June 11, 2020
滞在先のホテルで亡くなったエンゼルスのタイラー・スカッグスの「死因」について、日本版Wikiには「薬とアルコールを併用していて、嘔吐物が喉に詰まって窒息した」と書かれている。
風邪薬でも飲んで寝ていたとでも、言いたいのか。
バカバカしい。
それは真実ではない。
事実は、こうだ。
オピオイド乱用には呼吸に不具合を起こす副作用がある。だから、スカッグスの死が、果たして本当に嘔吐物が詰まったことだけが死因か、それとも、2種類の薬物そのものも直接の死因になったのかは、Wikiを読むだけではわからない。
いずれにせよ、彼の死の原因は「風邪気味だったため、市販の風邪薬と酒を飲み、ホテルで寝ている間に嘔吐で死んだ」などというような、牧歌的な話ではない。
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オピオイドは、本来なら末期癌患者の疼痛緩和にも使われるような「強い鎮痛剤」だ。「健康な人が風邪をひいたとき使う錠剤」というような軽い意味の「市販薬」では、まったくない。そもそも、健康な一般人が医師からオピオイドを処方されることなど、まったくありえない。
ところが、近年アメリカではオピオイドの「乱用」で万単位の人が亡くなり、社会問題化している。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によれば、オピオイド過剰摂取による死者は2015年には33,091人にのぼっている。
本来なら特殊な医療目的にしか使われない強い鎮痛剤を不道徳な目的に乱用した人間たちが「オピオイドをドラッグの一種にしてしまった」のである。
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オピオイドには、天然成分由来のものから化学合成のものまで、たくさんの種類がある。
オキシコドンは、乱用目的のオピオイドの代表格のひとつで、アヘン成分からつくられる。トヨタの現役の常務取締役だったアメリカ人女性、ジュリー・ハンプが、アクセサリーと称して偽装輸入しようとして逮捕された薬物も、これである。
オピオイド乱用が社会問題になったアメリカではメーカーへの訴訟が多数起こされ、オキシコドン製造元だったパーデュー・ファーマ社は倒産している。そのため、オピオイド乱用の需要は、オキシコドンから、ヘロインの50倍もの強さがあるといわれている「フェンタニル」などに流れた。
フェンタニルで死亡した有名人には、プリンス(2016年)、トム・ペティ(2017年)など、ミュージシャンが多い。彼らはタイラー・スカッグス同様、複数の薬物とアルコールを同時に服用していて亡くなっている。
タイラー・スカッグスは、ミュージシャンたちと同じく、オキシコドンとフェンタニルと酒を「同時に」やっていて死んだのである。
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先日、ミネソタ州で偽札を使おうとして警官に拘束され、亡くなったジョージ・フロイド氏(以下、敬称略)の剖検(=遺体を解剖して検査すること)からも、このフェンタニルが検出されている。
また、フェンタニルだけでなく、メタンフェタミンや(=いわゆる覚醒剤。日本では昔の俗称でいうシャブ、アメリカの俗語ではMeth)、11-Hydroxy Delta-9(=脱炭酸したマリファナの代謝物)、モルヒネなど、他の麻薬や薬物が「同時に」検出されている。
彼にはこの20年間に5回のコカイン使用での逮捕歴があり、端的にいえば、逮捕時の彼は明らかにオピオイド中毒であり、「かなりラリった状態」にあったといえる。
資料:https://www.hennepin.us/-/media/hennepinus/residents/public-safety/documents/Autopsy_2020-3700_Floyd.pdf
資料:https://thecourierdaily.com/george-floyd-criminal-past-record-arrest/20177/
彼のヘモグロビンS数値は約38パーセントだったが、これはアフリカ、地中海、中近東、インドなどにみられる黒人特有の遺伝性貧血「鎌状赤血球症」が彼の持病であり、日常生活で発症するレベルではないものの、例えば酸素分圧低下のような偶発的な状況変化に遭遇することによって発症する可能性があったと考えられる数値である。
なお剖検には、彼が「重度の動脈硬化性心疾患」はじめ「心臓に重い持病をかかえていたこと」が明記されている。(この事実を根拠に、ジョージ・フロイドの死が逮捕時の窒息ではなく、もともと持病を抱えていた心臓の発作による死であると指摘する人も多数いる)
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アメリカ各州で大麻解禁が進んだ背景には、こうしたオピオイド中毒の蔓延がある。
オピオイド対策に手を焼いた州当局は、「オピオイド依存がこれ以上増えるくらいなら、比較的安全な麻薬である大麻を解禁することで、ジャンキーたちをソフトドラッグに誘導したほうがマシだ」という「屁理屈」に飛びついて、事実上、「社会を管理する責任」を放棄したのである。
そうした州の知事の多くは民主党である。ジョージ・フロイドが住んでいたミネソタ州知事 Tim Walz も民主党であり、ミネソタは大麻解禁州のひとつだ。
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では、大麻解禁という屁理屈で「ハードドラッグ蔓延」は防げたのか。
ジョージ・フロイドもその典型例だが、オピオイドと大麻を同時にやる人が増えている。大麻解禁は、「ハードドラッグにジャンプアップする『助走路』を作っただけにすぎない」可能性が指摘されている。
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フェンタニル生産地は中国といわれ、アメリカでは何トンものフェンタニルが水揚げ寸前に摘発されたこともある。トランプ政権はフェンタニル輸入防止のため、中国に対処を要求したが、実質なにも実施されていないらしい。
フェンタニル。武漢肺炎。偽ドル紙幣。すべて中国由来ともいわれる「輸入品」だが、それらすべてに侵されていたジョージ・フロイドは、本当に「ロールモデル」、模範的といえる人物なのだろうか。
風邪薬でも飲んで寝ていたとでも、言いたいのか。
バカバカしい。
それは真実ではない。
事実は、こうだ。
タイラー・スカッグスは、「オキシコドンとフェンタニルという代表的なオピオイド」を2種類同時に「麻薬として乱用」していて、窒息して死んだのである。
オピオイド乱用には呼吸に不具合を起こす副作用がある。だから、スカッグスの死が、果たして本当に嘔吐物が詰まったことだけが死因か、それとも、2種類の薬物そのものも直接の死因になったのかは、Wikiを読むだけではわからない。
いずれにせよ、彼の死の原因は「風邪気味だったため、市販の風邪薬と酒を飲み、ホテルで寝ている間に嘔吐で死んだ」などというような、牧歌的な話ではない。
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オピオイドは、本来なら末期癌患者の疼痛緩和にも使われるような「強い鎮痛剤」だ。「健康な人が風邪をひいたとき使う錠剤」というような軽い意味の「市販薬」では、まったくない。そもそも、健康な一般人が医師からオピオイドを処方されることなど、まったくありえない。
ところが、近年アメリカではオピオイドの「乱用」で万単位の人が亡くなり、社会問題化している。アメリカ疾病管理予防センター(CDC)によれば、オピオイド過剰摂取による死者は2015年には33,091人にのぼっている。
本来なら特殊な医療目的にしか使われない強い鎮痛剤を不道徳な目的に乱用した人間たちが「オピオイドをドラッグの一種にしてしまった」のである。
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オピオイドには、天然成分由来のものから化学合成のものまで、たくさんの種類がある。
オキシコドンは、乱用目的のオピオイドの代表格のひとつで、アヘン成分からつくられる。トヨタの現役の常務取締役だったアメリカ人女性、ジュリー・ハンプが、アクセサリーと称して偽装輸入しようとして逮捕された薬物も、これである。
オピオイド乱用が社会問題になったアメリカではメーカーへの訴訟が多数起こされ、オキシコドン製造元だったパーデュー・ファーマ社は倒産している。そのため、オピオイド乱用の需要は、オキシコドンから、ヘロインの50倍もの強さがあるといわれている「フェンタニル」などに流れた。
フェンタニルで死亡した有名人には、プリンス(2016年)、トム・ペティ(2017年)など、ミュージシャンが多い。彼らはタイラー・スカッグス同様、複数の薬物とアルコールを同時に服用していて亡くなっている。
タイラー・スカッグスは、ミュージシャンたちと同じく、オキシコドンとフェンタニルと酒を「同時に」やっていて死んだのである。
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先日、ミネソタ州で偽札を使おうとして警官に拘束され、亡くなったジョージ・フロイド氏(以下、敬称略)の剖検(=遺体を解剖して検査すること)からも、このフェンタニルが検出されている。
また、フェンタニルだけでなく、メタンフェタミンや(=いわゆる覚醒剤。日本では昔の俗称でいうシャブ、アメリカの俗語ではMeth)、11-Hydroxy Delta-9(=脱炭酸したマリファナの代謝物)、モルヒネなど、他の麻薬や薬物が「同時に」検出されている。
彼にはこの20年間に5回のコカイン使用での逮捕歴があり、端的にいえば、逮捕時の彼は明らかにオピオイド中毒であり、「かなりラリった状態」にあったといえる。
資料:https://www.hennepin.us/-/media/hennepinus/residents/public-safety/documents/Autopsy_2020-3700_Floyd.pdf
資料:https://thecourierdaily.com/george-floyd-criminal-past-record-arrest/20177/
彼のヘモグロビンS数値は約38パーセントだったが、これはアフリカ、地中海、中近東、インドなどにみられる黒人特有の遺伝性貧血「鎌状赤血球症」が彼の持病であり、日常生活で発症するレベルではないものの、例えば酸素分圧低下のような偶発的な状況変化に遭遇することによって発症する可能性があったと考えられる数値である。
なお剖検には、彼が「重度の動脈硬化性心疾患」はじめ「心臓に重い持病をかかえていたこと」が明記されている。(この事実を根拠に、ジョージ・フロイドの死が逮捕時の窒息ではなく、もともと持病を抱えていた心臓の発作による死であると指摘する人も多数いる)
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アメリカ各州で大麻解禁が進んだ背景には、こうしたオピオイド中毒の蔓延がある。
オピオイド対策に手を焼いた州当局は、「オピオイド依存がこれ以上増えるくらいなら、比較的安全な麻薬である大麻を解禁することで、ジャンキーたちをソフトドラッグに誘導したほうがマシだ」という「屁理屈」に飛びついて、事実上、「社会を管理する責任」を放棄したのである。
そうした州の知事の多くは民主党である。ジョージ・フロイドが住んでいたミネソタ州知事 Tim Walz も民主党であり、ミネソタは大麻解禁州のひとつだ。
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では、大麻解禁という屁理屈で「ハードドラッグ蔓延」は防げたのか。
ジョージ・フロイドもその典型例だが、オピオイドと大麻を同時にやる人が増えている。大麻解禁は、「ハードドラッグにジャンプアップする『助走路』を作っただけにすぎない」可能性が指摘されている。
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フェンタニル生産地は中国といわれ、アメリカでは何トンものフェンタニルが水揚げ寸前に摘発されたこともある。トランプ政権はフェンタニル輸入防止のため、中国に対処を要求したが、実質なにも実施されていないらしい。
フェンタニル。武漢肺炎。偽ドル紙幣。すべて中国由来ともいわれる「輸入品」だが、それらすべてに侵されていたジョージ・フロイドは、本当に「ロールモデル」、模範的といえる人物なのだろうか。