February 2012

February 29, 2012

1. Zack Wheat   221(1925) HOF
2. Tony Gwynn   220(1997) HOF
3. Ty Cobb      211(1924) HOF
4. Pete Rose     198(1978)
5. Eddie Collins   194(1924) HOF
5. Dummy Hoy    194(1899)
7. Kiki Cuyler     185(1936) HOF
8. Ichiro Suzuki  184(2011)
9. Hal McRae     183(1983)
10. Doc Cramer   182(1943)
Batting Leaders Before, During and After Age 37 - Baseball-Reference.com

これ、何かというと、「37歳という年齢で打ったヒット数の、MLB歴代ベストテン」だ。ソースは、MLBデータの殿堂、Baseball Referenceである。
下記リンクのAge-Based Leaderboardsという項目に、18歳から43歳まで、投打の様々な記録を年齢別に集計したデータが集められている。さすがBaseball Reference。素晴らしい記録集である。
MLB & Baseball Leaders & Records - Baseball-Reference.com


2011年に200安打が達成できなかったことから、メディアにやれ不振だのなんだの、わけのわからない心配をされた37歳のイチローだが、2011年37歳で打ったシーズン安打数186本は、実は「MLBの過去から現在に至るまで、全ての37歳のバッター」において「MLB歴代8位」だったりする。
(イチローの誕生日は10月22日なので、毎年シーズン終了後に年齢がひとつ増える。だから、MLBでのそれぞれのシーズンにおける年齢表示は、イチローにとって誕生日前の年齢ということになる)

2012年のイチローに、何を心配することがあるだろう。
くだらない。


じゃ、前年2010年の36歳のイチローのヒット数、214本は、MLB史において、どういう意味があったか。

MLB歴代2位」。

1. Sam Rice      216(1926) HOF
2. Ichiro Suzuki  214(2010)
3. Zack Wheat   212(1924) HOF
4. Paul Molitor    211(1993) HOF
5. George Sisler   205(1929) HOF
6. Pete Rose     204(1977)
7. Bill Terry      203(1935) HOF
8. Randy Velarde  200(1999)
9. Babe Ruth     199(1931) HOF
10. Luke Appling   192(1943) HOF
Batting Leaders Before, During and After Age 36 - Baseball-Reference.com

2010年36歳のイチローは214本のヒットを打ってシーズン200安打を達成したが、この36歳でシーズン200安打を達成したバッターは、長いMLB史においても、わずか8人しかいない
また、後で書くが、MLB史において36歳という年齢でシーズン200安打を達成したバッターが「10人以下」であるということは、実はMLBの選手のキャリアにとって、36歳という年齢が非常に意味のあるターニングポイントであることを如実に示している。


ついでだから、2001年にMLBデビュー以降、イチローの年齢それぞれにおけるMLB歴代ヒット数ランキングにおける順位をすべて挙げておこう。面白いことがわかるはずだ。

2001年 27歳 2位(1位 ジョージ・シスラー)
2002年 28歳   10位以内に入れず
2003年 29歳   10位以内に入れず
2004年 30歳 1位(2位 Matty Alou)
2005年 31歳   10位以内に入れず
2006年 32歳 5位
2007年 33歳 1位(2位 ロジャー・ホーンスビー)
2008年 34歳 6位
2009年 35歳 2位(1位 Nap Lajoie、Sam Rice)
2010年 36歳 2位(1位 Sam Rice)
2011年 37歳 8位


新人にして242安打を打ち、ア・リーグMVPに輝いた2001年(27歳)。262安打のシーズン最多安打記録を打ち立てた2004年(30歳)。238安打を打って2度目のシルバースラッガー賞に輝いた2007年(33歳)。これらのシーズンのイチローのMLB歴代ランキングが高いことは、誰でも簡単に想像がつく。

だが、むしろ面白いのは、イチローが32歳で迎えた2006年以降、それぞれの年齢時点におけるMLB歴代ヒット数ランキングから、ただの一度も落ちたことがないということだ。

逆にいうと、27歳でメジャーデビューして5年目までの「若い」イチローは、同じ年齢のMLB歴代バッターのヒット数ベストテンに、2度しか入れなかった。
イチローがMLBにおいて、他のあらゆる時代の同世代プレーヤーを置き去りにするほど抜きんでたチカラを発揮したのは、実は、31歳までの「若くて華々しいイチロー」ではなくて、2006年以降の「30代になり、MLBで揉まれてさらにひとまわり大きく成長したイチロー」だ、とも言えるわけだ。

面白いものだ。



ちなみに、イチローが2010年まで10年続けてきたシーズン200本安打という記録の持つ価値のひとつは、MLBの全バッターを、「年齢」という観点で見たときに、はじめてわかる部分もある。

シーズン200安打という記録は実は、それが大記録ではあるにしても、「35歳」までのプレーヤーでは、どの年齢においても、MLB史においてそれぞれ10人以上のバッターが達成している。ところが、「ある年齢」をターニングポイントに、急激に様子が変わる。

それが「36歳」だ。

「36歳」でシーズン200安打以上を達成したのは、8人と、MLB史において初めて「10人以下」になる。イチローもその名誉あるひとりだ。
これが、「37歳」になるとさらに激減して、わずか3人になり、38歳では3人、39歳1人、40歳1人。そして41歳以上でのシーズン200安打は、誰も達成していない。
「37歳以降に200安打を達成したバッター」は、MLB史を通算しても、合計7人しかいないのである。(のべ人数は8人だが、Sam RiceがMLBで唯一2回達成しているために、達成者数は7人ということになる)

「37歳以降」のシーズン200安打達成者リスト

37歳
Zack Wheat(221本)
Tony Gwynn(220本)
Ty Cobb(211本)
38歳
Pete Rose(208本)
Jake Daubert(205本)
Sam Rice(202本)
39歳 Paul Molitor(225本)
40歳 Sam Rice(202本)


37歳以降にシーズン200本安打を、それも複数回達成したバッターは、20世紀初頭のワシントン・セネタースの名選手、Sam Rice、ただひとりだ。
37歳以降にシーズン200安打を達成したプレーヤーはほかに、球聖タイ・カッブはじめ、サム・ライス、ザック・ウィート、トニー・グウィン、ピート・ローズ、ポール・モリターと、殿堂入り選手のオンパレードだが、その彼らですら、「37歳以降」はシーズン200安打をそれぞれ一度ずつしか達成できなかったのである。(ちなみに殿堂入りしていないドーバートも、首位打者2回、1966年レッズ球団殿堂入り、1990年ドジャーズの球団殿堂入りの名選手)



ファンは、常に身の程知らずの貪欲な生き物だ。
だから、プレーヤー側の、まるでイノチを削るような過酷な努力も知らずに、身勝手なことばかり言う。残念ながらブログ主も例外ではない。

正直言うとブログ主は、2011年、37歳で、もしイチローがシーズン200安打を達成していたら、と、今でも思ってはいる。前人未踏の11年連続200安打が達成できたばかりではなく、37歳以降に200安打を達成したMLB史に残る黄金の7人の仲間入りができなかったのが、残念でならない。


だが、37歳以降の200安打へのトライがどれほど大変なことか、知れば知るほど、37歳以降だからこそシーズン200安打を達成しておいてもらいたいと思う。

困難な記録だ。
だからこそ、イチローに求めたくなる。

他のプレーヤーになら、こんな無茶苦茶にハードルの高い要求など、しようと思わない。球史に残る不世出のプレーヤーだからこそ、他の、誰よりも高いハードルを越えてくれることを、心から願わずにいられないのだ。3番を打つかどうかなんて些末なことは、正直、どうでもいい。



イチローのトライする「38歳以降の世界」は、前にも一度書いたことだが、これまでごく少数の野手しか登頂できなかった頂点だ。そもそも、登頂の機会そのものが、100数十年のMLB史において、ごくわずかな人数のプレーヤーにしか与えられてこなかった。イチローのこれからの道のりが、チョモランマ的な最高峰の頂上を極めようとする、非常に困難な道のりなのはわかっている。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2011年9月26日、3000本安打を達成する方法(1) 4打数1安打ではなぜ達成不可能なのか。達成可能な選手は、実はキャリア序盤に既に振り分けが終わってしまうのが、3000本安打という偉業。

しかし、イチローファンとして言うと、彼ほどのプレーヤーに期待する内容に、自分自身で手加減、手ごころを加えるようになったら、それこそ、おしまいだ。
ブログ主は、通算3000本安打達成はもちろん、「メジャーで7人しか達成していない38歳以降のシーズン200安打」にトライすることを、ファンとして、イチローに要求したいと思う。まずは1度でいいから達成してもらいたいし、もし2度達成できれば、もう絶句。何も言うことはない。
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February 23, 2012

MLBについての英語サイトを眺めることの多い人は、たまにbeat writer (ビート・ライター)という言葉に出くわすことがあると思う。


beatという言葉には、「叩く」とか、マイケル・ジャクソンの名曲Beat It!で有名になった「逃げる」とかいう意味以外に、「受け持ち区域」とか「担当エリア」、あるいは転じて「専門ジャンル」という意味がある。

例えば、シアトルを舞台にした『Police Beat』(2005年)
というタイトルの映画がある(ブログ主はその映画自体は見てない)。
この映画の主人公は担当エリアを自転車で巡回する警官なのだが、ここでいうbeatとは、警官にとっての「担当エリア」を指している。(なんでも、警官が自転車に乗って担当エリアを巡回するカジュアルな行動スタイルを近年全米に広めたのはシアトルの警官が発祥らしい)

またジャーナリストの最高の栄誉のひとつであるピューリッツァー賞には、2006年までPulitzer Prize for Beat Reportingという部門があった。
記者にも、例えば医事記者、政治記者のように、特定の専門ジャンルを掘り下げるタイプの記者が存在するわけだが、ここでいうbeatは記者の「専門分野」という意味で、特定分野=beatについて取材して記事を書く記者のことを、beat reporterと言ったりする。
The Pulitzer Prizes | Beat Reporting



だからMLBでいうbeat writerは、日本のスポーツ新聞やテレビのスポーツニュースでいう「番記者」に近い意味になる。この場合、beatは、「ローカルメディアのスポーツ記者の担当チーム」ということになる。

ただ、beat writerが、日本でいう「番記者」と完全にイコールかというと、ちょっと違う。

というのも、
日本のプロ野球の「番記者」というと、日本全国をカバーするキー局や全国紙から派遣された番記者もいれば、球団それぞれの地元のメディアの番記者もいて、ローカルと全国メディアの間の役割分担がハッキリしていない。

(ちなみに世界の新聞購読者数ランキングでは、ベスト5を日本の新聞が独占(読売、朝日、毎日、日経、中日)している。日本人は世界でダントツの新聞好きなのだ。世界5位の中日新聞ですら、全米ベスト2社、Wall Street JournalやUSA Todayの倍以上の購読者層をもつ。例えば中堅ローカル紙のSeattle TimesやSan Francisco Chronicleは、そのUSA Todayの7分の1以下の規模なのだから、日米で新聞の発行規模にいかに大差があるかがわかるし、また、メディアとしての権威は新聞社の規模には比例しないこともわかる 笑)

それに対して、
MLBでいうbeat writerは、基本的に「ローカルメディアの記者」とイコールになる。

全米における新聞別購読者数ランキング List of newspapers in the United States by circulation - Wikipedia, the free encyclopedia
例:SFジャイアンツ  サンフランシスコ・クロニクル
  ロイヤルズ     カンザスシティ・スター
  レッドソックス    ボストン・グローブ
  フィリーズ      フィラデルフィア・インクワイラー
              (エンクワイラーとも表記される)

だからbeat writerは、「特定チームの取材を担当する、ローカルメディアの記者」ということになる。
他方、ESPNやFOX、CBSのような全米をカバーするメディアは、それぞれのチームの細かい情報集めはローカルメディアにまかせて、自分たちはMLB全体を担当する。日本の大手スポーツ新聞のように、野球チーム全部をカバーできるだけの人数の番記者を雇って番記者として張りつけるようなことはしない。


例を挙げると、シアトルのローカルメディアであるSeattle Timesの記者であるGeoff Bakerは、シアトルの、それもMLBシアトル・マリナーズだけを追いかける典型的なbeat writerだが、MLB全体を扱う立場にある全米メディアのライター、FOXのKen Rosenthalは、beat writerではない。
Ken Rosenthalのツイッターの使い方を見ていればわかるように、全米メディア所属のライターは、チーム個別の細かい情報提供はローカルのbeat writerたちが発信するツイートのリツイートなどでまかなって、(それを集約したり、情報を補ったり、意見をつけ加える作業はしつつも)、基本的に自分たちはMLB全体に関係する情報を取材し発信する。(もちろん必要と感じれば、ローゼンタールが直接ズレンシックに電話取材してツイートしたりするように、個別チームを直接取材する場合もある)


ちなみに、以前ツイートしたことだが、ローカルメディアの野球ライターが、本来の職分であるローカルの野球の仕事を忘れて、例えばスーパーボウルのような、全米レベルの、それも畑違いのスポーツのトピックに興奮して、自分の個人的な興奮を一日中ツイートしまくるなんていう行為は、ジャーナリストとして非常にスジ違いな行動だと思う。
beat writerには、beat writerが本来守るべき狭いテリトリーがあってしかるべきだ。
beat writerのツイッターのアカウントというのは、スポーツにとって既にひとつのメディアになっていて、「ローカルに強味を持つbeat writerからしか得にくいスポーツの情報」を集める戦力のひとつになっている。
だから、全米で誰も彼もが似たり寄ったりなことをつぶやく大イベントの個人的感想を発信する必要など全くないことを、beat writerは自覚すべきだ。個人的な感想をどうしても言いたいのなら、個人用のアカウントでも作って、そっちでやってもらいたい。
また、全米メディアのライターであるRob Neyerのマネーボールに関するしつこいツイートが揶揄されるのも、似たような理由だ。彼が興行成績がさえないくせにゴールデングローブを獲りたがっている映画マネーボールの関係者にプロモーションを依頼されてツイートを繰り返しているのかどうかは別にして、才能ある彼のツイートに常に求められているのは、あくまで全米メディアとしてのMLBの情報であって、中身の薄っぺらな映画の個人的感想などで貴重な情報空間であるツイートを埋め尽くすべきじゃない。
damejimadamejima
こういう日でも、誰かに返事するとき以外、基本的に野球のツイートしかしないケン・ローゼンタールを尊敬したい。これが全米を相手にするライターとローカルライターの違いでもある。読みたいのは興奮して当たり前のスーパーボウルだの、飲んだワインがうまいだの、そんなくだらない話ではない


「beat writerと、全米メディアのライターとの間の、立場の違いや役割分担」は、もうおわかりのように、「独立した体系をもつアメリカの州それぞれと、合衆国連邦政府との間の独特の関係」に通底している。
だから、アメリカでの「州と連邦政府との関係」が、日本の「県と国との関係」と同じではないように、アメリカのbeat writerと日本の番記者の微妙な立ち位置の違いには、2つの国の文化や歴史の違いが背景にあるわけだ。
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毎年先発投手を放出するチームはいくらでもある。
ダメな選手はクビになるのが、プロとして、当たり前である。

(ただ、1年も怪我で休んで、足の屈伸どころか、プロレベルの運動能力そのものが失われつつある控え捕手が、「マトモにこなせるはずもない守備位置、それも、やったことすらないポジションを、あたかもこなせるかのように見せかける見世物」を公衆の面前でやり、さらに開幕で本来の守備位置のプレーヤーを押しのけてまでしてポジションを横取りする、そういう選手に日本円で20億もの給料を払う野球チームが、地球上のどこかに存在するとも聞く。
だが、それ空想だろ? と他人から嘲笑されて当り前の、そんなわけのわからない話が、現実のプロの野球チームで実行されつつあるはずはない。だからマトモに論じる気にすらならない。いくら地球が広いからといって、そんな草野球以下の話が、現実であるはずはない)


だが、チームの優秀な3本柱のうちの一人を毎年のように放出し続けて、先発投手陣を故意に弱体化し続ける野球チームが、どこにあるだろう?


あるんだな、これが。

シアトル・マリナーズ。

ジャロッド・ウオッシュバーン
ブランドン・モロー
クリフ・リー
ダグ・フィスター
マイケル・ピネダ(放出順)

この数年に放出された5人の先発投手が、これだ。この5人を仮に先発ローテーションとみたてて、2012年の予想ローテーションと比べてみるといい。

2012年予想ローテーション
ヘルナンデス
バルガス
ミルウッド、岩隈、ベバン、ノエシ、ファーブッシュのうち、3人


(ウオッシュバーンが今投げると仮定するには年齢的な問題があるにしても)2つのローテーションのどちらが優秀か。比べて考える必要すら、ない。
最初に挙げた5人なら、かなりの数のイニングを投げ抜いてくれる。フィスターとピネダの給料が、彼らの能力に対して抜群に安くて済むから、あとはヘルナンデスを売り払った金で、気のきいた打者を揃えてくるだけだ。(それが本来の「再建」というものだ)
逆に言えば、フィスターやピネダのようなコストパフォーマンスのいい若くて安いローテーション投手をやすやすと放出する馬鹿なチームなど、シアトルの他には無い。


ジャロッド・ウオッシュバーン
2009年7月31日 デトロイトと交換トレード
交換相手:Luke French、Mauricio Robles
フレンチは結局使い物にならずに、その後FAになった。2012年1月ミネソタと契約。ロブレスは、2011年にシアトルのAAAで、WHIP1.853。まるで使い物になりそうにない。

ブランドン・モロー
2009年12月23日 トロントと交換トレード
交換相手:Brandon League、Johermyn Chavez
モローは移籍先での活躍が認められ、このほどトロントと3年21Mで契約長した。契約は2014年まで。2015年はチームオプション。
ブランドン・リーグはたしかに現クローザーだが、先発投手とブルペン投手の交換がフィフティ・フィフティのトレードだなんて馬鹿げた話は、メジャーではありえないので、そういう馬鹿げた話に耳を貸す必要などない。チャベスは2Aで打率.216。まるで使い物にならない。

クリフ・リー(+現金)
マーク・ロウ
2010年7月9日 テキサスと交換トレード
交換相手:Justin Smoak、Blake Beavan、Josh Lueke、Matthew Lawson
このトレードについて、選手だけが交換されたように見せかけたいのか何か知らないが、「クリフ・リーとスモークのトレードはWIN-WIN」とか、意味のわからないことを大言壮語したがるアホウをよく見かけるが、このトレードでシアトルはテキサスに現金を支払ってもいる。
クリフ・リークラスの先発投手を放出するというのに、放出する側がキャッシュをつけるなんざ、馬鹿のやることだ。
サイ・ヤング賞クラスの先発投手と、守備能力がなく低めの変化球に致命的弱点のある扇風機の、どこをどう比べると、同じ価値だとか考えられるのか、ミドリムシレベルの脳で考えることは、やはり想像を超えている。
ジョシュ・ルークも投手としては使い者にならなかった。だがそれでも2011年11月27日にタンパベイのキャッチャーJohn Jasoとトレードできた。使えない選手を処理できただけマシといえる。
というのも、ズレンシックは、失敗トレードの連続でチームにドンドンたまっていく「使えない選手を放置する癖」があるからだ。
FAになってミネソタと契約したルーク・フレンチや、同じくFAになってヤンキースと契約したデイビッド・アーズマのように、ズレンシックは自分が犯したトレードの失敗でチーム内でくすぶったまま残留している選手を処分せずい放置しておくものだから、彼らを多くのケースでむざむざフリーエージェントにさせてしまい、結局、ズレンシックの失敗トレードの数々の大半は、後処理を何も施さないまま放置されて、チームにまったく何のメリットも残らない。
こういう馬鹿げたトレード後の残骸処理を、ズレンシックは非常によくやる。なのに、逆にフィギンズは、干しておけばいいだけのことなのに(売れるものなら、とっくに売れている)、いまさら1番起用だなんて、いったいこのオッサン、何がしたいのか。意味がわからない。
だが、使えないジョシュ・ルークでジョン・ジェイソが獲得できたからといって、これまで取り柄が何も無いキャッチャーの起用に使い果たしてきた無駄な時間は戻ってはこない。ロブ・ジョンソンをサンディエゴに追いやっておいて、無能コーチ ロジャー・ハンセンのお気に入りキャッチャー、アダム・ムーアを重用して時間をムダにしたように、ムーアだの、ジメネスだの、アルフォンゾだの、わけのわからないキャッチャーばかり使って負け続けた無意味な時間は、結局誰ひとりとしてマトモなキャッチャーを育てなかった。で、ムーアも結局お払い箱。
くだらないにも程がある。

ダグ・フィスター
デビッド・ポーリー
2011年7月30日 デトロイトと交換トレード
交換相手:Charlie Furbush、Casper Wells、Chance Ruffin、Francisco Martine
チャーリー・ファーブッシュは2011年、3勝7敗 ERA6.62。この防御率ではメジャーでマトモに投げられるレベルではない。ブルペン投手としてすら使い物にならない。チャンス・ラフィンが2011年に投げたのは、たったの14.0イニングだが、ERA3.86と、まぁまぁ。スカウティングされれば終わりのキャスパー・ウェルズは、さらに謎の病気持ちであることまで判明。マトモにシーズン通して使えるレベルにない。

マイケル・ピネダ
Jose Campos
2012年1月23日 ヤンキースと交換トレード
交換相手:Jesus Montero、Hector Noesi
ヘスス・モンテーロは、下記の資料でわかるように、ヤンキースにとっては「やっかい者」で、トレードの駒にして処分したがっていた。そしてモンテーロのキャッチャーとしての仕事になど、メジャーの誰も期待してないことも、資料から明らか。
他方、ピネダには、球種の少なさや配球の単調さなど課題もあったが、伸びしろは十分あった。下記の記事で挙げたように、他球団のGMですら、ピネダをトレードの駒にしたズレンシックの異常な行為に「驚いた」と語っているように、このクラスのピッチャー、つまり実力があるのにまだ給料の安い若いローテ投手を放出するなど、普通ありえない。だがズレンシックは、フィスターに続いてピネダを放出し、ありえないトレードを2度も続けて自分のチームのローテーションを弱体化させているのである。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年1月20日、ESPNの主筆ジェイソン・スタークが、MLBにおけるピネダ放出を疑問視する声、ズレンシックのトレード手法の「狭量さ」に対する他チームGMの不快感、モンテーロの慢心ぶりへの関係者の不快感を記事にした。

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年1月29日、 「ヘスス・モンテーロが将来ヤンキースのキャッチャーになると思ったことは、まったくない」 ヤンキースにとってモンテーロが最初からトレードの駒にすぎなかったことを示すボストン新監督ボビー・バレンタインのコメント。

モンテーロは、キャッチャーとは名ばかりであり、実際の守備ポジションはせいぜいDH兼1塁手といったところでしかない。だから、ジャスティン・スモークとモンテーロは、チームにおける機能がかぶっている。
同じタイプの選手をチームに2人ずつ置く悪癖が、なぜこのGMはいつまでたっても治らないのだろう?

この「同じ役割の選手がチームに2人存在する」というダブり現象は、言わずと知れた無能GMズレンシックの、いつもの「選手をダブって確保する癖」だ。
ショートに既にジャック・ウィルソンがいるのにブレンダン・ライアンを獲ってきたり、ケン・グリフィー・ジュニアマイク・スウィニーの2人のDHを併用してロスター枠をムダにしてしまい、その結果ブルペン投手が足りなくなったり、アダム・ケネディ、ラッセル・ブラニヤン、スモークなどファーストを守る選手ばかり集めてしまって、にっちもさっちもいかなくなって結局手放したり、とにかく「ズレンシックのダブり癖」による失敗は毎年恒例の行事。
たぶん、ズレンシック本人がこの悪癖に気づくことは、永遠にない。



この数シーズン、この無能ジェネラル・マネージャーがやってきたことは、細かい部分を捨象して考えてみるとわかることだが、「結果を残し、将来性も約束された貴重なローテーション投手を即座に安くタタキ売って、かわりに、若い選手、特に守備の苦手な、まだ実績も将来性も約束されているわけではない打撃系の野手を獲ってくること」、たったそれだけでしかない。

ズレンシックのこうした行動は、オークランドをつまらない球団にしたビリー・ビーンと、まるでかわり映えしない。
貿易にたとえれば、「良い国内製品(将来性のある投手)を安値で輸出ばかりして、たいしたことのない外国製品(将来壊れるかもしれない将来性未知数の扇風機型野手)を輸入ばかりしてきた」わけだ。MLBのGMの仕事は、貿易を行って黒字をチームに貯めこんでいくことだが、こんなことばかりしていれば、そりゃ貿易黒字が溜まるわけがない。

シアトル・マリナーズというチームは、「バッティングは(イチロー除いて)最低レベルだが、投手は最高」と言われ続けてきたわけだが、ズレンシックがやってきたことは、そのチームの財産である先発投手を毎年競売にかけてタタキ売ってきた結果にすぎない。
そのタタキ売りの結果が「投手力は毎年のように下がり続けているのに、投手の犠牲と引き換えに作り上げようとした打撃は、メジャーでも歴史的にドン底レベルの貧打のまま」なわけだから、躊躇なく、ズレンシックは無能だと、言わせてもらう。

ズレンシックがローテーション投手を、交渉相手に足元を見られながら競売にかけて安く売り飛ばし、そのトレード対価として相手に売りつけられた野手(あるいは投手)は、シアトルのロスターに、こんなにもたくさんいる。どうせ大半の選手はモノにならない。最初に挙げた先発投手陣がチームに揃っていたほうが、どれだけチームの先行きに期待がもてたことか。
1B スモーク
DH モンテーロ
OF ウェルズ
P ベバンノエシリーグファーブッシュラフィン


イチローに3番適性があるかどうかなんてわけのわからない議論を、論じる気はさらさらない。3番適性があるとかないとか、そういうスジ違いの論議を始める以前に、メジャーの歴史でも歴代屈指のリードオフマンの打順を弄らざるを得なくなるような貧打のチームを作っておいて、イチローに3番強要などありえない、ということをまず確認しておかなければ話は何も始まらない。


バベシの時代からずっとそうだが、このチームはスジの通らないことを、あまりにもやり過ぎる。


ハッキリ言っておこう。

無能なズレンシックよ。そして腰ぎんちゃくの小判鮫エリック・ウェッジよ。
これまで積み重ねてきたおまえたちの失敗の尻拭いをイチローにさせようとしてるようにしか見えないぜ、おまえら。
どうにもならなくなって不良債権化したフィギンズを、いまさら売れるモノに仕立てあげたいのか何か知らないが、スジの通らないことばかりやりやがって、イチローの3000本安打の偉業を邪魔するんじゃねぇ。

February 20, 2012

この冬、日本人プレーヤーの移籍が多かったせいもあって、たまに見かけることがあるのが、ノートレード条項だのなんだの、いわゆる野球選手の身分に関する権利についての単語。
だがブログ主は、何度も書いているように、ストーブリーグにあまり関心がないし、そもそもこういうMLBの複雑な仕組み自体が苦手分野だ(笑)


例えば、10 & 5 ruleというルールがあるが、どうもよくわからないことがある。
というのは、日本では、10 & 5 ruleと、一般的なトレード拒否権、この2つの異なるルールが混同されて扱われているように思えてならないのである。(しかも、そのことがどこにもハッキリ指摘されていない)

10 & 5 ruleは、「10フルシーズン以上メジャーのアクティブ・ロスター、つまり、25人枠に在籍した選手で、なおかつ、最近の5シーズン同じチームに在籍し続けている選手は、本人の同意なしにトレードすることはできない」というルールだ。

もう少し言い変えると、「10シーズン以上、それもフルシーズン、25人枠のロスター経験を積んで、しかも、同じチームに5年在籍している選手」のことを、ロスターやトレードのルール上の定義として特別に「ヴェテラン」と呼び、プレーヤーがこの「ヴェテランになってはじめて発生する、特別なトレード上の権利」のことを、10 & 5 ruleというのだ。


だから、10 & 5 ruleは、「誰でも彼でも、契約書に文言を盛り込みさえすれば効力が発生する、一般的なノートレード条項」とは、まったく別のルールだ、とブログ主は理解している。


例えば日本のWikiにおいて、10 & 5 ruleと、「一般的なノートレード条項」は、ノートレード条項という項目において、十分な区別のないまま、一緒くたに説明されてしまっている(ように見える)。

だが、アメリカのWikiでは違う。
下記資料が前半部・後半部とハッキリ分けて書かれていることからわかるように、いわゆる10 & 5 ruleと、選手とチームの契約に条項として盛り込むことで効力が発生する一般的なトレード拒否権は、「2つの異なるルール」として、きちんと分離されて説明されている。
また、これも重要な定義だが、10 & 5 ruleの適用に必要な10シーズンのアクティブロスター在籍という条件が、あくまで「フルシーズンでなければならないこと」も、日本のWikiは曖昧だが、アメリカのWikiにはきちんと明記されている。(太字はブログ側による)
If a player has been on an active major league roster for ten full seasons and on one team for the last five, he may not be traded to another team without his consent (known as the 10 & 5 rule).
Additionally, some players negotiate to have no-trade clauses in their contracts that have the same effect.
Major League Baseball transactions - Wikipedia, the free encyclopedia


しつこいが、いちおうもう一度書いておこう。

10 & 5 ruleというのは、(ブログ主の理解の範疇では)「10年、それもフルシーズン、メジャーのアクティブロスターに在籍して、しかも、5シーズン現在所属している同じチームでプレーしている『ヴェテラン』にだけ与えられる、特別なトレード拒否権」のことで、それを俗に10 & 5 ruleという。
この非常に特別なルールと、選手がチームとかわす契約に書き加えられることで効力が発生する「一般的なトレード拒否権」とは、両者に同じような効力が発生するにしても、このルールが成立した背後にあるMLB史やアメリカ史の重みは、まったく異なる次元のものだ。

10 & 5 ruleが成立した歴史的背景には、1966年から1982年までMLBPA(=メジャーリーグ選手会)会長をつとめたマービン・ミラーの足跡、あるいは1969年から72年まで争われた有名なカート・フラッド事件によるMLBの制度変更の経緯があるわけで、10 & 5 ruleは、こうした長いMLB史の中で培われてきたルールなのだ。
(カート・フラッド事件は、セントルイスに所属していたフラッドが、フィラデルフィアへのトレードを嫌がったことに端を発した事件で、最後は訴訟になり、形の上では選手会側が敗訴したものの、結果的には選手の権利の整備につながった)



10 & 5 ruleでいう「シーズン」とは、もちろん「フルシーズン」を意味するわけだが(このこと自体、日本のサイトではハッキリ表記されていないことも多い)、日本のWikiによると、「MLBにおけるフルシーズン」とは「アクティブロスター未登録の期間が、20日以内のシーズン」のことを指す、とある。
たしか先日決まったMLBとMLB選手会の新しい労使協定においては、近いうちに「フルシーズンの定義」そのものが変更になって、「A full season is defined as being on an active pro roster for at least 90 days in a season. アクティブロスターに少なくとも90日在籍していること」と、従来より緩和された定義になると思う。
だから、これまでは10年間もの長期にわたって活躍を続けてこれた、それも5年同じチームにいるごく限られた有名選手だけに適用されてきた10 & 5 ruleは、今後はもう少し広い範囲の選手に適用されるようになるんじゃないか、と思う。(だが正確なところは、今後のMLBのリリースで確かめる必要はある)


また、細かいことだが、ちょっと困ったことに、この10 & 5 rule、アメリカのいくつかのサイトで、5 & 10と、数字を逆にして表記している例がある。(ESPNのロブ・ナイアーなど)
厳密にどちらが正しいのかは調べてないが、このブログではいちおう、「10 & 5」という表記のほうを、「よりポピュラーな、より正しい表記」と考える。

10-5と表記する例

アメリカ版Wikiの項目、"Major League Baseball transactions"における表記例
the 10 & 5 rule
Major League Baseball transactions - Wikipedia, the free encyclopedia

アメリカ版Wikiの項目、"Trade (sports)"における表記例
the "Ten and Five" rule
Trade (sports) - Wikipedia, the free encyclopedia

アメリカ史をまとめたサイト"The People History"での「MLB史の概説」ページにおける表記例
the 10 and 5 rule
History of Major League Baseball From Early Beginnings to Current

英語圏で最も有名なイスラエル系百科事典サイト"Answer.com"での質問者の使用例
"ten and five rule"
What is the "ten and five rule"?: Information from Answers.com

逆に5-10と表記する例

ESPNのライター、Rob NeyerによるMLBの諸ルールの解説
注:5 & 10という表記はともかく、"Veteran Players"の項目におけるロスタールールの解説は、他のサイトより、ずっとよくまとまっている。
"the five-and-ten rule."
ESPN.com: MLB - Transactions Primer

MLBのトリビアをまとめたサイト"Recondite Baseball"における表記例
"Five-and-Ten" rule
Recondite Baseball: Five-and-Ten Players


もちろん言うまでもないことだが、この10 & 5 ruleが適用されるプレーヤーは、長期間にわたって安定した実績を残して長くメジャーに君臨することのできた、ごくわずかなプレーヤーに限られる。
イチローは今年MLB12年目のシーズンを迎え、野茂英雄さんのメジャー経験年数に並んだが、彼はこの10 & 5 ruleで厳密に定義される、真の意味の「ヴェテラン」であり、そんじょそこらのGMや監督にあれこれ言われるような安い存在ではない。
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February 12, 2012

東京スタジアムのことを書こうと思って野球のスタジアムのことを調べるサイトを探していたら、いつのまにかスタジアムを扱ったサイトそのものにハマってしまい、ミイラとりがミイラになってしまっていた(笑)
ついでだから、今の時点での「スタジアムを扱ったウェブサイト」のベスト3を挙げておこう。
この3つ、あまりにも素晴らしくて甲乙つけがたいので、順位はつけない。(どうせまた、新しいサイトを見つければ入れ替わるし 笑)


スタジアム・アトラス
Stadium Atlas | The unique world sports stadium guide

網羅している、という点で言えば、このサイトの右に出るサイトはたぶん無いだろうと思う。まさにスタジアムの百科事典である。
まず扱っているスポーツのジャンルが異常に広い。野球、フットボールはもとより、自転車、ゴルフ、ラグビー、テニス、果てはクリケット、ドッグレース、競馬、ラクロス、ロデオまで扱っている。
また、このサイト、国別検索もできるのだが、扱っている国の数が、もうハンパない。アルファベットの最初のAのアフガニスタンから、Zのジンバブエまで、扱っている国がなんと153か国というのだから、いやはや、もう呆れるしかない(笑)
いったい、どこの誰がこんな膨大な作業をやっているのだろう。


Clem's Baseball
Clem's Baseball ~ Introduction / navigation page

オリオール・パーク・アット・カムデン・ヤーズ2Dの図の美しさといえば、やはりこのサイトになってしまう。このブログでも何度も引用させてもらっている。本当に素晴らしいグラフィックには、このサイトを管理している方のスタジアムへの愛着が十二分に表現されている。
コンピューターとインターネットの発達で、行ったこともない街でもグーグルマップでバーチャルに散歩できる、そんな時代ではあるが、それでもやはり、こういう簡潔で美しい2Dグラフィックには惚れ惚れさせられてしまうし、自然と作った人への敬意が湧く。
このサイトはカラートーンも、天然芝を意識した緑色を中心にしたカラーリングで本当に綺麗だから、見ていて目が疲れない。
野球というスポーツのスタジアムが天然芝を多く使っていることは、プレーヤーの足腰に対する影響を減らすわけだが、長時間プレーを見つめ続ける観客にとっても、緑色は目が疲れない、というメリットがあるわけだ。


スタジアム・サンプル
Stadiums Sample

スタジアム・サンプル by Google Earth

正式なサイトではなく、あくまでサンプルだが、立体性というか、スタジアム特性を立体的に眺めたいときに便利だし、また、ただ眺めているだけでもインテリア的に楽しい。(ただ、やたらとメモリーが消費されるのは、この手のサイトの大きな難点だ。非力なパソコンだと非常につらいだろう)
Google Earthのプラグインを紹介するページからリンクが張られているているところをみると、このサンプルをグーグルが作っているのかどうかは、ちょっとわからないが、Google Earthの利用のしかたにはこういう素晴らしい楽しい方法がありますよ、と、Googleのプロモーションのために作られたサイトサンプルのようだ。
下に並んでいるスタジアム名を書いたボタンをポチっと押すと、あっという間にAT&Tパークや、フェンウェイヤンキースタジアムがレンダリングされ、しかも、目の前でグルングルン勝手に回転してくれる。
同じリンクページにはハワイ観光を紹介する3Dページが紹介されているが、これもGoogle Earthの良さを利用していて、本当によくできている。(こちらのサイトも非常にメモリを消費する。非力なパソコンではちょっと無理だろう)
3D Hawaii | Hawaii Vacation Planning - Vacations - Hotels - Activities


Google Mapも、Google Earth同様に様々な新しい使い方がユーザーの創意によって日々開発され続けているわけだが、その名もGoogle Maps Maniaというサイトがあって(笑)ここには、日々発見され続けるGoogle Mapの新しい使い方が、それはもう、膨大な数アップされている。
これを見ると、「膨大な情報量と手際のいいデザインが両立したときにだけ成り立つ独特の美しさがあること、そして、その独特の美の実現のには膨大な手間がかかること」の両方が非常によくわかる。
Google Maps Mania


結局のところ、どのサイトも、細かい手作業への集中を可能にしているのは、「対象に対する度はずれた熱心さと、しつこいほどの好奇心」だ。時間を忘れて作業に没頭してしまう熱意と飽くなき創意がないと、やはり面白いサイトは作れない。
ハンディGPSであるガーミンを独自の工夫で使いたおすヘビーユーザーたちに独特のワールドがあるように(ブログ主もガーミンは大好きだ。スマートフォンにGPSが搭載されたにしても、ガーミンにはやはりガーミンにしかない良さがある)、スマートフォンやブログなども、本当はインターネット上のマップデータともっと連動させるような工夫をすると、もっともっと面白い使い方が発見できていくのだろうと思うが、使い方を研究しているうちに短い一生が終わってしまう危険もある(笑) 
パソコンにかじりついてマップをいじりたおすか、それとも海に行って、のんびりビールでも飲むか、そこがなかなか悩ましいところだ。


宇宙ステーションから見たオーロラ





February 04, 2012

第47回Hutch賞の受賞セレモニーで、ビリー・バトラーは、カンザスシティ・ロイヤルズの先達で、同じカソリックでもあるマイク・スウィニーが行ってきたスタジアム外での偉業に触れて、次のようなスピーチを行った。

このスピーチを紹介したMLB公式サイトの記事タイトルには、「人のかしこまった様子」を表すhambleという言葉が使われているが、この言葉はバトラーがマイク・スウィニーから受け継いだ何かをとてもよく表していて、このスピーチにふさわしい優れた言葉のチョイスだと思う。 (公衆の前でのスピーチの言葉だから、いちおう敬語の文章として訳してみた)

"Mike Sweeney was the portrait of what you want to be as a man," Butler said. "He does everything right, so to win this award after he's won it means a lot to me. ... ."

マイク・スウィーニーは、人としてこうありたいという、お手本でした。彼は、彼にできるあらゆる正しい行いをしていました。だから、(自分に先立って2007年にこの賞を受賞している)彼の後に続く形でこの賞を受賞できたことは、私にとって、とても意味のあることです。」
Billy Butler humbled, thankful for Hutch Award | MLB.com: News

Sweeney wins 2007 Hutch Award | MLB.com: News



マイク・スウィニー

こんなところで彼の名を聞くことができるとは。喜ばしいことだ。
だが、スウィニーの野球におけるスタッツの高さはわかっていても、彼の「人間としてのスタッツの高さ」を、正直言うとこの記事を読んで調べるまで知らなかった。いまさらながら申し訳なく思い、この記事を書いている。

ビリー・バトラーはこんなことも言っている。

"One of the joys of playing baseball is to be able to give back as much as possible. It's almost the least you do, because without fans, baseball isn't anything."

バトラーの言葉を直訳するのは簡単だ。だが、直訳するだけでは何の意味もない。バトラーの発言は短いものだが、その意図の背後にある歴史を遡っていくことはなかなか膨大な作業になる。そして、それを読み解く作業は、解釈する人それぞれの生き方のバックグラウンドに、大きく左右される。
ならば、単純に日本語に訳すより、原語のまま頭に入れるほうがずっとマシだ。

例えば、バトラーの言うgive backという言葉はもちろん、「与えられた恵みを、やがて地にかえす」行為をさす。
スポーツには「恵まれた才能」という、よく使われる言葉があるが、「恵まれた」という言い方は、「誰がその恵みを与えたのか」という主語が曖昧なままの、ぼんやりとした言葉使いなわけで、ホームインしたとき、天を見上げて十字を切る国の野球選手たちにしてみれば、「誰によって、才能という恵みが自分にもたらされたのか」は、言葉にするまでもない自明のことだろう。
また、without fans, baseball isn't anythingという部分にしても、彼が「野球にgive backする行為を含ませることで、野球というものが意味のあるもの、価値あるものになることができる」と言外で言っていることを思えば、背後にworthという意識が非常に強く働いていることは明らかだ。

英語にworth one's saltというイディオムがあるが、これはworth one's pay(給料にみあった働きをする)というイディオムと同じ意味で使われる。
塩と給料が同じ意味で使われるのには理由があって、salaryという言葉は語源として、もともとラテン語のsalarium、さらに言葉を分解すれば「塩」を意味するsalというラテン語から来ていて、古代ローマ時代の兵士の給料が、現代のように紙幣や貨幣ではなく、「塩」で支払われていたという歴史的なバックグラウンドがあるからだ。

だが、「地の塩」という言葉があるように、中世ヨーロッパの人々の意識の中で、「saltは、自分が働いて得た稼ぎであるが、それを日々の暮らしの中で消費して終わるだけではなく、社会へ還元することによって、そこに新たに、worth=自分の価値が生まれてくる」と、saltとworthを結びつけて考える意識が生まれた。(こうした「地の塩の解釈」それ自体が、おそらくは中世以降、近代における解釈だろうとも思うが、それはともかくとして)
saltとworthの結合の意識はやがて、起業や投資などによって社会を繁栄に導く経済行為の正当性や倫理の感覚としても発展を遂げ、それがアメリカにも流れこんで発展していくわけだが、こうした人間の意識の変化がいかに経済や社会の発展に寄与したかを知るには、単に「サラリーの語源は塩だ」と知るだけではとても足りない。それはまさにマックス・ウェーバーが名著「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」で描こうとした世界であり、(ビリー・バトラーとマイク・スウィニーはプロテスタントではなくカソリックではあるにしても)それはアメリカがどういう風に成り立ってきたかという歴史の理解にも結びつく。
(「地の塩」という言葉の解釈にしても、古代ローマ時代における「塩」の意味を知るだけではなく、14世紀以降にラテン語聖書を英語に訳すに至った経緯や、産業革命とのかかわりをふまえると、単に中世以降に成立した英語の訳文をそのまま日本語に直訳すれば済むというわけではなくて、むしろ本来なら最低でも英語訳以前のラテン語段階くらいまでは遡って解釈するような慎重さが必要になると思うが、その長い話をここで書き切ることなど到底できない)


マイク・スウィニーは、1991年ドラフトで10巡目(全体262位)でカンザスシティに指名され、1995年のセプテンバーコールアップでメジャーデビューしている。初ホームランは、1996年8月12日にジェイミー・モイヤーから。
1999年に殿堂入りしたカンザスシティ黄金期の名リードオフマン、ジョージ・ブレットが引退したのは93年で、スウィニーのメジャーデビューはその2年後だから、スウィニーのデビュー時には、1980年代まで続いたロイヤルズの全盛期は既に終焉していた。
2010年に引退したスウィニーは、2011年ロイヤルズのホームパーク、カウフマン・スタジアムでのオープニングゲームで始球式を行っているが、そのとき捕手として球を受けたのは、ホール・オブ・フェイマー、ジョージ・ブレットだった。
Mike Sweeney Statistics and History - Baseball-Reference.com

Mike Sweeney » Statistics » Batting | FanGraphs Baseball

ことにスウィニーが素晴らしい打撃成績を挙げたのは、腰痛が持病になる前の1999年から2005年で、7シーズンの平均打率が.313、打点97、OBP.383。2000年と2002年には、wOBAがなんと.400を越えている。後輩ビリー・バトラーも真っ青の凄まじい打撃成績だ。この間、5回のオールスター選出も当然の話。
ちなみにイチローに関して話題になるシーズン200安打だが、スウィニーも一度だけ2000年に206安打を打っている。(この年のトップはANAのダーリン・エルスタッドの240本、2位がジョニー・デーモンの210本)
1999年から2005年の間の彼の平均ホームラン数は23本だが、OPSのデタラメさを批判した記事で何度も指摘している通り、平均打率で.313を打ってくれて、同時にホームランを20本以上も生産してくれる素晴らしい打者が、このブログでいう「OPSで甘やかされた低打率のハンパなスラッガー」なわけはない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:指標のデタラメさ(OPS、SLG、パークファクターなど)

2000 American League Batting Leaders - Baseball-Reference.com

Sweeney purchases full-page ad to thank fans, organization - MLB - ESPN


マイク・スウィニーが運営するThe Mike and Shara Sweeney Family Foundationの活動については、非常に多岐に渡る事業が行われていることもあり、このブログであれこれ不正確なことを言うより、自分でウェブサイトを参照して確かめてもらいたい。
The Mike and Shara Sweeney Family Foundation - Mike Sweeney, Kansas City Royals 1B
一例だけ挙げておけば、都市のスプロール化による都心部の退廃が問題化して久しいカンザスシティのダウンタウンにおいて、ドラッグ売買に使われるような治安のよくない空き地を買い取り、野球場として整えて提供する、というようなことも行っている。
Sweeney has impact on life in KC | royals.com: News


彼の腰痛前のスタッツを眺めていると、もし腰痛さえなかったら彼がいったいどんなプレーヤーになっていたことかと思うが、The Mike and Shara Sweeney Family Foundationで、マイク・スウィニー自身が書いているところによれば、彼が野球のキャリアにおいて最も追い詰められた気持ちになったのは、むしろ腰痛ではなく、メジャーデビュー後なかなか芽が出なかった時代に経験した「トレードの噂による心痛」らしい。
Mike's Story - The Mike and Shara Sweeney Family Foundation - Mike Sweeney, Kansas City Royals 1B

スウィニーはデビュー当初、強打のキャッチャーとしてデビューしており、まるでかつてのジェフ・クレメントや、今のヘスス・モンテーロのような立場にあったわけだが、打撃が開花したのは1999年に一塁手にコンバートされて以降のことで、その後オールスターに5回出場を果たすまでの素晴らしい選手になったわけだが、それでもデビュー後数年は芽が出ず、スウィニー自身の言葉を借りると、「もしトレードされたら、という『仮定』の問題ではなくて、それはもう、いつトレードされるのかという『時期』の問題」だったらしい。

傷ついていた彼の心がいかに立ち直ることができたかについては、これも拙い日本語訳によって、彼の最も伝えたい「ストーリー」を妨げたくはない。
(彼は、自分の半生を綴る文章で、I believe there is power in a story. Jesus told a lot of stories. と語り、「ストーリー」と出会う大切さを説いている。彼の言うstoryとは、単なる「物語」というより、「必然的な出会い」に近い)

どうか、英語の苦手な人も自分の自助努力で、彼の大切にしている「ストーリー」を読んでみてほしい。タンデムの自転車、つまり、2人乗りの自転車がマイク・スウィニーが与えてくれた「インスピレーション」と「心の平安」についてのノンフィクションが、彼の穏やかで開放的な性格そのまま、てらいのない語り口で綴られている。 (マイク・スウィニーがカンザスシティ・ロイヤルズを去らなければならなくなった2007年にスウィニーの出した新聞広告と、ラストゲームのドラマについても、どこかで目にする機会を持っていただければ幸いだと思う)
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サヨナラホームランを打ったイチローを出迎えるマイク・スウィニー



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