June 2011

June 30, 2011

前の原稿でも書いたことだが、シアトルマリナーズの観客席に空席が目立つようになった根本原因は、端的に言うと、球団サイドが「自分たちが目指すべきでない野球スタイルに金を出し続け、そして、目指すべきスタイルを見失い続けてきた」からだ。
若かろうと、年寄りだろうと、自分にどんな服が似合うかすらわからないで、よく生きていけるものだ。
彼らはこれまで何シーズンもの時間と、何十万ミリオンもの大金を無駄にしつつ、毎シーズン敗れ続け、そして本来は根本的なところから手をつけるべきチームの再建や、若手起用を毎年のように先送りしつつ、有望な選手をちょっと起用しては結局は他チームに追いやり、結局、最後はあらゆることを中途半端にしたまま、監督と選手を無駄に入れ替えながら2011年を迎えている。



例えば、「城島問題」もそのひとつだ。
MLBには、あれほど適応能力に欠けた選手の必要性はカケラもなかった。だが、選手間レベルでは必要ないことが速い段階でわかっていたにもかかわらず、チームはずっと起用し続け、最後は高額長期契約までくれてやり、何年もの間の貴重な時間を、無駄なストレスと無駄な敗戦の山とともに無駄にした。

城島、セクソンなどを含む「右のフリースインガーをかき集めた、だらしない野球」もそうだ。
セーフコ・フィールドというスタジアムは、右打者不利の球場である。にもかかわらず、右打者に金を注ぎ込み、そして結局、当時の右打者のほぼ全員が後にチームをクビになった。
そしてここでも、シーズン単位の貴重な時間が無駄になった。

ケン・グリフィー・ジュニアの処遇もそうだ。
彼はたしかにこのチームの偉大なレジェンドのひとりだ。だが、彼を客寄せパンダとして招聘しておいて、十分なリスペクトとともに引退の花道を用意して1シーズンで引導を渡しておけばそれで十分だったものを、欲をかいた人間が判断を誤ったことで、2シーズン目の契約に突入し、最悪の結果を招いた。彼の名誉も、球団の成績にも、同時に傷がついた。
ここでも、何年もの貴重な時間が無駄になった。


果てしない時間が無駄になり続ける中で、
他チームに出て行った選手たちが「野球に適した環境」の中で活躍しだすのを、ファンとメディアは常に指をくわえて見てきた。


そう。
大事なことは単純だ。
野球に適した環境」で「そのチームに適した野球」をやり、「勝つ」こと、「勝ち続けるために必要な、意味のあるプレーを、観客に見せ付けること」だ。

けしてやってはいけないことは、
野球に適さない環境で、シアトルに向いていない野球をやり、負け続ける姿、あるいは、勝ちにつながるのかどうかどころか、何の意味があってそうするのかすらわからないプレーや選手起用を、説明もないまま、観客に晒し続けること」だ。


フェリックス・ヘルナンデス、という若いピッチャーが、ア・リーグを代表する右投手になるといわれながら、何年もの時間が無駄になった。
なぜなら、若くて血の気の多いヘルナンデスに、まったく合わない城島という言い出したらテコでも引かない異文化の馬鹿キャッチャーを無理にあてがおうとし続けたのだから、彼の成長がうまく進むわけがないし、本来出るべきだった好成績は何シーズンも遅れることになった。
ここでも、何シーズンかの貴重な時間が無駄になった。


そして、いま、スタジアムをどうにかして少しは満員にしたいと焦るシアトルの球団サイドは、キングスコートとかいって、ビール片手に大騒ぎしたい若者を集めるための集客作戦を実行し、さかんにフェリックス・ヘルナンデスの奪三振を煽りはじめている。


ヘルナンデスという南米の投手は、
なぜサイ・ヤング賞投手にステップアップできたのか。

血気にはやり、激しい性格のヘルナンデスに、まったくフラットで、抑揚がまるで無く、ガリ勉型で研究心だけはあるロブ・ジョンソンのような、「まったく正反対のタイプの性格のキャッチャー」をあてがうことで、凸凹の非常に激しいバッテリーを組む実験に成功したからだ。
ロブ・ジョンソンは、ヘルナンデスに欠けていた落ち着き、配球パターンのバリエーション、相手打者のパターン研究など、さまざまな面で補う役割を担ったのだが、ヘルナンデス自身は、おそらく、その意味の重さを今でも過小評価していると思う。


やたらと血の気は多かったが、他人の力を借りる形で落ち着きや投球術を手に入れ、周囲のチカラで一流にのし上がったヘルナンデスを、こんどは「黄色いカードを持たせた、野球をあまりよくわかってない若者たち」に奪三振を煽らせて、いったいこのチームは何がしたいのか。
ヘルナンデスがいまさらストレートだけでバカスカ三振を獲りながらゲームを押し切れるピッチャーだとでもいうのか。

これが果たして「野球に適した環境」なのか。
ヘルナンデス自身のこれからのために必要な環境なのか。

そんなこともわからないで、よく経営がやれる。よく記事を書ける。


言われないと、気づかないのか。






いまちょっと多忙で時間のゆとりがない。なので、書いていることにきちんとしたまとまりをつけ、そして他人への礼節を十分考慮している時間がない。
言いたいことを行間から汲み取ってもらえると、ありがたい。


ものすごくいい投手陣と、ものすごくダメな打線を同時に持った野球チームは、どういう勝率に落ち着くか?
これが「シンプルな答え」への第一歩だ。


「 5割 」


そりゃ、そうだろう。
投手だけで全試合を勝てるわけがない。また、いくら打撃がヘボでもシーズン全敗はしないものだ。

こういうチームが、何の「工夫」もなく、ただただ漫然とゲームを積み重ねているだけでは、勝率5割を天井にして、5割前後の勝率をフラフラと彷徨うことになる。原因はチームを指揮する立場にあるGMや監督の「ポリシーの甘さ」「自分の目指すべき道が見えていないか、間違っていること」にある。その理由を以下に書く。



ものすごくいい投手陣と、ものすごくダメな打線を同時に持った野球チームは、企業でたとえるなら、「仕入れ金額で、そのままモノを売っているだけの会社」だ。

けしてダメな会社ではない。ダメならとっくに倒産している。
ダメではない理由は、先発投手という「固定資産」は持っているからだ。企業でいうなら「抵当に入れることができる自社ビル」みたいなものだ。
だが、自社ビルがあるために高額な賃貸料を負担せずにすむのをいいことに、仕入れそのままの金額でモノを売っているだけで、「付加価値」にあたるものをまるで産み出せない会社が、成長するわけがない。「利益」が出ないのだから当然である。やがては自社ビル(投手陣)が限界に来れば、自然と倒産する。


「利益」というのは、野球の場合、何だろう。
いうなれば、勝率が負ける率を常に上回るような「良い状態」をつくりだし、貯金が増えていくことだが、何も工夫せず、仕入れ金額そのままでダラダラとモノを売っていては、ダメなのだ。あたりまえだ。
「商売」というものは、仕入れたモノを同じ金額で売るのが目的ではなくて、何か「工夫」をして「付加価値」をつけ、仕入れ金額より高い金額で売り、利益を出すことで、はじめて成り立っている。


いいたとえかどうかわからないが、シアトルの攻撃でヒットが生まれ、ランナーが1塁にいるとする。
ランナーは、得点に化ける可能性のある「資源」だが、チーム打率2割ちょっとのチームの場合は、もし何の工夫もしなければ、この「ランナーという資源」は、ほぼ間違いなく無駄になる。それがたとえ、ノーアウト2塁、あるいは、ノーアウト3塁のランナーでも、だ。同じことだ。いままでの10年で、そういうイライラするシーンを何千回見せられてきたことか。
チーム打率2割ちょっとのチームがランナーに「付加価値をつける工夫」とは、たとえば、打てもしないホームランをジッと待つばかりではなくて、少なくとも進塁打くらいは打ち、必要ならバントをし、四球を選べるような努力もし、投手に球数を投げさせ、走れるランナーは盗塁をくわだて、ベンチはヒットエンドランを仕掛けるなどして、ともかく無策のまま指をくわえてイニングを終わらないようにすることだ。
何も考えずにプレーしていたのでは、ランナーは「常に資源の無駄」に終わる。

仕入れたものをより高く売る工夫、利益の出る商売を成り立たせていく智恵を、「経営」とか「マネジメント」とかいうなら、「経営」とか「マネジメント」が何か仕事をしないかぎり、チーム打率2割ちょっとのチームでは「勝率5割を超える本当の意味の利益の出る商売」は成り立たない。
ものすごくいい投手陣と、ものすごくダメな打線を同時に持った野球チームで、ただ投手が頑張って、野手が凡退するだけでは、「勝率5割を超える本当の意味の利益の出る商売」が成立しないのだ。



シアトル・マリナーズがどういう野球チームか。
それを知るデータは、2つでいい。
細かいデータなど、一切必要ない。

チームの1試合あたりの得点 3.425
チーム防御率 3.26


マリナーズという「会社」は、投手が「3点ちょっと」とられ、打者が「3点ちょっと」とる、そういう「仕入れ構造」のチームだ。
たいていは、「相手に点をやった分」だけ、自分も「点を入れる」。つまり、どこにも利益(=この場合は、試合の得失点の「リード」)が無い。
「ギリギリの商売」だ。仕入れた金額でモノを売っているのと、まるで変わりない。いくら仕事しても、財布に札束が貯まっていかない。
だから勝率はいつも5割が「天井」になる。非常にロジカルな話である。そして「儲けを出せないマネージャー」はクズだ。



防御率というのは、「9イニングでの失点数」に換算した数字だ。だから、9イニングで防御率3点ちょっとがノルマ、という数字の意味は、「先発投手が、6イニングで絶対に2失点に抑える。つまり全部の先発投手の全登板が、クオリティ・スタートである」「リリーフピッチャー全体で、1試合に許される失点は、最大でも1点まで」というような意味になる。

打線に要求される仕事も計算してみる。

先発投手が6イニングで2点以内に抑えているとすると、その試合で打線に求められる仕事は「試合終了までに、得点を最低3点とる」ことだ。これさえできれば、同点ないしはリードして試合終盤を迎えられる。いいかえると、「ゲームをつくる」ことができる。
野球は9人でするスポーツだ。だから、どんなに凡退を繰り返しても、3イニングで打順は一巡する。9イニングで3点とるということは、打順が3回一巡する間に1点ずつ合計3点とれると、その試合で最低限の仕事ができた、という意味になる。打順が一巡する3イニングごとに1点とるということの意味は、野球の場合、たいていは「9人の打者の誰かがホームランを打つ」か、「9人の打者の誰かがタイムリーを打つ」か、「対戦相手が致命的なミスをする」という意味になる。


今シーズンのホームラン数が試合数より多いチーム、つまり、1試合あたりのホームラン数が1.000を越えるチームというのは、ア・リーグでは実は3チームしかない。あのホームランばかり打っているように感じるヤンキースやボストンも、実はホームラン数は試合数より少ない。
ましてシアトルのホームラン数は、80ゲームを消化して53本であり、ア・リーグの下から2番目の少なさだ。
だから、シアトルでは「9人の打者の誰かがホームランを打つ期待値」と、「9人の打者の誰かがタイムリーを打つ期待値」を冷静に比較する必要がある。

だが、さらに言えば、シアトルで「9人の打者の誰かがタイムリーを打つ期待値」は、調べなくても、かなり低い。ましてや「いきなりノーアウトかワンナウトで長打が出て、シングルヒットですぐに点が入る」というような簡単で理想的な形で、簡単に得点できることはほとんどない。

だからこそ、
打者に求められる仕事は、何人かのキープレーヤーを中心に、「ランナーを出す」「ランナーを進める」「ランナーをホームへ帰す」という連続した地味な作業を、チーム全体のタスクとして共有し、共同作業することだ。いまさらこんなこと言わなくてはならないのだから、アホらしいが、できてないのだからしかたない。


ここまでの計算は子供じみた簡単なものばかりだが、「実際のシアトル・マリナーズの自転車操業のゲーム感覚そのまま」であることは、シアトルの実際のゲームをいつも見ている人なら、わかると思う。

このチームがなぜ「自転車操業感覚なのか」といえば、
上に書いたこと全てを達成し続けることは、いくつかの「達成し続けるのはどうみても無理な前提」に立っているからだ。

・先発投手が全登板でクオリティ・スタート達成
・リリーフ投手は絶対に失点しない
・3イニングに1イニングは必ず得点する
・必ず誰かが1試合に1本ホームランを打つ
・ランナーが出たら、必ず得点圏に進める
・得点圏にランナーが出たら、必ずタイムリーが出る
・誰も守備で致命的エラーをしない、鉄壁の守備

こんな前提、どうみても無理がある。

ところが、だ。
その「どうみても無理がある前提」のうち、なんと、先発投手については「ほぼ理想的にこなしてきてしまった」のである。守備も、何人かの選手は合格点だ。

ならば、この企業の経営者、マネジメントに課せられた「仕入れた選手にやらせるべき仕事」は、決まりきっている。

打撃をなんとかする」ことだ。

だが、こんな曖昧な目標では組織は発展しない。従業員というものは漠然とした目標では何をしていいかわからないものなのだ。もっと細かく、具体的に目標とやるべき仕事を設定しないと、プリンシプルとして使い物にならない。たとえば、こうだ。

必要なのは、
・出塁すること。出塁したランナーを進めること。得点圏のランナーを帰すこと。これらのことを、「1試合3点の最低得点を目標に、チーム全体で行っていく共同作業」に協力できる意思と能力のある野手。
・出塁作業では、ヒットを打てる野手。打てなくても「四球」を選ぶ野手。凡退しても、投手に球数を投げさせる選手。
・ランナーを進塁させる意識では、タイムリーを打てる野手。盗塁できる野手。ランナーを進める打撃のできる選手。凡退しても、ダブルプレーにならない野手。
・投手の失点を防止できるほどの守備力を持った野手

必要でないのは、
・「1試合3点の最低得点のためのチーム全体で行う共同作業」に、協力する意思と能力のそもそも無い野手。
・失点につながるような致命的エラーを犯しやすい野手
・シチュエーションにあわせてプレーを変えられる能力がなく、簡単に相手チームのスカウティングの網にひっかかってしまう野手


ここに挙げた目標は、あくまで「たとえ」だが、
使うべき選手、使うべきでない選手くらい、サクっと分類できないで、どうする。

エリック・ウェッジの「選手選び」には、ポリシーが欠けている。相手の投手にあわせてとっかえひっかえしているだけでは、チームのポリシーなど、見えてくるわけがない。相手投手が右投手だろうと、左投手だろうと、そんなのは「どんな野球がしたいか?」にはまるで関係ない。
中核になる選手は、攻守に意識と技術の高いイチローブレンダン・ライアンダスティン・アックリーアダム・ケネディの4人だ。
なのに、ムダに選手起用を間違えまくって、ナショナルズにスイープされ、上昇の機運もあったチームをわざわざ下降線に導いたのは、明らかに監督エリック・ウェッジの責任だ。


そして去年打撃を構築することに失敗したズレンシックは、今年もまた同じミスを犯した。先発投手5人の頑張りでなんとかぶら下がってきたが、そんなアクロバットは、疲労が出てくればすぐに終わってしまう。


そのうちもっと書くつもりでいる。


観客動員数が減少傾向にある原因は、短く言うなら
シアトルの甘ったれたマネジメントの生み出す施策が、チームの現状、チームの解決すべき打撃面の課題と合わず、チャランポランで、ポリシーが甘いからだ。

どこをどうすると、このチームで、イチローをチームの重心からはずし、ペゲーロやグティエレスがバットを自由に振り回して、結果的にフリー・スインガーばかり育てるようなマネジメントが成功するというのだ。
20試合に1本打つかどうかもわからないホームランでも待ちながら試合をしていれば、勝率が5割を越え、若手も育つとでも思っているのか。馬鹿をいうな。

原宿のガキどもを騙すように、キングスコートの客たちにいくらビールを飲ませて騒がせても、チームは勝てるようになど、ならない。
外野で酔っ払って、見境なく選手にブーイングをするような節操の無いファンを必死に集客しまくってまでして、迎合して、観客席を埋めないといけなくなるほど、スタジアムをガラガラにさせてしまった原因は、おまえらの政策がアホウだからであって、イチローの責任でもなんでもない。

かつてのフリースインガーだらけの「城島問題」時代のような、質の悪い、アタマを使わない野球に戻りたいのか。目的の見えない馬鹿な施策を、いったい、いつまで続けば気がすむのだ。

シアトルの地元メディアのアホウどもも、少しは頭を使って、モノを言え。

4点とれば、あとは投手にまかせておけば、ほぼ勝てるチームなんて、球団経営者に与えられた課題としては、どれだけ「軽い」課題であることか。
先発投手のことは投手たちにまかせておいて、打撃だけ改善すればなんとか勝たせることができるような、そんな目標の単純なチームですら勝たせる工夫ができない監督、ゼネラル・マネージャーは、ダメに決まってる
あんたらの工夫が足りないこと、指揮の方針のミスが多すぎること、優柔不断さが低迷の原因になっていることを、もっとよく考えろ。






June 29, 2011

2011カレッジ・ワールドシリーズ(CWS)は、サウスカロライナがフロリダに連勝して、2010年の初優勝に続く連覇を達成した。サウスカロライナはこれでCWSにおける勝利数を合計で28まで伸ばし、CWS勝利数でも26勝で並んでいたフロリダを抜き去って、歴代単独10位。
Florida vs South Carolina - Baseball Division I - June 28, 2011 - NCAA.com

University of South Carolina repeats as College World Series champion | MLB.com: News

決勝で先発したのは、仕事を辞めて応援にかけつけた父親のエピソードで一躍有名になった、あのMichael Rothである。
なんというか、やはり何かを持っている投手だ。チャンピオンシップ・シリーズでも、ノーアウトのランナーを背負う場面でも冷静に三振がとれている。プロでも何か粘り強い仕事をしそうな気がする。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月24日、体調の悪いダニー・ハルツェンを3イニングしか使えなかったヴァージニアが敗れ、CWS決勝カードはフロリダ対サウスカロライナに。ちょっとユニークなピッチング・スタイルのMichael Rothと、彼の父親との絆。

サウスカロライナを連覇に導いたヘッドコーチRay Tannerは、ジャスティン・スモークの父、故キース・スモークに息子スの背番号の入ったチーム・ジャージーを贈った、あのレイ・タナーである。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月25日、「2月のサウスカロライナ、父と息子のキャッチボール」。February in South Carolina, a father and his son played catch.






June 26, 2011

2011カレッジ・ワールドシリーズ(CWS)は、Bracket 2の決勝、ヴァージニア対サウスカロライナ戦が行われ、サウスカロライナが延長13回裏に相手のエラーでサヨナラ勝ち。サウスカロライナはこれでCWSにおける勝利数を26とし、歴代ベスト10位になった。

2011カレッジ・ワールドシリーズ ロゴ
27日から行われるチャンピオンシップ・シリーズは、フロリダ対サウスカロライナ
決勝に進むのは、フロリダが7回目、サウスカロライナ11回目。フロリダが優勝すれば初優勝、サウスカロライナが優勝すれば2回目の優勝で、去年に続く2連覇。
College World Series - Wikipedia, the free encyclopedia


ヴァージニア先発のダニー・ハルツェンは、打者10人から8三振を奪うという快投ぶり。だが3イニング終えた時点で降板。見ていて最初は突然の降板にびっくりしたが、どうやら今日もともと体調が悪く、コーチのブライアン・オコーナーは「ものすごく明るい将来を控えた若者だし、リスクを犯すわけにいかない」と、最初から短いイニングの登板と決めていたらしい。
降板後のハルツェン自身はあきらかに投げられないことにずっとイライラしていたが、ありがたいコーチである。
Virginia coach Brian O'Connor said. "But my plan coming into the game was for him to have a short stint. He was feeling under the weather today, and he was gutting it out as much as he could. He was in pretty miserable shape after the first inning. And this kid's got a very, very bright future. And I was not going to put that at risk of him feeling under the weather on four days' rest and putting his career in jeopardy."
South Carolina won a 13 inning game to advance to the College World Series Final against the University of Florida | MLB.com: News
under the weather:「体調が悪い」


もしハルツェンの体調が万全だったら明らかに結果は違うものになっていたことだろうが、これもスポーツの勝負のアヤ。
それに、ハルツェン降板後のヴァージニアには勝機が何度となくあった。延長で3度も満塁のチャンスを作りながら、2回もタブルプレーで残塁の山を築いた。敗戦はヴァージニアの自滅である。

それにしても両チーム、攻撃も粗いが、守備のエラーが多すぎる。正直、見ているのがつらいほどの低レベルで、途中で観戦を止めてしまった(苦笑)両チームともドラフトで指名されているプロ予備軍を多数抱えているのだから、もうちょっとしっかりプレーしてもらいたい。


そういう、ちょっと残念な凡戦の中で、見ていて妙に興味ひかれたのは、サウスカロライナの先発のMichael Rothのピッチングのユニークさ。
今年のドラフトでクリーブランドから31順目(全体938位)で指名された左腕なのだが、スリークオーターで投げたり、サイドスローで投げたり、ノラリクラリした変則的スタイルが、かえって妙にそそられる。どこにでも転がっているノーコンの剛球投手よりぜんぜん面白い。クリーブランドはいい買い物をしたと思う。
31st Round of the 2011 MLB June Amateur Draft - Baseball-Reference.com


Michael Rothには、このカレッジ・ワールドシリーズでちょっとしたエピソードが生まれた。

Michael Rothはサウスカロライナ大学の地元出身の選手で、彼の父親DavidはサウスカロライナのGreenville Countyで某外国メーカー(日本車ではない)の自動車ディーラーで働いている。
去年サウスカロライナ大学は悲願のカレッジ・ワールドシリーズ初優勝を飾った記念すべきシーズンだったわけで、Michael Rothは37回1/3を投げて自責点0.97と、初優勝に大きく貢献した立役者のひとりになったのだが、このとき、Michael Rothの父は、会社を休んで応援に行くことができなかった。
Player Bio: Michael Roth - SOUTH CAROLINA GAMECOCKS

今回のサウスカロライナの2年連続のカレッジワールドシリーズ進出で、父Davidは、こんどこそは息子の晴れ姿を見ようと、大西洋岸のサウスカロライナから中部のネブラスカ州オマハまで応援にかけつけているのだが、実は、今回の応援実現のために、勤めていた自動車ディーラーを辞めているのである。

この話題は、最初にMichael Rothが
"My dad had to quit his job to make it out to Omaha."
と、「息子の応援をしようとした父が、会社に失業させられた」というニュアンスでツイートしたことなどもあって、全米レベルのニュースになり、勤務先の自動車ディーラーには400本を越えるファンから抗議電話が殺到したらしい。

Roth didn't expect focus on dad: Pitcher's father quit job to watch son pitch in Omaha | The Post and Courier, Charleston SC - News, Sports, Entertainment

David Roth, Father Of South Carolina Pitcher Michael Roth, Quits Job To See Son Pitch

After Roth’s father quits job to go to CWS, employer takes the heat

もうここまで世間が盛り上がると、会社側もメディアにステートメントを出さないわけにはいかないわけで、こんなニュアンスのコメントを出した。
「Davidは従業員としてよくやってくれていた。今回辞めることになったのは、あくまで彼の個人的な事情と意思だ。会社側としては残念に思っているし、サウスカロライナのカレッジ・ワールドシリーズも応援している。頑張ってほしい。」
資料:会社のステートメントへのリンクを含む記事
Car Dealership Issues Statement on Michael Roth's Dad, David | wltx.com
まぁ、想定内というか、なんとも味気ないコメントだこと(笑)まぁ、こんなものだろう。ちなみに、Yahooの写真でみるDavid父ちゃんは、怒ったらマジに怖そうな、まさに「星一徹」風味のゴツ過ぎる親父さんである(笑)


Michael Rothの父親の雇用問題がどう決着するか、とか、息子のために仕事を辞めてしまうことの事の良し悪しは、まぁ野球とは関係ないことだし、価値観の違いによって判断の分かれることだ。
それはそれとして、Michael Rothの父親のエピソードと、今年4月にジャスティン・スモークの父親キース氏が病気で亡くなられたときの話とあわせると、アメリカ南部の「家族を大切にする気風」がよくわかる。
スモークの父、故キース・スモーク氏も、息子に、野球と同じ重さをもって厳格な礼節を叩き込むタイプの父親だったらしいが、また同時に、息子の活躍を誰よりも喜び、誇りに思う典型的なアメリカ南部の良き父親でもあった。、
見た目の風貌が非常に怖いMichael Rothの父親Davidだが(笑)、たぶん息子の活躍を目を細めて見るときの表情は、故キース・スモーク氏と同じように優しげなのだろう。
結局はこうした息子想いの南部の父親たちが立派な野球選手を育てて全米のMLBチームに送り出しているのだ。家族を思う気風の行き過ぎについて、外部から批判することに歴史的な意義がなかったわけではないが、息子の一生に一度あるかないかの大舞台の応援くらい許してやれないのは、器量が狭いと言われてもしかたがない。


何度も書いてきていることだが、
やはりアメリカにおけるベースボールは、父がグラブを持たせた息子を連れてスタジアムに行くといったファミリー・アフェアーなのであり、ベースボールは、ケン・バーンズが描くように、アメリカの家族を繋ぐ文化的な「ベース」である。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月25日、「2月のサウスカロライナ、父と息子のキャッチボール」。February in South Carolina, a father and his son played catch.






June 25, 2011

ニューヨーク・タイムズにちょっとイチローのことを触れた記事があった。書いたのは、Derek VanRiperという、なんとなくオランダ系を思わせる名前のRotoWire所属のライターだ。
Fantasy Focus: Batted-Ball Types - NYTimes.com

RotoWire、というのは、Fantasy系の情報を広くスポーツメディアに提供しているウィスコンシンの会社で、提供先は、ESPN, Yahoo! Sports, FoxSports.com, NASCAR.com, NFL.com, NBA.com, and Baseball Prospectusと、大手スポーツメディアの大半はこの会社の提供する情報やライターを使っているといっていい。
シアトルのGMジャック・ズレンシックが、マリナーズの統計分析部門をまかせているTony Blenginoという男も、もとはRotoWireで野球のスタッツに関する記事を書いていたライターで、ズレンシックがミルウォーキーにいた頃から使っている。
下記の記述で見るかぎりは、ズレンシックの数字趣味(笑)は、昔からのものではなく、かなり付け焼刃風のようだ。
"I've always had that statistical information in addition to scouting," said Blengino, a former baseball stats writer for RotoWire, whose first job out of college was as a CPA. "It's an aspect I brought to Jack when we were in Milwaukee together. That's where my core is. That's where I started."
Mariners | Mariners plan department devoted to statistical analysis | Seattle Times Newspaper

ニューヨーク・タイムズの話に戻ろう。
この記事の本来の話題は、去年コロラドで24歳で大ブレイクし、シルバースラッガー賞とゴールドグラブを同時受賞し、打率.336で首位打者にもなったCarlos Gonzalezの今シーズンのバッティングの話。

ライターDerek VanRiperいわく、「Baseball Referenceによれば、今年のナ・リーグではライナーの70%以上がヒットになるらしいが、今年のCarlos Gonzalezの打撃数値がイマイチなのは、去年は20%以上もあったライナー率が、今年低下していることにある」とか、そういう趣旨のことを言いたいらしい。
       ゴロ フライ ライナー(ライナー率)
2010年  194  167  95(20.8%)
2011年  101  76   39(18.1%)
(2011年6月24日現在)
Carlos Gonzalez » Statistics » Batting | FanGraphs Baseball

アンタねぇ・・(笑)もっともらしいように書いてるけど、実にくだらない(笑)日本にもよくいるよな。こういう、「ライナーこそが野球」とか勘違いしてるヤツ(笑)
「ライナーが減ったから、ヒットが減った」んじゃなくてねぇ、単純に、活躍した翌年だから他球団にスカウティングされ、その結果、ライナーも含めてバットの芯で打たせてもらえなくなって、ヒット自体が減ったってだけでしょうが(笑)フライも減ってるのは見てないのかね。まぁ、いいんだけどさ(笑)


まぁ、ヘボいライターさんのテキトーすぎる分析など、本当はどうでもいい。問題は、そのあとだ。

このしょっぱいライターさんは、「ライナーはヒットになる確率が非常に高い。ライナーが減るとヒットも減る」とかいう(笑)出来損ないのギミック(笑)を披露しつつ、Carlos Gonzalezに関してダラダラ、ダラダラ書いたあとで、「ライナーはヒットになる確率が非常に高い」という世紀の大発見(爆笑)に「あてはまらない打者4人」を挙げているのだが、こちらのほうがむしろずっと面白い。

ハンリー・ラミレス   FLO (14.3/55.1/30.6)
イチロー        SEA (18.1/60.9/21.0)
アレックス・リオス  CWS (19.1/45.0/35.9)
ケイシー・マギー    MIL (13.8/53.2/33.0)
(数字は、ライナー/ゴロ/フライのそれぞれの率)


イチローに関する記述で、ほほぉ、と思ったのは、「2011年のゴロ率が約60%と高く、これはあの262本のシーズン最多安打を打った2004年の63.7%に次いで、キャリア2位のパーセンテージ」だという記述。なるほど。ゴロが多いから不調というわけではないのだな。ふむふむ。そこだけは、教えてくれてありがとう(笑)

Derek VanRiperは次のように書いて、イチローについての詳しい分析を諦めている(笑)
The usual rules do not apply to Ichiro.
「イチローには、普通のルールはあてはまらない」
そんなことはね、最初からわかってます。アナリスト業界の親玉ビル・ジェームズ親父も、イチローについてはとっくに、アンタとまったく同じこと言ってサジを投げてますって(笑)


シルバースラッガー賞を2回受賞しているフロリダのスラッガー、ハンリー・ラミレスが、ホームラン数の割りには「ライナーが少なく、ゴロの多い打者だ」というデータもちょっと意外。面白い。
Hanley Ramirez Statistics and History - Baseball-Reference.com


(ちなみに、これはイチローのゴロ/フライ/ライナーのそれぞれのBABIPについて書かれたFangraphのDavid Golebiewskiによる記事。Ichiro’s Silent Season | FanGraphs Baseball
Baseball NationのRob Neyerも、この記事を参考に今シーズンのイチローの不振について記事を書いているくらいの記事で、数字がわかりやすく、説得力もある。
ただ、イチローの数字上、最もBABIPが低下しているのは、Rob Neyerが「イチローの走力低下」を指摘している「ゴロ」ではなく、むしろDerek VanRiperがヒットの源泉だと思っている「ライナー」だ。これまで7割以上がヒットになってきた「ライナー」が、今シーズンは5割ちょっとしかヒットになっていない。これはもしかすると、ゴロやライナーが野手の正面をついているのは、守備のシフトもあるのかもしれない。)






June 23, 2011

シアトル時代のMLB最低レベルの成績とはまるで無関係に、高額長期契約が、それも契約満了年の5月に結ばれるという、異常な「コネ」の存在。MLBらしからぬプレーぶりを長年放置したチームの生温さに耐えかねて、最後には先発投手陣みずからが一斉拒否して反乱を起こしたことで、ようやく決着を見たシアトル・マリナーズにおける「城島問題」。
この選手の抱え込んでいる無意味で異常な「コネ」が、チームの長期的低迷や有力選手の流出にどれほど巨大なマイナスファクターとして働いていたことか。
と、まぁ、これくらいの話は、ようやく日本でも、阪神における「第二の城島問題」によって、その意味は知れ渡ったことだろう。

クチでいくら言っても、つまり、ブログの文字を読む程度では、シアトルの先発投手陣にどんな「異常事態」が起こっていたのか、頭が回らなかった人たちも多いだろう。
だが「身近な球団、阪神で似たような事件を味わった」ことで、ようやく「ああ、『城島問題』とかいうやつはそういう意味だったのか・・・」とわかった、ということだろう。やれやれ。

なにはともあれ、このブログで書いてきたことの大半の意味が、MLBやシアトル・マリナーズに関心の無い人にも、十分すぎるほど知れ渡ったはずと、最近は考えている。
どう考えても半月板損傷からプレーヤーとしての能力が100%回復することなどありえないポンコツ捕手さんについては、積極的に書く理由は、もうどこにもない。適度かつ適当にデータを収集しておく程度で十分だ。


そんなところに、突然
ロジャー・ハンセンが日本に現れたという。
これについては、メモを残さないわけにもいかない。

ロジャー・ハンセンという、わけのわからない人物が、いったいどういう人物で、どういう理由があってわざわざ阪神のマイナーを訪問したりするのか。
本人に聞いてみたわけでもないからロジャー・ハンセン来日の正確な理由はブログ主にだってわかるはずもないが、ロジャー・ハンセンなる人間がどこの誰だかわからない日本の野球ファンにしてみれば、このニュース、チンプンカンプンだろう。

少なくとも、ロジャー・ハンセンがどういう人物か、知ることで、この「城島がらみで日本にも知られるようになっただけの、特殊な人物」が、こともあろうに「阪神のマイナー」に、それも「シーズン中にわざわざやってくる」ことが、いかに「ありえないことか」、ニュアンスを理解してもらえたら幸いだ。
記事には「城島と接触はしてない」なんていう記述があるが、これまでの経緯を少しは知ってもらうと、「城島と接触はしてない」なんて与太話が「どのくらい嘘くさい」か、少しは理解してもらえるはずだ。
阪神・城島にマリナーズ時代の恩師エール (サンケイスポーツ) - Yahoo!ニュース

まずは事実から。
6月23日、登録抹消され阪神のマイナーにいるらしいダメ捕手城島のもとに、「あの」シアトルのマイナーのキャッチング・コーディネーターロジャー・ハンセンが、まったく何の前触れもなく、いきなり訪問した、というニュースである。


いっておくと、MLBは、マイナーも含めて、シーズンオフでもなんでもない。なのに、いくらマイナーとはいえ、現場の人間、それも他球団の関係者がわざわざ何時間もかけて飛行機に乗り、アメリカから日本にやってきて、しかも違う国の球団とはいえ、他球団に接触しているのだ。

異常でないわけがない


記事には「城島と対面はならなかった」とある。
そんなゴマカシ、誰が信じるのだ(爆笑)馬鹿な記者だ。

ロジャー・ハンセンと城島が、対面(あるいは連絡)しないわけがない(笑)子供だましにも程がある(笑)


わけがわかっていない人にも、わかるように言うと、例えばMLBのルールとして、「タンパリング」というルールがある。
たとえばフリー・エージェントになっていない選手、つまり、「契約交渉可能状態に至っていない」選手に、具体的に契約を提示して移籍を勧誘したり、人的に接触したりするような「交渉期間を決めた全体ルールにそむいて、人を出し抜くような選手獲得のための交渉行為」を、「タンパリング」といい、厳格に禁止されている。このルールについては一度書いたことがある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年10月22日、元阪神監督岡田氏の指摘する「城島事前交渉契約疑惑」簡単まとめ(結果:まさにスポニチの「事前」報道と岡田氏の指摘どおり、城島、阪神に入団決定)

上の記事があえて「城島と対面はならなかった」と、わざわざ聞いてもいないのにわざわざ「ただし書き」するのは、タンパリングに抵触するようなことがあるのではないか?と外部の人間に詮索されるのを恐れてのことだろうと想像する。

(笑)

馬鹿だねぇ(笑)

そもそもタンパリングが怖いなら、記事になどしなければいいし、ロジャー・ハンセンも疑われるような行動をしなければいいのだ。
ロジャー・ハンセンが、城島との接触以外に、どんな用件があってわざわざシーズン中に阪神のマイナーに出向くというのか(笑)なにか「選手の契約にまつわる用件」以外に、どんな用件があって日本の球団のマイナーを訪れるというのだ。
だいたい、シーズン中にチームを離れるのが許されるコーチに、そもそもシアトルのマイナーで「するべき仕事」があるとは思えない。まぁ、阪神の先発投手陣の中に「もう城島とのバッテリーは投手陣の総意として拒否しようぜ」という空気があって、シアトル時代のバッテリー拒否と同じようなことが起こりつつあるのを、「仲介」するために、シアトル時代に同じ任にあたったロジャー・ハンセンに依頼があった、とでもいうのなら、話は少しはわかりやすくなるが(笑)


少なくともいえるのは、やはりかねてからこのブログで予測してきたとおり、ロジャー・ハンセンと城島の「関係」が、「普通ではないコネ関係」にあることが明白になった。さすが「コネ島」と言われた男なだけはある(笑) 
一選手とチームのコーチが「特殊なコネ関係」にあるのでは、チームのスタメン選びがマトモに機能するはずがない。


そもそも、ロジャー・ハンセンという人物は、MLBでコーチ経験を積み、シアトルのマイナーに昔からコーチとして在籍していたわけでもなんでもない。
単に「城島とのバッテリーを拒絶反応を起こしている投手陣と、城島の間をとりもつためだけに雇われた」、ただの「人間関係コーディネーター」に過ぎない。以下の記述を参照。

結論的にいえば、ロジャー・ハンセンは、「城島問題」が発覚しつつあった2008年前後に、城島とバッテリーを組むのを嫌う投手陣グループに対して、城島をとりなすためにチームが使った仲介者だったのである。(もちろん、その試みは大失敗し、2009年には主力先発投手の大部分が城島とバッテリーを組むのを拒否することになる)
Mariners | Part I: M's puzzle tougher to reshape with big contracts | Seattle Times Newspaper
Carlos Silva was another pitcher who got signals crossed with Johjima early in the season and was frustrated. The Mariners later brought in catching consultant Roger Hansen to get pitchers and Johjima on the same page.

出典:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月14日、過去に城島擁護者だったベンチコーチ、ロジャー・ハンセンが現在も続けている無意味な捕手トレーニング手法。マイナーコーチ時代から続けてきた「手抜きのスパルタ方式」でプロスペクトを壊し続けてきた責任を徹底批判する。



そういう、ただの「とりなし役」似すぎなかった人物が、どうしてシアトルのマイナーに居座っているかというと、1軍にあたるマリナーズでは成績不振から監督の解任劇が何度か起きているが、マイナーのスタッフのほうはその間も一新されていない、という問題点がある。
特に、2010年の秋に、一時的にマリナーズが指揮を自軍のマイナーの監督・コーチに任せたときに、ロジャー・ハンセンは、かつての城島のライバルで、2010年にようやく正捕手におさまったロブ・ジョンソンを正捕手の座から引きずり下ろして、自分の推すアダム・ムーアを正捕手に無理矢理押し込んでいる。
いかに「城島とロジャー・ハンセンの関係」が異常かがわかる。

ただの人間関係コーディネーターにすぎないロジャー・ハンセンがこれまで、いかにシアトルのマイナーのキャッチャー候補選手たちに無意味な練習を強いて、「壊し続けてきたか」を示す記事は、以下を参照。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月21日、ダグアウト前の「捕れるフライ」を、ダグアウトにフライが入るわけでもないのに「ビビッて捕らない」アダム・ムーア。ロジャー・ハンセンのアホ練習がつくりだしたのは、「フライ・イップス」で使い物にならない、ただの臆病者。


こうした経緯などは、日本のメディアの流す情報ではほとんどわからない。
ロジャー・ハンセンがどういう人物で、ダメ捕手城島といかに「特殊なコネ関係」にあるか。タンパリングとはどういう制度か。もし、今後、ダメ捕手城島自身の移籍も含めて阪神とMLBの間で選手の移動があるとか、阪神の投手陣にバッテリー拒否の動きがあるとかしたら、この記事を思い出してもらいたいものだ。






June 22, 2011

2011カレッジ・ワールドシリーズが、ネブラスカ州オマハのアメリトレード・パークで行われている。優勝チームを決める3ゲーム制のチャンピオンシップ・シリーズは6月27日から。

2011カレッジ・ワールドシリーズ ロゴ
シアトルが今年のドラフトで1位指名したダニー・ハルツェンは、ヴァージニア大学の投手兼DHとして、Bracket 2でチャンピオンシップ・シリーズ進出をめざしてプレーしている。
NCAA Division I Baseball Championship Bracket - NCAA.com


Bracket 1
ノースカロライナ(ダスティン・アックリーの母校)
ヴァンダービルト(タンパベイのデビット・プライスの母校)
テキサス
フロリダ

フロリダが、テキサスを8-4(6月18日)、ヴァンダービルトを3-1(6月21日)と連破して、早々と6月24日のBracket 1決勝進出を決めて、対戦相手が決まるのを待っているところ。
フロリダの相手は、ノースカロライナ対ヴァンダービルトの勝者(6月22日)。この2チームは既に一度6月18日に対戦していて、7-3でヴァンダービルトが勝っている。チャンピオンシップシリーズを「カロライナ・シリーズ」にするためには、ノースカロライナはまず強敵ヴァンダービルトに雪辱した上で、フロリダにも勝たなければならない。
(6/22追記)
2度目の対戦となったノースカロライナ対ヴァンダービルトは、序盤に得点を挙げたヴァンダービルトが5−1でまたもや勝利。これでBracket 1決勝はフロリダ対ヴァンダービルトのSoutheasternカンファレンス同士の対決に。
North Carolina vs Vanderbilt - Baseball Division I - June 22, 2011 - NCAA.com

Bracket 2
カリフォルニア
ヴァージニア(ダニー・ハルツェンがプレー中。ライアン・ジマーマンの母校)
サウスカロライナ(ジャスティン・スモークの母校)
テキサスA&M

Bracket 2は、ジャスティン・スモークの母校サウスカロライナが既に決勝(6月24日)進出を決めている。決勝の相手は、6月23日のヴァージニアvsカリフォルニアの勝者。ダニー・ハルツェンのヴァージニア大学は、既に一度カリフォルニアに勝っているため、Bracket 2決勝は、サウスカロライナ対ヴァージニアというカードになる可能性が高い。カンファレンスでいうなら、SEC対ACCという大西洋岸のライバルカンファレンス対決だ。

ヴァージニア大学は、49勝9敗と、勝率トップで優勝候補のひとつとして今年のカレッジワールドシリーズに進出した。
6月19日のカリフォルニア大学との初戦で、エース ダニー・ハルツェンを先発させて4-1で勝ったものの、6月21日に行われたBracket 2 セミファイナルでは優勝候補の一角サウスカロライナ大学との対戦で、中軸打者を中心に13安打7得点を許し、完全に打ち負けている。ちなみにハルツェンは、サウスカロライナ戦では「5番DH」としての出場し、4打数1安打。
Boxscore(サウスカロライナ対ヴァージニア)
South Carolina vs Virginia - Baseball Division I - June 21, 2011 - NCAA.com
もしBracket 2決勝でヴァージニアが強打のサウスカロライナと再戦することになったら、こんどはダニー・ハルツェンが投げるゲームになるだろうから、違う試合結果が期待できるかもしれない。

ちなみに、今週シアトルが対戦しているナショナルズのサード、ライアン・ジマーマンはヴァージニア大学出身で、ダニー・ハルツェンの先輩。
University of Virginia Baseball Players - Baseball-Reference.com


サウスカロライナとノースカロライナの特別なライバル心を巡るちょっとややこしい話や、カレッジ・バスケットの昔のスキャンダル、サウスカロライナが現在ヴァージニアが所属しているAtlantic Coast Conferenceを脱退して、別のカンファレンス所属になった経緯については、ダニー・ハルツェンがドラフトされた日に書いた。
決勝が、ノースカロライナ対サウスカロライナの「カロライナ・シリーズ」になるか、もしくは、ノースカロライナ対ヴァージニアの、同一カンファレンス校同士の対決「アトランティック・コースト・シリーズ」になるのかは、今のところまだわからない。
サウスカロライナとしては、かつて所属していたACCの所属大学に負けて、チャンピオンシップ・シリーズがACC所属校同士の対戦になることは意地でも避けたいだろうから、Bracket 2決勝がもしヴァージニア対サウスカロライナになったとしたら、一度対戦しているカードでもあることだし、火花の散る意地の張り合いになることは間違いない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月6日、2011ドラフトでシアトルがヴァージニア大学の投手Danny Hultzenを指名したので、昔のAtlantic Coast Conferenceでの「Frank McGuireの苦い話題」について書いてみた。

今年のカレッジ・ワールドシリーズの出場校を見てもらうとわかるように、MLBへの選手の供給源であるカレッジ・ベースボールの強豪地図は、かつてのUSC(南カリフォルニア大学)や、カリフォルニア州立大学フラートン、アリゾナといった太平洋岸の学校(カンファレンスでいうとBig Westとか、Pac-10)から、ノースカロライナ、サウスカロライナ、ヴァージニア、フロリダ、マイアミ(カンファレンスでいうとACCとか、SECとか、SCとか)といった大西洋岸の大学に、重心がややシフトしてきている。

このところ、シアトルで活躍している若手選手で、ダスティン・アックリーがノースカロライナ大学、ジャスティン・スモークがサウスカロライナ大学、そして、2011年カレッジ・ワールドシリーズで頑張っているダニー・ハルツェンがヴァージニア大学と、3人とも揃いも揃って「大西洋岸の大学の選手ばかり」なわけだが、これは「この数年のカレッジ・ベースボールの勢力地図の変化」を反映したもので、なにも偶然ではない。


トロイ・トロウィツキーや、ジェイソン・バルガスジェレッド・ウィーバーが卒業した西海岸のBig WestカンファレンスのLong Beach State、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の話題はこちら。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月16日、トロイ・トゥロウィツキー、ジェイソン・バルガス、ジェレッド・ウィーバー、ターメル・スレッジの母校、カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の「ダートバッグ野球」。アメリカのカレッジベースボールとMLBの深い繋がり。

2001年にPac-10からスタンフォードのエースとしてカレッジ・ワールドシリーズ決勝まで進んだボルチモアの日系4世ジェレミー・ガスリーの話題はこちら。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月2日、3回という早いイニングでイチローを敬遠したバック・ショーウォルターの「サムライ対策」。


Pac-10Pac-10

ビッグ・ウェストBig West

ACC所属大学ACC, Atlantic Coast Conference

Southeastern ConferenceSoutheastern Conference






June 20, 2011

これはもう、野球というより、現代アート。ヴィンチェンゾ・ナタリ監督のカナダ映画「CUBEを見ているかのような、コンテンポラリーアート感覚のピッチングだ。

CUBEのポスター


何度も書いてきているように、チェンジアップだけを武器にして打者と対戦していた頃とまったく違い、今のジェイソン・バルガスは、ファストボールカットボールチェンジアップ、この3つの球種の絶妙な「トライアングル・ローテーション」からピッチングを構成することで、打者を翻弄することができるようになった。

フィラデルフィアのいまの打線の核は、いざというときにあまり打たないライアン・ハワードでも、今シーズン不調のチェイス・アトリーでもなくて、あきらかに2番シェイン・ビクトリーノなのだが、このビクトリーノをバルガスが丁寧に料理したのが完封につながった。大事なことなのでメモをとっておこう。

第1打席 ストレート中心
チェンジアップ(ボール)
ストレート(見逃しストライク)
カットボール(ファウル)
ストレート(ボール)
カットボール 三振

第2打席 チェンジアップ中心
チェンジアップ(ボール)
チェンジアップ サードファウルフライ

第3打席 たった1球投げたカーブ
カットボール(見逃しストライク)
カーブ ショートポップフライ

第4打席 カットボール中心
カットボール(見逃しストライク)
チェンジアップ(ファウル)
カットボール(ボール)
ストレート センターフライ

4つの打席をこんどは球種別に見てみる。
投げた球種は4つだ。

チェンジアップ(4球)
   ボール、ボール、サードファウルフライ、ファウル
カットボール(4球)
   ファウル、三振、見逃しストライク、ボール
ストレート(3球)
   見逃しストライク、ボール、センターフライ
カーブ(1球)
   ショートポップフライ

実に美しい。
使った4つの球種、その全てで、
 ひとつずつアウトにうちとっている
」。


バルガスがいかにビクトリーノに的を絞らせなかったか、
細かい説明など不要だろう。


ビクトリーノに対して「使った4つの球種すべてで凡退させた」だけでなく、各打席の初球に使った球種の「微妙な」バラつき感、各打席のピッチングの中心球種のバラつき感。
どこを見ても、バルガスのピッチングは常に、極端すぎない程度の 『ゆるい意外性の感覚』 に満ちていて、まるで墨に水をかけて曖昧に暈す(ぼかす)かのように、 『法則性の出現』 を非常に上手く消している

球種を6つとか7つとか、数多く使えば使うほど的を絞らせないですむか、というと、そうでもない。それぞれの球種のレベルが低くては意味がないし、たくさんの球種を持っている投手に限って、フォークとか、本当の勝負球種はひとつだけしかなかったりするのも、人間という動物の不思議なところだ。
また、投球ごとに必ずコースも球種も変える、というような「極端すぎるバラつき」も、実は意外性は無い。かえって法則性がにじみ出てしまう。

適度に同じで、適度に違う。いつ変わるのか、わからない。
そういう「曖昧さ」こそが、「中心」というものを消滅させる。


そう。これは
中心の無い三角形が自由にローテーションする
中心の無い世界」。
トライアングル・ローテーション」(©damejima)だ。

Rotation of a triangle







これがプロなんです。「投球術」というやつなんです。


ジェイソン・バルガス、フィリーズ完封、おめでとう!!!!!
間違いなく、今シーズンのバルガスのベストゲーム。全119球、ストライク84球ボール35球。被安打3、四球2。特に、今のフィリーズ打線の核になっているジミー・ロリンズショーン・ビクトリーノのバットを完璧に抑えこんだのが、最大のポイントだろう。
球審は2009年オールスターの球審もつとめた経験のあるDana DeMuth。今日の彼のコールは非常に正確。素晴らしい投手戦を支えた影の立役者。


バルガス5勝目
いやっほぉおおおおおおおおおぉぉぉ!!!!!!!!!

拍手拍手拍手

Philadelphia Phillies at Seattle Mariners - June 19, 2011 | MLB.com Classic

今日は父の日だったから、スタジアムは子供連れで超満員。
そしてファンだけでなく、ジェイソン・バルガスの2人の娘さん、ブランドン・リーグの2人の娘さん、監督エリック・ウェッジの2人の子供たちはじめ、選手の子供たちが大勢スタジアムにやってきていた。(どういうわけか、選手の子供たちはほとんど「女の子」ばかりだった 笑)

ラリー・フライは、三つ子を連れたパパにプレゼントされたが、「ビッグパパ」バルガスは、フィリーを完封して、2人の娘たちに父の日の勝利をプレゼントした。

今日はイチメーターの人も、最後はいつもの「イチメーター」の看板を「Viva. Las. Vargas」ってプレートに持ち変えて、バルガスの完封を応援してた。


ほんとうにいい日曜日&父の日。
最高!






June 18, 2011

ダスティン・アックリーがメジャーデビューしたフィリー相手の初戦。観客34,345人。わが天才イチローが3安打を固め打ちして、新人君に勝利を贈った。粋なことをするもんだ。いやー、素晴らしいバッティング。ピネダも練習しているチェンジアップをついに実戦投入して、対戦相手にスカウティングされはじめている自分のピッチングを立て直しにかかって7勝目。(3回表二死ランナー無しの場面でジミー・ロリンズに投げた2球目、6回表ジミーロリンズへの3球目など)

Gameday:Philadelphia Phillies at Seattle Mariners - June 17, 2011 | MLB.com Classic
判定マップ:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool 2011年6月17日フィラデルフィア第1戦
(今日の判定は、左バッターのインコースが狭すぎで、アウトコースが超広い。つまり、左バッターだけゾーン全体が三塁側に大きくズレてる。球審Doug Eddings

2011年6月17日 球審Doug Eddingsの判定マップ


アックリーはメジャー初ヒットのバッティング面より、8回表の5-4-3のダブルプレーがよかったな。カルロス・ルイーズのハードスライディングを綺麗に避けながらのストロングスロー。なかなかだった。長年セカンドベースマンを誰にするかで悩まされてきたシアトルだけど、悩み事が、これでひとつ減った。
なんせ、ノースカロライナ大学出身のダスティン・アックリーと、サウスカロライナ大学出身のジャスティン・スモークの、「Carolina Double カロライナ・ダブル」(©damejima)だからね。なんとも、びゅーてほー。アトランティック・コーストの野球ファンも喜んだんちゃないのかな。(ちなみに、サウスカロライナにはCarolina Double Marathonっていうハードな耐久マラソンレースが実際あるらしい 笑)

ダスティン・アックリーの「カロライナ・ダブル」について、ブレンダン・ライアン
"That's not an easy play," Ryan said. "It just shows more poise and his calm. That calm is something that can't really be taught, so I think we're all pretty impressed."
「いンやぁ、アレ、簡単なプレーじゃなかったわねぇ。なんつぅの、あの子、落ち着きあるんだがね。ああいう「落ち着き」ってぇのは、教えようとして教えられるもんじゃないンよね。うん。オジちゃん、感心ちまちた。だから、このあとエビフリャー食べるがね。アンタも来る?エドガー・マルチネス通りでクルマ止めて待っとるがね。」
Dustin Ackley begins highly anticipated Mariners career in style | Mariners.com: News

ついでだから、復調したイチローのバッティングについて、エリック・ウェッジ
Mariners manager Eric Wedge said after the game. "But you see that bat head staying in the zone a lot longer. The plane of his bat is where it needs to be. Like I've said before, he's a tough hitter to critique because it's a very, very unique approach.
「バットヘッドが、ベスポジにピタっ。スイングの軌道面も、理想的なとこにピタっ。前もいうたんやけどさ、イチローいうたら、どうにもコメントしにくいバッターやねんな。そらそうよ。バッティングに対するアプローチがあまりにも超絶ユニークすぎやわ。あんなん、他におらん。それにしても、このイカ焼きうまいわ。阪神百貨店で買うたんやで。さすがイチローの国の食いもんやで。」
Mariners Blog | Mariners put a complete team effort into this one on offense, defense and the mound | Seattle Times Newspaper


ひさしぶりにラウル・イバニェスの姿も確かめられて、それも大満足。シアトルはレフト、空けて待ってますよ? イバちゃん(笑)ペゲーロより、イバちゃんがいい(笑)

イチロー RF
ライアン SS
グティエレス CF アダム・ジョーンズ CF
イバニェス LF
スモーク 1B
アックリー 2B
オリーボ C
ケネディ DH
募集中 3B

サード? ライアン・ジマーマンがいいな(笑)






ついに3000本安打まであと6本と迫ったデレク・ジーターだったが、ふくらはぎを痛めたとかで15日間の故障者リスト入りしてしまった。

このジーター、ちょうどイチローと同じ「37歳」だ。

PECOTAシステムの開発者でもあるNate Silverはニューヨーク・タイムズの寄稿者のひとりでもあり、ここ最近のジーターの打撃成績低下について、Derek Jeter and the Curse of Age(「ジーターと、老化の害」)とかいう、まるでハリー・ポッターのタイトルみたいな記事(笑)をニューヨーク・タイムズに書いている。

この記事、要は「いくら名選手でも、37歳という年齢の壁はなかなか超えられないものだ」という趣旨のもとに書いているわけだが、そもそも『37歳で老化した名選手』のデータの集め方が、ちょっと目に余るほど手抜きが酷くて、笑ってしまう(笑)
もしブログ主がジーターなら、確実にハンマーか何か金属製のものを持って、こいつのところに怒鳴りこんでいると思う(笑)
Derek Jeter and the Curse of Age - NYTimes.com

Nate Silverのやり方は、過去の名ショートストップの「37歳時点での打撃成績」をいくつか挙げながら、「ジーターの成績低下は彼の37歳という特有の年齢のせい」と決めつけているのである。
いかに、彼の挙げた選手と、そのデータを何人分か挙げてみる。(ほとんどが殿堂入りのショートストップである)

「37歳でも、エリートか、まぁまぁ」
オジー・スミス
打率.295 43盗塁 13回目のゴールドグラブ
ホーナス・ワグナー 出塁率.423
カル・リプケン 14HR

「37歳のとき、イマイチ」
ルイス・アパリシオ  打率.232(1971年)
George Davis    打率.217(1900年代のHOF)

「37歳には、フィールドから消えていた」
Lou Boudreau 1952年 34歳で引退
Arky Vaughan 1948年 36歳で引退
Phil Rizzuto 37歳時点ではベンチプレーヤー 1956年 38歳で引退
Joe Cronin  37歳時点ではベンチプレーヤー 1945年 38歳で引退 

よくまぁ、この程度のデータの提示で「37歳」を老化の壁と決め付けたものだ(笑)
まず酷いのは、MLBの「丈夫さの代名詞」みたいなカル・リプケンを比較サンプルとして挙げていることだろう。連続出場記録をもつリプケンと比べたら、どんなに健康な37歳だって不健康にみえるのが当然だ(笑)(それにリプケン自身、30代終盤に急速に衰えたために引退したのであって、37歳を過ぎても成績が落ちなかった選手の代表、というわけでもない)
オジー・スミスの盗塁も、37歳時点ではたしかに43盗塁してみせたが、翌年からは衰える一方でパタリと走れなくなり、ついには580盗塁と、通算盗塁記録として大台の「600盗塁」にあと一歩のところで停滞したまま力尽きて、引退した。彼の盗塁数は「37歳でも元気だった選手」のサンプルにふさわしいとは思えない。
List of Major League Baseball stolen base records - Wikipedia, the free encyclopedia
また、ルイス・アパリシオは、37歳(1971年)に打率.232と打力が低下していたというけれど、彼の打力低下は37歳どころか、31歳(1965年)打率.225、33歳(1967年).233と、既に30代はじめに始まっている。盗塁数がガクンと減ったのも、31歳だ。したがってアパリシオは「37歳の壁」を証明するサンプルにはならない。
Lou Boudreauは1952年34歳で引退。Arky Vaughanも、第二次大戦を挟んで1948年に36歳で引退。こうした、第二次大戦の影響を受けつつ引退していった不運な選手たちのキャリアを、こうした「年齢の壁」について書く記事のサンプルとして取り上げるのは正当ではない。
(ちなみにLou Boudreauは、1941年7月17日のヤンキース戦8回表に、その日まで56試合連続安打を続けていたジョー・ディマジオがノーヒットで迎えた最終打席に打った痛烈な二遊間のゴロを横っ跳びにキャッチしてダブルプレーを完成し、ディマジオの連続試合安打記録をストップさせたショート。またArky Vaughanは、1941年のオールスターゲームで史上初めてとなる1試合2本のホームラン打った)
Phil Rizzutoについても、1956年に38歳で引退したが、36歳(1954年)のときに既に打率は.195だった。1945年に38歳で引退したJoe Croninも、たしかに37歳(1944年)時点で打率が.241しかないベンチウオーマーだが、35歳(1942年)で既に45ゲームしか出場しておらず、2人とも別に「37歳になったから」ベンチスタートになったわけではない。「37歳が壁だから、能力が低下した」と断定するための証拠になど、到底ならない。

以上(笑)証明終わり(笑)
なにごとも結論ありきでモノを言ってはいけないのだ。



このNate Silverのニューヨーク・タイムズ記事はまるで使い物にならないゴミ箱行きだが、それはともかくとして、「37歳が、野球選手にとって、どういう年齢か?」というテーマそのものは、実は、ちゃんと取り組むなら、非常に興味深いテーマなのだ。

たとえば、こんな記事がある。
イチローと、ロッド・カルートニー・グウィンウェイド・ボッグスピート・ローズタイ・カッブの5人のホール・オブ・フェイマーの成績を、特に「37歳以降のヒット数」に焦点を当てて比較検討した優れた記事だ。
Ichiro in Historical Context « The Greatest Hitter Who Ever Lived

この記事が非常に興味深いのは、いわゆる3000本安打を打った名選手といえども、37歳時点では、まだ2000数百本しか打っていなかった選手が多数いるということを示した点だ。
37歳以降に打ったヒット数(カッコ内は通算ヒット数)
ロッド・カルー   381(3053)
トニー・グウィン  581(3141)
ウェイド・ボッグス 681(3010)
ピート・ローズ   1290(4256)
タイ・カッブ     736(4189)


上のデータをグラフ化してみた。(縦軸は通常の均等なグラフだが、横軸はわかりやすいようにわざと変則的にしてあることに注意してほしい)
5人のホール・オブ・フェイマーが37歳以降に打ったヒット数


34歳の若さで既に3000本安打を達成していた球聖タイ・カッブは別として、ロッド・カルー、トニー・グウィン、ウェイド・ボッグスの3人は、37歳の時点には3000本安打どころか、2800本にすら到達していない。ここを、よく記憶しておいてもらいたい。

こちらのサイトに、3000本安打を達成した27人の選手全員の「達成時の年齢」を示したデータがある。
3,000 Hits Club on Baseball Almanac
みてのとおりだ。
37歳になる前、つまり、「36歳以下で3000本安打を達成した打者」は、タイ・カッブ(34歳)、ハンク・アーロン(36歳)、Robin Yount(36歳)と、たった3人しかいない。

その一方で、「40歳を超えて3000本安打達成にこぎつけた選手」が、びっくりするほど大勢いる。カール・ヤストレムスキー、ホーナス・ワグナー、ポール・モリター、ルー・ブロック、ラファエル・パルメイロ(以上、40歳で達成)デイブ・ウィンフィールド、クレイグ・ビジオ、ウェイド・ボッグス(ここまでが41歳で達成)、リッキー・ヘンダーソン(42歳)、Cap Anson(45歳)。

27人中、10人。約40%もの3000本安打達成者が、「40代での達成」なのだ。
37歳が壁でみんな潰れていく、のではなくて、37歳から頑張れた選手が3000本打てている、というのがリアルな話だ。


このことでわかることは、
ひとつしかない。


MLBのプレーヤーにとって
「37歳」という年齢は、
自動的にやってくる「壁」ではありえない。
むしろ本当の名誉への「扉」だ。
そう。これが真の解答だ。


つまり、こうだ。

37歳という「扉」は、誰に対しても開く。だが、「扉」の向こう側に立たたされたとき、その瞬間から、どれだけ必死に、どれだけ命がけで、もがき続け、努力し続けることができるか。

それが「37歳から始まる、本当の戦い。名誉ある最後の戦い」なのである。

だから37歳は、壁や出口ではありえない。
むしろ、「入り口」なのだ。

37歳という「入り口」に立つよりも前に3000本ものヒットを打ってしまうような特別なプレーヤーは、球聖タイ・カッブのような、名選手中の名選手と呼ばれる選手だけであり、だからこそ、彼は「球聖」という呼称を手にしたわけだが、下記のデータを見てもらいたい。

タイ・カッブと並び立つようなプレーヤーであることを見せつけるための、イチローの「37歳の扉」をくぐってからの、もがきと戦いは、今シーズンから、ついに始まったのである。600盗塁への長い道のり、オジー・スミスの13回のゴールドグラブ受賞へのチャレンジについても同じだ。

1ゲームあたりのヒット数
タイ・カッブ  1.3806
イチロー   1.4131
(MLBのみ。2010年までの数値)







June 17, 2011

一度書いたことなのだが、「盗塁」の歴史は、MLBの発展史という観点からみると、「ホームラン」の増加と相反する関係にある。

盗塁の栄枯盛衰には、何人かの名選手がかかわっている。
1900年代は、球聖タイ・カッブが活躍した「盗塁の黄金時代であるMLB創世記」。1920年代は、ベーブ・ルースがヤンキースに移籍し、旧ヤンキースタジアム建設された「ホームラン賞賛によるMLB発展期」。
盗塁数が激減した1940年代以降の「盗塁受難時代」を、「盗塁の復権」へと導いたのが、ベネズエラの英雄ルイス・アパリシオや、ルー・ブロック。1980年代の「第二の盗塁黄金期」を築いたのは、リッキー・ヘンダーソンティム・レインズビンス・コールマン

盗塁という美学の歴史に深くかかわった彼らは、いってみれば、彼らの持って生まれた「天性のスピード」でMLB史を動かしたプレーヤー、でもある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年9月9
日、盗塁とホームランの「相反する歴史」。そしてイチローのメジャーデビューの歴史的意義。


盗塁とホームランのMLB史とイチロー400盗塁


イチローが属している現在のMLBが「盗塁をするプレーヤー」にとって、どういう時代か、ちょっと考えてみたい。

結論を先にいえば今のMLBは、盗塁キングを志す快足プレーヤーたちにとって、けして黄金期とはいえない。このことは、イチローの盗塁記録を見る上でも、もっときちんと意識されていいことだと思う。

数字上でみても、1990年代の「ステロイドによるホームラン狂想曲」が終わったとはいえ、2000年代の盗塁数は急増してはいないし、グラフとあわせて、盗塁数ランキングの上位の現役選手たちの「年齢」を考慮してみれば、もっとわかりやすい。

通算盗塁数 現役ベストテン
1 Juan Pierre (33)   537 L 52
2 Carl Crawford (29) 417 L 52
3 イチロー (37)     401 L 39
  Omar Vizquel (44)  401 B 23
5 Johnny Damon (37) 392 L 27
6 Bobby Abreu (37)  382 L 28
7 Jimmy Rollins (32)  357 B 37
8 Jose Reyes (28)   353 B 58
9 Chone Figgins (33) 330 B 46
  Derek Jeter (37)   330 R 23

(2011年6月16日現在。名前の後のカッコ内が年齢。盗塁数の後、Lが左打者、Rが右打者、BはBoth、つまりスイッチヒッター。最後の数字は、キャリア1年あたりの盗塁数。)
資料:Active Leaders & Records for Stolen Bases - Baseball-Reference.com

通算盗塁数ランキング現役ベスト50人
2011年6月16日現在 盗塁数ランキング現役ベスト50人盗塁数、という記録は、長年積み重ねてきても下がる可能性のある「打率」とは違い、数字を積み上げていく記録なわけだから、ランキング上位を30代のオジサン・プレーヤーが占めているのは、あたりまえといえば、あたりまえだ。

では、今の20代の足の速い選手たちが熱心に盗塁し続けていけば、やがては、ランキング上位にいる30代のオジサン選手たちすべてを追い越して、自然と盗塁ランキングが大きく塗り替えられていくのだろうか?


ここで、ちょっと数字を操作して、ランキングの上位選手の盗塁数を、いまのイチローと同じ「37歳時点」に揃えてみることを思いついた。
方法は単純だ。それぞれの選手の通算盗塁数をメジャー経験年数で割った「1年あたりの盗塁数」を、それぞれの選手が37歳になるまでの年数分だけ加算してみただけ。
その仮の「37歳時 盗塁ランキング」は、こんな感じになる。

Jose Reyes    353+(58×9)=875
Carl Crawford  417+(52×8)=833
Juan Pierre    537+(52×4)=745
イチロー (37)  MLB401+日本200=日米601盗塁
Jimmy Rollins   357+(37×5)=542
Chone Figgins  330+(46×4)=514
イチロー (37)  MLB401盗塁
Omar Vizquel (44)  401
Johnny Damon (37) 392
Bobby Abreu (37)  382
Derek Jeter (37)   330

まずいえることは、イチローが、イチローよりも長いメジャー経験をもつ同年代のプレーヤー全員を追い越して、既に同世代のMLB盗塁王であることだ。(たとえばジョニー・デーモンデレク・ジーターは、2人とも1995年デビューでメジャー16年目)

だが、メッツのホセ・レイエスと、ボストンに移籍したカール・クロフォードが、これまでの「20代の盗塁ペース」を、「30代でも走力をずっと保ち続けて」、「盗塁し続けるための出塁を保障する打力を、37歳まである程度キープする」ことができると仮定すれば、彼らが37歳になったときには、2人して、イチローの現在のの「MLB 401盗塁」を遥かに上回るどころか、800盗塁だって達成できてしまう。
盗塁の記録にはいろいろな種類があるが、通算盗塁数でいうと、600というのがひとつの目安数字になる。MLB通算600盗塁を達成した選手は16人しかいないが、800盗塁となると、わずか5人しか達成していない。
あと10年で、いま20代のホセ・レイエスと、カール・クロフォードの2人が、このわずか5人しかいない「800盗塁クラブ」に加わるかもしれない、ということだ。
List of Major League Baseball stolen base records - Wikipedia, the free encyclopedia


イチローがメジャーデビューしてからここまでの「1年あたりの盗塁数」は平均で「 39 」。今年2011年の盗塁数が、既に「 18 」。今年はまだシーズンの半分も終わっていないだけに、今年は40盗塁を達成する可能性はかなり高い。

ここまで書いてくると、もうおわかりだろう。
37歳で、40盗塁というのは、ちょっとありえないほどの心身の健康さなのだ。

盗塁のシングルシーズン記録には、100を超える記録も数多くあるわけだが、そこだけをみていると、なにか「40盗塁」という数字が少ないように勘違いする人がいる。
そもそもシーズン100盗塁という記録は、19世紀末とリッキー・ヘンダーソンの記録がほとんどで、近年の選手レベルでいうと、40という盗塁数はけして少なくない。まして、最初に説明したとおり、ステロイド時代以降の野球においては、盗塁数そのものが激増するどころか、むしろ減少しかねない時代になってきているのが、今の時代だ。

「40盗塁を、しかも30代後半で連続的に達成できる選手」など、現実にはまだ30代前半だがホアン・ピエールくらいしか出現しないかもしれないのが、いまの盗塁という美的行為をめぐる現実だ。


たとえば、いま34歳のカルロス・ベルトランは、通算盗塁成功率88.1%という、とてつもないメジャー記録をもつ素晴らしい快速ランナーだったが、2005年8月に守備でマイク・キャメロンと激突して骨折した影響などで17盗塁に終わり、その後、膝の故障を抱えるようになってからは、盗塁数が激減した。
List of Major League Baseball stolen base records - Wikipedia, the free encyclopedia
このベルトランに代わるメッツの盗塁キングはもちろんホセ・レイエスだが、彼も2009年は故障の影響で11盗塁に終わっている。カール・クロフォードも故障持ちだ。


現役選手の盗塁ランキング上位選手の中で、いまだに盗塁という美的プレーに「伸びしろ」と「ゆとり」を失わない選手。
それが37歳のイチローだ。






イチローがメジャー10年ちょっとで達成したMLB400盗塁という記録の意味を、ちょっとメモしておこうと思っていたら、いつのまにか、Youtubeでクレイグ・ビジオの動画を見てちょっと泣きそうになった(笑)
ちょっとズルいよ、ビジオにあの曲は(笑)

まずは、通算盗塁数のオールタイムベスト100人のリストを見てもらいたい。(リスト内、太字は現役選手。名前の横に+(プラス)という記号が添えられているのは、殿堂入りした選手。リストを詳しく見るためには、まずワンクリックして別窓に出し、さらにリストをクリックすると原寸でみられるはず)
資料:Career Leaders & Records for Stolen Bases - Baseball-Reference.com(2011年6月16日現在)

2011年6月16日現在 盗塁数ランキング オールタイムベスト100人最初、この長い長いリストを保存して記事を書こうと思ったのは、単純に、イチローとオマール・ビスケールが、ともに401盗塁、68位に仲良く並んでいるのが、見ていてなんだか美しいからである(笑)

もちろん、1989年にケン・グリフィー・ジュニアとともにシアトルでデビューしたオマール・ビスケールはまだホワイトソックスで現役なわけだが、彼の44歳という年齢を考えると、やがてこの2人の数字が離れていってしまうのは間違いない。
シアトルの先輩後輩2人の数字が並んでいるのを眺めて、ほんのひととき感慨を楽しみたいなら、今しかない。

こういうデータには、
いい意味での「せつなさ」がある。


401盗塁68位のイチローのすぐ上、63位には、あの「ミスター ツーベース」クレイグ・ビジオ414盗塁がある。
Craig Biggio Statistics and History - Baseball-Reference.com

オマール・ビスケールは1996年にハッチ賞を受賞しているが、クレイグ・ビジオも2005年に同じハッチ賞を受賞し、また、2007年にロベルト・クレメンテ賞も受賞している。資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:Hutch賞と、フレッド・ハッチンソン・ガン研究センター。野球と医学の架け橋。

クレイグ・ビジオがどれほどヒューストンの人たちに愛されたか、それをいまここで書いていては、このブログはたぶんビジオの動画と記事だけで埋め尽くされて、たぶんビジオ・ブログになってしまう(笑)そういうのは他の人にまかせたい。

ビジオは、1988年のメジャーデビューから1991年まではキャッチャーとしてプレーしているのだが、彼が引退した2007年の9月末に行われた、ミニッツメイド・パークでのアストロズ本拠地最終カードのアトランタ戦の第2戦(9月29日)で、チームは1991年以来16年ぶりに彼をキャッチャーとして先発させた。このゲームでビジオは、最初の2イニングをキャッチャーとしてプレイし、シーズン30本目、通算667本目のツーベースを打った。
ミニッツメイド・パークの収容能力は40,950人となっているが、このゲームに押し寄せた観客数は、収容能力を超える43,624人だった。

このことだけを挙げても、ビジオがファンにとってどういう選手だったかわかると思うが、足りなければ、3000本安打達成の瞬間のファンの狂ったような興奮ぶり(笑)なんかをYoutubeでお腹いっぱいになるほど見続けると、納得がいくと思う(笑)
Boxscore: Atlanta vs. Houston - September 29, 2007 | MLB.com: News

Gameday: Atlanta vs. Houston - September 29, 2007


この動画で使われているBGMは、フィラデルフィア出身のBoyz II Menの"It's So Hard To Say Goodbye To Yesterday"。1975年のモータウンソングで、1991年にBoyz II Menバージョンが発売され、全米2位になった。アルバム"CooleyHighHarmony"に収録。


クレイグ・ビジオが3000本安打を達成したときのスタジアムの熱狂は、いつのまにか、イチローがシーズン最多安打記録を作ったときのスタジアムの鳴り止まない拍手と、脳の中で重なっているのを感じる。
観客が「ビッジッオッ! ビッジッオッ!」と激しく叫び続ける「ビジオ・コール」を聞いていると、いつのまにかセーフコの「イチロー・コール」に重なって耳に聞こえてしまう。

実を言うとブログ主は、イチローが、ヤンキースでもどこでも好きなように移籍して、なんとしてでもワールドシリーズに出て欲しい、という意味での「移籍ぜんぜんオッケー派のイチローファン」なのだが、ビジオのああいう姿を見ると、どうもいけない(笑)
移籍ぜんぜんオッケー派イチローファンとしてのドライな気持ち(笑)が、どうもセンチメンタルにほんの少しだけ揺らぐのを感じるのである(笑)


ともあれ、イチローはやがて、オマール・ビスケールの401盗塁も、クレイグ・ビジオの414盗塁も、トリス・スピーカーの436盗塁も、ロベルト・アロマーの474盗塁も、ウィリー・キーラーの495盗塁も、ルイス・アパリシオの506盗塁も、追いつき、並び、そして、追い越していくことになる。

クレイグ・ビジオの映像と記録を見ながらしみじみ思う。

誰かの記録を超えていく、という作業は、能力比較として、ある選手が、過去の選手より「上の」選手になったことを証明することで、過去を凌駕すること、ではない。
そうではなく、以前の記録に並び、そして超えていくときに、自分が超えていく選手が持っていた、デビューできた喜び、ケガの苦さ、スランプの苦しみ、記録達成の歓喜、引退の安堵と哀しみ、そういうプレーヤーとしての長い歴史のエスキスを、ほんの少しだけ自分の一部としてもらい、やがて野球の歴史の地層に共に折り重なって土に還っていく日をめざして、さらに歩き出していく、ということだ。
ジョージ・シスラーのシーズン最多安打も、オマール・ビスケールやクレイグ・ビジオの通算盗塁数も、イチローはそうやって超えていくのである。

これは、単なる文字の上のセンチメンタリズムではなくて、実際にそうだ。だからこそ、イチローとオマール・ビスケールの数字が並んでいるをしみじみと眺めたくなるし、保存しておこうと思うのだ。






June 16, 2011

デトロイトでのビジター4連戦あたりから、シアトルの投手が失点するシーンで、気になりだしたことが、ひとつある。
まだ「原因はこれだ、間違いない」とまで決め付けられるほど、サンプル数が集まっていないので、あくまで今はまだ、ただの「カン」でしかない。
だが、「こういう現象が増えてきている」と曖昧にしか言えない状態ではあっても、確実にこの現象は増殖しつつあり、その結果失点が増え、シアトルのチーム勝率は確実に下がってきている。


気づいたきっかけは、
ビクター・マルチネスのクレバーな「初球打ち」だ。

2011年6月11日 ビクター・マルチネス 7回裏

キャッチャーとしてのビクターは嫌いだが、彼のバッターとしてのクレバーさには素晴らしいものがあると、6月11日のマイケル・ピネダ登板ゲームでのDH出場で感心させられた。
このゲームで、ピネダはいつものように序盤ストレートで押していくピッチングをしようとしたのだが、いつものキレがなかった。デトロイト打線にカウントをとりにきたストレートを早いカウントで集中的に狙い打たれ、失点し続けた。そこで、しかたなくピネダとミゲル・オリーボのバッテリーは中盤から変化球中心の配球にきりかえようとした。
だが、ビクター・マルチネスは、ミゲル・オリーボの手の内を読みきってみせた。ピネダのストレートを打ち、さらに、変化球中心に切り替わったのを見透かして、こんどは変化球を、いずれも早いカウントで打ちこなしてみせたのである。
やはりビクター・マルチネスはキャッチャーとしての経験を生かして、相手投手の配球傾向を読みながら打席に立っているのだと思う。


最初に言った「気になる現象」というのは、
右投手の場合に、
 左バッターに投げる初球として、
 アウトコースいっぱいのストレートを投げて、
 それが狙い打たれ、失点につながる

というパターンだ。特に得点圏にランナーがいるケースでよく見かける。

実は右バッターについても、「右バッターに、インコースの変化球をやたらと打たれる」という現象が気になっているのだが、このほうは左バッターへの初球インコースよりさらにサンプル数が乏しいので、いまのところは保留しておく。


以下に、最近のゲームで「シアトルの投手が失点したシーン」での「左バッターに、早いカウントのストレートを打たれたケース」を羅列してみた。ビクター・マルチネスの名前が繰り返し出てくることに注目してもらいたい。
注意してほしいのは、ここに挙げたサンプルが全てではないことだ。ここに集めたのはあくまで「ヒットを打たれたケースだけ」であり、他に、打者を打ち取ることのできたケースにも「左バッターの初球にアウトコースいっぱいのストレートを投げた例」は数多くある。

2011年6月9日 デトロイト戦
投手:フィスター
5回裏 二死3塁 ドン・ケリー タイムリー(初球)
Seattle Mariners at Detroit Tigers - June 9, 2011 | MLB.com Classic

2011年6月11日 デトロイト戦
投手:ピネダ
1回裏 無死走者なし ブレナン・ボーシュ シングル(2球目)
1回裏 二死1、2塁 ビクター・マルチネス タイムリー(2球目)
初球もアウトコースいっぱいのストレート
2回裏 一死走者なし アレックス・アビラ シングル(3球目)
投手:ジャーメイ・ライト
6回裏 一死1塁 ラモン・サンチアゴ シングル(初球)
7回裏 一死2塁 ビクター・マルチネス タイムリー二塁打(初球)
投手:ジェフ・グレイ
8回裏 二死3塁 ドン・ケリー タイムリー(初球)
Seattle Mariners at Detroit Tigers - June 11, 2011 | MLB.com Classic

2011年6月12日 デトロイト戦
投手:フェリックス・ヘルナンデス
8回裏 無死1塁 ビクター・マルチネス シングル(初球)
8回裏 二死1、2塁 アレックス・アビラ タイムリー(4球目カーブ)
初球ピッチアウト 2〜4球目は全てアウトコースいっぱい
Seattle Mariners at Detroit Tigers - June 12, 2011 | MLB.com Classic

2011年6月13日 エンゼルス戦
投手:クリス・レイ
9回表 一死走者なし マイセル・イズトゥーリス シングル(初球)
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - June 13, 2011 | MLB.com Classic

2011年6月14日 エンゼルス戦
投手:ダグ・フィスター
1回表 二死1、2塁 ピーター・ボージャス タイムリー(3球目)
初球もまったく同じ、アウトコース低めいっぱいのストレート
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - June 14, 2011 | MLB.com Classic

もし特定の投手のときにだけ、こういう現象が起きるのなら、原因をその投手の配球の組み立てに求めればいい。
だが、これだけ多数の投手に「同じ現象」が現れるとなると、そうもいかなくなる。やはりピッチャーにサインを出すキャッチャーのほうにも、原因を求めないわけにはいかなくはなる。


ミゲル・オリーボが今シーズン安定したリードをしてきたこと自体は、ブログ主も認めていいと思っている。だが、この6月に入ってから、ちょっと風向きが変わりつつあるのを感じる
右投げのミゲル・オリーボが、かつてのダメ捕手城島と同じように、ランナーが出ると、ランナーをスローイングで刺しやすくするために、左バッターのときには、セカンド(あるいはサード)に送球しやすいアウトコースに配球を集めたがる、とまでは、まだ言いたくはない。
だが、控え捕手のジメネスがあまりに使えないせいもあって、チームはほとんどの先発投手をオリーボにまかせるようになってきている。連日ゲームに出ている疲労のせいだと思いたいが、リードだけでなく、キャッチング、送球、打撃、ミゲル・オリーボのプレー全般に、プレー精度の急激な低下を感じる。このところ、彼の守備面のミスからくる失点が多すぎるのも気になる。

気になっていることは他にもまだある。

エンゼルス戦で、不振のバーノン・ウェルズに2本もホームランを打たれたが、彼は非常に典型的なローボールヒッターだ。その彼に低めいっぱいを連投したのは、ちょっといただけない。ちょっとは相手主軸打者のスカウティングも頭に入れておいてリードしてくれないと困る。
今シーズン成績不振といわれている他チームの主軸バッターに、シアトル戦にかぎって長打を打たれるシーンを、非常によく見かけるわけだが、この現象の原因は、「スカウティングがピッチャーのリードに十分に生かされていない」という点があるのではないか、と、少し思い出している。

2011バーノン・ウェルズのホットゾーン右打者バーノン・ウェルズの
ホットゾーン

赤くなっている部分が得意なコース。
あきらかにローボールヒッター。
Vernon Wells Hot Zone | Los Angeles Angels | Player Hot Zone | MLB Baseball | FOX Sports on MSN


シーズンも6月ともなると、打者についても投手についても、お互いにさまざまな情報が集約され、対策が施されてくる。

たとえばシアトルの打者への対策。
いつも低めのチェンジアップを狙っているカルロス・ペゲーロが、ワンバウンドするほど低いボールでも振ってくることと、アウトコースのスライドして逃げていく球には全くついていけないこと。ミゲル・オリーボが、アウトコースの縦に変化する球を全く打てないこと。高めのストレート系を強振してくるジャック・カストが、低めのチェンジアップなどにはどうしても手を焼くこと。インコースを引っ張るのが大好きなフランクリン・グティエレスはアウトコースの変化球で三振させるのは簡単なこと。
それくらいのことは、気がつくチームは、誰もが気がついている。

もちろんシアトルの投手の配球だって、スカウティングの早いチームにはだいたいの見当がつきはじめているだろう。


まだまだサンプルを集めていかないとハッキリしたことは言えない。
たくさんの好投手を先発に抱えたシアトルの投手陣だが、他のチームのスカウティングの進むここからは苦労する場面ももっと増えてくると思う。
そういうシーンを見たときに、ここで書いたことがどのくらいあてはまっているか、確かめながら、ここからのゲームを見ていく必要があると思っている。






June 15, 2011

まだゲーム中だが、ちょっと気になったのでメモしておく。
Los Angeles Angels at Seattle Mariners - June 14, 2011 | MLB.com Classic

今日の球審はジョー・ウエスト
データ上では、メジャーでゾーンの狭い球審のひとりだ。メジャーのアンパイアのデータは下記を参照。(本来のジョー・ウエストは、左打者のアウトコース側と、低めが狭い)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年11月6日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (3)アンパイアの個人差をグラフ化してみる

これは2回までの判定マップだが、ルールブック上のストライクゾーンに入っている先発フィスターの「高めの投球」が、ほとんど全てといっていいくらい「ボール」判定されている。特に左打者の高めは全滅だ。
身長が高いダグ・フィスターは、角度のついたストレートを投げたがる。フィスターがいつも投げる高めストレートに、今日はスピードもコントロールもなかったのは彼自身の責任だが、その一方で、判定もひどかった。
2011年6月14日 ジョー・ウエストのストライクゾーン(2回まで)
資料:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool


2011年6月14日 1回表 アブレイユ 四球1回表
アブレイユ 四球

初回のアブレイユは、初球、3球目がゾーン内。画像は省略したが、二塁打を打たれた先頭バッター、アイバーへの3球目も、ゾーン内。だが、ストレートにこだわって高めに連投し、「ボール判定」の連続から大量失点を招いた。


元のマップに、今日のゲーム序盤(2回まで)に球審が最もストライク判定しているホットゾーンを、赤い枠線で書きこんでみた。いかにゾーンそのものが狭く、また、「高目をとっていなかったか」がわかる。
2011年6月14日 球審ジョー・ウエストの判定ゾーン


こういう特殊なゾーンでの判定傾向に対して、エンゼルス先発のジェレッド・ウィーバーはどう対処しているかというと、シンプルに「打たせてとるピッチングをしているの」だ。無理にきわどいところを突いて、三振をとりにいくようなことはしていない。
こういうところは、さすがLAAの鍛えられたバッテリーだと思う。非常にクレバーだ。無理に空振りをとりにいって成功するような球審でないことを、ウィーバーは早くから見抜いている。
たとえばイチローが3回にヒットにした球を思い出してほしい。イチローが打ったのは、「ボールになる真ん中低めチェンジアップ」だ。ヒットを打たれはしたが、打たれたくないバッターにこういうボールを使うという方針は、まったく間違ってない。


かたやフィスターだが、立ち上がりに高めばかり投げたのは、こういう判定傾向のゲームでは「致命傷」だった。
彼の経験の無さ、初回にアレックス・アイバーにバント(ファウル)されたことだけで気持ちがアップアップになってしまう精神的なゆとりの無さを考えると、ここはフィスター自身がピッチングを修正するより、キャッチャーのミゲル・オリーボが、フィスターに「進むべき方向」を示してやるべきだったが、いつもそうなのだが、オリーボはその日の判定傾向をほとんど考慮していないように見える。これはフィスターのときだけに限らない。

フィスターが中盤以降に立ち直ってきたのは、プレートの真上に落ちる変化球、つまり「球審の好きなストライク」を多用するようになってからだが、これでは対応が遅すぎる
初回に、「フィスターのいつも使う角度のある高めのストレートを多投するピッチング」ではなく、もっとプレートの真上に落ちるチェンジアップやカーブをもっと効果的に使うように方針をもっと早く変更していれば、重い4失点など、なかったと思う。
もちろん、初回の走者ハンターの狭殺プレーでのスモークの守備、ダブルプレーにできたはずのケネディの送球ミスなど、守備にも足をひっぱられた。

フィスター、いつものことながら、気の毒だ。






June 13, 2011

何か、ハッキリしたいのにモヤモヤしていて言えなかったことが形にできたときは、まるで流鏑馬(やぶさめ)で、矢が的を真っ二つに割るような、そんなスッキリした気持ちになるものだ。

NBAファイナルで、2006年に一度ファイナルで敗れているマイアミ・ヒートを破って初優勝したが、ダラス・マーヴェリックスの38歳「ミスター・トリプルダブル」ジェイソン・キッドが使った「支配」という言葉が、まさに、的を射抜いてくれた。



ジェイソン・キッドは3度目のトライで遂に栄冠を手にした。試合直後にインタビューされていたが、同じマイアミ・ヒートに2006年に決勝で敗れたことだし、さぞ感激したことだろう。
相手のヒートには、キッドがガキの頃から近所で一緒にプレーしてもらった同じポイントガードのゲイリー・ペイトンがいたとか、ジェイソン・キッドは実は野球もやっていたとか、そういうことはまぁ、どこかのサイトが書くだろう。そういうのはほっとこう。
ジェイソン・キッドがイチローについて語った「支配」という単語が非常に興味深い。

イチローが将来、殿堂入りすると思うかと聞くと、「殿堂入りするはずだ。彼はバットのひと振りと足で試合を変えることができる。あれだけの支配力がある選手は、キャリアが終わったときには殿堂入りするべき」と主張した。そう言うキッドも、将来は間違いなくバスケの殿堂入りを果たす選手だ。
【NBA】ジェイソン・キッドが語る「オレとイチローの共通点」 - 雑誌記事:@niftyニュース


「支配」ね。
なるほど。


彼の言う「支配力」を、もうちょっと自分流にわかりやすくしてみたい。
ジェイソン・キッドの言う「支配」はたぶん「ゲームを支配すること」を指していると思う。
この「ゲーム支配力」という説明手法は、これまで「流れ」とか、そういう曖昧な説明に終始してきたスポーツの意味的な仕組み、かけひきの構造を、もっとクリアでわかりやすい構造にして、目にみえるものにしてくれる。少なくとも、単なる利益最大化をめざす古くさいゲーム理論程度は軽く超越してもいる。
いろいろなスポーツで、いままで曖昧なまま放置され、曖昧に説明されてきた事象はたくさんあるが、それらをもっとわかりやすい言葉に変換し、誰でもが説明できる、ひとつのツールにできる可能性がある。


うまく例がみつかるかどうかわからないが、
別の角度で説明してみよう。


「ボール・ポゼッション」とか「ボール支配率」というサッカー用語がある。そこでいう「支配」という言葉の意味は、単に「ボールを持っている時間の長さ」のことであって、ジェイソン・キッドの言う「支配」とはまったく別だ。
サッカーでは、ボール・ポゼッションに関して、相手チームにボールをわざと「持たせる」という表現もある。だが、それがどういう状態をさすのか、誰でも頭ではわかってはいても、曖昧にしか説明されてない。

だが、「ゲームの支配」という発想を導入すると、こういう曖昧な表現にもっとクッキリした形を与えることができるようになる。

「相手チームにわざとボールを持たせる」というのは、「ボール支配権は相手にわざと渡すが、逆に、ゲームの支配を高めようとするマジカルな戦術」だ。別の言い方をすると、「たとえボールを長時間保持しようと、ゲームそのものはまるで支配できていない状態にさせる」という意味だ。
もっと具体的な例でいえば、ユーロ2008で優勝したスペインとロシアのゲームのように、ボールを『相手に持たせる』展開になった場合、「ゲーム支配権」があるのは、「ボールを持って、意味の無い横パスを繰り返して、時間を無駄にしているロシア」ではなく、逆に「ボールを持たずに、悠然と守備しているスペイン」にある。


話を野球に戻してみる。
野球は、攻守がイニングごとに交代するスポーツなわけだから、サッカーの「ボールを持たさせる」展開にあてはまるような場面は「無い」と、たいていは思われている。

いやいや。そんなこと、絶対ない。むしろ、そういうかけひきは野球の昔からある発明品だ。思うに、誰もきちんと言葉で説明できてこなかっただけのことだ。

ボールをただ保持するだけなのが「ボールポゼッション」なら、「ゲームを支配する戦術力」は「ゲーム・ポゼッション」とでもいえばいいか。
「ゲーム・ポゼッション」という発想で見なおしてみると、野球というスポーツには昔から「ゲーム・ポゼッション」的戦術はたくさん存在しているわけで、「ゲームを支配する」という発想からいろいろなことを説明しなおすと、もっとそういう昔からあった戦術の意味や目的、手法がクリアになり、もっと整理されてくるような気がする。


なにかわかりやすい「ゲーム支配」に関する例はないだろうか?
いくつか無理矢理あげてみる(笑)


1)「やたらランナーは出るが、得点できないゲーム」
よく「むやみにランナーを出すが、得点がほとんど無くて、負けてしまうゲーム」がある。たいていは「タイムリーが出ないのがダメ」とか、「バントしろ」とか、当たり前のことばかり言われて、話は終わりになってしまう。つまり、こういうゲームの構造は、これまであまりきちんと考察も対策もされてこなかった。

だが、「ゲーム支配」という発想を入れてくると、話はもっと明確な部分がでてくる。
要は、野球というボールゲームにおいては「いくらチャンスがたくさんあって、優勢に見えても、それで『ゲーム支配』ができているとは限らない」という話なわけだ。
こういうモヤモヤした事象を理解するには、今までにないくらい切れ味のある切り口が必要になる。じゃあ、どうすればこういうゲームでゲーム支配への突破口が切り開けるか? 言われても困るが(笑)

例えばバント。クロスゲームでのバントは、「もしゲームの支配につながる」のならバントすればいい。だが一方では、「バントに成功しても、ゲームポゼッションにまるで変化が起こらない」こともありうる。
つまり、「ゲーム支配」という観点からすれば、バントという戦術自体が有益か、そうでないか、絶対的に価値を議論することには、ほとんどなんの意味もないのだ。

2)敬遠で満塁にして、凡退を誘う
野球には「敬遠で、わざと満塁にする」という独特のタクティクスがあるが、これも一種の「ゲーム支配」なのは間違いない。
案外、満塁は点が入りにくいものだ。守備がしやすくなるという具体的なメリットもあるが、ものすごく有利な場面をポンと与えられるとかえってプレッシャーを感じて凡退してしまうのが人間というものだ(笑)

3)わざとボール先行カウントを作って凡退させる
イチローをバッテリーが攻める場合に、「わざとボールを2つ続けて投げて、カウントをわざと悪くしておき、次の球をわざと振らせて凡退させる」なんてオークランド風味の配球戦術もある。
これもどこか「ゲーム支配」の匂いがする。あきらめたようにみせかけているが、実は全然あきらめてない。


話が、本題から離れまくってしまった(笑)

ジェイソン・キッドがイチローについて言う「バットのひとふり」「走塁」は、誰がやっても「ゲームの支配力」を上げることができるだろうか。

もちろん、そんなことはない。

ゲームを支配するひとふり。
ゲームを支配する盗塁。
ゲームを支配するキャッチング。
それが誰にでもできるのなら苦労はしない。

サヨナラホームランはたしかに劇的だ。
だが、サヨナラホームランを1本も打たずに10年やって全米のスターになって、10年続けてオールスターに出続けることとの難しさを考えたら、サヨナラホームランを打つほうが、やっぱり簡単だ。誰でも人生に一度くらいサヨナラホームランは打てるが、10年続けてオールスターに出られるプレーヤーはいない。


もっと簡単に言おう。
イチローは、「ランナーとして1塁に立つだけでゲームを支配できる」そういうプレーヤーだ。






June 12, 2011

いまMLBで規定イニング数こなしているキャッチャーのCERAランキングは以下のようになっている。
ミゲル・オリーボがトップ。これは、なにも投手陣が優秀なためだけではなく、安定感のあるリードをみせる彼自身が誇っていい数字だと思う。なんせ、3点を切っているのは彼だけだし。

先月ちょっと書いたミルウォーキーの若い1986年生まれのキャッチャー、ジョナサン・ルクロイもいい位置につけている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月15日、例によってベタンコートの低出塁率に手を焼くミルウォーキー。

いまテキサスと対戦するたび、元シアトルの2人のキャッチャーであるオリーボと、コロラドでワールドシリーズも経験したヨービット・トレアルバが、2つのチームのビハインド・ザ・プレートに座っているのを見ることになるわけだが、ダメ捕手城島がMLBに来た当時のファンの数々の発言の無意味さが可笑しくてならない(笑)

2011年6月10日のCERAランキング
太字で示した年齢は、すべて「1983年生まれのキャッチャー」。ラッセル・マーティンは早生まれで、1983年2月生まれの28歳。順位はチームの地区順位)

Miguel Olivo    SEA 2.92 32歳 2位
Carlos Ruiz     PHI 3.22 32歳 首位
Brian McCann  ATL 3.26 27歳 2位
Jonathan Lucroy MIL 3.52 24歳 2位
John Jaso      TB 3.55 27歳 3位
John Buck      FLA 3.57 30歳 3位
Kurt Suzuki     OAK 3.66 27歳
Russell Martin  NYY 3.70 28歳 2位
Matt Wieters    BAL 3.73 25歳
Miguel Montero  ARI 3.77 27歳 2位
2011 Regular Season MLB Baseball C Fielding Statistics - Major League Baseball - ESPN


たまたま手元に、ほぼ4年前、同じESPNの2007年6月30日現在のCERAランキングがあるので、久しぶりに並べてみた。(規定回数出場かどうかがわからないデータなので、とりあえず当時の正捕手のみ)

2007年6月30日のCERAランキング
ジョシュ・バード     2.56 SD →SEAマイナー
ジェイソン・ケンドール  3.21 OAK →KC DL中
クリス・スナイダー    3.47 ARI →PIT 
ラッセル・マーティン  3.56 LAD →NYY
ジョー・マウアー     3.60 MIN →DL中
ポール・ロ・デューカ   3.67 NYM →2008年引退
ジェイソン・バリテック  3.72 BOS
ブライアン・マッキャン 3.77 ATL
マイク・ナポリ       3.87 LAA →TEXでコンバート
ベンジー・モリーナ    3.92 SFG →2010年引退
カイル・フィリップス    3.99 TOR →SD


この4年で、MLBのキャッチャー地図は一斉に書き換わった

サンフランシスコでは、ヴェテランのベンジー・モリーナが引退し、今年24歳のバスター・ポージーが正捕手デビューしてワールドシリーズに勝ち、ヤンキースを支えてきたホルヘ・ポサダがマスクをかぶることはなくなって、ドジャースからラッセル・マーティンがやってきた。
シアトルが対戦中のデトロイトでいえば、ウオッシュバーンが2009年にデトロイトに移籍した当時バッテリーを組んでいた若いアレックス・アビラは、当時ジェラルド・レアードと正捕手争いをしていた。アビラは1987年生まれで、ここでいう「1983年世代」ではないのだが、いまは正捕手になり、打率.292、OPS.907打っている(レアードはセントルイスで1982年生まれのヤディア・モリーナの控えになった)
オークランドのカート・スズキはいまやア・リーグを代表するキャッチャーのひとりだし、モノにならないと言われ続けていたボルチモアのマット・ウィータースもサマになってきた。


この4年でCERAランキングのトップクラスに生き残れたのは、ケガをしているジョー・マウアーを一応入れたとしても、ブライアン・マッキャン、ラッセル・マーティンくらいだ。この3人全員が1983年生まれである。よくラッセル・マーティンを貧打貧打とけなす人が多かったものだが、ヤンキースではホームランを量産しだしているから、わからないものだ。
(シアトルのロスターでいうと、1983年生まれは、デビッド・ポーリーブランドン・リーグジェイソン・バルガスなど)


1983年生まれ世代の活躍と、それによるMLBの世代交代は、キャッチャー分野においても起こると、ずっと言ってきた。
それは、いってみれば、いま目の前で微細な霧状の雨が降り出しているのを見て「これから雨が降りますよ」と予報するくらい、単純でわかりやすい話だった。

ほんの数年前は、ダメ捕手城島の提灯持ちライターはじめ、誰もこの「MLBにおけるキャッチャーの世代交代」をきちんと意識に織り込むこともせず無邪気な発言を繰り返していたわけで、あれはいま思い出しても滑稽だ(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2009年11月12日、2009年の攻守あらゆるポジションと賞を席捲し、これからのメジャーを担う「1983年世代」。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年4月9日、ア・リーグ西地区4チームすべてに「1983年世代」の捕手が顔を揃えた2010シーズン。


まぁ、「これから雨が降るんだぜ。おまえ馬鹿なのか?」と顔の前、5センチの距離で言われていても、得意げな顔で洗濯物を外に干して、なにもかも泥まみれにしてしまい、晴れたら晴れたで、いちど洗濯しなおすべきなのに、泥だらけの洗濯物を干しっぱなしにして、こんどはカビカビの使い物にならないゴミにしてしまうような「なにも見えてないのに得意げだった哀れな人たち」がやっていることだ。

知ったこっちゃない。






June 11, 2011

ひさびさにイチローのいないマリナーズのゲームを見て、いやぁ、これほどタメになるとは思わなかった(笑)

たぶん、日本人らしいネガティブ思考からどうしても抜けだせない巷のイチローファンの皆さんや、イチローの歴史的な業績の意味のわかってない日本の無能な解説者の皆さんが、このゲームをどう評価したのか、そんなことは知ったことではない。
ブログ主は、正直いって、他人の意見など聞く必要をまるで感じないほど、「ある確信」をもってゲームを見終えることができて、たいへんに喜んでいる(笑)


わかってしまえば簡単だ。
イチローが、アメリカ、なのだ。

わかるかな? もう一度、言おうか?
イチローが、アメリカなのだ。


理解できるように説明できるといいのだが、理解できなければ、それはそれでしかたがない(笑)こんなに丁寧に説明ばかりしているブログを読んで、わからない人が悪い。


イチローのいないマリナーズ」のやっている、あのスポーツ。
あれは「アメリカのどこにでもある、平凡な野球」だ。

と、同時に、それは、2000年代中期に実際にマリナーズで行われていた、フリースインガーだらけの、「かつてのマリナーズ」でもある。また、飛ぶボールでホームラン競争を故意に演出していた1990年代MLBの延長線上にある野球、でもある。
打者は、来た球のうち「打てる球は打ち、打てない球は打てないまま、ゲームを終わる」。投手も同じだ。「打たれる球を打たれ、打たれない球は打たれないで、イニングを消化し、ゲームが終わって」いく。


もう十分説明したつもりだが、これでもまだわからない人がいるだろうか。だとしたら、どうたとえれば、わかるだろう?

絵でいえば
「 精彩がない 」「 眠たい 」

音楽でいえば
「 どこにも抑揚がない 」
「 リズム感がない 」
「 グルーヴがない 」

音楽が聞こえてこない。ロックでもなければ、クラシックでもない。まして演歌でもない。まるで音を消してプレーする「無音のスーパーマリオブラザース」だ。
たとえばジャスティン・スモークはアメリカ南部の大学の出身だ。だが、彼のプレーからサザン・ロックは聞こえてこない。


イチローには、音楽がある。

たとえば、12音技法を創始した現代音楽の作曲家であるシェーンベルクはアメリカの映画音楽に対して多大な影響を与えたことでも知られているが、イチローのときとして型破り、破天荒なプレーぶりは、シェーンベルクに通じるものがある、と、かねがね思っている。
イチローは、荒々しく淫らなロックであり、コブシのききまくった演歌であり、ときには武満徹やシェーンベルクのような現代音楽として響くこともあり、また時には爆発するパンクでもあり、うねるラップであり、果ては、「シンコペーションそのもの」であると思えるときもある。


イチローが2001年にアメリカに渡って以来、実現し続けてきたのは、飛ぶボールとドーピングでホームラン時代を無理やり演出していた1990年代のような野球ではない。
もう何度も書いてきたように、ひとつには、20世紀初頭に途絶えていたタイ・カッブ時代の野球のリバイバルでもあり、また一方では、ちょっとありえない守備センス、ワンバウンドにすら手を出す特殊で過剰すぎる打撃感覚、過敏なほどのバットコントロールと選球眼、スピーディーだがいつ走るのかわからない独特の走塁感覚、それら全てを「人力(じんりき)だけ」でこなす、野球という名の「サルティンバンコ」だ。

これこそが言葉どおりの意味での「Show」だ。

カートゥーンのMGM作品「トムとジェリー(TOM and JERRY)」でいえば、90年代の野球が「野暮ったいトム」なら、イチローは「何を考えているのかよくわからないジェリー」だ。守備、攻撃、走塁。ゲームのどこを見ても、イチローの姿が右に左に、そこらじゅう跳ねまわっている(ような気分になる)のである。


そう。
イチローの「他人にない特殊さ」「自由さ」そのものが、むしろ本来の「ショーアップされたアメリカ」だ。スターを必要としないアメリカなんて、アメリカじゃない。


それが、ひさびさにイチローのお休みによってどうみえたかというと、
見えたのは、既視感しか感じない、精彩のない、平坦なベースボールであり、音楽のない、ただ勝ち負けを決めるだけのスポーツがそこに見えた。

打って、休んで。守って、休む。
打って、休んで。守って、また、休む。
たったそれだけ。


今日のゲームはイチローにとって、とても重要なゲームのひとつになったことと思う。

なぜなら「自分のいないマリナーズが見えた」はずだからである。たぶん、自分がMLBでも(もちろん日本でも)どれだけ他のプレーヤーとかけ離れたセンスで野球をやってきたか、痛感したことと思う。

それは普段は見えずらい「自分の姿」を見ることのできる、ひとつの効果的な方法でもある。
たまには「肉の入っていないスキヤキ」を食ってみないと、ファンもプレーヤーも、そしてなによりイチロー自身も、「肉がスキヤキに入っている意味」がわからなくなる。


もう一度言っておこう。
大事なことだ。


いまやコンテンポラリーな「アメリカ」なのは、
シアトル・マリナーズではない。
イチローだ。



たとえばオールスターだが、その時点で成績のいい選手をみんなで選ぶ「お受験」みたいなものと、自分勝手に勘違いしている幼稚園の受験生みたいな人たちを大勢みかける。


バカ言うなって(笑)

「スター」というのは、スキヤキの「肉」だ。
スキヤキは、「肉」の味を美味しく味わうために作られた料理だ。シラタキのためにあるんじゃない。


ブログ主は、今日のシアトル・マリナーズのような、「和風味の、水っぽい淡白な牛丼」みたいな腑抜けた食い物が大嫌いだ。シラタキの水っぽさだけしかない和風牛丼野球なんか、どうでもいい。

今日でよーくわかったこと。

イチローは、もっと自分のカラダが欲するままに、好きなようにやったらいい。頭で考えるより、体を自由に動かすほうが早い。
好きなだけ空振りして、好きなときに好きなだけ走って、気にいらない判定には悪態をついてやり、退場させられても涼しい顔で退場して、たまにはお気に入りの好投手の球を無理やり強振してスタンドにブチ込んでやれば、それでいい。

そう。キミは優等生でなくていい。
カラダにまかせてみる。カラダを信用してみる。
カラダの求めるだけ、好きなように、
野球とセックスすればいいのだ。

遠慮なんか、いらない。






June 10, 2011

ビジター デトロイト戦初戦、3回表のイチロー第2打席。
3球目が気にいらないので、とりあげてみた。
今日の球審はCory Blaser
Seattle Mariners at Detroit Tigers - June 9, 2011 | MLB.com Classic


2011年6月10日 デトロイト戦3回表 イチロー 3球目2011年6月10日
デトロイト戦3回表
イチロー 3球目

3回表イチロー第2打席終了時の判定マップ
資料:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
2011年6月10日 球審Cory Blaserの判定マップ(3回表まで)

試合終了時の判定マップ
資料:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
2011年6月10日 球審Cory Blaserの判定マップ(試合終了時)


ちょっと長い注釈をつけたい。

このゲーム、初回の第1打席で、イチローは初球のアウトコースのストレートを打っている。打ったのはストレートで、かなりゾーンからはずれている
「なぜ、あのイチローが、ここまではずれているストレートを打つのだろう?」と驚く人もいると思う。

初回、第1打席の初球と、3回表、第2打線の3球目は、ほとんど同じコースで、ボールとしかいいようがないストレートだ。
イチローは初回は振ったが、3回表のストレートは振らなかった。振らなかったが、球審の判定は、ボールではなく、「ストライク」だった。

2つの球は似ている。

それだけに、上に挙げた2つ目と3つ目のマップ上での指摘は、もしかすると「初回に打った球」と、「3回の見逃した3球目」を混同しているのではないか? と思う人がいるかもしれない。

だが、それは絶対にない
そういうことを防ぐために、わざわざ2つの判定マップを挙げているのだ。理由を以下に説明する。


2つの判定マップはBrooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Toolというサイトのツールから借用したものだが、このサイトのマップにプロットされているドットが示しているのは、すべて「球審のコールした球」であって、「ゲームで投じられた全球」ではない。
つまり、記録されるのは「ボール判定された球」、および「打者が見逃したストライク」、この2つのみ、なのである。
もちろん、このことはサイトにきちんと明記されている。
These graphs only plot calls made by the home plate umpire. In other words, they only plot balls and called strikes. No other pitches or results are included. Intuitively, this provides a representation of the strikezone for each game.

3回表の判定マップは、イチローが第2打席を終えた「直後」に採取したものだ。

なぜ、そんなことをするのかというと、このツールのマップは、ゲーム進行につれてどんどん点が書き込まれていく仕組みになっていて、ゲームが終わったときには、3番目に挙げた「試合終了時の判定マップ」のように、たくさんの点が並んでしまっている。
だから普通なら、混みあい、重なりあったドットの中から「どれがイチローのアウトコースに投じられた投球なのか?」を、厳密に判定することが難しくなるのである。

だから、早めにマップをキャプチャーして保存でもしておかないと、後で言いたいことも言えなくなってしまう。
だから、あわてて保存するのだ。


だが、最近あまりにも目に余る「MLBのアンパイアのイチローのアウトコースへの理不尽な判定の数々」の場合、そういう「2段階の保存作業」は、本当は必要ない。

なぜなら、3回表の判定マップで「最もアウトコースにはずれているボール」(=イチロー第3打席の3球目)は、たとえ試合が終わって、マップ上に数多くの点が書き込まれてしまった後でも、つまり、3番目の図の状態で見たとしても、「迷わず、これがイチローのアウトコースの判定だ!」と、簡単に指摘できるほど、あまりにもストライクゾーンからはずれているから、である。

そのくらい、今のイチローのアウトコースの球審の判定は酷いのである。

実際、このごろ、どのピッチャーも、どのピッチャーも、初球は何をさしおいても「アウトコースのストレート」を投げてくる。そして、それをイチローが簡単に見逃すようになっていて、これが、いとも簡単にカウントが追い込まれる原因になり、そして、バッティングスタイルの崩れにも繋がっている。


そんな劣悪な環境におかれているのだ。
アウトコースのボール球であっても、どうせストライクコールされるくらいなら、振ってヒットにしてやる!」と、彼が思ったとしても、なんの不思議もない、と思う。

ブログ主は、イチローが、このゲームの初回、初球のアウトコースの「3回の3球目以上に、とんでもなくはずれているストレート」を強振したのは、彼なりの、野球のルール内での反抗と抗議であり、「球審のコールになんて、負けないぜ。ヒットにしてやるっ」という意思表明だと思って、このゲームを見た。

2011年6月10日 デトロイト戦 1回表 イチロー 初球2011年6月10日
デトロイト戦 1回表
イチロー 初球

ブログ主はイチローの不屈さを絶対的に支持している。
あきらめる? とんでもない。ありえない。
あきらめたら、負けだ。

気にいらないものは、
とことん「気にいらない」と言うつもりだ。
誰にも遠慮なんかしない。






June 09, 2011

よくまぁ、今日のようなストライクゾーンが「極端な横長」で、低めのチェンジアップがほとんどボールにされてしまうような球審にブチあたった日に、針の穴を通すコントロールで投げるのを信条とするジェイソン・バルガスが、ここまでの好投をできたものだ。感心した。

最近めっきりキレがなくなったリリーフ、ジャーメイ・ライトが同点2ランを打たれてしまい、せっかくのバルガスの勝ち星をフイにしてしまったが、いずれにしても粘り強いピッチングで、超苦手なホワイトソックス戦、苦手なUSセルラー・フィールドでのビジター3連敗を見事に阻止してくれたのは、バルガスの好投あってこそだ。文句無く素晴らしい。

前の登板の初完封といい、
バッテリーに心から拍手を送りたいと思う。

Seattle Mariners at Chicago White Sox - June 8, 2011 | MLB.com Classic

今日の球審Marvin Hudsonは、本来はこういうアンパイアではない、と思う。データ上でいうと、本来はかなりルールブックどおりのストライクゾーンを持っている「はず」のアンパイアだ。

だが、なんとまぁ驚いたことに、今日のMarvin Hudsonのゾーンは、「あまりにも横長なゾーンで判定することで有名なMike Winters」以上の、びっくりするほど横長なストライクゾーンだった。
資料:Mike Wintersのストライクゾーン
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年11月8日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (4)特徴ある4人のアンパイアのストライクゾーンをグラフ化してみる(付録テンプレつき)

今日のゾーンの「極端さ」ときたら、低めのきわどいボールをとらない程度の話じゃなかった。
たぶん今日は、ルールブック上のゾーンの低めいっぱいから上に、約ボール2個分、約5インチから6インチくらいの間の空間、つまり「ボール約2個分くらいの低めのストライクゾーン」が「消滅していた」と思う。

そして、低目をまるでとらない一方で、「左右のゾーン」は異常に広かった

だから、今日のバッテリーは「上下」ではなくて、「左右」にゾーンを使うしかなかった。(実際、今日バッティングでも大活躍したオリーボの打った球は、どれも高めの球。彼はキャッチャーだから「このアンパイアなら、高目を投げるしかないと、相手バッテリーも考えているに違いない」とでも考えて、狙いを高めに絞っていたかもしれない)


以下は、いつもの判定マッピングである。
四角い点がホワイトソックスの投手、三角の点がシアトルの投手。赤色の点が「ストライク判定」緑の点が「ボール判定」
低めのゾーン内に、「緑色の点」、つまり「球審にボール判定されたストライク」が、異常にたくさんあることを見ておいてもらいたい。
よくこれで、低めのきわどい球を決め手とするジェイソン・バルガスが好投できたものだ。

2011年6月9日 球審Marvin Hudsonの「横長ストライクゾーン」
資料:Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool


わかりやすくするために、上の今日の判定結果マッピングに、さらに手を加え、「今日のおおまかなストライクゾーン」を赤色の四角形で示してみた。
びっくりするくらい「ストライクゾーンが横長になっている」ことがわかると思う。図をクリックして、大きな図で確かめてもらいたい。

2011年6月9日 球審Marvin Hudsonの「横長ゾーン」を明示した図


バルガスは、こういう「低目をほとんどとらない球審」に出くわすと、どうしても彼本来の「きわどいコースにストライクを決めまくって、打者をキリキリ舞いさせるようなピッチング」が出来なくなってしまう。
バルガスはときとして大量失点することがあるが、それは、かつての城島キロス、いまのジメネスのような、バルガスの望む配球パターンを頭に入れてないキャッチャーとばかり組まされてきたこと以外に、球審の問題がある。低めのストライクがとってもらえず、しかたなく高めにチカラの無い球を投げては、連打されまくってしまうのだ。

バルガスが負けるときの典型的なパターンは、日本のファンもよく知ってのとおり、「コントロールの素晴らしいバルガスはいつでもきわどい変化球のストライクを投げられる。なのに、低目をまるでとらないような相性の悪い球審に悩まされると、結局、意図しない大量失点をする負けパターン」にはまる(というか、ハメられてしまう)のだ。


だが、今日のバルガスは違っていた。
やっぱり息のあったクレバーなバッテリーは見ていて気持ちがいい。
今日バルガスとオリーボは、バルガス特有の負けパターンにはまらないように気をつけていたように見えた。


プレートの真上に落ちる変化球は、MLBにおける典型的な決め球のひとつだが、バルガス、オリーボのバッテリーは、ゲーム序盤から「プレートの真上に落ちるチェンジアップ」だけに頼らず、「インコースを突く攻め」も織り交ぜて、配球に変化をもたせていた。
だが、ゲーム序盤に「今日は、低めのチェンジアップがストライク判定してもらえないこと」に気づいて、低めのチェンジアップだけに頼るのを止め、(特に右打者に対して)インコース攻めをより強調した。

この「インコース攻め」が、今日の「まったく普段の彼らしくないMarvin Hudson」のような「低目をまるでとらない球審」がとても苦手なバルガスにとって、非常に功を奏した。


例1)初回のカルロス・クエンティン
1回裏、二死走者なし。
3番カルロス・クエンティンには、この3連戦で既にフェリックス・ヘルナンデスがホームランを打たれているが、バルガスは、その危険なクエンティンのインコースへ「勇気ある2球目」を投げた。
シアトルには好投手も多い。だが、いま好調のクエンティンのインコースに、ひょいっとチェンジアップを投げるだけの勇気あるピッチャーは、このジェイソン・バルガスだけだろう。

このインコースのチェンジアップは見事すぎるほどの「明らかなストライク」だったが、球審の判定はなんと「ボール」。やむなく外のカットボールで追い込むが、4球目に再び「ボール判定されたチェンジアップ」と同じコースにストレートを投げたところ、ホームランを浴びた。ツいてない。

2011年6月9日 ホワイトソックス戦 1回裏 クエンティンへの2球目


例2)4回のリオス
4回裏、二死2塁。追加点のピンチ。
5番アレックス・リオス。2球目、インコース低めにズバリと決まったバルガス得意のチェンジアップだが、球審はこれを「ボール判定」。その後3-0とカウントを悪くして、ピンチを広げそうになった。
だが、こんどはバルガスが、あわてずに得意のチェンジアップを典型的な「アウトハイ・インロー」配球で内・外と投げ分け、リオスをピッチャーゴロに仕留めた。
MLBでよくみかける「アウトハイ・インロー配球」については以下のブログ記事を参照。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:メジャーと日本の配球論の差異から考える「城島問題」damejimaノート

2011年6月9日 ホワイトソックス戦 4回裏 リオスへの2球目






June 07, 2011

今年のドラフトでシアトルはAtlantic Coast Conference (以下ACCと省略)に所属するヴァージニア大学の投手Danny Hultzenを指名した。

Virginia Cavaliers baseballVirginia Cavaliers baseball

ヴァージニア大学はACCから2009年カレッジ・ワールドシリーズ(College World Series 以下CWS)に初出場を果たしたが、Danny Hultzenはその一員として出場している。
この2009CWSには、シアトルが2009年ドラフト1位(全体2位)で指名したノースカロライナ大学出身のダスティン・アックリーも出場している。
ヴァージニアとノースカロライナは同じカンファレンス。ハルツェンのヴァージニアはファーストラウンドで敗退、アックリーのノースカロライナはセカンドラウンドで敗退したが、アックリーのほうはベストナインに選出されていて、アックリーとハルツェンの大学時代の実績には微妙な差がある。(優勝はLSU、ルイジアナ州立大学)
2009 College World Series - Wikipedia, the free encyclopedia
まぁ、ハルツェンがどういう選手で、どういう実績がある選手なのかは、どこかの真面目すぎるサイトがきちんと説明してくれると思う(笑)ので、めんどくさい割にはちっとも面白くない説明はそちらに譲る(笑)
Danny Hultzen - Wikipedia, the free encyclopedia


ここでは、なんともややこしいACC(Atlantic Coast Conference)の成り立ちに関する怪しい昔話を読んでもらおう。

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Atlantic Coast ConferenceのロゴAtlantic Coast Conference

ボストンからマイアミまで、やけに加盟大学が飛び飛びに離れて点在するACCだが(笑)、このカンファレンスが、アマチュアとはいえ野球に関していかに競争が激しいか、そしてハルツェンのヴァージニア大学が強豪ひしめく激戦地区の代表として史上初のカレッジ・ワールドシリーズに出場したことが、いかに大変なことだったか、わかってもらえると嬉しい限りだ。

ACC所属大学Atlantic Coast
Conferenceの
加盟大学


まず、頭にいれておかなくてはならないことが2つ。

ひとつは、アメリカのカレッジスポーツのエリア区分である「カンファレンス」は不動のものではない、ということ。加盟大学が脱退してカンファレンスを移ったり、新たに加盟する大学が出てきたりなど、加盟大学数には増減がある。また、MLBがチーム数を増やすエクスパンジョン(=規模の拡大)を実行し、新たにシアトルに野球チームを作ったのと同じように、大学のカンファレンスもエクスパンジョンがあり、加盟大学の所属の異動が起こる。

2つ目に、カンファレンスは必ずしも「州を区分単位として構成されているわけではない」こと。
たとえば、ジャスティン・スモークの出身地サウスカロライナ州だが、ここには様々なカンファレンスの加盟大学が混在している。
クレムゾン大学 (Clemson University)はAtlantic Coast Conference。スモークの出身校サウスカロライナ大学はSoutheastern Conference。そしてSouthern Conferenceにも、サウスカロライナ州の4大学が加盟している。
List of NCAA conferences - Wikipedia, the free encyclopedia



さて、ACC。

1953年に、Southern Conferenceに加盟していた8大学が独立する形で新設されたこのカンファレンスには、カレッジ・ベースボールの強豪校が揃っている。
カレッジ・ワールドシリーズ優勝4回の名門マイアミ大学。2006年2007年と、2年連続で決勝に行ったノースカロライナ大学。ここ数年のCWS常連校クレムゾン大学フロリダ州立大学。西の強豪校がひしめくカリフォルニアやテキサスあたりにもまったくひけをとらない、東部の強豪地区だ。
Atlantic Coast Conference - Wikipedia, the free encyclopedia

スモークの出身校サウスカロライナ大学も、元はこのACCのcharter member(「チャーター・メンバー」=創設メンバー)で、1920年代からずっと加盟していたが、わけあって1971年に脱退した。
原因はよくはわからないが、どうも当時のACCに蔓延していたと思われるリクルーティング・トラブルなどが原因のようだ。
その後サウスカロライナ大学は、しばらくどこのカンファレンスにも属さない形になったが、1991年にSoutheastern Conferenceが所属校を増やし東西2つのディヴィジョンを創設するエクスパンジョンにあわせて加盟し、現在に至っている。



さて書こうと思ったのは、ACCの昔のあやしげなトラブル(笑)
例えば、こういう話がある。

Frank McGuireは、ニューヨーク州のSt. John's Universityを卒業し、華麗な経歴を築いていったスポーツコーチだ。(「ニューヨーク育ち」という点を覚えておいてもらいたい)
Frank McGuire - Wikipedia, the free encyclopedia
彼の偉大な業績は、まず、ニューヨークの母校を「2つの異なるスポーツ」でNCAAのトップクラスに導いたことだ。1949年に野球のヘッドコーチに就任して母校をカレッジ・ワールドシリーズに出場させたかと思うと、3年後の1952年にこんどはバスケットボールのヘッドコーチとして、母校をNCAAベスト4に導いた。誰にも真似できない離れ業である。

また彼は後に、カレッジ・バスケットボールのコーチとして、ノースカロライナ大学とサウスカロライナ大学、両方で実績を残している。この「異なる2大学で、全米レベルで歴史に残る輝かしい成績を残したコーチ」は、彼が初めてらしい。
バスケットのコーチとしてのFrank McGuireは、ノースカロライナ大学で1957年にNCAAチャンピオンシップで優勝。また、サウスカロライナ大学では(当時まだサウスカロライナはACC所属だった)シーズン無敗でのカンファレンス優勝という金字塔を打ちたてた。
That's what Wilt Chamberlain calls the unbeaten '56-57 - 03.29.82 - SI Vault

だが、この優勝の翌年、どういうわけかサウスカロライナ大学はカンファレンスを脱退しているのである。そのいきさつに関しては、後で紹介する記事を参照してほしい。


Frank McGuireは、コーチとして数々の名声を築いたが、残念なことに、一方では選手のリクルーティングにまつわるトラブルの多さや、チームの八百長の噂(ノースカロライナ大学時代)など、トラブルメーカーとしても有名だったらしく、彼は1961年のシーズン終了をもって、ノースカロライナ大学を辞めさせられている。(資料例:Scandal that rocked ACC | CharlotteObserver.com & The Charlotte Observer Newspaper
彼はその後、当時フィラデルフィアにあったNBAウォリアーズのコーチになり、しばらくカレッジスポーツから遠ざかっていたが、1964年にサウスカロライナ大学のバスケット・コーチに就任。再びカレッジ・バスケットボールの道に戻った。


サウスカロライナ大学コーチ時代の彼を、全米有力スポーツメディア、スポーツ・イラストレイテッドの1966年11月の記事に見ることができる。
Refusing to divulge reasons, the Atlantic Coast Conference - 11.07.66 - SI Vault

この記事は、次のような事件が元になっている。

ノースカロライナ大学を辞めさせられたFrank McGuireをコーチに迎えたサウスカロライナ大学バスケットボールチームには、当時、スタープレーヤーとしてMike Grossoという優れたセンタープレーヤーがいた。
Grossoは、Frank McGuireの出身地ニューヨーク州の隣のニュージャージー州の高校の出身なのだが、これは偶然なのではなく、ちゃんとした「ワケ」がある。

ある種の「スポーツ裏口入学」なのだ。

Frank McGuireは、自分の育ったニューヨーク近辺でいつも有望選手をみつけては、自分のチームに入れていた。1957年にノースカロライナ大学がNCAAチャンピオンシップでウィルト・チェンバレンのいたカンザス大学を破って優勝したときも、実は「ノースカロライナ大学のスターター全員がニューヨーカー」だった。(彼は1957年にノースカロライナ大学でNCAAで優勝したとき、チームが地元に凱旋する飛行機に乗らず、エド・サリバンショー出演のためにニューヨークに行ったくらいだ)
遠く離れたニューヨークで選手をみつけては、自分のコーチする大学チームに連れてくる彼の仕事ぶりは、"underground railroad" と、特別な言葉で揶揄されている。

underground railroadという言葉には「地下鉄」という意味もないこともないが、Frank McGuireのリクルーティングを揶揄する場合、南北戦争以前の19世紀アメリカにあった「黒人奴隷を亡命させ自由にするネットワーク」をもじって、「秘密ルート」、もっとハッキリ言えば「秘密の裏口入学」を意味して使われている。
underground railroadは、南部の黒人奴隷をオハイオ川などを経由してアメリカ北部やカナダに逃がすための秘密ネットワークのことで、後に南北戦争の引き金になった。文字通りの地下とか鉄道という意味は無い。
Frank McGuireを揶揄するときには、北部ニューヨーク近辺のバスケットプレーヤーを、ノースカロライナなど南部の州へ、つまり、19世紀の奴隷解放のためのunderground railroadと「まったく逆向きのルート」でこっそり運んだ、と皮肉っているのである。

Underground Railroad
Underground Railroad - Wikipedia, the free encyclopedia

地下鉄道 (秘密結社) - Wikipedia

Mike Grossoは、ニューヨークの隣のニュージャージーで彼が見つけてきたセンタープレーヤーだ。
だが、このGrosso、サウスカロライナ大学に連れてきたのはいいが、実は入学に必要な「750点」がとれていなかった。

記事によれば、Grossoの学力不足問題が、サウスカロライナ大学が当時加盟していたACCに伝わり、当然ながら、ACCの統括者は「カンファレンスに加盟する各大学の学生資格をきちんと満たした上で、バスケットのゲームに出場するのでなければ困る」と、Grossoの出場資格にクレームをつけた。
そこで善後策として、Grossoに再試験まで受けさせたのだが、そこでも700点ちょっとしかとれなかったらしく、結局、GrossoのACCカンファレンスのゲームに出場する資格は剥奪され、Frank McGuireのチームはエースの欠けた状態になった。
最近の例では、現マイアミ・ヒートのドウェイン・ウェイドや、デトロイト・ピストンズのロドニー・スタッキーが、大学時代に学業成績がNCAAの基準に足りなくてそのシーズンの公式戦に出られなかった、なんていう例もあるが、Grossoの場合は「入学資格そのもの」があやしかったわけで、話のレベルが違う。

この件について質問されたFrank McGuireはこんなふうに開き直った。
"I fed the boys too well and all, but that's the way I live myself, and I've always been that way."

「まぁね、ニューヨークあたりのガキどもを、将来バスケットやらせるために養ってきたのは、ちょっとやり過ぎだったかもしれない。でもな、アンタ。俺は、ずうっと長いこと、こういう風にやってきたんだよ。わかるかい?(俺にどうしろっていうのさ?)」


ニューヨーク育ちの彼の言う「俺なりのやりかた」とは、サウスカロライナで選手を育てるのはなく、自分の「顔」のきくニューヨーク近辺で「スポーツの才能のありそうな子供」を見つけてきては、自分のコーチする大学に押し込んで、その大学を優勝させる、というような「やり方」を意味している。
このインタビューが書かれた1966年はFrank McGuireのサウスカロライナ大学のコーチ時代だが、彼自身が「ずっとそれでやってきた」と自分から豪語するからには、その前のノースカロライナ大学のコーチ時代にも「同じようなやり方」をやっていた、と推測するべきだろう。

ノースカロライナ大学にいられなくなったFrank McGuireをコーチとして引き入れたサウスカロライナ大学が、バスケットで優勝したすぐ翌年の1971年に所属カンファレンスをなぜか脱退し、しかも、その後しばらくどこのカンファレンスにも属さなかった「謎の行動」の理由が、このエピソードからちょっと透けて見える。


Frank McGuireが亡くなったのは、1994年。
1913年にニューヨークの警官の13人の子供のひとりとして生まれ、80歳で亡くなったこの男の灰汁の強い一生について、ロサンゼルス・タイムズは長い記事を書いた。
Basketball Coaching Great Frank McGuire Dies at 80 - Los Angeles Times


以前、ボルチモアのブライアン・ロバーツのバイオグラフィをちょっと書いたとき、彼の父がノースカロライナ大学の野球部コーチを辞めさせられたために、息子のロバーツもノースカロライナ大学を辞め、サウスカロライナ大学に移った、という話を書いたことがある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月25日、「2月のサウスカロライナ、父と息子のキャッチボール」。February in South Carolina, a father and his son played catch.
よくよく考えてみると、この「ノースカロライナ大学から、サウスカロライナ大学への移籍」というものも、もし時代が20年ほどさかのぼった1970年代以前の話なら、ちょっとワケありな移籍と、人に思われたのかもしれない。


ボストンからマイアミまで、飛び飛びに離れた所属大学が、やけに縦に広い地域に点在するACCだが、その歴史には、まぁ、いろいろあって、こうなった、ということなのである。






June 06, 2011

2011年5月17日 ミネソタ戦3回裏 イチロー 一塁ゴロ5月18日3回裏
一塁ゴロ
2011年5月17日 ミネソタ戦5回裏 イチロー タイムリー5月18日5回裏
タイムリー
2011年6月5日タンパベイ戦 イチロー 2点タイムリー スリーベース6月5日3回裏
2点タイムリー
スリーベース


上の2つは、5月18日のミネソタ戦で、3回裏に凡退したシーン(真ん中低めいっぱいのストレート)、5回裏にタイムリーを打ったシーン(インコース低めいっぱいのストレート)。ピッチャーは、リリアーノ
資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月18日、ゲーム中にバッティングを修正していける、この素晴らしいイチローの修正能力。

そして、一番下の画像は、今日6月5日タンパベイ最終戦で、3回裏に2点タイムリー三塁打を打ったシーン。ピッチャーはウェイド・デイビスで、打ったのは真ん中低めいっぱいに決まる、ゾーン内のストレート。


これら3打席すべてが「低めいっぱいに決まる球」を打ったシーンだけに、比較しやすい。

もう、ね。右足の踏み込みから、タイミングから、なにから、なにもかもが「上向き」な感じ。バットの先までパワーがしっかり伝達されていて、ぜんぜん心配ないわけですよ。天才野球小僧が修正してこないわけがないわけで。

むしろ、5月18日のイチローのタイムリーが、いかに状態の悪い中でチームに貢献しようと必死に打ったヒットかが、よくわかるわけですな。頭が下がりますです。はい。

天晴れ、イチロー。






今日のタンパベイ戦、球審はJim Joyce。そう、あのガララーガの完全試合未遂ゲームの、あのジム・ジョイス。
Jim Joyceはどうも、右打者のときは完全に「スロット」のポジションだが、左打者のときはやや中心よりと、バッターによって立ち位置が変わっているように見えるのだが、どうなのだろう。気のせいか? (左のペゲーロのときなどはスロットだったりするのも、意味がよくわからない)
Tampa Bay Rays at Seattle Mariners - June 5, 2011 | MLB.com Classic


初回のイチローは、アウトコースのストレートを見逃し三振。自信をもって見逃している。もちろん、ボールはデータ上、ストライクゾーン外にはずれている。詳しくはまた後で書く。今はデータを貯めたい。

最近、イチローが「不調だから、アウトコースが見えてない」なんて言う人がいるが、ハッキリ書いておく。
イチローは「アウトコースが見えていないから、ストライクを振らずに三振した」のではない。「ボールなのがわかったから、振らなくていい球を振らなかった」だけだ。
これをストライクと判定するかどうかは、単に「球審の個人差の問題」であり、イチローの選球眼の問題ではない。

2011年6月5日 1回裏 イチロー 見逃し三振1回裏
イチローへの4球目

2011年6月5日 初回 イチロー三振時の判定マップ
資料:Brooksbaseball.net

次の資料は7回裏、イチローへの初球。球審Jim Joyceはインコースへのストレートをストライク判定した。これも、もちろんデータでみると、ゾーンをはずれている。

何度も書いてきているように、MLBのアンパイアの傾向として「左打者のアウトコースの判定で、ゾーンを広くとる」というのはある。
資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:アンパイア、MLBのストライクゾーン

だがしかし、左打者のインコース、いわゆる「スロット」に立って判定しているはずの球審が、左打者のインコースの「ゾーン外にはずれている球」を「ストライク判定」とは、ちょっとやりすぎだ。左打者への判定が外は広いMLBとはいえ、内はここまで広くない。

2011年6月5日 7回裏 イチロー 初球7回裏
イチローへの初球


次の資料は、2回裏、6番の右打者ミゲル・オリーボへの3球目。アウトコースへのストレートをストライク判定。これも、もちろんゾーンははずれている。

今日の先発はエリック・ベダードだが、こういう外の判定の広い球審の日には、ストライクゾーン内にしゃかりきになってストライクを投げようとしてはいけないのだが、残念ながら、今日の序盤のベダードは非常に投げ急いでいて、カウント0-2から必要のないストライクを投げ急いでタイムリーを浴びている。

なんせ、アウトコースの、ゾーン外の球をこれだけストライク判定してしまうアンパイアなのだから、バッテリーはちょっと使うコースを考えないとダメだ。(さらに言えば、ゲーム終盤にはゾーンが変わってくる、という問題も意識に入れておくべきだろう)

2011年6月5日 2回裏 ミゲル・オリーボへの3球目2回裏
オリーボへの3球目

2011年6月5日 2回裏 オリーボ3球目時点での右打者判定マップ
資料:Brooksbaseball.net


ちなみに最近「球審の立ち位置」が、昔とは違うことをご存知だろうか?

なにも特定のアンパイア、少数のアンパイアが、自分の特殊な趣味で立ち位置を変えたのではなく、トレンドとして変わった、というか、変えたのだ。(とはいえ、もちろんそれでも「立ち位置」に冠する球審間の個人差が無くなるわけではない。「個人差」というのは、MLBにおいて常に認められている、ひとつの文化のようなものだ)
どう変わったかというと、球審はかつてのようにホームプレートの中心ラインに沿って立って、「ストライクゾーンを左右均等に見てはいない」のである。
今、アンパイアは、プレートの中心に沿って立つのではなく、「バッターのインコース側」に立って、バッターとキャッチャーの間の「隙間」から顔をのぞかせるようにして、ゾーンを見て、判定しているのである。
この「打者とキャッチャーの間の、球審が顔をのぞかせる隙間」のことを「スロット」といい、「スロットに立って判定する球審のポジショニング」を、アンパイアの人たちの用語などは「スロット・ポジション」とかいっている。(なお、英語サイトでは、work in the slotとか、set up in the slotなどという表現をみかける)「スロット」という言葉は、ギャンブルの名前ではなく、「隙間」という意味。

この球審の立ち位置の変化は、MLBであれ、日本のプロ野球であれ、野球を見る上でファンの誰もが必ず知っておくべきことだと思う。
アンパイアをやっている立場の人にしてみれば、「スロット」からの判定は「一番判定の難しいアウトコース低目が見えるようになる。またインコースの際どい球筋が見えることで、投手の極端なインコース攻めを抑制できる」とか考えている人が多いようだ。

だが、実際に野球をやってきて今は解説者をやっている人たちや、巷の野球ファンが、アンパイア側の人たちと同じ意見を持っているとは限らない。
解説者の中にも、ファンの中にも、「スロットからの判定だと、遠いアウトコースの判定はおぼつかないんじゃないの?」と疑問を投げかける趣旨の発言をしている人は、けっこうみかける。
ブログ主も、「スロットから判定すれば、アウトコースの判定がより正確になる」とは、今のところ思えない。

発言例:ボルチモアのフォーラム
New Umpire Plate Position
発言例:High School Baseball Web
Plate Umpire positioning - Topic
資料:球審のポジションに関するPDF
http://glenwoodlittleleague.org/wp-content/uploads/forms/umpiring/plate_mechanics.pdf


ちなみに以下は、8回表からベダードをリリーフして、逆転を許したシアトルのジャーメイ・ライトの、タンパベイ、フェリペ・ロペスへの2球目。ゾーンに入っているアウトコースのストライクを「ボール判定」。
なんだろうねぇ、この球審ジム・ジョイスの「アウトコースの判定」。やれやれ。

2011年6月5日 8回表 フェリペ・ライトへの2球目8回表
ロペスに投じた
ライトの2球目






June 04, 2011

ちょっと書いていて気が重くなるような記事を書いたばかりなので、ちょっと気ばらしに、昨日のタンパベイの先発、James Shieldsのことでも書いてみる(笑)

ボルチモアのジェレミー・ガスリーが、好投手なのに、やたらホームランを打たれるタイプの投手なことを書いたばかり(http://blog.livedoor.jp/damejima/archives/1599392.html)だが、タンパベイのJames Shieldsも、防御率2.77で、ア・リーグ防御率ランキング8位、WHIIPも1.04でランキング10位というのに、その一方ではガスリーと並んで、ア・リーグで最もホームランを打たれている投手3人のひとりでもある。(ほかの2人は、カンザスシティのルーク・ホッチェバー、テキサスのコルビー・ルイス
Major League Baseball Stats: Sortable Statistics | MLB.com: Stats

また、今年29歳の彼は、20代の現役投手の中で最もホームランを打たれている投手3人のうちのひとりでもある。(他の2人は、ナショナルズのマイナーにいる元メッツのオリバー・ペレス、LAAのアーヴィン・サンタナ。ペレスも元・奪三振王)
現役投手の被ホームラン・ランキング
Active Leaders & Records for Home Runs - Baseball-Reference.com

James Shieldsのこうした「三振か、ホームランか」という傾向はなにも今年だけのものではなくて、過去何年か見ても、彼は、被ホームラン・ランキングは「自分の庭」とばかりに(笑)毎年のように顔を出している「被ホームラン・キング」なのだ。

2007 AL 28 (3rd)
2009 AL 29 (2nd)
2010 AL 34 (1st)
2011 AL 12 (3rd) 2011年6月2日現在
James Shields Statistics and History - Baseball-Reference.com

ちなみに、こっちは「被ホームラン・ランキングのもうひとりの王様」ジェレミー・ガスリーのランキング。2009年の王様がガスリー、2010年はJames Shields、というわけ。
2009 AL 35 (1st)
2010 AL 25 (7th)
2011 AL 10 (7th)  2011年6月2日現在
Jeremy Guthrie Statistics and History - Baseball-Reference.com


James Shieldsは2010年被ホームラン・キングでもあると同時に、奪三振187、9イニングあたりの奪三振率8.277と、奪三振ランキングの上位でもある。どうしてまたこういうことになるのか?
それはたぶん、「打者の打撃傾向をほとんど考えずに、自分の投げたい球を、自分のピッチングスタイルに沿って投げている」という点にあるのだろう、と思う。

昨日のゲームでShieldsが浴びたホームランは4本だが、そのうち2本を打ったのはカーロス・ペゲーロセーフコのカーロス・コールにならって、あえてカルロスとは書かない 笑)。
ペゲーロは、シアトルのゲームをよく見ている日本のファンなら誰でも知っているが、典型的なローボールヒッターだ。
ペゲーロが特に好むのは、真ん中低めの、それもストライクからボールになるチェンジアップのような球だ。
ある種、どんな悪球でもヒットにしてしまうボルチモアの悪球王ウラジミール・ゲレーロのようなタイプだが、まだまだ名前だけ似ているだけでゲレーロよりずっと格は落ちる。ペゲーロは高めのストレートがウイークポイントで、間違いなく空振りしてしまい、ほとんど打てない。(要は、高めストレートの得意なジャック・カストと真逆のタイプ)

なのに、Shieldsは、2回裏にそのペゲーロ(ゲレーロではない。ややこしいな 笑)に、彼の一番の大好物の「真ん中低めのチェンジアップ」を、それもご丁寧に、初球と3球目、2球も投げてくれて、3ランを打たれてしまう。
そして、3ランだけでプレゼントは足りず、4回裏ペゲーロの次の打席でも、低めのカーブを初球、2球目、4球目と投げてくれて、この日2本目のホームランまでプレゼントしてくれる。
これはまさに文字通り、献上だ(笑)。ビッグなプレゼントくれるのはありがたいけど、ホームランを打たれた次の打席の初球に、また「低めの変化球」を投げてきたときには、かえってビックリした。「まだホームランを打たれ足りないのか?」と、即座に思ったら、思った通りの結果になったわけだ(笑)


Shieldsはどうも、「打者のスカウティングを、まったく気にせず投げている」ように見える。

と、いうのも、2回裏にジャック・カストにソロ・ホームランを打たれた場面でも、カストの大好きな「やや高めのストレート」を3連投、4回裏にジャスティン・スモークにソロ・ホームランを打たれたときも、彼の大好きな低めに落ちていく変化球を2球投げているからだ。
そもそもカストは、体を寝かせながら打つ独特のアッパーカットのフルスイングで高めの速い球を打ち上げるのが得意な打者で、逆に、低めの変化球は苦手だ。
またスモークも、高めの速いストレートにはいつも振り遅れるなど、得意な球だけを打てる打者で、苦手な球はほとんど打てない。

ペゲーロ含め、3人が3人とも、得意不得意が非常にハッキリしている打者なのに、Shieldsは彼らの得意な球ばかりを投げているのだ。
先日マイナーに落ちてしまったマイケル・ソーンダースも、高めには滅法強いが、インコース低めに落ちていく変化球が苦手だったが、Shieldsのピッチングは、いわば「ソーンダースに高めのストレートを連投するピッチングをしているようなもの」だ。

さらに言えば、彼は「このイニングは、低めのチェンジアップでいく」と決めたら、そのイニングの最初の3人のバッターに、低めの好きな打者がいようと、チェンジアップが好きな打者がいようと、おかまいなしに低めのチェンジアップを投げるし、それで低めのチェンジアップが打たれてしまった後はというと、「チェンジアップはダメか。よし、こんどはアウトコースいっぱいを攻めるゾ!」と方針を変え、こんどは誰彼かまわず「アウトコースばかり」攻めるような、一本調子なピッチングを実際にやっている。

うちとれているうちはいいが、ほんのちょっとでもツボにはまれば、間違いなくスタンドに放り込まれてしまう、Shieldsはそういう「こわれやすいガラスのエース」である。


だが、まぁそうは言っても、Shieldsの「三振か、ホームランか」という、「イチかバチか感のピッチング」は、たぶん毎日見ていれば、日頃投球術がどうのこうのと、11三振とるようなフェリックス・ヘルナンデスにもうるさく言っている投球術フェチ(笑)のブログ主も、おそらくファンになってしまうような、「アブない魅力」を兼ね備えているのも事実だ(笑)

タンパベイの監督ジョー・マドンは、マイク・ソーシアのベンチコーチをつとめられるような頭のいい人なのだから、「打者のことも、ちょっとは頭に入れて投げろ」とアドバイスするくらいのことは考えたはずだが、たぶんJames Shieldsの荒削りの魅力が削がれるくらいなら、欠点を直すのはあえて止めておこう、と、思ったのかもしれない。
MLBに入ったばかりの頃のベーブ・ルースだって、グリップが上下逆だった。だから、20本や30本のホームランくらい許してやるから、三振を200くらい獲ってこい!、というのが、粋、というものかもしれない。






June 03, 2011

これは、ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年6月2日、「記録達成」を阻止したいのかとでも疑りたくなるような、今シーズンのイチローに対するアウトコースのストライクゾーン。(1)、の続きの記事。


BrooksBaseball.netは、ルールブック上のストライクゾーンと、実際のアンパイアの判定の「ズレ」について、非常に強いこだわりをもったデータを提供してくれているサイトだ。
今日のタンパベイのゲームでも、球審Ron Kulpaの正確無比な判定を、ゲームの進行に沿って、そこそこリアルタイムにデータ上にマッピングしてくれている。
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool

今日のゲーム全体の「左打者の判定」は、下のマップのようになっている。
クリックすると別窓が開いて、大きなマップがみられるので、よかったら見てみてもらいたい。四角い点がシアトルの投手、三角がタンパベイの投手。赤い点がストライク判定緑の点がボール判定だ。

どうだろう。

今日の判定は、赤い点が、実にきれいにゾーン内に収まって、なおかつ、緑の点がきれいにゾーンの外におさまっていることがわかると思う。
今日の球審Ron Kulpaが、かなり正確な判定をしていることがハッキリわかってもらえると思う。このブログでよくとりあげる、低めの大半をボール判定するタイプのSam Holbrookのマップなどと比べてもらってもいい。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年4月29日、4月8日にてこずったアンパイア Sam Holbrookにまたしても遭遇したジェイソン・バルガスの初勝利。

2011年6月2日 左打者への判定(Normalized Maps)ゲーム全体の判定マップ


さて問題にしたいのは、イチローのアウトコースの異常さだ。


まず1回裏、第1打席の5球目
イチローはカウント1-2から、タンパベイ先発の右投手James Shieldsの5球目のストレートを見逃して、三振に倒れている。その球は、下の画像でいうと、白い淡い線で描かれた仮想ストライクゾーンの左下にある、赤色で「5」と書かれた点だ。

この球、Gamedayの表記では、ゾーンからボールひとつくらいはずれているわけだが、後でこれがBrooksBaseballのデータ上ではどういう風に表記されているのかを見てみることで、BrooksBaseballというサイトのデータがいかに正確か、そして、ストライクとボールを見分けるイチローの選球眼がいかに正確かの、両方を感じとることができるはずだ。
(ちなみに下の「1回裏の判定マップ」で、マッピングされた点の数が「ゲーム全体の判定マップ」より少ないのは、初回イチローの打席までのデータであるため。後から画像ソフトで点を消したわけではない)

2011年6月2日 1回裏 イチロー 三振初回・イチロー
5球目を見逃し三振

1回裏時点での判定マップ
2011年6月2日 初回 イチローが三振した時点でのマップ


次に、4回裏、第3打席の初球
この球は、アウトコースのハーフハイトのストレート。ゾーン左側に「1」と書いてある赤い点がそうだ。
どうだろう。上の例と比べても、びっくりするほど、ゾーンからはずれているのがわかると思う。

2011年6月2日 4回裏 イチロー 5球目>4回裏・イチロー
ショートゴロ


上の2つの例を、こんどはBrooksBaseballの試合全体のデータで確認してみる。
細かいデータなので、図をクリックして、大きな図にしてから見たほうがいいと思う。もちろん赤い日本語の文字は、ブログ側で後からデータに書き入れたものだが、データそのものは一切いじっていない。

1番目のサンプルの、「初回・5球目」については、このコースをストライクとコールするアンパイアはいるものだ、ということは、もちろんわかっている。なにも、このコースをストライクコールされること自体に文句を言っているのではない。
問題にしているのはそういうことではなくて、「ゲーム全体の判定マップ」を見渡せばわかることだが、「ボール半分のわずかなズレでも正確に判定できるような、これほど優秀で正確なタイプのアンパイアが、なぜ、イチローの打席に限っては、あからさまに「ボール1個はずれたボール」を、ストライクとコールするのか?」ということだ。

マップを見てもらおう。

イチローへの投球を加筆強調したマップ
2011年6月2日 イチローの打席だけに現れるおかしな判定

BrooksBaseballのデータで見るかぎり、
シアトル、タンパベイ、どちらのチームの打者かを問わず、このゲームの左打者で、アウトコースのボール球をストライクと誤判定されたのは、イチローに対する初回・5球目と、4回・初球の、2球しかないのだ。

そして、4回のコールに関しては、どう考えても、このアンパイアは、「これほど明白にゾーンからはずれたストレート」を、ストライクコールするようなタイプではない。
加えて、この馬鹿みたいにはずれた明らかなボール球をストライクとコールする「アウトコースの判定が異常に広いアンパイア」は、さすがのMLBでも、ほとんどいない



以上、ここまで書いたことの信憑性を高める意味で、イチローの打席と比較する資料として、2回裏フィギンズの打席のアウトコース判定を挙げておく。
初球と4球目をよく見てもらいたい。ボール半分のわずかな違いしかない。非常にきわどい判定だが、球審は実に素晴らしい正確さで、初球のストライクはストライク、4球目のボールはボールとコールしている。いかにこの球審が目がいいアンパイアかが、これでわかる。
もし4球目がストライクコールなら、フィギンズは見逃し三振で、この打席5球目のタイムリーヒットは生まれていない。

2011年6月2日 2回裏 フィギンズの打席のアウトコース判定比較対象資料
2回裏フィギンズの打席の正確無比なアウトコース判定


改めて言うけれど、この球審Ron Kulpaは、もともと正確なジャッジのできるアンパイアだ。加えて、今日に限って言うなら、左打者のアウトコースを「ボール半分以下の正確な精度」で判定している。なかなかこんな優秀なアンパイア、Jeff Kellogじゃあるまいし、そうそういるものじゃない。

なのに、イチローの打席に限って、なぜああいうコールがされるのか。

おかしなアウトコース判定が、
今シーズン、あまりにも多すぎる。



資料;初回 イチローの打席までの全データ。
上の3つが補正後。下の3つが補正前。
証拠画像






旅行好きの人はよく目にすると思う。

日本人旅行者が、やれ釣り銭を誤魔化されたの、ホテルがダブルブッキングだったの、ホテルの部屋の設備が故障していた、意味のわからない料金を払わされた、空港でトランクがどっかに行ってしまった、思っていたものと違うものを押し付けられた、そういう旅先でのトラブルの数々。
だが、そういう場面でしっかりクレームを言える人を、残念ながら、あまり見ない。
文句を言うのが恥ずかしい、あるいは、ガミガミ文句をいうとソフィスティケートされた人間でないと思われる、とでも思っているのだろうか? 意味がわからない。ダメなものは、はっきり「ダメ」「修理しろ」「やりなおせ」「これじゃない」「金返せ」と言っていいのだ。


ここに書くことは、「イチローの打席特有の、アウトコースの判定のおかしさ」について、だ。これは、今シーズンずっと思っていたことで、なにも今日初めて考えたのではない。

あらかじめ言っておきたいのだが、MLBのアンパイアには「右打者のゾーンにくらべると、左打者のゾーンは、アウトコース側にズレていて、アウトコースが広い」という、共通の判定基準がある。
この「左打者のアウトコースが広い」現象については、このブログでは、他のどんなメディアより、たくさんの記事を積み重ねて書いてきたつもりだし、MLB全体が共有している範囲での「左打者判定」なら、別に文句をつけるつもりはない。今までのシーズンのイチローの打席でも、「他のMLBの左打者にも共通の現象」なら、よくあった。
また、「同じゲームに出場しているシアトルの左打者にも共通してみられる判定のゆがみ」、あるいは「同じゲームに出場している相手チームの左打者にも共通してみられる判定のゆがみ」、つまり、単なる「そのアンパイア特有のクセや、贔屓の意識」という意味でなら、全世界の野球どこでもある話なので、そのことについても、文句を言ったことは一度もない。


だが、今シーズンのイチローのアウトコースの判定は、ちょっと酷いと、ブログ主は常々思って見ている。つまり、「両チームあわせて、イチローにだけ、厳しい判定が下されている」としか思えないシーンが、多々ありすぎる。


こういうことは、まぁ、誰もが体面を気にして、書かない。公言しない。
だがブログ主は今シーズンの2ヶ月弱のゲームを見てきて、今シーズンについてだけはひとこと言っておかなければならない、と思うようになり、あまり気は進まないが、重い腰を上げてみた。なんせ他に書く人がいないのだから、辛辣な書き方で知られる(笑)このブログで書くしかない(笑)
なんとか、誰にでもわかるようなレベルで書きとめられればいいが、と思う。

この話の真偽のほどは、それぞれの人の判断にまかせたい。同意する人もいるだろうし、同意しない人もいるだろう。
ブログ主はちなみに、今シーズンのイチローの打席については、ほぼ大半を見ている。あくまで今日挙げる例は、多々ありすぎる「おかしいと思うイチローのアウトコースの判定」のサンプルに過ぎない
まぁ、あれこれ言わなくても、シアトルのゲームを数多く見ている人なら、わかっていることだ、とも思っている。
Tampa Bay Rays at Seattle Mariners - June 2, 2011 | MLB.com Classic


まず今日の球審、Ron Kulpaについて。

最初にこれは確認しておきたい。
もし、もし今日の球審が、あまりにも極端なストライクゾーンの持ち主だったなら、むしろ、ブログ主はこんな記事は書かない。むしろ、正確な判定をする優秀な人だからこそ、書く気になった。

たとえんば、球審が、ゾーンが極端に狭いGerry Davis、逆に極端に広いJeff Nelson、ゾーンが非常に横長なMike Wintersなど、判定の特徴があらかじめわかっている人なら、「ああ、今日のゲームはゾーンが極端で、たぶん打者はアンパイアに振り回されることになるだろう」と、あらかじめわかる。(そういう意味では、ジェイソン・バルガスを悩ましているSam Holbrookだって、「ゾーンがかなり狭い」とわかっているのだから、それはそれで諦めがつく部分もある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年11月8日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (4)特徴ある4人のアンパイアのストライクゾーンをグラフ化してみる(付録テンプレつき)
だが、今日の球審Ron Kulpaは、本来「非常にノーマルで、正確なタイプのアンパイア」のひとりだ。だからこそ、今日イチローのアウトコースの判定を問題にしたくなる。

Overall  2.08
Left    1.76
Right   -2.22
Top    1.9
Bottom  1.89

上の数字は、Ron Kulpaのストライクゾーンの数値だ。この数値が何を意味するのかは、ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年11月6日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (3)アンパイアの個人差をグラフ化してみる というブログ記事を参照してもらいたい。

上の数値を、図にしてみると、こんな感じになる。

Ron Kulpanoのストライクゾーン


ゾーン全体が、「やや三塁側、左打者のアウトコース側にやや寄っている」のがわかると思うが、このこと自体は、よくあることだ。
資料:ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月29日、MLBのストライクゾーンの揺らぎ (2)2007年の調査における「ルールブックのストライクゾーン」と、「現実の判定から逆測定したストライクゾーン」の大きな落差。

前に書いたように、「左打者のゾーンがアウトコース側にずれている」のはMLBのアンパイア全体の傾向であって、特に問題にならない。
むしろRon Kulpaのストライクゾーンは、ルールブック上のストライクゾーンからの「ズレ」は、トータルにみて「小さい」部類に入り、かなり正確な判定をするタイプのアンパイアだと思う。


むしろ、正確な球審だからこそ、
判定の問題部分がわかりやすいのだ。






5月31日のボルチモア戦3回表に、ボルチモアの監督バック・ショーウォルターが2死2塁の場面でイチローを敬遠したとき、イチローの熱心なファンであるブログ主ですら、正直いって「いくら元テキサスの監督でイチローをよく知っているからといっても、3回という早いイニングで、敬遠? いくらなんでも警戒しすぎでしょうに」などと、思ったものだ。

だが。
試合結果からいうと、
正しかったのは、MLB監督として最優秀監督賞も受賞しているショーウォルターで、浅はかなブログ主ではなかった。


試合後にショーウォルターはこんな風にゲームを振り返った。
“It’s the type of game where you look back on the opportunities you had, and just realize there was no margin for error,”
Where were you? Mariners stun Orioles before record-low crowd | Seattle Mariners blog - seattlepi.com
「あとから振り返ってみると、ああ、今日のゲームはわずかなミスすら許されない、そんなゲームだったとわかることって、あるものだ。
でもね。後からわかって後悔してるんじゃ、遅いんだ。そこの甘ちゃんなキミ、わかってるのかい?」
と、ショーウォルターは厳しく言ってのけているわけだ。

実際、このところバットの湿ってきたジャスティン・スモークの劇的な逆転3ランで決まったこのゲームについて書かれたボルチモア側の記事で、トップに掲げられている動画は、スモークの3ランのシーンではなくて、イチローの出塁なのである。
このなにげない出塁がいかにゲームを動かしたか?を知っているのは、スモークのホームランで浮かれているシアトルのメディアでも、試合の機微をまるで伝えようとしない日本のメディアでもなくて、対戦相手のボルチモア側なのだ。
Baltimore Orioles at Seattle Mariners - May 31, 2011 | MLB.com BAL Recap

Orioles Insider: Error dooms Orioles in eighth - Baltimore Orioles: Schedule, news, analysis and opinion on baseball at Camden Yards - baltimoresun.com
"Quick runner. You have to get rid of the ball," Scott said. "That’s a tough play to make as a pitcher because he’s running, focusing on the throw and then he’s got to touch the bag at the same time. ... I just tried to get it to him as fast as I could. It was a tough play. Jeremy is very athletic. He's made plays, he’s made tremendous plays before. I led him maybe two or three inches too far."

(「俊足のランナーだしね・・・」と、イチローの足を意識するあまりのエラーだったことを認めるルーク・スコットのコメント)


ボルチモアのセットアッパー、上原投手も最近始めたというツイッター上でこんな風に言っている。
「負けるとキツいって思うけど、今日のは更にキツいと感じる負けやわ。ガスリーが頑張ってたんやけど、一つのプレーで流れが変わってしまったよね。野球って難しいσ(^_^;) その流れを変えたのは、イチローさんの足だと思う。速いっていいよなぁ(^^;; 」

https://twitter.com/#!/TeamUehara

ガスリー自身のツイートはこんな感じ。
「自責点ゼロで、負けちゃうんだからねぇ・・・(野球はむつかしいよ)」とでもいうところで、凹んでいた。
Accomplished something difficult tonight. Pitched a complete game allowing 0 ER & lost. #SweetFace

https://twitter.com/#!/jguthrie46
だが、6月2日のツイートでは、It is a brisk morning in Seattle. Still tough a loss to swallow but gonna 'recharge' & be ready next start. と気持ちを切り替えているから、ご安心を。


これはもう、3回表なのにイチローを敬遠したショーウォルターの見識に対して、謝るしかない。ごめんなさい。
Baltimore Orioles at Seattle Mariners - May 31, 2011 | MLB.com Classic


ここからは余談だ。

8回裏のイチローの出塁にからむボルチモアのプレーヤーは3人いる。ピッチャーのジェレミー・ガスリー、この日筋肉の張りからゲームを休んだ本来の1塁手で、過去に3回ゴールドグラバーになっているデレク・リー、この日の臨時の1塁手ルーク・スコット
あのエラーについて、ショーウォルターは「ガスリーは毎年ゴールドグラブの候補に挙がるくらい守備はうまいのだから」とガスリーの守備の良さを認めていることを示した上で、ルーク・スコットの送球があの場面では強すぎたと、ガスリーの肩を持った。


ジェレミー・ガスリーは、母親が日本語を話さない日系3世の日系4世カート・スズキはマウイ島出身だが、ガスリーはオアフ島のホノルル出身。好物は母親が作ってくれるエビの天ぷらで、食べるのはもっぱら白米。(といって、ガスリーがアメリカ人ぽくないわけではなく、バック・ストリート・ボーイズに心酔する、ごく普通のアメリカ人でもある)
asahi.com(朝日新聞社):信頼集める「ど根性」 ジェレミー・ガスリー(オリオールズ) - スポーツ人物館 日系大リーガー編 - スポーツ
Japanese-Americans (Nisei and Sansei, Yonsei and Happa) playing (or played) in the Major League Baseball
Jeremy Guthrie Statistics and History - Baseball-Reference.com

ジェレミーは、最初ブリガムヤング大学の所属だったが、後に野球のさかんなスタンフォード大学に移って、そこでエースになった。
2001年のカレッジ・ワールドシリーズでは、Pac-10カンファレンスの代表として決勝にまで行ったが、そこで残念ながら、マイアミ大学に1-12と惨敗している。
2001 College World Series - Wikipedia, the free encyclopedia
2002年のドラフトでクリーブランドに1位指名(全体22位)されて入団したが、クリーブランドでは芽が出ず、DFAされてウェーバーにかかって、2007年1月27日にボルチモアに拾われた。
1st Round of the 2002 MLB June Amateur Draft - Baseball-Reference.com
ちなみに、いまシアトルでピッチング・コーチをしているCarl Willisは、2003年から2009年までクリーブランドのピッチング・コーチだったから、ジェレミー・ガスリーのことはよく知っているはず。また、いまガスリーのいるボルチモアのブルペン・コーチは、去年までシアトルのピッチング・コーチだったRick Adair

ボルチモアに移籍してからのジェレミーは、よほど水があったのか、2007年にいきなりWHIPランキング9位の1.209を記録してブレイク。とうとうメジャー定着を果たした。
オリオール

2009年の第2回WBCでは、アメリカ代表のになり、3月11日の第1ラウンド・ベネズエラ戦ではセットアッパーとして、第2ラウンド3月18日のベネズエラ戦では先発投手として登板したが、いずれも負け投手になっている。
2001年カレッジ・ワールドシリーズ決勝といい、どういうわけか、ガスリーは大きなゲームに縁がない。
2009 ワールド・ベースボール・クラシック 2組 - Wikipedia

実力がないわけではない。
いや、むしろ、素質も実力もある。だが負けてしまう。
なぜなのだろう?

今年の防御率は3.24だが、それで2勝7敗では、ちょっと気の毒だ。BB/9、つまり9イニングあたりの四球率などは、この記事を書いている時点で1.320、ア・リーグ1位と、素晴らしい数字を残してもいる。
キーマン、イチローの出塁を許したルーク・スコットのエラーで負けたようなシアトル戦の内容も、実に素晴らしいものだったが、それでも逆転3ランを打たれ負けてしまうあたりに、ガスリー独特の「運の無さ」がある。

ツキの無い原因。
よくわからないが、ホームランかもしれない。
ガスリーは2009年にア・リーグ1位の17敗しているわけだが、その原因のひとつが被ホームランの多さ。2009年の35本はア・リーグ1位で、それ以降も被ホームラン数はずっと多いまま。
たぶん、よほど負けん気の強いピッチャーなのだろうと思う。


ガスリーのキャリアを追っていくと、野球選手がもつべき「目に見えない何か」、野球選手が翻弄される「目に見えない何か」というものの不思議さを感じる。
ガスリーと同じ日系アメリカ人であるブランドン・リーグについて、日系だからといって容赦することなく日頃厳しいことばかり書いているブログ主だが、ジェレミー・ガスリーについても、日系だから応援するという気持ちからではなく (そういう贔屓は、あまり好きではない)、せっかくもって生まれた才能をもっと上手に生かす道さえ見つかれば、もっともっと大成できる優れたプレーヤーなのに、もったいない、という意味で、応援したくなる選手ではある。


才能はある。
あるのに、負けてしまう選手が星の数ほどいる。
本当に野球は難しい。

10何年も負けないでやってこれたイチロー。
天才でないわけがない。

どういうわけで、ガスリー登板試合に限って3度ゴールドグラブを獲得してもいるデレク・リーが休みで、ルーク・スコットが1塁にいるのか。そういうときに、イチローの打球がそこに転がるのか。
「負ける」という現象が、どこで、どういう風に起きるのか。
バック・ショーウォルターが、ゲームがまだスコアレスなのにイチローを警戒したのはたぶん、「何かもっている選手に、何も仕事させないままゲームを終われるようにすることが、自分の仕事」と心得ているからだが、それでも「何かもっている選手」は、それすら乗り越えて仕事してしまう。

才気と才気が、なんの遠慮もなくぶつかりあうMLB。
厳しく激しい斬り合いの、サムライ世界である。






June 01, 2011

勝ったぁああああっっっ!
ジャスティン・スモークの決勝逆転3ラン!!!
ひゃっほぉぅぅぅううううううう!!!!!

2011年5月31日 8回裏 スモーク逆転3ラン
Baseball Video Highlights & Clips | BAL@SEA: Smoak's three-run shot puts Seattle up late - Video | Mariners.com: Multimedia

"Smoke On The Water" Live in Tokyo


Baltimore Orioles at Seattle Mariners - May 31, 2011 | MLB.com Classic

今日の勝利を呼び寄せたのは、言うまでもなく「不振のショーン・フィギンズを2番からはずしたこと」だ。今日の劇的な勝利で、2番からフィギンズをはずすという方向性は当分の間、堅持されるだろう。
エリック・ウェッジ、グッジョブ。

Ichiro RF
Ryan SS
Smoak 1B
Cust DH
Gutierrez CF
Kennedy 2B
Olivo C
Rodriguez 3B
Peguero LF

Bedard P

そう。
フィギンズが2番にいない。
いないどころか、スタメンにも入っていない。

かわりに2番に入ったのは、ブレンダン・ライアン
ボルチモアの先発ジェレミー・ガスリーの出来が素晴らしく良く、シアトルは5安打しか打てなかったが、そのうちの2本を打ってくれた。


8回裏は、イチローの1、2塁間を抜けそうなヒット性の当たりを好捕したボルチモアのファースト、ルーク・スコットが、イチローの俊足に焦って一塁へ悪送球したことから始まった。(記録はエラー)

ここで、この日初めて2番に入ったブレンダン・ライアンがヒットでつなぎ、
そして、ジャスティン・スモークの見事な3ランショット。
こんな劇場的展開でスタジアムが沸かないわけがない。その後リーグがセーブを記録して、リーグトップの15セーブ

こういう日にスタジアムにいられた観客は幸せだ。

すもぉぅぅーーーく・オン・ザ・ぅおーーーたーーーーーー
a fire in the sky. Yeah!
セーフコは ぴっきぴきにロックしてるぜぇえええ。


それにしても、
昨日、ショーン・フィギンズを放出すべきって記事を書いて、その中で、ローリング・ストーンズって単語を使った、そのとたんに、フィギンズがスタメンはずれて、しかも、スモーク・オン・ザ・ウォーター
この曲、スイスのジュネーブで実際にあった火事を元ネタにしてて、歌詞の中にローリング・ストーンズが出てくるんだよね(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年5月30日、言語学的意味論から考える「しぼむ風船」ショーン・フィギンズ。







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