January 09, 2019
ダイヤモンドのクソ記事。テキトーもいいとこだ。よくこの程度で「MLBアナリスト」とか名乗れるよ、ほんと。MLBで「2塁手が30本以上ホームラン打つ」ようになったのはロジャー・ホーンスビーみたいな数シーズンの例外除けば、「2000年代以降」でしかない。https://t.co/t59dadgAfO
— damejima (@damejima) 2019年1月6日
上に挙げたリンクは、ダイヤモンド・オンラインに2019年1月7日掲載されたクソ記事である。クレジットは「清談社 福田晃広」となっているが、「2000試合以上を取材してきたMLBアナリスト古内義明」に話を聞いたという体裁になっている。カノーの所属球団が間違っていることからしてライターはMLBに詳しくない人間だろうから、情報の責任の所在は実質、古内某ということになる。
その古内なる人物、記事中で、こんな「わけのわからないこと」を言っている。
「日本人内野手で、今後もし可能性があるとすれば、スピードがあり、中距離打者以上のパワーがある二塁手かと思います。たとえば、ホセ・アルトゥーベ(ヒューストン・アストロズ)やロビンソン・カノ(シアトル・マリナーズ)のような、シーズンでホームランを30本ほど打てるタイプですね。ただ、今の日本のプロ野球界で、その条件に合う選手を見つけるのは正直厳しいです」
何を根拠にこういうわけのわからないことを言ってるんだ。と、言いたくなる。
まずは総論の間違いだ。
セカンドからいこう。
MLBの100年を超える歴史の中ですら、「30本ホームラン打てた2塁手」なんて、「のべ39人」しかいない。複数回達成者がいるので、選手数はその半分くらい、たった「20数人」しかいない。その「20数人」にしても、ロジャー・ホーンスビーのような古い時代の記録を除くと、大半が「2000年以降」の記録で、おまけに飛ぶボールなどでホームランが無駄に量産される「ホームランと三振の時代である2010年代」の例が多く含まれている。
つまり、MLBの、どの時代、どの選手を見て、そういう「空想」をしたのか知らないが、「ホームランを30本ほど打てるタイプしかMLBの二塁手になれなかった時代など、MLBのどこを探しても存在しないのである。
個々の例についてもみてみる。
「30本打てる内野手の例」としてホセ・アルトゥーベが紹介されている。だが彼は24本打ったシーズンが2度あるだけで、30本打ったことなど、一度もない。なのに、「30本打てるタイプ」に挙げるのは、どうかしている。彼の「シーズン平均ホームラン数」は、いまのところ「14本」。これは「歴代のホームランを打てるタイプの二塁手」より10本は少ない。だから、アルトゥーベはそもそも「30本打てる二塁手」というカテゴリーには到底入らない選手なのである。
カノーはたしかに、2度「シーズン30本以上のホームラン」を記録している。だが、こいつはアレックス・ロドリゲスやバリー・ボンズと同じ、「ステロイダーのクソ野郎」であって、その記録は詐称にすぎない。そして、その「ステロイド・ホームランのカノー」ですら、シーズン平均は「24本」に過ぎない。
近年「ホームラン30本打った二塁手」でいえば、挙げるべきなのは、達成2回のカノーより、2000年代後半に3回記録したチェイス・アトリーやアルフォンソ・ソリアーノだが、上の記事はアトリーもソリアーノも名を挙げていない。
アトリーのシーズン平均も「22本」で、ロビンソン・カノーとたいして変わらないが、ステロイダーでないだけマシというものだ。ちなみにイアン・キンズラーも、カノーと同じ2回、30本を達成しているが、シーズン平均は、アトリーと同レベルの「22本」で、30本には到底届かない。
「30本打たないとメジャーの二塁手になれない」などという設定はまったくのデタラメだ。
他の基本的な間違いも指摘しておこう。
最初に挙げた記事が配信されたのは「日本時間1月7日6:00」のようだが、その時点でカノーはとっくにシアトルの選手ではない。印刷媒体なら印刷後にトレードされたと言い訳もできるが、電子版は直そうと思えばいくらでも直せたはずだ。だらしないにも程がある。
また、日本の二塁手には、30本をそこそこコンスタントに打っている山田哲人がいるわけだが、どういうわけかこの記事は触れていない。これも解せない。自分は山田哲人がMLBで活躍できると思ったことはまったくないが、だからといって、「今の日本のプロ野球界には、30本打てる内野手はひとりもいない」と、上から目線で決めつけるのはおかしい。
次にショートについて。
総論はセカンドと同じである。
MLB100年の歴史で、「30本ホームラン打てたショート」なんてものは、奇しくもセカンドと同じ、「のべ39人」しかいないのである。この「のべ39人」には、カノーの先輩で、同じステロイダーのクソ野郎であるアレックス・ロドリゲスや、ミゲル・テハダなどの「ステロイダーのニセ記録」が含まれているから、リアルな達成者となると、もっと少ない。
個々の選手でみると、「ホームラン30本」は、例えばデレク・ジーターは一度も達成していない。ジーターに似たバッターで、同じ3000安打達成者でもあるロビン・ヨーントも達成してはいない。カル・リプケンはジーターより遥かに長打力があったバッターだったが、リプケンですらわずか一度しか30本を達成していない。
30本を2度達成したショートは、例えばノマー・ガルシアパーラ、トロイ・トロウィツキー、ジミー・ロリンズ、近年ではフランシスコ・リンドア、マニー・マチャドなどがいる。
ホームラン20本台後半の記録も、これら「30本を2度達成している選手」が達成した記録であることが多いために、ショートのハードルをもっと下げて、「25本以上」としたとしても、そのメンバーは「30本以上」とほとんど同じ顔ぶれにしかならない。
逆にいえば、30本打てるホームランバッターではないのにメジャーのレギュラーのショートになった選手なんて、掃いて捨てるほどいるし、むしろ、そちらのほうが「普通」だ。
これは余談だが、こうしてMLB全体を眺めたとき、「この2010年代に限って、ホームランを30本打ったセカンド、ショートが何人も出現しているのであるわけで、そのことは、「今のMLBが『三振かホームランかという異常な時代』であることの証拠」そのものである。
「2010年代に限ってホームランを30本打ったセカンド、ショートが何人か同時に出現した」ことは、その選手たちの実力がどれも「殿堂入りレベル」だから、ではなく、「飛ぶボール」とか、カノーのように隠れてステロイドをやって隠蔽薬を使っているせいだとしか、自分は思わない。
総じていえば、MLBのセカンドとショートを「ホームラン数」を基準にして「レギュラーとして通用するレベル」を設定するなら、「ホームラン30本」なんてものは、「殿堂入りレベルの選手」か、「ステロイダー」の記録でしかなく、それらはいずれも「特殊な例」でしかない。
「ごく普通のレベルのMLBのレギュラーのセカンド、ショート」を、ホームラン数でハードル設定するとしたら、20本どころか、なんだったら高打率ならという条件つきで「ホームラン15本」程度でまったくかまわない。実際デレク・ジーターがそうなのだ。
「MLBのセカンド、ショートは30本打てるのが当たり前」なんて話は、単なる空想に過ぎない。
こういう馬鹿記者のクソ記事みて、「MLBの内野手は30本打てないとなれない」のか・・・、なんて、アホなこと考えないように。もし掲示板とかで他人にしたり顔でこういうことしゃべってるヤツをみたら、そいつは何も知らないアホだから相手にしないでいい。
— damejima (@damejima) 2019年1月7日