June 08, 2009

ミネソタとのシリーズが2勝1敗と勝ち越して終わった。
労の多いゲームばかりだったが、これでついに借金1までこぎつけた。
3人の違う捕手が受けるという、ちょっと変わったシリーズだったが、やはりゲームのスムーズさ、ランナーが出た後の不安の少なさという点で、ロブ・ジョンソン先発のメリットの大きさを再認識した。
Minnesota vs. Seattle - June 7, 2009 | MLB.com: Gameday
ベダードはQSこそできなかったものの、これで5勝目。今日のベダードがQSできなかった原因のひとつは、球審のジャッジ。あまりにもバラついたジャッジにバッテリーがなかなか対応できず、球数が増えた。
カーブを得意にするベダードにとって、ベース上を横切る球、低めに決まる球は生命線なのだが、この日のゲームの球審は明らかにメジャーらしからぬ高すぎるストライクゾーンで、ベースを横切る変化球、低めに対して異常に辛く、失点イニングでも四球を連発「させられて」しまった。

チームERAは3.74というハイスコアのままで、ア・リーグNo.1をキープ。チーム打撃の貧しい現状を考慮すれば、高い防御率をキープするのはいまや必須なのはわかりきっているが、そのために必要な人材、特に必要な捕手が誰なのか、いらない捕手が誰なのか、もはや言葉にするまでもない。城島以外の3人が捕手を勤めるというこの珍しいシリーズで、城島など、もう、このチームに全く必要ないことはアメリカのファンやメディアにも十分理解できたことだろう。


ロブ・ジョンソンは5日のナイターで打球が足に当たってずいぶん痛がっていたが、いちおう大事をとって、このあとのボルチモアの遠征も少しゲームを休むらしい。そのためにマイナーから、2007シーズンに控え捕手として好成績を収めていたバークがひさびさにコールアップされてきた。ここからの数ゲームはキロス、バークという予定外の捕手2人で回すことになるのか?


今日のシリーズについてミネソタ側では、現在ア・リーグの防御率ランキングベスト10に入っているシアトルの3人の主力SP(先発投手)と連戦する「得点はかなり困難なシリーズになる」とわかっていた。
シアトルの先発投手陣を牽引してきた最近のロブ・ジョンソンの驚異的な仕事ぶり、シアトルの先発のレベルの高さは、既に他チームにも情報として浸透したのである。実際ミネソタはこの3ゲームでわずか4点しか取れなかった。
Coming into this series with the Mariners, the Twins knew it might be a difficult task to score runs. Facing the trio of Seattle's hottest starters -- Felix Hernandez, Jarrod Washburn and Erik Bedard -- the club knew it would take a strong offensive effort to come out with victories.
Slowey struggles as Twins drop finale | twinsbaseball.com: News

ミネソタ側記事では「シアトルは得点圏に17回もランナーを進めて一度も得点してない」のに、そんなチームに負けたと嘆くのだけれども、彼らだって「24回も得点圏にランナーを進めておいて、2度しか得点してない」のだから、お互い様である。
今日のゲームについてたまたまホームランが出たか出ないかの「両軍の偶然の差」が今日のゲームの勝敗を決めた、などと書いているヘボなライターをたくさん見たが、それは大間違いだ。



まずはシアトルのこのデータを見てもらいたい。
Sortable Team Stats | Mariners.com: Stats

シアトルの防御率はたしかにア・リーグ1位だが、ではランナーを出していないかというと、OBA(被出塁率)や、WHIP(=Walks plus Hits per Innings Pitched、イニングあたりの与四球+被安打の率)では、他チームとそれほど変わりばえしない。というか、そんなデータを見るより、ゲームを毎日見ているファンなら、もう、うんざりするほど毎回ランナーが出ていることは誰でも知っている(苦笑)。
むしろ防御率を保つのに大きな効果が出ているのは、被長打率や被ホームラン数。
特に被長打率は、トップのチームとボトムのチームでは1割ほども差のある偏差の大きい数値だが、シアトルは他チームより、かなり数値がいい。
長打が少ないから、例えばたとえシングルヒットを2本続けて(または四球の後にシングルとか)打たれても、焦らずに守りさえすれば失点せずにすますことができる。投手陣の能力があるからである。逆に言えば、シアトルの失点はエラーがらみなことも少なくない。

ライトとセンターの肩や守備の良さはランナーを3塁に進ませないために、かなり重要だ。ランナー1塁の場面からイチローの前に転がるライト前ヒットでランナー1、3塁になるのを防げた、というのは典型的なケースで、見えないファインプレーである。
また「ダブルプレー成功」もシアトルではゲームでの必須ファクターだ。ダブルプレーをとれるロブ・ジョンソンのリードの存在はかなり大きい。またダブルプレーでの内野のミスは許されないのは当然で、二遊間の確実な守備はシアトルの失点減少に絶対に欠かせない。1塁手のブラニヤンのキャッチングは信頼性がある。


要は、「ランナーを出されはする。だが、長打を徹底して抑え込みながら、結果的に0点で抑える」そういうチームカラーが定着しつつある、ということ。もちろん、このカラーを作ったのは裏口入学のコネ捕手さんでないことは言うまでもない。このチームカラーの維持のためには、キャッチャーは誰でもいいわけがない。
コネ捕手さんの特徴は「一度ランナーが出ると極端にリードが単調になり、ズルズル、ズルズル連打され、四球を出し、大量得点される。大敗が決まった後は、大振りスイングでホームランを狙い、ドンデン返しだけを狙って、雑なゲームをする」という、全く別のカラーだ。2009年の、この緻密なチームカラーとは無関係だ。



もうひとつ、ホームランということに関して。

今日のゲームで自称シアトルファンを気取りの人ですら「なになに、バーク、2安打? 1本はホームラン?・・マグレだろう・・・」などとビックリしている人がいるようだが、ホームランはともかく、バークのバッティング自体を侮るのは全くもって見当違いもいいところ。
彼が控え捕手をつとめた2007シーズンは、OPS1.000なんていう好調な4月から始まって、シーズン43ゲームという少ないゲーム数ではあるが、月間まともにゲームに出るのは数試合という厳しい環境の中で、とうとう3割打ったままシーズンを終えている。
もともとバークは捕手としてはそれなりにいい打撃センスの持ち主なのだ。

Jamie Burke Career Statistics | Mariners.com: Stats
今日のゲームでも本当はむしろホームランより、その打席の、ホームランの前に空振りしたスイングのシャープさ、あるいはホームランを打ったときの1塁へのランニングの速さを見ておくべきだ。
どうやら彼はマイナーで何もせずに漫然と過ごしていたわけではなさそう。スイングがかなりシャープになっているし、なにより、あれほど鈍足だった彼のランニングがかなり改善されている。正直、驚かされた。あまり多くのチャンスはないかもしれないが、苦労人バークの今後に期待したい。
「城島問題」を語る上でも、いつもバークの2007年のことも書き加えなければと思っていたが、今まできちんと触れていない。書き加えていかないと、彼に対して失礼になってしまう。今後の課題としたい。

2007年バーク 月別打撃
4月 14打数5安打
5月 14打数4安打
6月 21打数10安打
7月 20打数4安打
8月 19打数4安打
9月 25打数7安打
シーズン 113打数34安打7四球 2塁打8本 12打点
AVG.301 SLG.398 OBP.363 OPS.761

バーク 2007年全出場ゲームログ
Jamie Burke Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN


この2007シーズンの正捕手城島のシーズン打率だが、見た目.287ということになっている。この「妙な」数字のせいか、「シーズン通してそこそこの高打率を残した、チームにバットでも貢献した」と、2007年の城島の打撃の酷さを勘違いしている、データに暗いお馬鹿さんがいる。
だが、実はこの久々のポストシーズン進出の可能性もあったほど調子がよかった2007年のシアトルにとって、城島のバットの貢献はシーズン開始後ほんの2ヶ月間くらいでしかない。
6月後半から7月、8月前半にかけての連続した2ヶ月の打撃の中身は、それはそれはお粗末で酷いものだった。なにせ、この2ヶ月もの長期に渡って続いた特大級スランプの間、打率はわずか.198しかないのである。
併殺打数がア・リーグで3位だかになったのも、このシーズン。どれだけのランナー、得点圏ランナーが城島のせいで無駄になったことか。地区優勝やポストシーズン進出がかかった勝負どころの夏、城島は打線の邪魔者でしかなかった。
城島のシーズン打率.287などという嘘くさい数字は、ポストシーズンに行けないことが確定してからの消化ゲームの中で稼いで帳尻あわせしただけなのである。

この2007年夏の城島の酷い打撃成績はただのスランプではないことは、2008年のシーズン打率で証明されている。

勘違いしてはいけない。

2007年というシーズンはシアトルにとって「城島がチームを牽引したシーズン」などではなく、「チームのポストシーズン行きを、城島(やセクソンなどの不良債権たち)が足をひっぱった」、そういうシーズンなのである。
このシーズンに「攻守両面で城島に足をひっぱられ続けた経験を持つ」投手陣たちが、信頼など置くわけがない。城島の3年契約で最も唖然としたのは、おそらく彼らだろう。
ブログ主も2008年の春、このコネ捕手が「自分がチームリーダーとしてチームを引っ張っていく」などと、とんでもない勘違い発言したのを見て唖然としたのを、よく覚えている。

2007年城島 月別打撃
   打率 OBP  SLG OPS
4月 .327 .375 .558 .933
5月 .310 .327 .500 .827
6月 .268 .326 .378 .704
6月後半 38打数7安打 打率.184
7月 .191 .217 .326 .543 月間89打数17安打
8月 .375 .402 .568 .970
8月前半 40打数9安打 打率.225
9月 .257 .300 .284 .584

城島 2007年全出場ゲームログ
Kenji Johjima Stats, News, Photos - Seattle Mariners - ESPN



2007年 城島とバーク
打撃・CERA比較(2007年開幕から8/18まで)

このシーズンの城島とバークの各種の成績の間に、2009シーズンの城島とロブ・ジョンソンほどの大差がつかないのは、バークがロブ・ジョンソンのように連続出場する機会になかなか恵まれなかったため、ということもある。切れ切れにでなく、まとまった出場機会を与えられていたら、バークもロブ・ジョンソンの「先発ERA2点の差」ほどではなくとも、もっと城島との差を開くことができただろう。
     OPS  RC27   CERA
城島   .746  4.12   4.88
バーク  .801  5.34   3.65
チーム  .758  4.94   4.61


2007年城島
シチュエーション別打撃成績(8/18まで)

ランナーなし  195打数62安打 7打点(HR7本)
あり      171打数38安打  39打点 打率.222
1塁      66打数15安打
        打率.227 OBP.301 OPS.710(9併殺)
2塁      42打数10安打 9打点 打率.238
3塁      8打数0安打
1,2塁     30打数6安打 6打点(3併殺)打率.200 OPS.594
1,3塁     11打数3安打 3打点(2併殺)
2,3塁     5打数1安打 4打点 
満塁      9打数3安打 11打点(4併殺 HR2)

2007年城島
ランナーズ・オン打撃(8/18まで)

RC27            4.12
ランナーズオン打率     .222(ほぼスタメン最下位)
ランナーズオンOBP     .280
(スタメン最下位 他に2割台はロペスのみ)
ランナーズオン併殺     18併殺
(スタメンダントツワースト、アリーグワースト3位タイ)
得点圏併殺         9併殺
(満塁4回 1・2塁3回 1・3塁2回)
3塁走者(無死、1死)時   6併殺
BB/PA(打席あたり四球率) .031(スタメン最下位)
                     
2007年城島
ランナー1塁での打撃成績(8/18まで)

ランナー1塁で打席に入ると、約6.5打数に1回、15%は併殺打
66打数15安打5四球
打率 .227
OBP .301
OPS .710
9併殺

2007年城島
得点圏 打撃成績(8/18まで)

105打数23安打 3HR 33打点 5四球
9併殺(満塁×4 1・2塁×3 1・3塁×2)
打率 .219
OBP .265
SLG .371
OPS .636




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