February 2015

February 27, 2015

Philliedelphia.com (注:ドメイン名はPhiladelphiaではない。Philliedelphiaだ。お間違え無きよう)のライターMatt Rappa@mattrappa)が、2012年オフを思い出して、こんな記事を書いている。
Flashback Friday: Phillies Nearly Signed Ichiro Suzuki for 2013 Season - Philliedelphia

記事のモチーフは、2012年12月にESPNのBuster Olneyが「フィリーズがイチローに2年14Mのオファーをしていた」とツイートしたことだ。それを2015年になって思い返して、「もし、あのときイチローがフィリーズの一員になっていれば・・・・」と回想するという、手の込んだスタイルになっている。


記事によれば、当時イチローのナ・リーグ東地区での打撃成績は、マイアミを除く全チームに対して3割2分を超える高打率を残していて、とりわけかつてフィリーズの本拠地だったヴェテランズ・スタジアムでは、3割5分を超える打率と.400の出塁率を記録している、というのである。

この記事でMatt Rappaが挙げた仮想オーダー、これがなにより「最高に痺れた」(笑)

ちなみに元記事の「仮想オーダー」では、9番は「空欄」なのだが、ブログ主が勝手に「クリフ・リー」を追加させてもらった(笑)(それと、個人的には4番はライアン・ハワードでなく、ドミニク・ブラウンのほうがいい)

1. Ichiro 9
2. Michael Young 5
3. Chase Utley 4
4. Ryan Howard 3
5. Carlos Ruiz 2
6. Jimmy Rollins 6
7. Domonic Brown/Darin Ruf 7
8. Ben Revere 8
9. Cliff Lee 1

そう。あまりに残念すぎるから言いたくないが(苦笑)、2013年のマイケル・ヤングは8月にLADに移籍するまで126試合フィリーズでプレーしているのである。(その後マイケル・ヤングはLADに行き、いまイチローのチームメイトになっている二塁手ディー・ゴードンとプレーしている 下の写真左)


もし2012年冬、イチローがフィリーズの2年14Mのオファーを受けていたら、イチロー、マイケル・ヤング、チェイス・アトリーの1番〜3番という打順が実現していたかもしれないのだ。ううむ。


だが、現実にはもちろん、
マイケル・ヤングは引退してしまっている。
Michael Young Statistics and History | Baseball-Reference.com


うーーーーーん・・・・・・・・・・・・・・・・・。
残念だ。残念すぎる。

関連記事:2014年2月2日、内野手の整備を通じてテキサスをポストシーズン常連チームに押し上げることに貢献したマイケル・ヤングの「キャプテンシー」は、内野崩壊とカノー流出を食い止められないデレク・ジーターの見かけ倒しのキャプテンシーよりはるかに優秀だ。 | Damejima's HARDBALL

マイケル・ヤング引退


February 26, 2015

なぜNY Postが、マイアミに移籍して、もうヤンキースとはなんの関係もないイチローの名前を使って「ひどく遠回しなジラルディ批評記事」を書きたがるのか知らないが、「まったく季節はずれ」な記事を書いている。

Why Ichiro is glad to be a Marlin ― and away from Joe Girardi | New York Post
「マーリンズ入りしたイチローが、ジョー・ジラルディから離れたことを喜んでいる理由」


くだらないにも程がある。
「もうチームにいない選手の名前を借りて、遠回しにチーム批評する」なんてチキンなことをする暇があるなら、NY Postはヤンキースがなぜ、ヒューズ、ロバートソン、フェルプスといった「まだ十分に戦力になるのがわかりきっている生え抜き投手陣」の『流出』を未然に防げなかったのかという記事でも書くほうが、よほど「自分たちに直接かかわるストレートな問題提起」になるだろう。

NY Postは今からでも遅くないから、フィル・ヒューズのところに行って「ヤンキース在籍時に能力が思うように発揮できなかったのは、なぜだと思うか」と質問し、ロバートソンフェルプスに「なぜヤンキースに残る気にならなかったのか」をインタビューしてこい、と言いたい。
ついでに言えば、ロビンソン・カノーに「今のヤンキースの低空飛行ぶりを外からどう見ているか」、さらには、ブランドン・マッカーシーショーン・ケリーに「なぜヤンキースから他チームに乗り換えたのか」と聞いてくるといい。
関連記事:2014年9月21日、フィル・ヒューズ自身が語る「フルカウントで3割打たれ、26四球を与えていたダメ投手が、被打率.143、10与四球のエースに変身できた理由」と、ラリー・ロスチャイルドの無能さ。 | Damejima's HARDBALL

ともかくNY Postは、イチローの名前を勝手に使って、遠回しなチーム批評に「利用」するような「卑しい行為」は心して慎むべきだ。


それにしてもNY Postは、イチローがジラルディから離れてハッピーになれたことに、「今ごろ気付いた」のだろうか? ブログ主に言わせれば、ヤンキースがもっと前にトレードしてくれればイチローは今よりもっとハッピーだったのにと言いたいところだが(笑)、いずれにしてもニューヨークメディアは気づくのが遅すぎるし、しかも、書いていることが的外れだ。

上の記事でNY Postの記者が「ヤンキース時代にイチローがジョー・ジラルディから受けた酷い扱い」の例として挙げているのは、例えばこんなケースだというんだから、笑える。
Ichiro collected his 3,999th hit of his combined career on Aug. 20, 2013, at Yankee Stadium in the first game of a doubleheader against the Blue Jays.
Ichiro was hoping to play in that second game to reach the milestone and get the moment out of the way, but was only used as a pinch runner in that game.
2013年8月20日、ヤンキースタジアムでのダブルヘッダーの第1試合で日米通算3999安打に達していたイチローは、第2試合出場でマイルストーンへの到達(=4000安打達成)を望んでいたが、実際には代走出場のみに終わった。

まったく三流メディアはいい加減なことを書くものだ。

ブログ主の知る限り、「イチローが会見など公の場で、『日米通算という形での記録』を自分が重視していると発言したり、そういう風にふるまった」などという話は聞いたことがない。
むしろ彼は、「日米通算という形での記録」についてはずっと意図的に感情を押し殺し、注意深く言葉を選んで発言して、評価を避けてきたはずだ。
ブログ注:もちろんブログ主自身の「日米通算についての考え」はイチロー自身とは違う。天才イチロー限定だが、彼の場合に限っては、たとえそれが「日米通算」であろうとなんだろうと、十分意味のある「記録」だと思っている。
そして、以下に引用するNHKの番組でイチローが「負け試合で、新人の後に代打に出されて味わった痛恨の体験」について語ったコメントを読めばわかることだが、イチロー自身だって自分の内部では日米通算4000安打という記録にまったく何の価値も見出していないわけではない、のである。

だが、NY Postの記事だけを読むと、あたかも「イチローが表立って『日米通算記録にこだわって』、第2試合出場を強く望んだかのように」書かれている。

おいおい、おいおい。
推測で勝手にモノを書くんじゃねぇよ。


例えば、イチロー自身がNHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」という番組に「4000安打達成の10日後の「代打」の屈辱」について語った例があるように、「イチロー自身が自分の言葉で語った、ヤンキースにおける酷い扱いの例」というのは、ちゃんと「ソース」が存在する。
だからNY Postは、曖昧に言葉を濁した情報源だの記者の憶測だのを元に記事を書かず、イチロー本人のコメントを引用しておけば、それが最も確実なのに、それをしないから物事おかしくなる。
「(4000安打達成の)10日後には9対1で勝っている場面で代打にいってるんですよ。悪い言い方すると屈辱。先発のメンバーは下がってる。10日前に4000本を打った僕が代打で出てる。試合決まってますから。僕の前に代打で出た選手はメジャーで1本もヒットを打ったことがないルーキー。このことっていうのは、僕の中で一生忘れない。忘れてはいけないこと。悔しかったんですよね。ライトフライで終わったんですけど。違う意味で今までで一番結果を出したかった打席だったんですよね。」
イチロー語った一生忘れない屈辱 - ライブドアニュース

ブログ主が覚えている限りでも、「ジョー・ジラルディのイチローに対する不合理きわまりない扱い」は、多々挙げることができる。(もちろん自分が観戦してないゲームでも少なからずあったに違いない

例えば、ジョー・ジラルディは、左投手先発ゲームで「左投手をまったく苦にしないで打てるイチロー」をけして先発させようとしなかった。このことも、ここでいう「酷い扱い」のひとつであり、ジラルディはイチローが長年お得意様にしてきたマーク・バーリー登板ゲームですら、先発させなかった。

また、シーズン打率.280以上を記録したイチローをベンチに座らせたまま、「打率1割台のクソみたいなバッティングの選手」を優先して代打に出すことも、1度ならずあった。
例えばジラルディは、打てない守備専の遊撃手ブレンダン・ライアンに、同じく打てるわけがないスティーブン・ドリューを代打に出すような意味不明で無駄な選手交代を、しばしばやった。
これなど、代打としてイチロー、もしくは、ドリューよりマシな打撃のできる若手を使っておいて、その後ドリューをショート守備につかせたほうがはるかにマシな攻撃ができるわけだが、ジラルディはライアンの代打にドリューを使うような意味不明な選手起用を、「ポストシーズン進出の希望がわずかながら残されていた時期」ですら、何度となくやったものだ。


マイアミ移籍会見でイチローは、「選手として必要としてもらえることを、この2年間欲していた」という意味のことを自分の言葉でハッキリ言ってのけた。
会見での原文
この2年間、欲していたものは、これだったのじゃないかなと思っています、選手として必要としてもらえること。これが僕にとっては何よりも大切なもので、大きな原動力になると思う。


もちろんブログ主は喝采した。
プロ・アスリートとして当然の話だからだ。


イチローは、2013年以降のヤンキースで、「チームがイチローのプレーを欲しているという確かな感覚が得られないまま」中途半端にプレーさせられ続け、だらしないチームがだらしなく負け、ポストシーズン進出に失敗するのを「遠くから」眺めさせられた
その原因は、GMキャッシュマンの度重なる大型契約の失敗によるペイロールの硬直化、ジラルディの不合理きわまりない起用法、怪我でロクに働かないのにレギュラーの座に居座っている高給取りの選手たち、アレックス・ロドリゲスに象徴されるチームのステロイド体質、ヤンキースの若手育成能力の無さなどにある。


発言に「耳を傾けて」さえいれば、行間に垣間見える「イチローの感情」は誰にでもわかる。彼が「ヤンキースでは酷い扱いを受けたと感じていたかどうか」なんて、イチローファンにしてみれば、なにもNHKのインタビューなど見なくてもわかる。
だが、ブライアン・キャッシュマンも、ジョー・ジラルディも、ニューヨークメディアも、イチローに「十分に耳を傾けて」はいなかった。いまさらNY Postが何か書いても、それはまったく「季節外れな行為」だし、そもそも書いていることの中身それ自体が「ピント外れ」だ。
いまさらNY Postに「ジョー・ジラルディから離れたことを喜ぶ理由」なんてものを(それも間違った形で)書いてもらわなくとも、そんなわかりきったことは、とうの昔から日本のイチローファンの「全員がわかっている」のである。

「おまえらは、やることなすこと、ことごとく遅えんだよ。書くならヤンキース在籍中に書け、この臆病モノ」と言っておこう。


もう一度繰り返す。

もしニューヨークメディアが、チームが長年抱えてきた欠陥を放置して没落しつつあることをようやく指摘してみる気になったのなら、Future Hall Of Famerであるイチローの発言やネームバリューを借りてそれを行うのではなく、記者が「自分の名前」を使って、「自分の責任」でやるべきだ。
イチローがああ言った、こう発言したなどと、いまさらチームにいない人間の名前を利用する行為を失礼だと思わないのだろうか。ほんとにチキン・ライターどもときたら、無礼きわまりないにも程がある。

関連記事:
2013年9月9日、イチローのバッティングを常に「冷やし」続けてきたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶりを、この際だから図に起こしてみた。 | Damejima's HARDBALL

2013年9月18日、ニューヨーク・ポストのケン・ダビドフが書いた「2012年冬のヤンキースの失敗」についての浅はかな記事を紹介しつつ、ジラルディの選手起用のまずさがチームバッティングを「冷やした」証拠となるデータを味わう。 | Damejima's HARDBALL

2015年1月29日、2014年版「イチローのバッティングを常に冷やし続けたジョー・ジラルディの不合理な起用ぶり」。 | Damejima's HARDBALL

February 20, 2015

あの、さ。

世界中のどこの記事ソースに、「イチローが自分の所有するコンドミアムを売りに出した」とか、書いてあるわけ?

たいがいにしとけって。バカヤロ。


まずは元記事。書いたのは、NY PostのJennifer Gould Keilって名前の記者。もちろんヤンキース番のビートライターじゃない。日付は2015年2月18日。
Stealing home: Ichiro’s full-floor apt is for sale/rent | New York Post


そのNY Postをネタに記事にした日本メディアのタイトルが、これ。
酷いもんだ。
イチロー NY豪邸を12億円売り出し(日刊スポーツ)
イチロー12億円NYマンション売却へ(サンケイスポーツ)

誰が読んだって、この2つの記事タイトルの「主語」はイチローだ。だから記事タイトルだけ読んだら、「マイアミに移籍したイチローがニューヨークで住んでたマンションを売りに出してる」というふうにしか読めない。


何考えてんの、こいつら。

実際にコンドミアムを売りに出してるのは、イチローじゃない。ニューヨーク出身で、特にハーレム地区に多額の投資をしてることで有名なユダヤ系デべロッパー兼不動産屋のRodney Proppが売主。(正確にいえばRodney Proppは不動産業者というより地主に近い立場だが)
Rodney Propp - Wikipedia, the free encyclopedia
A Pioneer in Harlem Real Estate Reaps the Profits - The New York Sun

おまけに、この不動産屋、たとえ賃貸でもイチローが住んでたってことで、法外な「プレミア」つけて売り出してる。

このコンドミアム、イチロー入居当時(2013年)の価格は、900万ドル(当時のレートで8億7750万円。当初は1100万ドルだったが、そこから値下がりしたらしい)、賃貸だと月2万3500ドル(同229万円)だった。
それが、不動産屋のつけた発売価格は、1000万ドル(今のレートで約12億円)、賃貸なら月3万2000ドル(同384万円)だってんだから、日本円でみるならRodney Proppは「イチロー物件」として、米ドルでも100万ドル、日本円でみると3億円以上の「プレミア」をつけてやがる。


タイトルで印象操作なんかしやがって、
日本のスポーツメディアって、ほんとくだらない。
そこまでして新聞売りたいのか?

おまえらみたいなタブロイド紙まがいに、
ジャーナリズムなんて、ねぇよ。

February 19, 2015

コミッショナーがバド・セリグから、ニューヨーク生まれでヤンキースファンのロブ・マンフレッド(Rob Manfred)に変わってから、いろいろとMLBは雲行きがあやしい。

バリー・ボンズ、ジェイソン・ジオンビーなどのステロイダーの復権を意図した記事の氾濫。永久追放中のピート・ローズの復権と殿堂入りの噂。そして、ヤンキースにおける、ステロイダー、アンディ・ペティットの背番号の永久欠番。同じくヤンキースで大金を積んで口封じをはかった挙句に食らった長期の処罰から復帰する3000本安打目前のステロイダー、アレックス・ロドリゲスのファンに対する見え透いた謝罪。


もしステロイダーと永久追放者の名誉回復が強引に達成され、その一方で、クリーンなプレーによって殿堂入りを控えたイチローをあれほどぞんざいに扱った失礼きわまりないヤンキースがこれからもデカいツラし続けるようであれば、遠慮なくMLBなどクソミソにけなして、それから捨てさせてもらうつもりだ。


さて、マンフレッドがコミッショナーになるためには、オーナー会議での「30球団の4分の3の賛成」、つまり、「23票以上の賛成」が必要だった。

この投票の経緯についてだが、日本のメディアの報道には、「1回目の投票で23票に1票届かなかったものの、2回目では満票を集めた」(ソース:セリグ氏の後継者にマンフレッド氏、MLB次期コミッショナー:AFPBB News)などと、あたかもマンフレッドが円満かつ満場一致で選ばれたかのように報道したメディアがあったりする。

嘘こいてんじゃねぇよ、バカヤローと、まずは言っておきたい。ESPNとか英語サイトを見るといい。


第1回投票におけるマンフレッドの得票数= 20票

英語メディアで、上に挙げた日本のメディアのように「第1回投票が1票だけ足りない22票だった」と書いているサイトなど、自分は見たことがない。マンフレッドの新コミッショナー就任を小躍りして喜んだはずのNY Postですら、最初は「賛成20 対 反対10」だったと書いている。

CBSのJon Heymanによれば、最初から明確にマンフレッドのコミッショナー就任に反対していたのは、以下の7球団。CWS、TOR、OAK、LAA、MIL、ARI、BOS、CIN
中でも、ESPNの記事によるとホワイトソックスオーナー、ジェリー・ラインズドルフ(Jerry Reinsdorf)と、ブルージェイズ社長ポール・ビーストン(Paul Beeston)の2人が猛烈な反対をしたようだ。

この他、以下に書いた2回目以降の投票経緯から察するに、CWS以下の7球団以外にも、MIL、TB、WASがマンフレッド就任に反対票を投じたとみられる。


第2回投票 21票
第3回投票 22票
第1回投票で決まらなかったことから、ローマ法王を選ぶコンクラーヴェのごとく、再投票が続けられた。そのプロセスで、MIL (Mark Attanasio)、TB (Stuart Sternberg)の2チームが賛成に転じたことが、ESPNなど複数メディアによって記されている。(「第2回投票で、MILが賛成に転じた」としているメディアがいくつかあることから、第3回投票で1票増えた賛成票を投じたのは「TB」ということになる)
Rob Manfred voted next MLB commissioner - ESPN


第6回投票 23票
それが何回目の投票だったか、正確な話はともかくとして、マンフレッドのコミッショナー就任を決定づけた「23票目の賛成票」を投じた球団が、「WAS」であることは、ESPNはじめ複数のメディアが書いている。


どういう理由で、事実とは異なる「2度目の投票でマンフレッドが満票で選ばれた」などと虚偽の報道をするのか知らないが、そういう「世論操作」じみた行為は、メディアとして「訂正記事の掲出と、公式の謝罪が必要なレベル」とブログ主は考える。


それにしても、ブログ主が是非知りたいと思うのは、CWSやTORがマンフレッド就任に強硬に反対した「理由」だ。何の理由もなく彼らが強硬な態度をとるとは思えない。こういう情報を発掘してこそ、スポーツメディアが「ジャーナリズム」として成り立つのではないかと思うが、日本のスポーツメディアには何も期待していないので、どこか英語メディアで取り組んでみてもらいたいものだ。

February 13, 2015

緊張か、弛緩か。

木のポーズあるサイトにヨガの「木のポーズ」をしている人の写真が掲載してあり、こんなキャプションが添えられている。
「この立ち方は安定していますか。筋肉で保っている状態なので、あたかも安定しているかのように感じます。これは簡単に言うと『(一部略)頑張って立っている』のです」
サイトの方は要するに、こんなふうに筋肉で頑張ってたんじゃ、片足立ちなんて、安定しませんぜ、と、おっしゃりたい、らしい。
中殿筋を鍛え過ぎると立位が不安定になる | JARTA

また、佐賀大学医学部整形外科の先生の人のサイトには、「体重50キロの人が片足で立つと、股関節には200キロものチカラがかかる」と説明され、「片足で立つときの身体の負担の大きさ」が強調されている。こちらの方の場合は、リハビリの立場として中臀筋を鍛えましょう、という話に繋がっていく仕組みになっている。
頭の体操?(股関節のバイオメカニクス) - 刊行紙のご案内


野球選手もアナボリック・ステロイド常用で大腿骨頭壊死などになったら行き着く先は人工股関節だからまんざら関係ない話ではない。股関節にかかる負担の意外な大きさという話は、ドーピングを容認する風潮への警告としても素晴らしいわけだが、ただ、「片足立ちのメカニズムの説明」としては、ちょっと疑問が残る。
資料:2014年3月25日、ドーピング目的のアナボリック・ステロイド常用が引き起こす大腿骨頭壊死などの「股関節の故障」について。 | Damejima's HARDBALL

たとえインストラクターでなかろうと、ヨガをやっている人ならみんな知っていることだが、「木のポーズ」は「筋肉で必死にもたせるポーズ」ではなく、むしろ逆で、「カラダをできるだけ弛緩させてはじめて、安定して立てる姿勢」だ。
だから、「片足立ちのメカニズム」の説明にあたって、「筋肉の緊張で必死にもちこたえている例」としてヨガの「木のポーズ」を挙げることは、そもそも出発点からして間違っている。

また同じような意味で、「片足立ち」を、「200キロもの股関節荷重に必死に筋力で耐える、ものすごくヘビーな行為」として「だけ」説明するのは、どこか片手落ちな感じがする。

木のポーズ(中心線入り)ちょっと「木のポーズ」をとっている人の「身体の位置関係」をよく観察してもらうために、体の中心線を通る赤い縦線を書き加えてみた。

地面についている足の位置」に注目してもらいたい。

普段歩いたり走ったりするときの「肩幅くらいに開いた足の位置」より、ずっと体の中心側(重心側)に寄っていて、「頭部の真下」に位置させていることがわかる。これが、ひとつの「コツ」というやつだ。
ネットで「木のポーズ」の写真をたくさんみてもらうとわかるが、ほとんどの「木のポーズ」で、「地面についた足の位置が、体の中心側に寄っている」ことがみてとれる。

「両足を肩幅程度に開いて、歩いたり、座ったり、立ったりする」という「普段どおりの身体操作」に慣れきってしまっている人が、「片足だけで立とう」とすると、最初は「両足で立っているときの、足の位置」をそのまま適用しようとする。
「両足立ちのための足の位置のままで、片足で立とう」とすると、バランスが崩れ、グラグラするから、人はそれを筋肉で抑え込もうとする。そうすると、なおさら過度の緊張状態になり、やがて倒れてしまうことになる。

「片足だけで安定して立つ」ための最初の出発点は「身体というものが、とても不自由な存在なのだ」と気づくことにある。身体の不自由さは、筋力のあるなしと、必ずしも関係ない。


MLBでは今も、「ドーピングで発達させた人工的な筋肉でホームランを量産しまくって、他人から褒められたい」という卑しい発想があいかわらずなくならないわけだが、その原点にあるのは、いわば「筋肉によるパワーだけで必死になって片足立ちして、ドヤ顔しているオトナ」の「チカラまかせの発想」なわけだ。
まったくもって、Ninjaの伝統で世界に知られる日本人の発想ではない(笑)


そうした「チカラまかせで打つ」という発想の対極に、
弛緩しつつ打つ」という発想がある。

スポーツを語ることは死ぬほど好きだが、スポーツをやることには興味がない「チカラまかせの筋肉フルスイング愛好家」のみなさんの基本発想の奥には、「弛緩してボールが遠くに飛ぶはずがない」という、実際にバットを振ったことの無い人特有の勝手な思い込みがある(笑)(実際に打ってみれば、チカラでボールが飛ぶわけではないことくらい、誰でもすぐにわかるわけだが)
こういう人たちは普段、やれセイバーメトリクスだ、データだ、科学だ、などと「数字」で間違った主張を強弁し続けながら、その実、行き着く先は「ステロイドと筋肉とパワー」だったりするのだから、いったい何が言いたいのやら、さっぱりわけがわからない(笑)「最終的に筋肉が見たいのなら、おまえら、別にリクツもデータも必要ないだろうが?」と言いたい。


日本の歴史の中には、古武道の達人が、自己の腕力でなく相手の体重を利して相手を動かしてみせるような、「腕力に頼らずに、身体を扱うための方法論」の伝統が確固としてある。
それは、例えば、「たとえ片足だけで立っていても、本来なら股関節に数百キロかかってもおかしくない荷重を、それほど感じず、安定して立ち続ける」ための方法論でもある。


イチローがMLBに行って達成しつつあることの意味は、ヒットを3000打ったとか、盗塁を500したとか、そういう「成績」や「数字」だけだろうか。

違うと思う。

「筋肉テーマパーク」(笑)MLBに行って、弛緩した柔軟な身体からチカラを導き出す東洋的な方法によって積み上げた業績の数々、体幹トレーニングブームをはるかに先行した独自のトレーニング手法、イマヌエル・カントの「散歩」に比肩する正確無比な運動準備のルーティーン、外面的な筋肉に依存しない方法論で最高の見地に到達してみせたことに、100年に1度クラスの非常に大きな意味があると思う。

それは、ドーピングの是非、日本人のメジャー挑戦の成否といった、せせこましい問題ではない。もっと深いところで、「自分の周囲に対し、違う世界観を提出してみせる作業」だ。この容易ならざる作業を達成できた、ただそれだけで、イチローは「野球殿堂」に入る資格がある。

サードベース上でストレッチするイチロー

February 11, 2015

SB NationでGrant Brisbeeという投稿者が、MLB各チームの戦力をマトリクスにしている。どうやら去年もやっているらしいが、見るのは今年が初めてだ。

2014年2月版:Baseball teams and the windows that define them - SBNation.com

2015年2月版:The win-now and win-later windows around baseball - SBNation.com

オリジナルの図をちらっと見たが、単年だけ見ても、大変申し訳ないけれど、正直いって「個人の感想の域」を出ていないから、ちっとも楽しめない(笑)
なので、ちょっと手を加えてみた(笑)2014年と2015年の図を重ね合わせて、「動態」として観察することにしたわけだ。うっすら見えているのが「2014年2月の評価」、濃く見えているのが「2015年2月の評価」。矢印はもちろん「位置移動の方向と大きさ」を示す。

せめてこのくらいは「手間」をかけてくれないと、個人の思いつきなんてものが「情報」に変わることはないだろう。

2014年〜2015年にかけての戦力強化傾向 via SB Nation


ハッキリ言うのは失礼かもしれないが(笑)、SB Nation自体は個人的な思い込みの延長にあるメディアであるわけで、元データに何か科学的根拠や絶対的な信頼性があるわけではない。だから、専門スポーツメディアが既に書いているストーブリーグ評価と重ね合わせて、「眺めて楽しむ」程度にするとちょうどいい。


矢印の「向き」は、おおまかに分けると3種類ある。

そのうち、「矢印が、より右方向を向いていること」が、「コンテンダーとして、より戦力アップしたこと」を意味するわけだが、「右を向いた矢印」をもつチームの矢印のかなりの部分が「右上方向を向いている」ことがわかる。(例:SF、TOR、BAL、LAA、SD、MIA)
また前のシーズンと戦力が変わっていないチームでも、セントルイス、ピッツバーグ、シアトルが、よりヴェテラン重視に傾いたと、元記事のデータは評価している。(注:ブログ主が「そう思う」のではない。元データが「そうなっている」と書いているのだ。間違えてほしくない)

元データの信頼性うんぬんをとりあえず置いといて言うなら、元記事がいわんとする「このストーブリーグの動きの特徴」は、全体として「若い選手からヴェテランへのシフトによって戦力を高めたチームが多かった」、ということになる。

て、ことは・・・、老朽化ヤンキースは「最先端のチーム強化戦略をとってるチーム」ってことだな(笑)可哀想な田中(笑)

February 09, 2015

MLBサイトの老舗Hardball Timesに、この100年間の「1試合あたりの得点、ホームラン、ヒット、四球、三振の数」の変化について書かれた記事がある。
The Strikeout Ascendant (and What Should Be Done About It) – The Hardball Times
記事の主旨を簡単にいうと、この100年で最も変わったのは「三振数の激増」であって、100年前は「1試合あたり2三振」くらいだったのが、いまや「8三振」と「約4倍」にもなってるから、何か手を打たねば、という話だ。
MLB100年史における三振数の激増


なかなか興味深い。

だが、「MLBの得点力低下をもたらした四球・長打の過大評価」原論にむけてという立場で参考になるのは、三振の激増よりむしろ「1試合あたり四球数が、この100年間というもの、ほとんど変わっていないこと」のほうだ。

かつて2011年ア・リーグについて、こんな記事を書いたことがある。
2011年9月3日、チームというマクロ的視点から見たとき、「出塁率」を決定している唯一のファクターは「打率」であり、四球率は無関係、という仮説。 | Damejima's HARDBALL

記事の主旨を簡単に書くと、こんなことになる。
「2011年ア・リーグ単年でみると、チーム四球数は、チーム総得点の多い少ないに関係なく、あらゆるチームに一定割合で発生している。
四球数は、チーム間の打撃格差や、チームそれぞれの打撃のタイプの違い、パークファクター等にほとんど左右されない。そのチームが稼ぎ出す「総四球数」というものは、それが得点の非常に多い強豪チームであれ、得点の非常に少ない貧打チームであれ、ほとんど変わらない。
したがって、チームという視点で見るとき、「出塁率の高低を決定するファクターのほぼすべて」 は、「打率であって、四球は関係ない。また、「四球数」は、チーム総得点数の増減に影響するファクターではない


今回はあらたにHardball Timesのまとめた「100年間のデータ」を見たわけだが、ここでも同じように
この100年の野球史において、1試合あたり四球数はほとんど変化していない
ことがわかった。

このことによって、かつてこのブログで「2011年ア・リーグ単年」に限定して書いたことは、どうやら「100年間のMLB史全体」についても拡張できそうだ。つまり、次のようなことがいえる可能性がより高まった、ということだ。

野球のルールが現在のような形に固まって以来100年間、さまざまなルール、さまざまな才能、さまざまな投打のスタイル、さまざまな分析手法が登場してきた。だが、「1試合あたりの四球数」は、どんな時代であれ、ほとんど変わってはいない。

したがって「四球」は、100年の野球史においてずっと、出塁率を左右するファクターではまったくなかったし、また、チーム総得点数を左右するファクターでもない。


さて、この100年で野球が最も大きく変わった点が「三振数の激増だ」という話だが、このことでわかってくることも、少なからずある。
例えば、100年前と今とで打者の置かれたシチュエーションの違い、100年前に4割打者がゴロゴロいた理由、投手の奪三振記録の重さの違い、試合時間が長時間化している理由など、いろいろなことに一定の説明がつけられるからだ。


野球のルールが現代的に固まる前の、19世紀中頃のルールでは、打者は「ハイボール」「ローボール」と、投手に投げるコースをおおまかながら指定できたし、四球も4ボールでなく、8ボールとか7ボールとかで歩くルールだった。
というのも、チェスで先手側が最初の一手を指さないといつまでたってもゲームが始まらないのと同じで、初期の野球は「打者がまずボールをフィールドに打つことが、ありとあらゆるプレーに先立つ大前提だった」からだ。三振も四球も、もともとこのゲーム本来の目的ではない。

だから、100年前にルールが固まった直後の野球のスタイルは、プレーも観戦も、たぶん今とは相当に違うものだ。


100年前の打者と、今の打者
100年前のバッターはほとんど三振しない。
これは、「そのバッターが非常に優れている」ということがあるにしても、それよりも「野球初期には、興行側も観客側も、『まず、何はさておきバッターがフィールドに打って、その後に何が起こるかを観戦する』、それが当たり前と考えていて、三振という現象が起こること自体にそれほど重きが置かれていなかった」と考えるほうが正しい気がする。

いずれにしても、100年前のバッターたちが、三振する心配もあまりなく、コーチやアナリストから出塁率向上をクドクド言われ続けることもなく、「早打ちするな」だのと余計な制約をつけられることもなく、バッターの手元で曲がる絶妙な変化球もなく、苦手球種をスカウティングされるも心配なく、安心してバットを振り続けられたのだから、今ではありえない4割打者がゴロゴロいたのも、ある意味当然だ。
思えば、三振が当たり前になった現代にイチローはよく3割7分も打てたものだ。やはり100年にひとりの逸材だ。

100年前の観客の見たもの
100年前は、今のようにボールの見極めにそれほど必死になる必要がない時代だっただろうから、試合経過も非常にスピーディーかつダイナミックだったはずだ。
早いカウントで好球必打。まずはガツンと打って、走って、守る。シンプルで素晴らしい。観客はそういうスカッとしたゲームを見て、スッキリ帰れたのではないか。なんともうらやましい限りだ。


「1試合あたり300球時代」の始まった1990年代後半と、
三振数激増の関係

「両チームあわせた投球数」について、1990年代後半に「1試合あたり300球」を越えるような時代がやってきて、アンパイアの疲労が急増したことを、2014年10月に記事にした。
記事:2014年10月21日、1ゲームあたり投球数が両チーム合計300球に達するSelective野球時代であっても、「球数」は単なる「負担」ではなく、「ゲーム支配力」、「精度」であり、「面白さ」ですらある。 | Damejima's HARDBALL
Hardball Timesの記事のデータをみると、この「1試合あたり300球時代」の始まった「1990年代後半」は、同時に「三振数の急増」が起きている時期と重なっていることがよくわかる。これには、非常に納得がいく。

というのは、奪三振という行為は、同時に「球数を多く投げる」という意味でもあるからだ。
やたらと球を投げなければならない今の野球では、当然ながら先発投手の投げられるイニング数はどんどん短くなる。リリーフの責任も重くなる一方だし、投手の寿命にも影響する。
そして、投球数が多くなれば、当然ながら「試合時間」も長くなる。三振の多い野球は、試合時間も長いからだ。

1990年代後半以降の「投球数の急増」
The average number of pitches thrown per game is rising ≫ Baseball-Reference Blog ≫ Blog Archive1980年代末以降の投球数の増加 via Baseball Reference


蛇足だが、この100年でMLBの三振数が激増し続けたことを考えると、「奪三振記録の重み」にしても、「より古い時代の奪三振記録のほうが、はるかに重い」とか、「奪三振が難しかった時代の記録のほうが価値がある」いうことになるかもしれない。

例えば、1910年代より、一時的に三振数の減少している1930年代〜1940年代のほうが奪三振は難しいとしたら、同じ「2500奪三振」でも、クリスティー・マシューソンの2502奪三振より、ボブ・フェラーの2581奪三振のほうが価値が高いのかもしれない。あとは例えば、数字をきちんと補正したらひょっとするとノーラン・ライアンの5714奪三振より、100完封3508奪三振のウォルター・ジョンソンの数字のほうがずっと価値が高い、なんてことが言えるようになるかもしれない。

511勝の歴代最多勝記録をもつサイ・ヤングは、三振という面でいうと、1900年以降に奪三振王になったシーズンはわずか1回しかない。彼は自責点でも被安打でも最多記録保持者でもあることもある。
20世紀初頭の奪三振王といえば、ルーブ・ワッデル、クリスティー・マシューソン、ウォルター・ジョンソン、ピート・アレクサンダー、レフティ・グローブ、ダジー・ヴァンスなどだが、20世紀初めのMLBが「打者がほとんど三振してくれない時代」だったことを考慮するなら、「サイ・ヤング賞」は今年から「ウォルター・ジョンソン賞」と名称を変更すべきだろう(笑)



February 08, 2015

チッパー・ジョーンズは、ほんとカッコいい選手だったし、大好きな選手のひとりでもあったんでねぇ・・・。書くかどうか、ほんと迷った。けど、書くことにした(笑)
なにも好青年のチッパーのやらかした「うっかり」を批判とか擁護とかしたいんじゃなく(笑)、彼と同じ趣味を持っている人たちは少なくとも「オバマとウォルマートの関係」の意味についてきちんと認識するべきだと思うし、それに、ブログ主自身の日頃の行動にもチッパーを笑えない部分がないではないという自覚もあるからだ(笑)
ま。これも、世界を知るためのひとつの方法論ということで。


チッパーがやらかしたのは(温厚な彼のことだから悪気はないと思いたいが)コネティカットで起きた2012年のサンディフック小学校銃乱射事件について、「それ、つくり話じゃん!」って、ツイッターに書いちまったこと。
たぶん、寝る前に怪しい雑誌でも読んだか、酒でも飲みすぎたかなんかだろうけどね・・・。もちろん後で削除して謝罪もしたんだけど、ちょっとやりすぎ(苦笑)
Chipper Jones Is Now A Sandy Hook Truther (UPDATED)
彼の筆がすべった原因はたぶん、「陰謀論 (=Conspiracy theory 陰謀説と表現する人もいる)の読みすぎ」ってやつだ。
ほら、「アポロは本当は月には行ってない」とかね。いろいろあるでしょ。あれ。正直いえば、自分も興味本位で「ルイ14世・替え玉説」とか読んでたりするんで、チッパーのこと笑えない(笑)


「サンディフック小学校銃乱射事件」っていうのは、2012年にコネティカットの小学校であった銃乱射事件。もちろん「実際にあった現実の事件」だ。小学生20人を含む26人もの尊い命が犠牲になった。犯人はニューハンプシャー生まれの前科のない20歳の若者で、事件を起こした後、自殺している。
事件後、『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』って映画に出てたジム・キャリーが、映画における暴力シーンの存在に疑問を感じたって理由でプロモーションへの出演をやめちまった、なんて後日談もあった。
この『キックアス』ってシリーズも、これまたブログ主の大好きな作品だったりすんだよね、困ったことに。チッパーも好きかもしれない(笑)
Sandy Hook Elementary School shooting - Wikipedia, the free encyclopedia


念のため、あえて繰り返すけど、サンディフック事件は「架空の事件」じゃない。なのに、陰謀論を振りかざす人があとを断たない。だから、問題なのは、陰謀論を振りかざす人がたくさん出現する「原因」だ。


サンディフック事件に陰謀論がささやかれた原因は、合衆国憲法修正第二条「武器を携帯する権利」の是非に関係がある。
「サンディフック事件=陰謀」論を信じてる人たちがいわんとする「ストーリー」は、「この事件の後、アメリカの民主党オバマ政権が銃規制を推進しようとした。なぜって、この事件自体が、銃規制を強引に進めたい政府が仕組んだ『やらせ事件』だったからだ」っていう、「強引すぎる邪推」なのだ。

チッパー・ジョーンズも、こういう陰謀論の存在をどこかで興味本位に知って、この事件に対する認識が歪んだままになってたんだろうと思う。だから彼は、ツイッターで事件に関する書き込みを見て反射的に「ヤラセじゃん」と、ついつい書きこんでしまったんじゃないか、と推測する。


でもね。

「政府が銃規制を強引に達成するために、ありもしない乱射事件を捏造した」とか妄想してる人たちは、少なくともコーヒーでもいれて、現実に存在する「オバマ大統領とウォルマートの関係の深さ」くらい考慮する時間を作るべきだと思う。


たしかにオバマ大統領はサンディフック事件に涙した後で、「銃規制法案」を議会に提出している。

だが、結果は、銃規制どころか、真逆になった。
皮肉なことに、全米のウォルマートで規制対象にされたセミ・オートマ銃が無茶苦茶に売れまくってソールドアウト状態になって、2013年2月に全米のウォルマートで「1日に購入できる弾は、1人当たり3箱まで」とか制限されたくらい、そのくらい売れまくった。

つまり、オバマさんの提出した銃規制法案をきっかけに「むしろ全米で銃の総数は増えた」わけ。そして例によって、アメリカの銃規制論議は、一時的に議論として沸騰しても、実際には全米での銃規制は実現してないわけ。

つまりサンディフック事件でのオバマさんの対応手法と手腕は、「銃規制実現につながる見込みなんて最初からまったくありえない程度のもの」であって、しかも、事件をきっかけに銃の数は増えてるしで、「サンディフック事件は、銃規制を絶対に実現するための『ヤラセ』だ」なんて妄想は、やはり妄想でしかない。

むしろ、「オバマとウォルマートの関係」をちゃんと理解してる人なら、「オバマ大統領は、以前から関係の深いウォルマートを儲けさせるためにサンディフック事件を捏造した」なんて、「別種の陰謀論」(笑)でも作ったほうが、よほど現実世界に即してるかもしれない(笑) もちろん、いうまでないけど、そんな与太話も絶対にありえない(笑)


ともかく言えることは、「陰謀論愛好家」は個人の場でひそかに楽しむのならともかく、本来なら遺族と悲しみを共有すべき陰惨な事件をネタに自分の妄想を公式の場で披露するような不謹慎な行為は、心して慎むべきだ、ということ。


オバマさんとウォルマートの関係は、先日ツイートしたいくつかの事実でわかるように、とても深い。彼自分自身がウォルマートから支援を受けているだけでなく、奥さんもウォルマート関連会社出身。また、「中国との関係」について、オバマさんとウォルマートは多くの共通の利害をもつ抜き差しならない関係にある。









こうした「オバマさんとウォルマート」、そして「その両者と、中国との関係」は現実の話だから、それをきちんと考慮に入れれば、「サンディフック事件はやらせ」と主張する陰謀論は「ただの妄想」だっていうことは明らかになる。
2度離婚しているチッパー・ジョーンズが3度目の結婚をしたかどうかは知らないけど、もしまだ結婚してないなら、前の奥さんの子供にでも会って、キュラメルマキアートでも飲みながら、よーく叱ってもらうといいだろうな(笑)

February 04, 2015

国際サッカー連盟と契約のある世界的な八百長監視機関が日本サッカー連盟に活動自粛を警告していたにもかかわらず、活動を続けてきたサッカー日本代表監督ハビエル・アギーレがスペインでの八百長関与疑惑で解任されたわけだが、彼の八百長関与が取り沙汰されているゲームは、「2011年」のスペイン1部リーグ最終節、レバンテ対サラゴサ戦で、この「2011年」という部分にちょっとした意味がある。

というのは、この「2011年」という年が、下記に示す大量の事例でわかるとおり、「サッカーに蔓延し続けている八百長事案が大量に摘発されたり、裁判が始まったりした、サッカー八百長摘発元年」ともいえる年だったからだ。
アギーレ八百長関与疑惑の概要:
2011年当時、アギーレ率いるスペイン1部リーグのサラゴサは2部降格危機にあったが、最終節で(レバンテに2―1で勝ち、1部残留を決めた。(「降格危機チームがリーグ最終節の奇跡的な勝利で危機をのがれる」なんてのは、サッカーの典型的な八百長パターンのひとつ)
報道によれば、試合前までに、サラゴサ会長、アギーレ監督、選手に、総額96万5000ユーロ(約1億2900万円)にのぼる不自然な金銭のやりとりがあり、スペイン検察はアギーレの銀行口座においても「計8万5000ユーロの振り込み」があった後「引き出された」という口座記録を確認している模様。事件の告発状は既に裁判所に受理され、40人以上が告発されている。

もし、仮に野球のWBC監督が在任中に八百長事件で捕まったら、世間はどう思うか。そういう風にちょっと考えればわかることなわけだが、日本代表監督が八百長事件にからんだ可能性があるとして在任中に辞任させられる、なんてことは、間違いなく「事件」そのものなのだが、さっぱり自覚のない人が大勢いる。

それどころか、不思議なことに、「2011年という年が『サッカー八百長大量摘発イヤー』だった事実」、あるいは、2013年にユーロポール(欧州警察機構)が、ワールドカップ予選や欧州チャンピオンズリーグなどを含め、大小680試合ものゲームに八百長疑惑があり、15カ国425人が関わっていると指摘したこと、これらの事実をきちんと念頭に置いて、世界のサッカーが既に八百長まみれであることを、今回のアギーレ辞任騒動にきちんと関連づけて解説した日本のスポーツメディアを(下記の産経のようなごく一部の例外を除いて)ほとんど見ないのである。


ナショナルチームの現役代表監督が八百長で訴訟を起こされて辞任なんてことが起こる原因は、ランス・アームストロング事件が明らかになっても何も変わらない自転車業界や、リタ・ジェプトゥーの資格停止などケニアのドーピング・スキャンダルをあえて看過してこれまで通りの通常営業を続けようとしている世界のマラソン業界などもそうであるように、それでなくても低下しつつあるサッカー人気が不祥事によってさらに低下するのを心底おそれる日本サッカー協会とメディアが、サッカーに蔓延し続ける賄賂、ドーピング、八百長といった不正の数々にあえて目をつぶったまま、ポジティブなニュースのみを扱い続けようと故意にやってきたところに、そもそもの問題があった。

サッカー界で近年発覚した主な八百長事件
(以下2011年発生事例赤字で示す)

中国 33人が永久追放、協会幹部も重い懲役刑
2002年日韓ワールドカップでもレフェリーを務めるなど、中国サッカーにおける第一人者といわれていた有名レフェリー、陸俊(ルー・ジュン)を含む4人が、収賄などで禁固刑実刑判決を受けた。
ルー・ジュン審判員は、1999年〜2003年の複数の試合で、一方のチームにのみ有利な審判をした見返りに、計81万元(日本円で約1000万円相当)の賄賂を受け取っていた。ルー審判員は収賄で禁錮5年6月と10万元の個人財産没収、他の3人は3年6月から7年の禁錮刑。
こうした賄賂事件には、同国トップリーグ「サッカー・スーパーリーグ(中国超級聯賽)」に所属する「上海申花(Shanghai Shenhua/上海申花聨盛足球倶楽部)」を含む複数のクラブが関係したといわれ、2013年に中国サッカー協会は、33名を永久追放、25人を5年間の資格停止するとともに、上海申花の2003年のリーグ優勝の剥奪と100万元の罰金、2013シーズンのリーグ戦での勝ち点マイナス6からのスタートとしたほか、合計12ものクラブを処分した。

サッカーの闇賭博が横行している中国では、当局が2009年から摘発に乗り出し、2年もの長期捜査によって複数のサッカー協会幹部を含むクラブ首脳から、監督・選手に至るまで、50名以上の逮捕者を出し、2011年12月から逮捕者の裁判が開始された。
サッカー協会幹部がらみの裁判では、2012年に相次いで厳罰が言い渡されており、元・中国サッカー協会審判員委員会主任、張建強が懲役12年、元・同協会副会長、楊一民が懲役10年6カ月、元サッカー協会副会長で国家体育総局サッカー管理センター主任の南勇が懲役10年6カ月などとなった。
 
韓国 41人が永久追放、韓国選手10人に1人が八百長に関与
2011年7月に元代表選手を含む50数人にも及ぶ元・現プロサッカー選手が、サッカーくじを悪用した八百長に関与したとして起訴。この「50数人」という人数は、外国人を除くと約600人が所属している韓国Kリーグ所属プロ選手の「ほぼ1割」。「選手約10人に1人が八百長に関与した」計算になる。
同国検察は、2010年6月〜2011年4月の21試合について、選手が故意に試合に負けて金銭を受け取った事実を確認したとし、複数の代表経験者を含め、国内リーグの看板スターまでもが買収や脅迫によって八百長にかかわったことが判明。2013年1月に国際サッカー連盟は、Kリーグ41人の選手を永久追放した。
Kリーグ八百長事件 - Wikipedia

2002年ワールドカップ韓国対イタリア戦の疑惑の審判
エクアドル人のバイロン・モレノ

モレノは、八百長試合が確実視されている2002年W杯の韓国対イタリア戦で、イタリアのトッティに2枚のイエローカードを出して退場させ、延長戦でもイタリア起死回生のゴールを「オフサイド」と判定し、イタリア人の激怒をかったことで超有名なエクアドル人審判。
同2002年エクアドル1部リーグのLDUキト対バルセロナSC戦の後半ロスタイムにホームチームが同点にするまで延々と笛を吹かず、異常に長いロスタイムをとった件で、20試合の資格停止。さらに資格停止から復帰直後の3試合目、こんどは同国リーグ第13節クエンカ対キト戦で主審としてアウェイの選手にばかり3人にレッドカードを出して、モレノは1試合の出場停止処分となって、直後に審判を引退した。
なお引退後のモレノは2010年9月にニューヨーク・ケネディ国際空港でヘロイン大量所持容疑で逮捕され、懲役30ヵ月の刑で服役。2012年12月にエクアドルに強制送還されている。

アルゼンチン人監督エクトル・クーペルの関与した
アルゼンチンとスペインでの八百長

アルゼンチン人監督エクトル・クーペルはかつてスペインのバレンシア(1999〜)、イタリアのインテル(2001〜)、スペインのマジョルカ(2004〜)などの監督を歴任した人物だが、2012年1月イタリア検察当局の取り調べに対して、アルゼンチンとスペインのリーグ戦2試合ずつ、合計4試合での八百長関与と、イタリア・ナポリのマフィアから20万ユーロを受け取ったことを認めた。

イタリア 八百長が恒例行事のセリエA
2010年ナポリ対サンプドリア戦での八百長で、ナポリ主将DFパオロ・カンナヴァーロ、DFジャンルカ・グラーヴァに6カ月の出場停止処分、GKマッテオ・ジャネッロに3年3カ月の出場停止が言い渡され、ナポリに勝ち点2剥奪と7万ユーロの罰金が科された。この八百長試合の結果、サンプドリアはチャンピオンズリーグ予選出場権を手にした。
2011年8月には、かつてアタランタ主将だった元イタリア代表クリスティアーノ・ドニが、アタランタ所属時の八百長で逮捕。3年半の資格停止処分になり、アタランタにも勝ち点マイナス6の処分が下された。同選手は主にイタリア・セリエAに所属した選手だが、2005-2006シーズンには八百長事件関与を認めたアルゼンチン人監督エクトル・クーペルが監督をつとめていた時代のスペイン1部リーグ・マジョルカに所属していた。
2012年04月には、DFアンドレア・マジエッロが八百長でイタリアの捜査当局に逮捕。同選手はASバーリに所属していた2011年に、対レッチェ戦(2-0でレッチェ勝利)で故意にオウンゴールを行ったことで報酬18万ユーロを受けとったと供述した。
(ちなみに、深刻な財政難に悩むセリエAは、2016年からチーム数と選手数の縮小に踏み切る予定で、1部リーグは20チームから18チームに縮小される)

トルコ フェネルバフチェなどの処罰
イスタンブール警察が行った大規模な八百長捜査で30人以上が逮捕。その中には、トルコの最有力チーム、フェネルバフチェの会長、有力チームのひとつトラブゾンスポルの副会長や、ウミト・カランら現役3選手が含まれ、他にも解説者も含めた関係者多数が取り調べを受けた。
現地報道では、「2008年から2010年までのリーグ戦の少なくとも17試合」で八百長が行われていたと報道。フェネルバフチェとベジクタシュによるスーパーカップがキャンセルとなり、またリーグ戦開幕が1カ月延期となった。また、フェネルバフチェはチャンピオンズリーグへの出場停止処分を受けた。

トルコでの国際試合2試合における
審判6名(ボスニア人、ハンガリー人)の永久追放

2011年にトルコで行われた、エストニア対ブルガリア、ラトビア対ボリビアの2試合の国際親善試合は、ゴールすべてがペナルティーキックによるという疑惑だらけの試合だったが、国際サッカー連盟の調査の結果、ボスニア人審判シニシャ・ズルニッチら3名と、ハンガリー人審判クリスティアン・セレメツジら3名、計6名のレフェリーが永久追放になった。

ベルギー ポール・ピュトの証言
2013年に川島永嗣が所属していたベルギー・リールセの元監督ポール・ピュト氏がフランス・フットボール紙に「ベルギーで八百長を強要された」と証言。同氏は2005年にベルギーで発覚した八百長問題に関わったとして一時永久追放処分を受けた経験があり、後に控訴審を経て3年に減刑された経験をもつ。

ドイツの「ブンデスリーガ・スキャンダル」
ドイツ2部リーグ審判ロベルト・ホイツァーが大規模な八百長への関与を自供したことがきっかけで明るみになったスキャンダル。クロアチアの犯罪組織につながるギャンブルビジネス関係者が裏で糸を引いていたといわれ、2004年に行われた13試合が八百長の対象となった。ホイツァーはじめ、Dominik Marks、Torsten Koopなどの審判と、ヘルタ・ベルリンの3選手、賭けを行うカフェの関係者などが処分され、ホイツァー自身にも永久追放と懲役2年5カ月間が言い渡された。
Bundesliga scandal (2005) - Wikipedia, the free encyclopedia

赤道ギニア アフリカネーションズ・カップ
アフリカネーションズ・カップ準々決勝で、ホスト国の赤道ギニアがチュニジアと対戦し、1点ビハインドで迎えた試合終了間際の後半アディショナルタイムに赤道ギニアが得たPKによって延長に突入、延長で赤道ギニアがさらに追加点を挙げ勝利した事件。
アフリカサッカー連盟(CAF)は赤道ギニアに不審な勝利をもたらしたモーリタニア人主審ラジンドラパルサド・シーカーンに6か月の活動停止を言い渡し、アフリカサッカー連盟におけるトップレフェリーの地位を剥奪。同審判は国際試合で笛を吹けなくなった。

ガーナ 2004年アテネ五輪の対日本戦
ジャーナリスト、デクラン・ヒル氏の著書『黒いワールドカップ』で明かされた2004年アテネ五輪のガーナ対日本戦の事件。日本戦を前にガーナは2試合を終え2位で予選勝ち抜けに有利な状況にあり、加えて最終節は既に予選敗退が決まり消化試合となっている日本との試合だった。当然、賭けのオッズは「ガーナ勝利」、「ガーナ勝ち抜け」に傾いたが、実際の試合は1-0で日本勝利に終わり、ガーナは総得点でイタリアを上回れずに3位に転落、予選敗退した。この八百長事件に日本側は関与しなかったが、ガーナ代表主将のスティーヴン・アッピアーが大会中に八百長フィクサーから金銭を受け取ったことを認めているという。

南アフリカ W杯前の親善試合
2012年12月、南アフリカサッカー協会会長カーステン・ネマタンダニ、同協会CEOデニス・マンブルを含む5名が八百長に関与したとして逮捕。2010年ワールドカップ前の数週間に南アフリカチームが行った国際親善試合(タイ、ブルガリア、コロンビア、グアテマラ)において、アジアの八百長関係者の利益となるよう、試合結果を操作した可能性があるとされた。(タイ戦は4-0、グアテマラ戦は5-0、コロンビア戦は2-1でそれぞれ勝利、ブルガリア戦は1-1で引き分け)
この事件が発覚したのは、フィンランドでの八百長事件で有罪判決を受けたシンガポール国籍のインド系住民ウィルソン・ラジ・ペルマル容疑者がFootball 4U Internationalという名義の会社を舞台に起こしていた八百長事件の数々をFIFAが精査する中で、同容疑者が2010年5月にワールドカップ直前の南アフリカで行われた南アフリカ対コロンビア戦でニジェール人審判を買収した八百長事件に、南アフリカサッカー協会の関与が判明したことによるもの。

産経WESTが以下の記事で羅列した
フィンランドギリシア等の八百長
【サッカーなんでやねん】中国系実業家も暗躍する八百長シンジケート…アギーレ疑惑は序の口、世界サッカー包む深い闇(1/3ページ) - 産経WEST
フィンランド アジア系黒幕の逮捕
同国ゴシップ紙が、2005年にフィンランド国内リーグのクラブの株式を取得したアジア系実業家が黒幕となって行われた2007年の八百長で、同国選手が故意に負けて1万ユーロを受領したと認めるインタビューを掲載。2011年には国際的な八百長シンジケートの黒幕の一人として、シンガポール国籍のウィルソン・ラジ・ペルマル容疑者が逮捕され有罪となり、他にも選手9人がトレーニング中に拘束される事態に発展した。
ギリシア オーナーによる脅迫と買収
国内クラブのオーナーが脅迫や買収の罪で告発され、2013年に4年6カ月の実刑判決。

同記事は他にイングランドハンガリーでの八百長事件を指摘。

ユーロポールが2013年に指摘した
ヨーロッパ・サッカーにおける八百長


ヨーロッパ全域で行われた380試合と、南米やアフリカで行われた約300試合、合計680試合が捜査対象。八百長疑惑がもたれている試合の中には、ワールドカップの予選(アフリカ2試合、南米1試合)と、欧州チャンピオンズリーグ関連の試合が含まれており、ヨーロッパでの380試合は15カ国425人の選手・審判が関与したとみられている。

UEFA関連の試合で八百長疑惑をかけられたのは2試合。うち1試合は過去3〜4年以内にイギリスで開催された試合らしいともいわれたが、詳細は判明していない。一部報道では、ハンガリーのブダペシュト・ホンヴェードが、UEFAヨーロッパリーグ予選のフェネルバフチェ(トルコ)との試合で八百長を行った疑いを持たれているとの報道もあった。また、ヨーロッパの380試合のうち、79試合がトルコ、70試合がドイツ、41試合はスイスで行われたという説があるが、これも定かではない。

ユーロポールの会見によれば、1年半にわたるかつてない規模の八百長捜査が行われ、「シンガポールに拠点を置く犯罪組織による組織的犯罪」との見方が示された。その犯罪組織は、八百長によって推定800万ユーロもの利益を上げ、また選手などに報酬が賄賂として支払われたと報道されており、賄賂最高額はオーストリアで支払われた14万ユーロとみられている。


「八百長が行われやすい試合」、というのは、サッカーというスポーツのシステム上、確実にある
なぜなら、現状のサッカーのシステムそのものが「そういう風にできている」からだ。そして、厳しく言わせてもらえば、サッカー界はその「システムそのものの欠陥に原因があることがわかりきっている腐敗」を、システムの変更という形で改善してはこなかった。だから、現在の八百長の蔓延は、サッカー界の隅々にまではびこる不正の数々をこれまでずっと見過ごし続けてきた歴史がまねいた結果だ。

「八百長が起こりやすい試合」は、パターンがはっきりしている。

最も多いのは、その試合の勝利が「クラブの収入を左右する試合」での八百長だ。
例えば「1部リーグに残れるかどうかが決まる試合や、「チャンピオンズリーグに出られるかどうかが決まる試合」がそれにあたる。(前者の例が、アギーレが関与したといわれている2011年スペイン1部リーグ最終節レバンテ対サラゴサ戦。後者の例:2010年セリエA ナポリ対サンプドリア戦)
元アルゼンチン代表MFマティアス・アルメイダが「セリエAのリーグ優勝がかかった2001年パルマ対ローマ戦で、パルマはわざとローマに負けてやり、ローマが優勝した」と証言しているように、「リーグ優勝が決まる試合」ももちろん例外ではない。
サッカーではシステム上、1部リーグに残留するかどうか、あるいは、チャンピオンズリーグに出られるかどうかで、「クラブの収入」がとてつもなく違ってくる。だから、こうしたケースでの八百長は、「クラブ主導」で行われる。
このケースの中でも、とりわけ八百長が多発するのは「1部リーグ陥落のかかった試合」だ。特に、対戦カードの負けてもらう側のクラブが「すでに降格が決まっている」あるいは「すでに残留が決まっている」ケースなら、なおさら八百長が行われやすい。「すでに降格や残留が決まっているチーム」には負けてやることになんのデメリットもないのだから、八百長が成立しやすいのも当然だ。

2つ目のケースは、国際親善試合だ。
「親善試合はガチの試合じゃないんだし、八百長など必要ないだろう」と思うかもしれないが、それは甘い。
スポンサー頼みのビジネスモデルしか成り立たないサッカーという世界では、「あっという間に結果が出て終わってしまう本番での勝ち負けよりも、むしろ親善試合でこそ、いいところを見せておいて、本番に向けた期待感を煽り続け、スポンサーやファンの関心を長期にわたって維持しておくこと」のほうが、はるかに重要なのだ。説明するまでもない。だからこそ日本代表だって、「弱い外国のチームとやたらと親善試合をやって、大勝するところばかり世間に見せつけたがる」のである。
だから、このケースでの八百長は、多くが「ホスト国のサッカー協会主導」で行われる。

3つ目のケースは、サッカー特有の「賭け」にまつわるケースだ。
これは上に書いたフィンランドや南アフリカ、ドイツの例をみればわかるとおり、賭けに深くかかわる「アンダーワールドの人物」が主導して審判や選手を買収し、試合結果を左右する。


このように、不正がおこりやすい試合には「特定のパターン」がある。
だから、アギーレのような「未知の人物」を監督に採用する場合の「不正関与の有無」を吟味する調査の方法論は、まずは監督キャリアにおいて「リーグ降格をかろうじてまぬがれた『きわどい経験』」、あるいは、「リーグ降格をかろうじてまぬがれたチームが奇跡的に残留を決めた試合で、対戦相手の監督をした経験」の有無を調べ、そうした経験が無ければ次の調査に向かい、もしあるなら、その試合の得点経緯がどのくらい信頼に足るものであるか、ビデオでも見て検討してみるだけのことだ。もちろん、「チャンピオンズリーグに進出することが決まったゲーム」「リーグ優勝が決まったゲーム」などについても調査対象にすべきだろう。

このくらいのこと、誰だって思いつくし、時間もかからない。

しかし、日本サッカー協会はそんな単純なことすらやらなかった。(スペインリーグにいたアギーレを選んだ責任者はおそらく、スペイン通の原博実だろう)
それが単純に人を信用しすぎた結果なのか、もっと深刻な意味があるのかは別にして、あれだけ賄賂とドーピングと八百長にまみれたスポーツだというのに、サッカー協会も取り巻きメディアも、サッカーの「汚れぶり」にまったく自覚がないかのようにふるまっているのには困ったものだ。

2011年にあれだけの数の八百長が指摘され、さらに2013年にはユーロポールにサッカーにおける大規模な八百長の存在を指摘されたにもかかわらず、一切マトモには報道してこなかった日本のスポーツメディアにも多くの責任がある。
彼らはそもそも、度重なる大規模ドーピングスキャンダルに業を煮やしたヨーロッパで、スポーツをめぐる刑罰(八百長だけでなく、ドーピングも含む)が、多くの国(例えばドイツ、オーストリア、スペイン、イタリア等)で「刑事罰」として重罪化されつつあったこと自体を知らなかったし、知ってからも他人事のように軽視し続けてきた。
もともとスポーツメディアが「スキャンダルを大規模報道しないまま看過して、故意に風化させようとするケース」はけして少なくないわけだが(例:近年のヨーロッパにおける大規模なドーピングスキャンダルの大半、最近の英国競馬・オーストラリア競馬等における大規模ドーピングの発覚、ロシア、ケニアなどの陸上競技における集団的・組織的なドーピングなど多数)、それにしたって、いくらなんでも無自覚すぎる。

FIFAからのスポンサー離れ、世界的に深刻なサッカークラブの財政難、サッカー大国といわれてきたブラジルでのサッカーの不人気ぶり、Jリーグ人気の壊滅などを見ても、まだ、ワールドカップ誘致の際の贈収賄も含め十数年発覚し続けてきた数々の不正(賄賂、ドーピング、八百長)を看過しても大丈夫だ、世界的な人気スポーツだから問題ない、などと寝言を言い続け、やることといったら、「次の代表監督が誰なのか」ばかりで、問題点も責任も、誰も指摘しないのだから、これではスポーツ・ジャーナリズムなんてものはサッカーには存在しないと断定されてもしかたがない。当然だろう。


Play Clean
日付表記はすべて
アメリカ現地時間です

Twitterボタン

アドレス短縮 http://bit.ly/
2020TOKYO
think different
 
  • 2014年10月31日、PARADE !
  • 2013年11月28日、『父親とベースボール』 (9)1920年代における古参の白人移民と新参の白人移民との間の軋轢 ヘンリー・フォード所有のThe Dearborn Independent紙によるレッドソックスオーナーHarry Frazeeへの攻撃の新解釈
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年11月8日、『父親とベースボール』 (8)20世紀初頭にアメリカ社会とMLBが経験した「最初の大衆化」を主導した「外野席の白人移民」の影響力 (付録:ユダヤ系移民史)
  • 2013年6月1日、あまりにも不活性で地味な旧ヤンキースタジアム跡地利用。「スタジアム周辺の駐車場の採算悪化」は、駐車場の供給過剰と料金の高さの問題であり、観客動員の問題ではない。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年7月3日、『父親とベースボール』 (2)南北戦争100年後のアフリカ系アメリカ人の「南部回帰」と「父親不在」、そしてベースボールとの距離感。
  • 2012年6月29日、『父親とベースボール』 (1)星一徹とケン・バーンズに学ぶ 『ベースボールにおける父親の重み』。
Categories
ブログ内検索 by Google
ブログ内検索 by livedoor
記事検索
Thank you for visiting
  • 今日:
  • 昨日:
  • 累計:

free counters

by Month