れば、今シーズンのイチローがコンタクト率が異常に高いのも当然の話で、説明するまでもない。イチローだからこそ、あんなボール球をレフトにライナー性の打球が打てるし、ボールもストライクも関係ない。
いつぞや2012年にヤンキースで地区優勝した年にマット・ウィータースのタッチをかいくぐってホームインした「マトリクス・スライド」もそうだったが、自分の身体を自分の思ったように動作させる能力と、それを支えてきた技術と身体能力とトレーニング、これこそが「イチロー」だ。
2012年10月9日、2012オクトーバー・ブック 『マトリクス・スライド』。ついに揃った 『イチロー 三種の神器』。 | Damejima's HARDBALL