August 05, 2009

ある日本人作家の言葉をもじって言うなら
人生も野球と同じように、上手な人と下手な人がいる。
だが問題は人生の下手な人にも明日はやってくるが、
野球の下手な選手には明日がない、ということだ。



下の文章はBaseball Referenceという、有名なMLBのデータベースサイトでみかけた記事にリンクとしてあったもの。引用した人は、日頃データとばかり向き合っているせいか「考えさせられるものがあった」と話した。
アメリカは広くいろいろな人が住んでいる。投手のスライダーにもいろいろあるように、あながちドライな人ばかりでもない。いろんな考えの人がいる。

struggle、という言葉は野球記事に頻繁にでてくる単語で、「不調の」という意味で使われ、訳されることが多い。
だがstruggleは「もがき苦しみながらも、努力する」という意味でもあり、けして悪い意味ばかりでもなく、struggleという単語にもいろいろ意味がある。

僕は野球記事にでてくるstruggleという単語を見かけるたび、いつも「不調の」という意味で読むより、むしろついつい「もがいているが、なかなか調子が上がってこない」とか、「不調だが、なんとかしようと頑張っている」という意味で読んでしまう。辻褄が合わなくなると、もう一度読み直す。

どんな状況におかれたとしても、結局ベースボールプレーヤーも我々も、不調さを悩む暇があればstruggleすることで道を開くわけだが、野球選手のstruggleする姿はあまり目にすることがない。目にすることがないから、人が気にかけなくなる、という面もある。

下の記事は、そんな忘れられがちな他人のstruggleに気づいて、光をあてた人の書いた話だ。訳してみたくなった最初の頃はウオッシュバーンやクレメントのトレードでセンチメンタルな気分があったことは認めるが、いまはこう思ってもいる。

どこにいてもウオッシュバーンはウオッシュバーン。クレメントはクレメント。
さよならのない人生だけが人生なら、旅をする意味はない。
旅しない人生だけが良い人生ならば、そんな人生はつまらない。


Life is like a baseball game. When you think a fastball is coming, You gotta be ready to hit the curve. - The Path of Thorns
人の一生は野球の試合に似ている。
速球が来ると思うなら、
カーブを打つ準備もしていなくてはならない。


To the vast majority of the fans, players are simply components that affect the representation and winning capabilities of their hometown teams. If they under-produce, most don’t care if they’re dumped just like that. If they’re expendable, who cares if they’re gone, so long as they fill in a hole in the roster? Few of us stop to think what that means to the player. How it determines the rest of his season, his career, and the life of his family is rarely fathomed.
大半のファンにとって「野球のプレーヤー」は、地元球団の見栄えの良さや勝つ可能性に影響してくる「パーツ」にすぎない。大部分のファンは、もし結果に満足がいかなければ、プレーヤーがなんの前触れもなく放り出されようと気にかけない。使い捨てプレーヤーならば、たとえいなくなっても、だれかがスタメンの穴をふさいでくれる限り気にとめることもない。それ(=トレード:ブログ注)がプレーヤーにとってどんなことを意味するか、私たちはほとんど立ち止まって考えたりはしない。選手の残りシーズンやキャリア、彼の家族の人生にどんな風にケリがつけられてしまうか、滅多に考慮されることはない。

I got a chance to talk about this topic with a former Major League Baseball player. I did not get a chance to ask his permission to use his name, but I will say he was once a member I valued on my beloved Cubs, and someone who has gone through this very thing.
私はこの話について、ある元メジャーリーガーと話す機会を得た。私は彼の名を明かす許しを得ることはできなかったが、彼がかつていとしいシカゴ・カブスに在籍し、まさにこういう目にあった人物だということくらいは言っておきたい。

He mentioned a few things I did not think of – the idea that if you’re performing well and get dealt, you feel secure because there’s a better chance you’ll stay with that team, and find yourself a new home and a new exciting fan-base. But if you get traded for under-producing, as I mentioned above, you stress more because of the new equation you’re brought into; that is to say, your new role with the team. You may have been a beloved member of team A, but to team B, you sit on their bench and watch a team you may hardly know play without needing you as much. I can’t imagine the loneliness, or the uneasiness. Yes, ballplayers are millionaires these days, who will be financially stable anywhere once they hit this level, but they’re also human beings who may find job relocation following a business lunch or a thirty-second phone conversation. And all a player can do is wait.
彼は私は思いがけないことを言った。
もし、好調時のトレードなら、トレード先で腰を落ち着けてプレーが続けられるチャンスがより大きくなること、、新しいホームチーム、新しい熱心なファン層が得られる期待で、選手は心強い気持ちになれる。
しかし、すでに話したように、結果が伴わない状態でのトレードだと、自分が新しく組み込まれるチームの戦略、つまり、新チームでの新しい役割の中で、プレーヤーは強いストレスを感じる。Aというチームではチームの一員として愛されたかもしれない。だが移籍先のBというチームでは、そうならないかもしれない。あまり自分を必要としてないチームでプレーをベンチに座って眺めることになるかもしれない。

私はそういう孤独や、居心地の悪さを想像できない。なにせ最近の野球選手はみんな金持ちだ。どこのチームであれ、そこそこのレベルで一度活躍できたら、経済的には安定するだろう。
しかし彼らは、ビジネスランチの後や30秒かそこらの電話で自分のトレードを知らされる、そういうたぐいの人種でもある。プレーヤーにできることは、待つこだけだ。

The player I interviewed made another mention – how their children have to say goodbye to their friends, how their wives are left behind to figure out their mandatory new living situation. Some players who are traded still have several years left under their current contract, and may not see many warm days at their current home again. New schools, new estate, new ways of life – including a new dreary apartment or shared house to those players still unproven. Many wives have to say goodbye to the house they made their own with the player they wedded, to the friends they’ve grown attached to, to the happy life they had where they were. As much as a player is a mere soldier in a battalion, trudging through a million-mile season, they have to be nomadic and well-prepared if they’re to make it through a long and hard career.
私がインタビューした元選手はこんな話もしてくれた。
友達に別れを告げなければならない子供たち。強制的に新しくなってしまう生活環境に馴染めずに取り残される奥さん。トレードされる選手の中には、数年の契約を残している選手もいる。だが、彼らは今住んでいる家ではもう暖かい暮らし味わえないかもしれない。新しい学校、新しい家、新しい生活スタイル・・・。まだ行く末の定まらない選手たちに貸し出される物寂しいアパートや借家での生活を強いられる、というケースもある。多くの妻たちは、結婚して自分たちで建てた家、親密さを育くんできた友人、彼らがいた場所での幸福な人生に、別れを告げなくてはならない。
野球選手は、100万マイルもの果てしないシーズンを、重い足取りで歩き通す単なる軍隊の一兵卒ではあるだけに、長くて困難なキャリアをなんとか切り抜けていくつもりなら、遊牧民的かつ用意周到でなければならないのだ。

For every game that has to be won, a birthday is missed. For every RBI scored, and anniversary is missed. For every loss taken, a player’s lover says goodnight to an empty pillow. These players, these soldiers, these pawns, have a job to do, a talent to use, a unilateral skill to answer to, and each of the thirty teams has a vast game of chess to play without getting a checkmate. For each piece lost, one step forward needs to be taken. Each piece on the board needs to be in a certain place in order to win. Only the chess you and I play have tangible and unfeeling pieces…to thirty front offices right now, they change lifelines. And business in this old game never feels colder, or more surreal, in the heated Summer than it does today.
勝たなければならないゲームのために誕生日は忘れられ、挙げなくてはならない打点のためには記念日も忘れられてしまう。負けが刻まれるたび、そのプレーヤーの恋人は、からっぽの枕に向かって「おやすみ」を言う羽目になる。
兵士であり、チェスの「歩」であるプレーヤーたちには、やらなければならない仕事があり、使うべき才能と、期待に応えるための一方的な技能をもっていて、そして、30チームすべては、チェックメイトのない巨大なチェスゲームである。部品がひとつが失われるごとに、必ずひとつの前進が要求される。 ゲームボード上の各部品は、勝利のために一定の場所にいることを要求される。われわれがプレーするこのチェスゲームは唯一、触れることはできるが感情をもたない部品で行われている。
30ものフロントオフィスがたった今、彼らの生命線に変更を加えようとしている。 夏真っ盛りの今日(=トレード・デッドライン:ブログ注)ほど、この伝統のゲームにおけるビジネスが、よりクールに、そしてよりシュールに感じられる日はない。

New friends are made, old friends hug or shake hands, promises to keep in touch are made briefly, and a bus, or plane, awaits their fate. The fate of the player, their wives and lovers, their children, their family, their friends. Bags are hurriedly packed, goodbye kisses are known to be salty with the tears breaking between lips, retrospect is administered, and a fresh new start shows itself as a sharp right turn. Whether a player is meant to stay with the team for three months or three years, depending on their contract, a new significant chapter must begin. Even if they wanted to go, they leave a whole life behind them – and maybe a teammate, wife or lover that just doesn’t want to see them go.
新しくできる友人。旧友と交わすハグや握手。これからも連絡を取り続けようと、そそくさと交わされる約束。バスや飛行機が運命を待ちうけている。プレーヤーの運命、そして妻や恋人、子供、家族、彼らの友人の運命も。大急ぎで梱包される鞄。別れのキスの塩辛さ。頬の涙が唇と唇の間で流れを変えるように、新鮮なはずの再スタートは、急なカーブとして本性を露わにしていく。プレーヤーが3カ月、あるいは3年、チームと一緒に帯同できることになっていようと、いまいと、契約にそってプレーヤーは新しい重いページをめくらなければならない。たとえ誰かが一緒に行くのを望んでいようと、プレーヤーたちは去っていく。人生のすべて、チームメートや、彼の旅立ちをとても見ていられない妻や恋人などをあとにして。







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