April 13, 2020
このシリーズ記事のここまでの展開を一度まとめてみる。
「対数グラフ」にすることの意味。
2020年3月31日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(1)ウイルス感染数の増加はなぜ時間をX軸にした片対数グラフがフィットするのか。 | Damejima's HARDBALL
「対数グラフが寝てくる」ことの意味。
2020年4月2日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(2)なぜ実数が増えているのに「事態は落ち着いてきた」と言えるのか。 | Damejima's HARDBALL
対数グラフのX軸を「相対日数」にすべき理由。
2020年4月4日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(3)「感染の典型的パターンをみつけだす」ためのグラフの書き方---「日付の相対表示」 | Damejima's HARDBALL
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この記事では、「感染者数の対数グラフが、グラフの開始から寝てくるまでの「日数」において、世界全体に「共通性」がみられること」について論じる。
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よくマスメディアの記事で、ニューヨークの病院に行き、型通りの簡単なインタビューをして「酷い状況だ」と当たり前のことを言わせておいて、その後で、その病院関係者に「この状況は2〜3週間後の東京だ」と「最初から言わせたかったことを、言わせる」式のデタラメな記事がある。
ニューヨークやロンドンが酷い状況なことくらい、わざわざ忙しい現場の人を掴まえなくても誰でもわかっているのである。わかりきっているのに、わざわざインタビューに行って邪魔をして、ただ「とりたいコメントを言わせているだけ」の、どうしようもない取材方法である。
くだらないにも、程がある。
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以下は、ロンドン・カレッジ・ユニヴァーシティが公開しているデータのうち、「アメリカ各州」の「人口100万人あたりの感染者数」の片対数グラフである。
州ごとに医療制度の充実や気候など、さまざまな環境が違うわけだが、共通していることがある。
ソース:CoVID 19 Growth Rate
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他の国で同じことはいえるのだろうか。
同じサイトから「他の地域」のグラフを見てみる。
西ヨーロッパの「人口100万人あたりの感染者数の推移」
西ヨーロッパでは、アメリカ各州と似た傾向が見られ、おおむね「2週間〜3週間」でグラフが寝てきている。
また、同じことは、北欧、東欧、英国各州、英国各地域別、豪州およびニュージーランド、パキスタン、トルコ、イスラエル、チリ、パナマ、ドミニカ、東南アジアと、世界の広い地域で(多少の日数の長短があるにしても)同じことがいえる。
(煩雑な画面になるので、各地域の詳細なグラフは挙げない。リンク先を参照されたい。 ソース:CoVID 19 Growth Rate)
ソース:CoVID 19 Growth Rate
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人口、気候、文化、また医療制度や習俗など、さまざまに異なる世界中の国々で、同じような現象がみられることから、以下のような仮説が可能になる。
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では、その「一定期間」とは、常に一定なのだろうか。
以下に2つの例外を挙げてみる。
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これは西ヨーロッパの「感染者数の対数グラフ」だが、上に挙げたグラフが「人口100万人あたり」という補正をしているのに対して、こちらは補正されていない。
ソース:CoVID 19 Growth Rate
こちらの「感染開始からグラフが寝るまでの日数」は、「人口100万人あたり」のグラフでの「グラフが寝るまでの日数」に比べると、わずかに長いように見える。
「感染者数全体のグラフ」と「100万人あたりのグラフ」との間に「微妙なズレ」があるわけだが、この差異が世界の他の地域でもみられるのかどうかについては、残念ながら、ソースのサイトに世界各国のデータがないことなどから確かめられなかった。ご自身で確かめてもらいたい。
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次に、日本を含む別の「100万人あたりの対数グラフ」をみる。
ソース:CoVID 19 Growth Rate
日本(茶色)とシンガポール(緑色)が表中にあるが、この両国がここまで見てきた「急激に感染が拡大し、その後、ほぼ数週間で対数グラフが寝てくる」という一般論では語れないことは、グラフの形状から明らかだ。
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日本やシンガポールと似た傾向にある国は、他にバーレーン、スウェーデンなどがあり、これらの国々では、
これらの国々は「欧米を典型として、世界の広い地域の国々でみられる『急激な感染の拡大開始と、数週間後に訪れる指数関数上のピーク』というパターンにあてはまらない可能性がある。
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ここまで指摘したことから、「東京がニューヨークの数週間遅れた状態」というロジックが根本的におかしいことは、簡単に指摘できる。
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「東京がニューヨークの数週間遅れた状態」と断言するには、次の「2つの条件」が揃わなければならない。
言うまでもなく、2つとも、答えは「 No 」である。日本での感染開始はアメリカより数週間遅れてなどいないし、日本の感染拡大は世界でも稀有なパターンで、アメリカとは似ても似つかない。
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日本は、シンガポール、バーレーン、スウェーデンなどもそうであるように、欧米を典型として世界全体でみられるような感染パターンを踏襲してはいない。
ゆえに、
「数週間たてば、東京はニューヨークのようになる」という報道は、ICUの供給の逼迫など、医療体制の緊迫という点を除けば、単なる根拠のないデマと同列の妄言でしかないのである。
「対数グラフ」にすることの意味。
2020年3月31日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(1)ウイルス感染数の増加はなぜ時間をX軸にした片対数グラフがフィットするのか。 | Damejima's HARDBALL
「対数グラフが寝てくる」ことの意味。
2020年4月2日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(2)なぜ実数が増えているのに「事態は落ち着いてきた」と言えるのか。 | Damejima's HARDBALL
対数グラフのX軸を「相対日数」にすべき理由。
2020年4月4日、「感染者数グラフ」の正しい書き方、読み方。(3)「感染の典型的パターンをみつけだす」ためのグラフの書き方---「日付の相対表示」 | Damejima's HARDBALL
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この記事では、「感染者数の対数グラフが、グラフの開始から寝てくるまでの「日数」において、世界全体に「共通性」がみられること」について論じる。
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よくマスメディアの記事で、ニューヨークの病院に行き、型通りの簡単なインタビューをして「酷い状況だ」と当たり前のことを言わせておいて、その後で、その病院関係者に「この状況は2〜3週間後の東京だ」と「最初から言わせたかったことを、言わせる」式のデタラメな記事がある。
ニューヨークやロンドンが酷い状況なことくらい、わざわざ忙しい現場の人を掴まえなくても誰でもわかっているのである。わかりきっているのに、わざわざインタビューに行って邪魔をして、ただ「とりたいコメントを言わせているだけ」の、どうしようもない取材方法である。
くだらないにも、程がある。
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以下は、ロンドン・カレッジ・ユニヴァーシティが公開しているデータのうち、「アメリカ各州」の「人口100万人あたりの感染者数」の片対数グラフである。
州ごとに医療制度の充実や気候など、さまざまな環境が違うわけだが、共通していることがある。
感染開始からグラフが寝てくるまでの日数が、である。
約3週間と、「各州共通」であること
ソース:CoVID 19 Growth Rate
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他の国で同じことはいえるのだろうか。
同じサイトから「他の地域」のグラフを見てみる。
西ヨーロッパの「人口100万人あたりの感染者数の推移」
西ヨーロッパでは、アメリカ各州と似た傾向が見られ、おおむね「2週間〜3週間」でグラフが寝てきている。
また、同じことは、北欧、東欧、英国各州、英国各地域別、豪州およびニュージーランド、パキスタン、トルコ、イスラエル、チリ、パナマ、ドミニカ、東南アジアと、世界の広い地域で(多少の日数の長短があるにしても)同じことがいえる。
(煩雑な画面になるので、各地域の詳細なグラフは挙げない。リンク先を参照されたい。 ソース:CoVID 19 Growth Rate)
ソース:CoVID 19 Growth Rate
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人口、気候、文化、また医療制度や習俗など、さまざまに異なる世界中の国々で、同じような現象がみられることから、以下のような仮説が可能になる。
武漢肺炎の感染者の「指数関数的な意味での増加」は、
感染の爆発的開始から「一定期間」が経過すると鈍る傾向にある。
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では、その「一定期間」とは、常に一定なのだろうか。
以下に2つの例外を挙げてみる。
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これは西ヨーロッパの「感染者数の対数グラフ」だが、上に挙げたグラフが「人口100万人あたり」という補正をしているのに対して、こちらは補正されていない。
ソース:CoVID 19 Growth Rate
こちらの「感染開始からグラフが寝るまでの日数」は、「人口100万人あたり」のグラフでの「グラフが寝るまでの日数」に比べると、わずかに長いように見える。
「感染者数全体のグラフ」と「100万人あたりのグラフ」との間に「微妙なズレ」があるわけだが、この差異が世界の他の地域でもみられるのかどうかについては、残念ながら、ソースのサイトに世界各国のデータがないことなどから確かめられなかった。ご自身で確かめてもらいたい。
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次に、日本を含む別の「100万人あたりの対数グラフ」をみる。
ソース:CoVID 19 Growth Rate
日本(茶色)とシンガポール(緑色)が表中にあるが、この両国がここまで見てきた「急激に感染が拡大し、その後、ほぼ数週間で対数グラフが寝てくる」という一般論では語れないことは、グラフの形状から明らかだ。
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日本やシンガポールと似た傾向にある国は、他にバーレーン、スウェーデンなどがあり、これらの国々では、
感染者数が非常に少なく抑えられていること感染者数の対数グラフがゆるやかに右上がりを続けていくことに他の国にない特徴がある。
これらの国々は「欧米を典型として、世界の広い地域の国々でみられる『急激な感染の拡大開始と、数週間後に訪れる指数関数上のピーク』というパターンにあてはまらない可能性がある。
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ここまで指摘したことから、「東京がニューヨークの数週間遅れた状態」というロジックが根本的におかしいことは、簡単に指摘できる。
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「東京がニューヨークの数週間遅れた状態」と断言するには、次の「2つの条件」が揃わなければならない。
1)東京がニューヨークより「数週間遅れて」感染が開始した
2)東京(あるいは)日本の感染拡大が、ニューヨーク(あるいはアメリカ各州)のグラフが描く曲線と同じ、『急激な感染拡大の開始と、数週間後の指数関数上のピーク』という典型的パターンで示すことができる
言うまでもなく、2つとも、答えは「 No 」である。日本での感染開始はアメリカより数週間遅れてなどいないし、日本の感染拡大は世界でも稀有なパターンで、アメリカとは似ても似つかない。
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日本は、シンガポール、バーレーン、スウェーデンなどもそうであるように、欧米を典型として世界全体でみられるような感染パターンを踏襲してはいない。
ゆえに、
「数週間たてば、東京はニューヨークのようになる」という報道は、ICUの供給の逼迫など、医療体制の緊迫という点を除けば、単なる根拠のないデマと同列の妄言でしかないのである。