June 2012

June 30, 2012

ワシントン州スポケーンは、セーフコ(A)を起点にすると、高速道路I-90を東へ280マイル、約4時間半の道のりにある街だ。(ブログ注:スポケーンと長年の交流がある姉妹都市、兵庫県西宮市では、主に「スポーケン」と、少し違う表記が採用されている)


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野球界でスポケーンといえば、ストットルマイヤー親子が有名だ。

父親メル・ストットルマイヤー(=メル・シニア)は、ヤンキースで164勝を挙げ、オールスターに5回出場している名右腕。その後ヤンキースで投手コーチをつとめ(1996-2005)、のちに、2008年ジョン・マクレーン監督時代のシアトル・マリナーズで1年だけ投手コーチをつとめた。(メル・シニアは1977年にマリナーズのroving instructor、つまり巡回コーチ職にあり、2008年が最初のシアトルでのコーチ就任ではない)

Mel StottlemyreTodd Stottlemyre(左)父親メル
(右)息子トッド

オヤジと息子の写真を比べる。連続写真かと思うほど、あまりにもたたずまいが似ている(笑)

トッド・ストットルマイヤーは、1965年ドラフト1位(全体3位)でトロントに入団し、138勝を挙げ、ルー・ゲーリッグ賞なども受賞した。(引退後、あのメリル・リンチで証券アナリストをやったという異色の経歴の持ち主でもある)
この親子2人の勝利数は302勝で、これはMLB記録。また、親子でワールドシリーズに出ていることも、Jim BagbyとJim Bagby Jr.に続くMLBで2例目という珍しい記録。

Baseball: Fathers and Sons - Fun Facts, Questions, Answers, Information

Todd Stottlemyre Statistics and History - Baseball-Reference.com



スポケーンで、ストットルマイヤー親子以上に有名な「親子」といえば、「父の日」の発案者として知られているソノラ・スマート・ドット(Sonora Smart Dodd)と、その父だろう。

Sonora Smart Dodd
ソノラは、母親の死後、彼女を男手1つで自分を育ててくれた父親に感謝するため、教会の牧師にお願いして父の誕生月である6月に礼拝をしてもらった。式典は翌年1910年6月19日に行われたが、このことがきっかけで、いわゆる「父の日」が生まれ、以来、世界中に「父の日」を祝う習慣が広まった、といわれている。
(世界の数多くの国では、「父の日」は6月の第3日曜だが、違う月、違う日に「父の日」を制定している国もたくさんある 父の日 - Wikipedia



日本野球界で最も有名な「親子」、といえば、星一徹・星飛雄馬親子だろう(笑)(梶原一騎原作 川崎のぼる作画)

星一徹氏は、巨人での現役時代、右投げの三塁手で、背番号は18という設定。第二次大戦での肩の負傷により送球能力を喪失し、失意のドン底に落ちるが、妻・春江さんの励ましで再起を果たし、巨人復帰。肩の故障からくる送球の遅さを補うため、一塁へ走る打者走者の目前を横切ってから急激に曲がって一塁手のミットにおさまる、「魔送球」なる奇手を編み出した、と資料にある。
現役引退後は酒浸りの荒れた日々を送ることなるが、それでも野球への未練を断ち切れず、星一徹氏は、妻・春江さんの死を経て、その「行き場を失った野球への情熱」を、息子・飛雄馬にぶつけるようになり、異常なまでのスパルタ教育で息子に野球をたたきこむ。

星一徹・星飛雄馬親子

矢吹ジョー

巨人の星』(1966-1971)の原作者梶原一騎氏が、同時期に、ボクシング漫画の名作『あしたのジョー』(1967-1973)の原作も書いていたことは非常に有名な話だが、違うスポーツの、それも、これほど対照的な設定の2人の主人公のストーリーを、ひとりの同じ原作者が書いていたのだから、これはもう梶原一騎氏の類まれな才能のなせる技としか言いようがない。


ちなみに、
星飛雄馬と、矢吹ジョー
この2人の人物の「最も違う点」は、なんだろう?

梶原一騎作品の主人公とそのライバルは、たいていの場合、片方の親を亡くしているか、両親ともいない、あるいは捨てられた、という設定が多く、孤児の場合は師匠が親代わりになるという設定がお約束、とは、よくいわれる逸話ではあるが、星飛雄馬と矢吹ジョー、この2人の比較に関しては「決定的な違い」がある。

父親の存在」である。

もし、星飛雄馬に父親・星一徹氏がいなかったら、ストーリーはまるで違うものになっていただろうし、また『あしたのジョー』の矢吹ジョーの父親が生きていて作中に登場していたりしたら、これまた、まるでニュアンスの違うストーリーになってしまっただろう。


かつてこのブログで、アカデミー賞やエミー賞を受賞している映像作家ケン・バーンズのMLBに関するドキュメンタリー作品 ”Baseball”について、こんなことを書いた。

(MLBの野球は)
両親から子供に大切に伝えられてきた
「家族の文化」である


ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年10月10日、"The Tenth Inning"後編の語る「イチロー」。あるいは「アラスカのキング・サーモンはなぜ野球中継を見ないのか?」という考察。

Baseball: A Film by Ken Burns (Includes The Tenth Inning)Baseball: A Film by Ken Burns (Includes The Tenth Inning)


梶原一騎氏が、2人の主人公の置かれた境遇の違いについて、「父親のいる星飛雄馬」と、「両親ともいない矢吹ジョー」と設定したことについては、それが意図的なものか、それとも無意識にそうしただけなのか、そこまではわからない。
だが、スポ根マンガ特有の暑苦しさ(笑)や、見た目の絵柄の好き嫌いはともかく、「野球というスポーツにとっての『父親の存在』の大きさ」を考えると、ボクシングマンガにおいては父親の存在を描かなかった梶原氏が、こと野球マンガに関しては「父親と息子」というコンセプトを貫いていることは、野球というスポーツの本質のひとつを突いた慧眼だったのは間違いない。


プレーするにしても、あるいは観戦するにしても、野球というスポーツを楽しむ上で「父親という存在」がどんな決定的な位置を占めるのか? を考えると、
いまの時代のMLBで、アフリカ系アメリカ人プレーヤーが減少している理由のひとつを考える上で、重要なヒントがもたらされる

この次は、この10年で増加してきたアフリカ系アメリカ人の「父親の不在」と、MLBにおけるアフリカ系の減少の関係について書いてみる。

June 26, 2012

まず最初に。
ここで書かれているのは、あくまでMLBオールスターの投票のための、ちょっとしたTips。MLBオールスターの投票は実に簡単なのですが、実際の投票方法にあたっては、投票サイトのFAQやネットの情報などもよく参照し、よく確かめて納得した上で自己責任において行ってください。


イチローをオールスターへ。
さぁ、今年も全力で投票してください


では、スタート。
投票サイト(日本語)
2012 All-Star Game Ballot | MLB.com: Events



基本事項を頭にいれましょう
日本からインターネットを介してオンライン投票できます。
6月29日(金)午後12時59分(日本時間)、6月28日(木)午後11時59分(米国東部時間)に締め切り。日本のオールスターと違い、投手に対する投票はありません。
投票は慣れてしまえばまったく簡単。怖くないです。必要のない恐怖心を取り除くことから、まず始めましょう。


投票にあたって必要なもの
メールアドレス、生年月日など、いくつかの項目の入力が必要です。フリーメールが使えます。入力といっても、本名など、個人の特定につながるプライバシーの記入は必要ありません。


MLBの選手に対する広大な知識がないと
投票は難しい?

いいえ、広大な知識など必要ありません。
システムとして、たとえ投票対象が1人のみであっても投票できます。たとえば、イチローのみへの投票でも問題ありません。
もちろん、理想的には、これを機会にMLBの素晴らしい選手たちのプレーぶりを知ってMLBファンになり、世界最高峰の選手たちから自由に選べるようになってもらいたいものですが。
ゆえに、MLBの選手に対する広大な知識がないと投票は難しい、などということはまったくありません。好きな選手やチーム、リスペクトする選手を応援したい気持ちさえあれば、誰でも簡単に参加できるフレンドリーなシステムです。


選手はどうやって選択するの?
「選手選び」は、実に簡単です。
サイトにあらかじめ羅列されている各リーグの代表的なプレーヤーリストから、ラジオボタンをポチって選んでもいいし、また、リストにない選手を選びたい場合も、一番下にある「書き込み投票」という部分に「チーム名」と「選手名」を手入力することで、どんな選手にも投票できます。


投票する選手を決めた後で、変更できる?
いちど投票する選手を決めても、最後の投票ボタンを押す前ならいつでも自由に変更できます。
投票を決めた選手名のバナーの右上にある「change player」という変更のためのリンクをクリックするだけで、「特定の選手を選択した状態」が解除され、新たに選手を選びなおすことができるようになります。


本当に何度も投票できるの?
25回まで投票できるルールです。
だから、ひとりで25回投票したからとって、まったく気に病む必要なんかありません。安心して投票するべし。
一度投票を終えたに、投票メンバーを全く変更しない場合、毎回異なる組み合わせで出てくる「5桁の数字」の入力を繰り返すことで、まったく同じ選手チョイスのまま反復投票ができます。
また、特定チームの選手だけをひとまとめに選択して投票する機能もあります(「チームをノミネート」というプルダウンメニューを使う)



投票手順は具体的にどんな?
実際に投票サイトに行ってみましょう。
インターネットでMLB公式サイトのオールスター投票サイト(日本語)
2012 All-Star Game Ballot | MLB.com: Events

投票する選手を決めます。
たとえばイチローに投票したい場合、ページの下のほうにある「I. イチロー, SEA」と書いてある場所を探します。
次に、「I. イチロー, SEA」という表記の左にある「丸くて白いボタン」(ラジオボタンといいます)の中心あたりを押す。
すると、サイト側が「このファンは、イチローをチョイスした」と判断して、自動的に「イチローを選択した、という意味をあらわす横長のバナー」が、外野手部門の先頭にススーッと挙がってきます。

いちおう申し上げておくのですが、ア・リーグの外野手3人をチョイスするとき、中間発表でイチローより上位にランクしている外野手を選ぶと、当然のことながら、イチローと彼らとの「差」は縮まりません
もしもの話ですが、仮にあなたがそういう事態を避けたいと考える方なら、あらかじめこれまでに発表されている「ア・リーグ中間発表」の結果をしっかり確認してから投票に臨むべきでしょう。

各ポジションから1人ずつ、外野手は3人まで選ぶことができます。好きな選手の名前のラジオボタンをチェックします。DHはア・リーグのみです。
たとえ投票対象が1人のみ(たとえば、イチローのみ)の投票でも、参加できます。

チェックし終わったら、
一番下にある「投票を送信する」というボタンを押すと、
次の画面として、Eメールアドレス、生年月日、国名、好きなチーム名、ZIPコード、画面上に登場した5桁の数字等を記入する新しい画面が出てきます。
それらを記入し、投票ボタンを押して、終わりです。
簡単ですよね。

同じ選手チョイスのまま、何度も投票したい場合、
「5桁の数字を記入しては、投票ボタンを押す」を繰り返すと、連続的に投票することができます。


どうぞ、おいしいお茶でも用意して
2012MLBオールスター投票をこころゆくまで
お楽しみください。
(なお、この記事はオールスター投票締め切り後に削除予定です)

damejima at 11:45

June 24, 2012

2012年6月23日 イチロー第3打席タイムリー

これはイチロー第3打席のタイムリーのときのバッティングフォームだ。四球のランナー、しかも2アウト2塁でのタイムリーだから、よけいに価値がある。(クリック→別窓で大きな画像)
スイングが始まり、バットにボールが当たって、フォロースルーに至るまで、頭の位置、踏み出した右足のつま先の方向、微動だにしていない。打った瞬間のアオダモでできた日本製バット特有の強いしなりが、画像からよくわかる。いかに真芯でとらえているかがよくわかるし、糸を引くように外野へ弾き返されていく打球の軌跡が、写真からでも想像してもらえるのではないかと思う。

見た目に綺麗なフォームだからヒットが打てるとは限らないが、こういうクリーンヒットのときのフォームは、例外なく、綺麗なものだ。
不思議なものだ。
Seattle Mariners at San Diego Padres - June 23, 2012 | MLB.com Gameday

動画(MLB公式):Baseball Video Highlights & Clips | SEA@SD: Ichiro singles home Ackley in the fourth - Video | MLB.com: Multimedia

イチロー関連の動画(MLB公式):Multimedia Search | MLB.com: Multimedia



フォームといえば、マイケル・ソーンダースのソロホームランのフォームも素晴らしい。

腕のたたみ方をみてほしい。

打ったのはインコース高めの、やや抜け気味のスライダー。
もともとインコース低めの落ちる変化球に弱点があることは自他ともに認めざるをえなかったわけだが、長い両腕をあらかじめたたんでおいてからスイングにかかっているから、見た目窮屈そうに見えても、きちんとミートできるし、バットに十分な力を伝えることに成功している。
以前のソーンダースなら、インコースが来て、慌てながら事後的に腕をたたみつつスイングしていたから、バットの軌道はまるで自分の思うようならなかった。というか、あれは腕をたたんで打っているのではなくて、ただ腕を体にくっつけてカラダを回転させているだけだった。

いやぁ。進歩したものだ。

2012年6月23日 マイケル・ソーンダース8号

動画:Baseball Video Highlights & Clips | SEA@SD: Saunders smashes solo shot off the foul pole - Video | MLB.com: Multimedia

June 22, 2012

このバカでかい画像は、何かというと、2012年のMLB各チームのドラフト収支だ(6月21日現在)。
「上手な買い物によって、予算枠以下でドラフト指名選手と契約できているチーム」ほど、上にチーム名が書かれている。まぁ、いってみれば、買い物上手ランキングみたいなものだと思えばいい。

この表の項目の見方は、次のような感じ。
Bonus Pool 「予算枠」 新労使協定下でチームが使うことを許されるドラフト予算総額の上限注1
Pool Spending 「確定された支出」 既に契約の終わった選手に支払う支出額。
Signed in Top 10 最も予算がかかる10巡目までの上位指名選手のうち、契約済みの人数
Signed Total 契約の終わった選手の総数
--------------------------------------------
+/− 「予算枠収支」。今シーズンのドラフト予算枠から、「既に契約した選手へ払う確定した支出」と、「まだ未契約の選手に予定している契約ボーナスなど、今後予定している支出」の、2つをまとめて引いた、そのチームの収支。

注1:新労使協定下では、10巡目までの指名選手に支払う「契約ボーナス」の金額の上限額が、それぞれの指名順位に応じて「推奨される契約金額」として非常に細かく決められている(スロット額)。
それら全ての「指名順位で決まるスロット額」を総合計した金額は、その球団が、その年のドラフトで使うことのできる予算総額の上限、すなわちBonus Poolとなる。
もし球団が実際に使った金の総額が、ドラフト予算の上限であるBonus Poolを超過(overage)すれば、超過額のBonus Poolに対する%によって、MLB機構から「課徴金」や「翌年以降の指名権剥奪」など、重いペナルティが課せられる

このリストで、上のほうに書かれているチーム=「黒字」=予算枠より実際の契約を安くあげることに成功した黒字チーム、下のほうに書かれているチーム=「赤字」=推奨される契約ボーナス額より割高な契約を行ったことによって、予算枠に超過が発生している赤字チーム、これが基本的な表の見方である。

未契約の指名選手がそれぞれのチームに少しずつ残っているから、ランキングはこれからも少しくらいの変動はありうるが、ドラフト指名選手との契約が大筋では終わりに近づきつつあることから、6月21日現在、この表の下のほうにチーム名のある球団、つまり、「あらかじめわかっていた予算枠を、割高な契約を連発したせいで既に使い果たしてしまって、超過が発生し、ペナルティ発生が予想される球団」は、ほぼ確定しつつある

Baseball Americaによる2012ドラフト収支ランキング(6月21日現在)
出典BaseballAmerica.com: Draft: Draft Database


試しに、Seattle Marinersという項目を探してみる。
すると、一番下にある。

もう一度言おうか?
一番下
つまり割高な買い物によって、与えられた予算枠を既に使い果たしているMLB最大の赤字チームだ。わかりやすくていいだろう?(笑)
MLB全30球団のうち、こうした予算枠以上にドラフトで金を散財している超過チーム自体、たった「4チーム」しかない。(サンフランシスコ、セントルイス、ボストン、シアトル)
そして、
割高な買い物をして100万ドル以上もの予算枠超過を背負いこんでいる「ドラフト下手なチーム」は、MLB全30球団で、シアトル・マリナーズ、たった1チームだけ、しかない


チーム名をクリックすると、チーム別の契約の明細が出てくる。シアトル・マリナーズのドラフト収支は、6月21日現在、以下のようになっている。

 予算枠      $8,223,400
 既に使った支出 $3,820,200
--------------------------
 差し引き     $4,403,200


なんだよ! まだ予算枠440万ドルも残ってるじゃないか!
Baseball America、嘘つきやがって。

などと思っては、バカにされるだけだ(笑)
以下の表をじっくり見たまえ。大事な部分が抜けているのが、わかるはずだ。

マリナーズ2012ドラフト収支(Baseball America 6月21日現在)

出典BaseballAmerica.com: Draft: Draft Database


そう。
1巡目指名のマイク・ズニーノの名前が太字になっていない。
つまり、最も金のかかる1巡目指名選手と、まだ契約できていない、のである。肝心の1巡目指名選手と契約できてもいないうちに、このチームは、既に予算枠820万ドルのうち、約半分にもあたる380万ドル以上の予算枠を使いこんでしまったのである。

仮にマイク・ズニーノとの契約を、スロット額どおり、520万ドルで終えるとして、さきほどの計算を、再度やり直そう。

 予算枠              $8,223,400
 既に使った支出         $3,820,200
 ズニーノ契約に必要な支出 $5,200,000
-----------------------------------------
 差し引き        マイナス $796,800


仮にマイク・ズニーノとの契約を、推奨額の520万ドルで終えるとしても、約80万ドルの超過が発生することがわかる。(もちろん、ズニーノとの契約にもっと金がかかれば、それだけシアトル・マリナーズの超過額は増える)

だが、もちろん、必要な費用は、ズニーノとの520万ドルの巨額契約ボーナス以外にも、こまごまと存在している。10位以下の指名選手に10万ドル以上払うかもしれない。
だから、もろもろの支出を加味した上で、Baseball Americaは、現在のシアトル・マリナーズのドラフト予算の収支を、「マイナス 1,422,300ドル」、つまり、140万ドル以上のBonus Pool超過が発生している、と踏んでいるわけだ。

この大赤字ドラフトの原因は、どうやら、
1位指名を除く、契約の決まった10位まであたりの指名選手に対して支払う契約ボーナスが、選手ひとりあたり「数10万ドル」、日本円にして数千万単位と、指名順位に応じて細かく決まる推奨契約金額(スロット額)からして、あまりにも over slot、つまり、推奨契約金額よりあまりにも高い金額で契約し過ぎていること にある。
つまり、
最も重要で金のかかる買い物である1巡目指名選手との契約をまだできてもいないのに、2巡目から10巡目あたりの選手で割高な買い物ばかりしていたら、いつのまにか財布に既に金が無くなって、それどころか、予算枠をかなりオーバーして大赤字になっていた わけだ。

シアトル・マリナーズ、ペナルティ必至の情勢である(笑)
予算枠820万ドルに対する142万ドルの超過というのは、なんと17%以上もの超過にあたるから、このままズニーノと500万ドル超の契約をするだけでも、シアトル・マリナーズは最高レベルのペナルティを与えられ、課徴金100%に加え、2013年と2014年の2年間の1巡目指名権を連続して剥奪されることになる

また、当然の話だが、
Bonus Pool超過の重いペナルティを避けるために、マイク・ズニーノに安すぎる契約金を提示したことで、ズニーノとの契約が御破算になれば、ズレンシックが、新労使協定を知らないかのようなバカ馬鹿しい割高契約を連発したおかげで、今年の貴重な1巡目指名権をゴミ箱に捨てることになる

逆に、
もし、なにかにつけて自分のミスを認めたがらないズレンシックが、Bonus Pool超過の重いペナルティを覚悟した上で、マイク・ズニーノに520万ドル以上の契約を提示して無理矢理契約すると、チームには課徴金100%が来るのに加えて、来年、再来年、2つの1巡目指名権をゴミ箱に捨てることになる

新労使協定下でのドラフトのペナルティ

5%以内の超過 超過額の75%の課徴金
5-10% 課徴金75%、翌年の1巡目指名権剥奪
10-15% 課徴金100%、翌年の1巡目+2巡目指名権剥奪
15%以上 課徴金100%、翌2年の1巡目指名権剥奪

0-5% 75% tax on overage
5-10% 75% tax on overage and loss of 1st round pick
10-15% 100% tax on overage and loss of 1st and 2nd round picks
15%+ 100% tax on overage and loss of 1st round picks in next two drafts
MLB, MLBPA reach new five-year labor agreement | MLB.com: News


やり手のGMがシアトルにいるって?
は? だれのこと? (笑)
再建?(笑)

Arizona WildcatsArizona Wildcats
Arizona Wildcats baseball - Wikipedia, the free encyclopedia

2012カレッジ・ワールドシリーズ(以下CWSと略)は、アリゾナが、優勝候補のひとつフロリダ州立を破って決勝進出を決めた。アリゾナの決勝進出はこれが7回目。これまでの6回の決勝進出では、半分の3回で優勝している(1976、1980、1986)ように、ここぞという大勝負に滅法強い。
NCAA Division I Baseball Championship Bracket - NCAA.com


アリゾナが属するPac-12の大学で、CWS本戦出場8校を選ぶ16校のスーパーリージョナルに出場できたのは、アリゾナUCLAオレゴンスタンフォード
このうち、全米ドラフトで全体1位指名が確実と言われ続けてきたMark Appel (実際には全米8位でピッツバーグ)のスタンフォードは、CWS直前の不調そのままにフロリダ州立に敗れ、本戦には出られなかった。
だが、同じPac-12のアリゾナが、Bracket 1でフロリダ州立を2度破って決勝進出を果たし、スタンフォードのリベンジを果たした格好になった。

アリゾナは、CWS直前、5月29日現在のランキングでは、NCAAでも、Baseball Americaでも、ベスト8には含まれていなかった。
それでも、決勝進出を果たすあたり、けしてマグレではなく、今年のPac-12は近年になくレベルが高かったといえるだろう。

Pac-12 ロゴ

Pac-12とか、ロングビーチ、フラートンなどが属すBig West等、太平洋岸のカンファレンスに属する大学は、かつては優勝常連校が揃っていたが、このところ、サウスカロライナ、フロリダ、アーカンソー、ルイジアナなどのSEC(Southeastern Conference)や、ノースカロライナ、フロリダ州立、ヴァージニアなどのACC(Atlantic Coast Conference)といった、大西洋岸のカンファレンスに押されっぱなしなイメージが続いていただけに、Pac-12のアリゾナが、ACCのフロリダ州立を連破しての決勝進出は、太平洋岸のカレッジベースボールファンにとって非常に喜ばしいニュースだろう。


Trevor Hoffmanどこをどうすると、こんなに足を上げられるのか(笑) 

ちなみに、アリゾナ大学出身のMLBプレーヤーといえば、ケニー・ロフトンというより、やはり、トレバー・ホフマンだ。
2010年9月8日セントルイス戦で、メジャー史上初の通算600セーブを達成。メジャー最多記録だった通算601セーブこそ、2011年9月19日ミネソタ戦で通算602セーブ目を挙げたマリアーノ・リベラ(現在の記録は608セーブ)に抜かれてしまったものの、MLBで最初に600セーブを記録したという金字塔は、永遠に誰にも抜くことのできない大記録だ。

トレバー・ホフマンの「ビッシュ・ツイスト」

トレバー・ホフマンの投球フォームは、踏み出した左足が真っ直ぐホームプレート方向を向く
これは、このブログで何度となく書いてきた「前ステップ」、つまり、「踏み出し足を一度も三塁側に蹴り出すことなく、ホームプレートに真っ直ぐ踏み出して投げる」、典型的なメジャー流の投球フォームである。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:ピッチャーの投球フォーム(日米比較)

June 21, 2012

なにか最近、広すぎるセーフコを狭く改修してパークファクターを変えよう、そうすればお寒いシアトル打線も長打が出まくって、勝てるようになる、などと、わけのわからない新興宗教もどきのキャンペーンを張っている馬鹿が日米双方にいるようだが、アリゾナ3連戦で死ぬほど失点しまくったことが、これら馬鹿な人間に回復不能の致命傷を与えてくれた(爆笑)

投手というものがよくわかっていない人がとても多いようだが、投手というのはとてもデリケートにできているものだ。
アリゾナでの失点の感覚は、大量失点というより、大量出血といったほうが、感覚的には近いだろう。
試合が終われば、また次頑張ればいいやと思える負けもあれば、そう思えない負けもある。悲惨な形で打たれ続けても、強力打線で取り返し続ければ、チームとしてはそれでいいし、優勝できる、などと空論を考える人は、投手のマインドがわかってない。


どうもシアトル地元紙あたりの無能な記者たちは、若手が打ちまくる現状を見て歓喜に湧いていたようだ。
これほどピッチャーが打たれまくる惨状を見ても、「先発投手を安売りして若いバッターをかき集めた今の現有戦力のままで、セーフコを狭くすると、どうなるか?」 なんてわかりきったことすら理解できないのだから、目の前で起きていることも理解できない程度の低い人間に、説明する言葉はいらない。罵倒して終わりで十分だ。


球場について、あるジェネラルマネージャーはこんなことを考えた。
点の入りにくい球場だからこそ、
打撃に金をかけて、長打を打てる打者を集めてこよう!
だが、集めたのは場所にそぐわない右打者ばかりで、2年と続けて機能しなかった。やがてチームはシーズンに100回ほど負けるようになった。ダメなキャッチャーは逃げ帰った。


別のマネージャーは、こんなことを思いついた。
そうだ。
点の入りにくい球場だからこそ、
守備に金をかけて、守備のいい選手だけを集めよう!
だが、その結果、投手はリーグナンバーワンになれたが、打線は完全に死んだ。チームはシーズンに100回ほど負けるようになり、金も尽きてきた。


そこで、マネージャーとその取り巻きは、また考えた。
点の入りにくい球場だからこそ、
良い先発投手を放出しても、どうせそれほど点はとられない。
打撃のいい若手をトレードで集めよう!
だが結果、投手も打線も死に、ついでに守備も死んで、
チームはシーズンに100回ほど負けるようになった。


そこで取り巻きはは、また考えた。
点の入りにくい球場がいけない。
球場を狭くすれば、打撃はいいはずの若手が大活躍して勝てる。ベテランは放り出そう
だが、アリゾナで投手は死んで、打線も打ち負け、守備も死んで、チームは何を目的にしているのか、わからなくなった。

かわいそうな人たち。
まるでカート・ヴォネガットの書くエッセイのような話だが
実話である。



ちょっと「コスト」というものについて書く。

評価の高い選手は、値段が高い。
当たり前の話だ。
だが、価値より割高な価格で買ってばかりいては、予算がいくらあっても足りない。また予算配分も大事で、投手と打者、組織全体に行き渡らせないといけない。

だが、買っただけで人間というパーツは働くようにできているか?

答えは「ノー」だ。
評価が高くプライドもある選手たちを「上手に働かせる」には、「気持ちよく働かせるための技術」がいる。それが、コストというものを無駄にしないコツなのは、経営者の常識だ。


評価の高いドラフト候補は、高い。
これも当たり前の話だ。
だが、割高な価格で買ってばかりいては、予算がいくらあっても足りないし、予算が投手と打者、組織全体に行き渡らない。

だが、買っただけで人間という花の種は、開花するようにできているか?

答えはもちろん「ノー」。
いくら高い評価のある選手たちであっても、「上手に成長させる」には、「育てる技術」がいる。それが、コストというものを無駄にしないコツなのは、経営者の常識だ。



ドラフト1位と契約できてもないのに、既にドラフト予算が赤字で、うっかりすると来年と再来年のドラフト1位指名権を失うかもしれないというシアトル・マリナーズだが、このチームにないもの、欠けているものは、以下に並べた2者択一のうちの、どちらだろう?
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年6月21日、Baseball Americaの2012ドラフト資料でわかった、「MLBで買い物が最も下手な球団」、シアトル・マリナーズ。やがて来るペナルティも考えず、ドラフトで30球団最高の大散財。


「買いもの上手」
「安売りしては、高い買い物に走る」

「育て上手のプロの農家」
「買った苗をただ枯らすだけの素人の家庭菜園」

「割高な選手を買わないようにするやりくり上手のセンス」
「割高な代理人から選手を買ってばかりいる買い物センス」

「働かせ上手」
「無能な上司」

「選手を気持ちよくプレーさせる技術」
「気持ちよくプレーできなくさせるパワハラ」

「極端すぎない、ゆとりある戦略」
「コンセプト過剰の極端な机上の空論」

「野球のことがよくわかっている、盛り上げ上手」
「野球のことがよくわかってもいないのに、口を出さずにいられない地元メディア、ブロガーなどの取り巻き」

「イベントを収益につなげる技術」
「イベントを無駄にする陰気さ」


イチローにとりついたままの不幸は、加齢からくる衰えなんかでは、けしてない。(そんなものをブログ主はまるで信じてなどいない)むしろ、上で挙げた2者択一の後者に満たされた場所に存在するリラックスできない、堅苦して、陰気な環境のほうだ。とても西海岸とは思えない、西ヨーロッパの場末のような暗さ。


このチームに欠けている最大のもの、それは
経営者としての常識だ。


June 20, 2012

チェイス・フィールドで行われた2012年6月19日のアリゾナ戦で、イチローが、第1打席でセンター前ヒットを放ち、MLB通算2500安打を達成した。その後も、2本の二塁打を含む4安打2打点の活躍をみせ、延長10回表のダメ押しタイムリーツーベースで接戦を締めくくってみせた。



イチローMLB通算2500本安打達成


動画Ichiro's historic night
Seattle Mariners at Arizona Diamondbacks - June 19, 2012 | MLB.com Video

動画Seattle Mariners at Arizona Diamondbacks - June 19, 2012 | MLB.com Classic

チーム公式サイトIchiro Suzuki back in lineup, collects 2,500th hit | Mariners.com: News

MLB公式サイトSeattle Mariners at Arizona Diamondbacks - June 19, 2012 | MLB.com SEA Recap

ESPNSeattle Mariners vs. Arizona Diamondbacks - Recap - June 19, 2012 - ESPN

Ichiro Milestone: Fourth Fastest To 2,500 Hits | Seattle Mariners

かつてイチローのチームメートだった対戦相手アリゾナの1番打者ウィリー・ブルームクイストの試合直後のコメント

"You can sit and analyze Ichiro's swing until you are blue in the face and you are never going to figure it out," said D-backs shortstop Willie Bloomquist, who spent seven years with Suzuki in Seattle.
イチローのスイングは、たとえ腰を落ち着けて、精も根も尽き果てるまで分析したとしても、けして理解することなんてできないさ。」と、イチローとシアトルで7シーズンを過ごしたダイヤモンドバックスのショートストップ、ウィリー・ブルームクイストは言う。

"He cues the ball off the end of the bat for a double down the line. There is no rhyme or reason for it. You try to play him opposite way a little bit assuming he is going to slap a ball in the hole, and it's a 10-hopper up the middle that gets through.
「彼は、まるでビリヤードのキューでボールを突くみたいにバットの先端を使ってライン際に二塁打を打った。あれを言葉で説明するなんて不可能だ。
もし、イチローがボールを叩きつけてゴロをレフト方向に打って出塁しようとしていると仮定して、(レフト打ちさせない配球をするとか)ちょっと違うアプローチで彼を手玉にとろうとしても、こんどは野手の間をセンターに抜けていく地を這うようなヒットを打たれるんだ。」
(ブログ注:
slap slap hitterは、主にソフトボールなどでよく使われるバッティング用語。左バッターが走り出しながらボールをレフト方向に「大きく跳ねるゴロ」を打ち、出塁する技法。打球が大きくバウンドする点に特徴がある。
hopper:a hit that travels along the ground. 「地を這うような」ゴロのヒットのこと。「大きくバウンドする打球」であるslap hitとは180度対称的な打球)

"That's just the element he brings to the game. You can't cheat too much one way or the other with him, because he is that good, where he is able to find holes and figure out ways to get hit. He hasn't gotten 2,500 hits over here for nothing. He's obviously a craftsman at work all the time when he is up there."
「そういうものにしたって、彼の野球スタイルのほんのひとつの要素に過ぎない。どうにかして彼の目をくらまそうとしたって、うまくはいかない。なぜって、彼は(どんなに包囲網をしこうと、必ず)突破口をみつけ、ヒットを打つ方法をみつけることができるからなんだ。
イチローは、何もしてないのに2500ものヒットを打てたわけじゃないんだよ。彼は言うまでもなく職人だ。常にトップクラスにいるかぎり働き続ける職人なんだよ。」

Ichiro gets to 2,500, spoils D-backs' big game


His 3,778 hits are the third-most among professional players in either country, seven more than Henry Aaron and trailing only Pete Rose (4,256) and Ty Cobb (4,191).
「彼の(日米通算)3778本のヒットは、日米両国を通じて3番目に多い。ハンク・アーロンよりも7本多く、彼の上にいるのはもはや、ピート・ローズ(4256本)、タイ・カッブ(4191本)の、たった2人だけだ。」

Notebook: Ichiro gets 2,500th hit for Seattle » The Commercial Appeal



イチローの2500安打は、試合数ベースで見ると、史上4番目の達成スピードと安易に言う人がいるわけだが、ブログ主の考えは違う

「近代野球の2500安打」においてはイチローが、議論の余地なく、ナンバーワンだ。

これは身内を贔屓して言うのではない。上位3人の時代の野球は、今とはスタイルや試合のシステムも違う。

例えば、上位3人が2500安打を達成した20世紀初頭のMLBは「1シーズンのゲーム数」が、現在のMLBより少ない。また、それらは、セントルイスよりも西にはMLB球団がまったく無かった「MLBのフランチャイズが非常に狭いエリアに固まって限定して存在していた時代の記録」だ。

なにか、現在よりゲーム数が少ない時代に2500安打を達成したほうが偉いとか、勘違いしている人が多数いるようだが、20世紀初頭のMLBはシーズン中の試合の開催密度が現在より低く、また、チームの移動距離の負担もずっと小さい。
そういう「現在より、はるかにのんびり野球をプレーしていた時代の記録」を、「近代野球」に含めて考え、イチローの2500本安打を「達成にかかった試合数では、近代野球では4番目」とするのは、あまりにも安易すぎる。


だから、ブログ主は、たとえ20世紀初頭のMLBの1シーズンの試合数が現在よりもほんの少しばかり少ないにしても、「近代野球における2500安打」というとき、真に「近代野球」と言えるのは、MLBが1950年代以降に西海岸に向かって次々と拡張された結果、「全米全域に球団が点在するようになって、MLBが真の意味で全米レベルでの拡張を終えて以降」を、「近代野球」と考える。

だから、イチローのこの「たった12シーズンでの2500安打達成」という記録の「密度」は、近代野球として初めて達成された快挙といってよく、Unbreakable 今後も破られることはない記録だ。
現実に、連続したシーズンで打ったヒット数は、連続した4シーズンのヒット数から、果ては連続12シーズンで打ったヒット数まで、どこをとっても、イチローがMLB歴代ナンバーワンなのだ

MLB連続シーズン安打数記録(歴代)

連続4シーズン
1位 930本 イチロー (2004-2007年)
2位 918本 Bill Terry (1929-1932)
3位 899本 George Sisler (1919-1922)

連続5シーズン
1位 1143本 イチロー (2004-2008)
2位 1118本 Chuck Klein (1929-1933)
3位 1103本 Bill Terry (1928-1932)

連続6シーズン
1位 1368本 イチロー (2004-2009)
2位 1313本 Willie Keeler (1894-1899)
3位 1301本 Jesse Burkett (1896-1901)

連続7シーズン
1位 1592本 イチロー (2001-2007)
2位 1526本 Jesse Burkett (1895-1901)
3位 1517本 Willie Keeler (1894-1900)

連続8シーズン
1位 1805本 イチロー (2001-2008)
2位 1719本 Willie Keeler (1894〜1901)
3位 1713本 Jesse Burkett (1894〜1901)

連続9シーズン
1位 2030本 イチロー (2001〜2009年)
2位 1905本 Willie Keeler (1894-1902)
3位 1891本 Jesse Burkett (1893-1901)

連続10シーズン
1位 2244本 イチロー (2001-2010)
2位 2085本 Rogers Hornsby (1920-1929)
3位 2074本 Paul Waner (1927-1936)

連続11シーズン
1位 2428本 イチロー (2001-2011)
2位 2293本 Paul Waner (1927-1937)
3位 2265本 Pete Rose (1968-1978)

連続12シーズン
1位 2500本以上 イチロー (2001-2012)
2位 2473本 Paul Waner (1926-1937)
2位 2473本 Pete Rose (1968-197)



試合数ベースでイチローより達成スピードの速い3人の打者のうち、アル・シモンズと、ジョージ・シスラーの2人は、3000本安打を達成しないまま引退している。(シモンズ2927本、シスラー2812本)
イチローが次なる目標として目指す3000本安打という金字塔は、本数として凄い記録なのも確かだが、記録達成スピードとして、とてつもない記録になるのは間違いない。

通算2500安打達成スピード (試合数ベース)

アル・シモンズ   1784試合 1924-1936年
1936年9月14日達成
Al Simmons Statistics and History - Baseball-Reference.com

タイ・カッブ     1790試合 1905-1918年
1918年8月16日達成
Ty Cobb Statistics and History - Baseball-Reference.com

ジョージ・シスラー 1808試合 1915-1928年
1929年5月18日達成
George Sisler Statistics and History - Baseball-Reference.com

イチロー      1817試合 2001-2012年
2012年6月19日達成
Ichiro Suzuki Statistics and History - Baseball-Reference.com

(以下はイチローより達成スピードの遅い選手)

ポール・モリター
1825試合 1938年6月3日達成

ロジャー・ホーンスビー
1846試合 1929年5月7日達成


通算2500安打達成スピード (シーズン数ベース)

イチロー  2001-2012年
        12シーズンで2500安打達成
ジョージ・シスラー 1915-1928年 13シーズンで2653本
アル・シモンズ   1924-1936年 13シーズンで2514本
タイ・カッブ     1905-1918年 14シーズンで2522本



それにしても、今日も今日とて、監督エリック・ウェッジのおかしな選手起用がみられた。

5回表、8-5と3点リードの2死ランナー無しの場面で、ここまで5失点と単調なピッチングの先発ピッチャー、エラスモ・ラミレスに打席が回ってきたのだが、ここで監督ウェッジは、代打は出さずに、投手であるラミレスをそのまま打席に立たせた。(結果は、もちろん凡退)

普通、投手に代打を出さなかったのだから、たとえアリゾナ打線に好きなように打たれまくっている防御率5点台のさえない先発投手であっても、3点リードしたわけだし、交代させずに、もう1イニングくらい引っ張って使う気持ちになったのか? とか、思うわけだが、なんと、ウェッジは、投手のラミレスが凡退し、チェンジになった直後の5回裏に、ピッチャーを岩隈に交代させたのだ。

まぁ、なんというか、長いこと野球も見てきたが、DHのないリーグの試合終盤に、こんなわけのわからない投手起用をする監督を、初めて見た。

DHのない場合の選手起用」ってものが、まったくわかってないままインターリーグに臨んている、としか思えない。
さすが、ダスティン・アックリーのボブルヘッドデーに、当のアックリーをスタメン起用せず、不可解に思った記者に理由を聞かれて「メモするのを忘れた」などと、わけのわからない言い訳をする「イっちゃってる監督」なだけはある。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年5月25日、アックリーのボブルヘッドデーに当のアックリーを先発からはずした理由を聞かれて、「メモし忘れた」と子供だましの言い訳したファン軽視の最高の馬鹿監督、エリック・ウェッジ。


June 19, 2012

6月17日のギリシャ再選挙を前に、ユーロ圏脱退に反対する人たちはこんなキャッチフレーズのテレビコマーシャルを流していたらしい。
「子供たちの未来をオモチャにしてはいけない。」
どこかの誰かさんに、是非見てもらいたいCMではある(笑)


まぁ、それはともかくとして。
MLBの超高額契約プレーヤーの契約に必ずといっていいほど登場してくる辣腕代理人スコット・ボラスが、今年初めロサンゼルスのアナハイムで行われた全米の大学野球コーチのミーティングで、アメリカの大学野球チームが受け取る奨学金の額が少なすぎる問題をテーマに講演をやったらしい。

Anaheim Convention CenterAnaheim Convention Center

肝心の「奨学金をどうしたらもっと増やせるかについてのスコット・ボラスからの提案」は非公開なので、おいておくしかないが、よく読んでもらうとわかるが、講演内容の大半が「大学を卒業してドラフトされる選手が、高卒選手に比べていかに有能で、将来性に満ちているか」に終始しているのが、ちょっと笑ってしまう(笑)

つまりボラスの話の大半は、自分の扱う「商品」である「大学生」を褒め倒しているだけなわけである。ある意味の「自画自賛」である。そりゃ自分の商品をけなす人間はいないが、それにしても身びいきが過ぎる。
彼が暗に(というか、あからさまに)言っているのは、
「大卒選手は、いまでもダイヤモンドの原石なんですよ」 「私が、その価値ある原石をMLBに高額で売りつけてあげますから、あなたがたコーチは私についてくればいいんですよ」 「だからあなたがたは、せいぜい良い選手を必死に育てて、私のところに連れて来てください」
ということだ(笑) 講演に見せかけたボラスの営業活動のようなものであるにもかかわらず、営業トークを聞かせている大学関係者のほうが頭(こうべ)を垂れて、あまつさえ講演料まで財布に入れてくれるのだから、こんなありがたい話もない(笑)

ところが、だ。
ボラスが今年初めにこんな「大卒ドラフト指名選手を絶賛しまくる講演」をしたにもかかわらず、実際の2012年MLBドラフトでは、「高校生への1位指名の嵐」だったわけだから、「大学生の優位性」をいくらボラスが強調しようと、実際のMLBが彼の思惑どおり動いているわけではないことが、かえって明確になった。
資料ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年6月4日、恒例の全米ドラフトは高校生が主役。


ただ、参考になる話も2つほどある。
(ある意味それを読んでもらうためだけに、この文章を訳した)

最も重要なポイントは、
大卒の有望プレーヤーの契約をまとめることで、とんでもない大金を稼ぎ続けてきた代理人スコット・ボラスですら、将来性の高い大学アスリートの、それも逸材レベルが、野球以外のスポーツに流れている現状が存在していることを、公の場で認めざるをえない
ということだ。

ボラスは具体的に特定して発言していないが、ここでいわれている「アメリカの大学の逸材の、野球以外のスポーツへの流出」を、もっと具体的に言えば、前記事のテキサス大学ロースクールの記事の翻訳で書いたように、「近年のアフリカ系アメリカ人の大学アスリートが、MLBではなく、NBAやNFLを目指すことが増加していること」を指しているのは、いうまでもない。
資料ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年6月11日、MLBにおけるアフリカ系アメリカ人プレーヤーの減少について書かれたテキサス大学ロースクールの記事を訳出してみた

アフリカ系を含めた有望アスリートが他のスポーツに流出しているからといって、代理人業を営むボラスの立場としては、「商品である大卒プレーヤー」の「仕入先である大学野球の監督たち」に向かって、「MLBにアフリカ系アメリカ人が減っている現状があるのはたしかだが、だからといって、白人選手にしても、安く獲得できて才能も高いドミニカやベネズエラなどのラテンアメリカ系選手に押されつつある現状も生まれつつあって、アメリカ人選手の未来はけして楽観視できない」などと、軽々しく発言することはできない。
ボラスは講演で、「野球以外のスポーツへの流出」と、オブラートに包んだ発言のしかたをしているわけだが、実際には、ボラスのいう「野球以外のスポーツへの流出」が、「MLBにおけるアフリカ系アメリカ人プレーヤーの減少」を指している(あるいは深く関係している)ことに、かわりない。

スコット・ボラスのような代理人にしてみると、こうした大学卒プレーヤーの将来性の現状を「先細り」と受け取られることは、「大卒プレーヤーの質的低下や量的減少、特に、白人系選手の長期的な価格低下」も意味するわけだから、ボラスとしては放置しておくことはできない。
だから、ボラスはいま躍起になって大学のコーチたちのケツを叩き、「逸材の他のスポーツへの流出に警鐘を鳴らす」わけだ。「有望な大学アスリートのNFL、NBAへの流出」は、ボラスの収入に直接関係してくるから、当然だろう。


また、問題としては小さいが、アメリカの大学野球に、資金不足もあって、トレーナー、コーチ、ドクターといった「野球専門の専門スタッフ」が不足している(あるいは養成できない)現状があることで、(おそらく多くの人数が養成されている)フットボールに特化した専門家を野球に流用せざるをえない現実があることも、この文章からわかる有益な情報のひとつだ。
最近のMLBプレーヤーの怪我がちな点は、こうしたスタッフ不足も背景のひとつなのかもしれない。


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Scott Boras Presents Plan For 25 Scholarships

By LOU PAVLOVICH, JR.
Editor/Collegiate Baseball
(From Jan. 27, 2012 Edition)
Scott Boras Presents Plan For 25 Scholarships


Scott Boras, the most powerful agent in sports, gave a riveting presentation at the American Baseball Coaches Association Convention in Anaheim on how every NCAA Division I baseball program can fund 25 full scholarships for athletes.
スポーツ界で最もパワフルな代理人、スコット・ボラスは、どうしたらNCAA1部のすべての野球部に、(ロスター枠全員をまかなえる)25の十分な奨学金を提供できるのかについて、アナハイムで行われたアメリカ野球コーチ連盟(ABCA)年次総会で魅力的な提言を行った。
ブログ注:
アメリカ野球コーチ連盟(ABCA)
http://www.abca.org/
2012 ABCA Anaheim Convention (2012年1月5日-8日)
January 5-8, 2012 ABCA Anaheim Convention - ABCA

He firmly believes that Major League baseball would be interested in listening to a plan to pump money into these programs for additional scholarships since revenue on the professional level has shot up from $400 million in 1980 to over $8 billion during the past year.
彼は、プロレベルでの収益が、1980年の4億ドルから昨年2011年には80億ドル以上に急上昇していることから、もし奨学金追加事業に資金を注ぎ込むプランが策定されれば、MLBは興味を持ち、耳を貸すだろうと、堅い信念を持っている。

Currently NCAA Division I baseball programs can give a maximum of 11.7 scholarships.
今日、NCAAディヴィジョン1の野球競技は、最大で11.7の奨学金しか得ていない。

Boras also feels that college baseball coaches must govern baseball at a more pro-active level to keep young baseball players in the game instead of turning to other sports. He also delved into a serious problem in college baseball regarding a lack of certified baseball trainers, strength and conditioning people, doctors and surgeons and how they can be found instead of being forced to use football specific professionals.
さらにボラスは、野球でないスポーツに関心が向いてしまわないよう、野球界が若い野球選手をキープするためには、大学の野球コーチが先々をもっと見越した目線から野球を管理していかなければならないと感じている。
また彼は、資格をもった野球トレーナー、強化やコンディショニングの専門家、医者や外科医の不足からくる大学野球の深刻な問題と、どうしたらアメリカンフットボールに特化した専門家を使うことを強いられるのを避け、そうした専門家を見つけることができるのかについて、徹底した調査を行ってもいる。

"You may think that professional baseball in effect runs baseball," said Boras in front several thousand coaches at the Anaheim Convention Center. "But in my opinion, I believe that we must begin a legacy of college coaches governing baseball. When you think about this, I want to tell you about your role in professional baseball and what you mean to the Major Leagues.
ボラスはアナハイム・コンベンションセンターに集まったたくさんのコーチの前で語った。
「みなさんは、野球を実質的に運営しているのはプロの野球であると、お考えになっているかもしれません。しかしながら、私には、『まず話を始めるべきは、大学のコーチのみなさんによって運営されてきた野球だ』という確信があります。このことについて関心をお持ちのみなさんに、私は、大学のコーチがプロの野球においてどんな役割を果たすべきか、みなさんの存在がMLBにおいてどんな意味をもつのか、話したいと思います。

"In 1980, Major League baseball was a sport that had roughly $400 million in revenue. In 1990, that figure went up to $1 billion. In 2000, it was $3 billion. And today, that figure is $8 billion. A lot of people think that scouting and high school baseball has a great role in this.
「1980年、MLBはおおまかにいって4億ドルの収入をもつスポーツでした。それが1990年には10億ドルに、そして2000年には30億ドルに上昇しました。今日、その額は、80億ドルに上っています。たくさんの人々が、スカウト活動と高校の野球が、この成長に大きな役割を果たしたと考えています。」

"But when you look at the numbers, there are 827 Major League players. Overall, 52 percent of all Major League players were former college baseball players while only 26 percent were signed out of high school. Another 22 percent are international players.
「しかし、数字を見てください。 メジャーには827人の選手がいます。メジャーリーガー全体の52パーセントは、大学野球出身の選手であり、他方、高校出身は26%に過ぎず、あとは海外の選手が22%です。」

"This illustrates what a college coach does in grooming an athlete because there are nearly double the number of college baseball players in Major League baseball compared to high school players. When you bring out the fact that college coaches don’t bring in the top athletes that are available for their programs in the draft, the numbers are even more telling.
「このことで明らかなのは、大学のコーチがアスリート育成においていかなる貢献をしてきたか、ということです。大学出身の野球選手の数は、高校出身の選手に比べ、およそ2倍です。大学野球のコーチが将来ドラフトで指名されるようなトップアスリートを連れてこれていない、などといわれることがあるかもしれませんが、数字はより雄弁に真実を語っています。」

"We found that 79 percent of college first round picks reach the Major Leagues for at least a day.That compared to 62 percent of high school first rounders who reach the Major Leagues for a day which is a 17 percent difference.
「大学出身の1巡目指名選手が、最低1日でもメジャーリーガーになった割合は、79%であることがわかっています。高校出身の1巡目指名選手のメジャーリーガーになる率が62%であるのと比べると、17%の開きがあります。」

"When you look at those players who achieve six years in the Major Leagues and become free agents, you are talking about 42 percent of college first rounders who become six year Major League players. In the draft as a whole, less than one percent of drafted players ever become six year Major Leaguers.The figure for high school first round players is 32 percent who become six year Major League players. There is a 10 percent difference compared to college first rounders.
「またメジャーで6年プレーし、フリーエージェントになった選手でみてみると、メジャーリーガーになった大学出身の1巡目指名選手の42%がフリーエージェントになっています。ドラフト全体で見ると、6年間メジャーでプレーできる選手は、1%以下しかいません。高校出身の1巡目指名選手でみると、6年メジャーでプレーできる選手になれる割合は32%で、大学の1巡目指名選手との間には10パーセントの開きがあります。」
ブログ注:
ボラスは、「FAになれる選手の率において、大卒と高卒では、10%の差がある」と、大卒選手の優位性を強調するわけだが、統計的な多くの観点から見るなら、この主張の根拠はかなり怪しいとしかいいようがない。
例えば、この「10%の差」が、ほぼ毎シーズン決まって生じる有意な差なのかどうか? 年度によって生じる誤差の範囲におさまってしまう「単なる偶然」ではないのか? そして、「10%の差」が生じる原因が、本当に大卒選手が高卒選手より優秀であることにあるのかどうか?
あらゆる点が、何も検証されないまま、断定されている。

問題は他にもある。
「10%の差」とボラスは言うが、メジャーで6年プレーできるのがドラフト指名選手全体の1%以下であるのなら、大卒と高卒の「10%の差」は、選手全体からみると、1%×0.1=「0.1%の差」と、ほんのわずかな差にすぎない。
球団数の多いMLBにおいてはドラフト全体で指名される選手数は、毎年数百人単位に及ぶわけだが、「0.1%の差」というのは、実数としては「指で数えられる程度の人数の差」という意味に過ぎない。


"So when you are recruiting athletes and talking about their choices, college baseball is clearly the best way and highest percentage for an athlete to achieve success in the Major Leagues.
「したがって、アスリートのリクルーティングに携わってアスリートのとるべき選択肢について議論する上において、アスリートがメジャーで成功を収めるための、最良かつ最も確率の高い方法が、大学野球なのは明らかです。」

"If you want to look at it monetarily, elite high school players receive welcome bonuses. But for those athletes who aspire to be the best in the Major Leagues and receive the highest bonuses, it is astounding what players have received right out of college when looking at $6 million signing bonuses.
「お金の面での話をするなら、高校出身のエリートプレーヤーはウェルカムボーナスを受け取りますが、メジャーで最高の選手になって、最も高い契約金を手にするのを熱望する彼らにしてみれば、大学出身選手が600万ドルもの契約金を受け取っていることは、気の遠くなるような驚きです。」

"Gerrit Cole was a first round pick out of high school and then became the first player chosen in the 2011 draft (UCLA). He received nearly double the bonus he was offered out of high school. Anthony Rendon (Rice) was a 27th round pick in high school and became a first rounder out of college. Stephen Strasburg (San Diego St.) and Dustin Ackley (North Carolina) were not drafted out of high school. These athletes received some of the highest signing bonuses in the game out of college.
「ゲリット・コールは、高校生での1巡目指名選手でしたが、2011年にUCLAで全米1位指名選手になり、高校卒業時に提示されていた契約金の、ほぼ2倍を受けとりました。ライス大学のアンソニー・レンドンは、高校では27巡目の指名でしたが、大学では1巡目指名選手になりました。サンディエゴ州立大学のステファン・ストラスバーグはと、ノースカロライナ大学のダスティン・アックリーは、高校ではドラフトされませんでした。これらの選手は、大学を出て野球界でほぼ最高の契約金を得ています。」
ブログ注:
このパラグラフで名前を挙げられている選手は、すべていわゆる「ボラス物件」と通称される、スコット・ボラスが代理人をつとめる選手たち。つまり「自画自賛」である。また
だが、予算削減を目指す昨今のMLBにあって、2012年6月のドラフトでは、契約金の高い大学生を敬遠する傾向も出てきたことに、同年4月にこの講演を行ったときのボラスはまだ気づいていない。
ゲリット・コールは2008年のドラフト1巡目(全体28位)でヤンキースから指名されたが、UCLAに進学。高校生が1巡目指名を蹴って大学に進学するのは、2002年にシアトル・マリナーズからの全体28位指名を断ってスタンフォード大学に進学したジョン・メイベリー・ジュニア以来。

"If you look at $5 million players in the Major Leagues, they must be pretty special players. Not many reach this status. To achieve this level, you must be a very accomplished player. When you look at the numbers, there are 30 college players in the Major Leagues who are making $5 million or more who weren’t drafted until after the 10th round. Mind you, there are only 84 $5 million college players and 64 $5 million high school players in the Big Leagues."
「メジャーで 『500万ドルプレーヤー』 になれたとすれば、非常に特別なプレーヤーにちがいありません。このステイタスに到達できる選手は多くはありません。このレベルに達するには、非常に完成したプレーヤーでなければならないのです。
数字からみると、メジャーリーグには、ドラフトで10巡目までに指名されなかった下位指名の選手で、500万ドル以上稼ぐプレーヤーになれた大学出身選手が、30人もいます。500万ドルプレーヤーは、MLBの大学出身プレーヤーで84人、高卒選手では64人しかいません。」

ブログ注:
全米のアマチュアコーチを聴衆にした講演で、大学卒業選手、特に1巡目指名選手の将来性の高さを印象づけたくてしかたがないボラスは、「大卒の1巡目指名選手が、最低1日でもメジャーリーガーになれる割合は、高卒選手より17%も高い」と指摘している。
つまり、彼は「1巡目指名選手は、モノになる割合が高い」という印象を与えたがっているわけだ。

ところが、その一方でボラスは平行して、「500万ドルプレーヤーになれた選手は、ドラフト下位指名の大卒選手に30人いる」と、ニュアンスの違う指摘をしている。

この2つの平行した指摘は、ちょっと都合がよすぎる。
というのも、ボラスの2つの指摘を、ボラスとは違う観点からまとめるなら、「大卒の1巡目指名選手がメジャーリーガーになれる割合は、高卒よりほんのちょっと高い。だが、だからといって、1巡目指名だから500万ドルプレーヤー、つまり 『長く活躍できる選手になれる』 とは限らない」ということになる。
そして実際、ドラフト1位指名選手で、殿堂入りした選手はいない、というデータもある。

だが、ボラスから選手を買う立場のMLB球団側からすれば、1巡目指名選手に大金を払うのは、「長く高いレベルの活躍をしてくれる高い才能」に対してであって、なにも「メジャーリーガーになれたら、ただそれだけで嬉しい」、とかいうちっぽけな夢に大金を払うわけではない。

大学卒業選手なら10巡目以降の下位指名選手であっても500万ドルプレーヤーになれる、というボラスの主張にしても、下位指名選手であって有力プレーヤーになれる可能性がある理由は、なにも「大卒選手が高卒選手より優秀な素質を持っていることが多いから」とは限らない。
単に「その選手が遅咲きタイプの選手だった」とか、「MLBでの育成が、大学の育成より上手いから」かもしれないのである。

いずれにしても、ボラスの「大卒選手は高卒選手よりも優位である」という主張は、根拠にしているデータや数字に統計的な裏付けが乏しく、また、論理にも矛盾がある。けして高卒選手に対する大卒選手の優位性が明確に示されてなどいない。


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この文章全体からわかるのは、1巡目指名の大卒選手が大金を稼ぐ現状をなんとか維持しようと必死なスコット・ボラスの姿だ。

そもそも、大卒の1巡目指名選手がメジャーリーガーになることができる割合が高いのは、その選手の活躍ぶりと、無関係とまでは言わないが、けして直結してはいない。

たいていの球団では、高卒より高い年齢でMLBに来る大卒選手を1巡目で指名して大金を支払って契約したら、その選手がメジャーで本当に通用するかどうかを試す意味で、また、1巡目選手に払った多額の契約金をムダにしたくないという意味で、ほとんどの場合、一度くらいは必ずメジャーに上げて試すことが多いものだ。

契約金の高いドラフト1巡目指名選手がメジャーリーガーになれるのがほぼ当たり前な理由は、イコール、その選手が才能を発揮してメジャーで大活躍した、という意味とは限らないのである。

だから1巡目指名選手のメジャーリーガーになる率を引き合いを根拠に、「だから大卒選手は、高卒選手よりもメジャーで活躍できる割合が高いのだ」と結論づけるのは、あまりに都合がよすぎる。

繰り返して言うが、
過去、ドラフト1位指名選手に、殿堂入りした選手はいないのである。そして球団がドラフトに期待しているのは、ボラスが主張しているような、統計的にあやしい、矛盾したリクツではない。

June 12, 2012

このところMLBの人種構成と球団の強化やプロモーションの手法をめぐって、参考になるデータを紹介する記事を書いてきている。
基本としてわかっていることは、MLBで、アフリカ系アメリカ人が減少しつつある一方で、ラテンアメリカ系の増加が定着しているという、よく知られた話だが、同じ問題を別の角度から見ると、ドラフトで獲得される白人プレーヤーの質の低下や、ストロイド問題も含まれてくると思っている。
MLBにおけるアフリカ系アメリカ人の減少傾向
元データ:上記グラフは、以下のサイトにあるグラフを、縦軸の示すインデックスがわかりづらいために手直しして流用している。もちろん縦軸の意味は同じ。
What Caused the Decline of African-Americans in Baseball?


MLBにおけるアフリカ系アメリカ人選手の減少の原因について、テキサス大学のロースクール(=法科大学院)、The University of Texas at Austin School of Law(UT Law)で2011年11月に書かれた記事がみつかったので訳出してみる。
UT Lawの発行する定期刊行物は12種類あり、Texas Review of Entertainment & Sports Law(TRESL)はそのひとつ。ロースクールの教授陣が監修しながら、学生たちも積極的に執筆する。

言うまでもないことだが、以下の文章はあくまで、マーケティングの現場にいるわけではない大学のロースクールの執筆者の「個人的見解」であって、いくらテキサス大学が全米有数の大学のひとつだからといっても、この見解がアメリカの代表的意見だと決めつける必要はない。
読む人は自分の蓄積してきた見識に照らしつつ読み、なにがしか参考になればそれでいいし、もちろん批判的に読んでもかまわない。

ブログ主がこの記事を読んで思うことや、付け加えたいことは、下記に示した注釈以外にもいくつかあるが、まずはとりあえず原文を読んで自分なりの感想をもってもらうほうが先決だろう。ブログ側からの注釈は必要最低限に留め、ブログ主の感想や付け加えは、別の記事としてまとめる予定だ。(なお以下の訳文で、太字部分は固有名詞をわかりやすくするためブログ側で添付している。また内容をわかりやすくするため、必要に応じて原文に無い改行を加えた)
とはいえ、元記事には、今の時点であらかじめ指摘しておかざるをえないような、首を傾げる記述がないわけではない。
例えばデトロイト・タイガースについての記述には、いくつかの偏見というか知識不足がみられるし、ステロイドを使った選手が冷遇されることと人種問題とを混同している記述などもみられるから、元記事の全てを鵜呑みにしないよう注意して読んでもらいたい。

だが、全体としてはアフリカ系アメリカ人選手の減少の原因の分析について要領よくまとまっている。
なにより、マイノリティ比率の非常に高い州のひとつであるテキサス州にあるMLB球団が、どういう方向性で球団をディレクションし、どういうコンセプトで選手を獲得し、ファンの支持をどう集め、どう勝者になっているか、という点をわかりやすく書いていることが、今の時代には非常に参考になる。特にscholarship、奨学金についての記述は、日本のスポーツ新聞やブログを読んでいるだけではわからない視点だと思う。

州別・乳児に占めるマイノリティ率州別・乳児に占めるマイノリティ率


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The Decline of African-American Players in Baseball
野球におけるアフリカ系アメリカ人プレーヤーの減少


Posted by Joel Eckhardt
TRESL Staff on November 20, 2011
The Decline of African-American Players in Baseball | TEXAS REVIEW OF ENTERTAINMENT & SPORTS LAW
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University of Texas School of LawのエンブレムIn 2010 and 2011, the Texas Rangers won the first two AL pennants of their otherwise mediocre existence. In both cases, they clinched the pennant with a roster littered with a roughly equal mixture of white and Latino players, with one African-American: 41-year old journeyman relief pitcher Darren Oliver. However, the Rangers do have an African-American manager who America is falling in love with ? the always enthusiastic, hyperactive Ron Washington. While the roster itself has only one African-American contributor, the team leader is a New Orleans-bred African-American baseball lifer who still makes his home in that city’s Ninth Ward.
2010年と2011年、テキサス・レンジャーズはア・リーグを初制覇、そして連覇を果たした。どちらのケースでもレンジャーズは、白人とラテン系プレーヤーがだいたい半々に混成されたロスターで優勝を決めている。アフリカ系アメリカ人といえば、唯一、41歳のジャーニーマンのリリーバー、ダレン・オリバーだけだった。しかし、レンジャーズには、アメリカ中で愛されているアフリカ系アメリカ人監督がいる。常に情熱的で、過剰なまでに活発なロン・ワシントンだ。ロスター自体にアフリカ系アメリカ人の功労者はたったひとりしかいない一方で、ニューオリンズ育ちのアフリカ系アメリカ人で野球に生涯を捧げているチームリーダー(=ロン・ワシントン)は、いまだにニューオリンズの9区に自宅を構えている。

ブログ注:
ダレン・オリバーは、2011年12月30日にFAでトロント・ブルージェイズと契約し、現在はテキサス・レンジャーズの一員ではない。


This construction of an MLB team is less surprising than it probably should be. The MLB Racial and Gender Report Card, issued annually by The University of Central Florida’s Institute for Diversity and Ethics in Sports, has given MLB an “A” grade for its racial hiring practices in each of the last three years. MLB has steadily increased its number of minority managers, coaches, and front office employees. The overall number of minority players is also increasing, largely due to the increase of Latino players from 13% in 1990 to around 27% today. However, this progress comes while the number of African-American players in the game has decreased from 17% in 1990 to a paltry 8.5% in 2011. What has caused this decline?
MLB球団のこうした人種構成が、想像と異なるものであることは特に驚くことではない。セントラルフロリダ大学のInstitute for Diversity and Ethics in Sportsが発行している「MLBの人種とジェンダーに関するレポート」によれば、MLBは過去3年間において、どのシーズンにおいても人種的な雇用慣習において、グレードAの評価を受けている。MLBは、マイノリティの監督、コーチ、フロントスタッフを、着実に増加させ続けてきているし、またマイノリティの選手の総数も、ラテンアメリカ系プレーヤーの増加により、1990年の13%から、今日では27%に大きく増加しているのである。
しかしながら、こうした進歩の一方で、アフリカ系アメリカ人プレーヤー数は、1990年の17%から、2011年の8.5%へと減少している。なにがこの現象をもたらしたのだろうか。

Expense. Baseball is inherently more expensive to play than other sports, because of the cost of equipment and of joining a league. A good bat can cost between $300 and $600, and on top of that, a player needs gloves, batting gloves, and uniforms. Furthermore, traveling teams dominate elite youth baseball (pre-high school), and playing with these teams costs a significant amount in both fees and traveling expenses. Finally, at the collegiate level, NCAA Division I schools only award 11.7 baseball scholarships a year, reduced from 20 in 1981. These costs push young African-Americans towards sports such as basketball and football, which are relatively cheaper to play. This disparity in the costs of playing the respective sports has contributed to the NBA and the NFL being made up of roughly 80% and 70% African-American athletes, respectively, while MLB lags far behind.
費用
野球は、本質的に他のスポーツより費用がかかる。用具やリーグへの加盟費があり、例えば、良質なバットは300ドルから600ドルはする。トップクラスの選手ともなれば、バッティング専用の手袋だって必要だし、ユニフォームも要る。おまけに、チームの遠征は、高校入学前のエリートユースにとってはとても重要で、こうしたエリートチーム同士の試合には、双方に謝礼や遠征費の大きな負担が必要となる。大学レベルでは、NCAA1部に属す大学でも、野球奨学金は、1981年に20から引き下げられために、年に11.7しかもらっていない。
これらのコストの高さは、若いアフリカ系アメリカ人が、相対的にプレー費用の安いバスケットとかフットボールのようなスポーツに向かう要因になっている。こうしたスポーツごとの「コスト格差」は、NBAやNFLのプレーヤーのおよそ70%から80%が、アフリカ系アメリカ人で構成され、他方MLBでは相対的にアフリカ系が少ない、という状況を生む一因になっている。

ブログ注:
NCAA Division 1に属するのは、Vanderbilt, Virginia, South Carolina, Florida, Arizona State, Texas A&M, Oklahoma, Texas, Florida State, North Carolina, TCU, Georgia Tech, Arkansas, Cal State Fullerton, Fresno State, LSU, Clemson, Arizona, Stanford, UCLA, UC Irvine。
Baseball Scholarshipについての記述で、「NCAA Division 1で11.7の奨学金」というのは、D1のチームあたり、年ごとに11.7人分の奨学金の給付がある、というような意味。Division 2では、9である。
アメリカの奨学金は返済の義務がない。それだけに奨学金の給付には、たとえアマチュアスポーツとはいえども、厳しい条件がつく。投手の給付条件には、身長体重の他に、右投手85-95MPH、左投手80-95MPHという「球速制限」が存在しており、右投手は最低でも85マイル以上のスピードボールを持っていないと、奨学金を受けられない。同様に、野手では60ヤード走(=約54.864メートル。日本でいう50メートル走のようなもの)に「6.5-6.9秒」というスピード制限があり、足の遅い野手は奨学金を受けられない
ちなみにFootball Scholarshipは、なんと年に1チームあたり85もあり、野球とフットボールの処遇に非常に大きな格差があるが、それをそのまま2つのスポーツの人気の差ととらえるのは間違っている。


Marketing. Another factor causing the decline of African-American baseball players is the way the game markets itself. Curtis Granderson, an African-American, All-Star center fielder for the Yankees, says that when he played with Detroit, the team displayed white players on all of their billboards around town, despite the presence of black stars like Granderson, Gary Sheffield and Jacque Jones. Other All-Star-caliber African-American players like Ryan Howard and Carl Crawford cannot break into the household name category. Furthermore, Barry Bonds, arguably the biggest African-American baseball star of his generation, is mostly vilified rather than celebrated as a result of his suspected steroid use. As a result, baseball has chosen to mostly disassociate itself from Bonds since his retirement from the game. Young black athletes need star players that are both adequately marketed and look like them in order to retain their interest in baseball, and there simply are not enough of those players today.
マーケティング
アフリカ系アメリカ人の野球選手が減少するもうひとつの要因は、マーケッティング手法そのものにもある。
カーティス・グランダーソンは、ヤンキースのセンターを守るオールスタープレーヤーだが、彼がいうには、彼のデトロイト時代には、チームにグランダーソンや、ゲイリー・シェフィールドジャック・ジョーンズのような黒人スターがいたにもかかわらず、チームが街中の広告看板にディスプレーするのは、すべて白人プレーヤーだった。
他にもライアン・ハワードカール・クロフォードのようなオールスターレベルの能力をもつアフリカ系アメリカ人プレーヤーがいるが、彼らはいわゆる「有名人」カテゴリーに入ることができていない。
さらにバリー・ボンズは、彼の世代では最大のアフリカ系アメリカ人スターだが、ステロイド使用疑惑の結果、彼は祝福を受けるより、けなされることがほとんどだ。結果としてボンズがゲームから遠ざかったとき、野球界は、彼との関係の大半を断絶することを選んだ。
若い黒人アスリートの野球に対する関心を維持するためには、市場価値があり、また彼ら自身との共通性を感じさせる黒人スタープレーヤーを必要としているわけだが、今の時代、そうした黒人スターは不足する傾向にある。

ブログ注:
どうもこのチャプターは、元記事の著者が誤解している部分が多い。
バリー・ボンズのようなステロイド使用選手が冷遇されるのは、薬物使用がアンフェアだからであって、彼がアフリカ系だからではなく、人種問題とは関係ない。言うまでもないことだが、2つの異なる問題を混同してはいけない。
またデトロイト・タイガースについて一部書かれたこのチャプターを読んで、あらぬ偏見が生まれることを望まない。
「マーケティング手法上の問題」を人種問題にすりかえる必要は全くないし、また、原著者は、シェフィールドやジャック・ジョーンズについて、ステロイド問題や期待外れに終わった成績など、「書き漏らしている点」が多々あり、デトロイト・タイガースがこれらのプレーヤーの顔写真を街中に張り出さなさなかったからといって、シェフィールドやジャック・ジョーンズを人種的な理由で冷遇したと断ずることはできない。
たしかにタイガースという球団の性格は、ジャッキー・ロビンソンがアフリカ系アメリカ人として初めてMLB入りして以降、MLBのプレーの質が向上していく中でも、アフリカ系アメリカ人選手の入団を拒み、長期低迷を招いたといわれる球団ではあるが、以前データを挙げたように、人種構成には、州によって大きな差異があるため、必要とされるマーケティングの方向性は、州ごとに異なる。
「州別の1歳以下の乳児に占めるマイノリティ率」をみてもわかるとおり、アメリカ西部に比べ、アメリカ東部はマイノリティ比率が相対的に低い。そうした西部と異なる人種構成をもつ東部にあっても、グランダーソンの現在の所属球団ヤンキースのあるニューヨークは、多様な人種から構成される都市、東部でも特殊な州であり、タイガースのフランチャイズ、ミシガン州とは、マーケティングの前提条件が異なる。
名前の挙っているゲイリー・シェフィールドは、バリー・ボンズと同じステロイダーで、バルコ・スキャンダルで名前が挙がり、2007年12月に発表されたミッチェル報告書にも名前が載っている。また成績も、期待されてヤンキースから移籍してきたが、デトロイトでの2シーズンは怪我がちで、期待外れに終わっている。そういう選手を、球団がマーケティングの中心に据えるわけにはいかない。
またジャック・ジョーンズは、デトロイトが生え抜きのベネズエラ人ユーティリティ、オマー・インファンテを放出してまで獲得したスラッガーだが、打率.165というあまりに酷い成績のせいで、2か月もたずに戦力外になってしまった期待外れのバッターで、同じ年の6月にはマーリンズでも戦力外になるほどであり、なにもジョーンズはアフリカ系アメリカ人だからという理由で冷遇されたわけではない。


Economics. An under-discussed factor is the evolution of the economics of the game. A black athlete who grows up in America may not enter into the MLB draft until he’s 18. A player picked in the first round of the draft (the only round where a player picked has better than a 50-50 chance of playing in an MLB game at some point) receives an average signing bonus of over $2 million. Meanwhile, most Latin American players sign with a major league team at age 16 for a six-figure contract. Only recently did the elite-level Latino players begin receiving seven-figure deals. As a result of both the age restriction and higher signing bonuses in America, teams sign three to four Latin American players for every young African-American athlete. These are simply “very pragmatic business decisions” according to Jimmie Lee Solomon, the MLB executive vice president for baseball operations.
球団経営
あまり議論されない要因として、球団経営上の進化という要因もある。アメリカで育った黒人アスリートは、18歳になるまでMLBドラフトにはかからない。ドラフト1巡目(=50%以上の確率で、どこかの時点でメジャーでプレーするチャンスのある唯一の指名順位)で指名された選手は、平均200万ドルの契約ボーナスを得る。他方、ラテンアメリカの選手は16歳で、6ケタ(six-figure contract)、つまり10万ドル単位の専属選手契約にサインする。近年では、エリートレベルのラテンアメリカプレーヤーに限っては、7ケタ、100万ドル単位の契約を結ぶ。アメリカ国内での年齢制限と高い契約金、その両方の要因の結果として、球団側は若いアフリカ系アメリカ人アスリートと契約するかわりに、3人か4人のラテンアメリカ系選手と契約することになる。これらは、MLBの運営部門の副責任者であるジミー・リー・ソロモンによれば、単に「非常に実利的なビジネス上の判断」だ。
ブログ注:Jimmie Lee Solomon
Jimmie Lee Solomonは、MLBで、人材発掘組織であるベースボールアカデミーをラテンアメリカに設置するプロジェクトを起こしたやり手の人物。ジミー・ソロモンは2010年6月に既にアメリカおよびプエルトリコのベースアカデミーの総括副責任者に転じているが、元記事を書いた人物はそれを認識せず記述している。現在MLBのExecutive Vice President of Baseball Operationsという職にあるのは、元ヤンキース、ドジャース監督のジョー・トーリ
Jimmie Lee Solomon - Wikipedia, the free encyclopedia
Solomon's biggest project is the construction of baseball academies in urban areas.Currently there are academies in Venezuela, Puerto Rico, Dominican Republic and throughout Latin America.


This brings us back to the Rangers, who were well-known to be in dire financial straits in the years leading up to their first pennant in 2010. While the Latin-American players on Texas’ current roster are mainly the product of shrewd trades, the team’s commitment to signing and developing young Latin players is shown in the makeup of the team’s prospects: in both 2010 and 2011, 50% of the Rangers’ top 10 prospects were Latin-born players. Half were white. None were African-American. The Rangers are now generally considered to be among the smartest teams in baseball, and one reason is their harvesting of cheap talent in Latin America while passing over young black players who cost more and are subject to more stringent labor restrictions. As long as this model proves a winner, one can expect it to be mirrored by other organizations, and the number of African-Americans in the game may further decline as a result.
最初のリーグ優勝を遂げた2010年に、非常に切迫した財政難にあったことで有名だったレンジャースについて、あらためて考えてみよう。
テキサスの現在のロスターにいるラテンアメリカ系プレーヤーは、主に賢明なるトレードの成果だが、チームが若いラテンアメリカ系プレーヤーとの契約と育成に力を注いでいることは、2010年と2011年、両方の年度においてチームのトップ10プロスペクトの半分以上が、ラテンアメリカ系プレーヤーで占められていることに、如実に表れている。アフリカ系アメリカ人はひとりもいない。
レンジャーズはいまや、野球界における最も賢い球団と広く考えられているが、その理由のひとつは、ラテンアメリカでコストの安い才能を集める一方で、コストがより高く、また、労働制約条件もより厳格な若い黒人プレーヤーをスルーしていることにある。こうしたチームづくりモデルが勝者であり続ける間は、他球団も真似をするだろうから、野球におけるアフリカ系アメリカ人の減少は、結果的に今後さらに加速するかもしれない。

2012カレッジ・ワールドシリーズ本戦に出場する8校が下記のように決まった。

Arizona 16回目の出場 優勝3回
UCLA 4回目
Florida 8回目
Florida St. 21回目
Stony Brook 初出場
South Carolina 11回目 優勝2回
Kent St. 初出場
Arkansas 7回目


2012カレッジワールドシリーズ本戦 Bracket
NCAA Division I Baseball Championship Bracket - NCAA.com


5月29日時点でのNCAAランキングは、以下の通りだったが、シーズン終盤にランキングを急上昇させてきたBaylor、Oregon、ルイジアナ、Purdueがスーパーリージョナルで消えてしまい、本戦に出場できたのは結局、もともと春先からずっとランキング上位に残り続けていたフロリダ、フロリダ州立と、シーズン終盤にランキングトップに上り詰めたUCLA、3連覇を狙うサウスカロライナなど。
ランキング上位3校が本来の強さを発揮してダークホースを退けた一方で、Stony Brookがリージョナルの最下位シードから勝ち上がって、ルイジアナに逆転勝ちするなどの波乱のうちに、2校が初出場をもぎとり、全体としては出場回数の少ない大学の多いフレッシュな顔ぶれになった。

1. UCLA  (9位→2位)
2. Florida
3. Florida St.
4. Baylor  (23位→4位)
5. North Carolina
6. Oregon  (16位→5位)
7. LSU  (14位→7位)
8. Purdue
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年5月30日、いよいよ2012カレッジ・ワールドシリーズの組み合わせが決定。ランキング上位校は今のところ、UCLA、フロリダ、フロリダ州立、ベイラーなど。


Stony Brookは、ニューヨーク州立大学ストニーブルック校のことだが、記念すべき初出場に湧きかえっていて、大学の公式サイトのトップページのヴィジュアルも、過去6回優勝の古豪ルイジアナを下して喜びを爆発させてグラウンドに折り重なっている選手たちの写真にさしかえられ、喜びぶりが伝わってくる。(それにしても・・・Shock The WORLD!とはね。初出場が嬉しいのはわかるが・・・笑)
Stony Brook University, Stony Brook, New York

SHOCK THE WORLD! Baseball advances to College World Series after beating LSU 7-2 - Stony Brook Official Athletic Site
CWS出場を喜ぶストニーブルック大学の公式サイト


2012CWS初出場を果たしたStony Brookの記念写真

もちろん、ニューヨークタイムズ、ニューヨークデイリーニューズも、この快挙を記事にした。
Stony Brook Defeats L.S.U. to Advance to College World Series - NYTimes.com

Stony Brook earns first trip to College World Series with Game 3 victory over LSU Tigers - NY Daily News
記録によると、かつてニューヨーク大学がカレッジワールドシリーズに2度出場しているが、最後の出場は1969年のことで、おそらく40数年ぶりのニューヨークからのCWS出場なんじゃないだろうか。
College World Series - Wikipedia, the free encyclopedia



もうひとつの初出場校、オハイオにあるKent State Univercityケント州立大学の喜びかたは、Stony Brookに比べると控えめだが、それでもやはり大学公式サイトのヴィジュアルは野球に差し替わっている。
Kent Stateは、かつてヤンキースのキャプテンをつとめ、現役中の1979年8月、故郷オハイオに自ら操縦して帰るセスナ機の事故で、32歳の若さで亡くなったサーマン・マンソンの出身校でもある。彼も草葉の陰でさぞかし喜んでいることだろう。
Kent State University, A Top Ohio University
喜びを爆発させてダイブするKent St.のプレーヤーたち



ちなみに、野球奨学金、Baseball Scholarshipが受けられるのは、NCAA Division 1のチームで11.7
NCAA Division 1に属するのは、Vanderbilt, Virginia, South Carolina, Florida, Arizona State, Texas A&M, Oklahoma, Texas, Florida State, North Carolina, TCU, Georgia Tech, Arkansas, Cal State Fullerton, Fresno State, LSU, Clemson, Arizona, Stanford, UCLA, UC Irvine。
太字で示したのが、今回カレッジ・ワールドシリーズに出場した8校のうち6校が、11.7の奨学金を得ているNCAA Division 1のチームとなっている。

この「奨学金」という観点からも、Stony BrookKent St.という、2つの「NCAAの上位ディビジョンに属していない大学」のカレッジ・ワールドシリーズ進出が、いかにレアな出来事なのかは、こうした点からもわかる。
College Baseball Scholarships. Baseball Recruiting.

ネット掲示板などでよく使われる常套句のひとつに、「見えない敵と戦う」という言葉がある。


使い方としては、主に疑問形で使われる。
例えば、「なにかを批判している人間」に向かって、「見えない敵とでも戦ってるのか?」などという具合に、揶揄(やゆ)するのに使う。単に、からかっているだけで、反論があるわけではない。

表面ヅラだけを見ると、「おまえのしている批判は、単に自分自身で作り出した幻影と戦っているだけなのであり、それはただの幻想にすぎない」と諭しているように見えるから、実に論理的な説得じゃないか、とか思うかもしれないが、実際には、そういう使い方をされることは、ほとんどない。
たいていの場合、「見えない敵とでも戦ってるのか?」と発言したがる人間の真の目的は、相手を軽くいなしているかのような印象を周囲にみせつけることによって、手間をかけることなく、むしろ手抜きして、その批判がいかに無意味であるかを見せつけておこう、という、底の浅い論理的なテクニックであることが少なくない。
まぁ要するに、情報操作のための常套句のひとつだ。


ブログ主はむしろ、いま世界がはまりこんでいる21世紀という、このやっかいな世界というものは、むしろ「見えない敵と戦う」のが当たり前のバトルフィールドとして誕生していると、常に思ってブログを書いている。


例えば、1999年の映画 『マトリックス』。
(関係ないが、この映画がジャン・ボードリヤールの著書『シミュラークルとシミュレーション』を参考にした、という意見もあるようだが、ブログ主はむしろ、フリードリヒ・ニーチェの『ヴェール』、あるいはらっきょの皮を1枚1枚剥いていくようなジャック・デリダ的論理構造を元ネタに発想されていると感じる)

matrixという単語は、もとは『子宮』を意味するラテン語からきている。映画「マトリックス」の根底には、「環境とは、『情報という羊水』で満たされた、一種の『誕生前の子宮』である」という見解がある。
キアヌ・リーブス演じる天才クラッカー、ネオが巻き込まれる「見えないものに対する戦い」は、まず「人工の情報と情報操作で満たされた子宮」であるカプセルから抜け出すことから始まる。
カプセルから出て「真の意味の誕生」を迎えたネオのその後の戦いは、実にシンプルで、「カプセルから抜け出さなければ永遠に見ることのなかった本当の世界=リアルを、いかに可視化していくか」という、その1点に尽きている。





よく、この映画をバーチャルリアリティとのからみで説明する人がいるが、この映画のアンチ・バーチャルな立場は、1990年代やたらと流行したバーチャルリアリティ礼賛とは、根本的にスタンスが違う。


例えば資格試験の初級シスアドの模範解答などを見ると、バーチャルリアリティについて、「コンピュータで模倣した物体や空間を、コンピュータグラフィックスなどを使用して実際の世界のように知覚できるようにすること」などと模範解答が書いてあるわけだが、そんな回答では、「社会環境のもつ仮想性の理解」としては、いくらなんでも底が浅すぎる。

人間を取り囲む情報空間というものは、もともとバーチャルだ。別に、手間暇かけてコンピューター・グラフィックを大量に生産し、人間を取り囲めるほどの仮想空間を作らなくても、紙だろうが、言葉だろうが、ヒットソングだろうが、ステマだろうが、材料の質にあまり関係はない。
人間が所属する「環境」というものは、共有されればされるほど、常に模擬的で曖昧な関係、錯覚などが大量に含まれてしまうのが、むしろ普通で、なにもインターネットとPCが登場してはじめて、世界がバーチャルな空間に変わったわけではないのだ。

人間の感受性そのものに、もともとバーチャルな特性が備わっているのだから、たいていのメディアは、その人間の感覚の特性を逆手にとって利用しながら存在している。


映画 『マトリックス』の立場が「アンチ・バーチャル」だからといって、アンチ・コンピューターを標榜しているわけではない。
『マトリックス』は、なにも「コンピューターを全て廃棄して、原始に帰ろう」と言っているわけではないし、また、「他人は信用するな」とか、「社会は欺瞞に満ちているから破壊せよ」と言っているわけでもない。
むしろ、ある意味コンピューターくらい人間的な道具、人間の特性をうまくつかまえた道具もないわけで、そこを勘違いしたままのクセに、あらゆる物事に白黒をつけて話しているつもりのヒトが、いつまでたってもいっこうに減らない。
Apple logo
例えば、Appleほど、人間らしくてオリジナリティのあるパソコンを開発したメーカーはないし、だからこそ彼らは商業的に大成功をおさめたわけだけれども、彼らの着眼のオリジナリティを執拗に批判したがる人に限って、奇妙なことに、「自分こそは、常にオリジナリティを大事にしてきた」と自称したがる人であることが多い。
「電気がもったいないから、野球を全て中止せよ」などと、根拠もなしに激しく主張したがる人にしても、自分自身では「ヒューマニズム的な発言をしている」と固く信じこんでいる。(こういう安易なヒューマニズムが18世紀あたりの発明品であることは言うまでもないが、短く説明するのは難しい)



そもそもわかっていなければならないのは、
かつて「世界」というものが「個人からは、見えないのが当たり前」だった、ということである。

「見えない」からこそ、新聞や書籍が万能であると思われ、また世界の良心の代表であると思われていたかつての「紙の時代」には、「特別なチャンスを持てた個人」、例えば、社会学の学者や、ジャーナリスト、作家、旅行家、探検家、宗教家などが、自分のいる社会を抜け出して、外の世界を観察し、「外界のありさま」を紙の上で語ることで、特殊な地位を得ていた。だからこそ、かつて「旅」は、布教やジャーナリズムであると同時に、征服と領土拡張のスキルでもあった。

例えば、「小説家」という仕事でいうと、江戸文化の影響がそこらじゅうに残っていた明治時代中期の日本には、まだ「近代的な家族関係」などというものは存在していなかったが、こと純文学作家だけは別で、まだ庶民の海外渡航が難しかった時代にあって、夏目漱石であれ、森鴎外であれ、欧米文化に触れる機会を持てた彼らは、「まだ開国したばかりの日本には存在しない、近代的な人間関係というもの」を想像して、作品という人間関係の図式を書きあげた。庶民である読者は「彼らの私小説などに表現された、いかにもありそうな人間関係。だが、実は、まったく架空の、近代的な日本の人間関係や家族関係というもの」を、私小説として味わいながら、近代的な人間関係を「バーチャルに学習」し、さらに、現実の暮らしにおいて「近代を実演してみせようとした」のである。

夏目漱石

つまり、実在する人間関係を写し取って小説という作品が書かれたのではなくて、むしろ逆で、作品に描かれた仮想の近代生活を、現実生活のほうが模倣することで、日本の近代が出来上がっていったのである。

テレビアニメの「サザエさん」なども、まさにこの「バーチャルな近代の学習行為」にあたる。
大正期に入り、現実社会に近代的な人間関係が根付き始めると、全盛期の純文学に期待された「人々が学習するための近代的な家族空間を建築する役割」が消滅し、純文学の社会的必要性が消滅していったことはいうまでもない。ただ、その後も 「テレビで 『サザエさん』を見て、『家族の幸せ』とはどういうものか習ぶような『学習習慣』」 は日本の人々の間にこっそりと残された。


1999年に公開された『マトリックス』にいまも存在価値があると思うのは、今のようなネット社会の誕生を10数年も前に予告したとかいう、くだらない意味ではなくて、むしろ「見えない相手との戦いのはじまり」を告知していた、という点にある。
当時提示された「見えない敵との戦い」の手法は実に単純で、「安易に信じこむのを止めるところから始める」というものだったが、そのシンプルさの有効性は、いまなお輝きを失っていない。

『マトリックス』が出来た1999年は、日本で「個人が、自分だけのためのウェブサイトを作ることのできるツールの全てが出揃った時期」にあたっている。
最初はあくまで個人から他者への情報発信だけがメインだったが、この流れはやがて個人同士がネットでつながることを目的にする流れを生んでいき、mixi、ツイッター、フェイスブックが生まれ、個人のつぶやきとマスメディアはより等価な立場になっていく。


かつて「紙の時代」には、「見えない敵と接触する」ための手段は、ごくごく限られた人に可能だった。だからこそ、「世界の記述」は、紙から得られる知識を広範にもつとともに、並外れた想像力や行動力を持った「特別な個人」だけに可能な、特別な仕事だった。
それにくらべて、「ネット社会」は、むしろ、「誰でも、全体を観ようと思えば、端っこくらい、見えなくもない便利な世界」であり、近代的な家族関係の現実社会への定着が、私小説の必要性を抹殺したのと同じように、ネットは、かつて隆盛を誇った「紙の時代」を終わりにさせようとしている。もはや学者や新聞や作家のいうことだけを鵜呑みにする必要はどこにもない。言いたいことは、自分で調べ、自分で考え、自分で発言すればいい。


だが、そのかわり、困ったことがある。
個人はいまや、かつて社会学の学者や、ジャーナリスト、作家、旅行家、探検家だけが担っていた「見えない世界との戦いや、世界の記述」という責任の重さを、個人の肩に背負わされるようになってきているからだ。
野球でいえば、スポーツジャーナリスト風情や評論家程度の話をすべてマトモに受け取る必要など、どこにもない時代だとは思うが、そのかわり、自分なりの意見を発言しようと思えば、山積みになっている情報から自分なりの基準や根拠を編み出す必要はある。

便利なことに、少なくともネットには、情報だけはいつでも誰でもアクセスできる状態で目の前に山積みされているわけだから、氾濫する情報の中から「知見という織物を編み上げる技術」さえあれば、誰でも意味のある情報を生産できる。(例えばこのブログ程度のことは、ネットに落ちている以上の素材など、まるで扱ってないのだから、書こうと思えば、誰でも書くことができる

いまや問題なのは、情報収集量の多さではなくて、「情報を編む視点の独自性」や「情報の編みかたの上手さ」、そして「性格のしつこさ」だ(笑)
「見えない敵」と戦ってみることは、自分の置かれた場所や、自分のポジションについて理解を深め、また、つまらない人間に騙されないようにする行為でもあるから、誰もが、大いに調べて、データとデータの間に自分だけの「つながり」をつけて、好き放題に意見を言えばいい。


こうしていま個人は「かつて見えなかったものを、見ようとする行為」を新たに課せられ、日々戦っている。
何もしないで下手糞な批判ばかりしている「情報ニート」に、そのめんどくさい日常を「見えない敵と戦っている」などといちいちうるさく言われる筋合いなどない。
どうせ的はずれなのがわかりきっている他人の話やマスメディアなど読んでいるくらいなら、自分で何か書いたほうがマシな時代なのだ。

Reality or Truth

捕捉:
いろいろと調べてみたにもかかわらず、残念ながら詳細がわからずじまいなのだが、現在、マトリックス3部作、および、ターミネーターについての著作権については、アメリカでの6年にもわたる長い裁判を経て、作家・脚本家Sophia Stewartなる人物の“The Third Eye”という作品にある、ということになっているようだ。
たいていの有名人にはWikipediaに項目があるものだが、どういうわけか、このSophia Stewartの項目がみあたらない。そして、なぜひとつの作品が2つの映画の原作として著作権を主張できたのかについても、ウェブ上に説明がほとんどみあたらない。いちおう注意書きとして記録しておく。
UPDATE: Matrix & Terminator Creator Sophia Stewart Won Landmark Trial | Clutch Magazine

Sophia Stewart filed a $150 million dollar malpractice lawsuit against her former attorneys | New York Paralegal Blog

Black Author wins Copyright Case for Matrix movie « Jason Skywalker's Blog

June 10, 2012

猪口日本では節句それぞれに独特の行事がある。季節や区切りというものを意識しながら暮らしていくのが、四季の推移の中で暮らしていく日本の暮らしというものだ。
たとえば新しい季節の始まりの日(立春・立夏・立秋・立冬)の前日を節分といい、季節の変わり目には邪気が現れるともいわれ、それを追い払う為に豆がまかれたりする。
変わり目は単なる通過点でしかないのは確かだから、大つごもりのように丸めた餅を飾るまでのことを毎度していては大袈裟だが(笑)、必要と感じたならお払いしてもいい。節目にお払いをする行為はきちんと日本の古式にかなったふるまいだからだ。

もちろん祝いたいなら誰に遠慮することなく
好きなだけ祝えばいい。
ただ、なにも祝うだけが節目ではない。
区切り、というものを、何事もなく無事にやり過ごせることも
とても大事なことなのだ。


イチロー、2012年6月9日のドジャース戦で、クレイトン・カーショーから初回に打った今シーズン66本目のヒットで、日米通算安打は3772本。これで順調にハンク・アーロンの3771本を越え、あとはタイ・カッブピート・ローズだけが上にいる。

Los Angeles Dodgers at Seattle Mariners - June 9, 2012 | MLB.com Classic

2012年6月9日イチロー日米通算安打3772本ハンクアーロン越え


さあ。
酒を地に撒いて邪気を払ったら、ひとくち、口に含んで
新しい目標に出発だ。

土俵開き


combined no-hitterが達成された2012年6月8日ドジャース戦の3本のヒットを加えると、イチローの今シーズンのヒット数は65本。

日本時代の9シーズン1278本、MLBでの2011年までの11シーズン2428本を加えた日米通算20シーズン3706本に、今シーズンの65本を加算し、合計は3771本。

この3771本は、MLB歴代3位のハンク・アーロンの本数と同数だ。


イチロー自身が日米通算記録については「もういいんじゃないですか」とコメントしているのは、たしかにその通りだから、ハンク・アーロンのヒット数に日米通算で並んだことについて、どうせ通過点でしかないこともあるし、あえて大騒ぎする必要もないとは思うが、それにしたって、よくここまで到達したものだと、感慨を抱くくらいは許されていいだろう。


日本時代の9シーズンの平均ヒット数は、ちょうど142本。
そしてMLB11シーズンの平均ヒット数は、220.72本。

210安打した1994年は、1試合あたり、1.6154
262安打した2004年は、1試合あたり、1.6273
日米問わず、1試合当たり約1.6本。不思議な一致である。


MLBのみでの通算ヒット数の目標は、殿堂入り選手では、レジー・ジャクソンの2584本(21シーズン)を今シーズン中に抜けるかどうかという感じだが、もちろんこれも単なる通過点。
来シーズン以降、ジミー・フォックス2646本(20シーズン)、テッド・ウィリアムス2654本(19シーズン)、ルイス・アパリシオ2677本(18シーズン)、ルー・ゲーリッグ2721本(17シーズン)、ロベルト・アロマー2724本(17シーズン)などが次々にターゲットに入ってくる。

だが、イチローがMLBのキャリアが、まだ12シーズンであることを考えると、本当の当面のライバルは、たった15シーズンで2812本を打ったジョージ・シスラーの「ヒットを生産する速度」かもしれないと思ったりもする。

そのシスラーでも、
シーズンあたりのヒット数は、187.46本。

MLBにおけるこれまでの11シーズンで、平均ヒット数220.72本というイチローの「ヒット生産スピード」が、いかにずば抜けているかが、非常によくわかる。

スポーツ・イラストレイテッドのJoe Posnanskiが2010年に書いたコラムを読めば、日米通算の数字といえども、ことイチローに関してだけは、たとえアメリカのスポーツライターとはいえど、一目置いていることがよくわかると思う。
Seattle Mariners' Ichiro Suzuki is one-of-a-kind player - Joe Posnanski - SI.com

ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2010年3月26日、The Fielding Bible Awards選考委員で、2007年CASEY Awardを受賞しているスポーツ・イラストレイテッドのJoe Posnanskiがイチローを絶賛した記事の翻訳を読んでみる。

June 09, 2012

2012年6月8日 combined no-hitter達成の原動力ミルウッドの力投

いや−、珍しいゲームを観た。
combined no-hitter、つまり、複数の投手によって達成されるノーヒット・ノーランだ。

投げたのは、先発ケビン・ミルウッド、ファーブッシュ、プライアー、ルートキー、リーグ、そしてウィルヘルムセン。キャッチャーはヘスス・モンテーロ

シアトルは7回裏のイチローのヒット、盗塁、イチローを帰したカイル・シーガーのタイムリーであげた、いわゆる「イチシガコンビ」の虎の子の1点を守り抜いた。
こういう「打って盗塁するスピードスター、イチロー」が、打順も含めて、やはり本来のイチローのイチ(位置)だ。
Los Angeles Dodgers at Seattle Mariners - June 8, 2012 | MLB.com Box

USA Today : Six Mariners pitchers combine for no-hitter

動画:Baseball Video Highlights & Clips | LAD@SEA: Wilhelmsen completes the combined no-hitter - Video | MLB.com: Multimedia

球審は、先日マリナーズが完全試合を食らったときと同じ、Brian Runge。そう。イチローがベースの脇にバットで線を引いて、MLBで初の退場処分にさせられた、「あの球審」だ。(ちなみにBrian Rungeは、MLB有数の「高めをまったくストライクコールしない球審」)
Brian Rungeがノーヒッターゲームで球審をつとめたのは、これが3度目。(2009年7月10日Jonathan Sanchez、2012年4月21日Philip Humber。ちなみに最高は、Frank O'Loughlinの6回)
また、ESPNなどによれば、同一シーズンに同じ球審で2度のノーヒッターは、1990年のDrew Coble以来。
Mariners take unusual route to no-hitter - Stats & Info Blog - ESPN
完全試合とcombined no-hitterの両方で球審だったBrian Runge

1シーズン2度のノーヒッターをコールした球審

Bradley, Foghorn (1880)
Walsh, Mike (1882)
Valentine, John (1884)
McLean, Billy (1884)
Gaffney, John (1888)
Lynch, Tom (1892)
O'Loughlin, Frank (1905)
Connolly, Tommy (1908)
Brennan, Bill (1915)
Nallin, Dick (1917)
Dinneen, Bill (1923)
Schwarts, Harry (1962)
Wendelstedt, Harry (1968)
Deegan, Bill (1977)
Coble, Drew (1990)
Runge, Brian(2012)

同一ピッチャーに2度のノーヒッターをコールした球審
Ed Vargo for Sandy Koufax, 6/4/1964, 9/9/1965
Eric Cooper for Mark Buehrle, 4/18/2007, 7/23/2009


動画:記録達成直後のミルウッド@ロッカールーム
女性インタビュアー「ウイニングボールはどうするんですか?」
ミルウッド「ボールはオレのじゃない。他のピッチャーのさ」
女性の質問に照れる無口なミルウッド親父であった(笑)
Baseball Video Highlights & Clips | LAD@SEA: Millwood talks about Mariners' no-hitter - Video | MLB.com: Multimedia(下のビデオは、このリンクとは別のもの)


リーグ、ファーブッシュ、ルートキーのインタビュー



シアトル・マリナーズでノーヒット・ノーランが記録されたのは、これが3回目。1990年6月2日のランディ・ジョンソン(対デトロイト・タイガース)。そして、1993年4月22日のクリス・ボジオ(対ボストン・レッドソックス)。



またMLB全体で、この珍しい記録combined no-hitterが達成されたのは、10回目
前回9回目の達成は、2003年6月11日アストロズ(6投手 先発ロイ・オズワルト 対ヤンキース)。また、マリナーズ自身も、1990年4月11日にエンゼルスにcombined no-hitterをやられた経験がある(2投手 先発マーク・ラングストン)
List of Major League Baseball no-hitters - Wikipedia, the free encyclopedia


それにしても、この記録が球団にとって大きいのは、記録としての価値だけではなくて、途中6回まで投げていてノーヒットノーラン継続中だったケビン・ミルウッドが、不本意にも、太ももの付け根の故障でマウンドを降りざるをえなかったにもかかわらず、そのミルウッドの残した夢を、他の5人のピッチャーが守りぬいて実現させたことだろう。
これこそが野球だ。おめでとう、シアトル・マリナーズ。


ちなみに、MLB公式サイトは、珍しい記録の生まれそうなこの試合を途中から急遽放映していた。そして、それを見ていたヤンキースのマーク・テシェイラのコメント。


タコマ・ニューストリビューンで、ワシントン大学のフットボールとバスケットのビートライターをしているRyan Divishのお祝いのメッセージ。


元ガンズ・アンド・ローゼスのダフ・マッケイガンからのコメント



注意してほしいのは、以下に示す話が、アンパイアの判定がいかにいい加減でブレるか、というサンプルを残す目的で書くのではないことだ。肩を壊して球速の落ちたメッツ出身のジェイソン・バルガスもそうだが、様々な理由によって球威が失われたピッチャーにとって、「バッターのインコースを突く」こと、そしてコントロールが、いかに生命線であるかを示しておきたいだけのことだ。


サブウェイシリーズは、もちろん今でこそインターリーグのヤンキース対メッツ戦をさすわけだが、歴史的にみるなら、かつてニューヨークに本拠地を置いていたチームといえば、1958年に西海岸に移転したドジャース、またはジャイアンツなわけで、細かいことを言わせてもらえば、本来のニューヨーク対決は、ドジャースかジャイアンツがかつての故郷ニューヨークに戻ってきてヤンキースとゲームをやることのほうが、よほど由緒がある、という部分がなくもない。(現実には、黒田とラッセル・マーティンの元ドジャースコンビが、ヤンキース側のバッテリーだったりした)
特に、20世紀初頭にヤンキースとの間で本拠地ポロ・グラウンズの使用をめぐるイザコザのあったジャイアンツが、ニューヨークに戻ってきてゲームをやるのは、なにか1世紀にもわたる因縁試合じみていて面白い(笑)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年3月21日、1958年ドジャース、ジャイアンツ西海岸移転に始まる「ボールパーク・ドミノ」  (1)エベッツ・フィールド、ポロ・グラウンズの閉場
まぁ、そんな話はともかく。


シティ・フィールドでの前の登板でノーヒット・ノーランを達成し、サブウェイシリーズに臨んだメッツ先発ヨハン・サンタナは、2回にロビンソン・カノーに2ランを浴びてリードを許したものの、3回には立ち直って先頭打者カーティス・グランダーソンをインコースのストレートで見逃し三振、次のマーク・テシェイラも同じくインコースの球で内野ゴロにしとめ、3人目のアレックス・ロドリゲスを1-2と追い込んで、またもやインコース一杯に90マイルのストレートを投げて、自信があったのだろう、ダグアウトに帰りかけた。
New York Mets at New York Yankees - June 8, 2012 | MLB.com Classic

2012年6月8日サブウェイシリーズ ヨハン・サンタナ対Aロッド

だが球審Chris Guccione(クリス・グッチョーネ。同名のオーストラリア人のテニスプレーヤーとは別人)の判定は、「ボール」。

MLBの右バッターの典型的なストライクゾーンは、インコース、アウトコースともに、ルールブック上のゾーンからボール1個分くらい広いわけだが、毎度おなじみBrooks Baseballのデータでみると、たしかにこの球、ほんのわずかだが、内側に外れている。
2012年6月8日サンタナのAロッド4球目PitchFXデータ
Brooks Baseball · Home of the PitchFX Tool - Strikezone Map Tool
だが、上の図で、赤い円をつけて示した部分を見てもらうと、緑色の▲(サンタナの投球のうち、見逃された球で「ボール」判定の球)がゾーン内、あるいはゾーンぎりぎりに点在していることでわかるように、今日の球審Chris Guccioneのストライクゾーンは、ストライクゾーン一杯の球はほとんとストライクコールしなかった。(同様に、ヤンキース先発黒田の左バッターのアウトコース一杯のストライクとも思えるギリギリ球も、ほとんど「ボール判定」されていた)


4球目のギリギリの球をボール判定され、カウントが2-2になって、サンタナはどうしたか。
4シームをもう少しインコースに寄せて、ゾーン内に決まるストライクを投げたのである。

結果、Aロッドはシングルヒット。

サンタナはその後、
カノーに2本目の2ランを打たれて崩れた。
ニック・スウィッシャー、ソロホームラン。
アンドリュー・ジョーンズ、ソロホームラン。

たった1球。されど1球。
怖いものだ。
特に、スウィッシャーに打たれたホームランは、インコースの「ルールブック上のストライクゾーン一杯」に4シームを投げて打たれたホームランだけに、悲哀がある。

だが、たとえ、インコース一杯に自信をもって投げた球を、ストライクゾーンの狭い球審にボール判定されてしまったからといって、怪我で球速が失われているヴェテラン投手としては、バッターをかわすために、勇気を振り絞ってインコースに投げこまないわけにはいかないのである。
いわば「インコースへの義務感」である。
ノーヒット・ノーランなどの大記録の後の登板は、えてして打たれまくるとか、そんなくだらない通俗的な話はどうでもいい。

きわどいところをとってくれない球審に当たったジェイソン・バルガスが打たれまくるときと、まったく同じ現象を見るようで、繰り返しホームランを打たれては、息を大きく吐いて自分を落ち着かせようとするサンタナを見るのはなかなかに辛いわけだが、これも今のサンタナの置かれた現状としてはしょうがないのである。ここでアウトコースに逃げるようでは、この先の彼のキャリアは先細ってしまう。


どんな辛いときでも、仕事に出かけていく。
それが「父ちゃん」というものだ。

次回の登板でも、そしらぬ顔をしてバッターのインコースをガンガン突きまくるヨハン・サンタナを見たい。

June 08, 2012

マイケル・ソーンダースのバッティングが今シーズン非常に良化していることに、誰もが驚いている。

彼の最大の弱点が、カウントを追い込まれてからのインコース低めの変化球であることは、誰もがわかりすぎるほどわかっていたことだが(いまのジャスティン・スモークにも同じ欠点がある)、今年はなんと、そのインローの変化球をカットできるようにすらなってきている
また、昔から長打できるのはインコースの高めのストレート系だけであり、MLBの左バッターが誰でも苦労するアウトコースの2シームを長打できるほどのパワーをバットに伝達する技術などなかったわけだが、今年は外の球でもホームランできている。
かつてのソーンダースの欠点は、2009年のメジャーデビュー以来、これまで何シーズンも進歩が見られなかっただけに、たいていのファンは彼のキャリアも今年で終わりかと諦めかけていたわけだが、変われば変わるものだ。


デビュー当時と今とで、彼のバッティングで最も変わった点は、なんといってもタイミングのとりかただ。

昔のソーンダースのバッティングフォームは、ピッチャーが動作を開始するタイミングや、投げる球種とまったく無関係に、自分のタイミングでバットを引き、来る球をスイングする、たったそれだけの「ワンタイミングのスイング」でしかなかった。(これだとバットを引いて待っている間に、せっかくバットにためこんだ加速度は、まるっきり失われてしまう)
だから、結局のところ昔のソーンダースが用意できていたのは、「ストレート系に合わせた、たった1種類のタイミングだけ」だったわけで、これでは投手に少しでもタイミングをズレされる、つまり、チェンジアップや高速シンカーような変化球を投げられると、もう手も足も出なかった。


それにくらべて今シーズンのソーンダースのスイングは、下の動画の比較でわかるように、バットを持った手を細かく動かしながらピッチャーの投球動作の開始を待ち、動作開始にピタリと照準をあわせてバットを引き、スイングを始動できるようになっている。
この「手を細かく動かしつつ、スイング開始タイミングを、球種や投手のクセにアジャストする工夫」を導入したおかげで、ストレート系であれ、変化球であれ、スイングするタイミングや始動のきっかけの異なるさまざまな球種に細かく対応することが可能になってきたわけだ。


彼がメジャーデビューしたのは、2009年7月25日のクリーブランド戦だが、当時のソーンダースと今のソーンダースの打撃フォームを動画で比べてもらうとよくわかるはず。

2009年
8月5日 投手 ケイル・デイビス(KC)
Baseball Video Highlights & Clips | SEA@KC: Saunders' first extra-base hit has Seattle up - Video | MLB.com: Multimedia

2012年
6月5日 投手 ギャレット・リチャーズ(LAA)
Baseball Video Highlights & Clips | SEA@LAA: Saunders skies a solo homer to center - Video | MLB.com: Multimedia

マイケル・ソーンダースの動画(MLB公式)
Multimedia Search | MLB.com: Multimedia


と、まぁ、書くと、
「なーんだ。タイミングかえただけの話かよ」と思われてしまいがちだ(笑)
そうでもない。下の画像を見てもらうとわかる。タイミングの取り方を変えただけで打てるようになるものでもない。

マイケル・ソーンダースの2012年版打撃フォーム

これは今年のソーンダースで、6月5日のLAA戦でホームランを打った打席のソーンダースの「構え」だ。打ったのは、カウント3-1からの96マイルの4シーム。


バットの角度に注目してもらいたい。

このときの投手ギャレット・リチャーズは、常に95マイル以上のストレートが投げられる速球派だが、今シーズンのソーンダースは、こういう速球派との対戦においても、バットをまだ少し寝かせたままにしておき、いつでも打てる態勢になってしまうのを「我慢」できる

この「待ち時間」が、パワーを生む。

もし「ピッチャーの投球動作にもっと早くから合わせていた昔のソーンダース」なら、「ピッチャーの投球動作の早い段階で、すでにバットの角度が立ってしまい、いつでもスイングできる態勢に入っていただろう」と思う。


テニスでは、野球でいう「振り遅れ」を避ける意味で、「できるだけ速くラケットを後方に引いて、構えていなさい」と、テニスでいう「構え遅れ」を避ける指導をすると聞く。
だが、「素材のしなり」を含み、なおかつ「先端が重くて、長い」木製バットを一連の動作で振り回す野球のバッターの場合、バットをあまりにも早く引きすぎて、つまり、必要以上に早いタイミングでしっかり構えきってしまうと、バットのヘッドに蓄積できるはずのパワーがスッと抜けてしまい、力感の無いスイングになってしまう。


マイケル・ソーンダースのスイングは、たとえて言えば、ルアー釣りでルアーを遠くにキャストする動作にちょっと似ている。
ロッドをふりかぶっても、すぐにキャスト(投げる)わけではなく、ルアーの重みや、ロッドのしなりから生まれる遠心力が、ロッド先端にしっかりと「のって」、ロッドが最大にたわむ瞬間を一瞬だけ待って、それから一気にスイングする。
この「待ち時間の長さ」は、そのとき使うルアーの重さや、ロッドのしなり具合などの条件によって、さまざまに変化する。そして重いルアーより、ロッドのしなりを利用して軽いルアーを遠くに飛ばすほうが、遥かに難しい。そして上手いアングラーは細くて「しなる」ロッドを使いこなせる。

基本的なルアー・キャスティング

フライフィッシングのHatch Cast

バットの重さに振り回されるのではなく、バットの「重み」や「たわみ」、遠心力で振りぬこうと思うと、この「待機時間」は必要以上に長すぎては困る。
ルアーのキャストにたとえると、ロッドをあまりにも早く後ろに構えて、あまりにも待ち過ぎると、ロッドから「たわみ」が抜け、真っ直ぐになってしまうから、もうルアーを遠くに投げる遠心力は生まれてこない。


かつてのマイケル・ソーンダースのスイング動作は、ロッドのたわみを利用してキャストできない下手くそなアングラーそのもので、あまりにも律儀に早くからバットを引きすぎていて、力感がなかったが、今のソーンダースは、どこでもルアーを飛ばせる、上手なアングラーだ。

ルアー


June 07, 2012

2012年6月6日 エンゼルス戦8回表 イチロー4号
動画Baseball Video Highlights & Clips | SEA@LAA: Ichiro's solo shot adds an insurance run - Video | MLB.com: Multimedia

エンゼルス戦でイチローが4号ダメ押しホームランを打って復調気配を見せたわけだが、ダグアウトに帰ってきたイチローを待っていたのは、チームメイトたちのたくさんのハグだった。

いままでアホほどたくさんのイチローの出場ゲームを見たが、これほどホームラン(あるいは好打)の後でハグまくったイチローを見たことはない(笑)
この、珍しくほのぼのとした事件(笑)でわかったことは、「態度に表わすことこそ滅多にないが、実は、たくさんのチームメイトが、イチローのバッティングを心配していた」ということだった。(イチローに言わせれば、たかが3試合くらいで重くなってんじゃねぇよ、うっとおしい。とのこと。いやー、失礼、失礼 笑)


以下は、イチローにしてみれば「そんなの晒してじゃねぇよ」とイヤがる画像だとは思うのだが、まぁ、チームスポーツなんだし、10年に一度くらい、こういう照れくさい経験があってもいいと思う(笑) いくつか某巨大掲示板から拝借し、のっけておく。
Seattle Mariners at Los Angeles Angels - June 6, 2012 | MLB.com Classic


そもそも、ホームランの後でダグアウトがハグ大会になった一因は、ミゲル・オリーボ。ダイヤモンドを一周してダグアウトに戻ってきたイチローが当惑するのにもまるでかまわず、ヘルメットを脱がしてやるわ、うれしげに肩を叩きまくるわ、ハグしまくるわ、カメラ目線だわで、大騒動だったのが発端である(笑)
続けて、ハグしたのはマイク・カープマイケル・ソーンダース川崎といった面々。普段ありえないようなハグ大会が続いた(笑)

ちなみに、ダグアウトに戻ってきたイチローを最初に出迎えたのは、ヘスス・モンテーロの笑顔。今シーズンの開幕戦を東京で見た人たちなどはわかっていると思うが、試合直前にバッティングゲージに入る前のウオームアップで、イチローの身近にいて軽く談笑などしながら一緒に動いているのは、実は若いモンテーロだったりする。


まぁ、結局のところ、3番から1番に戻って、ホームランをいきなり2本打ったままパタリと途絶えていたイチローのバッティングについて、多くのチームメイトが心配し、ハラハラしていた、ということが非常によくわかったのである(笑)

イチローの復活4号でイチロー以上にほっとするミゲル・オリーボ
やっぱりベテランの存在はありがたい、と思わせるミゲル・オリーボの祝福ぶり。

師匠イチローの復活4号を喜ぶマイケル・ソーンダース
イチローによくバッティングのことを聞きにくる「弟子」のソーンダースも、イチローのホームランを目に見える形で喜んだ。

ダメ押し4号でやたらと喜ばれてにやけるイチロー
やたらとチームメイトに喜ばれて、かえってはにかむイチロー



ブログ主がこの4号ホームランを天晴と感じたのは、このホームランがスピードボールをチカラまかせに弾き返したのではなく、チェンジアップを打ったものだったからだ。
チェンジアップという球種は、りきみかえっていては打てない。ちょっとゆとりをもっていないと、あっさりやられてしまう。6月のイチローはちょっと肩に力が入り過ぎていた。


自動車には「ギア」というものがある。
「エンジン」で起きる爆発のパワーを、「ギア」を通じて状況にあった適切な走行能力に変換することではじめて、クルマは自在に走ることができる。

今シーズンのイチローの、守備の素晴らしい身のこなしを見て、疑いなく見てとれるのは、イチローにとっての「エンジン」、つまり「身体能力」そのものは、38歳の今もまったく錆びていないことだ。むしろ今シーズン、体調そのものは非常に好調なのだろう、と思う。

だが、である。

どういう理由でそうなるのかがわからないので困るのだが、そのせっかくのイチローの天才的な身体能力が、うまくプレーに発揮されていないもどかしさがあった。(実はこのことは今日のエンゼルス戦の前にちょっとピンときて、ちょうどブログに書こうとしていた)

クルマをマニュアルギアで運転している人はわかると思うが、走り出した直後の加速においては、ローギアでゆっくり走り始めて、それからギアを上げながらスピードを上げていかないと、いくらエンジンに並外れた最高性能が備わっていても、ギアが適性でないと、高速道路に乗ることができないどころか、まともにスピードを上げることすらできない。


イチローは、車体の重いへヴィなアメリカ車ではなく、軽量だが、高性能エンジンで非常に速度の出る「スポーツカー」だ。

そしてイチローは責任感が強い。
だから、いくら表面的には「僕は3番であろうと、自分らしくやるだけですよ」とコメントしていたとしても、心の内側では、自分に対して非常に高い義務を課してしまう(と、想像される)。
そもそもイチローは、たとえ3番であろうとなかろうと、試合でトップギアに入っている自分を観客に見せることを義務だと常に思っていることだろう。
だからこそ、よけいに肩に力が入ってしまい、すぐにトップギアに入れてしまうようなことも起きるのではないか、と思うのだ。


だが、アスリートは自分でもわからないうちに調子が落ちてしまうことがある。スポーツカーというものは、常にトップギアで走れるわけではない。突然エンジンの回転数が落ちてしまうような、意に沿わないハプニングも起こりうる。


言いたいのは、エンジンがピカピカなのに、なぜか不調な、摩訶不思議な状態のときこそ、トップギアに入れたまま乗り切ろうと無理してはいけない、ということ。
去年も、4月非常に好調に見えたイチローのその後の不調ぶりについては、長いこといろいろ考えたものだが、最近になって最終的にやっと落ち着いたのが、この提案だ。

時に、あえてギアを落とし、ローギアで。


今日の第3打席で、バット先端でかすってスピンする打球が、ショートのエラーを誘って出塁したが、その後でタイムリー、ホームランと、2本のヒットが出た。

いったい何をさして「ローギアのプレー」というのか、ブログ主にもまだハッキリ指摘するなどできないが、よく「きっかけ」という言葉で説明されがちなこういう偶然も、ある意味ひとつの「ローギア」のプレーなのは、間違いない。

なにも、不調だからセフティバントをしたほうがいいと言っているのではない。肩の力を抜く、というほうが、よほど近い。

最近、MLBではアフリカ系アメリカ人(いわゆる黒人)プレーヤーが縮小傾向にあると、いわれることについて、何度も引用してきている。
USA Todayのある記事に言わせると(その記事の言い分を絶対的なものと信じてもらっても困るのだが)、アフリカ系アメリカ人プレーヤーの減少は、アフリカ系アメリカ人観客の減少を招いており、「2011年にMLBを見に来場してくれたアフリカ系アメリカ人の割合は、わずか9%に過ぎない」というマーケティング会社の調査があるらしい。
The lack of African-American players also affects diversity in the stands. Just 9% of fans who attended an MLB game last season were African American, according to a recent Scarborough Marketing Research study.
Number of African-American baseball players dips again – USATODAY.com

その一方で、これも何度も書いているように、ベネズエラドミニカなど、ヒスパニック系プレーヤーのウエイトは年々確実に重さを増していっている。(だが、だからといって「スタジアムにおけるヒスパニック系ファン数も急増した」とまで言えるかどうかは、手元に資料がないのでわからない)
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年4月5日、MLBのロスターの3.5人にひとりは、メインランド(アメリカ大陸の50州)以外の出身選手、というESPNの記事を読む。(出身国別ロスター数リスト付)

州別・1歳以下の乳児に占める非白人率
州別・乳児に占めるマイノリティ率


先日、アメリカで「1歳以下の乳児」に占める「非白人」のパーセンテージがついに「白人」より多くなったというニュースについて書いた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年5月18日、「アメリカでの非白人比率の増大傾向」と、「MLBプレーヤー、ファン両面の人種構成の変化」との複雑な関係。
そしてこんどは、アメリカでアフリカ系アメリカ人の平均寿命が伸び、白人との平均寿命の差が縮小したというニュースを読んだ。これもMLBのおかれた環境を知る上で、なかなか面白い。

男性
白人    75.3歳 → 76.2歳
アフリカ系 68.8歳 → 70.8歳
両社の差  6.2歳 → 5.4歳

女性
白人    80.3歳 → 81.2歳
アフリカ系 75.7歳 → 77.5歳
両社の差  6.0歳 → 3.7歳
米国で黒人の平均寿命伸びる、白人との差が縮小=調査 | 世界のこぼれ話 | Reuters


ただ、このニュース、ちょっとだけ気をつけてほしい点がある。

日本の新聞社などにこのニュースを配信したのは、大手通信社のロイターだが、この現象の社会背景の解説として、「エイズや心臓病で死亡する黒人の数が減少した一方、ドラッグの服用などで死亡する白人若年層が増加したことが背景にあるとみられている」と、通信社側の解釈を元に文章をつけくわえているのは、いただけないことだ。
これではまるで、あたかも「白人の麻薬中毒死の増加」が、「近年のアフリカ系アメリカ人と白人の寿命格差縮小の大きな要因のひとつである」かのように読めてしまう。
だが、そうした説明は、ロイターの配信の元ネタであるアメリカの医学誌JAMAの記事、およびJAMAの記事が引用しているCDCのデータの内容と、必ずしも一致しない。


数字を見れば明らかなように、白人とアフリカ系アメリカ人の平均寿命の差が縮小したのは、なにも白人の寿命が急激に短くなったから起きたわけではなく、アフリカ系アメリカ人の平均寿命、特に女性の平均寿命が「伸びた」ことによる。
アフリカ系アメリカ人の平均寿命の「伸び」の長期的な社会背景は、エイズによって死ぬ人数の減少などという短期的なことより、近年アフリカ系アメリカ人に医療保険を受けられる人が増えたことが大きい、とする説明のほうが、はるかに説得力も合理性もある。

ちなみにアメリカは、世界の平均寿命ランキングにおいて世界40位前後らしいが、日本やヨーロッパに比べると、新生児や幼児の死亡率がかなり高い。
世界保健機関(WHO)の2011年5月13日発表データによれば、日本の新生児死亡率はおよそ1000人に1人、幼児死亡率がおよそ1000人に2人と、ほぼ世界で最も良いレベルにある。また西ヨーロッパでも、新生児2人、幼児3人程度で、これは世界最高クラスの数字だ。
だが、アメリカでは、新生児4人、幼児7人と、子供たちの死亡率は高い。しかも、手元に資料がないのだが、下記の記事などによれば、同じアメリカ人でも、アフリカ系アメリカ人における新生児や幼児の死亡率は、さらに高いようだ。(なお、以下の記事は2007年と、ちょっと古いものであることに注意)
アメリカでは1,000人の新生児に対して6.8人が死んでいます。(中略)黒人の場合は13.7人が死んでおり、サウジアラビアと同じレベル。
亜米利加よもやま通信 〜コロラドロッキーの山裾の町から


日本は、かつて「人生50年」という言葉が存在していたように、第二次大戦前までの平均寿命が50歳を越えない状態が続き、アメリカよりはるかに下だった。
だが、第二次大戦後いわゆる「国民皆保険」を実現したことによって、戦後わずか20年しかたっていない1960年代には、アメリカを抜き去って、現在の世界最高レベルの長寿国への道を歩み出した。
こうしたほかならぬ日本の実例からしても、薬物中毒やエイズによる死者の減少よりも、「誰もが医療を受けられる医療保険制度の有無」が、人間の平均寿命に与える影響と即効性が遥かに大きいことは、明らかだ。
アメリカと日本の平均寿命推移
図録▽寿命の伸びの長期推移(対米比較)より引用


また、以下に示すように、元ネタになった医学誌記事が引用しているデータでいう「薬物中毒死」とは、必ずしも麻薬中毒によるものだけを指しているのではなく、「違法・合法を問わず、広い意味での薬物中毒死全体」を指している。
このニュースを読む人に、あたかもアメリカの白人に麻薬が蔓延し、バタバタ死んでいっているかのようなイメージを与えかねない解説を添付するのは、ちょっとやりすぎだと思う。

このニュースのオリジナルソースとなった記事(JAMA Network | JAMA: The Journal of the American Medical Association | Trends in the Black-White Life Expectancy Gap, 2003-2008)が発表されたのは、世界で最も発行部数の多い医学学会誌であるジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・メディカル・アソシエーション (The Journal of the American Medical Association 略称JAMA 日本では『米国医師会誌』あるいは『米国医師会雑誌』などと表記される。1883年創刊)。
そして、JAMAに掲載された元記事がデータのソースとして引用したデータは、アメリカの疾病対策センター(CDC, National Center for Health Statistics Homepage)のデータである。

このJAMAの記事が示している引用元のひとつはいくつかあるが、以下のCDCの「薬物中毒=Drug Poisoning」に関する記事(リンク先)では、薬物中毒について、必ずしも「麻薬中毒 drug abuse」によるものだけを指しているわけではない。
In 2008, over 41,000 people died as a result of a poisoning.(中略)Drugs ― both legal and illegal ― cause the vast majority of poisoning deaths.
資料(pdf) CGC: Drug Poisoning Deaths in the United States, 1980–2008


June 05, 2012

恒例の全米ドラフトが始まった。
13巡目指名のホワイトソックスまでに、既に約半数の6球団 18巡目のドジャースまでに、半数以上の10球団が、高校生を指名今年の大学生のかなり極端な不作ぶりが決定的になった。この不作の年に大学生を1位指名した球団のうち、どこかは確実に泣きを見ることになりそうだ。

ちなみに、最近このブログ一押しのGMダン・デュケットは、1巡目で、復活しつつある古豪ルイジアナの右腕Kevin Gausmanを指名。選手を集める手腕の高さに定評のあるデュケットの指名だけに、不作の年の大学生指名とはいえ、気になるところ。
Draft Day 1: Pick-by-pick selections | MLB.com: News

このMLBの「大学生に対する無関心ぶり」には、今年から始まるドーピングの血液検査も、もちろん関係してるんだろう、と想像している。
ブログ主は、いくらなんでも大学なんだからステロイドが蔓延してないなんて、アメリカ野球について思ったことは、一度たりともない。
近年流行した「大西洋岸エリアの大学生に期待する時代」が永遠に続くなんて思ってる人がいるとしたら、それは非常に笑える(笑)

ハッキリ言わせてもらえば、今後ともアメリカ国内でのステロイド蔓延が続くようなら、アメリカ国内のステロイダーは使いづらくなるだろうし、その一方で、アメリカ国内でステロイド使用が自粛されれば、されたで、アメリカ国内の選手に対する期待は下がっていく、という意味で、どちらにしても、国内の選手がMLBに占める相対的な比重は、ますます軽くなっていくと読んでいる。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年4月5日、MLBのロスターの3.5人にひとりは、メインランド(アメリカ大陸の50州)以外の出身選手、というESPNの記事を読む。(出身国別ロスター数リスト付)

シアトル・マリナーズ? さぁね。どうでもいいよ(笑)
マイケル・ピネダと交換に若いヘスス・モンテーロ獲ったのに、わざわざ大学生の、それもキャッチャー指名してるんだから、開いたクチがふさがらないね(笑) 最近のルイジアナやオクラホマの復活ぶりにも、まるで目配りしてないみたいだし、ホント、こんなメディアの評判ばかり気にしてるミーハー球団、どうでもいい(笑)
かつての全米1位ジェフ・クレメントの例でもわかるように、どんな有能な人材だろうと無意味なトレーニングで潰すだけしか能がないロジャー・ハンセンを懲りもせずスタッフに抱え続けてるチームに、キャッチャーをマトモに育てられるわけがない。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:ロジャー・ハンセン



スタンフォードのMark Appelについては2か月も前にツイートしたが、予想通りになった。全米1位と噂され続けたにもかかわらず、結局全米8位でピッツバーグ。いかに若手マニア君たちとメディアの予想がアテにならないかが、よくわかる(笑)
そりゃそうだ。ピッツバーグには申し訳ないが、彼のもともとのコントロールの悪さ、最近のスタンフォードの戦績の低下ぶり、カレッジ・ワールドシリーズ直前のスタンフォードのもたつきぶりと、ランキングのガタ落ちぶり。どこを見ても、好材料なんてなかった。


以下、太字は高校生
1. Houston Astros: SS Carlos Correa, Puerto Rico Baseball Academy

2. Minnesota Twins: OF Byron Buxton, Appling County HS (Ga.)

3. Seattle Mariners: C Mike Zunino, Florida

4. Baltimore Orioles: RHP Kevin Gausman, LSU

5. Kansas City Royals: RHP Kyle Zimmer, San Francisco

6. Chicago Cubs: OF Albert Almora, Mater Academy (Fla.)

7. San Diego Padres: LHP Max Fried, Harvard-Westlake HS (Calif.)

8. Pittsburgh Pirates: RHP Mark Appel, Stanford

9. Miami Marlins: LHP Andrew Heaney, Oklahoma St.

10. Colorado Rockies: OF David Dahl, Oak Mountain HS (Ala.)

11. Oakland Athletics: SS Addison Russell, Pace HS (Fla.)

12. New York Mets: SS Gavin Cecchini, Barbe HS (La.)

13. Chicago White Sox: OF Courtney Hawkins, Carroll HS (Texas)

14. Cincinnati Reds: RHP Nick Travieso, Archbishop McCarthy HS (Fla.)

15. Cleveland Indians: OF Tyler Naquin, Texas A&M

16. Washington Nationals: RHP Lucas Giolito, Harvard-Westlake HS (Calif.)

17. Toronto Blue Jays: OF D.J. Davis, Stone County HS (Miss.)

18. Los Angeles Dodgers: SS Corey Seager, Northwest Cabarrus HS (N.C.)

19. St. Louis Cardinals: RHP Michael Wacha, Texas A&M (Compensation for A. Pujols - LAA)


20. San Francisco Giants: RHP Chris Stratton, Mississippi St.

21. Atlanta Braves: RHP Lucas Sims, Brookwood HS (Ga.)

22. Toronto Blue Jays: RHP Marcus Stroman, Duke (Compensation for T. Beede - unsigned)

June 02, 2012

ノーヒット・ノーラン達成の歓声に応えるヨハン・サンタナ

メッツのヨハン・サンタナが、セントルイス相手にノーヒット・ノーラン達成。これは1962年のメッツ創設以来、半世紀を経て、初の快挙 (8020試合での達成)
これまでメッツでは、1975年にメッツ在籍時のトム・シーバーがノーヒットを維持したまま9回まで行ったことはあったらしいが、そのときは達成できなかった。 (その後トム・シーバーは1978年に、メッツでなくシンシナティでノーヒット・ノーラン達成。奇しくも、サンタナと同じセントルイス戦)

動画(MLB公式):St. Louis Cardinals at New York Mets - June 1, 2012 | MLB.com Video

St. Louis Cardinals at New York Mets - June 1, 2012 | MLB.com Wrap

サンタナの快挙は、長い長い怪我での休養から復帰して、4シームが88マイルしか出ない中、4シームとパラシュート・チェンジアップを駆使して134球もの球数を投げる中での偉業であり、心からおめでとうと言いたい。
この歴史的なゲームを見ていた人はわかったと思うが、この快挙は、ゲーム終盤、右バッターのインコースを果敢に攻めまくった結果だ。

やはり、バッターから逃げていては、快挙は達成できない。

ESPNのジェイソン・スタークによれば、134球でのノーヒット・ノーラン達成は、2010年6月25日タンパベイ戦で達成したアリゾナのエドウィン・ジャクソンの149球に次いで、史上2番目の球数の多さらしい。
June 25, 2010 Arizona Diamondbacks at Tampa Bay Rays Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com



この「134球を投げてのノーヒット・ノーラン達成」という球数の多さが、いかにヨハン・サンタナが故障に苦しんできたかという証でもあるだけに、かえって「誇らしい数字」と、彼の偉業をたたえたくなる。

サンタナは、もともとジャスティン・バーランダーのような100マイルを投げられる速球派ではなく、4シームとチェンジアップの緩急でかわしていくタイプだが、それでも、サイ・ヤング賞を2度獲ったミネソタ時代には93マイル程度のスピードボールは投げていた。
だが、メッツ移籍以降は、膝、肘、肩と、絶え間ない故障に悩まされて、2011年などは一度も投げられず、このゲームでも、4シームのスピードは88マイルしかなかった。

それだけに、今回の快挙には涙が出る。



ニューヨーク・メッツ創設は、1962年。
既に書いたように、例の「1958年のドジャースとジャイアンツ西海岸移転」で、ニューヨークに存在する球団がヤンキースだけになってしまったとき、急遽つくられた球団だ。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:「1958年の西海岸」 特別な年、特別な場所。

メッツ創設に尽力したのは、弁護士ウィリアム・A・シェイで、1964年に本拠地ができたときには、シェイ・スタジアムと、彼の名前がつけられた。
ダメ捕手、城島健司。The Johjima Problem.:2012年3月21日、1958年ドジャース、ジャイアンツ西海岸移転に始まる「ボールパーク・ドミノ」  (3)キャンドルスティック・パーク、ドジャー・スタジアム、シェイ・スタジアムの開場
メッツのチームカラーのうち、青はドジャース、黒とオレンジはジャイアンツのチームカラーから取った、という有名なエピソードも、要するに、「ニューヨークから去ったドジャースとジャイアンツのファンを、新球団メッツのファン層として取り込みたいというマーケティング的な思惑」からきたものだ。

1962年の創設以降、しばらくお荷物球団と言われたメッツだが、ミラクルメッツと呼ばれるようになったのは、1967年に入団し1977年まで在籍、メッツでサイ・ヤング賞を3回も受賞した殿堂入り右腕トム・シーバーや、シーバーと同じ67年に入団し78年まで在籍した左腕ジェリー・クーズマンの活躍による。

トム・シーバーは、1978年6月16日に、ヨハン・サンタナと同じセントルイス戦でキャリア唯一のノーヒットノーランを達成しているが、このときシーバーは1977年に移籍していたシンシナティの所属選手で、メッツでの達成ではない。
(ちなみに、トム・シーバーがノーヒッター達成した時のシンシナティのラインナップは、1番ピート・ローズ、2番ケン・グリフィー・シニア、3番ジョー・モーガン、など、錚々たる顔ぶれ)
June 16, 1978 St. Louis Cardinals at Cincinnati Reds Play by Play and Box Score - Baseball-Reference.com


怪我を乗り越え、88マイルしか出ないスピードボールとチェンジアップだけで達成したノーヒット・ノーラン。

ヨハン・サンタナに心からの拍手を贈りたい。


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