June 06, 2009

勝てばいい雰囲気が生まれる。
いい雰囲気の場所には誰しも居続けたいと思うし、
嫌な暗い場所ならトンズラしたくなる。

当然の話である。



アメリカ映画には家庭の父親同士とか親子で連れ立って釣りに行くシーンがある。ボルチモアからシアトルに移籍した当初から城島とバッテリーを組むのを嫌っていて、シアトルの惨状の原因が最初からわかっていた頭のいいベダードも釣りが好きなようで、オフにワカマツ監督やウオッシュバーン投手など、関係者と連れ立って釣りに行ったりしている。

そのベダード、インターリーグの遠征を前にトラウト釣りに行った。トラウトだから、彼はスプーンとかでなく、もしかすると
フライをやるのかもしれない。彼はいまア・リーグの防御率4位につけているが、連戦の疲れを癒すのと、これから始まる正念場に必要な英気を養いに行ったわけのだろう。
このオフの最中、ESPNシアトルの電話取材に応えた。メジャーリーガーもオフに釣りをしているのにかかってきた電話に答えなければならないのだから、なにかと大変だ。

インタビューのMP3ソース
http://icestream.bonnint.net/seattle/kiro/2009/06/p_Brock_and_Salk_20090604_2pm.mp3

このインタビューがなかなか必聴のものになった。来期のチーム残留について初めてコメントしたからだ。
"I love Seattle, can't complain," he said, answering a question. "The city, the stadium, the fans, new coaches . . . it's a lot of fun."

こんなラブリーなことを、とっつきにくいと思われがちだったベダードに言われ、根拠なくベダードに辛口だった地元メディアも浮き足だった(笑)
経営難で電子版だけになってしまったSPIは、今までのイメージと違う彼のコメントに驚きながら、「ベダードをチームに残そう」などと、手のひら返しぽい記事をいまさら書いている始末だ。
.seattlepi.com
Cheery quotes aside, Mariners should hang on to Bedard

そもそもこのライター、記事でベダードのことを「recalcitrant Bedard 気難し屋のベダード」と公然と書いているわけだが、正直ベダードが本当にどのくらい気難しい男なのかどうか、このライター自身が本人とよく交流もしないで何も根拠なく書いている(書いていた)ことがよくわかる。
それは日本のファンにしても同じで、ひと見知りしやすそうなベダードが「本当は」どういう人物なのか、よく知りもしないで「気難しい男」というレッテルを簡単に貼っておいて、「トレードしてしまえ」などと乱暴なクチをきいていたのは、ファンでありメディアだった面が多々ある。

ESPNシアトルのインタビューソースで聞くベダードの肉声は落ち着いた大人の低いトーンの声だ。雰囲気はリラックスしていて明るい。オフの最中という気楽さもあるかもしれないが、インタビュアーのジョークにもジョークで切り替えしたりして軽妙である。
質問には、いつも少し考えてから話し、さらにいいのはトレードなど、きわどい質問にもいやがらず、誠実に答えていることだ。



上のリンクのインタビュー内容は最初公式サイトのファンセンターで紹介されたようだが、日本の掲示板などでも紹介されているようだ。
だが大半の紹介はベダードが「条件が整えばシアトルが好きだし、残留したいねぇ」と言ったトレードがらみの部分だけで、他のなかなか味のある発言部分はほとんど紹介されていないのが、たいへんもったいない。

たとえば、彼の得意球であるカーブについてこんなふうなことを語っている。
「カーブは2種類あって、ハードなのと、そうでないのと。13くらいから投げてるからね。まぁ、得意球かな」
この間ベダードが勝ったゲームで、このブログでも、ベダードのカーブの扱いのうまいロブ・ジョンソンについて書いたわけだが、やはり当たりだった。ESPNシアトルのインタビューも、彼の得意球がカーブだということをわかっていて質問していて、そこらへんはさすがスポーツ専門局のESPNという感じだ。
http://blog.livedoor.jp/damejima/archives/926388.html

2つめの話としては、ロブ・ジョンソンについて。
ベダードは移籍してから主に専属捕手制にしていて、誰がキャッチャーをやるかについては相当なこだわりがある。彼が城島には自分のキャッチャーをやらせないことをふまえてインタビュアーが「ロブ・ジョンソンだけど、どう?」みたいに質問をふると、短いのだが「ああ。彼ね。ハードにやってくれてるね」と、ありきたりな言い方ではあるが、いちおうきちんと褒めている。


このインタビューが今シーズンのシアトルにとってどういう意味をもつかは、言わなくてもわかるだろう。もちろん迫ってきたトレードシーズンにベダードを駒として使うかどうか、という話だ。
日本でもアメリカでも、「どうせベダードはシアトルからは出て行くにちがいない」と大半の人が思っていたわけだが、ベダード自身はどうもそんなふうには考えていないことがわかったわけだ。

このブログの立場からいうなら、
いま防御率リーグ4位の先発投手を放出など、ありえない。頭がおかしい。

というか、もともと、ベダードにせよ、ウオッシュバーンにせよ、「放出せよ論議」の根拠になっていたのは、「城島問題」がチームと投手陣を破滅に追いやった2008シーズンの成績を元に「こんなダメ投手たち、クビにせよ」という白痴的な論議である。
そんなのは自分の脳を使わない馬鹿のヨタ話なのだが、いまだにそんなことすらわからないで、ブログを書いたり記事を書いたりしているファンやプロのライターが、アメリカにも日本にいまだに大量にいた。

そこへ、このベダードのインタビューが出てきたわけだから、どう反応していいからわからずに対応しているファンやライターの馬鹿ぶりがあまりにオロオロしていて、とても笑える(笑)

今シーズンの彼らの高いアベレージを見れば、彼らがもともと「ダメ投手」なわけがない。
ダメなのは、投手陣をあやつれもしないのに正捕手におさまりかえっているコネ捕手なのは、とっくにわかりきっている。もしベダードやウオッシュバーンを意味無く放出したりすれば、後で後悔するだけでなく、投手陣の再建にまた大金がかかる。
この投手不足のご時勢、いい先発投手など、トレード市場にそうそう転がっているわけがない。そもそもベダードだって、どうみても能力があったシェリルやNo.1プロスペクトのアダム・ジョーンズを泣く泣くトレードの駒にして、ようやく獲得できた先発投手の軸だ。アダム・ジョーンズやイバニェスが大活躍の今、無意味に先発を放出すれば「二重の損失」になることくらい、いくら頭のよくないこのチームのオーナー筋でもわかるだろう。
(もっとも。お気に入りの城島の破滅的な成績とあまりの不人気を隠蔽するために。わざと「城島を正捕手として認めてない好投手たちをトレードしてしまう」ような気の狂った破滅的行為を犯すつもりなら別だが)



ウオッシュバーンも最近のインタビューでこんなことを言っている。
「左投手ばかり揃ったシアトルの先発投手のラインアップだけどね、これはこれで個性的でいいと思うんだよね。」
Arsenal of lefties gives Seattle an edge | Mariners.com: News

アメリカのインタビュー記事というのは、いわゆる社交辞令に満ちていることも多い。だが、ことウオッシュバーンについては、この2年以上読んできて思うのは、彼がいつも正直な、裏表のないコメントをするタイプの男であることだ。
だから、ウオッシュバーンも、ロブ・ジョンソンのリードでリーグナンバーワンの先発防御率になったシアトルの上向きの現状について、「楽しんでいるし、これからが楽しみだね」と言っているのはあながち社交辞令ではない。



まあ、ベダードとウオッシュバーンの話は、間単に言えば、投手陣の中に、城島がDLでいなくなってくれたおかげで、とても和気あいあいとして、団結した空気が生まれていて、その空気を、ちょっと人見知りしがちなベダードも、素直すぎるウオッシュバーンもたいへんに歓迎して、居心地良く感じているということだ。

当然のことだが、彼らをトレードの駒にして内野手やブルペンなどを強化するなど、絶対にやるべきではない。これからも何度も言うつもりだが、今の投手不足のご時勢に、ERA3点台の投手を3人そろえようと思ったら、いくらの金と歳月がかかると思うのだ?


ただ、ベダードは「シアトルに残りたい」とは言ったが無条件というわけではなさそうだ。彼の残留条件にはチームが上向きであることはもちろんだろうが、捕手にこだわりがあるベダードのことだから「自分が投げるときの捕手は城島でないこと」というのが入ることは間違いないと思っている。

リーグを代表する先発投手陣の彼らをキープしておくための意味でも、(打撃のいいクレメントがまだ膝が完全でないというのなら)2009年の投手陣のアイドルでもあるロブ・ジョンソンをきちんと正捕手にすべきである。




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