April 02, 2018



メジャー初登板の大谷が3ランを打たれたとき、マイク・ソーシアは『ここから抑えれば何も問題ないから』と声をかけ、まだMLBに慣れていない若者を落ち着かせた。

初登板をなんとかホームランの3失点だけで乗りきった大谷が、試合後「野球を始めて、はじめてマウンドに行くときのような気持ち」で楽しかったとコメントしたと聞いて、マイク・ソーシアの「度量」の大きさを感じた。


ソーシアが、『ここから抑えれば何も問題ないから』とあっさり言える理由はハッキリしている。

「ショウヘイ。ウチのチームは、だな。あのマイク・トラウトも、アルバート・プーホールズもいるチームなんだぜ。心配しなくてもヤツラがそのうち逆転してくれるさ。だからオマエは自分の仕事さえしてくれれば、それでいいんだ。』

もっと短く言うなら、
「オマエはひとりで野球やってるわけじゃない。心配すんな。」
ということだ。



「ひとりじゃない」という意味の言葉が「ある特別なタイミング」で耳に入れば、ヒトの傷んだココロを一瞬で救える魔法の言葉になることは、わかる人にはわかると思う。


うがち過ぎの推測かもしれないが、日本にいるときの大谷は、エースでクリーンアップとでもいうような「1人2役」的な立場にあったわけだから、いってみれば、「ひとりで野球やっているような感じ」がぬぐえなかったのではないかと、この話を聞いて思った。

大谷という選手は、他人から「2刀流という自分独自のスタイルばかり追い求めている」とみなされることが、たぶん多い。
けれど、だからといって、彼は「ひとりで野球やりたい」と思って野球をやっているわけでもなければ、「ひとりでできるのが野球というスポーツだと、心の中で思っている」わけでも、おそらくない。

もしかすると、大谷は2刀流がやりたくてアメリカに渡ったばかりではなく、「ひとり野球がつまらなくて」アメリカに渡ったのかもしれないのである。

ならば、マイク・ソーシアに「肩のチカラを抜いて」もらって、長年たまっていた「ひとりで野球やっている感」から「解放」してもらえば、そりゃ野球が楽しいに決まっている。そして、「選手に楽しく野球をやらせることができる監督」は、「指導者として一流」に決まっている。



ちなみに、このオフの話題の中心だった大谷とジャンカルロ・スタントン、どちらがシーズンが進むにつれて成績を残すか、といえば、たぶん大谷のほうだろうと思う。

投手としての大谷は、これからMLBの環境や打者データへの順応がますます進んでいく立場にある。つまり、「のびしろがある」わけだ。
対してスタントンは逆に、2017シーズン前半しか活躍できず後半に大きく失速したアーロン・ジャッジと同じで、これからスカウティング好きなア・リーグ東地区各チームの研究対象になって、「のびしろがどんどんなくなっていく立場」にある。

だから、スタントンが、投手がまだスタントンの十分なデータを得られない春から夏にかけて、あの狭いヤンキースタジアムのホームゲームでいくらホームランを量産したとしても、それは単に「想定内」の出来事にすぎない。
他方、投手・大谷が春先に打たれる場面が多くみられたとしても、それもまた想定内の出来事にすぎない。いくらオークランドの新人君たちが「オオタニからホームランを量産できる自信があるぜ」と(笑)オオグチたたいてみせても、春先に1本や2本ホームランを打てるかもしれないが、長期的にはほとんど何の意味もないのである。


たかがスプリングトレーニングや、春先の投手有利なゲームの中で、新聞を売りたいだけのせっかちなメディアがどんなことを書こうと、短気なファンが「大谷はマイナースタートが似合い」とツイートしまくろうと、そういう「余計なお世話」など、何の意味もない。そんなことくらい、長年監督をやってきたソーシア自身が誰よりもわかっているのである。


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